第84章  前門の狼、後門の虎


 

 月を脱出してサイド5やグラナダを目指したエゥーゴ艦隊を追撃する為にティターンズ艦隊が各地に散っていく。自分達に容易には屈しないであろう各地の月面都市を恐喝する為にも部隊が移動していく。もはや月の制宙権はティターンズのものであるかのようだ。
 そんな中でフォン・ブラウンに降下したバスクは同市に歩兵部隊を展開して制圧させ、アナハイム本社ビルに自ら乗り込んでいた。
 エゥーゴの最大後援者であったアナハイムを事実上屈服させたという事に満足しているのか、そのゴーグルが目立つスキンヘッド頭には愉快そうな色がはっきりと浮かんでおり、アナハイム社の社員達がそれを苦々しい顔で眺めている。彼らはティターンズを邪魔者としか思っていないのだろう。
 だがバスクはそんな視線など気にも留めた様子は無く、悠々と会長の居るオフィスを目指していた。彼らの視線など、所詮は敗者の最後の抵抗に過ぎないのだ。

 会長のオフィスに足を踏み入れたバスクが見たものは、苦々しい顔で自分のデスクに両手を付いている初老の男であった。彼がメラニー・ヒュー・カーバイン、アナハイムの会長であり、実質的な指導者である。そしてティターンズにとってはブレックス・フォーラ以上に憎んで余りある男であった。

「初めましてメラニー会長、私はエゥーゴ討伐部隊を指揮してきましたバスク・オム中将です」
「ふん、ジャミトフの手下のマフィアか。噂どおりの男だな」
「どのような噂かは聞かないでおきましょうかな。今回私がこちらに参ったのは、会長にジャミトフ閣下から預かってきました手紙を渡す為です」

 そう言ってバスクは懐から一通の封書を取り出し、メラニーの前に置いた。それには蝋で封印がされており、ジャミトフの印が押してある。それを手にとって封印を破り、中に入っている書類に目を通したメラニーは、体に震えが走るのを自覚せざるを得なかった。顔は怒りに高潮し、動揺がはっきりと顔に出ている。その様子にバスクは顔をニヤリと歪めていた。

「これはどういう事だ、アナハイムを解体するとは!?」
「読んだままの意味ですよ会長、我々がアナハイムをそのまま残すとでも本気で思っていたのですかな?」
「ジャミトフは降伏すればアナハイムの立場を尊重すると約束した筈だぞ!」
「仰る通り、ですから尊重しているでしょう。本来なら即刻取り潰し、幹部は全て逮捕する所をこうして企業の解体とMS部門と艦船部門の接収だけで済ませようと言うのですからな。寛大な処置だとは思いませんかな?」

 バスクの嫌みったらしい恭しさにメラニーは歯噛みして悔しがっていたが、もはやどうすることも出来ない。彼にはこれに逆らう力は無いのだから。新興企業であるアナハイムには敵は多いが味方は少なく、助けてくれそうな有力者もティターンズサイドにはいない。しばし屈辱に肩を震わせていたメラニーであったが、遂には肩を落とすとこの現実を受け入れた。
 書類にサインを入れ、バスクに手渡す。それに目を通したバスクは満足そうに頷くとそれを副官に渡し、メラニーに感謝の言葉を投げかけた。

「貴方の決断には感謝の言葉も無い。おかげで我々は忌々しいエゥーゴを叩き潰し、アナハイムの施設を無傷で接収出来た訳ですからな」
「ふん、嫌味なら沢山だ。もう用は無かろう、さっさとグリプスに戻ったらどうだ」
「そうですな、私もそうしたいのですが、まだ幾つか仕事が残っていまして。それを片付けてからにしますよ」

 そう言うと、バスクは部下に目配せした。その合図を受けて屈強な憲兵がメラニーの両脇から彼を拘束し、手を後ろに回して手錠をかける。それに驚いて止めようとしたメラニーの側近達も同様の運命を辿る。

「これはどういう事だ、我々の身分は保障されているのではなかったのか!?」
「ええ、エゥーゴの後援者としての幾多の犯罪行為は全て抹消しました。ですが、それ以外の罪は別なのですよ会長」
「それ以外の罪だと?」
「拘束した連邦議員、接収した文書、犯罪の証拠は腐るほど出てきておるのですよ。それとも捏造だと仰りますかな?」

