SQ-4チャンネルステレオのレストア

ACモータ駆動装置の制作  (2010.8.24)

 レコードプレイヤーのターンテーブルの回転速度を微調整するための装置を製作することにしました。レストアしているSQ-4システムのレコードプレイヤーはACモータを 使用しています。回転数を微調整するためには、交流電源自体の周波数を微調整する必要があります。このため、、周波数が微調整できる 100V60Hz前後の交流電力を供給する装置を製作することにしました。発振回路とアンプを一体にした装置です。回路構成は、PLLに より122.9kHzを発振し、これを2048分の1に分周したのち、矩形波を正弦波に変換してアンプで増幅するという構成です。

 設計の与条件を整理するために、ターンテーブルのモータの消費電力を測定しました。システム全体の消費電流をテスタで測定し、モータ を使用した場合としない場合の差から、モータの消費電力は8W程度であると推測しました。
 この程度の電力であれば市販のACアダプタで十分供給できるので、直流電源は15V2Aの既製品ACアダプタを使用することにしまし た。アンプは、モノラルで10W以上の出力がとれる安価なキットが見つかったのでこれを使用しています。PLL発振回路も私の知識と能力では難しい ので、市 販のキットを活用しています。
 アンプはキットの回路のままでは低域特性が不足していたので、出力コンデンサを外付けにして容量を増やしました。(1000μFを 3,300μFに変更)アンプの負荷を8Ω程度とし、8Wを得るために、アンプの出力に電源トランスを接続し、アンプ側0-7V端子間、 出力側0-100V端子間で使用しています。トランスは東栄変成器のJ802(1次側0-90-100-110V、2次側 0-5-6-7-8V 2A)を1次2次逆にして使用しています。
 分周回路から出力される矩形波を正弦波に変換する回路では、ローパスフィルタに加えてダイオードを用いたクリッパ回路を利用していま す。ローパスフィルタにより周波数の変化にあわせてアンプの入力電圧が変化してしまうのを緩和する効果もあります。また、念のためスロー スタート回路を組む込み、電源ONの際にいきなり最大出力にならないようにしています。

回路図
電源・アンプ部    発振・分周回路
(注:まだ試験中で完成ではありません)


中央にあるのは冷却ファン用
の吸気口(排気口は横)

SQ-5000のキャビネット
背面に取り付け


出力波形(抵抗負荷)
少し歪があります

発熱対策

 オーディオ用のアンプをモータ駆動に使用するので、相当の発熱が出ることを覚悟しました。効率が60% として8W出力時には5.33Wが熱になる計算です。そのため、もとのコの字型の放熱器の内側にアルミ製のフィンをねじ止めして表面積を 増加させ、さらに小型の冷却ファンをつけてみました。

いちおう完成・・・まだ改造が必要

 ひとまず完成したので、早速レコードをかけてみました。もとの状態では回転が速い傾向にあったので、 PLLの発振周波数が119.8kHzでほぼ33.3回転になりました。電源周波数58.496Hzになる計算です。アンプの発熱が大き く、アルミシャーシ全体が温かくなりますが、手でさわれないようなことはありません。ただ、温度の上昇につれて出力電圧の低下がみられ、 スタート時95Vだったものが、30分ほどで91Vまで低下しました。これだけ低下するとターンテーブルの回転数にも影響がありました。  まだスペースに余裕があるので、アンプのゲインの変化を修正できるゲインコントロール回路を組み込むことを検討したいと思います。
(2010.8.24)

ゲインコントロール回路を追加(2010.9.20)

 出力のAC電圧を整流した直流電圧の変化によってゲインを調節する回路を発振器とア ンプの間に組み込みました。使用したのは、以前カーオーディオの電源に使用しようとして購入したゲイン可変のリニアIC・EL4451C です。ゲインコントロールの入力電圧によってアンプのゲインを直線的に変化させることができ、今回の目的にぴったりです。
 AC出力電圧はアースからは浮いている必要があるので、電圧の検出にはフォトカプラを用いることにしました。フォトカプラからの出力が 温度により変動しては好ましくないので、AC出力電圧の検出方法を工夫しました。温度による電圧変化が少ないとされる5.1Vの定電圧ダ イオードを基準電圧にして、AC出力電圧を整流し分圧した電圧と、定電圧ダイオードから分圧した電圧を、同一パッケージ内に入っている2 つのフォトカプラ(TLP521-2)を通してオペアンプで比較することにより、フォトカプラの温度特性を打ち消すようにしています。2 つのフォトカプラが1つのパッケージに入っているので、各ユニットの温度は、ほぼ同じになるはずです。


回路図
電源回路   発振回路   ア ンプ部分


ケース内部

モータを駆動した場合の波形

使用してみて

 LPレコードをかけて試聴してみました。出力電圧の変化は少なくなり、96.5Vから始まり、装置の温度上昇とともに98V程度まで電圧が上昇し、安定します。温度の上 昇にあわせて出力電圧も上昇するのは安定性の観点から気分がよくありませんが、98V程度で安定するので、とりあえずこのままにします。
 肝心の回転数は、LP片面を聴くくらいは安定していますが、なぜか30分を経過するころから電源の変動はほとんどないにも関わらず回転 数が1%以上低下する現象が観測されます。これは、電源側の問題というよりモータやベルト等の側の問題のような気がします。とりあえずは LP片面までの時間ならば安定した回転数が得られるようになりました。なにぶん、40年近く前の装置なので、すべて新品のようにはいきま せん。
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