第46章  巨人の鼓動



 ジオン共和国を武力制圧したアクシズがネオジオンを宣言してから既に10日、地球圏は意外なほどの平穏に包まれていた。ティターンズと連邦の間の前線では小競り合い程度で大きな激突は無く、エゥーゴ、ネオジオンはまだそんな余裕は無い。ただ、ネオジオンは防衛ラインを確保する為にドリル、旧ア・バオア・クーにアクシズまで投入した攻勢をかけてきており、ドリルに駐留していた連邦軍とジオン共和国軍は交戦を避けてサイド5まで撤退している。
 この撤退劇の裏には臆病風に吹かれた連邦軍の指揮官が徹底抗戦を唱えたジオン共和国軍を見捨てて自分の部隊を逃亡させた為、やむなくジオン共和国軍も撤退したという経緯があった。これを知った秋子は激怒してこのドリル駐留軍司令官を査問会にかけた上で予備役送りにし、駐留軍はサイド5で再編成される事となった。ジオン共和国軍の部隊はダニガンに預けられている。

 ティターンズの反乱からもう随分経つが、ようやく連邦軍は態勢を立て直す事に成功しようとしていた。サイド5には各地からティターンズに敗退した部隊が結集しており、これの再編成もようやく完了しようとしている。これ等の部隊は再編成を受けた上で訓練に勤しんでおり、艦隊の訓練は各部隊の指揮官によって行われている。
 しかし、MS部隊や戦闘機部隊は艦隊から離されており、祐一の下で徹底的な訓練を受けている。水瀬艦隊のレベルが連邦軍の中でもずば抜けて高いというのが問題だったのか、訓練を任された祐一の目から見て集ってきた部隊の平均的なレベルが余りにも低すぎて見えてしまったのだ。そのせいで祐一の元に預けられたMS隊や戦闘機隊は毎日毎日地獄のような訓練プログラムを課される羽目になってしまった。
 この訓練で大活躍していたのがサイレンやクリスタル・スノーを付けたパイロット達だ。サイレンはアグレッサー部隊としては無類の存在であるし、クリスタル・スノーだけで編成された天野大隊はそのまま教導団の代わりとして使う事ができる。祐一は彼らに教官役を命じ、これ等のエース1人に他部隊の未熟なパイロット数人を預けるという方法でひたすらに鍛えていた。
 だが、集められた部隊の技量向上速度は祐一の期待を大きく下回ってしまった。これは祐一の要求する水準が高すぎるという問題もあったが、祐一の訓練の過酷さにパイロット達が反感を持ってしまったのが原因だった。訓練に反感をもたれては上達が早くなるわけもない。
 しかし、この問題は意外な方向から解決する事となった。ネオジオンが結成して10日後の今日になって、ようやく外洋系方面軍とフォスターT駐留軍、火星駐留軍が外洋系方面軍司令官のデッシュ少将の指揮の下、サイド5に到着したのだ。これ等の部隊は航続距離の長いアキレウス級戦艦とリアンダー級巡洋艦、各種空母だけで編成されており、駆逐艦やサラミス型などは装備していない。これに足が長いコロンブス改級輸送艦や工作艦などの支援艦艇がぞろぞろと付いてきている。どうやら基地にあった物資を洗いざらい持ち出してきたらしい。その戦力はアキレウス級戦艦8隻、リアンダー級巡洋艦52隻、各種支援艦艇82隻の大艦隊である。
 これを受け入れた秋子は久々に満面の笑顔を見せている。これだけ纏まった戦力が全くの無傷の状態で到着したのだ。この戦力増強は戦線の建て直しに大いに貢献してくれるに違いない。
 この部隊は数以外の面でも喜ばれていた。この部隊はファマス戦役に参加した部隊がそのまま居残って駐留していたという類なので、部隊の平均的な錬度がかなり高かったのだ。特に航法能力が際立って高く、艦艇やパイロットは少数部隊で長距離を移動することが可能だという。
 この部隊の訓練も任された祐一は、彼らのナビゲーション能力の高さに驚嘆する事となる。パイロットとしての技量もそれなりの物なのだが、彼らは母艦から遠く離れる事が全員可能なのだ。MSや戦闘機は母艦から余り離れずに行動するのが基本であり、もし母艦を見失えば宇宙の迷子になりかねない。だが彼らは天測航法に習熟している様で、母艦から平気で離れて任務を遂行し、座標を計算して母艦に帰還することが可能なのだ。
 祐一は彼らにも同様の訓練メニューを課したのだが、元々それなりに高い技量を持っていた外洋系艦隊のパイロット達はこのメニューに耐えて見せた。その結果として彼らの技量は飛躍的な向上を見せ、短期間で祐一をして満足させるだけの仕上がり具合になって見せたのである。
 こんなものを見せられては他の部隊のパイロット達も黙っては居られなかった。水瀬艦隊の連中にならともかく、新参連中に負けてたまるかという競争意識が働いてしまったのだ。

