[SNOW DANCE]

「古代、お前ちょっと、休めよ」

 アンドロメダが去った後、島大介は、隣の古代進に声をかけた。

 地球から、ヤマトを発進させるため、随分長い間、緊張感を持続していた進は、さすがにくたくたになっていた。大介は、進がほっと肩をなでおろした瞬間を見逃していなかった。

「そうしろ。まだまだ、これからだぞ、古代」

 真田志郎も、後ろから声をかける。今、ヤマトは、謎の敵と地球防衛軍からの攻撃を想定しながら航行していた。しかし、今回の発進は、きちんと認められたものではなく、独断で発進していた。その責任は、艦の責任者である進にすべてかかっていた。

 艦の責任者が途中で倒れた後の大変さは、それを経験した進が一番よくわかっていた。

 真田の声に振り向いた進は、第一艦橋にいる者みんなが、進に休むようにと促している目をしているのに気づいた。これ以上、皆に、心配させてはいけない。

「それじゃあ、部屋で横になってます。ここから第11番惑星まで、地球側の勢力圏です。何かあったら、必ず起こして下さいよ」

「ああ。必ず」

 志郎は、進の背中をポンと叩いて、ドアの方へ送った。見た目以上に、進は疲れているようだった。

 

 進が、ドアの向こうに消えると、太田健二郎は席に座り、航路設定に取り掛かった。相原義一も、通信設備が、正常かどうかチェックし始めた。

「どうも、土方さんと古代ってだけで、ハラハラしてしまいますね」

 南部康夫が、進が出ていったドアを見ていた大介に話しかけた。

「そうそう、訓練学校の時からだからね」

 自席のパネル操作をしながら、健二郎が喋り出した。

「まぁ、似てるとこもあるしな」

 大介は、少し笑いながら、健二郎の席に近寄った。そして、表示されている航路設定のためのデータを健二郎の後ろから確認した。

「土方艦長と古代くんって、何かあったの?」

「いろいろ、ね」

 データの画面を見ながら、大介は、ユキの言葉に答えた。

「訓練学校の時の古代って、ちょっと、声かけづらい奴だったし」

「でも、あの時以来かな、なんか、感じが変わったのは」

 康夫の言葉に、健二郎が何かを思い出したようだった。

「面白そうだな、その話」

 皆の話を聞いていた真田志郎も、会話に参加してきた。

「私も、聞きたいわ」

 健二郎は、ユキの言葉に反応して、後ろを振り向いた。

「話してもいいですけど......。古代さんには、言わないでくださいよ」

 

 

「おい、また土方教官、変なことやらせるんだな」

「ま、あの人らしいけど」

「古代と、島には、結構不利な組み合わせだな」

「それも、土方さんっぽいな。そーとー目の敵にしてるからな、古代を」

「まあ、頑固なんだよ。似たもの同士って奴かい」

「おいっ......」

 

 掲示板の反対側の壁には、目つきの悪い青年が一人立っていた。その気配に気づいたのか、掲示板の前の人だかりが、徐々に減っていった。

 掲示板には、四人一班で、組まれた表が貼られていた。明日の特別訓練のための組み合わせであった。

「おいっ、古代。なんか、いいこと書いてあったか?」

 後から来た、ルームメイトに声をかけられた古代進は、きっとした目つきで振り返った。

「この顔が、いい事書いてあったように見えるか」

 声をかけた男は、太々しく答える進を、笑った。

「島、お前だって、この組み合わせを見たら、嫌気がさしてくるよ」

 進は、掲示板に指を差し、後ろに立っていた島大介に向かって怒鳴った。

「しょうがないだろ、こうなっちゃったんだから」

「お前は、ホント、優等生だな」

 進の横に並んで大介は、表をじっくり眺めた。進と大介が組んでいる班は、それぞれ、重量級揃いで、運動競技の場合は、かなり、成績に影響することが誰の目にも明白だった。

「もしかしたら、重量挙げとか、相撲かもしれんぞ」

「よくそんな、ギャグが言えるな」

 

