第13章 心を癒す微笑み
北川たちと斉藤がやってきた日の夜、海鳴基地では作戦前のパーティーが開かれていた。海鳴基地にいる人員が作り上げた料理の数々が即席のパーティー会場に並べられ、色とりどりのお酒が並べられている。パーティー前に出された宿題を仕上げた祐一がボロボロになりながら提出して、シアンに冷たい視線を突きつけられながら再提出を食らったりと、多少の問題はあったものの、パーティーは予定通り始められたのである。
軍服を脱いでタキシードに着替えた久瀬が一段高い所に上がり、マイクを手に一同に挨拶をする。
「ええ、本日はお集まりいただき、真にありがとうございます。このパーティーは・・・・・・」
「挨拶なんか良いから、さっさと始めろ――!」
「そうだそうだ―――!」
いきなり野次を飛ばしてくる祐一と浩平に、久瀬は額にぶっとい血管を浮かべた。何気に持っているマイクがプルプルと震えている。
「・・・・・・あ、相沢少佐、折原君、もう少し我慢してはいただけないでしょうか?」
「駄目」
「料理が冷める」
はっきりと言い切る祐一と浩平に、久瀬はがくりと肩を落とした。相手は自分より2階級も上位の少佐であり、自分では何も言う事が出来ない。何気に悔しげな形に曲げられた唇が彼の内心を示しているだろう。
仕方なく久瀬はスピーチをすっ飛ばしてパーティーの開始を宣言し、壇上から降りた。何気に駆け寄ってきた名雪と瑞佳がペコペコと頭を下げ、少し困った顔で久瀬が顔の前で手を振っている辺り、微笑ましいと言うべきなのだろうか?
今日はシアンの妻である郁未・ビューフォートも旧交を温める意味もあって娘同伴でパーティーに参加している。久しぶりに郁未に会った名雪と香里、栞は郁未にしがみ付いている女の子を見て嬌声を上げていた。
「かわいい」
「この娘が未悠ちゃんなんだ。前に見たときは赤ん坊だったから、大きくなったよねえ」
「うう、私も欲しいような・・・・・・でも相手がああ」
未悠を前にわいわいと騒ぐ3人に怯えたのか、未悠は郁未の後ろに隠れてしまった。それを見た郁未が苦笑を浮かべる。
「御免ね。この娘、少し人見知りするのよ」
「へえ、郁未さんと違って気弱なんですね」
栞が思った事を素直に口にして、自分が何を口走ったのかに気付いて額に汗を流しながら恐る恐る郁未を見た。だが、予想に反して郁未は切れる事も無く、怖がっている娘をあやしている。
「あれ、怒ってませんね?」
「ほんとだ。昔の郁未ちゃんなら栞ちゃんを小突くくらいはするのに」
意外そうな栞と名雪に、郁未は少しむっとした顔で答えた。
「あのねえ、怖がってる娘を更に怖がらせるような事するわけ無いでしょうが」
「え、えうぅぅぅぅ・・・・・・」
「郁未ちゃん、もうすっかりお母さんなんだ」
自分より娘を優先する郁未に、名雪は自分の母、秋子を重ねてしまった。子供が出来ると、人はこうも変わるのだろうか。何となく自分が生まれる前の母はどういう人だったのか、興味を持った名雪であった。
4人でワイワイと談笑していると、それまで郁未から全く離れなかった未悠がいきなり表情を輝かせて郁未から離れてとてとてと走り出した。
「パパ〜〜〜」
未悠が駆け寄った先には、軍服姿のシアンがいた。シアンは駆け寄ってきた娘を抱き上げると、4人の方に歩いてくる。
「よう、どうだ郁未、久しぶりの基地は?」
「懐かしいわね。この面子に囲まれてると、カノンを思い出す」
「なるほどな。確かにあの時の面子の半分近くは揃ってるか」
思えばお祭り好きな集団だ。どんなに追い詰められてもユーモアを忘れず、どんなに辛くても諦めない。何時も笑って前を向こうが合言葉な、本当に楽しい奴らだった。
「でも、今度の相手は舞やトルクなんでしょう。大丈夫?」
郁未が心配そうに夫や友人たちを見る。確かにこの3人は桁違いの強さを持っているから、郁未が心配するのは当然だろう。少なくとも、あの2人と戦えるのはこの基地にはシアンと茜、氷上しかいない。
だが、シアンは何時ものどこか緩い表情で郁未に答えていた。
「まあ、明日にも俺たちは出撃する。近くの連邦基地にも支援を要請してあるし、楽な仕事になるだろう。アムロや舞、トルクがどんなに頑張ったって俺たちの圧勝は揺るがないさ。何しろ数が圧倒的に違う」
「それは、そうだけど」
「あの3人倒すのにこれだけの面子を揃えたんだ。むしろ向こうが戦わずに逃げ出さないかどうかが心配だよ。これ以上先に行かれると、ユーラシア方面軍の管轄になって手出し出来なくなる」