 今日もそんな訓練が行われている。訓練のためにサイド5の領空外に出ていた祐一は訓練艦隊の母艦であるラザルス級大型空母のアムルタートとグロリア、それと護衛艦隊と共に外洋に出て、機関であるグロリアの艦橋から訓練中の部隊に檄を飛ばしていた。

「B中隊、編隊を組み替えるのが遅いぞ!」
「も、申し訳ありません!」
「謝るのは訓練後で良い。今は時間短縮に全力を注げ!」

 現在は発艦から編隊を組む訓練をしているのだが、やはりどうしても時間が掛かっている。これでも訓練当初から見ればかなり上達してきているのだが、まだまだ祐一の目には適わないらしい。
 訓練部隊は中隊単位で編成されており、大隊の形は成していない。水瀬艦隊のMS隊や戦闘機体の基本となる戦闘単位は大隊なので、このままだと運用に支障を来たす事になるが、中隊レベルですら十分と言えない技量では大隊規模での戦闘訓練など危なくてさせられないのだ。
 なおも暫く檄を飛ばし続けた祐一であったが、遂には本人も疲労してしまい、休憩を挟む事になった。祐一は近くに漂わせておいたドリンクを口に含み、乾いている喉を潤している。

「やれやれ、こいつは大変だ。名雪、どれくらい縮まった?」
「36機発艦に18分、30秒に1機まで縮めたよ。そこから各中隊が編隊を組み上げるのに2分掛かってる」
「遅すぎるな。発艦はそこそこになってきてるが、中隊が編隊組むのに2分は掛かりすぎだ」
「祐一、何度も言うけど美汐ちゃんの部隊を比較に出しちゃ駄目だよ。あそこは超人集団なんだから」
「そんな事は分かってるけどな、妥協したらその分のツケはあいつらの命で支払う事になるんだぜ。甘い顔は出来ないって」
「それは、そうなんだけどね」

 祐一の答えに名雪は困ったように眉を顰めてしまった。祐一がこんなに厳しいのも全ては彼らの実を案じての事だというのは名雪にも良く分かっている。先のファマス戦役で機動艦隊のパイロットたちの生還率がずば抜けて高かったのも訓練量に裏付けされた技量の高さによるものだ。
 この戦訓から祐一を初めとするシアンの教え子達は部下を徹底的に鍛え上げるようになっている。特にジャブローに降りた佐祐理の訓練の苛烈ぶりは有名であり、ジャブローの友軍からは「天使のような悪魔」と影で呼ばれ恐れられている。もっとも、おかげで倉田大隊の技量は地上軍の中でも最高と評されるほどになっていたりするのだが。
 当のシアン自身は海鳴基地で訓練生の教育に勤しんでおり、海鳴出身の新兵は腕が良いと評判になっている。ただ、この訓練校出身者は秋子やリビックたちの派閥に同調する傾向が非常に強くなっているらしい。基地司令の精神的影響を受けるのだろうか。

 名雪が困って俯いてしまったのを見た祐一は仕方なさそうに今後の予定表に視線を移そうとして、いきなり響き渡った警報音に口に含んでいたドリンクを噴き出してしまった。それを見た名雪が小さな悲鳴を上げて祐一の傍から飛びのき、エアコンを作動させて空中を漂う液体を吸い込ませてしまう。
 そして咽ている祐一が恨みがましい目でスピーカーを睨み付けると、スピーカーから艦長の指示が飛び出してきた。

「右舷船体中央に演習被弾発生、ダメコンチームは直ちにこれに対応せよ!」

 その指示に続いて艦内に慌しい音が鳴り響き出している。この訓練は祐一も聞かされていなかった物なので、完全に艦長が抜き打ちでやらせている物なのだろう。応急対処の速さは艦の生存性に関わるので、艦長としてはこの辺りの訓練には余念がない。MSの導入以来、敵の攻撃を操艦で回避するのは無理だという戦訓が得られたので、こういった対処の重要性は増している。
 祐一は艦の乗組員達に少し同情しながら、ボードを手に名雪と今後の予定に付いて意見を交し合った。とにかく急いで仕上げないと、リビックや秋子が準備しているであろう反撃作戦に間に合わないかもしれないのだ。時間はとにかく有効利用しなくてはならない。
 ちなみに、外でMS隊を指揮している中崎は余りにも過大な祐一の要求にちょっとご機嫌斜めだった。言われて直ぐ実践出来るなら誰も苦労しないというのに、あいつは自分の部下を基準で言ってやがると不満を漏らしている。





