設楽ダムの建設中止を求める会 公式サイト

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≪設楽ダムの建設に関する公金支出等差止め請求事件の訴状≫

2007年4月12日名古屋地裁に提訴

-----------------------------------------------------------------------------------------------

訴    状

 

平成19年4月12日

 

名古屋地方裁判所

   御中

 

原告ら代理人 弁護士 在  間  正  史    

 

同     弁護士 原  田  彰  好    

 

同     弁護士 竹  内  裕  詞    

 

同     弁護士 樽  井  直  樹    

 

同     弁護士 白  川  秀  之    

 

同     弁護士 濱  嶌  将  周    

 

同     弁護士 魚  住  昭  三    

 

同     弁護士 石  和  康  宏    

 

同     弁護士 笠  原  一  浩    

 

同     弁護士 籠  橋  隆  明    

 

籠橋隆明復代理人  弁護士 吉  江  仁  子    

 

設楽ダム公金支出差止等請求事件

   訴訟物の価額 金160万円 (貼用印紙額 金13,000円)

 

目  次

当事者の表示                                                                3

請求の趣旨                                                                  4

請求の原因                                                                  4

第1 元来の川の姿と豊川                                                    4

1 川と海およびダムのあり方                                                4

2 豊川と三河湾                                                            5

第2 設楽ダム建設計画の経過と概要                                          7

第3 設楽ダムの費用負担の仕組み                                            8

第4 新規利水(都市用水)                                                 11

1 豊川水系水資源開発基本計画                                             11

2 愛知県 水道用水(上水道)                                              12

3 愛知県 工業用水                                                        13

4 平成27年需給比較                                                     14

第5 新規利水(農業用水)                                                 15

1 豊川水系水資源開発基本計画                                             15

2 平成27年需給比較                                                     17

第6 洪水調節                                                             18

1 豊川水系河川整備計画                                                   18

2 評価                                                                   18

第7 流水正常機能維持                                                     19

1 「流水正常機能維持」とは                                               19

2 豊川における流水正常機能維持と設楽ダムの流水正常機能維持容量   20

3 流水正常機能維持のためにダム建設をすることの矛盾                       21

4 豊川用水の利水安全度の向上                                             21

第8 環境への影響                                                         22

1 水没地域の生態系とその破壊                                             22

2 河川環境とそれへの影響                                                 23

3 豊川と三河湾および三河湾への影響                                       24

4 設楽ダムの環境影響評価                                                 25

5 まとめ                                                                 26

第9 設楽ダムについての費用負担等の財務会計上の違法性と本訴提起    26

当事者の表示

原告の表示      別紙原告目録の通り(市野和夫ほか168名)

名古屋市中区丸の内3丁目7番17号  〒460−0002

    原告ら代理人   弁護士 在  間  正  史

名古屋市中区丸の内3丁目7番27号  〒460−0002(送達場所)

     同       弁護士 原  田  彰  好

      電話:971−5011   FAX:971−5015

名古屋市中区錦3丁目7番13号    〒460−0003

     同       弁護士 竹  内  裕  詞

名古屋市中村区則武1丁目10番6号  〒453−0014

     同       弁護士 樽  井  直  樹

名古屋市北区御成通2丁目1番1号  〒462−0807

     同       弁護士 白  川  秀  之

名古屋市熱田区神宮2丁目6番16号  〒456−0031

     同       弁護士 濱  嶌  将  周

名古屋市守山区中新10番8号  〒463−0057

     同       弁護士 魚  住  昭  三

名古屋市中区丸の内3丁目4番30号  〒460−0002

     同       弁護士 石  和  康  宏

福井県敦賀市布田町84−1−18  〒914−0041 

     同       弁護士 笠  原  一  浩

名古屋市西区城西1丁目12番12号  〒451−0031

     同       弁護士 籠  橋  隆  明

名古屋市西区城西1丁目12番12号  〒451−0031

   籠橋隆明復代理人  弁護士 吉  江  仁  子

名古屋市中区三の丸3丁目1番2号   〒460−8501

     被  告     愛知県知事 神  田  真  秋

名古屋市中区三の丸3丁目1番2号   〒460−8501

      同       愛知県企業庁長 宮  島  寿  男

 

請求の趣旨

1 被告愛知県企業庁長は、設楽ダムに係る水道用水のダム使用権に関して、ダム使用権の設定申請その他そのダム使用権によって水道用水を取水する権利を取得することをしてはならない。

2 設楽ダムに係る建設費用負担金のうち、

1) 被告愛知県企業庁長は、水道用水に係る負担、および豊川用水の利水安全度

向上に係る負担のうち水道用水と工業用水の負担分

2) 被告愛知県知事は、かんがいに係る負担、洪水調節に係る負担、流水正常機

能維持に係る負担、豊川用水の利水安全度向上に係る負担

について、その支出をしてはならない。

との判決を求める。

 

請求の原因

第1 元来の川の姿と豊川

1 川と海およびダムのあり方

1) 川と海

 川は、降水が流れ下る自然の営力によって形成された陸水域であって、流水の流量に対応した特有の自然を形成し、水と土砂と栄養を海に運んだり、生物が海との間を往来する空間となっているとともに、それが流入する海の流れを起こす力ともなって、地球の物理的・化学的・生物的循環を支えている。源流域は森林となっており、その下流の川や海の自然を支えている。川は、これらの自然条件の下で、流域住民に水利や漁獲などの恩恵を与える一方で時には水害をもたらしてきたが、日本では、その自然を前提とする恩恵享受と水害防止の流域住民の営為によって当該流域に特有の文化(風土)を形成してきた。

 川は、流水の自然の流量変化の下で、それに応じた多様な生物が生息、生育している。川は淡水と土砂と栄養を海に運び、海岸域の形成のために不可欠なもので、こられによって形成された干潟や浅瀬は、そこに棲む底生生物とそれらを捕食する鳥類の宝庫であり、また、アサリその他の貝類などの有用な水産資源の漁場となっている。そして、このような干潟と浅瀬は海域の水質浄化を果たしている。浅瀬は、海の生き物の産卵や稚魚の育成場所にもなっている。

 川の源流域から海に供給された土砂は、海岸線(海浜)を構成する土砂の元であって、海浜形成の第一次的な因子である。また、川が内湾に流入する強い流れは、低層を密度の大きい外海水が湾口から湾奥に流れ、表層を密度の小さい河川水を入れた湾内水が湾奥から湾口に流れ、その間に低層から表層への連行を伴う鉛直循環流を湾内に生み出す力となり、これによって、内湾水の外海水との交換が促進され、内湾の水質浄化がなされている。このように川と海は水系一体なものである。

 

 以上の通り、川は海と一体となって、県土、国土さらには地球とそこでの人の暮らしにとって必要不可欠なものである。

2) ダム

 ダムは堤体によって流れを遮断し、その上流に大規模な水没を生じさせる。堰き止めによって水、土砂、生物の動きが遮断される。水没によってダム湖が形成されてダム上流の水域環境が悪化し、放流によってその影響は下流にまで及ぶ。水と土砂の流れの遮断、流量の減少とその平準化による影響は、ダムの上流と下流だけでなく、鉛直循環流の流量低下による水質汚濁や土砂供給の減少による干潟や海浜の喪失など、海にまで及ぶ。このように、ダムは、ダムとその上流域だけでなく、その下流域、その先の海域にまで、自然によるものとは違った重大な変化を与えるものである。

 したがって、ダムによる問題の解決は、他の方法による対応が不可能又は困難であるときにおいて、それが問題解決に有効な方法である場合に限り、やむを得ずなされる最後の選択肢である。

2 豊川と三河湾

1) 豊川は、本流である寒狭川の源を愛知県北設楽郡設楽町の段戸山(標高1,

52m)に発し、山間渓谷を流れて当貝津川、巴川等の支川を合わせて南下し、愛知県新城市長篠地先で、最大の支流である宇連川と合流し、その後、豊橋平野で宇利川、間川等の支川を合わせ、豊川市行明で豊川放水路を分派し、豊橋市内を流れ神田川、朝倉川等の支川を集めた後、三河湾に注ぐ幹線流路延長77km、流域面積724km2の一級河川である。豊川は、本流に代表されるように全国有数の清浄な水質を保ち、山間渓谷部を急勾配で下り、その後豊橋平野で蛇行を繰り返しながら瀬や淵を形成し、緩やかに流れ、良好な水質や豊かな河道内の樹木群により良好な生物の生息・生育環境を育んでいる。