一応、連邦軍にも所轄というものがある。海鳴基地は極東方面軍に属しており、北川も分類ではこの極東方面軍になる。これらに南アジア方面軍、中央アジア方面軍、太平洋艦隊、インド洋艦隊、オーストラリア方面軍などを纏めて第4方面軍と呼ばれる。第4方面軍の司令官はオーストラリア方面軍司令官のジョン・コーウェン大将が兼任している。
他にもユーラシア方面軍、中東方面軍、ヨーロッパ方面軍、大西洋艦隊、地中海艦隊を纏めた第2方面軍、北アフリカ方面軍、南アフリカ方面軍、ダカール防衛軍、アフリカ艦隊、ペルシャ湾艦隊などを纏めた第3方面軍、そして北アメリカ方面軍、南アメリカ方面軍、パナマ艦隊、本国艦隊を纏めた第1方面軍がある。本国艦隊というのは地球軌道を守る複数の艦隊を纏めた名称で、宇宙ステーション、ペンタを母港としている。
これらの所轄を超えて作戦行動するのは、軍部内では戒められている行為だ。佐祐理はジャブローからの特命を受けていたから第4方面軍の管轄地域に入れているのであり、そうでなければ色々手続きが必要な所だった。
実の所、佐祐理の派遣が問題なく行われた背景には、マイベックの要請を受けたコーウェンが二つ返事で了承したという経緯もある。2人とも中道派の要人なので、話が通りやすいのだ。これがティターンズ寄りであったり、エゥーゴ寄りの急進派だったり、事無かれ主義の無能な人物だったら手続きに手間取り、出撃できる頃にはアウドムラは手の届かない所に消え去っていたはずだ。
何とも自信満々に勝利を約束するシアンに、郁未は安堵しながらも「馬鹿、その自信が失敗の元なのよ」と注意した。軽口を叩きあいながらも娘を連れて仲睦まじい姿を見せるシアンと郁未に、名雪と栞が何やら妄想を働かせだしたらしく、ぽややんとした顔になっている。ただ、香里だけは少し表情を曇らせ、そっとその場から離れた。少ししてからそれに気付いた名雪が周囲を見渡し、香里の姿が無い事に首を傾げている。
「香里、何処に行ったの?」
見れば何時の間にやら姿を消している者が幾人もいる。北川や一弥の姿も無いし、祐一と浩平は壇上で馬鹿な漫才をしては参加者から笑いを取っている。見れば晴香や名倉姉妹も加わっている。あ、斉藤艦長が2人に捕まって壇上に押し上げられた。
瑞佳と澪は葉子と食事をしながら談笑をしているし、氷上は茜を酒の飲み比べをしている。周囲には空になったボトルが散乱しているので、余程沢山飲んでいるのだろう。
名雪は周囲をきょろきょろと見回しながら北川を探したが、どうやら会場内には居ないようだ。だが、そんなふうにして歩いていると、いきなり誰かにぶつかってしまった。
「あうっ」
「おっと」
衝撃に驚いた名雪だったが、すぐに自分の不注意を謝った。
「すいません、前を見てませんでした」
「いやいや、気にしなくて良い」
相手は左目を眼帯で隠した40前後の少佐だった。この海鳴基地の副司令官を勤めるデビット・ラウンデル少佐だ。ゆるいシアンに成り代わって久瀬と共に基地内の綱紀粛正を促す常識人である。もっとも、久瀬と違って逃げるのも上手なので、彼のように貧乏くじを引いているわけではない。
「水瀬名雪少尉だったかな。誰かを探しているのかね?」
「あ、はい。北川大尉を、ちょっと」
「北川大尉か。彼なら、確か港の方に行った筈だが」
「港ですか?」
「多分、灯台のある堤防だろう。酔いでも覚ましに行ったのではないかな」
「灯台ですね。分かりました」
ラウンデルの話を聞いた名雪は会場から駆け出して行ってしまった。その足は歩兵部隊に欲しいと思わせるほどに速く、見送ったラウンデルが唖然としているうちに会場から消えてしまった。
北川は灯台の下で1人ワインのボトルを傾けていた。昔の仲間が沢山居るというのに、今の自分にはあの場は辛い。明るい空気がかえって忌々しくさえ感じる。しかも、自分の中に祐一たちとの再会を懐かしむ気持ちが生まれた事にさえ腹が立っているのだ。何故かは分かっている。自分は、自分が救われる事を望んでいないのだ。
「・・・・・・全く、俺はどこか壊れてるんだろうな」
そう呟いて、ボトルを直接口につける。昔は余り酒にも強いわけではなかったのだが、現実を忘れる為に酒に逃げたことも多かった今では、このくらいでは酔う事も無い。ただ波飛沫の音を聞きながらぼんやりと空を見上げている。
この日本は自分の両親の生まれ故郷でもある。中央アジアに吹く乾いた風より、ここに吹く風の方がやはり自分には合うようだ。空に輝く星を見上げながら、北川はまたボトルを口に含もうとした。
