AMAで走っている頃から、お互いによく知っている。
USカワサキ時代はチームメイト、84年にはグランプリのパドックでまだ少なかったアメリカ人の友人同志・・・
そしてこの年、エディ・ローソンとウェイン・レイニーはグランプリの最高峰で、タイトルを賭けて真っ向からバトルをすることになった
開幕からシュワンツと2人でスペクタクルなレースを繰り広げるレイニーに対し、この年ホンダにスイッチしたローソンもようやく調子を上げてきた。そしてこのホッケンハイムで、2人は1対1での優勝争いをすることになった
レース中盤まで2人に食らいついていったシュワンツがマシントラブルでリタイアすると、ローソンとレイニーは3位以下を毎ラップ1秒以上も離してのハイスピードバトルを続ける
そして最終ラップ。オスト・カーブでレイニーがローソンを刺すが、続くストレートではNSRのトップスピードを活かしローソンが再び前に出る
シケインでもレイニーを押さえたローソンが、続くストレートからインフィールドにトップで帰ってくる・・・誰もがそう思ったとき、アジップカーブでレイニーのYZRがローソンのインに飛び込んできた
パーフェクトなブレーキングでローソンの前に出たレイニー。彼はあえてシケインの進入でローソンを刺さず、そのまま真後ろに付くことでローソンのスリップを利用し、ワンチャンスに全てを賭けたのだった
ローソンのお株を奪うレイニーの見事なタクティクス・・・しかし、ローソンの本当の”凄み”は抜かれた後のインフィールドでの走りだった
レイニーの大奮闘にわき上がるインフィールド。そんな中、ローソンはアジップカーブで無理にブロックをせず、そのまま続くザックスカーブでレイニーの背後にピタリと付ける。そしてこれまでのどのラップよりも鋭い角度のラインで、最終のオペルカーブに向けて激しくスロットルを開けるローソン
アジップカーブの進入でレイニーに前に出られた瞬間、彼のコンピューターはすでに最終コーナーを立ち上がってからフィニッシュラインまでの間で前に出るための計算をしていたのだ
オペルカーブのクリッピングポイント付近で、予定よりもわずかに多くリアをスライドさせてしまった彼のNSRは、0.27秒レイニーに届かなかった
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