第40章  東南アジア失陥



 北から南下してきたティターンズのMS師団を。シアンは1個連隊強の戦力を持って迎撃に出た。そしてシアンが時間を稼いでいる間にアヤウラが連邦部隊を掌握してハイフォンまで撤退させるべく指揮を取っている。かつて不倶戴天の敵として殺し合いを演じた事もある2人が、今共通の敵を前に手を組んでいるというのは時代の変化を感じさせるものがあるが、撤退の指揮を取っているアヤウラにしてみれば連邦部隊を逃がす為に全力を尽くすというこの現状に疑問を感じないでもなかった。
 もっとも、アヤウラは一度取り交わした約束は律儀に守るという一面もあり、連邦部隊をハイフォンまで撤退させるとシアンに約束した以上、意地でもこれを成功させるつもりであった。

 アヤウラは空軍の総力を挙げた攻撃を仕掛けさせ、一時的に完全な戦場の支配権を握る手に出た。この為に後背の空軍基地全てに無謀とも言える総力出撃の指示が出され、この地域に展開する全ての航空機が飛行場を飛び立ったのである。
 この時の攻撃を生き延びたティターンズ将兵がこの時の連邦空軍の攻撃を「空その物が敵に回ったようだった」と語るほど、短時間に数えるのも馬鹿らしくなるような数の爆弾が降り注いだのである。この猛烈な空爆と地上掃射に耐えかねたティターンズは仕方なく一時後退し、その隙を付くようにアヤウラは全戦線から一斉に兵力を引き上げさせている。
 ティターンズはこの連邦の動きに気付いて慌てて追撃を開始したが、背後に自動車道路を持っていた連邦の撤退速度は速く、また撤退そのものも手際よく、迅速に行われた為に追撃は時期を失した感を拭えなかった。
 それでもティターンズ部隊は追撃を続行し、逃げ遅れている連邦部隊を捕捉撃滅しだした。ティターンズにしてみればここで連邦部隊を叩けるだけ叩いておかないと、1年戦争のジオンの二の舞になる恐れがあるのだ。残念ながら連邦最大の拠点、ジャブローは未だに健在であり、その比類なき防御力によって守られた生産設備が本格的に稼動しだせば、ティターンズの地上最大拠点であるキリマンジャロなど歯が立たないほどの生産力を見せ付けてくるだろう。そうなった時、連邦の戦力が十分に残っていれば、圧倒的な物量に押し潰される事になりかねないのだ。

 このティターンズの執拗な追撃に対し、アヤウラは自分本来の戦い方であるMSと戦車を使った機動防御で対抗していた。防御力の低い歩兵や支援部隊を交代させ、戦車を待ち伏せに使い、MSによる側面展開をひたすら繰り返して敵を分断、各個撃破を続けていく。1度の戦果は僅かでも、幾度か重なればティターンズといえども無視できない打撃を受けることになるのだ。
 しかし、この追撃戦においてマラサイとバーザムという第2世代MSはまたしても凄まじい威力を見せ付けていた。数はさほど多くないのが救いだが、これ等の第2世代機が出てくる度に連邦軍は戦力を集めて集中攻撃を強いられているのだ。
 81式戦車、61式戦車の待ち伏せ攻撃は近付いてきたこれ等のMSの足を撃つという戦法でMSを擱座させ、追撃を不可能にする手に出ていたが、これ等も犠牲を増やしており、ジリ貧になるのは避けられなかった。





 しかし、この連邦軍の奮闘と称えても良い頑張りは、追撃を指揮しているティターンズ部隊の指揮官、コンラット少将を焦らせていた。ただの残敵掃討と侮ってハノイに来てみれば、自分の想像を遙かに超えた強固な防衛線が構築されており、最初の攻撃で彼は指揮下の部隊を大幅に磨り減らされてしまった。これで敵にも同等の損害を与えていたならまだ言い訳も出来ただろうが、敵の防衛線に綻びが見られない以上、同等の損害を与えたとはとても言えなかった。
 この後、ハノイを守っているのがあのシアン・ビューフォートだと知ったコンラットは青褪めてしまった。あの機動艦隊で辣腕を振るい、名将として知られるシアン・ビューフォートが居るというのだ。その名は敵に無言の圧力を与えるに十分な威力を持っている。その力を恐れたティターンズは人事部に圧力をかけて秋子から切り離し、海鳴という辺境に飼い殺しにしている。一介の中佐に対する対応としては信じられない行動である。
 このティターンズ上層部の動きを知っていたからこそ、コンラットはシアンが居ると知って恐怖したのだ。そして彼の持つ名声が決して偽りではない事を、コンラットは自ら戦う事で確かめる事が出来た。このまま攻撃を続けてもこの防衛線は抜けないに違いない。
 そこでコンラットはマドラスの司令部に連絡を取り、中央アジアに向う予定だった2個師団を東アジアの南端に空輸させた。シアンの力を恐れて力攻めから迂回挟撃に切り替えたわけだが、この攻撃は流石に連邦軍を追い詰める効果があった。正面の防衛線にも明らかな動揺が見られるようになり、偵察機からの報告によってハノイに残されていた予備兵力が北部からの攻撃を迎撃しに向ったということも分かっている。もう奴らに予備兵力は無いのだ。