2) そして、豊川水系の内、大支川の宇連川が宇連ダムや大野頭首工等で人工化

されたのに比べ、豊川本流(寒狭川)は、下流にある寒狭川頭首工を除いて、大規模な流れを遮断する施設がなく、河川の自然状態が残されている。設楽ダム建設予定地が位置する上流部は、スギ・ヒノキの人工林が主体で、中央構造線を挟んで領家変成帯、三波川変成帯及び設楽火山層が入り組む複雑な地質や地形となっている。河岸は自然崖とそこに分布するアラカシ−ウラジロガシ群落、ケヤキ−ミヤマクマワラビ群落等の河畔植生がせまり良好な環境を形成している。河道は渓流を呈し、カワムツ、オイカワ、シマドジョウ等の他、アマゴ、カジカ等も生息しており、国指定の天然記念物であるネコギギの有力な生息地である。

3) 豊川は、渥美半島に囲まれていて閉鎖性の強い三河湾東部(渥美湾)の奥に

注ぎ込む唯一の大河川である。

 現在、三河湾東部(渥美湾)は、我が国で有数の富栄養化による水質汚濁が生じている内湾である。富栄養化によって植物プランクトンが異常増殖し、夏季には底層に貧酸素水塊が形成され、それによって表層の富栄養化が進んで植物プランクトンが増殖して赤潮が、さらに貧酸素水塊の湧昇による苦潮(青潮)も生じ、また底層に有機物を堆積させる。そして以上が再び繰り返されるという水質汚濁の悪循環が生じている。

 湾内では、低層を外海水が湾奥に向かい、表層を河川水を含んだ湾内水が湾奥から湾口に向かう密度流による鉛直循環流が生じ、湾内水の外海水との交換が促されて、水質環境が保たれてきた。この密度流を引き起こす力となっているのが、湾奥に流入する河川であり、三河湾では豊川である。豊川用水の供用による豊川の流量の減少に起因する鉛直循環流の流量低下が三河湾の水質汚濁の原因の一つである。

 また、豊川から三河湾に供給される土砂によって干潟や浅瀬が形成されている。干潟や浅瀬は三河湾の水質浄化をしており、埋立によるその減少も、三河湾の水質汚濁の原因である。

 このように、豊川は三河湾の環境に大きな影響を与えているのであり、豊川と三河湾は水域ないし水圏として一体のものである。

4) 豊川における洪水対策の特徴は、昔から不連続堤が用られており、それが現

存していて機能していることである。不連続堤とは、連続している堤防の一部に築堤しないか高さの低いところを設けて、洪水時に川道から堤内の遊水地に洪水を入れて浸水させることによって河道の洪水負担を軽減し、集落などの重要な空間が浸水するのを防いで洪水被害を軽減する治水方法である。

 豊川では、豊川放水路が完成して、右岸側の不連続堤が締め切られたが、左岸側には江島、賀茂、下条、牛川の不連続堤による遊水地があって、洪水対策を担ってきている。

第2 設楽ダム建設計画の経過と概要

1 はじめに

設楽ダムは、豊川水系豊川の河口から約70km上流の愛知県北設楽郡設楽

町清崎(左岸)と同町松戸(右岸)に位置している。設楽ダムは、特定多目的ダム法(以下「特ダム法」)に基づいて建設されようとしているもので、国土交通大臣が河川法9条1項により自ら建設する水道用水の新規水資源開発を目的とする特定多目的ダム(特ダム法2条1項)であり、併せて、農業用水の新規水資源開発、洪水調節、流水正常機能の維持を目的としている。水資源開発促進法4条1項に基づく豊川水系における水資源開発基本計画(以下「豊川水系フルプラン」という)の一環として、水道用水の水資源開発、付随して農業用水の新規水資源開発、併せて、豊川水系河川整備計画に基づく洪水調節及び流水の正常な機能の維持を目的としている。  

2 設楽ダム建設事業の経過

 設楽ダム建設事業の経過の概略は以下の通りである。

昭和46年 予備調査着手

昭和48年 愛知県が設楽ダムの調査申し入れ(総貯水容量・8000万m3

昭和53年 国が設楽ダム実施計画調査着手

平成2年  豊川水系が水資源開発水系に指定

平成2年  豊川水系フルプラン決定(設楽ダム等)

平成8年  実施計画調査中間報告(総貯水容量・1億m3

平成11年 豊川水系フルプラン一部改訂

平成11年 豊川水系河川整備基本方針決定

平成13年 豊川水系河川整備計画決定

平成15年 実施計画調査から建設事業へ移行

平成18年 豊川水系フルプランの全部変更(総貯水容量・9800万m3

平成18年 豊川水系河川整備計画の豊川水系フルプランの変更に伴う変更

3 設楽ダムの規模

 設楽ダムは、国土交通大臣が特ダム法に基づいて建設するダムである。設楽ダムの諸元については、特ダム法4条に基づく設楽ダム建設に関する基本計画において決定されなければならないが、現在まで、基本計画の決定はなされていない。国土交通省中部地方整備局は、平成8年に設楽ダムの基本計画のうち、規模、型式、貯留量とその内訳について案を発表し(旧計画案)、平成18年2月に豊川水系フルプラン改定に際して、そのうちの貯留量とその内訳を変更した。これらの内容は以下の通りである(「旧」は旧計画案である)。

1) ダム

型式:重力式コンクリートダム

堤高:129m

堤頂長:400m

2) 貯水池

集水面積:約62.km2

貯水面積:297ha

サーチャージ水位:標高444.0m

貯水容量

総貯水容量:9,800万m3         (旧)10,000万m3

洪水調節:1,900万m3          (旧) 1,900万m3

流水の正常な機能の維持等:6,000万m3  (旧) 5,700万m3

(流水の正常の機能の維持と豊川用水の利水安全度向上)

新規利水:1,300万m3          (旧) 2,000万m3

堆砂:600万m3              (旧)    400万m3

第3 設楽ダムの費用負担の仕組み

1 特定多目的ダムの用途(目的)別の費用負担の仕組み

1) 特定多目的ダムの費用負担は、まず、用途(目的ともいう、以下「目的」と

いう)別に費用負担額を決定する。特定多目的ダムにおいて、費用負担する目的は、水道、工業用水道、発電、かんがい、河川管理(治水関係)である。

 河川管理(治水関係)には、洪水等による災害発生の予防又は軽減を目的とする洪水調節と流水の正常な機能の維持又は増進(以下「増進」を略し、「流水正常機能維持」ともいう)がある。流水正常機能維持流量は既得の専ら自流取水をしている水利流量と河川維持流量を合わせたものとされ、ダム貯水容量としては利水容量に含まれているものであるが、費用負担においては、河川管理(治水関係)に含まれている。

 流水正常機能維持流量に含まれるのは既得の専ら自流取水をしている水利流量であるので、流水正常機能維持の目的には、水資源開発施設ダムによって開発された水利の利水安全度向上の目的は含まれていない。ダムによって開発された水利の利水安全度向上は、河川管理(治水関係)とは別に、ダムに依存する水利の利水安全度向上として、その受益を受けるダム依存水利の水道、工業用水道、かんがいにおいて費用負担をすべきものである。

 かんがいは、目的としては独立であって、新規利水容量に含まれているが、費用負担においては、河川管理に含まれ、その費用の一部(特ダム法10条1項、同法施行令12条によって10分の1)を、多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水をかんがいの用に供する者(以下「かんがい利用者」という)が負担する。

2) 建設費用の目的毎の費用負担額(用途毎の費用割振り、コストアロケーショ

ンといわれている)は、分離費用身替わり妥当支出法(特ダム法7条、同法施行令第1条の2〜第6条)によって決定される。

 設楽ダムの建設費用の各目的別の費用負担については、負担割合も負担額も、案としても、これまで全く明らかにされていない。

 しかし、各目的別の費用負担がないのではなく、分離費用身替わり妥当支出法によって算出される費用負担があるのであり、その費用負担額が公表されていないだけである。

2 特定多目的ダムの建設費用の負担者とその負担割合

1) 多目的ダムによる一定量の流水の貯留を一定の地域において確保する権利を

「ダム使用権」という(特ダム法2条2項)。ダム使用権の設定申請をした者で、特ダム法15条2項各号の要件を備える者が「ダム使用権設定予定者」である(特ダム法5条)。流水の貯留を利用して流水を特定用途に使用するには、ダム使用権と河川法23条による流水占用権(水利権)を有していなければならない(特ダム法3条)。