 大介は、気の短い相方が、かなり成績にこだわっているのを知っていた。

『卒業後、後方支援なんかに回されたらいやだろう』

 早く第一線に出たい......なぜだか知らないが、いつもいつも、進は、そのことに固執していた。入学時からトップだった大介は、知らぬ間に、自分と並ぶ成績になった進に、自分にはない、ハングリーさを感じていた。

 意外と、面倒見がよく、良く気がつく進は、他の者とも上手くいくと思うのだけれど、なぜか、いつもひとりだった。大介に対しては、ルームメイトだからだろうか、ライバルのはずなのに、よく話しかけてくる。大介も、自分が、特別扱いを受けているようで、イヤではなかった。

 まがったことが嫌いな進は、教官に対しても妥協はしなかった。しかし、訓練学校では、というより軍のなかでは、上官の命令は絶対であり、そういう点で、進は、何人かの教官からは良く思われていなかった。大介が進のことがすごいなと思うのは、そのタフさである。教官たちから受ける制裁も、バネとなった。他の生徒たちも、口には出さないが、その力強さに引かれていた。

 

「土方さん、何考えてるんだか......」

「土方教官、お前に対しては厳しすぎるよな」

「ああ、でも、筋は通っているけどナ、あの人だけは」

 大介は、進がもっと、土方竜という教官を嫌っているのかと思った。それほど、土方は、進に対して厳しかった。実技は、進の右に出るものはなく、クラスでも抜群の成績なのに、土方は、それ以上のものを進に要求していた。中には、そんなことまではできないということも。よって、土方の授業は、二人の声や、反発する進に対する制裁など、二人の間の刺々しい空気に覆われていた。

 

「まあ、明日を楽しみにしておくか。あのおっさん、次は何を吹っ掛けてくるのかを」

 進は、そう言うと、掲示板から離れた。

 

 

「何か、質問はあるか」

 土方の声が、教室に響き渡る。土方がこう言う時に限って、質問をしても『やれば、わかる』の一言で終わってしまうのを、皆、学習していた。

 学生たちは、皆それぞれ、今日の訓練の装備を確認するため、ロッカールームに移動した。 

「毎度よく考えるよ、特別訓練を」

「なんかさぁ、サバイバルゲームでも、やらされている感じだよな」

「今回も、四人のうち、一人が怪我をしたって設定だし」

「それも、一番体重の重い奴を背負っていくんだろ。土方教官は、何考えてるんだか」

「おいおい、一番重たい小倉が古代の班だぜ。それに、他の奴も、持久力なさそうな奴ばっかりだし。やっぱり、どっかで、古代を意識してるな」

「まあ、文句言うけど、成績もいいからな。嫌われてんだろ」

 進が出ていったのを見届けた後なのだが、うわさ話は、ひそひそ声でなされていた。

 

「放射能で汚染されたA-11ブロックかぁ」

 装備確認後、皆、今日使う資料を、コンピューターから、ピックアップしていく。画像が映し出されるたびに、ため息がもれる。

「直線だろう、42キロって」

「ここは、廃虚のビル郡があって、ビルを迂回すると結構距離があるぜ。それに、瓦礫がごろごろしているみたいだし」

「あ〜、やんなっちゃうな。一番重い奴を背負って、そんなとこを歩くのか」

「地図に書かれているのは、構造物と地表の起伏だけだけど、実際、地表は、かなりもろい所もありそうだな」

「夕飯までには、帰りたいなあ」

「それでも、最低点のグループは、往復なんだよな〜。夕飯どころか、朝食も食べれなかったりして。腹減るよな」

「宇宙服じゃ、水分補給しかできないからな」

 

 各班は、それぞれデータのチェックと装備のチェックを再度行った。

「お前たちさぁ、小倉背負って、歩けるだけ歩けよ。残りは、俺が歩くから」

 進は、地図を眺めながら、喋った。

「でも、普通は、皆、同じだけ歩くようにした方が、いいんじゃないですか?」

 健二郎は、進の提案は、無謀だと思った。もう一人の伊藤は、すぐネをあげるタイプだ。そんなことをしたら、進が歩く距離が長くなってしまうだろう。

「じゃあ、そうしろ。俺は、最後に背負うから」

 健二郎は、進が、気を使って、そう言っていることがわかった。ゴールに近いほど、地表の起伏は激しい。それは、地表のデータ分析をした健二郎が一番よくわかっていた。

 