「宴会から逃げ出した人、発見」
「ぶっ!」
含もうとして吹いてしまった。そのまま少し苦しそうに咳き込み、頭を上げて声の主を見た。
「・・・・・・水瀬、か」
「うん、そうだよ」
そう言うと、名雪は北川に断る事も無く隣に腰を下ろしてしまった。柔らかな長い髪が風になびき、緩やかに流れている。流れる髪を右手で押さえながら気持ちよさそうに海を見る名雪の横顔の美しさに見惚れた北川は、我を取り戻すと慌てて顔を逸らせた。
『な、何を考えてるんだ俺は。水瀬は相沢の彼女なんだぞ』
一瞬、その美しさに惚れそうになったなどとは口が裂けても言えない。だが、普段はぽやぽやしているので気付かないが、名雪は少し表情を引き締めると絶世の美女となる。美人というだけなら鹿沼葉子の方が上なのだろうが、あちらはややキツさがあるのがマイナス要因だ。
名雪は何やら顔を赤くしている北川を見て首を傾げたが、とりあえずそれは追求しなかった。それよりも話さなくてはいけない事があるからだ。
「北川君、北川君がこの2年、いや、3年かな、でどういう苦労をしてきたか、香里に聞いたよ」
「・・・・・・そう、か」
北川は途端に表情を消した。名雪はそんな北川の態度に構うことなく話を続ける。
「私はそういう戦争をした事無いから、北川君の気持ちは分からないよ」
名雪はまずそう言い切った。その一言が北川の態度を更に硬化させると分かってはいたが、まずそう言ったのだ。
「でもね。北川君が不幸にしてきた人の事を背負ってるのは、分かるよ。誰よりも自分が許せないんでしょう?」
名雪の問い掛けに、北川はピクリと肩を震わせた。それを見て名雪は「やっぱりね」と呟き、小さく笑った。
「やっぱり、北川君は北川君だね。かっこ付けても、そういう所は変わってないよ」
「・・・・・・水瀬に、俺の何が分かるっ?」
北川は少し声を荒げて名雪を見た。
「宇宙でぬくぬくとやってたお前らに、俺の気持ちが分かるのかよ!?」
北川が苛立ってきつい視線を叩きつけてきたが、名雪はそれを真っ向から受け止めて見せた。香里はここで顔を逸らせてしまうのだが、名雪はこういう時には恐ろしく強い。逆に北川の方が一瞬怯んだほどに今の名雪の表情は不思議な力強さを見せている。
「分からないよ。北川君の気持ちなんて分からないって言ったでしょ。私は北川君の不器用な所が昔と変わってないって言っただけで、今の北川君が名に考えてるかだなんて分からないよ」
「ああ、分かるわけ無いさ!」
北川はそう言って顔を逸らせたが、名雪は北川の様子などお構い無しに話を続けた。
「分かるわけ無いよ。北川君、何も話してくれないもの」
名雪の言葉に、北川は今度こそ衝撃を受けた。その顔がゆっくりと名雪の方を向く。名雪は表情に険しささえ漂わせ、北川を睨みつけている。
「どうして話してくれないの。そんなに私が、祐一が信じられないの。香里は顔には出してないけど、苦しんでたよ。責任感が強いのは北川君の良い所だけど、全部背負うってのは無理だと思うよ?」
名雪の言葉は強くも、鋭くも無い。だが、誤魔化す事も嘘をつく事も許さない何かがあった。秋子譲りの天性の何かがあるのだろう。
北川は暫く迷っていたが、観念したように肩を落とすとポツリポツリと喋り始めた。
「・・・・・・地球にきてから、あっちこっちを転戦したよ。ジオン残党を狩り出す為に色々とやった。村1つを焼き払ったのも10回やそこらじゃない。無関係の人間を何百人巻き込んだか分からない。最初は仕方ないと思ってたが、だんだん自分のしてる事が分からなくなってきたんだ」
北川の声には悲しみも哀れみも無かった。ただ淡々と事実だけを語る重苦しさだけがあった。名雪はそれをじっと聞き入っている。
「俺は、何の為に戦ってるんだ? 何を守りたかったんだ? 何を信じて戦ってたんだ? その答えが、昔は胸を張って言えたのに、今じゃ全部自分の中から無くなっちまった。いっそシアンさんみたいに給料の為とか割切ろうかとも考えたんだけど、そう簡単には割り切れなかった」
現実に打ちのめされた、という事なのだろう。これが祐一なら「それがどうした!」と開き直ったりもできるのだが、北川はそれが出来ない性分なのだ。だからこうして悩んでしまう。