 祐一たちが訓練に勤しんでいるのと同じくして、秋子は各拠点間の航路の確保に全力を注ぎ、どうにか各地の連邦拠点との航路の安全を確保できるようになってきていた。航路を行き来する船は護送船団方式を用いる事にして護衛艦に守られて目的地に向かう事になる。これは軍用船だけで民間船は含まれて居ないが、希望するならば民間船もこれに加わる事が出来た。
 航路を守る為の戦いに関しては連邦宇宙軍はファマス戦役で豊富な経験を積んでいるので、本格的に動く事が出来ればティターンズやエゥーゴの跳梁をそうそう許しはしないのだ。これらの輸送船団は各地の拠点にサイド5で生産された物資や装備を運び、帰る時には傷病兵や民間人の避難民を満載して戻って来る。避難民の安全を確保する為にも護衛部隊にはかなりの戦力が割かれている。
 そして秋子にとって最大の仕事は、サイド1にいるリビックに補給を送り続けることである。サイド1の住民をサイド5に疎開させる計画は順調に進んでいるのだが、住人が多いので避難完了にはまだ程遠いというのが実情だ。そんな中で連邦軍の宇宙戦力の中で最大最強を誇るリビックの主力艦隊が駐留しているので、サイド1はティターンズから見て最重要攻略目標となっている。そのため何時攻撃されるか分からないという状況なのだが、肝心のサイド1にはこれだけの部隊を維持できるだけの軍需生産能力は無い。ここは軍事基地でもなければ軍需プラントでもないのだから当然なのだが。
 軍というのはただそこに居るだけで大量の物資を消耗し続けてしまう。兵器は定期的なメンテナンスを必要とするし、将兵の食料や日用品も必要となる。訓練も滞れば将兵の錬度が下がるので疎かには出来ない。更に哨戒部隊や偵察部隊が敵と接触して交戦しては被害を出し、これを補う為にまた物資を使ってしまう。この失われていく物資はサイド1では生産できない物も多いので、サイド5から秋子が輸送し続けているのだ。
 ただ、これだけの大艦隊を維持する為の物資となると半端な量ではなく、まだフォスターUの被害が復旧していないサイド5は悲鳴を上げている。秋子は備蓄されている物資を切り崩してサイド1に送っているのだが、更に建設中だった民間用の密閉型工業コロニーを幾つか軍需プラントに予定変更して建造するなどして不足分を賄おうとしていた。
 また、空き地の多い居住用開放型コロニーにも軍需プラントを建設し、物資の生産を肩代わりさせてもいた。これ等のプラントの作業員は各地のコロニーから流れてきた避難民から希望者を募って送り込んでいるので、皮肉な話だが雇用対策にも一役買っていた。もっとも、フォスターUのルナツーにも匹敵するとまで言われる生産力が立ち直ればこういった問題も無くなるのではあるが。

 

 現在秋子がサイド1との航路維持に次いで重視しているのが地球との航路の回復であった。特にジャブローの生産力は圧倒的なので、こことの航路が再建できればジャブローから膨大な物資と兵器を送ってもらう事が可能になる。そしてそれはティターンズにも良く分かっている事だけに、この航路を立て直そうとする連邦と妨害しようとするティターンズとの小競り合いは激しさを増す一方であった。ここではサイド5から出撃した連邦とサイド7から出撃したティターンズの少数部隊同士での遭遇戦が続いているせいで、今ではすっかり消耗戦の様相を呈している。
 ただ、輸送艦の数では連邦の方が圧倒的に勝っている。各サイドの中でもっとも再建が進んでいたサイド5には緊急展開軍の最初の母港となっていたオスローがあるのだが、ここはグリプスほどではないにせよ軍事コロニーと化しており、多数の建艦ドックや兵器工廠を建設されている。この工廠ではコロンブス型の輸送艦の大量生産が行われていて、新造艦が次々に軍に引き渡されている。秋子は型を固定してとにかく数を作れと指示しており、オスロー工廠はこの命令を忠実に履行していた。おかげで輸送艦事情はだいぶ好転してきている。
 ただ、オスローのドックは破壊されてしまったフォスターUのドックの代わりに損傷艦の修理や定期点検を行っているので全て埋まってしまっている。この為に新造の軍艦は今のところオスローからは1隻も送り出されてはいなかった。フォスターUの生き残っていたドックからはクラップ級巡洋艦やカイラム級の2番艦などが送り出されてはいたのだが、まだ数は少ない。特に最大のドックではまだカノンの艤装とテストが繰り返されているので使えない状態が続いている。





 宇宙軍全体の状態も概ね纏まってきた。連邦軍はサイド5を中心として戦力配置を行っている。ルナツーに対するのはサイド1にいるリビック長官の主力艦隊が、月面のエゥーゴとサイド3のネオジオンへの押えはコンペイトウのクライフ中将の第2艦隊を中心とする艦隊が、そしてサイド5の後方にはペズンがあり、新たにウォーカー少将率いる艦隊が駐留して周辺に目を光らせている。
 これに加えて地球との航路を取り戻せれば完璧なのだが、流石にそれは中々上手くいってはいない。業を煮やした秋子はオスマイヤーに艦隊を預け、この航路に出没しているティターンズ艦隊を殲滅してしまおうかとさえ考えていたのだ。
 しかし、このような情勢下において、ジャブローから電波通信とレーザー通信を用いてとんでもない重大発表が地球圏全域に放送された。なんとダカールの陥落以来行方不明となっていて絶望視されていた連邦大統領エニギア・ノバックがジャブローに潜水艦で到着したというのだ。
 ジャブローに到着したノバック大統領は数人の閣僚と議員を伴っており、ジャブロー内に未だに残されていた1年戦争時代の仮大統領府に新たな政府を置いて各地の連邦軍の状況を把握に掛かった。そしてジャブロー基地司令官代行のマイベックが地図を前に説明を行い、それを聞き終えたノバックは疲れた顔になって重苦しい溜息を漏らした。

