失敗の記録
デジタルアンプを用いたDC-AC変換装置 (2011.10.10)

 車載用の真空管アンプの電源として、DC12VからDC270程度のB電源を得る必要があります。現状では、車載用の安価なDC-ACインバータを用いて、AC100Vを作り、電源トランスを用いてB電源を得ています。この方式は、走行中のバッテリー電圧の上下により、得られるB電圧が大きく変化するため、B電源に安定化電源を設ける必要がり、電源部の発熱が大きくなる問題がありました。そこで、インバータの代わりにデジタルアンプでAC8V前後の交流をつくり、トランスを介してB電源を得ることを検討してみました。デジタルアンプのパラレル接続の件では、ぺるけさんの掲示板で多くの皆様からアドバイスをいただきました。思い付きだけで作ってしまい、大きな事故につながりかねないところを的確なアドバイスをいただき、皆様に感謝しております。

以下の通り結局うまくいきませんでしたが、何かの役に立つのではないかと思い、失敗の記録として掲載します。

構成の検討

 現在使用しているアンプはB電源として270Vを供給しており、電流は1チャンネル当たり45mAから65mA(最大値)です。したがって消費電力は最大17.55W/chということになります。2chで35.1Wが必要ということになります。このほか、バイアス用のマイナス電源とヒータ電源が必要になりますが、まずは、一番面倒なB電源から検討します。
 私の知識と技能では、デジタルアンプをディスクリート部品で組むのは不可能なので、デジタルアンプは市販のキットの中から、カマデン製TAA4100KIT Oyaji-Spec というものを選択しました。カタログスペックでは、最大100W×4(電源25V 4Ω時)とありますので、余裕はありそうです。また、「車載用」をうたっていますので、車の中の過酷な環境についても配慮されていると判断しました。
 問題は、電源が12Vになった場合の出力です。バッテリーの電圧の制約から、デジタルアンプの出力電圧はどんなに頑張ってもピーク値で12V以下という制約があります。カーオーディオで大出力を得ようとする場合にはBTL接続としてピーク値12V近い値を得ているようです。昇圧用に110V:6.3Vのヒータトランスを使用することを考えるとデジタルアンプ側の電圧は7V(ピーク値では約10V)とします。12V電源の場合ほぼ上限です。6.3V巻き線に7Vをかける理由は、昇圧後の電圧で110Vを得るためには1次側と2次側を逆に使用にするため、6.3Vよりも少し高めに必要と思われるからです。トランスの損失等を考慮して1chあたり21Wを取り出すとすると、7Vで3Aが必要です。このとき、デジタルアンプ側から見ると負荷インピーダンスは2.3Ωとなります。
 デジタルアンプキットのカタログ上で4Ω負荷とうたわれているので、ぺるけさんの掲示板で物議をかもした「デジタルアンプのパラ接続」ということを考えましたが、皆様のご指摘でパラ接続は危険の多いことがわかり、断念しました。使用されているデジタルアンプ用IC(TAA4100A)のデータシートには、2Ω負荷でのデータも掲載されていたので、パラ接続しなくてもなんとか使用できるのではないかと思います。プリント基板の細さも心配されますが、4Ωで100Wという最大定格時には5Aが流れる計算なので、大丈夫なのでしょう。
(2009.3.1)



アンプのパラ接続が可能とわかる (2009.5.31)

 購入したデジタルアンプキットで使用しているIC(TAA4100/A)のデータシートを読んでいたら、アンプのパラ接続が可能である旨記載があることを発見しました。原理的には各アンプの出力電圧が精度よくそろっていないとあぶないのですが、IC内部に保護回路も組み込まれているようなので、試してみようと思います。(以下データシートの文書です)
PARALLELING THE OUTPUTS
The outputs of the TAA4100A can be paralleled to increase the current capability as compared to a single output. Each output must still have its own inductor. Thus, the device output pins cannot be directly connected.
All 4 channels can be paralleled (after the inductors) or a pair of channels could be paralleled, for example CH1 and CH2 while using CH3 and CH4 a single bridged channels. To parallel, simply connect OUTxP to OUTyP of an adjacent channel, and OUTxN to OUTyN of an adjacent channel. Again, this connection needs to be after the output inductors (10uH in most cases).
Paralleling 2 channels will allow 2 ohm operation across the entire supply range of 10-26V. Paralleling all 4 channels will allow 1 ohm operation across the entire supply range. Please note that the same input signal must be driven into each channel that is being paralleled. Also, individual input capacitors should still be used for each channel.
(以上)
 

デジタルアンプ出力を電源トランスに接続した場合の基礎データ(2009.6.7)

安価な可変直流安定化電源を購入したので、デジタルアンプの出力を電源トランスに接続して整流し、直流出力を得る回路について、基礎的なデータをとってみました。


実験回路
デジタルアンプの4チャンネルをパラ接続し、以下の構成で実験をおこないました。


図面をクリックすると拡大します。

実験の様子

測定結果
電源電圧を一定(13V)にし、デジタルアンプに入力する信号の周波数を変化させ、データをとってみました
100Hzから200Hzが一番電圧が高くなっています。