 「ダム使用権の設定予定者」は、建設費用につき、特ダム法7条1項により、当該使用権に係る目的についての分離費用身替わり妥当支出法によって求められた費用負担額を負担しなければならない。その費用負担額は、基本計画に定められる(特ダム法4条2項5、6号)。

 設楽ダムの目的うち特定多目的ダムの根拠となっている水道用水の確保に関しては、それは愛知県東三河地域の水道用水の確保を目的としている。そのため、ダム使用権設定申請をしてそれを取得する者は、東三河地域に水道用水を供給する愛知県水道用水供給事業を行う愛知県企業庁である。もっとも、豊川からの取水は豊川用水の取水施設を用いて独立行政法人水資源機構(以下「水機構」という)が行い、愛知県企業庁は水機構の施設から取水する可能性があるので、ダム使用権は水機構が取得する可能性があるが、その場合でも、設楽ダムによって確保された水道用水は、愛知県水道用水供給事業の東三河地域における水道用水の供給に使用するため専ら愛知県企業庁が取得するので、水道用水に係るダム使用権設定予定者の建設費用の費用負担金は愛知県企業庁が最終的に負担する。

2) 建設費用につき、特ダム法10条1項、同法施行令12条により、かんがい

利用者は、かんがい用途について分離費用身替わり妥当支出法によって算出された費用のうちの10分の1を負担しなければならない。なお、この負担金は、同条2項により、都道府県知事がかんがい利用者から徴収し、国に支払うとされており、国との関係では、都道府県が支払者である。

 設楽ダムの目的には新規農業用水の開発があるので、新規利水容量のうちのかんがいに関する部分について、かんがい利用者である農家は、建設費用の分離費用身替わり妥当支出法によって算出された額のうちの10分の1を負担しなければならない。

3) ダム等の水資源開発施設によって開発された水利の利水安全度向上の目的は、

流水正常機能維持の目的に含まれていない。これは、流水正常機能維持とは別のダム依存水利の利水安全度向上の目的であって、それによる受益者として利水安全度が向上するダム依存水利者が建設費用を負担すべきものである。

 設楽ダムの目的には、ダム依存水利である豊川用水の利水安全度の向上があり、そのために配分された貯水容量が流水正常機能維持容量に含まれている。上記のように、ダム依存水利の利水安全度向上は、流水正常機能維持とは別の目的であって、利水安全度が向上するダム依存水利者が負担すべきものであるので、豊川用水の利水安全度の向上の目的に係る建設費用の負担分は、豊川用水を利している水道用水、工業用水、および農業用水(かんがい)が負担すべきものである。水道用水は愛知県水道用水供給事業に、工業用水は東三河工業用水道事業にそれぞれ使用されているので愛知県企業庁が、農業用水は、上記したかんがいに関する費用負担の定めに従ったかんがい分の10分の1をかんがい利用者である農家が、それぞれ費用負担すべきものである。

4) 他の法律に特例の定めある場合を除いて、一級河川の管理に要する費用は国

とその管理区域の都道府県が負担し、都道府県は、その区域内における河川法施行令36条の2で定める大規模改良工事に要する費用の10分の3を負担する(河川法59、60条1項)。そして、特ダム法8条により、都道府県は、特定多目的ダムの建設費用の河川法60条1項による負担金として、建設費用額から上記ダム使用権設定予定者の負担金、かんがい利用者の負担金を除いた額、さらにダム依存水利の利水安全度向上に係るダム依存水利者の負担金を除いた額に、10分の3を乗じた額を負担する。

 設楽ダムは河川法法施行令36条の2で定める大規模改良工事に該当するので、その建設に関して、愛知県(一般会計)が負担するのは、建設費用から、ダム使用権設定予定者負担金、かんがい利用者負担金、豊川用水の利水安全度向上に係る豊川用水利用者の負担金を除いた額に10分3を乗じた額となる。

第4 新規利水(都市用水)

1 豊川水系水資源開発基本計画

 設楽ダムは、上記第2で述べたように豊川水系フルプランに基づいた水資源開発施設のダムである。

 豊川水系フルプランは平成18年2月に平成27年度を目標年とする現行の計画に変更された(現行のものはそのまま表記し、それ以前のものは前に決定年を付して表記する)。

 豊川水系フルプランでは、特ダム法で特定多目的ダムの目的となる都市用水(水道用水と工業用水)について、平成27年度の需要見通しと供給目標(いずれも最大取水量)を後記表の通り想定している。

 愛知県においては、水道用水として4.51m3/s、工業用水として1.38m3/sの需要を想定しているが、これは愛知県の需給想定調査に従ったものである。水道用水のうち、上水道のほかに、簡易水道(平成27年想定値)が、需要では、豊川水系依存量のうち0.10m3/s、他水系依存量のうち0.01m3/sの合計0.11m3/sあり、供給では、自流0.10m3/sおよび他水系0.01m3/sがある。簡易水道には、水資源開発施設依存量はないので、設楽ダムとの関係では、上水道のみを考慮すればよい。

 

2 愛知県 水道用水(上水道)

 1) 上水道需要量(最大取水量)の計算式

 上水道需要量は河川からの最大取水量によって表現されており、それは、日平均有収水量から以下の計算によって求められている。

日平均有収水量/有収率=日平均給水量m3/

(日平均給水量/給水事業者利用量率)86,400=給水事業者平均取水量m3/

給水事業者平均取水量/(水資源開発施設利用量率)=平均取水量m3/

平均取水量/負荷率=最大取水量m3/

 2) 日平均有収水量 m3/

 日平均有収水量のこれまでの実績は、平成3年は213.7、平成9年は224.4、以後横ばいで、平成15年は225.7である。

 これに対して、需要想定は、12年後の平成27年に249.8と、1.11倍に増加する想定である。

 3) 平均取水量 m3/

 平均取水量のこれまでの実績は、平成3年は2.84、平成9年は2.96、以後横ばいで、平成15年は2.98である。

 これに対して、需要想定は、12年後の平成27年に3.49と、1.17倍に増加する想定である。

 4) 最大取水量 m3/

 最大取水量のこれまでの実績は、平成3年は3.41、平成9年は3.49、以後横ばいで、平成15年は3.41である。

 これに対して、需要想定は、12年後の平成27年に4.42(豊川水系依存量は4.41)と1.30倍に増加する想定である。

 5) 評価

 以上の通り、平成27年想定値は、実績の傾向とは連続性がなく、それを無視したもので、平成27年最大取水量4.42m3/sは実績と乖離した過大な値となっている。実績値に基づいて精確に想定すれば、平成27年想定値はもっと小さくなり、豊川水系依存量は3.86m3/s程度、総量としては3.87m3/s程度である。

3 愛知県 工業用水

 1) 工業用水道需要量(最大取水量)の計算式

 工業用水道需要量は河川からの最大取水量によって想定され、資料のある従業者30人以上の事業所についての工業用水補給水量を基礎として、従業者30人以上の事業所の工業用水補給水量に同30人未満の事業所の工業用水補給水量を合計した工業用水補給水量から、河川からの工業用水道最大取水量が求められている。

工業用水補給水量 m3/

=工業用水使用水量原単位×工業出荷額×(1−回収率)

  回収率=工業用水補給水量/工業用水使用水量

(工業用水使用水量−工業用水補給水量)×工業用水道補給水源構成率

=工業用水道補給水量 m3/

工業用水道補給水量から工業用水道給水量に転換

工業用水道給水量/利用量率/86,400=平均取水量 m3/

平均取水量/負荷率=最大取水量 m3/

 2) 工業用水道給水量

@ 工業用水道補給水量(従業者30人以上事業所) m3/

 工業用水道補給水量のこれまでの実績は、平成2年が41.018で、平成5年の51.135がピークで、以後、減少して横ばいで、平成15年は38.611である。

 これに対して、需給想定調査では、平成27年に43.446、1.13倍に増加する想定である。

A 工業用水道給水量 m3/

 工業用水道給水量のこれまでの実績は、平成2年が31.990、平成5年の33.141がピークで、以後、減少して横ばいで、平成15年は30.350である。

 これに対して、需給想定調査では、平成27年に66.794と、2.2倍に増加する想定である。

 3) 工業用水道最大取水量 m3/

 工業用水道最大取水量のこれまでの実績は、平成2年が0.718、平成3年の0.759がピークで、以後、減少して横ばいで、平成15年は0.567である。

 これに対して、需給想定調査では、平成27年に1.378と、2.2倍に増加する想定である。

 4) 評価

 以上の通り、平成27年想定値は、実績の傾向とは連続性がなく、それを無視したもので、愛知県の最大取水量1.38m3/sは実績と乖離した過大な値となっている。実績値に基づいて精確に想定すれば、平成27年想定値はもっと小さくなり、愛知県では0.78m3/s程度、静岡県では0.17m3/s程度、合計量としては0.95m3/s程度である。