 嘲るようなバスクの愉悦がかった声に、メラニーは最初からそのつもりだったのだと思い知らされていた。ジャミトフは自分を見逃すつもりも、アナハイムを存続させるつもりも最初から無く、降伏を飲むと見せかけて叩き潰すつもりだったのだろう。
 自分が弱者でしかない事をメラニーはこの時ほど痛切に思い知らされた事は無かった。内心馬鹿にしていたジャミトフに頭を下げてアナハイムの助命を請うた時は屈辱に身を震わせたものであったが、今はもうそんなプライドさえ粉々に砕かれている。もう自分の運命もアナハイムの運命も決まっている。これ以上何を言ってもそれは変えられないのだ。


 メラニーの始末を憲兵に任せた後、バスクはロンバルディアに戻ってきてエゥーゴ残党の追撃の成果と、連邦軍、ネオジオン軍の動きはどうなっているかを報告させた。その答えはある程度予想した物ではあったが、やはり彼を満足させるには程遠い物であった。

「エアーズ市を中心とする親連邦系の都市は依然として抵抗を続けています。連邦の増援部隊も次々に到着しており、時間が経つごとに敵の数が増えている有様です」
「グラナダはネオジオン軍が入っておりまして、敵のNT部隊と思われる少数のMS部隊に苦戦を強いられています。特にキュベレイと呼ばれるMSの戦闘力は驚異的でして、我が軍には対抗できるMSがありません」
「サイド5に向かったエゥーゴの追撃部隊もエゥーゴの反撃を受けており、敵殲滅には至って降りません」
「つまり、作戦目標達成には程遠いという事だな」

 部下の報告を聞き終えたバスクは呆れたように答え、そして怒りに任せて1人を殴りつけた。殴られた部下が壁に叩きつけられ、駆け寄った同僚に助け起こされている。

「何をやっておるのだ貴様らは。連邦軍が集まっているエアーズはともかく、たかが残党風情に梃子摺るとは!」
「で、ですが、少数とはいえ奴らの戦闘力は侮れません。特にサイド5に向かった艦隊にはあのアムロ・レイが参加しています」

 アムロ・レイ、1年戦争における連邦最強のパイロットと言われるNT。その名は人類全体に広く知れ渡り、ティターンズからは恐怖の代名詞のように扱われている。実際に彼の存在がティターンズに与える影響は大きく、彼が何処に居るのか分からない時のストレスは想像を絶する物があるからだ。もし攻撃を仕掛けた場所に偶然彼が居たとしたら、それだけで作戦は崩壊しかねない程の脅威となりえるからだ。
 現在も彼はロンド・ベルと共に行動しており、追撃しているティターンズをZZを使って追い払っている。その強さは戦っている部隊の指揮官が悲鳴を上げているほどだ。

「アムロ・レイか、NTなどという得体の知れぬ化け物が」
「追撃部隊は大規模な増援を求めています。どうしますか中将?」
「既にシロッコが向かっておる筈だ。それに進路を塞ぐ為に迂回先行させた部隊もある、それが加われば問題なかろう」
「いえ、追撃部隊が恐れているのは連邦軍が出現した場合の対処なのです。連邦のパトロール艦隊には空母を含む部隊が複数ありますから、それらが出てこれば戦力的に不利になります。それにもしサイド5に駐留している主力艦隊が動いたりすれば……」

 サイド5にはまだ第1、第6艦隊が残っている。第1艦隊は複数の独立部隊が便宜上纏まっているような歪な編成なので出てくるとは思えないが、第6艦隊は通常編成の打撃部隊だ。これが出てくる可能性は考えなくてはいけないだろう。
 連邦第6艦隊の出現の可能性を指摘されてはバスクも鼻で笑う事は出来ず、腕を組んで考え込んでしまった。

「第6艦隊か、60隻の完全な打撃部隊に拮抗可能な部隊は近くに居たか?」
「いえ、ありません。現在そちらに回せる兵力を掻き集めても半分に届かないかと」
「つまり、増援を送り込んでも最悪各個撃破の好餌を提供するだけに終わる可能性があるということか」