「まさか、地球圏の半分がティターンズに占領されているとはな。ジオンの再現ではないか」
「あの時ほど状況は悪くないと思われますが。少なくとも、初期の混乱から脱した後はティターンズの攻勢を各地で食い止めておりますし」

 なんとも気弱な事を言うノバックにマイベックは少し気遣うような声で優勢な状況も報告したが、ノバックの気を晴らす助けとはならなかったようだ。その姿を見てマイベックはどうしたものかと天井を見上げ、連邦の将来に不安な影を感じてしまっている。ノバックは無能な大統領ではないのだが、平時の人なのだ。今のような有事においてはノバックは明らかに役不足である。
 しかしまあ、有事に才能を発揮するような人物が大統領になっていたなどという都合のいい現実はそうそうあるものではない。ノバックは平時の大統領としては十分な能力を持っていたのだから、彼の場合はこの時期に大統領になってしまったという事が不幸だったというしかないだろう。
 すっかり落ち込んでしまった大統領からマイベックは視線を外し、彼よりはまだ有事向きの人材であるアルバート・クリステラ議員に話しかける事にした。

「クリステラ議員、とりあえず大統領閣下がご健在だったという朗報を地球圏全域に伝達したいと思いますが、宜しいでしょうか?」
「それは是非やってもらいたいが、何故私に聞くのかね?」
「……残念ですが、大統領閣下はあの様子ですので」

 今の大統領は現状の余りの酷さに思考停止状態に陥ってしまっている。時折聞こえてくる呟きには突然降りかかってきた災厄を呪う言葉が混じっているようだ。それを見たアルバートは肩を落として力なく頭を左右に振り、マイベックに対してもう一度頷いて見せた。アルバートの了解を得た事でマイベックは大統領府を後にし、基地司令部から通信センターに大統領のジャブロー到着を地球圏全域に放送するよう指示を出した。これは各地で戦っている連邦将兵と連邦市民を勇気付けるばかりか、敵対勢力に大きな圧力をかけることにも繋がる筈だった。
 指示を出した後でマイベックは自分の椅子に腰を降ろし、目頭を押さえて目の疲れを誤魔化していた。

「ふう、まあ大統領が御無事だったのは朗報なんだがな」
「准将は、余り嬉しくなさそうですね?」

 疲れているマイベックの前にそっと淹れたてのコーヒーを差し出しながら、佐祐理は感じた疑問をそのままぶつけていた。地上軍司令部とジャブロー基地司令部がティターンズの破壊工作で全滅させられた為、マイベックはジャブロー内の高級士官を掻き集めて即席のジャブロー司令部を再建したのだが、佐祐理は倉田MS大隊の指揮官の任務はそのままで更にマイベックの副官まで兼務させられるという過重労働状態に陥っていた。
 もっともキツイのは佐祐理だけではない。生き残っている大尉以上の士官はみんな無茶な仕事をやらされている。佐祐理の同僚であるキョウ・ユウカ少佐などは航空隊を統括させられており、慣れない仕事に著しい疲労を見せている。唯一の救いは地上軍の総指揮をオーストラリアのコーウェン大将が引き受けてくれたことだろう。おかげでマイベックはジャブローだけに気を配るだけですんでいる。
 マイベックは佐祐理の淹れてくれたコーヒーの香りを楽しみながら佐祐理の疑問に答えていた。

「正直、ノバック大統領に有事の指導力は期待できないからな。かといって大統領を無視して勝手をするわけにもいかん」
「その為のマイベック准将閣下なのではありませんか?」
「皮肉を言わんでくれ。私はジャブロー基地司令官代行だよ。大統領の補佐はもっと上の仕事だ」

 佐祐理の言い方に不快げに目を細めて言い返した後、コーヒーを一口啜って目尻を緩めてしまった。やはり佐祐理の淹れてくれるコーヒーは美味しい。実はマイベックが佐祐理を副官にしているのはその実務能力も当然強慮されているのだが、それ以上にこの一杯のコーヒーの為だったりする。佐祐理は自分の部隊の指揮もあるのでマイベックの隣に居られない場合もあるのだが、そういう時は適当な参謀なりを捕まえて即席の副官にして対応していたりする。
 