 案の上、健二郎の不安は適中した。最初に背負って歩いていた伊藤は、すぐ、休憩を取りたがった。班は、いっしょに行動することが義務付けられているので、みるみる他の班より、遅れが大きくなっていった。

「もう、少し、早く歩けよ。これじゃあ、予定よりずいぶん遅くなってしまうぞ」

 健二郎は、いらついた。一番前を歩いている進は、ほとんど何も言わない。進は、地表の様子を確認しながら歩いていた。時々立ち止まっては、皆とスピードを合わせていた。

「いいかげんにしろ。少しはがまんしろよ。他の班は、もう、ずいぶん先だぞ」

 伊藤が次に立ち止まった時、健二郎は、堪忍袋の緒が切れた。

「俺だって、背負っていて苦しいんだぞ。そんなに言うなら、お前、背負ってみろよ」

「まだ、数キロしか歩いてないじゃないか」

「背負ってみろよ。俺は、一番重い小倉をおぶっているんだぞ」

 進は、何も言わなかった。自分たちが一番遅いことにいらだっていた健二郎は、結局、予定より早く背負うことになった。

『この分じゃ、かなりペースあげないと、まずいよな』

 健二郎は、少し無茶だとは思ったが、かなりペースを上げた。しかし、それがたたり、前の班が歩いているのを見たとたん、急に気が抜けてしまった。

 健二郎は、自分の呼吸がかなり早くなっていることに気づいた。しかし、まだ、半分にも行ってない地点での交代は、進にかなりの負担になってしまう。ビルの廃虚があって、地表が平たんではなくなるのは、ここから先なのだ。

「おい、休憩しろ。この先、歩けなくなるぞ」

 かなり、限界に近づいたと自覚した健二郎に声をかけたのは、進だった。

「まだ、大丈夫だ。せっかく、前のグループが見えてきたのに......」

「二人も、背負えんぞ。この班では」

 この言葉で、健二郎も諦めざるを得なかった。

 そして、そこから、進が背負って歩いた。進のペースは、かなり早かった。背負ってない健二郎達と同じペースを歩いていた。進は、いっしょに歩きながら、他のメンバーのペースも掴んでいたようだった。

 前を歩いていた大介のグループを抜いたのは、そんなに時間がかからなかった。

 

「島、いいのか。これでドベになったぞ」

「しょうがないさ、無理をすれば、完歩できないし」

「すごいな、古代は」

『また、一人で無理している......』

 島は、どんどん離れていく進の班を見ながら、そう思った。

 

「おい、古代、ここで伊藤と替われよ」

 健二郎は、背負って歩く進の耳もとに囁いた。

「大丈夫だ、休めば、島達に抜かれる」

 進は、前を見ながら、答えた。健二郎は、進の気がピーンとはっていることに気がついた。もう、休憩したら、動けなくなってしまうほど、体力を消耗しているのだろう。それは、進だけではない。背負っていない自分も、伊藤も、そして、できるだけ、おぶっている人に負担をかけまいとしている小倉も。しかし、進がきっと一番、苦しいだろう。ほとんどおぶって歩いているのだから。

「すまん、古代。俺のコース選びが悪くて、大回りさせて......」

 健二郎の言葉に進は、答えず黙々と足を運んでいた。健二郎は、腹が立った。自分に、そして、何も言わないほかの二人に。二人は、ここで止まったら、一番最後になってしまうかもしれない、と思って何も言わないのだ。こんなことを続けていたら、進は、膝を壊してしまうかもしれない。

 

「はぁー、はぁ、はぁ、はぁ」

 ゴールした瞬間、進は、膝をついて、息を整えていた。そして、何分かの後に、大介の班がゴールした。

 