 コンラットはこれをチャンスとばかりに攻勢に出たが、連邦軍は容易に崩れを見せなかった。戦線各所に綻びは見せていたものの、全面崩壊には程遠かったのである。更に連邦空軍が大挙して襲来し、地上部隊に大きな損害を受けてしまった。余りの被害にコンラットは一度全軍を後退させて戦力の再編成を余儀なくされ、その隙に連邦軍は撤退してしまった。
 この見事としか言いようのない指揮にコンラットは正直舌を巻いていたが、同時に分からない事もあった。北部から南下してきていたティターンズ第7MS師団は108機のMSを装備する完全編成のMS師団であるが、この部隊が連邦軍の強力な守備隊と激突し、大きな損害を出していると報告を寄越しているのだ。



 この部隊とはシアン率いる迎撃部隊で、この時シアン率いる小隊とシーマ中隊はティターンズMS第7師団の先鋒隊を川沿いの廃墟となった市街地で迎撃に出ていた。主力はジムUで弱体であったが、指揮官は優れており、部下のパイロットはいずれも熟練兵であったのが有利な点であった。
 この2つの部隊は交互に援護と撤退を分担しながら少しずつ撤退していたが、ティターンズはこの部隊の小賢しい攻撃に業を煮やしていた。数は20機にも満たないくせに、この部隊との交戦で先鋒に出していた第2大隊は壊滅状態にされているのである。
 この部隊に対して第7師団は何とか潰そうと多数のMSを振り向け、シアンの思惑通りに他の部隊を取り逃す事になる。だが、問題はここからで、自分達が逃げ切れるかどうかである。この問題に関してシアンは自ら殿を引き受けた。

「シーマ大尉、先に中隊を連れて下がれ。後は我々がやる!」
「何言ってんだい中佐、あんた正気なのかい!?」
「ああ、意外だがまだ正気だよ。シーマ大尉は装甲部隊の後方を守りつつ下がれ。俺は出来る限り時間を稼いで逃げ出す!」
「こっちのが数が多いんだ。残るなら私の隊だろ!?」
「文句を聞いてる暇は無いんだ。いいからさっさと行け、これは命令だ!」

 そう叩きつけるように言うと、シアンは通信を切って近くまで来たハイザックにジムライフルの一連射を叩き込んだ。撃ちだされた砲弾の何発かがハイザックの機体を捉えてザクマシンガン改を持った右腕を破壊してしまう。
 敵が戦闘力を無くしたと判断したシアンはそれ以上そのハイザックに付き合うようなことは無く、目標をその近くに居た別のハイザックに向けた。

「数が多すぎるな。これじゃこっちの弾が持たんぞ」

 ビルの陰に機体を屈ませて銃の弾装を入れ替えながら、シアンは敵の数の多さに舌を巻いた。シーマを先に行かせたのは逃がした部隊の方が心配になったからだが、このままだと弾切れで嬲り殺しにされそうであった。


 そして、逃がしたシーマの部隊も装甲部隊を襲おうとしていたハイザック部隊と交戦状態に入っていた。こちらはシーマ以外は際立った腕の者は居ないので、ハイザック部隊の攻撃に苦戦を強いられている。

「ちっ、しつこい奴らだね。B小隊は後方の小高い岩山に移動して奴らを銃撃で押さえ込むんだ!」
「ですが、あそこまで行く間に殺られますよ!?」
「私の隊が援護する。行きな!」

 通信機の向こうから幾つか罵声が聞こえたが、シーマはそれに付き合うつもりは無かった。援護するこっちも危険な事に変わりは無いのだから。
 そしてシーマのA小隊がハイザックの隊列に向って90mmマシンガンを撃ちまくり、その間にB小隊のジムU3機がシーマの指定した岩場にめがけて駆け出していった。だが、遮蔽物から飛び出したとたんに1機のジムUが直撃弾を受けて横転し、動かなくなってしまった。コクピットから這い出してきたパイロットを駆けつけてきた装甲車が拾って急いで逃げていく。
 その部隊が何とか岩山にたどり着いて高所から撃ち降ろしを始めると、流石に数に勝るハイザック部隊も手を焼いて後退していった。高所から撃ち降ろされると相手からは丸見えなのに、こちらは遮蔽のある相手を撃たなくてはならないのでかなり不利になるのだ。
 敵が撤退していくのを見てシーマは自分の隊も急いで下がらせていく。このままここに留まっていても良い事はないだろう。

