第68章  宇宙の覇権


 

 サイド7にあるグリプス、ここはジャブローに次ぐ規模を持つ宇宙最大の生産拠点であったが、今では半分に分けられ、グリプス1、グリプス2の2つに機能を分割していた。グリプス1はこれまでどおり生産拠点として機能し、大量の物資と兵器を送り出し続けている。だが、グリプス2は違った。こちらはかつてジオンが作りあげた人類史上最大の兵器、コロニーレーザー砲へと改造されようとしていたのだ。
 この改造状況を視察してきたジャミトフは、グリプス1のティターンズ司令部にやってきていた。ここで今後の戦略を話し合わなくてはいけないのだ。

 会議室には既にジャミトフ以外のティターンズ宇宙軍の要人が揃っていた。宇宙軍全体を取り纏めているジャミトフの腹心、バクス・オム中将に、宇宙艦隊を任されているブライアン・エイノー中将を筆頭に、各方面で部隊を率いている指揮官や参謀達が揃っていた。
 ジャミトフは彼等の敬礼に右手を上げることで答え、自分の席に腰を降ろして一堂を見回した。

「さて、状況は分かっていると思う。ネオジオンとエゥーゴもいよいよ連邦と本格的な戦闘に突入した」
「はい、双方共にかなりの被害を出したようですな」

 先のコンペイトウ会戦における敵対勢力同士の激突はティターンズにも情報が届いていた。バークの戦死や、ネオジオンの新型MSゴブリンの情報も入っており、ジャミトフたちはネオジオンの戦力に驚いていた。まさかネオジオンにこんな新型量産機を送り出してくる力があったとは。

「ネオジオンの力、些か見縊っていたかな。コンペイトウはかなり危なかったらしい。連邦の戦力を削ってくれるのはありがたいが、奴等が必要以上に勝つのは好ましくは無いな」

 ティターンズはアースノイド至上主義の集団であり、スペースノイドが世界を支配する事は認める事が出来ない。それなら連邦が統治した方がまだ良い。しかし、ジャミトフ個人としてはネオジオンの総帥キャスバル・ダイクンやエゥーゴのブレックス・フォーラに同調する部分もある。人間は地球を一度離れ、地球環境の再生を図るべきだというのは彼の主張でもあるからだ。それは連邦の支配体制下では決して叶わない願いだった。
 ティターンズとエゥーゴ、ネオジオンは共通する部分を多く持つが、どうしても分かり合えない部分によって対立をしてしまう。彼等が力を合わせることが出来れば、連邦を打倒する事さえ不可能では無いというのに。
 
 そこまで考えて、ジャミトフはその妄想を頭から追い出した。彼等とは決して仲間になれないのだから、そんな仮定は無意味なのだ。軽く頭を振って気持ちを切り替え、ジャミトフは技術本部長を見た。

「技術本部長、我が方のMS開発状況はどうなのかね?」
「グーファーの投入で一息ついた、というところです。現在はこれの改良とコストダウンを行いつつ、マラサイとバーザムのマイナーチェンジをしておりますが」
「新型はどうなっておるのかね?」
「サイコガンダムの量産型を準備しています。これが完成すれば、連邦を圧倒できるかと」
「サイコガンダムか」

 技術本部長の報告にジャミトフは僅かに顔を顰めた。彼はサイコガンダムと、それを扱う強化人間を信用していなかったのだ。キリマンジャロなどの強化人間研究所で行われている強化実験では被験者は異常なまでの苦しみ方を見せており、とても実戦で役立つとは思えなかったからだ。彼は被験者に同情するほど感傷的な男ではなかったが、パイロットがあれほど苦痛を訴えるようでは実用性など皆無だという常識的な判断で強化人間は役に立たないと考えていた。
 量産型サイコガンダムはニュータイプや強化人間でなくとも扱えるというのが売りだが、何処まで役に立つかとジャミトフは冷ややかな目で見ていた。



 そしてジャミトフは、今度はエイノーとバスクに話を振った。今後の対応をどうするのか聞く為だ。地上ではヨーロッパを巡って連邦とティターンズが激しくぶつかっており、連邦軍がここに援軍を送るのは確実と言えるので、それを食い止めるのが宇宙軍の仕事となる。

「バスク、水瀬の動きはどうなっておる?」
「はあ、どうやらヨーロッパへの降下作戦を目論んでいるようですな。多数のペガサス級を含む艦隊がフォスターUに集結しております」

 バスクが調べた限りではフォスターUに配備されている第1艦隊を中心に第7、第8支援艦隊、そして複数の独立艦隊や輸送部隊を集めた艦隊らしい。また、これを支援する為にエニー・レイナルドが率いている第3、第4艦隊がこちらとの戦線を押してきているようで、これに対応する為に相当数の部隊が動かされている。コンペイトウにある第2艦隊、ペズンにある第6艦隊は動く様子が無く、第5艦隊はフォスターU正面に展開して守備に付いている。
 ただ、連邦宇宙軍全体から見れば少ないとは言っても、輸送艦も入れれば200隻以上が秋子の指揮で地球軌道を目指す事になる。エニーの攻撃に対処しながらで、果たしてこれを阻止できるほどの戦力を展開できるのだろうか。

