6EM7縦型BGM用アンプ (2014.8.15)(2014.9.21追記)

正面

背面
BGM用アンプ

 以前、娘の部屋用にオートシャットオフ回路を付けたアンプを設計しましたが、後になって考えてみると、改善すべき点がいくつもありました。今回、仕事をしながらBGMを聴くためのアンプを製作することになったので、改良版のオートシャットオフ回路もつけてみました。仕事に熱中してスイッチを切り忘れても3分ほど無音状態が続くと自動的に電源が落ちるしかけです。以前のものは、完全にOFFにはできず、制御回路の電源が入りっぱなしでしたが、今回は完全に消費電力をゼロにできます。



アンプ部の回路構成
 6EM7を用いたA級プッシュプル回路です。前回製作したカーオーディオの回路をほぼそのまま流用しています。使用するスピーカが小型になる見込みであるため、バスブースと回路も付けています。バスブースト回路は前回使用した5670ではなく、6BQ7Aを使用してみました。電源電圧がカーオーディオ用アンプより高くとれるので、少し出力を多くとれそうです。
  アンプ部回路図はこちら

  電源部の回路図はこちら

オートシャットオフ回路
 前回はフォトリレーを用いてAC電源をON-OFFしていましたが、今回は「ラッチ型リレー」というものを使用しました。ONあるいはOFFにする際に電流を流す必要があるのみで、いったんON(あるいはOFF)の状態になれば、通電する必要がないタイプのリレーです。本機に使用したラッチ型リレーは、小型で電流の容量が小さいため、AC100VをON-OFFするために、リレーをもうひとつ使用しています。もっと電流容量の大きなラッチ型リレーを使用すれば、ひとつのリレーで済むはずです。
 タイマIC555を用いた回路は前回のオートシャットオフ回路と同様ですが、リレーの駆動にはFETを使用しています。コンデンサの放電の制御を行う回路は前回のものを見直し、簡略化しています。回路の考え方は前回と同様で、アンプの出力信号をオペアンプで増幅してコンパレータに入力し、トランジスタを制御してタイマ用のコンデンサを放電するものです。出力信号がないと、コンデンサが放電されずに電圧が上昇し続け、約3分で電圧が3.3Vになるとラッチ型リレーのOFF側のコイルに電流が流れます。この際、制御回路の電源もOFFになってしまいますが制御回路の電源に十分な容量のコンデンサを使用していますので、リレーのコイルを駆動することができます。

 電源のON-OFF操作に使用するスイッチはモーメンタリ型の押しボタンスイッチで、押している間だけ通電するタイプのものです。ONとOFFの2つのスイッチを使用します。
 オートシャットオフ回路の調整が少し手間がかかります。タイマIC555によって充電されていく470μFのコンデンサの両端にテスト端子を設け、この電圧が上昇しなくなる最少の出力電圧を設定して感度調整を行います。あまり感度を上げるとノイズの影響を受けるので、あまり小さな値にはできません。本機の場合、40mV程度の出力電圧でコンパレータが反応するように設定しました。
 しばらく使用してみると、信号検出回路の感度が時間経過とともに変化してしまうことに気が付きました。このため、ケースを開けずに調整できるように,感度調整のボリウムをケースの裏面に取り付けました。

 9月21日追記:オートシャットオフ回路をさらに修正し、コンパレータの不安定動作を改善しました。コンパレータ正帰還回路を取り入れ、ヒステリシス特性を持たせることで、ONとOFFの中間の電圧での不安定状態が起きにくくしました。また、コンデンサを放電するトランジスタを廃止しました。コンパレータの動作を確認するためのLEDを点灯させるために二個一組のコンパレータを用い、片方をコンデンサ放電用、もう片方をLED点灯用に使用しています。。
  オートシャットオフ回路はこちら

ケースの製作

 部屋の隅に目立たないように置く必要があることから、縦長のデザインを採用しました。アルミの板を正確にカットするのは大変なので、ホームセンターで売っている規格品の大きさをそのまま使用して外側の板に使用しています。側板は300*200*2mm、天板と底板には、300*100*2mmのアルミ板を使用しています。自分でカットしていないので、切り口がまっすぐで精度の高いケースを作ることができました。
 側板に使用するビスは皿ビスを使用して、余計な凹凸が側面に出ないようにしました。天板は化粧パネルとして本来の天板の上に載せる形式にしたため、余計なビスの頭が見え無い工夫をしました。正面と背面の板には1mm厚のアルミパンチングメタルを使用しています。これもタカチの規格品で100mm*200mmのものを少しだけカットして使用しています。正面のパンチングメタルは二重に貼ってあり、ここでも余計なビスが見えないようにしました。これらの工夫の結果、すっきりとした外観とすることができました。
 内部の構造は、下部に電源部、上部にアンプ部を載せる2層構造で、間に出力トランスをアンプ部のシャーシ板から吊り下げる構造としています。調整する際には、上部と下部に分解できるようになっています。
 放熱は、ケースの前と後ろから行うので、ケースの左右に物を密着して置くことも可能です。狭いスペースに置くには便利なデザインです。ケース上部のハンドルは、見た目のカッコ良さから取り付けました。誤って真空管にさわってしまうのを防ぐ効果も少しはあります。


外観


化粧パネルをはずすと、バイアス調整用の半固定抵抗の穴とチップ端子が見えます。

特性を測定する

周波数特性

 6EM7の特性なのか、6EM7のUnit1(電圧増幅段)の両側プレートの電圧が10Hzくらいで揺れ動く現象に悩まされました。次段グリッドにつながるコンデンサの容量を小さくしたところ、多少改善しました。したがって低域は下がり気味の特性です。トーンコントロールで補正できるので、これで良しとします。



出力対歪率特性
 前述の低域のノイズの関係で、最低歪率は0.1%を切ることができませんでした。電源電圧が少し高かったので最大出力は前回製作したカーオーディオ用の6EM7プッシュプルアンプを少し上回り、7.2Wで歪率5.75%となりました。BGM用としては十分な出力です。ON-OFF法の測定により、ダンピングファクタは5.56(1kHz)となりました。

試聴

 市内のオーディオ専門店で小型のスピーカ(B&W CM1)を購入し、自宅で試聴してみました。小型ながら豊かな低音が出ます。アンプと並べて置いた時のバランスがほどよい大きさで、角を丸めないかっちりした外観も本機にマッチします。スピーカの説明書には、「-6dB at 45Hz and 50kHz」とありますので、ローブーストはposition3か4が適正なのではないかと思われます。この組み合わせで試聴してみたところ、家族と娘の友人にも好評でした。このアンプとスピーカは、この後市内某所で使用する予定です。


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