「そういえば、キョウはどうしたんだ?」
「キョウさんでしたら、今頃はパナマ基地への補給部隊の護衛に付いてる筈ですよ」
「ああ、そうだったな。まったく、何時まで自分が前線に出る気なんだか」
「キョウさんはコクピットから降りるくらいなら降格してくれと言う人ですからね」

 航空隊の指揮を任されていながら時折自ら操縦桿を握って空に出て行ってしまうキョウの性格にマイベックは困った声を漏らしたが、それを佐祐理がクスクス笑いながらフォローした。実はマイベックは最初キョウに防空隊司令の地位を与えて将官権限で中佐にしようとしたのだが、それを受けたキョウは冗談ではないと断わり、降格して部隊指揮官にしてくれと言い出したのである。
 これを受けたマイベックは呆れ果てながらもキョウらしいと苦笑いし、航空隊の総括を任せるに留めた。指揮は基地司令部から自分が統括して行う事にしたのだ。ただこれはマイベックに過度の負担を要求するので、参謀達に頼る部分が増えてしまうという問題もあった。
 コーヒーを飲み干して一息ついた後、マイベックは佐祐理にいくつかの質問をした。

「ところで佐祐理、ジャブロー内の生産体制はどうなっている?」
「既に戦時体制への移行を完了しています。先の破壊工作の損傷がまだ残っているラインもありますが、全ての建艦ドックと大半の軍需工廠は稼動を再開していますよ。AからXまでの23ライン全てで新型戦艦と新型巡洋艦、空母と駆逐艦の建造を始めています」
「ふむ、同時に46隻か。まるで1年戦争の再現だな。MSはどうなっている?」
「19局がジムVの量産を順調に進めています。とりあえず地上用のG型が中心ですが、宇宙用のR型の量産も進めていますよ」
「18局は?」
「なんだか、また変な物作ってるみたいですよ。ジムVの発展型とか、ジムVベースの砲戦型MSとか。あとニューギニア工廠からティターンズMSのデータを貰ってるみたいです」
「あそこは変わった物を作るからなあ。まあ、技術試験機と思えばいいか。当面は生産ラインはジムVの生産と改良に全力を注いでくれ」
「はい、そう伝えておきます」

 ジャブローには他の開発拠点とは異なり、2つの開発部署が存在している。これはジャブローの巨大な設備を利用できるからこそ可能な芸当で、他の拠点には1つずつしか開発部署は存在していない。そしてジャブローは、あの1年戦争の時と同じような大規模生産拠点としての能力を再び発揮しようとしていたのだ。これがあるからこそティターンズはジャブローの制圧を目指し、駄目なら破壊しようとしたのである。
 1年戦争でジオンがジャブローに拘った理由もこの生産力にある。例え他の拠点全てが制圧されたとしても、連邦軍はこのジャブローの生産力だけで戦いを継続する事が可能なのだから。

「しかし、倉田議員は何処におられるのかな。御無事だと良いのだが」

 大統領と共にジャブローに逃れてきた議員の中に倉田幸三の姿は無かった。アルバートと並ぶ上院議会の実力者である彼が居ないというのは、今後に大きな問題となるのではないかとマイベックは危惧していたのだ。もっとも、娘の佐祐理はまるで心配していないようなのだが。

「大丈夫ですよ。父はメガ粒子砲で撃たれても死にそうにないくらい無駄に頑丈ですから」
「自分の父親の事だろうに、心配ではないのか?」
「はい、心配するだけ無駄ですから。どうせどこかでしぶとく生きてますよ」

 娘にここまで言わせる男、倉田幸三議員とは一体どういう生き物なのだろうか。とりあえず上院議会に「セーラー服とブルマを復活させる法案」をアルバートと連名で提出した、歴史に残る偉人である事は確かであるが。





 この大統領のジャブロー到着の方は各地の連邦軍を市民を歓喜させるニュースであった。確かに日頃は無能、役立たずと扱き下ろされる政府ではあるが、やはり地球連邦の支配と安定の象徴的存在でもあるのだ。それが無事にジャブローに到着したという知らせは、これまで一方的に叩かれてきた敗戦ムードの中に1つの希望の光を灯したのだ。
 フォスターUの司令室でサイド1への輸送計画の立案とティターンズへの牽制攻撃の立案を同時に進めていた秋子の元にこの報がもたらされた時、彼女は思わず軍帽を握り締め、驚きに目を見開いてしまった。

「ほ、本当なのですか。大統領が生きていたというのは!?」
「ジャブローのマイベック基地司令代行の名で発信されています。間違いはないかと」
「そうですか。それは、良かった」

 久しぶりの安堵の笑みをこぼした秋子は、そのまま自分の椅子にへたり込むように腰を降ろした。その秋子に向かってまだ包帯が取れないでいるジンナが笑みを浮かべて声をかけてきた。