「バスク、仮に地球軌道で艦隊戦をするとしたら、どれだけの数を出せるのだ?」
「……多いとは言えません。我が軍の主力はサイド5、ルナツーの中間宙域で激突する連邦艦隊との戦いに振り向けられておりますから、それ以外に向けるとなりますと、50隻ほどが限界ではないかと」
「たった50隻か?」
「これでも無理をしている数字です。他の方面が手薄になるのを覚悟した数ですから」

 連邦が主力を向けてきただけでこの有様かと呟いて、ジャミトフは苦い顔になった。ティターンズは連邦に敵対する勢力としては最大の規模を誇り、その戦力は連邦軍と互角に渡り合えるほどに巨大だ。規模ではかつてのジオン公国以上の物を持っている。だが、現在の連邦軍は当時の連邦軍を遙かに超える戦力を持っている。数では劣っているが、装備の質が比較にならない。ジオンはザクとムサイを組み合わせた新時代の装備と戦術によって旧来の兵器と戦術を使っていた連邦軍に対して圧倒的なアドバンテージを得ていたのだが、ティターンズと連邦の間にはそこまでの差は無い。
 加えて人材も豊富だった。地上はコーウェン将軍が総指揮を取って各地の戦線を立て直し、ティターンズと互角の戦いを見せている。そして宇宙では水瀬提督の総指揮の下に3正面作戦を戦っている。これだけ広い戦線を纏めているのだから、この2人の統率能力と指導力は素晴らしいの一言に尽きるだろう。しかも両者は秋子がコーウェンを立てていて対立が見えないので、バスクとアーカットが激しく対立しているティターンズよりも上手くやっている。
 だが、今は嘆いている時では無い。ジャミトフはバスクの回答に頷くと、エイノーを見た。

「エイノー提督、行ってくれますかな?」
「命令とあれば、何処にでも行きましょう。それに、ヨーロッパに水瀬が部隊を降ろせば、同方面の友軍が叩きのめされます」

 エイノーの答えは単純明快だった。命令があれば何処にだって出撃する。それが軍人のあり方であり、ジャミトフはただ行けと言ってくれれば良い。エイノーは古いタイプの職業軍人で、上官の命令は絶対の物という考えを持っている。その愚直さが将兵を惹き付け、ティターンズの中でもジャミトフに次ぐほどの人望を集めさせているのだ。残念ながらバスクは人望が全く無い。
 ただ、エイノーが如何に名将とは言っても、数の左はやはり問題だ。恐らく出てくる秋子も名将であるので、エイノーが頑張ったとしても数の前に踏み潰されるのは想像に難くは無い。そんな戦場に貴重な予備戦力つぎ込んで消耗するのは避けたいというジャミトフの思惑もあって会議は難航する事になる。だが出さない訳にもいかないので、ジャミトフは渋々エイノーに預けられるだけの戦力を預けて地球軌道に出す事にした。




 ジャミトフたちが会議を行っていた頃、サイド7にある来栖川重工の工業プラントでは来栖川綾香とパプテマス・シロッコが暢気にお茶を交えながら物騒な話をしていた。それは、もし職務に忠実なティターンズの士官がいれば即座に拳銃を抜いていたであろう類の内容であった。

「貴方も物好きね、パプテマス・シロッコ大尉。うちに接触して、ジャミトフにばれたらどうする気なの?」
「なあに、構いはしませんよ。ジャミトフ閣下は聡明な方、私に手を出して木星を敵に回されるような義挙はされますまい」
「でも、バスク中将辺りはどうかしらね?」

 綾香の放つ非好意的な視線に、シロッコは表情に小波を立てることさえなく穏やかなすまし顔を続けている。正直綾香はこういう芝居がかったタイプは毛嫌いしているのだが、嫌いだからという理由で公務を疎かにするほど子供ではなかった。
 口にしていたコーヒーのカップを置いた綾香は、小さく咳払いをしてシロッコに用件を質した。

「それで、来栖川にどのような御用でいらしたのか、お聞かせ願えますか、木星のパプテマス・シロッコ大尉?」
「はははは、そう毛嫌いしないで頂きたいですな。別に敵対しに来たわけではないのですから」

 言葉尻に嫌味を感じさせる綾香に、シロッコは苦笑を浮かべていた。その余裕が更に綾香の精神をささくれ立たせてしまい、小さく奥歯を鳴らせている。

「惚けるのはそれくらいにしてくれないかしら。木星の動き、私たちが知らないとでも思ってるの?」
「…………」
「MSや戦艦まで独自に開発して、何をするつもりなのかしら。木製ヘリウムを盾に地球と戦争でもするつもりなの?」
「これは、思っていたより情報通でいらっしゃるようだ」