「全部の班が完歩できたな。それでは、最定点のチームは、往復だ」

 そう言った土方は、疲れた学生の中で、進の班を見つけた。

「古代、お前たちの班だ」

「えっ」

 土方の言葉をかき消すような、驚きの声があがった。進は、息を整えながら、上目使いに土方を睨んでいた。

「今日の訓練は、速さを求めたわけではない。いかに、自分たちの力を出し合うかが問題なのだ」

 進たちは、何も言わなかった。土方は、進たちに向かって話し続けた。

「お前たちは、それができてなかった。それでは、一人が倒れたら、全滅してしまう」

 健二郎は、どっと疲れが出てきた。また、来た道を帰らなければならない。

 皆は、ここで進が何か言うだろうと期待した。しかし、進は、何も言わなかった。

 

「さあ、行くぞ」

 一番疲れていたはずの進が立ち上がった。

「明日の授業まで、帰ってこい。今度は、誰を背負ってもいい」

 進は、土方のその言葉を背中で聞きながら、とっとと歩き出した。

「他の者は、今すぐ、学校に帰る」

 

 皆が移動用の乗り物に疲れた体を運んでいる横で、進たちだけは、もう一度、歩く準備を整えていた。

「古代」

 土方の方に、進は、のっそりと振り向いた。

「はい」

「宇宙に出たら、一人では勝てないぞ」

 進は、土方の言葉が聞こえなかったごとく、返事をした。

「それでは、出発します」

 土方は、その言葉にうなづいた。

 去っていく進を見送りながら、大介は、土方に近づいた。

「土方教官」

「なんだ、島か、早く戻れ」

「なぜ、古代だけ、特別に扱うのですか?」

「変なやつだ。お前も、同じように扱って欲しいか」

 土方は、ふっと、鼻で笑った。

「早く戻るんだ」

 大介は、帰還組の方へむかいながら、振り向いた。その時、土方が進の方にやさしい目で見送っているのを見た。

 

「今度は、みんなで、同じだけ歩こう」

 健二郎は、黙々と準備を整えていた三人に声をかけた。

「太田、同じじゃダメだ。今度は、体重が一番軽い古代を背負っていこう」

 さっきまでずっと、背負われていた小倉が、声を出した。その言葉に驚いたのか、進は、顔を上げた。

「伊藤、お前も、ほとんど歩いてないから、今度は、ちゃんと歩けよ」

 普段控えめで、人に兎や角言うタイプでない小倉が、口を出した。進は、無視しているかのように何も言わずに、立っていた。

「最初は、俺が古代を背負って歩くよ。さっき歩いてなかったからな、15キロ分がんばるよ」

「とか言って、1.5キロぐらいで、ダウンするのは、小倉、おまえだろ。背負って歩くのが、どれだけきついかわかってないくせに......」

「じゃ、たのむぞ、小倉」

 進の張りのある声が、伊藤の語尾をかき消した。

「ああ、まかしとけ」

 小倉は、にっこり微笑み返した。

「けっ、せいぜいがんばってくださいね」

 伊藤の嫌味ったらしい言葉にめげず、小倉は、進を背負い出した。

「太田、さっきのミスは気にするな。地盤のことを考えたら、あのコースも悪くなかったぞ」

 背負われた進は、健二郎に話しかけた。

『今度は、きちんと、進路をチェックしなきゃ』

 健二郎は、さっき、書き込んだデータを考慮に入れた結果をもう一度、表示させた。

 

 10キロ過ぎた辺りで、小倉のペースが落ちてきた。健二郎は、声をかけようか、かけまいか迷った。

 夕刻に近づいたせいなのか、気温が、かなり下がってきたのも気にかかった。宇宙服を着ているから、暗さや暖かさは、関係ないが、都市部に近づいているのに、気温が下がっているのは、考えにくかった。

『俺が、また、間違えたのか?』

 健二郎は、不安になった。

「小倉、そろそろ、足元が見えなくなってきただろう、替わろう」

「いや、古代、もう少しがんばれるよ。がんばりたいんだ」

 進は、背負われて何もできないことの辛さに気づいた。小倉は、進の背中で、きっと、同じようにすまない気持ちで一杯だったに違いない。皆の気持ちを考えているようで、自分の都合がいいようにしか考えてなかった。

『宇宙に出たら、一人では勝てないぞ』

 土方の言葉が進の心の中に引っ掛かっていた。

 

 他の三人は、疲れて、下だけを見て歩いていた。進は、顔を起こして、ふと視線を遠くに移した。はらっ......何かがヘルメットの表面をかすめていった。

「雪だ......」

 皆のヘルメットに進のつぶやきが届いた。

 その言葉に、皆、空を仰いだ。

 はら、はら......