「参ったね。残してきた中佐も大変だろうけど、こっちも楽じゃないじゃないか。こっちにも敵が来ると読んだのかね?」

 海鳴基地の司令官とやらがどうして自分を強引に戻らせたのか理解できたシーマであったが、だからといって別に感心したりはしなかった。むしろ面倒な仕事を押し付けてくれたと腹を立てていたのである。
 もし生きて戻れたら自分と部下全員に一杯奢らせてやると誓いながら、シーマはホバートラックから送られてきた情報の表示されたモニターを見た。そこには機種こそ分からないが、こちらに向けて近付いてくる20を超す光点が映し出されていた。





 このシアン率いる部隊は第7MS師団に対してかなりの抵抗を見せたものの、数の差を覆す事は出来ず、僅かな交戦の後に撤退を開始していた。シアンたちが幾ら強くても、戦闘力は弾の数が限界となる。シアンはこの戦闘で6機のMSを仕留めるという凄まじい活躍をしていたが、それは戦局を覆せるほどのものではなかったのだ。
 残念ながらシアンはアヤウラほどには上手く部隊を使う事はできない。シアンも指揮官として決して無能ではなく、むしろ秋子が幕僚に迎えるだけあって非凡と称えられるだけのものを持っている。だが、戦術家として見ればシアンはファマス戦役でその名を轟かせた名指揮官達に比べれば、明らかに見劣りしている。
 この時シアンはティターンズの第7MS師団を相手に半数以下の寡兵で立ち向かい、真っ向からの会戦を避けてひたすら一撃離脱のゲリラ戦を繰り返している。圧倒的な大軍に対するならこれ以外に選択肢は無かったのだから当然の選択と言えるが、この攻撃でシアンの連隊は瞬く間に半数以上の戦力を磨り減らされてしまった。こちらが受けた被害以上の損害を敵に与えているのがせめてもの救いだが、おかげでシアンの連隊は組織的抵抗が不可能となり、個々の部隊単位でハイフォンまで逃げ出す羽目になった。
 もっとも、撤退までの僅かな時間は稼ぎ出しているので、作戦自体は成功している。この僅かな時間を稼ぎ出したという事がコンラットを青褪めさせていたのだ。本来なら北と南からの攻撃で敵を殲滅する筈が、弱体な戦力で一方を食い止められた間に、主力を取り逃がす結果に終わろうとしているのだから。

 しかも、この時点ではまだ第7MS師団の不幸は終わっていなかった。シアンの直属小隊やシーマの率いるMS中隊が執拗なゲリラ戦を展開しており、第7師団に無視できない損害を与え続けていたからだ。しかもこれ等のゲリラは倒した部隊の武器を奪って使っているようで、何時までたっても弾薬切れを起こす様子が無い。連邦軍がここまでやるとは思っていなかった第7MS師団にしてみれば、まさに青天の霹靂といえる事態となっていたのだ。




 第7MS師団から現在苦戦中と報告を受けたコンラットは信じられないと呟いた。100機を超すMSの大軍をどうやって食い止めているというのだ。コンラッドは第7MS師団に詳細な報告を求めたが、第7MS師団の司令部もこの時混乱の極みに達しており、詳細な報告が寄越されるのは随分後になってからであった。そしてその頃にはその情報は意味を無くしていたのである。
 それでも第7MS師団は分かり限りの情報を送ってきた。この部隊は少数とはいえ強力なMS部隊を含んでおり、特に胸部が黒いジムUと3機のジムVで編成された小隊は異常としか言えないほどの強さを見せ付けているという。この4機に第4MS師団はハイザックで編成された1個中隊をぶつけたが、信じ難い事に敵を1機も落とせないまま、逆にこちらの1個中隊が全滅させられたというのだ。
 報告を受け取ったコンラッドはこの情報をマドラスに送って分析を依頼したが、それが帰ってきた頃にはハイフォンを守るアヤウラと激突していた。この胸部が黒いジムUは情報部からの報告でシアン・ビューフォート中佐機だと判明し、更に他のジムVが海鳴基地所属機である事も判明している。その中の1機はファマス戦役のファマス側屈指のエース、里村茜少尉機ということも分かった。これ等の情報をコンラットは直ぐに第7師団に送り返し、第7師団はこの小隊との戦闘を避ける方向で動いている。この小隊がサイレン級のエースで固められている可能性が高いと分かった以上、下手に手を出すより無視した方が全体の損害が減ると判断したのだ。
 この情報を第7師団に送り返した後、コンラッドはマドラス司令部の情報の遅さに苛立って壁を殴りつけた。この情報がもっと早く来ていれば、自分は違う作戦を立てていただろうに。