 薄く笑ったシロッコは自分用に出されたコーヒーに口をつけた。木星では味わえない最上級の本物のコーヒーの香りが鼻腔をくすぐり、シロッコの表情が僅かに緩む。

「本物のコーヒーですか、木星では中々手に入らない物だ」
「軌道上に作られたステーションとプラントだけですものね。嗜好品を作ってる余裕なんて無いのは知ってるわ」

 木星の生活環境が苦しいのは綾香も知っている。元々は木星ヘリウムを採掘する事だけが目的の採掘基地でしかなかったのだから当然なのだ。だが、UC0010に木星開発事業団が誕生してはや70年以上が過ぎており、木星を故郷とする世代も増えている。既に木星は地球とは別の国家と呼びうる組織となっており、そこから派遣されてきたシロッコは彼自身の考えもあるだろうが、木星の思惑で動いている筈なのだ。
 だが、シロッコは中々本題を切り出そうとはしない。まさか木星が生活物資に困窮しているから、資源と食料を送って欲しいなどという要求を持ってきたわけではあるまいし。それならジャミトフに申し込んだ方がよっぽど早いのだから。

「シロッコ大尉、そろそろ用件を出して貰えませんか?」
「……ふむ、せっかちな方だ。良いでしょう、お話しましょう」

 回答を急かす綾香に対して終始マイペースなシロッコはことさら余裕を見せびらかしている。それが自分を苛立たせる手だとは綾香にも分かっているのだが、腹立たしい物は腹だたしいのだ。

「木星は地球との今後の関係について、どう進めて行くべきかで意見が別れています。木星開発事業団の創設に尽力していただいたシスターズの最後の生き残り、来栖川との関係についてもです」
「木星が来栖川と手を切るというのかしら?」
「いえ、そういう声もあるという程度です。ただ、木星は地球圏の情勢不安が気になっておりまして。先のファマス戦役と、それに続く今回の内戦でヘリウム船団は打ち切りになっておりますし」
「…………」

 治安が悪化していることに木星が懸念を示すのは綾香にも理解できた。先の1年戦争でさえ木星ヘリウム船団はある程度の安全が保証されていたというのに、今回はその安全が確保出来ないというのだから。
 ただ、綾香はジュピトリスが碌な護衛も無しに地球圏にやってきたことに着目していた。来栖川の情報網は木星にも届いており、ジュピトリス船団は多数の護衛艦隊を伴っていたはずなのだ。

「それに、シェイド計画の失敗も木星は気にしておりまして。ジオンに流して非合法的な研究を大規模に行わせるという計画の利点は分かるのですが、失敗してしまっては意味が無いでしょう?」
「よく言うわね、あんな不安定な代物を送って寄越しておきながら」
「ですが、あれはそちらの求める要求を満たしていた筈」
「それは認めるわ。生み出された4人の試作シェイドの力は確かに驚異的だった。でも成功率数万分の一なんて、実用品にはならないでしょう?」
「それはこちらも反省しています。アーセン博士の無能もあったでしょうが……」

 シェイドの元となった古い者「神奈」を手にしたのは来栖川だったが、これには木星開発事業団も一枚噛んでいた。ただ、彼等は神奈を用いた研究には危険なほどの非合法手段が必要であるという現実を前に二の足を踏み、その研究をアーセン博士に託してジオンに流したのだ。勿論そのデータは逐一来栖川に流れており、成功例の4体の実験体の圧倒的な能力に一時は喜んだものだった。
 だが、その喜びは束の間の物であった。ある程度データが揃い、これからの成果が期待されるという段階でアーセンが突如として出奔してしまったのだ。それ以後数年にわたる捜索にも引っ掛からず、シェイド研究は頓挫してしまった。アーセンと共に送り込んだ高槻は研究を続行していたのだが、この男では時間がかかりすぎる。
 結局アーセンの所在が判明したのはファマス戦役に入ってからになるが、この頃になると来栖川の影響力は著しく低下しており、秋子の庇護下にあったアーセンに手を出す事が出来なかった。

 この頃になると木星側はシェイドに対する拘りを捨て去り、ジオンが着目した木星帰りの人材、つまりNTに着目するようになっていった。何故か木星圏ではNTに覚醒する比率が高く、ジオンがそれらの戦力化を目論んでいた事に木星開発事業団も着目してNTの研究を進めている。
 だからシロッコがシェイドの事を出すのは来栖川への嫌がらせ以上の意味は無い。木星はもうシェイドなどどうでも良いのだから。ただ、このネタを使って来栖川に対して有利な位置を得ようという思惑はあるだろう。そして綾香は身内の失態を出されて明らかに気圧されていた。

「しかしまあ、今回は昔を掘り起こす為に来たわけではありません。今現在の話のためです」
「なら最初からそうしなさいよ」

 意味の無い嫌味を言いたかっただけなのかと怒る綾香を、シロッコは右手を上げて制した。綾香はまだ憤懣収まらない様子だったが、とりあえず矛を収める。それを確かめてシロッコは本当の用件を切り出した。