 ロバート・ディル・オスマイヤー准将率いる第6艦隊は連邦の正規艦隊の中では目立つ存在ではない。秋子の友であり、1年戦争、ファマス戦役という2度の戦争を通じて実績を積み重ねてきたクライフ・オーエンス少将の第2艦隊やエニー・レイナルド少将の第3艦隊に較べればさほど恐ろしいとも感じない相手である。
 だが、侮れる相手でも無い。地味ではあるが彼にはこれといった失敗の記録が無い。彼は秋子の副将としてファマス戦役を戦い、秋子の信頼を勝ち取ってきた勇将だ。その堅実な手腕は秋子に高く評価されており、第6艦隊を預けられて以降も彼女の周辺に置かれている。
 もし出てきたら非常に厄介な事になる。それを理解したバスクは右拳を左手に叩きつけて苛立ちを発散させて、連邦軍が出てきたら撤退させろと部下に指示を出した。残念だが手持ちの戦力ではサイド5の部隊を相手取るのは不可能だ。



 フォン・ブラウンが制圧された頃、グラナダではネオジオン艦隊がティターンズ艦隊と交戦しながら脱出を図っていた。彼らはグラナダに集められていたエゥーゴの技術や物資を回収し、更にネオジオンへの合流を求めてきたエゥーゴ残党を迎えてサイド3に帰ろうとしているのだ。
 これを阻止しようとティターンズが攻撃を仕掛けたのだが、ネオジオン軍の戦力はある意味で圧倒的であった。出てきたティターンズMSを迎え撃ったネオジオンのMSは相変わらずのガザDやガ・ゾウム、ドライセンが主力の普通の編成であったが、今回はここにネオジオンが誇るNT部隊のキュベレイ3機とシェイドMSであるヴァルキューレ、そしてファマス戦役で猛威を振るった巨大MA、ノイエ・ジールの改良型であるノイエ・ジールUが加わっていたのだ。
 ノイエ・ジール並の砲撃能力に全方位を守るIフィールドバリア、そしてファンネルを装備したこの化け物MAの出現はティターンズMS隊を恐慌状態に陥らせた。何しろこれを仕留めるに足る効果的な武器を彼らは持っていなかったのだから。装甲も強靭でマシンガンの弾など受け付けず、バズーカや対MSミサイルでも撃破することは適わない。こんな化け物と戦えるのはサイコガンダム系かGP−03系のような超大型機くらいだ。
 
 ほとんど虐殺のような戦いを演じながら、キャスバルは自分の周囲で戦っているヴァルキューレを見ていた。シェイドはアヤウラの報告である程度は知っているが、実のところ彼にはさっぱり理解できない存在である。そもそも人類より前に地球で栄えていた知的生命体の存在がどうとか、その遺伝子を人間に注入すると超能力としか思えないような力を発現する事が出来るだの、昔に流行った小説のネタのような話だ。
 アヤウラの説明によればNT能力や観測されているESP能力などは全てその古代種族古い者と呼ばれる存在から人類が受け継いだ力で、長い時の流れの中で退化してしまい、失ってしまった能力が環境の変化や隔世遺伝で顕現しただけであるという。そういう意味ではシェイドとは単に人間が本来持っている力を引き出しただけの存在であるとも言えるらしい。

「気に食わんな、アレは強化人間以上に人の歪みを見せ付けている」

 シェイドの有効性はキャスバルも認めているが、その非人道的な研究やその異常な力など、どう考えても正気とは思えない代物だ。少なくとも自分の趣味には合わない。現在自分の回りに居るのは研究の果てに生まれた量産型で第4世代と言うそうだが、それでも成功率は5割程度だという。NT研究所が進めている強化人間とどちらが人道的かと言われると悩んでしまうが、どちらもキャスバルにとっては面白く無い存在ではあった。

 そんなことを考えていた時、キャスバルは合流してきたエゥーゴの巡洋艦の中に何かを感じてしまい、機体を止めて振り返ってしまった。

「なんだ、この力は。あの船にNTが乗っているというのか?」

 アムロではない、自分の知らない力だ。だがララァに匹敵するほどに大きな力である。それを感じ取ったキャスバルは一体誰なのだとその巡洋艦を睨みつけていた。
 そしてその視線は巡洋艦に乗っていたカミーユにもはっきりと感じ取る事が出来た。誰かに見られている、そう感じたカミーユは驚いて椅子から立ち上がり、視線のする方を凝視している。

「なんだこの感じは、誰かが俺を見ているのか?」
「おい、どうしたんだカミーユ?」
「感じませんか少佐、誰かがこっちを見ているんです。船の外から」
「いや、そんな事言われたって俺はNTとかじゃないからな」