ファマス戦役時代には祐一とセットになる事でお互いの欠点が上手く保管されあっていたのだが、2つに分かれたらお互いの問題点が浮き彫りになってしまっている。結局、北川はTOPには向かない、bQの位置がふさわしいという事なのだろう。祐一のように物事を割切って考える事が出来て、何かを背負っても前を向ける男がTOPに立つべきなのだ。だが祐一には残念ながら指揮官として必要な指揮能力、作戦立案能力などがやや欠けていたりする。神様はこういうところで手を抜くのがお好きらしい。
ちなみに、シアンや久瀬、みさきのように全てを兼ね備えた人材もいるにはいるのだが、何故か久瀬以外は仕事への熱意が今ひとつなのが問題だ。佐祐理と美汐はパイロットとして少し劣る。
北川の話を聞いた名雪は、幾度か小さく頷いた後、「良し」とか言って腰を上げた。
「北川君、パーティーに戻ろうよ」
「・・・・・・俺は、ああいう明るい所は」
「お酒とかお料理もまだ残ってるよ」
「いや、だから・・・・・・」
「きっと楽しいよ」
ねっ、と笑顔で言い切られ、北川は反論に詰まってしまった。何を言っても言い返される気がする。しばし戸惑っていた北川だったが、遂に渋々と頷いた。それを見た名雪が嬉しそうに北川の手を掴み、会場へと駆け出した。
「さあ、れっつごーだよ!」
「ちょ、ちょっと待て水瀬、俺はお前ほど速くない!」
「手を引っ張ってあげるから大丈夫だよ〜」
100メートルを10秒切る名雪の足が唸りを上げ、北川はかろうじて転ばないという微妙な状態で懸命に駆けていく。その姿は、何となく昔の名雪と雄一を髣髴とさせる光景であった。
会場に戻ってきた名雪と北川とタイミングを合わせたかのような、実に丁度良いタイミングで新たな客人が到着した。基地の衛兵から来客を告げられたシアンが許可を出し、会場の入り口に車が付けられる。そして車から降りてきたのは、目を見張るブルネットの美人だった。エプロンを付け、両手に大きめの箱のような物を抱えている。
「翠屋デリバリーサービスご利用、ありがとうございましたあ」
「な、フィ、フィアッセさん!?」
驚いた久瀬が慌てて駆け寄ってくる。そう、彼女こそ世界にその名を知られる光の歌姫フィアッセ・クリステラだ。ちなみに現在は翠屋のチーフウェイトレスである。
フィアッセは久瀬を見て嬉しそうに笑顔を作った。
「あ、隆之、元気?」
「ええ、それはもう。あ、この荷物お持ちします」
「ああ、いいよ。今日は隆之はお客様だから」
持つと言う久瀬にプロ意識で断るフィアッセ。仕方なく変わるのは諦めた久瀬に、更に別の女性から声がかけられた。
「あれ、久瀬さんだ?」
「おお、美由希さんか。君も手伝いに?」
「はい。流石に数が多かったもので」
そう言って美由希もよいしょっとという掛け声と共に荷台から大きな箱を持ち出してくる。それらは会場に運ばれ、開いているテーブルに置かれた。それが何かに興味を持った一行は、フィアッセが開けた蓋の中から出てきたものを見て「おー」と感嘆の声を上げた。
「これは、シュークリームですね」
「うん、うちのお勧め商品だよ」
フィアッセのまぶしい笑顔につられるかのように1つを手に取った祐一がパクリとそれを口にし、すぐに何やら幸せそうな顔になった。
「むう、このマッタリと甘く、それでいてしつこくないクリーム。ぱりっと香ばしい生地、素晴らしいボリューム・・・・・・・・・」
無造作に2個目に手を伸ばそうとした祐一だったが、いきなり後ろから後頭部をはたかれて豪快に床にキッスをするハメになった。
「ブオッ! だ、誰だいったギャアアアア!」
そのまま背中に複数の人間が乗ってくる。いや、これはシュークリームを取ろうとして祐一を踏んでいるだけだろう。足元からの悲鳴に誰も反応しないのは意図的に無視しているからか、それとも別の意図があるのだろうか。
ちなみに祐一の後頭部をはたいたのは浩平で、踏みまくっているのはシアンだったり栞だったり佐祐理だったりする。久瀬は踏みたそうだったが常識に邪魔されたようだ。
それぞれが手にしたシュークリームを口にして幸せ感を味わっている中、シアンは持ってきた2人に礼を言っていた。
「悪いな。無理を言ってしまった」
「別に良いよ。桃子も張り切ってたから」
「あれは張り切ってたというより、鬼気迫ってるって感じだったけど」
「そうだね。「これはパティシエである私への挑戦だわ!」って叫んで作ってたからね」
「む、別に桃子さんをけしかけた訳ではないのだが」
「あの時間帯での注文数が充分に挑戦だったよ」
シアンがパーティー用に注文したのは今日のお昼前。店の面子は口を揃えて無理だといったのだが、何故か熱くなった桃子が力の限りを振り絞って作り上げたのだ。その姿はまさに修羅であったという。
