マッキントッシュタイプCSPPアンプの製作

CSPPアンプ」は時々耳にするけど製作事例も少なく難解で避けていました、
AritoさんのHPを読んでいて興味を持ち
原理は完全に理解出来なくても製作は可能なのでは、歳も取り思考力が弱ってきているけど、新しく覚えるより忘れる方が早い、でも一度は作ってみたい。
WEBサイトの最後にモニター募集があった、当然審査もあるでしょう。
耳も壊れている(感音性難聴)認知症は未だ無いつもりだけど古希を過ぎた爺です、駄目元で応募した
後日、採用の連絡が、数日後に製作されたトランスのデーターが送られて来た(このデーターは
NETで何時でも閲覧できる)このサービスは有難いです。
宅配便で品物が届いた。



早速、製作にかかるにもCSPPのことを理解してないから、先ずは勉強してから。
幸いAritoさんのWebサイトに詳しく解説されている、何度も読み返しています。

出力管は何使おうか
EL-34
PPは沢山作ってきた、6L64GCも昨年完成し気に入っている、MT管も沢山あるがあまり使いたく無い。
5
極管の方が良いでしょうが、三極管の6GA42ペアと予備も在るからそれを使う事に決めた。
Arito
さんのサイトにトランスBW-2K7Wを使った出力管別の設計資料UPされている。
私のような製作マニアはペンや電卓等持つよりはんだ鏝やドライバーを持つ方が良い、これは助かります。

手持ち部品と相談して構成を考えます。
私の作るアンプは既製品のシャーシーやケースは殆ど使わない為、電源トランス・チョークコイル・真空管構成(回路構成)等大きな部品を全て決めないとシャーシーサイズが決まりません。

AMP回路はAritoさんの製作事例をそのままコピーですが、終段は6GA4 です,電源トランスは手持ちのタンゴPH261を使います、この電源トランスは終段用+B巻線とドライブ段用巻き線が別にあるから整流後に双方を積み上げてドライブ段の高圧+B電源に使える。
バイアスは簡単な自己バイアスとした。

計画回路は以下になります、
Arito
さんに確認して頂き「特に大きな問題は無さそう」との事で安心してスタート



シャーシーレイアウトの検討
候補には以下のレイアウトが考えられる
          @               A              B

        C                    D


@ 真ん中に電源トランスとチョークコイルを配置 
  (このレイアウトは最近私の製作するアンプに多く、シンメトリカルで安定感があると思っている)
   サイズは幅≒240 奥行≒200 になる  (僅か横長シャーシー)

A  電源部を後に配置アンプ部を前に(以前に採用していたレイアウトですが、
   電源トランスの誘導が
OUTにどの程度あるか心配。  サイズは幅≒200 奥行≒250 (奥に長い)
B  電源部を左に纏めた配置 真空管アンプレイアウトとしては一般的なのでは
   (あまり個性が無くて私は好きでは無い)
   サイズは幅≒280 奥行≒170
C  Bの一部変更ですが電源トランスとOUTの間にブロックコンコンデンサーを置き
     OUT
に対し電源トランスからの誘導を避けている     サイズは幅≒300 奥行≒180
D Cの更に変更ですが電源トランスとOUTの間にチョークコイルを配置する 
    横幅が
300mm以上になるので電源トランスの向きを90度変えるとトランス及びチョークコイルのロゴが
    縦向きになってしまう  
サイズは幅≒300 奥行≒180
 
ブログにアドバイスもあり最初の@レイアウトに決めました。

初めて使うOUTPUTなので取り付ける向き等を決める為に電源トランスPH261からの誘導を測定してみた
電源トランスの一次側のみAC100vを通電して
出力トランスはなるべく大きな電圧を得るために 一次側 p1-2 間の電圧をミリボルト計で測定する、
トランスのケースはアースした、他測定に使用しない端子(リード線)は絶縁する

測定結果
 

実験する前から予測出来た事ですが初めて使う出力トランスなので確認してみました

電源トランスの長辺側にOUTを置く場合はセンターが最も誘導が少ないが、左右の端に置く場合は距離を取る必要があるでしょう、短辺側に置く場合も同様にセンターに置くのが良いが端に置いても長辺程ではない、このデーターは実装時スピーカー端子に現れる誘導電圧とは異なります。

以上の結果から配置案@で電トラ短辺センターにOUTを置くのが最も良い事になる

シャーシー加工

レイアウトの検討後方眼紙に原寸大シャーシー加工図を描いた
穴あけ図   

この図面を既に切断済みのアルミ板(アルマイト処理済み2.mm厚)に張り付け、その上からポンチングする。

穴あけ加工(写真撮るの忘れました)の済んだシャーシーをコの字の曲げる(前面・後ろ面が出来る)

  穴明け済みのシャーシー 

木でコの字形のフレーム枠(側になる部分)を作り表面にダイノックシートを貼る
    木枠(側になる部分)     加工済みシャーシーを化粧ビスで固定        裏側
     
シャーシーは完成 良い感じになりました


画像はありませんが底板も出来てます。(今回は真面目に作りました)