「連邦軍が地球軌道に大部隊を送ることが分かったのです。ですが、ティターンズにはそれを阻む力は無い」
「それはそうでしょうね。ティターンズ宇宙軍の戦力じゃあ、レイナルド中将の率いるティターンズ方面軍を押さえるだけで手一杯でしょ」
「その通り。ですが、連邦はこの状況で大部隊を動かしています。これに対してティターンズは迎撃の部隊を送るようですが、数が少なすぎます。返り討ちにあうのは確実かと」
「つまり、うちに援軍を出せという事?」
「まあそういう事ですな」

 侘びれる様子の無いシロッコに綾香は舌打ちを隠せなかった。来栖川とてそれほど大きな部隊を用意しているわけではない。確かに装備は一流だが、ティターンズと較べれば可愛いものだ。だから来栖川は本格的な戦闘には余り首を突っ込みたくなかったのだが、シロッコは戦いに、それも会戦クラスの戦いに出て来いと言ってきたのだ。
 暫く指でテーブルを叩いていた綾香であったが、遂には重苦しい息を漏らしてシロッコの要請を受け入れた。

「分かったわ。でも、すぐには無理よ。会長の許可が無いと企業軍の大規模な動員は出来ないわ」
「多少なら構わんでしょう、連邦もすぐに動けるわけではない」

 シロッコは綾香に3日後の回答を求め、帰って行った。それを見送った綾香はしばらく激怒していたのだが、執事の長瀬原三郎こと、セバスチャンがやってくると怒りを収めた。長瀬はひっくり返っているテーブルや倒れている観賞樹を見て何があったのかを察したが、それを突っ込む事はしない。

「綾香お嬢様、シロッコ殿は帰られましたが」
「たく、嫌味な奴だったわ。公務でなかったら病院送りにしてやったわよ!」

 怒りを見せる綾香に長瀬はよほどあの御仁の性格が悪かったのだなと察しはしたが、それに付いては何も言わず、じっと綾香の指示を待った。そして綾香は酷く気が進まない声で長瀬に芹香との会議が必要だと伝えたのだ。

「姉さんと話す必要があるわ。企業軍を出さなくちゃいけないみたいだから」
「ですが、まだ戦力的には不安が残りますが?」
「しょうが無いじゃない、あいつが出せって言ってきたんだから!」

 最後に残っていた椅子に八つ当たりの一撃をくれて気を晴らす綾香、よほどシロッコが気に食わなかったようだ。長瀬は綾香が暴れた後の悲惨な応接室を見回してやれやれと溜息をつくと、部下を呼んで応接室の修復を命じた。





「アヴェンジャー攻撃機5機、来ます!」
「落とせ、対空砲火は何をやっている!?」

 サラミスがもてる限りの対空火器で弾幕を張り巡らせるが、他の艦と連携しない弾幕には余り効果は無い。5機のアヴェンジャーはパルスレーザーの弾幕を掻い潜って接近し、抱えてきたスピアフィッシュ対艦ミサイルを発射して逃げていく。この元々は対要塞用に開発された強力なミサイルが3発直撃し、このサラミスは退艦する間も与えられずに轟沈してしまった。

 ルナツーとサイド5の中間宙域は連邦とティターンズの艦隊がしょっちゅう激突する危険宙域となっている。双方共に多数の艦隊を常時展開し、遊撃戦を行っているのだ。だが、今日は様子が違った。エニーが自らバーミンガム級戦艦ケントに座乗して陣頭指揮を取り、第3、第4艦隊を主力とする大部隊が戦線を複数箇所で同時に攻勢に出ていたのだ。
 この複数箇所での攻撃に対してティターンズはルナツーから艦隊を出して迎撃を行わせたのだが、ここで大問題が発生した。ティターンズにはこれだけの広範囲に渡る戦場で部隊をまとめられるような指揮官がエイノーくらいしかおらず、そのエイノーが地球軌道に向かう為の部隊編成に入ってしまった為、前線で艦隊をまとめられる指揮官を欠いたティターンズは混乱を来たしたのだ。唯一、ティターンズに組してルナツーでクーデターを起こした旧第6艦隊司令官のナウメンコ少将だけは大部隊をまとめる事が出来たが、彼も多方面の部隊を同時にまとめるほどの力量は無かった。そういった事が出来る優秀な提督たちの大半は秋子の元に集っていたから。
 エニーはそれが出来る提督で、大艦隊を率いる事が出来るケントから複数の独立艦隊と2つの正規艦隊に指示を出して機敏に動かしている。これに対してティターンズは多数の独立艦隊で迎え撃つという方法で対抗したのだが、全体をまとめられる指揮官を欠いたためにここの部隊が連携できず、各個撃破の好餌となる部隊が続出していた。

 各戦線からの報告は逐一エニーの元に届けられ、ケントの艦橋に設けられている巨大なスクリーンには戦場全体の戦況を示す宙域図が表示されて、双方の艦隊を示すマークが忙しく動き回っていた。