 ティターンズの本隊によるハイフォン攻撃は、シアンが北のMS師団迎撃に向っていたという情報が入る前に実行に移された。この時点では彼は敵の指揮官はシアンだと思い込んでいたのである。
 コンラットは第7MS師団の進軍が遅いのを見て自分の本隊、4個師団を強引に前進させようとしたが、こちらはアヤウラが設置していった地雷や仕掛け罠にぶつかってこれまた思うように進軍速度は上がりはしなかった。皮肉な事にコンラットの策が連邦を敗退させたおかげで、コンラットはシアンより厄介なアヤウラの相手をする羽目になったのだ。しかもこの状況はアヤウラが最も得意とする後退防御戦闘である。
 アヤウラは手元にある戦力を複数の少数部隊に分割し、各地に潜ませて徹底したゲリラ戦を仕掛けたのだ。しかも狙うのはMS部隊の後方にいる輸送部隊や火力支援部隊、軽装備の偵察部隊などであり、主力であるMSや戦車を徹底して避けていた。
 この攻撃はティターンズの進撃の足を止める効果があり、補給が滞り、後方との通信も途絶えがちになったMS部隊や戦車部隊は危険を感じて敵を前に足を止めだしている。誰も前線で孤立したくは無い。
 コンラッドはこのゲリラ部隊の狩り出しに全力を挙げようとしたが、そうすると前線に回す戦力が不足するという悪循環に突入してしまう。しかもこのゲリラそのものがこちらの足を止めたのを確認するとさっさとハイフォンに逃げてしまっているようで、掃討に出た部隊は敵を捉えられずに右往左往している。
 ここでコンラッドがアヤウラに振り回されているのは、アヤウラがこの辺りに関して土地勘を持っているという事情があった。東アジアから東南アジアで長い事ゲリラ戦を続けながら地上のジオン残党軍の集結と組織化を行っていたアヤウラであるが、その過程で彼はこの辺りでの戦闘に必要な土地勘を身に付けていたのだ。
 このアヤウラにしてみれば、味方を逃がすには何処を通らせればいいか、そしてコンラッドが何処を通って追撃してくるかがおおよそ見当が付いてしまう。補給は空輸で受けられるので、アヤウラは補給を気にするという足枷から離れ、思う存分に部隊を動かす事が出来るという好条件でゲリラ戦を繰り返していた。






 アヤウラのゲリラ戦に散々に引っ掻き回されたティターンズは、遂に追撃の足を止めてしまう。これを見たアヤウラは即座に各地に展開させた部隊を撤退させ、ハイフォン正面、海岸から20キロの所に再配置し、新たな防衛線を作り上げてしまった。
 戦線の後方、5キロの小さな町にあるホテルを接収し、新たな司令部を設置したアヤウラはそこから防衛戦の指揮をとる事にした。シアンから指揮を任された以上、シアンが戻ってくるまでその責任を放棄するつもりは無い。時間を稼ぐ為に北に向ったシアンたちが戻るまで、彼はここを守り切る覚悟を固めていた。
 この司令部から絶望的とも言える戦いの指揮を取ろうとしているアヤウラは、同時に少しでも早くシアンたちが戻ってきてくれる事を願っていた。彼が戻ってくれば、そこで戦闘を切り上げて撤退できるからだ。だが何時まで待ってみてもシアンたちは戻ってこず、ただ空しく時間だけが過ぎていく。そしてとうとう偵察機から停止していたティターンズが前進を再開したという報せが飛び込んできた。
 この報せを受け取ったアヤウラは通信用紙を握り潰すと、ナイフを取り出して地図の一転に突き刺し、その場に居る全員を見回した。

「いいか、ここが我々のいる防衛線だ。ここから先にティターンズを一歩も進ませてはならない。私は君たちの上官ではない。それどころか本来なら敵として殺しあう立場だが、今だけは私に協力してもらいたい。シアンたちが戻ってくるまで、ここを支えきるのだ」