部品の組み付け

小型部品から組み付け最後に重いトランス類を取り付けます。
主な部品を実装して見えて来た外観
  背面端子配列

出力トランスのARITO's Audio Lab さんのエンブレム・ロゴが格好いいですね。

回路動作と配線
一部Aritoさんサイトから引用してます
CSPP
は通常のDEPP比較して大きな励振電圧が必要です、 従ってドライブ回路に利得や最大振幅が大きなものが必要となるため初段にcascomp回路を入れてあります、2段構成で組む場合必要でしょう
動作は難解ですが事例そのままで、ドライブ段12AU7のプレート負荷抵抗は120kΩとして +Bは≒500v程供給する、電源がダイオード整流の為、通電直後は600V以上なります、耐圧を考慮して400vケミコンを2本直列にしてあります。OPアンプの電源はヒーター用6.3V2回路使いブリッジ整流して±8Vを得ています。

Aritoさんのサイトから提供されている出力管別の設計資料


通電 動作確認
配線が済んで通電する前に
NFのみ外して(正帰還で発振する事が)通電して各部の電圧チェックして特に問題無い事を確認
ドライブ段の+B500Vは積み上げ用抵抗は9.1kΩで必要なドライブ電圧78.2Vrms(グリッドーグランド間)以上が得られたオシレーターからの信号を入力して大雑把に測定、出力は6w程度出ている、
周波数特性はミリボルト計の指針を見ながらオシレーターのダイアルを回すと「広いなー」と感じた、
歪率は過去に製作したアンプとは違い低い値だ、
此のままでも使えるのではと思える程だった。
NFB回路を接続したら案の定発振したので12AU7のカソードを逆に接続し直して負帰還にした
裸利得は27.5BなのでNFB抵抗を調整して5.5B掛けてトータルゲイン22Bとした
私の作るアンプは使い勝手からゲインは22Bと決めています

早速試聴
今迄作ったアンプと違い「切れが良い」「低域の解像度が良い」「鳴り方が良い」等と思いながら試聴していたら
先輩のオーディオマニアが遊びに来て一緒に視聴「良いアンプだ」と絶賛して帰って行った
夜、評価メールが届いた
‟>張り出しが良い”が第一に感じた印象です。クラシック系の試聴はしてませんが、音源が非常に近い感じ!(楽器の音が近い様な感覚)
レコーディングディレクターが意図した各楽器の音をはっきり再生出来ているのでは無いだろうかと思われました。余韻の出方とかエフェクトの掛かり具合などはかなりハッキリと出る様です。
全体のバランスでは低域だけでなく高域も凄く立ち上がりがよく(輪郭がはっきりしている)この辺りは聴く人の好みが若干出るかも知れません、
悪く言えば半導体アンプの様に鋭い音と捉える人が居るかも知れません。(球アンプとは・・・、などと固定観念を振りかざす人も居るから) 試聴を繰り返し重ねて行くと(異なるジャンルを聴けば)また異なって聞こえるかも知れませんが、第一印象は大事です!

と、好評価でした

又、別のオーディオ友人宅に持ち込視聴
「このアンプ聞いてみな」とだけ告げて試聴、色々と曲を変えて数曲聞いた後の「ピアノの立ち上がりが良いなー」「低域の解像度が良い」「良いアンプだ」
と、絶賛でした


NETで云われているCSPPの特徴と出力トランスBW-2K7Wの優秀さが出ていると思います

バイアス回路の変更
終段を自己バイアスから 固定バイアスに変更した
バイアス電源はトランスのヒーター用巻線が1回路空いていたので、出力管用6.3Vにシリースに繋ぎ12.6V得て倍電圧整流した変更した回路図
         クリックで拡大します

バイアス電源及び調整回路基板追加
 シャーシー内部に隙間があったのでユニバーサル基盤で追加した
内部配線等十分な検討せず適当に配線したので汚いです。

最終データー測定(中古アナログ測定機です校正もしてありません、更に読み取り誤差も多いと思います)

最大出力(ノンクリップ)が自己バイアの時は5.8wだったが、固定バイアスにして7.0w前後出ている。
周波数特性 (1w出力 ダミー)
  
低域での減衰が殆ど無い
10hz以下は測定出来ず)高域は良く伸びていて減衰も定規で引いたようにスムースに減衰している、
  OUTPUTトランスの特性の良さが現れています。

入出力特性
  1khzオシレーター入力 8Ωダミー負荷

歪率特性
 1khz  8Ω ダミー負荷
非常に低い歪です、僅かなNF5.5B)ですが良い値です、右チャンネルのデーターが少し悪いが球の劣化と思われます

試聴
固定バイアスで少しパワーUPしたので更に低域の力強さが増してきた、中高音の張り出し、音の立ち上がりが良い
昔聞いた曲をもう一度聞いていますが「あれ?この曲って・・??」しばしばあります
メインシステムの常用アンプに成りました

このような素晴らしいアンプが私にも製作出来ました。

令和21123日に「手作りアンプの会」豊橋地区で試聴会があり、このアンプを発表する機会を得ました

参加者の中で興味を持たれたか方が「動作原理を教えて下さい」「自分の手持ちスピーカーで試して見たいので一度自宅で試聴できないか」等々質問や申し込みがありました。
暫くは視聴でアンプを持ち回る日が続く事でしょう
令和3年1月中旬に豊橋地区でoff会が予定されています、話題はcsppアンプになると思います。

CSPPアンプは一度聞くと虜になるでようです。

最後に、色々とご指導いただいたAritoさんに感謝致します、素晴らしいOUTPUT製作して頂いたARIT'AudioLaboさんありがとうございました。

        今川@豊橋

手作り「妥協無し」 素晴らしいトランスです。