「提督、ヘボン少将より連絡です。我、正面の艦隊を撃破せり!」
「そう、それでは第4艦隊はそのまま3時方向に移動、第3、第5独立艦隊と交戦中のティターンズ艦隊の側面を叩かせなさい。それで左翼方向の戦いにはケリが付くわ」

 ケントの巨大な艦橋の後ろ半分を覆うように設けられている2階部分には艦隊司令部用の指揮設備が設置されている。エニーは長テーブル型の宙域図に表示されている第4艦隊を示す大きな三角錐のマークを満足げに見下ろしていた。左翼方面には第4艦隊という纏まった部隊を配置し、各地で自軍の独立艦隊と交戦するティターンズ艦隊を次々に襲わせて各個撃破するという戦法は今の所上手くいっていたのだ。
 第3艦隊自信は中央にあってティターンズの艦隊を迎え撃っていたのだが、こちらはエニーが全体の指揮に集中しなくてはいけないという制約もあってか、余り積極的な動きは見せず、敵艦隊を拘束する事に主眼を置いている。

 この戦いの指揮を取りながら、エニーはルナツーから更なる増援が出てこないことに眉を顰めていた。今回の攻撃は地球軌道に向う秋子の助攻が目的なので、少しでも多くの敵を引き付けたいというのが本音なのだが、どうやらティターンズはこちらの攻撃の意図を読みきっているらしい。

「参ったわね、思ったほど出てこないわ」
「ティターンズにも先が見える人物は居るでしょう。現在出てきている数だけでもそれなりの物ですし、満足しても良いのでは?」
「私はルナツーの戦力だけじゃなく、グリプスの部隊も引きずり出したかったわね」

 それは些か欲を出しすぎではないかと参謀が窘める。幾らなんでもそこまでは秋子とて望んではいまい。だが、エニーは不満そうな表情を崩そうとはせず、参謀たちは苦笑いをする事になる。この上官が拘っている理由が戦果ではなく、ライバル的な存在である秋子に貸しを作りたいという欲求から来ているものだと誰もが知っていたからだ。そしてエニーのそんな意地っ張りな部分は、部下には好ましい欠点と受け止められていたのである。
 参謀達が苦笑しているのを見たエニーはますます不機嫌そうになったが、何を言っても不利になるだけだと理解はしているようでそれ以上余計な事は口にしなかった。変わりに咳払いを入れて視線を正面の戦闘に向け、ことさらに大きな声を上げて部下に命令を出した。

「何時までだらけてるの、こちらでも攻勢に出るわよ!」
「はっ、提督!」

 その一喝で参謀達の表情が引き締まり、第3艦隊の各艦に命令が伝達されていく。この艦隊はエニーの直属なので、エニーは手足のように動かすことが出来るのだ。

「さてと、それじゃあ目の前の敵を片付けるわよ。その後右翼の支援に回る!」

 エニーが気合を入れるように大声で命じ、参謀や艦橋のクルー達がそれに元気良く応じる。第3艦隊の司令部や艦橋クルーは提督の影響を受けているのかもしれない。



 このエニーの猛攻はルナツーのティターンズを狼狽させるに足りた。これまでは小競り合いの連続で大規模な激突が無かったのだが、いざ連邦軍が本気で軍事行動に出たら、自分達はどれだけ脆いのかを思い知らされた恰好になっている。
 ルナツーにはまだナウメンコ少将率いるティターンズ第3艦隊があるのだが、ルナツー司令部はこれを出撃させようとはしなかった。これはルナツーの主力部隊であり、守りの要なのだ。もし第3艦隊が出撃した後で連邦の別部隊がルナツーを急襲してくれば、ルナツーは守りきれないかもしれない。司令部はそれを恐れていて、エニーを止めるに足る纏まった艦隊の出撃を渋っていたのだ。
 だが、これには当のナウメンコが我慢できなかったようで、ルナツー司令部に再三に渡って出撃許可を求めている。だが全てが退けられてしまい、怒ったナウメンコは長距離通信でバスクに出撃許可を求めた。これを受けたバスクも最初は躊躇っていたのだが、ナウメンコの強い要望に折れるような形で出撃を認め、ルナツー司令部に第3艦隊の出撃命令を出した。
 これを受けたルナツー司令部は渋々第3艦隊に出撃を命じ、それと交代させるように幾つかの独立部隊を呼び戻してルナツーの防衛にあたらせる事にした。これを知ったナウメンコはルナツー司令部の弱腰振りを激しく非難している。

