スーパーヘテロダイン方式ラジオの製作(2018.10.11)
   昨年高一ラジオを製作したので、今度はスーパーヘテロダイン方式でラジオを製作してみようと思いました。アンテナコイルと局発コイルは入手困難な専用部品を使用せず、代用品で製作しました。

ケース正面

バーアンテナは回転式
回路方式
 
回路は、1970年代に購入した誠文堂新光社発行の「初歩のラジオ技術」という本に掲載されていた奥沢清吉氏による「5球スーパーラジオの設計」という記事を参考に設計しました。奥沢氏の記事は完成した回路図を提示するのでなく、自分で考えて回路定数を決定することができるように書かれており、大変良い記事だと思います
 本機では整流管を使用せず、低周波増幅部分は複合管(6BM8)を使用することにしたので、3球構成になりました。一般的な回路図ではアンテナコイルは6BE6に直接接続されていますが、本機では異なっています。バーアンテナをケース上部に取り付け回転させたかったので、万一アンテナ配線が断線した場合にも6BE6の第3グリッドの電位が定まるようにアンテナコイルは15pFのコンデンサ介して接続し、6BE6の第3グリッドには1MΩの抵抗を介してAGC次回路に接続してあります。アンテナコイルのQが低下することを心配しましたが、特に不都合は生じていません。使用したトランスの電流容量が小さかったので、6BM8は電流を絞って使用しています。なお、電源トランスの0-250V間をブリッジ整流した場合、電源投入直後の電圧がケミコンの耐圧である350Vをわずかに上回ってしまったので、0-6.3V巻き線を利用して電圧を下げています。回路図はこちら 

コイルの製作
 5球スーパー用の既製品コイルは近年入手困難になっていますので、アンテナコイルは長さ120mm、直径10mmのフェライトバーを購入して手巻きすることにしました。リッツ線を47回巻きつけたら所定のインダクタンス(約210μH)を得ることができました。インダクタンスを測定するためにLCR40というLCRメータを購入して使用し、大変重宝しましたが、既製品のコイルより高い値段でした。
 また、局発コイルは一般の可変コイルとインダクタを使用してみました。可変インダクタとして販売されていた100μHのコイルと10μHのマイクロインダクタを直列に接続して、接続点をコイルのタップとみなして使用しています。既製品の局発コイルと同様に使用できました。局発回路のバリコンに直列で接続されるパディングコンデンサも入手困難になっていますが、これはトランジスタラジオ用のポリバリコンで代用しました。2連バリコンとIFTは中学生の時に製作した短波受信機の残骸から流用しています。

ケースの設計
 
高一ラジオやAMトランスミッタでも試みた木製ケースを採用しました。今回は立方体ではなく、縦長の直方体にしています。ケースの桐集成材は、指定した寸法に加工してくれる通信販売のサイトを利用して入手しました。

ダイヤルのデザイン
 ラジオのケースで面白いのはダイヤルのデザインだと思います。今回は糸掛け式のダイヤルを採用しました。通信機風に黒い枠をつくり、周波数表示のあるドラムが回転する方式を採用しています。ダイヤル糸の方向を変えるのに使用する滑車は、網戸の戸車用としてホームセンターで売っていた部品を使用しています。周波数を表示するドラムは直径120mm厚さ2mmのアクリル製の円盤に半透明フィルムを巻きつけてドラム状にし、さらにその上から目盛りを印刷した紙を貼り付けています。また、ドラム内部に白色の発光ダイオードを設置し、紙の裏側から照明が当たるようにしました。

 バーアンテナは独立してプラスチック製の箱に入れ、ケース上部で回転できるようにしました。調整などのためにケース上部は取り外すこともあるため、バーアンテナからの配線はピンチップとチップジャックにより着脱可能にしてあります。

ダイヤル部詳細
背後より白色LEDで照明
窓中央の赤い線は透明シートに赤色を印刷したもの


イヤル機構詳細
滑車は、網戸用の戸車として販売されている部品
アクリル円盤は上部のアクリルパイプと接着し、軸にビス止め


 背面内部
穴あき基板に局発関係の部品を集約しています
バリコンはシャーシの反対側上部に取り付けてあります

上に見えるのがダイヤル目盛用ドラム

バーアンテナ取付部を下部から見たところ
黒いアクリルにタップでねじ穴を開けて取り付けたビスを、
アンテナの回転止めに使用してます<br>
抜け止めは、ビス留めしたアクリルパイプ

ダイヤル目盛りの作成

 ダイヤルに目盛りをつけるためには周波数カウンタが必要になります。これについては、手持ちのデジタルテスタ(SANWA CD770)に周波数測定モードがあるので、これを活用しました。テスタそのままでは入力インピーダンスが低く、100kHzモードが周波数の上限であるため、100分の1分周回路とプリアンプを組み合わせたものを作成して使用しました。(回路図はこちら)これに対応して本体の局部発振回路に周波数カウンタ用の測定ポイントを設けました。

 100kΩの抵抗を介して接続するので、放送を受信中にカウンタを接続しても受信しているラジオの受信状況に変化はありませんでした。測定した周波数から455を引けば受信周波数になります。100kHz刻みに発振周波数を測定して正面ドラムに仮止めしたマスキングテープにマーキングし、おおよその目盛りをつくりました。
 さらに細かい目盛位置は、MS-Excelを活用し、計算で算出しました。以前、真空管のEp-Ip特性図から高調波歪率等を算出するのに使用したのと同様に、曲線を多項式で近似する機能を用いました。ただし、少し工夫が必要でした。詳細はこちらをご覧ください。
 計算結果を元にCADで正確な位置に25kHz刻みで目盛りを入れました。背景にはオレン色の細かいドットを印刷して、背面から白色LEDで照らした際に電球のような暖かい色になるよう工夫しました。


CADで製作したダイヤル目盛

使用してみて


 高一ラジオと比較して、非常に感度が高いことがわかります。念のためバーアンテナに外部アンテナを接続できるアンテナ巻き線をつけていますが、外部アンテナを接続しなくても十分な感度があります。電波状態がよい時には豊橋市からでも関東地方向けのラジオ放送を聴くことができます。また、AMトランスミッタとの相性も良く、デジタル音源を「昔のラジオの音」で聞くことができます。

AFC装置の追加 (2019.2.10追記)
 完成後、電源投入後のチューニングのずれが気になるようになり、AFC装置を外付けしました。詳細はこちらをご覧ください。
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