4 平成27年需給比較

 1) 需要

 需給想定調査では、平成27年の豊川水系に依存する愛知県の上水道と工業用水道の合計は5.79m3/s(静岡県を含めた豊川水系全体では6.04m3/s)である。これを実績値によって精確に修正すると、平成27年想定値は4.64m3/s(静岡県を含めた豊川水系全体では4.81m3/s)となる。

 2) 需給比較

 上記の精確に修正した豊川水系に依存する上水道と工業用水の平成27年の愛知県の想定需要量4.64m3/s(静岡県を含めた豊川水系全体では4.81m3/s)は、設楽ダムがない場合の豊川水系による愛知県の上水道と工業用水の供給量である開発水量7.21m3/s(静岡県を含めた豊川水系全体では7.61m3/s)と比較すると、2.57m3/s(静岡県を含めた豊川水系全体では2.80m3/s)と大幅な供給過剰である。また、この20年間に限定した近年20年で2番目の渇水年で、供給条件を設定した下での供給可能量とする4.85m3/s(静岡県を含めた豊川水系全体では5.10m3/s)でも、0.21m3/s(静岡県を含めた豊川水系全体では0.29m3/s)の供給過剰である。

 したがって、設楽ダムの水道用水は、その需要が認められず、必要性がない。

第5 新規利水(農業用水)

1 豊川水系水資源開発基本計画

 1) 需要

 豊川水系フルプランでは、平成27年の愛知県東三河地域において、農業用水の不足量が約0.34m3/sと想定され、これを新規需要量と想定している。

 その算出方法は以下のとおりとされている。

)、算出方法

a) 考え方

 水田・畑の消費水量(かんがい面積と単位面積当たりの消費水量から算定された水量)から有効雨量(農業用水として有効に利用できる降水量)を差し引いた純用水量を算出し、純用水量に損失率を加味した水量が当該地域において必要となる需要水量(粗用水量)である。粗用水量から地区内利用可能量(現況において当該地区内で利用が可能な水量)と既開発水量を差し引いて不足水量を求め、これを新規需要水量とする。

b) 計算式

 上記の考え方を計算式で表すと以下のようになる。

消費水量=水田・畑のかんがい面積×単位面積当たり消費水量

純用水量=消費水量−有効雨量

粗用水量=需要水量=純用水量/(1−損失率)

不足水量=粗用水量−(地区内利用可能量+既開発水量)

新規需要水量=不足水量

) 平成27年想定値と新規需要量

 上記計算式に用い、あるいはそれから得られた新規需要量までの想定値は下記の通りである。

かんがい受益面積:17,800ha

消費水量:215,540千m3 /

有効雨量: 52,784 m3 /

損失率:0.183

需要量(粗用水量):199,189千m3/

地区内利用可能量: 21,781千m3 /

既開発水量:166,683千m3 /

不足量=新規需要量:10,725千m3 /年。秒平均に換算し0.34m3/ s

  ハ) 平成27年新規水需要想定

 東三河地域の受益区域においては、以下のような営農改善と状況変化に対応するための水利用計画によって新たな水需要が発生し、その合計は上記した10,725千m3 /年である。

@ 畑作営農の増進 1,243千m3/

  ハウス栽培、トンネル栽培の作付け増進による畑地かんがいの対象面積

が増加する。

A 水田用水量の増加 5,311千m3/

  三河湾沿岸の干拓地の水田地帯の一部区域(神野新田地区)における排

水改良の進展による地下水位の低下によって、減水深(水稲栽培の単位面積当たりの消費水量)が増加する。

B 減少した地区内利用可能量の補完 4171m3/

  生活雑排水等の流入による水質悪化等によるため池等の地区内水源の利

用可能水量の減少により新たな水源確保が必要である。

 2) 供給

 農業用水の供給事業は下記の通りであり、上記新規需要水量0.34m3/sは設楽ダムにより供給する想定である。

                     事業名         取水量m3/s  (年間取水量千m3

新規     設楽ダム        0.34      10,725

既開発水量  豊川総合用水      1.50      47,434

       豊川用水(愛知・静岡) 4.75       150,206

合計                 6.59     206,365

(注) 取水量は年間平均取水量である。したがって、年間取水量は、[取水量×

86,400×366]によって求められる。

2 平成27年需給比較

 しかし、豊川水系フルプランが前提としている水需給は、以下の項目などにおいて過大であり、既設の供給施設によって供給が可能である。設楽ダムの農業用水は、その需要が認められず、必要性がない。

1) 耕地面積

 かんがいの対象となる水田、畑の面積はともに減少ないし横這い傾向にあり、受益面積は減少している。そのため、農業用水の需要は減少している。

2) 施設営農

 上記新規水需要想定のうち、畑作営農の増進の割合は12%であって、新規水需要想定値に占める割合は小さい。ハウス栽培やトンネル栽培の施設的営農が増加しても、滴下法などかんがいにおける節水も推進されており、需要増とは成り得ない。

3) 神野新田地区の減水深

 牟呂用水のかんがい区域である神野新田地区の減水深が増加していることも新規水需要の原因とされている。

 その原因は排水機を増強して排水量を増やしたため生じたものであり、排水量の調整により減水深の調整は可能である。さらに、神野新田地区は畑地転換の進展や非農地化により水田面積は減少しており、実際には水需要は増加していない。

4) 既開発水量

 上記の需要想定においては、既開発水量は166,683千m3 /年として計算されている。

 他方、供給においては、既開発水量は、豊川用水と豊川総合用水を合わせて年間平均取水量は6.25m3/sであり、年間取水量は197,640千m3である。豊川総合用水が平成14年度から供用開始し、豊川用水の年間総計画水量は197,000千m3として運用がなされ、平成14年度は192,000千m3の取水がなされている。

 取水量のなかには、愛知県のほかに静岡県の湖西用水のものも含まれているが、かんがい面積は、「豊川用水二期事業(変更)に係る事業再評価」での農地面積によれば、愛知県が17,556ha・97%に対して、静岡県は574ha・3%であって、その殆どが愛知県である。したがって、上記の供給における年間取水量197,640千m3はその殆どが愛知県のためのものである。

 そうすると、上記の需要想定での既開発水量166,683千m3/年は、上記供給における取水量197,640千m3/年に比べて30,957千m3/年(秒平均0.98m3/s)も小さいことになる。上記需要想定値の数値を前提としても、年間需要量(粗用水量)199,189千m3から地区内利用可能量21,781千m3を差し引きし、さらに上記取水量197,640千m3を差し引くと、20,232千m3が供給過剰となる。秒平均にすると0.64m3/sも供給過剰である。

第6 洪水調節

1 豊川水系河川整備計画

 設楽ダムによる洪水調節は、豊川水系河川整備基本方針を受けた豊川水系河川整備計画において位置づけられている。

 豊川水系河川整備基本方針では、洪水防御の対象となる基本高水流量を基準地点新城市石田において7,100m3/sとし、このうち流域内の洪水調節施設により3,000m3/sを調節して、河道への配分流量(計画高水流量)を4,100m3/sとしている。

 しかし、豊川水系河川整備基本方針における計画降雨に基づく上記基本高水流量は、その値が過大で対処不可能なことから事実上棚上げされ、豊川水系河川整備計画では、目標とする防御対象流量は、実績降雨に基づく戦後最大流量4,650m3/sとされている。