 アヤウラのこの言葉に反対する者は流石に出なかった。それに、これまでの戦いでアヤウラの能力は信頼に値するものだと判明しており、この場で指揮をとる事に文句を言う者もいない。誰だって維持を張って命を落としたくは無いのだから。
 このアヤウラの指揮を受けて防衛戦闘が開始されたが、それはティターンズの意表をつく攻撃となった。ティターンズは連邦軍が新たな防衛線を構築していると聞き、また強固な防衛線に攻撃をしかけなくてはならないのかと憂鬱な気持ちに捕らわれていたのだが、それは敵が待ち構えていると思い込むことに繋がってしまった。連邦軍の指揮官が全く別の思考法をする指揮官に代わっているなどとは思っておらず、攻撃隊形を防衛線に対する突破に向いた一点突破型に組み直していく。
 この陣形は全体が巨大な錐のような形となり、錐の先端にMSが、その後ろに戦車が、そしてその後方に歩兵を満載した装甲車両やトラックが続くというものである。正面に対する突進力と一点に対する火力集中に特化した陣形であり、多少の犠牲は覚悟の上で作られている。
 コンラットはこれで防衛線を一気に突破しようと考えていたのだが、この計算はいきなり崩壊する事になる。まさに陣形を整え終えて突撃に移ろうとした時、左右両翼からMS部隊の攻撃を受けたのだ。この部隊は先のゲリラと同じく、MSを狙わずにひたすら車両を襲っている。これを撃退する為に陣形の先頭に位置していたMS部隊は慌てて戦車や装甲車の援護に戻る羽目になり、折角の陣形が台無しにされてしまった。
これがシアンとアヤウラの差だった。アヤウラの戦術には援軍を待って持久戦を行うという類の物は無い。数が敵より少なく、補給物資にも事欠く戦場が当り前だったアヤウラにとって、戦争とは守る事ではなく攻める事だった。守りに回れば必ず負ける。そしてジオンは守りの軍隊ではなく、MSの機動性を生かした攻めの軍隊である事をアヤウラは良く理解していたのだ。
 これがシアンなら援軍を待ってひたすら持久していたところだ。実はファマス戦役で連邦軍がファマスにボコボコにされ続けたのもここに理由がある。連邦軍は待っていればどんどん補給が積みあがり、兵力を直ぐに補充する事が出来るので、一度戦ったら足を止めて待ってしまう傾向が強い。これは慎重などと言えば聞こえは良いが、積極性に欠けるということでもある。
 ファマスはこの連邦の弱点を突くかのように少数部隊による積極的な攻撃を繰り返し、連邦はその都度大きな損害を受けている。秋子やエニーのような一線級の指揮官でさえ振り回され、叩きのめされているほどだ。
この戦訓を考えれば連邦軍ももう少し積極的に動く事を考えても良さそうなのだが、宇宙軍の中心人物であるリビックと秋子の2人は相変わらずの物量主義者であり、腰を据えてじっくりと攻めるという作戦を取る人物であっただけにこの辺りの戦訓は生かされなかった。
 ただ、秋子はファマスの採用していた戦術が効果的なものである事は認めており、そういう戦術を実行する能力を持つ指揮官をファマスの残党から見繕って自分の指揮下に組み込み、複数の任務部隊を編成して対エゥーゴ戦に役立てていた。エゥーゴ戦の初期では連邦軍はエゥーゴの機動力に付いて行くことが出来ず、通り魔的な攻撃を受けては損害を増やしていたのだが、秋子が編成した任務部隊は彼らと同じく機動力を生かした戦術をとり、エゥーゴの活動範囲を著しく狭める事に成功している。

 ティターンズはエゥーゴよりマシだとしても、やはり物量主義は変わっていない。ただ連邦の物量主義とジオンやファマスが見せた用兵の速さを併せ持つだけに、数は少なくても連邦軍と対等に渡り合えてしまっている。悲しい事であるが、ジャミトフの私兵集団という性格が、連邦軍の旧弊から開放して組織に柔軟な思考と高度な運用能力を与えたのだ。連邦軍は改革が進んできてはいたのだが、まだまだ先は遠いのが実情である。




 アヤウラの襲撃部隊はカーナと真希の指揮を受けたMS2個中隊で、機体は全てシュツーカとガーベラテトラで固められていた。彼らは戦車や装甲車の隊列に飛び込むと持っている火器を当たるを幸いとばかりに撃ちまくりながら戦場を駆け抜け始めた。
 この時のカーナと真希の出した命令は極めて簡潔なものであり、部下達が誤解のしようが無いものであった。

「走り回りながら撃ちまくれ!」

 ただこれだけである。距離が余りにも近すぎるので戦車の旋回砲塔でも追うのが困難という利点を考えて敵の大軍の中に飛び込んでいるのだ。足を止めるなど愚の骨頂である。
 実際にティターンズの戦車隊は慌てふためいて砲塔をシュツーカ隊に向けてきたのだが、味方が邪魔になって撃つ事が出来ないという醜態を晒している。元々小回りの効く陣形ではないので仕方が無いが、その無様な姿は襲撃をかけたアクシズのパイロット達の失笑を買うに足るものだった。
 しかし、この攻撃でティターンズが混乱していたのはそう長い時間ではない。直ぐに混乱から立ち直った彼らは個々の指揮官で統制の回復を図り、部隊を移動させてシュツーカの各個撃破にでた。あちこちに居た戦車隊は敵の中で動きの鈍いシュツーカを包囲するように展開を始め、四方八方から一斉砲火を浴びせていく。いくらアクシズ製のシュツーカの防御力が高いとはいえ、複数の砲弾を同時に受けては耐える術は無く、短時間で7機のシュツーカが上半身を木っ端微塵にされてしまっている。
 瞬く間に戦力の3割を撃ち減らされたカーナと真希は、MS部隊が戻ってくる前に撤退を開始した。元々敵を叩くのが目的の襲撃ではないのだから、ここで無理をしても意味が無い。
 だが撤退する間にもティターンズの攻撃は続き、更に3機のシュツーカが撃破される事になる。