「ルナツーには独自に守備隊がいるのに、まだ部隊が欲しいのか。臆病な指揮官の元では、我々がどれだけ上手く戦っても勝てはしないだろうな!」

 ナウメンコの吐き捨てるような言葉は真実となる。第3艦隊投入の決断は余りにも遅すぎたのだ。既に投入していた独立艦隊は3割を喪失しており、戦線を支えられずに後退を続けている。ここの今更第3艦隊が加わっても壊走寸前の味方を立て直す事は出来るかもしれないが、敵を押し返す事は出来まい。下手をすれば第3艦隊まで各個撃破の餌食になりかねない。
 ナウメンコはティターンズの人材不足を嘆くしかなかった。確かに自分はアースノイド主義を掲げるティターンズに共感していたし、ジャミトフにも世話になっていた。だからティターンズの決起に同調して挙兵したのだが、今では早まった事をしたと少し後悔している。確かにジャミトフは優れた人物で、軍政、軍令の双方に高い能力を発揮する。側近であるバスクは実戦部隊を率いる指揮官としては有能であるし、エイノーは名将と呼べる提督だ。
 だが、その他が不味かった。ルナツーのような最重要拠点を任されている司令部でさえあんな臆病で決断力の無い人物がついているくらいで、まさに1年戦争とファマス戦役で淘汰された筈のジャブローのモグラが上官にいる悪夢が再現されている。アースノイド至上主義の高官にはゴップ大将を中心とする旧来の無能な官僚軍人が多く、彼等はティターンズに流れてきたのだ。そのせいでティターンズの高級将校には馬鹿が多くなってしまった。
 ジャミトフはこの予想外の事態に頭を抱えてしまったという噂があるが、それは事実では無いかとナウメンコは思っていた。ルナツーのような重要拠点の司令部でさえあのような有様なのだから。ティターンズは確かに兵やパイロットには恵まれているのだが、高級士官には難がある。
 
「まあ、愚痴を言っても仕方が無いか。全艦、敵第3艦隊に向かえ!」

 ティターンズ第3艦隊が進路を連邦第3艦隊へと向ける。この第3艦隊を叩けば連邦軍の攻勢を食い止める事が出来るとナウメンコは読んでの行動だったが、これが上手くいって連邦艦隊の動きが鈍る事になる。
 しかし、ナウメンコは間違えていた。彼は出撃するべきではなく、ルナツーでじっと待っているべきだったのだ。なぜなら、この時サイド5からは秋子が集結させていた大艦隊が出撃しようとしていたのだから。





 秋子の命令でフォスターUに地球降下を目論む艦隊が集結を終えようとしていた。秋子も自ら旗艦カノンに乗り込み、フォスターUをいつものように要塞事務総監のランベルツ中将に任せての出撃だ。留守を任されたランベルツは秋子の頼みを快諾したが、些か苦言を残してもいた。

「状況を考えれば止むを得ないのでしょうが、宇宙軍総司令官である水瀬提督が余り総司令部を留守にされるのは、正直好ましくはありませんぞ」
「そ、それは分かっていますよ」
「はい、分かっておられないようでしたら、後を任されたりはしておりません」

 秋子に対してここまで直言してくるのは、1年戦争の頃からずっと秋子の補佐を勤めてきたマイベックを除けば彼くらいだろう。他の将官連中では秋子の権勢に恐れをなしてここまではっきり言う事は出来ない。だが秋子はマイベックもそうだったが、背中を任せるような補佐役にはこういった人物を選んでくる。1年戦争で栄達した、言うなれば主流派から外れた位置に居た為か、こういう人物がいてくれないと、組織が軍閥化しかねないということを彼女は良く知っていたのだ。
 ランベルツに後を任せた秋子は第1艦隊を中心に護衛として2つの前衛艦隊と輸送船団を守る本体を編成している。前衛艦隊を率いるのは緊急展開軍時代から秋子の下で戦ってきた分艦隊司令官のシドレ准将と、新たに秋子の直属に加わってきたイーストウッド准将だ。2人とも高速部隊を率いて戦う事に長けた歴戦の提督で、秋子の傍で大艦隊の一翼を担うよりはある程度自由に行動させた方が良い働きをする。
 両部隊は20隻ほどの艦隊で、駆逐艦と巡洋艦、巡洋戦艦で編成された高速打撃部隊となっている。その仕事は本隊の露払いで、予想されるティターンズ艦隊を撃破することを目的としている。
 これに対して本隊は戦艦と空母主体で、多数のコロンブス級輸送艦と12隻のペガサス級強襲揚陸艦が含まれている。輸送艦にはバリュート装備のMS隊が詰め込まれており、空母部隊には1次降下部隊を降下させるためのアヴェンジャー攻撃機隊と、耐熱コーンを装備した護衛のダガーフィッシュ隊が搭載されている。ダガーフィッシュ隊は予想されるティターンズのギャプランとダガーフィッシュ、ティン・コッドの迎撃を迎え撃つ為のものだ。いくらMS隊が強力でも高高度では無力であり、ダガーフィッシュ隊に守ってもらうしか無い弱い存在でしかない。
 ただ、降下時には地上部隊の援護を受けられるという情報もあり、秋子はむしろこちらに期待していた。地上軍では北欧にあったカラバの工場をベルファーストに移転させてMSK−006Zプラスという大気圏内用可変MSを量産していて、さらにそれの地上・宇宙兼用型のRMS−006C1も試作機が順調なテストを消化している。これらが出てくればギャプランを押さえられるのではないかと期待していたのだ。