 豊川水系河川整備計画では、この防御対象目標流量4,650m3/sに対する設楽ダムによる流量低減効果を550m3/sと見込んでいる。

2 評価

1) 豊川は、基準地点の新城市石田より上流には、豊川本流の寒狭川(流域面積

314.33km2)のほかに大支流の宇連川(流域面積180.98km2)があり、豊川本流には海老川、巴川、当貝津川があり、その最上流に建設されるのが設楽ダムであり、その集水面積は62.km2である。したがって、宇連川の流域面積は豊川本流との合流後面積の37%ある。また、設楽ダムの集水面積は、基準地点新城市石田の集水面積の11.4%、豊川本流(寒狭川)の流域面積の20%に過ぎない。

 以上の集水面積からして、設楽ダムの新城市石田地点下流における洪水調節効果は限定的である。

 そして、豊川水系河川整備計画において設楽ダムによる洪水調節が想定する程度の河道流量低減効果を得るのには、不連続堤による遊水地の併用等の他の代替案もある。設楽ダム建設案は最適の洪水対策案ではない。洪水防御計画の決定として、ダム以外の代替案の検討を更に行わなければならない。

2) 本来、治水のあり方としては、いかなる大洪水に対しても壊滅的な被害の回

避・軽減を図ることこそが重要である。そのためには想定される洪水の防御のみならず、想定を上回る超過洪水に対しても壊滅的な被害を回避・低減する必要がある。破堤しにくい堤防などの堤防強化の外、不連続堤による遊水地、森林整備(緑のダムといわれる)の活用などによる流域対応が十分に活用されなければならない。

 豊川は、古来から不連続堤等の伝統的な治水技術を工夫、活用して、流域の地形等の特性を生かした流域対応治水を実践してきた地域であり、現在でも、左岸側には、上流より、江島、賀茂、下条、牛川の不連続堤による遊水地があって、洪水対策を担ってきている。このような不連続堤による遊水地は豊川流域の風土となっている。

 2000(平成12)年12月の河川審議会中間答申は、このような流域対応治水を21世紀の洪水対策として位置づけて、これから積極的に推進すべきものとしている。

 今日、河川の豊かな環境と文化・風土の後世への承継が強く求められており、河川整備においても、伝統的な治水方法を活用し、河川にかかわる豊かな環境と文化・風土を後世に承継しなければならない。

3) ダムは、上記第1で述べたように自然によるものとは違った重大な変化を自

然界に、さらには社会に与えるものであり、ダムによる問題解決は、他の方法による対応が不可能又は困難であるときにおいて、それが問題解決に有効な方法であるときに選択される最後の解決方法である。

 設楽ダムによる洪水調節効果は限定的であり、他方、設楽ダムなくして同様の効果の達成は可能であって、設楽ダム建設は洪水対策として最適の方法ではないのである。

第7 流水正常機能維持

1 「流水正常機能維持」とは

 流水の正常な機能の維持とは、本来河川が持っている機能を維持することをいい、その流量が流水正常機能維持流量または正常流量といわれている。本来河川が持っている機能とは、@各種廃水の希釈浄化、塩害の防止、河道の維持、河口の埋塞防止、又は舟運のための水位の保持、水生動植物の生存繁殖等、Aおよび専ら河川自流に依拠している既得用水の取水、と説明されている。流水正常機能維持流量は、@の維持流量とAの流水占用のために河川に確保すべき流量(水利流量)を満足する流量である。

2 豊川における流水正常機能維持と設楽ダムの流水正常機能維持容量

1) 豊川水系河川整備基本方針では、主要な地点における流水の正常な機能を維

持するために必要な流量として、牟呂松原頭首工地点下流における既得水利としては、水道用水として0.36m3/s、工業用水として0.84m3/sの合計約1.m3/sの許可水利があるとし、牟呂松原頭首工(直下流)地点における流水の正常な機能を維持するために必要な流量は、利水の現況、動植物の保護・漁業、塩害の防止などを考慮し、概ね5m3/sとする、とされた。

2) 豊川水系河川整備基本方針を受けて、豊川水系河川整備計画では、流水の正

常な機能の維持に関する目標として、豊川における動植物の保護、漁業、観光・景観、流水の清潔の保持といった河川環境の保全や塩害の防止、流水占用をしている既得用水の取水の安定化という流水正常機能維持につき、渇水時における河川環境の回復を図るため、牟呂松原頭首工直下流地点で5.m3/s、大野頭首工直下流地点で1.m3/sの制限流量(当該流量を下回るときには、自流を取水できない流量)を設定して河川流量の増加に努め流量を保全する、とされた。

 そして、設楽ダム計画では、流水正常機能維持の目的として、牟呂松原頭首工直下流地点の制限流量を現行の2.m3/sから5.m3/sに、大野頭首工直下流地点の制限流量を現行の0m3/sから1.m3/sに各引き上げ、河川流量を確保し、河川環境を保全するとしている。

3) 豊川では、現在、豊川用水の取水制限流量として、牟呂松原頭首工直下流地

点で2.m3/sと設定されているだけで、大野頭首工直下流地点では制限流量は設定されていない。

 したがって、宇連川の大野頭首工の下流では水が全く流れない、水涸れ状態が発生している。

 豊川の水量が著しく少なくなってしまったのは、豊川用水の大野頭首工からの取水に関して、同頭首工下流の河川維持流量を考慮せず、同頭首工直下流の取水制限流量を定めなかった(いずれも、ゼロとした)ことに原因があるのである。豊川用水が豊川の流水正常機能を無視して取水しすぎているのである。

4) 設楽ダムは、総貯水容量は9,800万m3で、有効貯水容量9,200万m3

うち、流水正常機能維持容量に6,000万m3が配分されている。有効貯水容量のうち、65%もが流水正常機能維持容量である。特定多目的ダムの目的となる水道用水には、新規利水容量約1,300万m3の52分の18の容量(約450万m3)、有効貯水容量の5%しか容量配分されていない。

 このような過大な流水正常機能維持容量は、ダム貯水計画として極めて異常な貯水容量配分である。

3 流水正常機能維持のためにダム建設をすることの矛盾

1) 上記第1で述べたように、ダムは堤体によって流れを遮断し、その上流に大

規模な水没地を生じさせる。流れの遮断による影響は、ダムの上流と下流だけでなく、流量と土砂供給の減少などにより、ダムが建設される河川が流入する海にまで及ぶ。水没によってダム湖が形成され、ダム上下流の水域環境が悪化する。ダムは、ダム湛水域だけでなく下流域、その先の海域にまで、自然によるものとは違った重大な変化を与えるのである。

 河川下流における流水正常機能維持のために河川流量を確保し、河川環境を保全する目的でダムを建設することは、上記した重大な環境悪化をもたらす。河川下流における流水正常機能維持による河川環境の保全とダム建設による環境悪化とは、相互に補完しあう関係や代替あるいは代償する関係にない。

 流水正常機能維持のためにダムを建設するのは、ダム建設によってより大きい環境悪化を生じさせるのであって、環境対策として矛盾しており、誤りである。

2) 豊川用水受益地域の農業用水は、過剰かんがいと水管理ロスがあり、これら

を改善することは可能であり、現状を下回る取水量でかんがいができるのである。また、水田の減少が進んでいるので、必要水量はさらに減少する。そして、平成13年度に豊川総合用水事業が完成して以降は、豊川用水は安定して供給余剰になっている。

 河川流量を奪った豊川用水の水利用を合理的にすることによって、河川維持流量の確保の問題を解決すべきであるし、しなければならない。河川環境を保全する流量のために巨大ダムを造ればより大きな環境破壊が引き起こされるのであって、不合理である。

4 豊川用水の利水安全度の向上

1) 近年の少雨化傾向により、豊川用水の現況施設による近年20年のうち2番

目の渇水年における供給可能水量は、当初計画の約62%にとどまることとなったが、設楽ダムを加えることによって、10年に一度の渇水年においても、想定需要量を安定して取水することができると説明されてしている。

2) この豊川用水の利水安全度の向上の目的は、河川維持流量と既得水利流量を

合わせた流水正常機能維持流量のための流水正常機能維持の目的ではなく、それとは別のダムに依存する豊川用水のためのものであり、そのための貯水容量である。

 したがって、豊川用水の利水安全度の向上の受益は、専ら、豊川用水から取水している者が受けるので、豊川用水の利水安全度向上のための容量の費用負担は、これらの者が負担すべきものである。豊川用水の利水安全度、つまり取水可能量を計画基準年ではなく、それを下回る近年20年で2番目の渇水年に対応するために、増強するものであるから、当然のことである。