「それに、隆之にはコンサートの警護をしてもらうからね」
「は、はい。お任せください。賊など1人も会場に入れはしませんから!」
声をかけられた久瀬はまるで敬礼でもしそうなほどにびしいっと姿勢を正した。その顔はやや赤く、照れているのが分かる。その好意があるのが丸分かりな態度を見た佐祐理の機嫌がたちまち急勾配となり、何やらどす黒い怒気をみなぎらせている。
「あははは〜、そうですか、久瀬さんにはこんなに美人の方がいらしたんですね〜」
「・・・・・・・・・・・・・はい?」
久瀬は事態が飲み込めず、佐祐理の方を見た。見た目は余り変わっていないが、よく見ると額に血管が浮かんでいる。ついでに目が笑っていない。僅かに口元が引き攣っている。ついでにワイングラスを持つ手が僅かに震えている。
「い、いえ、あの、倉田さん。フィアッセさんは僕の友人でして、別に特別な関係というわけでは」
「では、フィアッセさんは久瀬さんに好意はないと?」
佐祐理が視線をフィアッセに転じる。フィアッセは事態が飲み込めずにキョトンとしていたが、これまでの話から佐祐理が何を聞きたいのかを推察して答えた。
「私は、隆之の事は好きだよ」
「なあっ!?」
「あ、あはははははは〜〜〜〜」
祐一などとは異なり、フィアッセには悪意が無い。これは勿論本気で言っているのである。友達として好きだと。
驚愕する久瀬と、何やら壊れたような笑い方をする佐祐理。やっぱり状況が理解できていないフィアッセに変わって美由希が話に割り込んできた。
「え、ええと、その人は久瀬さんの恋人、ですか?」
「・・・・・・・いや、多分違うと思う」
「違うんですか。でも、なんだかとてもショックを受けてるみたいですけど?」
見れば佐祐理は笑いが収まった途端、この世の終わりが来たかのようにどんよりと暗い空気を背負っている。祐一を踏んでいたシアンや栞でさえ一歩退くほどにどんよりとしている。
美由希はもう一度久瀬に問いかけてみた。
「本当に違うんですか?」
「・・・・・・たぶん」
なんだか弱気になる久瀬であった。
誰もが何を言えば良いのか分からずに黙り込んでいる。佐祐理の空気が周囲に感染したかのようにどんよりとしている。その時、その場の空気を切り裂く絹のような悲鳴、では無く、助けを求める絶叫が響き渡った。
「ギャアアアアアアアアア、助けてくれえええええ!!」
「「「「「「「え?」」」」」」」
声のした方を見てみれば、倒れていた祐一に馬乗りになった未悠が祐一の髪を引っ張って遊んでいるではないか。祐一は半泣きになりながら周囲に助けを求めている。
「し、シアンさん、未悠ちゃん何とかしてくれ!」
「いや、何とかしてくれと言われても」
シアンは困った顔で嬉しそうな未悠を見る。人見知りする娘にしては珍しく、祐一を気に入ったようだ。玩具として。
「きゃははは、おにぃちゃん、ごぉぉぉぉ〜〜」
「俺は乗り物じゃないんだああああ!」
悲痛な悲鳴を上げる祐一だったが、何故か誰も助けてくれそうに無い。シアンにいたっては嬉しそうな顔でうんうんと頷いているではないか。
「何顔を綻ばせてるんだよ、シアンさん!?」
「いや、小さい娘が初対面の男に笑顔で懐いてる姿を見ると、こう、親として少し安心というかねえ」
「ちょっと待てええええ」
「いや、だが相沢のような天然女たらしに懐くというのは、親として心配するべきなんだろうか」
「待てこの親馬鹿あああああ!!」
何やら真剣に悩みだしたシアンに祐一は罵声をぶつけるが、親馬鹿モードに入っているシアンには聞こえていない。仕方なく周囲に助けを求める視線を向けるが、何故か誰もが目を逸らせた。
結局、響き渡る悲鳴にようやく駆けつけてきた郁未が未悠を引き剥がすまで祐一の苦難は続いたのである。未悠を抱き上げた郁未はすまなそうに祐一に謝った。
「御免、相沢君。頭は大丈夫?」
「うううう、俺のナイスな髪型が何ともエキセントリックな姿に」
がっくりと項垂れている祐一にもう一度頭を下げた郁未は、キッときつい目でシアンを睨んだ。
「あなた、何で相沢君を助けてあげなかったの?」
「い、いや、その。初対面の相沢に懐く未悠が可愛くって・・・・・・で、懐く相手が相沢というのは微妙に問題が無いかと思えてな」
「何を馬鹿なこと言ってるの。まったく、あなたは未悠が絡むと本当に何時も常識が無くなると言うか」
「いや、だから、これには・・・・・・」
「口答えはしない!」
「は、はい」