「提督、まだ負けた訳ではないようですな」
「ええ、ジンナさん。この通信は既に他部署にも?」
「サイド5の全ての放送機器を使って流してますよ」

 秋子の問いにジンナが答えて少ししてから、司令室に兵士たちの歓喜の声が聞こえてきた。そう、サイド5にいる全ての将兵がこの知らせに喜びの声をあげているのだ。あちこちで「連邦万歳」の声が上がり、軍帽が宙を舞っている。これほどの歓喜の声が沸きあがったのは1年戦争の終戦の知らせ以来ではないだろうかと思わせるほどの騒ぎだ。
 第1宇宙港で訓練の為の出撃準備を進めているオスマイヤーとバーク、斉藤はラー・カイラムの艦橋で顔を見合わせ、そして宇宙港の中に舞い上がる帽子を見て笑みをこぼしていた。

「まったく、宇宙港の中で物を飛ばすのは服務違反だぞ。どいつもこいつも後で覚悟してろよ」
「おや、オスマイヤー提督は何時から統制派になられたので?」

 隣のクラップ級巡洋艦が半分かた見えなくなるような浮遊物の多さにオスマイヤーが冗談口をたたき、それを斉藤がからかうように揶揄した。勿論オスマイヤーも本気で処罰する気などは無いのだが。ふと気がつけばバークもウィングに出て連邦万歳と叫びながら帽子を飛ばしていた。
 だが、そんな中でもちょっと困り気味の男はいた。久瀬は発表された大統領一向の中に倉田幸三が居ない事に気付いていたのだ。

「倉田議員は、ダカールを脱出できなかったのか?」
「え、どうかしました、久瀬大尉?」

 隣でヘルメットを小脇に抱えてふわふわしていた栞が久瀬のほうを見ている。

「いや、佐祐理さんのお父上の名前がなかったのでね」
「ああ、確か上院議員なんでしたよね。」
「まあ、殺しても死にそうにない人ではあるんだが」

 あのパワフルさなら死んでるというのも想像し難いのだが、さてどうしているのやら。久瀬も今は考えても仕方がないと割り切ると、気持ちを切り替えて栞の方を見た。

「さて、それじゃ模擬戦闘訓練に出るとするか。相手役は君と月宮さんだったな」
「はい。あと飛び入りで中崎さんも入ってます。あとヘープナー大尉が部隊持参で参加したいと言ってきてましたよ」
「飛び入りってね……」

 どうしてこの基地はこう適当に物事を決めているのだろうか。どちらかというと型にはまっている組織人の久瀬にはこのアバウトさだけはどうにも馴染めない。

「そういえば、北川大尉と美坂さんは?」
「あの、私も美坂さんなんですけど?」
「ああ、香里さんだよ」
「まったく、久瀬大尉も早く私たちの呼び方に慣れてくれないと苦労するだけですよ。北川さんとお姉ちゃんは警戒衛星の設置部隊の護衛に出て行きました。ついでに宇宙灯台の点検もしてくるそうです」

 先のリーフの攻撃で早期警戒用に設置されている無人衛星群が全て破壊されてしまっているため、現在必死になってこの警戒網の再構築を行っている。これが完了するまでの間は有人による哨戒に頼るしかなく、それが大きな負担となっているのだ。ついでに破壊された衛星が軌道を外れてデブリとなる前に回収してしまわなくてはいけないので、デブリ回収部隊も必死になって過重労働をこなしている。
 この有人哨戒で活用されているのが1年戦争で大量に建造されたパブリク突撃艇を改造したパブリク哨戒艇である。パブリクは艦隊に随伴できる航続能力と敵に向かって突撃をかけられるだけの加速性能を併せ持っているので、哨戒艇としてはうってつけの船だったのだ。万が一MSに発見されても加速性能にものを言わせて逃げ出せばそうそう落とされる事もない。
 久瀬は栞の答えになるほどと頷き、出撃準備が完了した自分のゼク・アインに向って床を蹴った。その先には副官の鹿沼葉子少尉が居て敬礼をしている。栞もそれを見送って自分のmk−Xに行こう思ったのだが、いきなり栞の前にMSの装甲が飛び出してきてしまい、躱す間もなく顔面をもろにぶつけてしまった。

「え、えうううう〜〜〜」

 なんとも痛そうに顔を押さえている栞に、コクピットハッチを開けて体を乗り出してきた長森瑞佳が済まなそうに謝罪の声を飛ばしてきた。

「ご、ごめんだよ栞ちゃん、大丈夫?」
「み、瑞佳さん、いきなり出てこないで下さい」
「うう、不注意だったよ。ごめんね。後でお詫びにアイス奢るよ」

 どうやら瑞佳もストライカーで訓練に出でるつもりだったらしい。ストライカーは現在準生産機にとして扱われており、フォスターUの守備隊用に配備が進められている。瑞佳の隣で起動したストライカーは一弥とみさおの機体だ。