3) 「近年の少雨化傾向」というが、長期的な傾向として少雨化が進んでいると

はいえない。豊川の年流量は70年代後半から80年代にかけて減少傾向にあったが、少雨化傾向は見当たらないのである。

4) 上記第4と第5で述べたように、都市用水につき、近年20年の2番目の渇

水年で想定需要量が現在施設の供給量を上回るのは、想定需要量が過大なためと設定した供給条件のためである。想定需要量を精確にすれば、設定した供給条件でも、現在施設で供給が可能なのである。

 平成13年度に豊川総合用水事業が完成して以降は、豊川用水の供給は安定してきている。開発水量としては現在施設で供給過剰であり、無駄なく効率的に施設を使用するために、供給力をこれ以上大きくすべきでない。

 豊川水系では、特に農業用水は過剰取水しているのであり、過剰かんがいと水管理ロスを改善すれば、さらに水需要量は減少する。

 したがって、豊川用水の取水の安定化は、現況施設で十分に対応できるのであって、そのために新たなダムは必要でない。豊川用水の利水安全度向上の目的のダムを設けないことによって、豊川用水からの取水者の費用負担がなくなり、費用負担の面からも合理的である。

第8 環境への影響

1 水没地域の生態系とその破壊

1) 設楽ダムのダム湖予定地および周辺では、ネコギギ、クマタカをはじめとす

る多くの絶滅危惧種が生息・生育している。

 愛知県環境部が2001年12月に発表した「設楽ダム調査区域内で確認された重要種」によると絶滅危惧TB類に指定されているものが、鳥類ではクマタカ、ミゾゴイ、魚類ではネコギギ、ナガレホトケドジョウ、絶滅危惧U類に指定されているものが、植物ではミズニラ、ヤマシャクヤク、ミズマツバ、マメヅタラン、ムギラン、エビネ、ナツエビネ、キンラン、クマガイソウ、哺乳類ではニホンテングコウモリ、鳥類ではサシバ、魚類ではアカザ、また準絶滅危惧に指定されているものが、植物ではタチキランソウ、アギナシ、鳥類では、オオタカ、ハチクマ、ハイタカが確認されている。

 とりわけ、ネコギギは、伊勢湾と三河湾に流入する河川にしか生息しておらず、国の天然記念物に指定されている。ネコギギは、きれいな流水を好むことに加え、岸辺の入り組んだ場所を生息地としているため、河川の改修、水質の悪化、農業用水路の三面コンクリート化などの影響で生息域が大幅に減少しており、豊川、さらに三河湾流入河川において、設楽ダムの水没予定地が最大規模の生息地といわれている。

 また、生態系の頂点に立つ猛禽類である絶滅危惧TB類に指定されているクマタカと準絶滅危惧に指定されているオオタカの生息が確認されており、生態系として良好な状態であることが示されている。この2種の猛禽はいずれも「絶滅の恐れのある野生動植物の保存に関する法律」の指定種であり、地方公共団体は、種の保存のための施策を策定し、実施しなければならない義務を負っている。

2)、設楽ダムの建設と水没によって、水没地とその周辺の生態系が大きく破壊さ

れ、上記した絶滅危惧種は生息と生育に壊滅的な打撃を受ける。

2 河川環境とそれへの影響

1) 豊川水系のうち、大支川の宇連川が宇連ダムや大野頭首工等で人工化された

のに比べ、豊川本流(寒狭川)は、下流にある寒狭川頭首工を除いて、流れを遮断する大規模な施設がなく、河川の自然状態が残されている。

 設楽ダム建設予定地が位置する上流部は、スギ・ヒノキの人工林が主体で、中央構造線を挟んで領家変成帯、三波川変成帯及び設楽火山層が入り組む複雑な地質や地形となっている。河岸は自然崖とそこに分布するアラカシ−ウラジロガシ群落、ケヤキ−ミヤマクマワラビ群落等の河畔植生がせまり、河道は渓流を呈して、良好な環境を形成している。

2) 設楽ダムの建設によって、河川環境に以下のような影響を及ぼすことが予想

される。

@ ダム貯水による水没によって、水没地の河畔植生は完全に失われる。

A ダム湖では富栄養化とヘドロの発生、および水温の低下と濁りの発生が生

じる。このことはダム湖内の生物に影響を与えるほか、ダム下流の豊川本流の水質悪化をもたらし、そこに生息する生物にも影響を考える。

B ダム貯水により、ダム下流への出水が減って川底の洗浄作用が衰えるため、

アユのように、付着藻類を出発点とする河川生態系の生物相に大きな影響を与える。

  また、出水が減少することは、サツキのように出水時に水をかぶる河畔に

生育し、出水による攪乱の下で生育している植物への影響もある。

C ダム貯水により、豊川下流域では、河川流量の減少によって、水質汚濁と

塩水化が進み、魚類や底生生物へ影響を与える。

3 豊川と三河湾および三河湾への影響

1) 豊川は、渥美半島に囲まれていて閉鎖性の強い三河湾東部(渥美湾)の奥に

注ぎ込む唯一の大河川である。

 現在、三河湾東部(渥美湾)は、我が国で有数の富栄養化による水質汚濁が生じている内湾である。湾内に流入する窒素やリンによる富栄養化に起因する植物プランクトンの異常発生である赤潮が頻発し、底層に有機物が堆積している。湾内水の成層化が生じやすい夏季には底層に貧酸素水塊が形成され、それによって底層の窒素とリンが溶出して表層の富栄養化が進んで植物プランクトンが増殖し、その異常発生による赤潮、貧酸素水塊が風によって浅い水域に湧昇して魚介類を死滅させる苦潮(青潮)が生じ、また底層に有機物を堆積させる。そして以上が再び繰り返されるという水質汚濁の悪循環が生じている。

 内湾では、低層を密度の大きい外海水が湾口から湾奥に入り、表層を河川水含んだ密度の小さい湾内水が湾奥から湾口に向かい、その間に低層から表層への連行を起こす、密度流による鉛直循環流が生じて、湾内水の外海水との交換が促されて、水質環境が良好なものに保たれている。この密度流を引き起こす力となっているのが、湾奥に流入する河川であり、三河湾では豊川である。豊川用水の供用による豊川の流量の減少によって、鉛直循環流の流量が低下したことが三河湾の水質汚濁の原因の一つである。

 また、三河湾では、豊川から供給される土砂によって干潟や浅瀬が形成されている。干潟や浅瀬は三河湾の水質を浄化をしており、浚渫、埋立などによる干潟や浅瀬の減少も、三河湾の水質汚濁の原因である。

 このように、豊川は三河湾の環境に大きな影響を与えているのであり、豊川と三河湾は水域ないし水圏として一体のものである。

2) 設楽ダムの建設と運用により、豊川の流量がさらに減少する。

 そのため、三河湾での湾内水の外海水との交換はいっそう悪化し、三河湾の更なる水質悪化を招くことが予想される。

4 設楽ダムの環境影響評価

1) 豊川水系河川整備計画は、「河川環境の整備と保全に関する事項」において、

「ダム建設に伴い環境に与える影響に対しては、環境影響評価法の手続きに従って調査および予測評価し、工事による直接的な影響だけでなく、周辺環境への影響を含め、環境に与える影響の回避、低減、または代償のための措置を行う」と定めている。

 そして、設楽ダムに関する環境影響評価手続が、平成16年11月の環境影響評価の方法書の縦覧開始によって始まっており、これまでに、同方法書に対する意見書の提出、環境影響評価準備書の縦覧とこれに対す意見書の提出がなされ、本訴提起時現在においては、環境影響評価書の作成中である。

2) 上記のように、豊川の三河湾への流入流量は三河湾の水質に大きな影響を与

えることが、これまでの知見によって分かっている。設楽ダムの建設と運用による豊川の流量の減少は、三河湾の水質汚濁を悪化させることが予想される。

 したがって、設楽ダムの環境影響評価においては、設楽ダムの建設と運用による豊川の流量の変化が三河湾の水質に影響を与えないかを調査して予測、評価しなければならない。

 設楽ダムの環境影響評価の方法書に対する意見でも、愛知県知事を始めとして多く者から、設楽ダムの建設と運用による三河湾への影響を環境影響評価の対象にすべきであるという意見が出された。

