RAW ORE

  

 序曲

  2199年 ヤマト発進前 地球



「あのメンバーでいくのか?」
「土方さんが強く押したからな」
「大体、あの二人が、宇宙戦士訓練学校の校長と艦隊司令に決まったとき、くじ引きで決めたというではないか」
「私はじゃんけんで決めたときいたぞ」
「好戦派の土方さんでは、すぐに艦隊をつぶしてしまうから、沖田司令に決まったのだとも言われているが」
「どんな理由であれ、あの二人なら、それぞれの役職を全うできるだろう」
「それはもう三年前に済んだことだ。今、我々がもっと検討しなければならないのは、最後にかける艦の乗組員についてだ」
「いくつかの候補の中で、あれは選ばないだろう、普通ならば」
「戦闘班長と航海長だけでも、もう少し実戦経験者にすべきじゃないか」
 会議が終わったあと、会場のざわめきは一向におさまらなかった。
「沖田司令は言っただろう。『土方校長が薦めるのなら、それが一番だろう』と」
 滅多に口をださない山南がそう言うと、皆、その言葉につられるように、山南の方を見た。
 声に出すつもりはなかった山南は、周りの反応に顔を伏せ、足早に部屋を去った。
(あの二人が納得したのだ。それは今現在、できる限りの最高の選択ではないのか)


「古代進に会ったそうだな」
 土方に呼び止められた沖田十三は「ああ」と小さく答えた。
「ふふ」
 土方竜は笑った。
「古代進……私が出会った中で、最高の原石だ。まだ荒削りだ。強く、賢く、しなやかな男だ。だが、気をつけろ。もろい所がある。今は憎しみが強く好戦的だが、情が深い男だ。やさしすぎるところがある」
 沖田十三は、深くかぶった帽子の奥から土方を見上げた。土方竜は言葉を続けた。
「沖田よ、今度はお前の番だ。お前がどんな風にあの男を磨いていくことができるのか。楽しみだ」
 土方は大声で笑い出した。沖田十三は眉間を寄せた。
 土方の笑い声を聞きながら、沖田十三は三年前のことを思い出していた。

「なあ沖田 、我々ができることといったら、何がある? こんなに科学力に差があるのだ。どうやって勝負する? それは、『人』でしかない。できる限り、優れた人で勝負するしかない。たくさんの若者から様々な優れた素質を見つけ出す必要がある……だがな、沖田。原石は見つけるだけではダメだ。それを削り、磨くものがいなければ。私は探す、原石を。そして、できるだけ良さを残して削る。私は細かい作業はダメだ、向いていない。だから、お前が仕上げろ」

(仕上げ……)
 沖田十三は、古代進を思い出した。その顔は、その兄・古代守と重なっていった。
(兄弟……似ているのかもしれない……繰り返すか、それとも、磨き上げることができるか……いいだろう。やろう)
 沖田十三は帽子のつばをつかみ少し左右に振り、更に深くかぶった。 



なぜ、この話を書いたのか、知りたい方はこちらを読んでください。
SORAMIMI


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