姿勢を正すシアン。何となく家庭内の権力構造が丸分かりな一幕であった。だが、未悠のおかげで場の空気が変わったのは事実であり、佐祐理とフィアッセは苦笑を交し合っていた。
「あ、あの、フィアッセ・クリステラさんですよね」
「うん、そうだよ」
「お父様が何時もお世話になってます」
「え・・・・・・と、ああ、倉田って、幸三さんの娘さんなんだ。佐祐理は」
「はい。父がまた馬鹿な事をしてませんでしたか」
「うーんと。冗談だと思うけど、「女子高生の制服を古き良き「セーラー服」と「ぶるまぁ」に戻す法案を提出する」って前に会った時に息巻いてたかな」
「・・・・・・・・・・あ、あはは、は、は・・・・・・・・・・・・」
佐祐理の額に青筋が浮かび、笑い方がなんだか虚ろになる。回りで聞いていた奴らはどう突っ込んだら良いかと顔を見合わせているが、そこに更にフィアッセの追い討ちがかけられた。
「そうしたらパパまで「やろう、新しい世界の幕開けの為に」とか言って熱い握手を交わしてたけどね」
「ア、 アルバート叔父様まで・・・・・・」
アルバート・クリステラと倉田幸三。2人とも連邦上院議員であり、中道派の中心人物である。現在の暴走する暴力に諦めず、ティターンズの権限拡大と暴走を食い止め、エゥーゴの武力蜂起に同調する事も無かったりと、二つの過激派勢力から目の敵にされている人物である。2人とも立場を自覚してか強力な護衛を付けていたりするのだが、まさか、そんな馬鹿な野望を持っていたとは。何となく2人のイメージが音を立てて壊れた瞬間であった。
「なるほどね。あの倉田議員やクリステラ議員にそんな漢な、いや、面白い一面があったのか」
復活した祐一がニヤリ笑いをしながら呟く。どうやら彼の心にある何かが共感しているらしい。
そんな祐一を見て、シアンがサラリと突っ込んだ。
「しかしまあ、俺の部下だった奴には甲斐性無しが多いなあ。何時まで女を待たせる気なのやら」
シアンの情けなさそうな呟きに祐一と久瀬と北川と浩平がビクリと肩を震わせた。それぞれに思う所があるのだろう。ただ、それを聞いた茜が瑞佳と話すのを止めて義兄を見た。
「兄さん、それは間違っていますよ。浩平と瑞佳はもうゴールイン半歩手前ですから」
「いや、彼は俺の部下じゃないし」
「・・・・・・なるほど、そうですね」
失礼しましたと顔を瑞佳に戻すと、何故か瑞佳は顔を真っ赤にして下を向いていた。
「ま、まだ何も言われてないんだよもん、告白なんてまだなんだよもん、手もだしてこないんだよもん、浩平はヘタレな根性無しなんだよもん・・・・・・・・・」
「そうでしたか」
瑞佳の呟きを聞いてなるほどと頷く茜。浩平は祐一のように床に突っ伏してシクシクと泣いていた。
何とも異様な状態に陥っているパーティー会場。とりあえず笑いが絶える事だけはなさそうだ。そんな会場を入り口の方から眺めていた名雪は、隣に立つ北川を見た。
「ね、楽しいでしょう?」
「いや、これは楽しいというのか?」
「楽しいと思うよ」
はっきりと言い切る名雪に、北川は首を捻って唸ってしまったが、確かに楽しいと言えば楽しいのかもしれない。いや、昔は何時もこうだったのではないだろうか。あの懐かしいカノンにいた頃は。
「・・・・・・楽しいのかもしれないな」
北川の呟きを聞いた名雪は嬉しそうに頷くと、小さくガッツポーズを作った。
「北川君、ふぁいと、だよ」
何となく気の抜ける応援をして、名雪は会場の中へと戻っていく。多分祐一の元に戻ったのだろう。それを見送った北川はやれやれと肩を竦めると、近くのテーブルから新しい酒瓶を取り、グラスに注いだ。まだあの輪に戻る事は出来ないが、傍で見てるくらいは出来そうだ。
酒を注いだグラスを取ると、それを一気に喉に流し込んだ。それは、胸に溜まった何かを、纏めて押し流そうとするかのような飲み方であった。
宇宙ではティターンズが少しずつエゥーゴに押されるようになっていた。これまで8つの任務部隊を2交代で4つずつ展開させていたのだが、最近では2つ、乃至3つしか出てこなくなっている。これを好機と見たエゥーゴは攻勢を強め、ティターンズの任務部隊を仕留めようとしていた。
今も月−グリプス間の航路上でティターンズ艦隊とエゥーゴ艦隊が熾烈な艦隊戦を演じているのだが、その戦いはどう見てもエゥーゴが優勢であった。エゥーゴはこの戦場に戦艦3隻、巡洋艦7隻、駆逐艦12隻を投入しているのに、ティターンズ側は重巡洋艦1隻、巡洋艦3隻、駆逐艦5隻とかなり負けている。戦いは艦隊戦、MS戦共にティターンズが圧倒されている状態だ。