 しかし、実施された環境影響評価では、設楽ダムの建設と運用による三河湾への影響は対象とはされず、全く調査と予測、評価がなされなかった。

3) 上記のように、設楽ダム予定地は絶滅危惧TB類で国指定の天然記念物であ

るネコギギの主要な生息地であり、設楽ダムの建設と運用はその生息に大きな影響を与える。

 設楽ダムの環境影響評価では、ネコギギについては、代償措置として、流域内の他の場所への移し替えることとされている。しかし、ネコギギがそのような移し替えによって生息できることは何ら実証されていない。

4) 上記のように、設楽ダム予定地では、生態系の頂点立つ絶滅危惧TB類のク

マタカ、絶滅危惧U類のサシバ、準絶滅危惧のオオタカの生息が確認されている。

 設楽ダムの環境影響評価では、クマタカを代表種として生態系に関する影響評価がなされているが、生態系としての調査と評価が不十分である。サシバ、オオタカについては、生態系に関する影響評価の対象とせず、その調査と評価がなされていない。

5 まとめ

 以上の通り、設楽ダムの建設と運用は、ネコギギ、クマタカなどの絶滅危惧種の生息と生育、水没地域とその周辺の生態系、ダム上下流から河口までの河川環境、さらに三河湾の環境に大きな影響を与える。これらについて、設楽ダムの環境影響評価では、調査評価が全くなされていなかったり、保全が実証されていない。

 設楽ダムの建設と運用は、環境に大きな影響を与えるうえ、その影響を回避、低減、補償(代償)することも明らかにされていないのである。

第9 設楽ダムについての費用負担等の財務会計上の違法性と本訴提起

1 設楽ダムについての権利取得、費用の負担と支出の財務会計上の違法性

1) ダムは、上記第1で述べたように自然によるものとは違った重大な変化を自

然界に、さらには社会に与えるものであり、ダムによる問題解決は、他の方法による対応が不可能又は困難であるときにおいて、それが問題解決に有効な方法であるときに選択される最後の選択肢である。

 設楽ダムについて権利の取得、費用の負担や支出をしたりするときは、常にこれを前提として判断しなければならない。

2) 設楽ダムによる水道用水(上水道用水)の供給は、その需要が認められない。

 水道用水の供給は、地方公営企業の水道事業として、料金収入による独立採算の地方公営企業特別会計(水道事業会計)によって経理しなければならない。愛知県内においては、愛知県では愛知県企業庁による愛知県水道用水供給事業、そこから受水する市町においてはその水道事業において、需要に応じて水道用水または水道水を供給して料金収入を得て、その独立採算で設楽ダムの水道用水の建設費用負担金を支弁しなければならない。需要がなくて開発水が使用されなければ、それに対応する料金収入がないので、費用負担金を支払うべき資金を生み出せず、収支が均衡しないことになる。

 したがって、需要の認められない水道用水の供給水源を確保することは、費用負担金を支払うべき収入のない投資をすることであって、収支の均衡がとれておらず、ダム使用権について権利を確保したりその建設費用を負担することは予算執行の適正確保の見地から看過できないものであり、財務会計上違法である。

3) 設楽ダムによる農業用水の供給は、その需要が認められない。

 農業用水の供給は、その受益者は専らそのかんがい利用者であり、その建設費用のうちの農業用水負担分は、本来は、かんがい利用者が負担すべきものである。特ダム法では、かんがいつまり農業用水の供給は河川管理とされ、かんがい利用者は建設費用のうちのかんがい(農業用水)負担分の10分の1だけを負担するだけであり、その残りの額の10分の3を都道府県、設楽ダムでは愛知県が負担する。特定の者の受益を公費で負担するこのような費用負担の仕組みは正常な費用負担のあり方ではないので、農業用水の供給の必要性は特に厳格に認定されなければならない。

 したがって、それによる供給を必要とする農業用水の需要が厳格に認めらて初めて、公費によって都道府県、設楽ダムでは愛知県が農業用水の費用負担をする財務会計上の理由が承認されるのである。上記のように設楽ダムでは、それが認められないので、愛知県がその費用負担をすることは予算執行の適正確保の見地から看過できないものであり、そのような費用負担は財務会計上違法である。

4) 上記したように、ダムは自然によるものとは違った重大な変化を自然界に、

さらには社会に与えるものであり、ダムによる洪水調節は、他の洪水対策による対応が不可能又は困難であるときにおいて、それが問題解決に有効な方法であるときに選択される最後の方法である。

 したがって、これらの検討がなされていて、いずれもが認められるとき、初めて、洪水調節のダムは、それを洪水対策として実施することが承認されるのであって、都道府県においてダムの洪水調節についての費用を負担をすることが財務会計上認められるのである。これらが認められなければ、都道府県がその費用負担をすることは、予算執行の適正確保の見地から看過できないものであり、その費用負担は財務会計上違法である。

 設楽ダムによる洪水調節効果は限定的であり、他方、豊川水系河川整備計画において設楽ダムによる洪水調節が想定する程度の河道流量低減効果を得るのには、不連続堤による遊水地の併用等の他の代替案もある。設楽ダム建設案は最適の洪水対策案ではなく、他の代替案の検討をしなければならない。そうすると、愛知県が設楽ダムの洪水調節についての費用を負担をする理由は認められず、愛知県がその費用負担をすることは予算執行の適正確保の見地から看過できないものであり、その費用負担は財務会計上違法である。

5)) 河川下流における流水正常機能維持のために河川流量を確保して、河川環

境を保全する目的でダムを建設することは、ダム予定地はいうにおよばず、その周辺、上下流、さらに海にも重大な環境悪化をもたらす。河川下流における流水正常機能維持とダムによる環境悪化とは、相互に補完しあう関係や代替あるいは代償関係もない。流水正常機能維持のためにダムを建設するのは、ダム建設によってより大きい環境悪化を生じさせるのであって、環境対策として矛盾しており、マイナスであって、誤りである。そのうえ、設楽ダムは、流水正常機能維持容量が有効貯水容量の65%を占めるという異常な目的および容量配分のダムである。

 流水正常機能維持のための設楽ダムの建設は、公共投資として全く合理性を欠いており、その費用負担は、予算執行の適正確保の見地から看過できないものであり、財務会計上違法である。設楽ダムに関する流水正常機能維持のための愛知県の建設費用の負担は、予算執行の適正確保の見地から看過できないものであり、愛知県がその費用負担をすることは財務会計上違法である。

) 豊川用水につき、近年20年の2番目の渇水年で想定需要量が現在施設の

供給量を上回るのは、想定需要量が過大なためであり、想定需要量を精確にすれば、現在施設で供給が可能なのであって新たなダムは必要性がない。豊川用水の利水安全度向上の目的のための設楽ダムの建設は必要でない。

 そして、豊川用水の利水安全度の向上の受益は、専ら豊川用水とそこから取水している者が受けるので、その費用負担は、これらの者が負担すべきものである。

 豊川用水の利水安全度向上のための設楽ダムの建設は、公共投資として必要性が認められず、その費用負担をすることは予算執行の適正確保の見地から看過できないものであり、愛知県企業庁による水道事業および工業用水道事業として、その費用負担は、予算執行の適正確保の見地から看過できないものであり、財務会計上違法である。さらに、愛知県一般会計がその費用を負担することは、予算執行の適正確保の見地から二重に看過できないものであって、財務会計上二重に違法である。

6) ダムの建設と運用が環境に与える影響は、ダム予定地だけでなく、その周辺、

上下流、さらには海にも及ぶ。そして、ダム建設に際しては、環境影響評価法に従って、環境に与える影響について調査および予測、評価し、工事による直接的な影響だけでなく、周辺環境への影響を含め、環境に与える影響の回避、低減、または代償のための措置を行なわなければならない。

 設楽ダムの建設と運用は、水没地域とその周辺のネコギギ、クマタカなどの絶滅危惧種の生息と生育、および生態系その他の環境、ダム上下流から河口までの河川の環境、さらに三河湾の環境に大きな影響を与える。これらについて、設楽ダムの環境影響評価では、三河湾への影響のように影響評価が全くなされなかったり、ネコギギのように保全が実証されていないなど、十分な調査、予測、評価がなされていない。設楽ダムの建設と運用は、環境に大きな影響を与えるうえ、その影響を回避、低減、補償(代償)することも明らかにされていないのである。

 したがって、設楽ダムは、公共事業として実施できる水準にないのであり、このような事業に対して愛知県企業庁および愛知県が権利を取得したり費用負担をすることは、予算執行の適正確保の見地から看過できないものであり、その権利の取得や費用負担は財務会計上違法である。