「一弥くん、みさおちゃん、私たちも栞ちゃんたちに混ぜてもらおうか?」
「あの、勝手に決められても困るんですけど」

 いきなりとんでもない事を言い出す瑞佳に栞がつっこんだが、結局久瀬が折れる形で瑞佳たちの参加も決まってしまった。



フォスターUの傍で新兵たちのお守りをしていたモースブラッカー艦隊ではモースブラッカー准将は特に感想らしきものは漏らさなかったのだが、新兵たちの相手をしていた天野大隊の面々が勝手にMSの高速機動ショーを始めてしまった。それを見たモースブラッカーは大したものだと感心していたのだが、同じく艦橋からMS隊に指示を出していた天野が額にぶっとい血管を浮かべながら通信機に怒鳴りつけた。

「今すぐ隊形を戻しなさい。30秒以上掛かったら全員謎ジャムの刑です!」

 天野の叱咤を受けてきっかり20秒後には通常の移動隊形に戻っている天野大隊は、やはり凄いのだろう。




 サイド4からの移民の護衛に当たっていたみさきたちもこの報せを聞いていた。40隻のコロンブスを12隻の艦で護衛するという無茶をしているみさきたちであったが、幸いにしてこれまで1隻たりとも輸送艦に沈没艦を出してはいない。護衛12隻と言っても、うち6隻はフリゲートなのだが。
 この報せを受けたみさきは船団全てにこれを知らせると、隣に立つ雪見に苦笑いを見せた。

「大統領が健在、か。元ファマスとしてはちょっと複雑かな」
「別にどうでも良いわよ。連邦の大統領が健在だろうと無かろうと、私たちの仕事が変わるわけじゃないし」

 みさきの問いに気の無い返事を返す雪見。彼女にしてみれば大統領の生存の報よりも1隻の駆逐艦が欲しいというのが本音なのだ。護衛とはとにかく神経が休まらないので、連続して任務をやらされると流石に体がまいってしまう。みさきの護衛部隊には周囲の哨戒用にカウンペンス級軽空母1隻が配備されており、16機のダガーフィッシュと8機の早期警戒機オスプレイを搭載して船団の周辺を哨戒してくれている。
 長距離レーダーが信用できない今の戦場では哨戒機による周辺警戒は必要不可欠な物となっている。これを怠った為に敵の接近を許し、損害を受けたという事例は上げればキリがないほどだ。
 戦場で生き残るために必要なのは天才の閃きではなく、こうした当り前の事を面倒くさがらずに地道に続ける事だ。経験豊富な指揮官達はこれを良く理解しているので、みさきも雪見もこの辺りの努力を惜しむ事はない。

「幸い、哨戒に出てる部隊からは敵発見の報告は無いわ。このまま何事もなくサイド5に着ければいいんだけど」
「まあ、その辺りは神様にお願いするしかないね。サイド5に着いたら一度艦の整備のためにドック入りさせて貰えるよう秋子さんに頼んでみるね。あと休暇も貰わないと」
「そうね。特にMS隊と飛行隊の疲労はかなり溜まってるしね。折原君なんかは毎日愚痴をこぼしてるけど、良くやってくれてるわ」

 作戦行動中のパイロットの負担は洒落にならないほどに大きい。ましてこんな護衛任務ともなれば警戒配置のために長時間の機体搭乗を余儀なくされるので、疲労は蓄積する一方になる。加えて艦隊将兵全員に言えることだが、何時来るとも知れない敵の襲撃に備えて常に神経を張り詰めている。
 こんな最悪の条件下でみさきたちは護衛を続けてきたのだが、流石にそろそろ無理が出てきている、艦自体にもまともな整備を受けずに延々と酷使されてきたせいでがたついてきているし、この辺りで整備と休養を受けて戦闘力を回復する必要がある。出来れば少し後方に下げさせてもらって訓練もしたいところなのだ。
 幸いにして今の秋子の手元には人的にも物的にも多少の余裕が生まれ始めているので、それを使って自分達と任務を代わらせて欲しいのだ。もっとも、みさきの仕事を引き継いで完璧にこなすとなると、並の指揮官では倍の戦力が必要となるだろう。ずっと現場で戦い続けてきた歴戦の名将だからこそこれまで護衛任務を果せていたのだから。

「まあ、クラップ級やカイラム級の配備が進めば、サラミスやセプテネスがもっと沢山護衛部隊に回されてくると思うよ。そうなればだいぶ楽になるよ」
「それって何時になるのよ。フォスターUのドックが直るか、ジャブローとの航路の安全が確保された後の話でしょ」
「まあそうなんだけどね。とりあえずフリゲートの増派でも頼もうか?」
「フリゲートはどこの護衛部隊でも足りないって文句が出てるわよ。今増産中らしいけど、乗組員の訓練で戦力化できるのは早くても来月以降」

