71Aプッシュプルアンプ計画 (2007.12.16)(2008.2.8)(2008.12.21)
 1年ほど前にRCAの箱入り71Aを購入し、どのようなアンプに仕上げようかとあれこれ考えておりました。プッシュプルにしても2W程度の出力しか得られませんが、我が家の使用環境では現在使用している45シングルアンプの出力でも十分に実用に堪えるので問題ないでしょう。


 10か月ほど使用して、各部の電圧を確認したところ、完成当初に比べて71Aのプレート電流が大幅に減少してしまっていることに気が付きました。4本それそれに減少の程度は異なりますが、全く減っていないものはありません。原因はよくわかりませんが、固定バイアスで定格に近い電圧をかけてることから、知らない間にグリッド電流が流れ、プレート電流が流れすぎて真空管を痛めてしまったという可能性もあります。古い真空管なので、もっといたわって使用しないといけないと思い、現在使用をやめて改造の構想中です。(2008.12.21)
改造編へ




回路の設計(2007.12.9)
 71Aは、許容されるプレート電圧が低い割に必要とするドライブ電圧が高いのが難点です。昔からよく参考にしている浅野勇氏監修「魅惑の真空管アンプ」に掲載されている71Aプッシュプルアンプでは、この問題をドライブ段との間をトランス結合とすることで解決しています。しかしながら入力トランスを使用するのはコストの面でも特性の面でも不利でありますので採用しませんでした。また、内部抵抗の低い5687をドライブ段に使用することも検討しましたが、5687は使い方によっては2W程度の出力管にも使用できることを考えると、何かもったいないような気がします。そこで今回は同じトランスの巻き線からマイナス電圧を同時に得る方法でドライブ段の電圧を得ることを考えました。


現在計画中の回路図はこちら(2008.1.3 回路図を修正)
(まだ製作に入っておりません。動作の確認はしておりませんのでご注意ください)

 ドライブ段には12AU7を使用し、マイナス給電を用いて十分なドライブ電圧を得ています。負帰還をかけるので十分なスタガ比を得るために、初段には内部抵抗の低い7308をパラにして使用しています。以前作成した2A3ppアンプのような構成となってきました。71Aのフィラメントは6.3Vのヒータ巻き線をダイオードブリッジで整流して直流点火としております。電源トランスは、以前から時々使用している春日無線変圧器の特注トランスを使用しています。今回も1週間程度で納品されました。いつもながら納品の早さには感心させられます。

シャーシの設計
(2007.12.16)
 古い時代のST管の姿を楽しむため、シャーシの形状はごく普通の弁当箱型シャーシとし、正面に出力管をを並べる形式としました。小さめのシャーシに緊張感を持って部品を配置するのかこいいと考え、自分の力量で工作と配線ができるぎりぎりの小ささを目指してみたいと思います。300mm×123mm×55mmの穴なしアルミシャーシを加工して製作する計画です。
完成予想図はこちら


既製品シャーシを利用
 今回のシャーシは、既製品のアルミシャーシにサブシャーシを組み込む形式としました。サブシャーシを用いることで、余分なねじがシャーシの表面に現れなくなり、すっきりとした外観にすることができます。  塗装は行わず、アルミの地金の色をそのまま使いたいと考えました。手垢や傷が目立たないよう、紙やすりで表面をこすってつや消し仕上げとします。

小型ケースの製作
 小型のシャーシを使用したため、シャーシ内部のスペースがきびしくなります。さらに本機では、通常のB電源回路のほかに、マイナス電源や71Aの直流点火用の回路も必要になります。そのため、71Aのフィラメント用の整流回路及び平滑回路は小型のケースに入れて電源トランスの後ろに自立させることとしました。昔のアンプのオイルコンデンサの四角いケースのような形になりました。小型ケースは0.5mm厚のアルミ板を曲げ加工して製作しました。ケースの上のふたは放熱を考えてアルミパンチングメタルを使用しました。アルミアングルにタップでねじ切り加工をおこなって部材を組み合わせてあります。ケースの大きさは、76mm(W)*30mm(D)*86mm(H)です。幅は電源トランスに合わせ、高さは出力トランスに合わせました。

大きな穴あけが終了した状態

小型ケースに収めた整流・平滑回路

製作した小型ケース
仮組みでの測定と問題点(2008.2.8)

上記の回路で製作したところ、以下の問題点がみつかりました。
@負帰還なしの利得が約10倍とやや不足ぎみであったこと。
A自宅の100V電源の電圧変動(98-102V)によって、場合によっては71Aの最大プレート電圧とされる180Vを超えてしまうこと。
B残留雑音がやや大きいこと(2mV近く)


 @に対しては、初段のプレート負荷抵抗を10kΩに増やし、利得の増大を図りました。Aの問題については、B電源回路の抵抗値を増やして対応しました。Bの原因として、ドライブ段のグリッドがマイナス電源に接続されるため、マイナス電源の変動と残留リプルが雑音になっていると推定し、グリッドまわりにコンデンサと抵抗を追加してみました。

変更後の回路図はこちら


完成後の測定
 上記の修正を経て、まずは無帰還状態で測定をおこなってみました。利得は12倍になりました。残留雑音は0.4mV程度に減少し、回路修正の効果が確認できました。ダンピングファクタは、無帰還でも2.0確保できています。クロストークは、残留雑音レベル以下でした。初段、ドライブ段のインピーダンスが低い回路としたことに加え、入力ジャックから初段管までの距離を短くしたことが効果をあげているようです。周波数特性、歪率は以下のグラフのとおりでした。無帰還でもそこそこの高性能を得ることができています。歪率のグラフが各周波数ともほとんど一致していることがよくわかります。





 負帰還を6dBほどかけ、仕上がり利得を6倍として、再度測定をおこない、位相補正コンデンサの容量を3900pFとしました。補正後の周波数特性、歪率は以下のとおりです。10Hzから100kHz近くまでほぼフラットな周波数特性を得ることができました。歪率も改善が見られますが、各周波数でのカーブには差が見られるようになりました。20kHzでの方形波を測定した結果もまずますの波形が得られています。ダンピング・ファクタは、5.0となりました。





20kHz方形波を入力した場合の応答波形

 完成写真を撮影しました。プッシュプルアンプではありますが小型に収まり、重量もそんなに重くないので、手軽に家の中を移動させることができます。小型のシャーシに収めたため配線には少し苦労しましたが、正面に並ぶ71Aとシャーシのバランスもほどよく、見た目の面でも気に入っております。

改造編へ
トップページに戻る