 敵が逃げ散った事でティターンズは負傷者の救助と陣形の再編を行おうとしたが、攻撃隊の後退を待っていたアヤウラはすぐさま次の攻撃に出た。防衛線に敷き並べていた重砲と多連装ロケットシステムが猛然と火を吹き、ティターンズ部隊にロケットと砲弾の雨を降らせたのだ。
 この攻撃はMSや戦車といった重装甲に守られた兵器には直撃しない限り決定打とはならないが、軽装甲の車両や無防備の野砲や歩兵にとっては物凄い脅威となる。ロケットが生み出す爆発と重砲弾の生み出す衝撃波と破片によって多数の車両がスクラップへと変わり、設置を完了していた重砲が横倒しにされ、積み上げられていた砲弾が誘爆を起こす。そして無数の歩兵が、装甲車や戦車から脱出した兵が炎に巻かれ、破片に体を切り刻まれて倒れていく。
 これはアヤウラの軍人生活においても、極めて珍しい物量攻撃であった。彼は砲の威力に付いて理解はしていたが、それを大量に揃えて運用したのはこれが最初であったとされている。後に彼は、敵の攻撃部隊に対して砲を多数揃えて撃ち込めるという事の優位をはっきりと実感したと語っている。




 これ等の攻撃はコンラットの大軍を著しく磨り減らす効果はあったが、コンラットに致命傷を与える事は出来なかった。もともとの数が違いすぎる上に、アヤウラには補給の当てが無かったからだ。当初はミデア輸送機が飛来していたのだが、この方面の連邦軍の予想を遥かに超える抵抗に業を煮やしたマドラス司令部は、コンラッドの要請を受け入れてアッシマーとギャプランをこの方面に投入してきた。
 ギャプランは元々弾道高度迎撃用の高高度制空MAで、ブースターで成層圏まで駆け上がり、滑空で目標まで向かうというコンセプトで作られていたのだが、その空戦性能の高さに着目したティターンズは中・低高度制空用MAとしても運用を始めている。これは限定的な成功を納めはしたものの、余りにも短い航続距離のために事実上邀撃機として運用されるに留まっており、制空権確保という目的には仕えないのが悩みどころだ。ただし、空中ではほぼ無敵を誇っている。
 これに対してアッシマーA型は最初から中・低高度での運用を前提に設計されている攻撃機なので、航続距離などは十分に持っている。地上での戦闘も考慮されており、ギャプランの最悪の歩行性能とは違ってちゃんとした脚部を持っている。ただし武装は大型ビームライフル一門と物足りないのが欠点だ。この欠点は連邦軍が量産しているB型である程度解決されているのだが、ティターンズはB型を装備していない。

 これ等の可変MAの攻撃でたちまち制空権を奪われてしまったアヤウラは、補給が途絶した街でひたすら勝ち目の無い防衛戦を強いられる事となる。じりじりと距離を詰めてくるティターンズに対して、アヤウラは弾を使い伸ばすように指示を出しているが、それが何処まで効果を挙げているか疑問と言わざるを得ない。
 自分の司令部があるホテルの部屋も爆発の衝撃で埃が舞い落ちてくる中、地図を右手で叩きながら必死に指示を出し続けていた。
 そんな彼の元に、1つの連絡が届けられた。通信兵が書き取った通信用紙をアヤウラに手渡し、それに目を通したアヤウラは一瞬表情を輝かせ、そして苦笑を浮かべて奇襲部隊全てを引き上げさせるよう指示を出した。
 この時のアヤウラの態度を疑問に感じた参謀がその事を問い質すと、アヤウラはまた苦笑を浮かべて教えてくれた。

「何、連邦の艦隊が助けに来たと聞かされて喜ぶというのは、何かおかしい気がしてね。私はジオンの軍人なのだからな」

 アヤウラはこの時、これ以外に何も答えはしなかった。恐らく胸中には複雑な感情が渦巻いていただろうが、それを表に出す事は無く、部隊を後退させて戦線の整理に全力を尽くす事になる。何故なら、この戦場は今、遙か彼方から巨砲に狙われていたのだ。

 そして全ての部隊を強引に撤収させ終えた後、アヤウラは無線連絡で座標を知らせ、全軍に塹壕に身を隠すに指示を出した。それらの指示が全軍に伝達されたのを確認した後、アヤウラは無線電話に向けて怒鳴った。

「発射しろ!」

 その命令を出して2分ほど後、アヤウラは上空を通過していく雷のような轟音を聞いた。そしてそれが遠くなったあと、大地を揺るがす振動がホテル全体を揺るがせた。その振動を感じたアヤウラは急いでホテルの屋上に駆け上がり、そこから戦場に目を向けて恐ろしい光景を見た。