 フォスターUに集結した200隻を超える大艦隊。をれをカノンから見ていた祐一は、隣に立つ名雪に少し戸惑ったような声をかけた。

「また地球か、1度の戦争で2度も降りるとは思わなかったな」
「そうだね」

 前の降下の時はこんなに危険を伴った物ではなかった。味方の勢力圏下に降下し、収容しに来た味方の船に拾ってもらって、あちこちから支援をしてもらってかなり安全な降下が出来たのだ。だが今回は違う、完全な敵前への強襲降下になる。それだけに落とされる可能性はかなり高いといわざるを得ない。

「名雪、今回は外れてくれないか。降りても勝てる可能性はそんなに高くない」
「……祐一は、私が居なくても大丈夫なの?」
「大丈夫とか、そういうんじゃ無いだろ。俺はお前を心配してっ」

 お前を死なせたく無いんだと繋げようとした祐一だったが、それは口から先には出てこなかった。じっと窓から外を見ている眼差しの強さが祐一にそこから先の事を言わせなかった。

「私は嫌だよ、祐一が居なくなるのは」
「名雪、だけど、今回は」
「これまでだって何度も危ない任務をこなしてきたよ。今更なんでそんな事言うの。心配してくれるのは嬉しいけど、私だって隊の子たちには負けないつもりだよ!」
「それは……分かってる」

 名雪の腕はすごい、それは祐一が誰よりも知っている。接近されれば確かに弱いが、それでも並のパイロットよりは上だ。中距離ではエース級の強さを見せ、遠距離では仲間内でも最強なのだから、名雪が弱いなどと言う事は出来ない。
 だが、祐一が名雪に残れといっているのは、そんな軍事的な常識の問題ではなく、ただの感情論だ。今度の任務は危険がかなり大きいから、名雪を戦死させたく無いという一心から祐一は残れと言っている。祐一の権限なら名雪を編成から外し、フォスターUの防衛部隊なりに残す事は可能だから。
 しかし、名雪はそんな事は望んでいなかった。名雪の望みは祐一の傍に居る事、仲間達と一緒に過ごす事だから。
 祐一は、窓から自分に顔を向けてきた名雪の悲しげな眼差しを前にして困った顔になってしまった。名雪に泣かれると罪悪感が凄いのだ。

「置いていかないでよ、祐一」
「でも、危ないんだぞ。ここで秋子さんと一緒に帰ってくるのを待っててくれたほうが俺は安心できるんだ」

 名雪に対して説得を試みる祐一だったが、名雪はフルフルと首を横に振る。

「それは駄目だよ。祐一、1年戦争の時もそう言って出て行って、そのまま帰ってこなかったもん」

 名雪は隣に立つ祐一の肩にポンと頭を乗せると、甘えるような、寂しいような声で祐一に本音をぶつけてきた。

「もう、待つのは嫌だよ」
「……ごめん」

 1年戦争で水瀬家を飛び出して以来、82年にカノンで再会するまで実に3年も放っておいたのだ。普通なら愛想を尽かされてしまっただろうが、名雪は驚いた事に自分を追いかけて来てくれたのだ。まあおかげですっかり頭が上がらなくなって、尻に敷かれたような状態が続いているのだが、これはこれで良い物だと感じるようになっている祐一だったりする。
 もたれ掛かってくる名雪の肩を抱き寄せて、祐一は少し迷いながらも名雪の土光を受け入れる事にした。名雪が一度決めた事は決して覆さない女性だという事は分かりきっていたことで、自分が説得しても曲げる事はほとんど無いのだから。

「分かったよ、また俺の背中を頼む」
「うん、うんっ!」
「それに、まあ、俺が頑張って守れば良いだけだしな」
「……祐一、すっごく恥ずかしい事言ってるよ?」
「やかましいわ!」

 いい所なんだから水差すんじゃないと怒る祐一に、名雪は小さく下を出して笑っていた。この2人はこんな関係で良いのかもしれない。こんな、何時までも恋人というより家族のような間柄が似合っている。
 だがその時、ふと祐一の耳に聞こえてきた不思議な声があった。

「栞、もっと寄れ、寄るんだあ」
「イエッサー」

 はて、この声は折原と栞のような。そう思って声のした方を見ると、通路の見えない凸部分などで遮蔽を取りながら、栞と浩平がカメラと集音マイクを手に近付いてきていた。どうやら自分たちを見つけて面白そうだと近付いていたらし。
 祐一は額に青筋浮かべると、ギロリとそっちを睨んだ。

「何やってるんだ、お前等?」
「え、え〜と……」
「あ、あはっはは、奇遇ですね、祐一さん」

 あっさりとばれて次の行動が咄嗟に浮かばないでいる浩平と、焦りまくって引き攣った笑顔を浮かべている栞。祐一は何やら物凄く物騒な顔をして名雪から手を離すと、ジリジリと2人に近付いていった。