 雪が舞い降りるように降っている。しかし、地面の温度が高いせいか、地上に舞い降りるまでに、解けて、消えてしまっていた。

「へえ、人工の雪なんだ」

 小倉が、立ち止まり、そっと、手を差し伸べ、雪を掴もうとした。しかし、雪は、小倉の手のひらぎりぎりのところで、その姿を消してしまった。

「最後の雪か......」

 季節が感じられない地下都市では、年に何回か、雨や雪を降らせていた。暦の上では、春が近づきつつある時期なので、この冬最後の雪として降らしているのだろう。地下都市のエネルギーは、年々、減りつつあり、エネルギー供給ができない都市は、次々に消えていた。もしかしたら、本当に地球上最後の雪になってしまうのかもしれなかった。

「無駄なエネルギーの放出だな」

 進は、空を仰ぎ見ながら言った。

「そうだろうか、古代」

 小倉の言葉で、進は、小倉の頭に視線を戻した。

「俺は、少なくとも、元気になったよ」

 ヘルメットが邪魔をして、小倉の顔が見えなかったが、声を聞いていて、さっきの苦しそうな息声が消えているのに気づいた。

「そういう部分って大切じゃないか、古代」

 目の前には、天に手を差し伸べて、雪を掴もうとしている伊藤と健二郎がいた。

「思い出すな、子どもの頃。もう、雪なんか、見ることができないと思っていた......」

 小倉はそう言うと、再び歩き出した。

 進は、また、空を仰いだ。天井は、昔のような空や雲ではなかったが、雪は、はかないダンスを踊っているように見えた。

 

 進の班は、往路の二倍の時間をかけて、戻ることができた。

「やったー。これで終わったぁー」

 健二郎の言葉を聞いて、疲れた進の顔も和んだ。

「一時は、どうなるかと思ったけど」

 そう言った伊藤は、進に握手を求めた。進は、伊藤の差し出した手を見て、驚いた。伊藤は進の手を握ると、もう片方の手も添えた。

「お前がずっと、気配ってくれたからな」

 ゴールで進たちの帰りを待ち続けていた土方は、進たちが喜びあっている様子を見届けてから、帰っていった。

 一番、体力が心配された小倉は、ヘルメットを外すと、進に向かって腕を伸ばした。そして、肩をぽんと叩いた。

「きれいだったな、雪が」

「ああ」

 進は、笑顔を小倉に返した。 

 

 就寝時間をとっくに過ぎた夜中、進は、部屋にたどり着いた。大介のことを気にしてか、電気もつけず、手探りでベットにむかっていた。

「!」

 突然の灯に進は驚いた。手許のリモコンで、大介が灯をつけたのだった。

「おかえり、古代」

「驚かせるな」

 進は、大介が想像していた姿より、うんと元気だった。

「おれは、もう、寝るぞ」

「ああ、悪かった、電気を消すよ」

 大介は、進がベットに入るのを確認すると、灯を消した。

「どうだった?あれから」

「雪が、雪がきれいだった.......」

 それは、大介の言葉に答えたのか、それとも、もう半分眠りの中に入りかけた進の寝言だったのか?

 

「そんなこともあったな」

 南部康夫は、思い出し笑いをした。

「土方艦長も古代も、お互いのことがわかりあっているんだな」

 真田志郎は、何か、納得したようだった。

「他にもあるんでしょ、古代くんと土方艦長の話」

 森ユキは、興味津々であった。

「ええ、じゃあ、今度は、ぼくが話しますよ」

 チェックが終わって、手持ちぶたさになったのか、今度は相原義一が、話し出した。

 


 土方竜は、モニターに写っている、遠ざかっていくヤマトを見ていた。

「古代か......。あいつならやるだろう」

 ふ、ふふ......

 土方の笑いがアンドロメダの艦橋に響いた。

[END]



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