ティターンズ艦隊の指揮官である重巡メソポタミア艦長、エメット・ブラウン中佐は必死に艦隊を後退させていたが、その戦力差は絶望的であった。
「くそっ、味方は近くにいないのか。第6任務群はどうした!?」
「駄目です、通信が繋がりません。エゥーゴの散布しているミノフスキー粒子が濃すぎます!」
「連絡艇は!?」
「出していますが、間に合うかどうか・・・・・・」
参謀の答えにエメットは歯噛みしながらもそれ以上の愚痴を断念し、艦隊の指揮に専念した。だが、敵にある戦艦3隻が圧倒的過ぎる。うち1隻はMS搭載能力を持たない旧式のマゼラン改だが、砲撃戦ではアイリッシュ級以上の脅威となる。流石に大鑑巨砲主義の権化とまで呼ばれただけある。
その時、メソポタミアの隣でサラミス改が直撃を受けて大破してしまった。
「巡洋艦クロンプリチェイン、大破!」
「状況は!?」
「艦長以下、主要スタッフは全員戦死。現在機関長の指揮の下、艦を後退させるといってます。航行には支障は無いそうです!」
「くっ、無事を祈ると伝えろ」
後退していくクロンプリチェインをカバーするようにメソポタミアが移動する。だが、メソポタミアにも僚艦を心配している余裕などは無かった。いよいよMS戦の決着が付こうとしていたから。
「MS隊、戦力の3割を損失。防衛線を維持できません!」
「残存は戻して艦隊防空に専念させろ。全艦、対空戦闘用意!」
各艦の対空銃座が迫るMSに向けられるが、戦況は絶望的だった。味方のマラサイを突破した真紅のZと3機のリックディアスがたちまちサラミスの1隻に迫る。そのZとリックディアスの1機は驚異的な強さを発揮し、対空砲火も護衛のMSも物ともせずにサラミス改に襲い掛かった。
「ジェラルド、お前はサラミスを殺れ!」
「了解しました!」
真紅のZが護衛のガブスレイをロングビームサーベルで串刺しにして開けた防衛線の穴からリックディアスが飛び込み、艦橋や機関部にクレイバズーカを叩きこんで離脱した。それは、対艦攻撃に慣れた者の動きだった。
2機が離脱した所でサラミスが爆発を起こし、機関部の有縛の光を残して消滅してしまう。
「ライデン少佐、次はどれを仕留めます?」
「焦るなジェラルド。敵の残存MSを仕留めるのが先だ。ヒヨッコどもが食われるぞ」
久しぶりに艦を仕留めて気が高ぶっているらしい部下をライデンは嗜めた。
だが、ライデンたちが心配するまでもなく、ティターンズ艦隊の崩壊は速かった。僅かな数のマラサイやマークUを多数のネモやリックディアスが袋叩きにし、MSの傘を失ったティターンズ艦隊にメタスや旧式のパブリク突撃艇が突入し、対艦ミサイルを叩きつけていく。
MSの傘を失った艦隊は哀れだ。次々にMSに取り付かれ、破壊されていく。連邦のように防空艦を配備しているわけでもないティターンズには、艦艇単独でMSを食い止める事など出来はしなかったのだ。
メソポタミア艦上で次々に沈められていく味方艦艇を青褪めた顔で見ていたエメットに、オペレーターが悲鳴のような報告を寄越した。
「敵駆逐艦隊、突入してきます!」
「いかん、近付かせるな!」
「無理です!」
突入してきたセプテネス級駆逐艦12隻は近距離から大型の対艦ミサイルを放つと反転して去っていった。これが駆逐艦の戦い方である。突撃艇から発達した駆逐艦は、敵艦に致命傷を与えられる大型の対艦ミサイルランチャーを複数装備しているのが特徴で、敵艦に肉薄して対艦ミサイルを一斉に撃ち放つのがその戦法となる。防御スクリーンが発達した現代ではこの第二次大戦を髣髴とさせる戦法は有効な手段となった。
突撃艇やメタスが運ぶ対艦ミサイルとは比較できない威力のミサイルが放たれ、ティターンズ艦に向かっていく。ティターンズ艦は残り少なくなった対空砲火と対ミサイル粒子弾でそれを迎撃したが、その全てを食い止める事など叶わなかった。
直撃を受けた駆逐艦が一発で爆沈し、穂弾して航行不能になっていたサラミスに止めが刺される。そして、メソポタミアにも直撃の閃光が走り、艦橋を襲った一発がエメットら幹部クルーもろとも艦橋を吹き飛ばしてしまった。
壊滅したティターンズ艦隊を見てラーディッシュ艦長のヘンケンは残りのMSを仕留めるように指示を出した。
「敵を完全に掃討するぞ。この辺りの制宙圏を完全なものにしてブライト大佐の部隊を待つ」
その指示に従って生き残りのティターンズMSをエゥーゴ機が次々に仕留めていく。戦闘とは敵が降伏するか居なくなるまで続くのだ。
