失敗の記録
スイッチングレギュレータを用いたB電源の試作
(2011.10.10)

 カーオーディオとして使用する真空管アンプ用のB電源にスイッチングレギュレータを用いてみましたが、スパイクノイズが大きく、FMラジオに雑音が入ることから採用を断念しました。以下、失敗の記録です。
電源部の検討

 B電源の取り方については、今回の計画以前から試行錯誤を繰り返してきました。まず最初に計画したのは、デジタルアンプで正弦波を増幅して電源トランスに出力し、所定の高電圧を得る方法でした。市販のキットや自作デジタルアンプで試作してみましたが、トランジスタやICを飛ばすこと数回を経験し、私の技量では安定性の面から大いに不安があり、断念しました。
 そこで、今回も市販の安価な車載用インバータを利用し、スイッチングレギュレータで安定化を図る方式を採用しました。当初はトランスを用いず、インバータ出力を倍電圧整流することを考えたのですが、安価な車載用インバータでは、入力と出力の間の絶縁性能について明確な記載がなく、また、「入出力絶縁」とカタログに記載のあるインバータは正弦波出力の価格の高いものしかなかったこととから、トランスを使用することにしました。
 最初に検討したのは安価で済む絶縁トランスの使用でした。下のグラフは、絶縁トランスの1次側90V端子を使用し、(90V端子に100Vを入力することは、本当はいけないのですが、使用した絶縁トランスの2次側に100V端子しかなかったため、自己責任で実験してみました。)2次側100Vを倍電圧整流した場合のインバータへの供給電圧と整流出力電圧の測定結果です。実験回路図はこちら
 正弦波で想定される倍電圧整流出力電圧より低いのはインバータの波形が矩形波であるためです。測定の結果、想定されるバッテリーの電圧変動に対して、188Vから228Vも変動しており、何らかの安定化が必要であることと、このままではB電圧が不足することがわかり、絶縁トランスの使用をあきらめ特注トランスを発注しました。
電源部は一応完成

 B電源のスイッチングレギュレータの回路は、勉強用に購入した稲葉保氏著「パワーMOS FET活用の基礎と実際」(CQ出版社)の101ページに掲載されていた「0〜120V・1A非絶縁可変電源」という回路を参考に製作しました。スイッチングレギュレータは、いままであまり親しんでこなかった分野でしたので、ずいぶんと勉強になりました。ヒータ回路は前回同様に電圧可変のスイッチングレギュレータのキット(秋月電子通商で購入)を使用し、C電源も市販の絶縁型DCDCコンバータの基板を使用しています。
スイッチングレギュレータ部回路図はこちら)(電源部回路図はこちら


電源部ケースにひと工夫


 電源部のケースは、前回と同じく既製品のアルミケースを2つ使用します。前回と異なる点は、蝶番を用いて上下のシャシを連結し、メンテナンス性を向上させたことです。現状の電源部は単純にアルミシャシを2段積み重ねたもので、メンテナンスの際、上下のシャシを重ねる際に配線を挟み込むなど面倒であったことを反省し、上下のユニットをつなぐ配線の取り回しも改良しました。スイッチングレギュレータをB電源に採用したおかげで、電源規模がほぼ倍になっても全体の大きさは前回を一回り大きくした程度で済んでいます。
 車載用インバータは、カー用品店で安価に売っていた定格出力135Wのものを採用しました。車内で使用するため、熱対策として念のためインバータの直近にDCファンを取り付けてあります。12V用のDCファンを使用しましたが、12Vを供給すると音が大きかったので6Vで使用しています。また、ふたを開けなくても各部の電圧がチェックできる端子をシャシ前面に設けています。

電源部外観

上下のアルミケースは蝶番でつなげてメンテナンス性を向上
電圧変動に対する安定性を測定 (2011.4.30)

 電源部が一応完成したので、B電源の負荷に想定される500Ωの抵抗をつなぎ、供給電圧の変動に対する出力電圧の変化を測定してみました。最初に測定したときに、供給電圧が低くなるとレギュレータの入力電圧が低くなり、シャットダウンしてしまうことがわかったので、当初の設計を変更し、電源トランスの1次側巻線を0-90V間で使用して、2次側電圧の向上を図りました。この使用方法は本当は定格オーバーで、よくないのですが、自己責任で実験してみます。本来は、2次側の巻線を260V程度にしておくのがよいのでしょう。

1次巻線をつなぎかえた後でも、供給電圧が11Vを下回るとレギュレータがシャットダウンして出力電圧が0Vになります。車のバッテリーの電圧変動を測定した結果では、エンジンOFFでライトをハイビームでをつけた状態でも11.2Vでしたので、なんとか大丈夫な値です。スイッチングレギュレータの効果でレギュレータ入力電圧が219.5-274.3Vまで変動(約1.25倍)しても、出力で電圧は5Vの変動で収まっています。200Vに対して2.5%ですので、この程度の変動ならば家庭用電源の電圧変動と同等とみなせます。
 また、ノイズの影響を確認する意味で、電源の近くでFM-AMラジオを聞いてみました。FMは問題なかったですが、AMでは、電源部にラジオを近づけるとノイズが増えました。ただし、1mほど遠ざければ問題なく聞こえるので、実用にはなると、当時は思いましたが、その後実装してみるとFMラジオの方に大きなノイズが入ることがわかり、スパイクノイズで悩むことになりました。

B電源のスイッチングノイズ抑制(2011.6.18)

 B電源にも、スイッチングレギュレータを使用したため、やはり大きなスイッチングノイズが発生していました。フィルタを挿入しない状態でオシロで観測すると、下の画像の通り、上下ピークの差で15Vという大きなノイズが出ていました。試行錯誤の最中ですが現在下図の回路でノイズを低減し、上下ピーク差を2V程度まで低減しています。



フィルタなし 横軸20μS/div 縦軸5V/div

フィルタあり 横軸10μS/div 縦軸1V/div
ノイズをなくすことができず採用を断念

フィルタだけではうまくノイズを減らせないので、FETにスナバ回路を設けるなど、あれこれ対策したのですが、なかなかスパイクノイズをなくすことができず、FMラジオに入るノイズをなくすことはできませんでした。したがってこの方式もあきらめ、少々値段は高いのですが、正弦波出力のDC-ACインバータを用いてAC100Vを得、電源トランスでB電源を得るという方式に変更しました。(2011.9.25)
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