「ふふふふふ、折角久しぶりに2人っきりになれたと思えば、またしても邪魔しに来たかお前等?」
「はっはっは、幸福とは分かち合うものだと昔から言うではないか!」
「そうそう、そうですよ祐一さん!」

 祐一に凄まれても平然とアホな事をほざいて笑っていられる2人は、やはり大物なのかもしれない。これに祐一の中で何かがプチンとキレかけたのだが、それが切れるより速く、通路の気温が劇的に低下し始めた。その要因は祐一の背中の方にあるようだった。そちらを見ている浩平と栞が凍りついたように固まってしまい、口だけがパクパクと動いている。
 この2人の反応を見た祐一は、ある確信を持って恐る恐る後ろを振り返り、そしてそこに予想していた物を見てしまった。そう、そこには鬼が居たのだ。

「2人とも、何の用だったのかな?」

 その笑顔は異性同性を問わず惹き付けてやまない温かさを感じさせるいつもの名雪の笑顔だ。その声も穏やかで、一見するといつもの名雪と何も変わらない。だがその雰囲気が明らかに違った。彼女から発せられるオーラのような何かが、明らかにいつもの周囲から気合とか緊張とかを奪い去っていくほんわかした空間を生み出してしまうものから、周囲を凍てつかせる氷結地獄を生み出す物へと変わっている。名雪から発せられるプレッシャーは浩平と栞を一瞬で凝固させて逃げる事も言い訳することも出来なくしてしまい、振り返った祐一もまた息苦しさに苦しんでいる。
 この状態の名雪を祐一は良く知っていた。栞も一度だけ見た事があった。そう、名雪は本気で怒るとこうなるのだ。水瀬家の母と娘は揃ってカノンで怒らせてはいけない人の1位と2位を占めているらしい。
 この後浩平は探しに来た瑞佳に掴まり、その場で延々と溜息と情けなさ交じりのお説教をされ続け、栞は名雪に掴まって何処かに連行されて行ってしまった。この後の栞の運命は不明であるが、食堂でテーブルに突っ伏していた所を食事にやってきた兵士に発見されている。この時栞は自分の身に何が起きたのかを全く覚えていなかったという。



 エニーたちがティターンズの艦隊を引き付けてくれている。それがルナツーの部隊を全て引きずり出してくれるのを秋子はじっと待っていた。ルナツーにもし動ける部隊が残っていたら、それが自分達に向ってくるのは確実だ。今回は輸送船の数に対して護衛が十分とは言い切れないので、エニーが出来るだけ沢山の敵をひきつけてくれるまで動けなかったのだ。
 だが、ルナツーから敵の第3艦隊が出撃したという報せを受けて、ついに秋子は出撃を決断した。これで残っているのはグリプスに居る艦隊だけだ。これだけなら防ぐ事は可能だと秋子は考えている。
 ただ、問題は出てくる相手だろう。自分やエニー、クライフといった一流の指揮官を相手にできる指揮官はティターンズには多くは無い。元々連邦軍が最良の人材を有しているのだから当然だが、この状況で出てくるとなれば、それは1人しか居ない。

「エイノー提督が出てきたら、私で相手が出来ますかね?」

 ティターンズについたエイノーだけはティターンズの提督の中でも群を抜いた実力を持っている。彼と対等に戦える提督はリビックくらいだったろう。自分やエニー、クライフでは同数では競り負けてしまう。かつてオスマイヤーがコンペイトウで一度戦ったのがエイノーの戦術に嵌って殴り合いの消耗戦に持ち込まれ、多大な損害を受けて合い撃ちになってしまったのだ。
 恐らく、エイノーは出てくる。それを自分は数でそれほど優位とは言えない状態で相手取らなくてはいけない。それにどう対応するか、秋子は真剣に考えなくてはいけなかった。




後書き

ジム改 次回は地球軌道での戦いだ。
栞   私も出れるんですか?
ジム改 出れるが、お前は地球行きだ。頑張るのは浩平たちかな。
栞   まあ、地球で出番があるなら良いです。
ジム改 でも次回は大変だ。戦う人が多くて困る。
栞   ティターンズって誰が居ましたっけ?
ジム改 ヤザンとかジェリドとかエマとか。モンシアたちも居るな。
栞   ヤザン大尉以外なら私たちの敵じゃない気がしますが?
ジム改 それは言うなって、お前等エースパイロット列伝みたいなもんなんだから。
栞   む、無茶苦茶ですね。
ジム改 弱い部類に入る天野でさえ30機以上の個人スコアがあるからなあ。
栞   私なんてデンドロのせいで何十機落としたか分かりませんよ。
ジム改 まあ、スコアなんて気にすんな。それでは次回、秋子率いる降下部隊はティターンズの小部隊を撃破して地球軌道にやってくる。だが、時を同じくして出撃してきたエイノーが現れ、軌道上で激しい艦隊戦が発生した。秋子は祐一に構わず降下しろと命令を出す。次回「第1次軌道会戦」でお会いしましょう。