下のグラフは、電源電圧を一定(13V)に保ち、アンプへの入力信号の周波数を60Hzから800Hzまでいくつかのポイントをとって測定した場合の効率(=直流出力電力/アンプへの供給電力)と周波数の関係です。周波数が高いほど効率が良くなっていることがわかります。しかしながら、測定中200Hzを超えると、トランスから耳障りなうなり音が聞こえました。従って、今回のトランスを使用する限りでは、車載用アンプの電源周波数としては、200Hzあたりが適当ではないかと考えました。


電源電圧と効率の関係も調べてみました。下のグラフをご覧ください。電源電圧が低いとアンプからの出力波形がクリップしてしまう様子が観察されますが、効率はクリップしているほうが良くなるようです。13.5Vより電源電圧が高くなっても、効率が上昇していますが、この場合、電圧上昇にあわせてアンプの消費電流が少なくなっていました。一番悪い13.5Vの場合で、約66%の効率でした。



電源電圧13.5V 直流出力270V 200Hzの場合の
アンプ出力波形
寄生発振が見られます。

電源電圧11V 直流出力270V 200Hzの場合の
アンプ出力波形

クリップしていますが、このほうが効率が良かったです。
また、アンプへの入力信号を一定に保った場合の電源電圧と直流出力電圧の関係を測定してみました。電源電圧13V以上では、電源電圧が上昇しても出力電圧は増加しませんが、12.5V以下では、電源電圧の低下にあわせて出力電圧が低下します。
オペアンプ用電源回路(2009.6.7修正)

 正弦波発信器とゲイン調節ユニットはオペアンプを使用する計画なので、オペアンプ用の電源をバッテリから安定的に得る方法を考え、下図の回路を試作してみました。バッテリ電圧が低くなった場合の挙動が少し心配なため、低ドロップのレギュレータを使用しています。。オペアンプ側から見ると、5Vがアースということになります。したがってこの5Vが安定していることが重要ですが、5V前後のツェナーダイオードは温度変化に対するツェナー電圧の変化がいちばん少ないということですので、車内の気温変化にも対応できると思われます。
 また、発振器の試作の結果、遅れて立ち上がる9V電源も必要となったので、あわせて設計しました。

(2009.6.7 回路図一部修正)

ゲイン調節ユニットの設計(2009.4.19)(2009.6.7修正)

 正弦波発信器とゲイン調節ユニットには、ともに電圧によるゲイン制御の機能が必要となります。市販のオペアンプの中で、このような機能を持つものを探したところ、EL4451Cというオペアンプがこの機能を有していることがわかりました。さっそく購入して、下記の回路を試作しゲインの変化を確認してみました。

 AC60Hz 250mVを入力して計測した結果は下図の通りで、AGC入力電圧の変化に比例して交流(60Hz)出力電圧が変化していることがわかります。変化の割合はAGC電圧が10%増加すると出力電圧もほぼ10%減少するという関係になりました。AGC電圧は、+5Vとの比較で検出しており、デジタルアンプで増幅されたAC電圧をトランスで昇圧し、整流された260Vの電圧を分圧して4V程度のAGC電圧を得る計画です。仮に何らかの原因で電圧が1%上昇すると仮定すれば、AGC電圧は4Vから4.04Vに上昇しますので、ちょうど電圧上昇分を打ち消すよう、ゲイン調節ユニットのゲインが減少することになります。バッテリー電圧の変動など様々な変動要因に対してどのくらい安定した電圧が得られるのかは、これからテストをしてみたいと思います。

注:上のグラフではAGC電圧は+5Vに対しての相対的な電圧で示しています
正弦波発信器の検討(2009.9.6)
 正弦波発振器も同じくEL4451Cを利用して試作してみたのですが、その後、もっと安価なOPAMPを使用する方法がトランジスタ技術2009年6月号に掲載されているのを見つけたので、(川田章弘氏・『簡単便利な100Hz〜10kHz正弦波発信器』)現在は以下の回路となっています。発振周波数は約200Hzです。


ICが破損別回路を検討するもうまくいかず方針転換
 先日、誤って最大負荷・入力最大の状態のまま電源をONにしたところ、ICがこわれてしまいました。HiFi用のキットをB電源に使用するなどという罰当たりなこととはやはりしてはいけない気がします。今後使用するに際しても、故障のたびに高価なキットを購入するのでは経済的にもきびしいので、別の方法を検討しました。やはり出力段はディスクリートでないと故障の際の対応が難しいと思います。
 デジタルアンプに関しての知識が不足しているので、CQ出版社の「D級/ディジタル・アンプの設計と製作」および「パワーMOSFET活用の基礎と実際」という本を購入して回路を検討しました。検討の結果「D級/ディジタル・アンプの設計と製作」に掲載されている、HIP4080AというICを使用してパワーMOSFETを駆動する回路を応用できるのではないかと考え、実験をしたのですが、私の実力では十分な安定度と効率を得られず方針を転換しました。

 やはり、市販のDC-ACインバータを使用し、B電源の安定化をスイッチング方式で行うことにより、発熱を抑えることを目指しました。(これも失敗例となるのですが・・・)

 しかしながら、この失敗のおかげで、SQ4チャンネルシステムのレストアで、古いACモータの回転数の制御をパワーアンプ出力から電源を供給する方式にする際に、上記のゲイン調整ユニットを供給電圧制御回路して応用することができました。
スイッチングレギュレータを用いたB電源の試作へ


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