少年時代 2
2202年 ヤマト、ゴルバとの戦いから帰還後の地球 

「古代は、古代進は行ったのか」
「ああ」
 真田志郎の質問のあと、古代守の力ない返事が返ってきた。
 志郎はそれを聞くと、つぶやくように言葉を続けた。
「宇宙勤務をしたいというのが、あいつの希望だったからな。まあ、それでバランスが取れるようなら、今は宇宙で仕事をしていた方がいいのだろう」
 そう志郎は話したが、隣にいる友が、地上勤務にこだわったことには触れなかった。
(お前は地上勤務することで、バランスを取るんだな)
 傍らの保育器の中では、娘のサーシャがすやすやと眠っている。
 守はあえて娘と別れて暮らすことを選択していた。娘を預けることには迷いはないようだった。志郎にとって、それが不思議なことに思えていた。
 しばらくすると、守はフフッと自嘲的な笑いした。
「どうした?」
 娘との別れの時を複雑な気持ちで迎えているのではないかと、志郎は言葉をかけた。
「いや、お前が進の事を『古代』と呼ぶから……いや、それが嫌だということではない。昔もそうだった。進は俺が10になる年に生まれて……初めて対面したときは、こんなにかわいい存在が世の中にあるんだと知った。けれど、それと同時に、俺は、今まで自分だけ受けてきた親からや周りからの愛情や関心を奪われたことにも気づいた」
 志郎は答えに詰まった。
「なのに、進のかわいさは、いつも自分の寂しさよりも上だった。それは今でも変わらない。そして、いつか進は自分より上にいくだろう……そう思わないか、真田」
「だからなのか?」
 志郎は、守が自分の娘の側にいるよりも、地球防衛軍の中心にいて組織の改変への取り組みを選んだ理由を知った。
「あの夏の日、初めて笑ってくれた進の顔を見たときから、この笑顔をずっと守りたいと思ってしまった。あの気持ちが、今も続いていることに気づいてしまった」
 守の顔はすがすがしかった。
 志郎は、その笑顔をみつめていた。
 守は志郎の背中に手を回し、がっしり肩を掴んだ。
「だからといって、親友を取られるのはやっぱり嫌だな。進とはほどほどにしておいてくれ」
 訓練学校時代から、守は笑顔を絶やさなかった。志郎は守の笑顔が好きだった。
 娘との別れの時だというのに笑う守に合わせて、志郎も笑った。





なぜ、この話を書いたのか、知りたい方はこちらを読んでね。
SORAMIMI
 

   

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