真空管でつくるiPod用プリアンプ(2009.11.28追記)

(注意) 以下の文章でiPodとは、第1世代のiPod nanoのことを指します。動作確認についても、私の購入した第1世代のiPod nano(2GB)のみについて確認し、記載しております。
 充電機能について、先日第3世代のiPod nanoを購入して試したところ、第1世代のiPod nanoとは異なる挙動をしました。私の経験では、場合により充電中にiPodがフリーズしてしまうこともありました。また、充電電源をoffにした際にiPodも連動して電源がoffになる機能についても、第3世代のiPod nanoでは機能しなくなっています。第1世代のiPod nano以外の機種についてはご注意ください。なお、息子が2007年4月に購入した第5世代のiPodについては、現在のところ本機で問題なく使用し、充電できております。(2008.8.26)


第5世代iPod nano に関する追記:
 第5世代iPod nanoを購入したので、下記プリアンプに接続したところ、以下の点に気がつきました。
1)充電機能をoffにした状態でドックを接続した場合に、ドックからオーディオ信号が出てこない。
2)充電用のスイッチをonにするとドックから信号が出てくる。その後充電スイッチをoffにしても信号は出続ける。

3)本機では充電ができず、電源offも連動できない。

 ドック接続は世代交代のたびに仕様の変更があるようですので、これから制作されるのであれば、iPodアクセサリとして販売されている「Apple コンポジット AV ケーブル」を使用し、RCAジャックから入力をとるほうが安全だと思います。特に充電機能は、iPod内部の回路が不明なため、最悪故障の原因になりかねません。(2009.11.28)


設計編
カーオーディオ用に購入したiPodでしたが、持ち運びやすいため、自宅のセットでも聞く機会が多くなってきました。我が家のチューナーやCDプレイヤーと比較して、iPodの出力レベルは少し低いので2倍程度増幅するとバランスがとれます。今まではオペアンプを用いたプリアンプを使用していましたが、やはり真空管式で製作したくなってきました。そこで、iPodの充電機能を併せ持つ真空管式のプリアンプを製作してみました。

設計目標は以下の通りとします。

1.利得は2.5倍とする。
2.iPodの充電の機能を持たせる。
3.従来のセットに追加するので、セレクタを設けて従来の機器も接続可能とする。
4.なるべく小型にする


シミュレーションを活用する

利得はそんなに多くいらず、入力インピーダンスも高い必要がないことから、回路形式はP-G帰還による単段増幅回路とします。使用する真空管は、手持ちの関係で6C5とします。メタル管なので、シールドの点で有利であり、複合管でないので、左右に1本づつ使用することでチャンネル間クロストークの減少を図ることができます。今回は単段増幅なので、MS-EXCELを用いたシミュレーションが有効ではないかと考えます。シミュレーションを活用しながら設計して、実際との比較を試みます。

6C5のロードラインの決定

動作点は下図の通り決定しました。P−G帰還の場合、NFB用の抵抗の値が交流負荷の値に影響を与えますので、以下の通り計算をしました。このあたりの考え方はぺるけさんのウェブサイトにある解説がわかりやすく、役にたちました。計算の結果、NFB用抵抗は333KΩとなりました。無帰還の場合の出力電圧を得るためにまずはおおよそのRNFBで交流負荷を計算して作図しておき、後で微調整することで最終的にRNFBの値を得ました。
また、出力につながれるメインアンプの入力インピーダンスも計算に影響します。この例では50KΩとしています。

回路図

回路図は以下の通りです。プリアンプであることから、ヒータは直流点火としました。iPodの充電用には5Vの安定化電源を使用します。また、出力側に切り替えスイッチを設けて外部入力とiPodとを切り替えるようにしています。
iPod用の電源トランスは手持ちの6.3V0.5Aを使用しましたが、もう少し高い電圧のもののほうがよかった思います。出力電圧を少しでも高くするためにiPodの電源用のみSBDを用いてみました。
電源回路は、iPod用は独立にON-OFFができるように電源スイッチを2つ設けています。

2006.8.28 iPod用電源を改造
iPod充電用の電源回路を改造しました。B電源用のトランスの1次側に110Vタップがあったので、これを利用して少しだけiPodの電源の電圧を上げるとともに、LM317を用いて見ました。LM317のデータシートによれば、入力と出力には約2Vの電圧差が必要とのことですが、最も負荷のかかった状態でも7.2Vの入力電圧に収まっていますので、出力電圧5Vに対してなんとかクリアできています。新しいトランスを買わなくても済みました。以前に比べて充電時のノイズが減少し、使いやすくなりました。

回路図(2006.10.8修正)(2006.11.25再修正)
シミュレーションについては、こちらをご参照ください。

シミュレーションによる10V出力時の高調波成分



シミュレーションによる出力電圧と歪の関係
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