「……あれが、ショックバスターという砲弾の威力か」

 一度轟音が鳴り響く度、遙か彼方に12個の閃光が輝いている。そしてその着弾点から周囲に向って強烈な衝撃波が駆け抜け、周辺を全て薙ぎ払っている。40cm級以上の砲でないと撃てないという大型砲弾であるが、その一発辺りの破壊範囲は従来の榴弾の3倍にもなるという。重装甲目標や地下施設には効果が薄い兵器であるが、軽装甲の兵器や歩兵、脆弱な構造物には致命的な砲弾だ。
 視界の先、自分たちの陣地のかなり前方を文字通り破壊し尽くしている砲撃を行っているのは、海軍のプレジデント級戦艦、チャーチルである。22インチ砲12門を装備する過去の時代の遺物であるが、1年戦争では地上砲撃によって沿岸部を制圧し、味方の被害軽減に多大な効果を挙げている。そして今、その艦が新型の砲弾を積んでハイフォンの湾口から砲撃をしてくれているのだ。
 かつて、友軍を引き裂いたであろう砲撃に助けられているアヤウラとしては、喜んでいいのかどうか複雑な気持ちに捕らわれてしまっているが、この砲撃は確実に敵の動きを止めてくれるだろうと実感していた。




 この艦砲射撃を受けたコンラッドは圧倒的な砲撃の前に歯軋りをして悔しがりながら全軍にプレジデント級戦艦の射程外、海岸から50kmのラインまで後退するよう指示を出した。残念だがミノフスキー粒子が散布されて長距離ミサイルが封じられている以上、姿の見えない遙か彼方の目標を攻撃する手段は無い。地対艦中距離ミサイルは封じられた武器なのだ。
 ただ、コンラットもやられっ放しで済ませたわけではない。空軍に連絡して攻撃機とアッシマー、ギャプランの派遣を要請し、この戦艦の撃沈を依頼していた。
 この要請を受けて空軍はアッシマー3機と16機のコアイージーSが出撃してきたが、これに対して連邦第7艦隊は2隻のヒマラヤ級空母からそれぞれ6機ずつ、合計12機のアッシマーを迎撃に出してきた。こちらのアッシマーはティターンズが使っているA型を改良したB型で、変形速度の短縮、装甲の強化、ビームサーベル、多目的パイロンの増設などの改良が施されている。
 この可変MA同士の空中戦は非常に珍しい光景であったが、すぐに数の差で連邦側がティターンズ機を駆逐してしまい、ティターンズはアッシマー1機とコアイージーS4機を失って逃げ散っている。
 攻撃失敗の報告を受けたコンラットは激怒したが、彼がどれだけ怒り狂おうともこれ以上の攻撃は難しかった。敵が空母や戦艦まで投入してきたとあっては、もうこちらに回されている戦力だけでシアンを叩くのは困難と言わざるをえない。更に彼にはシナへの侵攻という任務もあり、シアンの撃破はシナ侵攻への障害だからという二次的なものに過ぎない。暫し悩んでいたコンラットであったが、遂にハイフォン攻略を諦め、全軍を後退させて戦力の建て直しと再編成に着手する事にした。

 ティターンズが撤退していくのを見送ったアヤウラたちは、まだ自分の目が信じられなかった。あれほどの大軍でありながら、敵はここの攻略をあきら寝て撤退したというのだろうか。

「敵は、ここを諦めたのか?」
「そのようですな」

 アヤウラの呟きに参謀が信じられないと言いたげに頭を左右に振って応える。地上を埋め尽くすような戦車や装甲車が、数えるのも嫌になるようなMSの大軍が綺麗さっぱり居なくなってしまっているのだから。

「あれだけの数が逃げ出すのか。凄い威力だな、ショックバスターというのは」

 アヤウラはこの新型砲弾の威力に感心していたが、実はこの砲弾、一発当たりのコストが高すぎて生産が進んでいない。そもそもこの時代に地上砲撃などありえないというのが地上軍総司令部の考えだったのだ。この砲弾は開発された後、砲撃用MSや自走砲の為に小型化される予定だったのだが、結局この戦争には間に合わなかった。
 その司令部の予想を外すかのように時代遅れの戦艦が弾薬庫に詰めてきたショックバスターを使い、ティターンズを吹き飛ばしてくれたのだ。チャーチルの乗員にしてみれば随分と溜飲の下がる思いだっただろう。

 この艦砲射撃で敵が撤退した後、ようやくシアンの別働隊がハイフォンまで到着したが、辿り付けたのは出撃した数の半数以下であり、しかも五月雨式に戻ってくるという有様であった。どうやら敵に粉砕され、逃げるしか出来なかったらしい。一番最後にシアンたちが戻ってきたのは、最後まで殿に踏み止まっていたからだろうか。無傷の機体は1機も無く、シアンのジムUでさえ片腕を無くしている有様だ。帰って来ても2度と出撃は出来ない機体が何機もあることだろう。
 シアン自身も機体を整備兵に預けた後、自分の機体を見上げてもう仕えないなと呟いている。常に敵の放火の中に身を晒し続けたのだから、むしろここまで良く動いてくれたと賞賛したいくらいだ。
 ハイフォン脱出後に判明した事だが、このジムUの駆動系はシアンの操縦に耐え切っていたらしい。海鳴工廠の設備で改修を施したシアン用カスタム機であったが、海鳴工廠のスタッフはこの困難な仕事をやり遂げていたのだ。