 戦艦や空母は反攻作戦に備えてフォスターUで厳しい訓練をしているが、それと並行して護衛艦艇の整備も進められてはいる。ただ建艦用のドックが未だに損傷艦艇の修理に追われていたり、任務から帰還してきた艦の整備に回されてしまうのでこれ等の護衛艦艇建は遅々として進んでいないのが実情だ。艦艇の整備なら浮きドックでも十分なのだが、先のリーフの攻撃でサイド5にあった全ての浮きドックが破壊されてしまった為、こんな手間をかける羽目になっている。
 これ等の浮きドックの再建は多少は進んでいるものの、多くは修復不可能と判断されて放棄されており、新規に作るしかなくなっている。この製作は民間業者に受注が回されており、現在急ピッチで作られているらしいがまだ新品の浮きドックは出てきていない。
 更にサイド1から主力艦隊の艦艇が整備を受けに交代でサイド5にやってくる為、これへの対処もしなくてはならないのだ。サイド5の負担は大変なものだろう。コンペイトウは奪還できたが、敵は放棄する際に内部を破壊してくれているので、これの修復のための物資もサイド5から送っている。コンペイトウが再建できれば12ある宇宙港とその施設を使ってサイド5の負担を軽減する事が出来るのだが、それは何時の日になるだろうか。




 連邦大統領の生還。それは各地で独自の抵抗を続けていた連邦軍に再び統制を取り戻させる効果をもたらしていた。宇宙とは違いまだ混乱が続いていた地上でも落ち着きを取り戻すようになり、オーストラリアのコーウェンの指揮統制が行き渡るようになったのだ。
 一度統制さえ取り戻せばティターンズの攻勢にも対処するのは難しくはない。もともと装備の質に圧倒的な差があるわけではなく、数ではなお連邦側が遙かに上回っているのだから。
 落ち着きを取り戻した連邦軍に対して、ティターンズは現実的に有効な対処を打ち出せなくなってしまった。緒戦の勢いで押し切れなかった以上、このままではジオンのように消耗戦を戦わなくてはいけなくなってしまう。そしてそれを危惧したのはティターンズだけではなかった。現にエゥーゴは冷静な連邦軍の整然とした攻撃を受け、一方的に壊滅させられた経験を持っている。
 眠れる巨人が目覚めてしまった。この事をはっきりと認識したティターンズとエゥーゴ、ネオジオンは1つの答えへと手を伸ばす事になる。それは、このグリプス戦争というものが大儀や理想とは全く無縁の、単なる勢力争いに過ぎないのだという事をはっきりと市民に知らしめる事となる。



機体解説

パブリク哨戒艇
兵装 20mm連装レーザー機銃座1基

<解説>
 戦後になって用がなくなったパブリクを改造した哨戒艇。意外と実用性が高く、各地の部隊で重宝されている連邦軍の主力哨戒艇である。敵を見つけたら逃げて来い、が前提なので、武装は自衛用程度しか持っていない。ペイロードには余裕が大きい為、かなり高性能な索敵・通信機器を搭載されている。連邦の目として活躍している為か、ティターンズやエゥーゴからは目の敵のように狙われている。



後書き

ジム改 さあ仕切りなおしだ。
栞   連邦大統領って、なんか影薄そうですね。
ジム改 この時代は軍の発言権が強い時代だからな。
栞   しかし、私たちは前線には出てないんですね。なんだか護衛とか訓練とか。
ジム改 地上戦闘じゃあるまいし、最精鋭部隊を消耗戦なんかに投入できるかい。
栞   あれ、私達って際精鋭部隊なんですか?
ジム改 アグレッサー級の大隊を幾つも抱えてる部隊が精鋭でなければ何なのだ?
栞   それを言われると厳しいのですが。
ジム改 さて、いよいよ話は折り返し点を越えて中盤最大の山場へと向い出しました。
栞   という事は、久々に大規模決戦が起きると?
ジム改 このまま延々と消耗戦しても良いのだが、それするとネジオンとエゥーゴがね。
栞   ああ、回復力がまるで違うんでしたね。
ジム改 そうなんだよなあ。同じ被害を受け続けると差がどんどん開く。
栞   ストーリー的にそれは不味いから短期決戦を目指そうと?
ジム改 つか、それ以外に選択肢はない。ネオジオンはまだしも、エゥーゴにはな。
栞   分かりました、エゥーゴがサイド5かサイド1に機動部隊で奇襲攻撃をかけるんですね。
ジム改 …………何故に?
栞   奇襲といえばパールハーバーかタラントです。
ジム改 タラントはマイナーすぎる気が。軍事オタしか分からんだろ。
栞   うちに来るような人は分かると思いますよ
ジム改 それは、否定できんが。
栞   それでは次回、求めた理想は何処に行くのか、現実を変えるのはただ力のみなのか。サイド3に帰還したアヤウラは現実と理想の乖離に何を思うのか。さまざまな思惑が絡み合う中で、1人この混沌とした状況を嘲笑う男がいた。
ジム改 次回、『虚構と裏切りの宇宙』でお会いしましょう。