2 本訴提起

1) 被告愛知県企業庁長は、愛知県企業庁が地方公営企業として行っている愛知

県水道用水供給事業および東三河工業用水道事業の管理者として、水道用水のダム使用権に関して、ダム使用権の設定申請その他そのダム使用権によって水道用水を取水する権利の取得に関する権限、および、特定多目的ダムに係る建設費用負担金のうち、水道用水に係る負担、およびダム依存水利の利水安全度向上に係る負担のうち水道用水と工業用水の負担分についての支出に関する権限を有している。

 被告愛知県知事は、特定多目的ダムに係る建設費用負担金のうち、かんがいに係る負担、洪水調節に係る負担、流水正常機能維持に係る負担、ダム依存水利の利水安全度向上に係る負担について、支出に関する権限(支出命令発令)を有している。

2) よって、原告らは、上記の違法を理由として、請求の趣旨を内容とする住民

監査請求を地方自治法242条1項に基づいて愛知県監査委員に対してなしたが、却下されたので、請求の趣旨の通りの判決を求めるため本訴を提起する。

 

立   証   方   法

口頭弁論で必要に応じて提出する。

 

付   属   書   類

1.訴訟委任状   169通

 

2.原告目録 

 

--------------------------------------------------------------------------------

(訴訟委任状は、次のとおりです。)

 

               訴  訟  委  任 

 

名古屋市中区丸の内3丁目7番27号      弁護士 原  田  彰  好

名古屋市中区丸の内3丁目7番17号      弁護士 在  間  正  史

名古屋市中区錦3丁目7番13号        弁護士 竹  内  裕  詞

名古屋市中村区則武1丁目10番6号      弁護士 樽  井  直  樹

名古屋市北区御成通2丁目1番1号       弁護士 白  川  秀  之

名古屋市熱田区神宮2丁目6番16号      弁護士 濱  嶌  将  周

名古屋市守山区中新10番8号         弁護士 魚  住  昭  三

名古屋市中区丸の内3丁目4番30号      弁護士 石  和  康  宏

名古屋市西区城西1丁目12番12号      弁護士 籠  橋  隆  明

福井県敦賀市布田町84−1−18       弁護士 笠  原  一  浩

 

 私は、上記の者を訴訟代理人と定め、下記の事項を委任します。

 

 (当事者) 愛知県知事  愛知県出納長  神田真秋

 (裁判所) 名古屋地方裁判所

  (事 件) 設楽ダム公金支出差止等請求事件

 

 上記当事者間の上記事件に関する一切の訴訟行為

1 和解、調停、請求の放棄、認諾、復代理人の選任

1 民事訴訟法第48条(第503項、第51条において準用する場合を含む)の規定による脱退

1 反訴、控訴、上告、上告受理申立、又はこれらの取下及び訴の取下

1 民事訴訟法第360条(第3672項、第3782項において準用する場合を含む)の規定による異議の取下又は取下の同意

1 弁済の受領に関する一切の件

1 代理供託並びに供託物・同利息の払渡請求及び受領に関する一切の件

 

   2007(平成19)年3月14日

 

              

,                               

               名                      ,

                                                                        

 

(愛知県監査委員への監査請求内容は、下記の愛知県職員措置請求書のとおりです。)

 

愛知県職員措置請求書

2007年1月30日 

愛知県監査委員 御中

 請求人は、地方自治法第242条第1項の規定により、事実証明に関する文書を添え、下記の弁護士に委任して、必要な措置を請求する。

請求の趣旨

1 設楽ダムは国土交通大臣が特定多目的ダム法(特ダム法)に基づいて建設するダムである。設楽ダムの貯水容量と開発水量は以下の通りとされている。

   設楽ダムの目的別貯水容量と開発水量   単位:万m3、水道・農業用水開発水量はm3/s

 

 目的別容量区分

 (字下げは内訳)

旧フルプラン

       2006年フルプラン

容量

容量 (開発水量)

対総容量率

対有効容量率

総貯水容量

10,000

  9,800

     1.00

有効貯水容量

   9,600

  9,200

     0.94

     1.00

  洪水調節容量

   1,900

  1,900

     0.19

     0.21

   利水容量

  7,700

  7,300

     0.74

     0.79

      新規利水

  1.30

     0.13

    0.14

        水道用水

  (0.18)

     0.05

     0.05

        農業用水

  (0.34)

     0.09

     0.09

     流水正常機能維持

  6,000

     0.61

     0.65

堆砂容量

      400

      600

     0.06

2 設楽ダムの特ダム法4条に定める基本計画は現在作成中であるが、概算事業費は2000億円とされている。各目的別の費用負担額は分離費用身替妥当支出法によって算出されることになっているが、具体的な費用負担額は明らかにされていない。

 特ダム法及び河川法によれば、愛知県の費用負担は、@水道用水について、水道用水供給事業者として企業庁が負うダム使用権設定予定者の費用負担額、A農業用水について、かんがい目的費用負担額から利用者負担額を差し引いた額の10分の3、B流水正常機能維持及び洪水調節目的について、それぞれの費用負担額の10分の3である。

3 平成18年策定の豊川水系水資源開発基本計画(フルプラン)での目標年の平成27年における水需給の見通しは、都市用水の豊川水系の需要量は6.14m3/sであり、開発水量は7.89m3/s、近年2/20供給量は6.47m3/sであって、うち、設楽ダム供給量は0.18m3/sである。水資源開発として、設楽ダムがなくても供給過剰である。また、農業用水については、豊川水系の需要量は0.34m3/sとされ、その原因は将来における営農改善のための水利用計画による需要増加とされているが、そのような需要増加は見込まれず、既存の豊川用水と豊川総合用水6.25m3/sによって供給が可能である。以上の通り、設楽ダムの新規利水は使用の見込みがない。

 流水正常機能維持については、その容量は有効容量の65%、治水関係容量の76%を占め、異常に容量が大きく、設楽ダムの建設理由を支える主目的となっている。流水正常機能維持は、河川環境として最低必要な流量の確保であり、設楽ダムで環境破壊をして行うことになって、環境保全対策として矛盾しているし、その利益は限定されていて設楽ダムによる多様な損失より小さい。このような流水正常機能維持は目的として誤っている。そのうえ、設楽ダムにより三河湾の水質汚濁がひどくなり、その検討もされていない。また、貴重種、特にネコギギが壊滅的影響を受ける。

 洪水調節については、未だ、洪水対策として最適な案の検討を経ていないのであり、設楽ダムが洪水対策の最終案ではない。他の代替案との比較検討が必要である。

 以上の通り、設楽ダムの愛知県の費用負担は、各目的とも違法な費用負担であって、負担の義務がなく、負担金を支出すべきではない。

4 よって、設楽ダムの愛知県の費用負担金につき、@支出しない、A国(国土交通省)に対する負担義務の不存在の確認請求、B支出されたときは支出職員に対する損害賠償請求、Cその他必要な措置、以上の措置を求める。

事実証明に関する文書

1 『平成18年豊川水系水資源開発基本計画の需給想定』とその出典資料

2 2006年10月23日新聞記事(朝日新聞、中日新聞)

委  任

【代理人】

名古屋市中区丸の内3丁目7番27号      弁護士 原  田  彰  芳

名古屋市中区丸の内3丁目7番17号      弁護士 在  間  正  史

名古屋市中区錦3丁目7番13号        弁護士 竹  内  裕  詞

名古屋市中村区則武1丁目10番6号      弁護士 樽  井  直  樹

名古屋市北区御成通2丁目1番1号       弁護士 白  川  秀  之

名古屋市熱田区神宮2丁目6番16号      弁護士 濱  嶌  将  周

名古屋市守山区中新10番8号         弁護士 魚  住  昭  三

名古屋市中区丸の内3丁目4番30号      弁護士 石  和  康  宏

名古屋市西区城西1丁目12番12号      弁護士 籠  橋  隆  明

【委任事項】

 設楽ダムに係る愛知県の費用負担金についての地方自治法第242条第1項に基づく支出差止、国に対する負担義務不存在確認請求、損害賠償請求その他必要な職員措置の請求について、次の事項

 1、措置請求、証拠の提出、意見陳述その他一切の措置請求に関連する行為 

 2、措置請求の取り下げ、復代理人の選任

 

請求人

 

      住          所

  氏    名

職 業