 機体から降りてヘルメットを小脇に抱えたシアンはここまで戦い抜いた将兵に労いの声をかけながらハイフォンの湾口に置かれた臨時司令部に足を運んだ。そこには第7艦隊の司令部が入っていて部隊の撤収の指揮をとっている。港には輸送艦が入り、ここまで後退してきた部隊の収容を始めていた。
 司令部に顔を出したシアンは、疲れた顔で第7艦隊司令官ホート少将に敬礼を施した。ホートも敬礼を返し、そしてシアンの傍に歩み寄ってその右手を掴んだ。

「大佐、よく無事に戻ったな」
「大佐は止めて下さい。作戦が終わった以上、私は中佐です」
「ははは、そうだったな。だが見事な指揮だった。君のおかげで2個師団が殲滅されずに済んだよ」
「私だけの力じゃありません。部下達と、アヤウラのおかげです」
「アヤウラ・イスタスか。報告を受けたときは信じられなかったが、ここで実際にジオン残党軍を見たときは何があったのかと思ったな。しかし君も無茶な事をする。ジオン残党に連邦軍の指揮を任せるとは」
「形振り構ってはいられませんでしたから」

 ホート少将の言葉にシアンはむっつりとした顔で返した。別にシアンが怒っているというわけではなく、ただ疲れたからであるが。ホートもここまで戦い抜いた指揮官をこれ以上拘束する気は無く、後は自分達が引き受けると言ってシアンを下がらせている。
 シアンは疲れきった体で司令部を後にすると、1つの戦いが終わった事をようやく実感した。そこで大きく背を伸ばし、そして視線を戦場だったジャングルの方へ向ける。

「……海鳴に戻って、戦力の再編成をしなくちゃならんな。今度はどれだけ戦う事になるのやら」

 1年戦争、ファマス戦役と戦ってきたシアンとしては、そろそろ休ませて欲しいと思っていたのだ。戦争なんて一生に一度だけで十分だ。2度も3度もやりたくなんて無い。
 そんなふうに考えていたシアンの元に、茜と鹿沼姉妹がやってきた。

「義兄さん、お疲れでした」
「ははは、流石に疲れたな」
「これから、私たちはどうすればいいのでしょうか?」
「海鳴に戻るさ。海鳴に帰って、戦う為の部隊を編成する。戦争に行く事になるな」

 シアンの言葉に3人は露骨に嫌そうな顔になってしまった。3人ともやはり戦争は嫌だったらしい。海鳴の温暖な気候と平和な街の空気にすっかり馴染んでしまっていたようだ。

「そういえば、アヤウラはどうした?」
「輸送艦に部隊を載せてます。連邦軍と余り関わるのは問題があるとか言ってましたよ」
「そう、か。まあ顔を見たい相手じゃないし、構わんか」

 次に会ったら殺し合いになるなと考えながら、シアンは茜の肩をポンと叩いて戦友たちの元へと戻っていった。



 この日、シアンたちがハイフォンから脱出したのを最後に東南アジアから連邦軍は完全に駆逐された事になる。ティターンズは大きなダメージを受けて東アジア侵攻に即座に移ることは出来ないでいるが、いずれ動き出すだろう。マクモリスは再編成した部隊を柳州に集めて新たな防衛線を構築してティターンズの部隊と睨み合いに入っているが、ここもそう遠くないうちに戦場になるだろう。
 地上の戦いの趨勢は混沌としてきているが、ティターンズと連邦の戦いに終始している。宇宙もこうなるだろうと多くの者が思っていたが、この混沌とした状況を更に加速度的に悪くする事態が宇宙に起きようとしていた。アクシズの帰還である。



後書き

ジム改 地球の方はあっさりと終了。
栞   何故に?
ジム改 主役は祐一なので、余りこっちに時間をかけてもいられないから。
栞   では、次回からまた宇宙に?
ジム改 うむ。コンペイトウ攻略とか、アクシズ帰還とか色々あるのだ。
栞   私の出番は?
ジム改 ある、間違いなくある。何しろ今回は少数精鋭で行くから。
栞   では、初めて私のまともな活躍が!?
ジム改 まるで今まで活躍させていなかったかのような言われようだな。
栞   してません。私を使うんですから、アムロさん並の活躍でないと。
ジム改 ……じゃあ、アムロと戦ってみる?
栞   勝てないから嫌です。
ジム改 肝心なところで逃げるな。
栞   あんな化け物みたいに強い人の相手はしたくありません。あゆさんじゃないんですから。
ジム改 アムロは1年戦争の頃より弱くなってるそうだから、昔よりは弱いんだが。
栞   そうなんですか?
ジム改 俺も良くは知らん。そういう話を聞いたことがあるだけ。
栞   でも少し暇です。流離う翼にでも友情出演しますかね。
ジム改 脇役その1でか?
栞   いえ、通りすがりのお助けスーパーエースみたいな感じで。
ジム改 …………。