だが、ヘンケンは気付いていなかった。自分たちが些かグリプスに近づき過ぎていた事に。それに最初に気付いたのは周辺を警戒していた哨戒機であった。それからもたらされた報告がエゥーゴ艦隊にパニックを呼んでしまう。
「ヘンケン大佐、た、大変です、新たな敵部隊が!」
「来たか。だが、少し遅かったな。返り討ちにしてやる」
ヘンケンは接近しているのがティターンズのもう1つの任務部隊だと判断し、この戦いの余勢をかってそれも叩こうと考えたのだが、やってきたのはヘンケンの想像を超えた敵であった。
「新たな敵はおよそ60隻、旗艦は戦艦エディンバラ。連邦軍第2艦隊です!」
「・・・・・・何だと?」
連邦軍第2艦隊。クライフ・オーエンス少将が指揮する連邦軍の主力、ルナツーに駐留するリビック長官指揮下の6個艦隊を擁する連邦主力艦隊の中の1つである第2艦隊が出て来たというのか。
「な、何故だ、何故第2艦隊が?」
「ルナツーに近付き過ぎたのでしょう。リビック長官を刺激したのではないかと」
「どうします、戦いますか?」
参謀の問いに、ヘンケンは血走った目でその参謀を罵倒した。
「馬鹿野郎、撤退だ。勝負になるか!」
こちらは傷ついた22隻、向こうは無傷の60隻。しかも増援は無限に近いと来ている。これでは勝負するという考えさえ浮かばない。もし戦えば一方的な虐殺になるだろう。もちろん虐殺されるのは自分たちだ。
いっそ見事とさえ思えるほどの勢いで遁走していくエゥーゴ艦隊を見送ったクライフは、別段残念そうでもなかった。仕掛けてくるなら受けて立つつもりだったが、逃げる敵を追いかける気までは無かったのだ。
戦場にまでやってきたクライフはティターンズ艦隊の生存者の捜索と、残存MSの収容を行わせると、全軍を纏めてルナツーへと帰還していった。その堂々とした姿は、地球圏の真の守護者は誰であるかを無言で物語っているかのようであり、エゥーゴでは決して手が出せない連邦軍という存在の大きさを雄弁に物語っていた。
グリプス戦争において連邦主力艦隊が動いたのはこれが初めてであり、リビックも秋子と同じく、戦火の拡大を抑えることに主眼を置いていることが浮き彫りとなった一件でもあった。
キャラ紹介
ジョニー・ライデン 29歳 少佐
一年戦争時代には『真紅の稲妻』と呼ばれた超エース。一年戦争後は暫くの間月に身を隠し、日雇いの工事などをやって生計を立てていたのだが、アナハイムにスカウトされてテストパイロットとなる。その後エゥーゴに身を移し、新兵の訓練などをしていた。
性格は意外と気さくで軽い。
会戦と共にエゥーゴのエースとして活躍し、ティターンズに夥しい犠牲を強いている。最初はリックディアスに乗っていたが、3機のZガンダムが仕上がるとその内の1機を渡された。機体色は真紅。
ジェラルド・サカイ 36歳 大尉
一年戦争時にキシリア配下のエース部隊、キマイラに所属していたエースの1人。ア・バオア・クー戦時にはキマイラを離れて本国におり、そこで終戦を迎えている。その後暫くサイド3で生活していたが、エゥーゴの誘いを受けて参加した。そこでキマイラの上官であったライデンと再会し、旧交を温めた。
現在はライデンと共にラーディッシュ隊に所属し、ライデンとチームを組んでいる。その技量は元キマイラというだけあって凄まじい。
後書き
ジム改 次回、遂に海鳴からシアンたちが出撃
栞 私の出番少なかったです
ジム改 次回は多いから心配するな
栞 本当ですね。信じますよ
ジム改 信じて良いぞ。次回は久々に色々動くから
栞 色々というと、誰がです?
ジム改 議会とか、ティターンズとか、アヤウラとか
栞 そして私たちもですか
ジム改 そろそろアーセンも出てくる。ゴータの新型もお披露目しないと
栞 忙しいですねえ
ジム改 うむ、忙しい
栞 そういえば、久しぶりに連邦軍が出てきましたね
ジム改 クライフか。あれは単なる示威行動だけどね
栞 脅しで60隻以上の大軍ですか?
ジム改 それが出来るのが連邦軍w
栞 ほとんど虐めです。ヘンケン艦長逃げちゃいましたよ
ジム改 あれで戦うのは余程の馬鹿だけだ
栞 ところで、北川さんは美坂チームにめでたく復帰ですか?
ジム改 そんな訳ないでしょ。軋轢は消えないよ
栞 でも、名雪さんとは話してましたよ
ジム改 名雪は頑なな心も解かす不思議な女性だからねえ。北川も例外ではない
栞 ・・・・・・北川さん、浮気ですか?
ジム改 どうだろうねえ。名雪は良い女だし
栞 私は?
ジム改 相手を探してからにして頂戴