 ライデンはカミーユの言い出したわけの分からない話に困惑気味であったが、カミーユははっきりと自分を見つめる視線を感じ取っていた。そしてそれを、彼は不快に感じていたのだ。




 月にかなり近い場所にあるサイド5のあるL1ポイント。その傍で小さな戦いが起きていた。濃密なミノフスキー粒子が撒布されて電波通信が全く役に立たない状況の中で、アレキサンドリア級1隻とサラミス級4隻の艦隊が連邦軍のゼク・アインやジムV、アヴェンジャー攻撃機の攻撃を受け、一方的に叩きのめされている。ティターンズもバーザムやマラサイを出して応戦していたが、まるで歯が立っていない。アレキサンドリア級の艦長は目の前で次々に艦載機が落とされていくのを見て唖然としていた。

「ど、どういうことだ。数で負けてるとはいっても、何でこうも一方的にやられる!?」
「駄目です艦長、もう半数が落とされました!」
「防空ラインが破られました。敵の攻撃機が来ます!」
「弾幕を張れ。本隊との連絡は付かないのか!?」
「ミノフスキー粒子が濃すぎて無理です!」

 ゼク・アインのマシンガンが弾を吐き出す度に1機、また1機とバーザムが、マラサイが機体を砕かれて、四肢をもがれて宇宙を漂うデブリと化していく。この時彼らが交戦していたのは運が悪い事に何時でも出れるように待機していた天野大隊であった。彼女らの部隊は月には向かわず、斉藤たちと分離してエゥーゴが来るであろうルートで張っていたのだ。だがやってきたのは期待していたエゥーゴでは無くティターンズで、天野は無視することも出来ないと速攻で潰しに来たのである。
 天野の苛立ちをぶつけられたティターンズはいっそ哀れと言うべきだろうか。迎撃に出した艦載機は歯が立たず、エアカバーを失った後に突入してきたアヴェンジャー攻撃機の対艦ミサイルを叩き込まれてサラミス2隻が船体を完全破壊されてしまい、残る3隻が中破して航行不能に陥り、降伏に追い込まれていた。
 ティターンズ艦隊を叩き潰した天野は何時もの仏頂面で降伏したティターンズの事後処理を他の部隊に任せ、自分達はエゥーゴ発見の報告を待つ事にした。

「余計な仕事をさせられました、とりあえず久瀬大尉には何か奢ってもらわないと。ああ真琴たちも誘いましょうか」
「何故に僕が!?」

 天野たちと一緒に来ていた久瀬は哨戒ラインの変更を考えていた所にいきなりそんな事を言われて驚きの声を上げていた。何故に僕が奢らなくちゃいかんのかと。そう問われた天野は彼女らしくない子悪魔的な笑みを浮かべると、久瀬をからかうように顔を近づけてささやいた。

「倉田さんから川澄さんのことを頼まれてるのでは?」
「な、何故その事を!?」
「海鳴基地で倉田さんが大声で貴方に頼んでいたと相沢さんと折原さんがおもしろおかしく脚色付きで教えて下さいました」

 あの2人に聞かれていたのか、その最悪の事態に久瀬は頭を抱えてしまっていた。まさかあの呼吸するお祭りコンビ、火の無い所に放火して無理やり事態を悪化させ、消火は他人に任せて次の騒動を起こすあの2人に。
 頭を抱えて蹲ってどうしようどうしようと呟いている久瀬に流石に悪いと思ったのか、天野は少しだけフォローを入れてくれた。

「ご心配なく、暴走しないように水瀬さんと長森さんに協力して頂きましたから」
「い、一体何を?」
「余りお聞きにならない方がよろしいかと思います」

 ニコリ、と作り笑いを浮かべる天野に、久瀬はそれ以上の追及の手を止めざるを得なかった。とにかく事態が最悪の方向に向かう事だけは避けられたようだから。




 サイド5を目指すエゥーゴ艦隊はヤング准将の総指揮を受けながら、正面にヘンケン隊、最後尾をロンド・ベルが守るという陣形でとにかくひたすら真っ直ぐに進んでいた。その後方にはティターンズ艦隊が追撃してきており、長距離ビームやミサイルが飛来して唯距離が遠すぎて脅し以上の意味は無く、ブライトもまぐれ当たり以外は有り得ないと言い切って部下に無視するように指示を出していた。
 だが、それも段々と距離が詰まるに連れて正確さを増していき、更にティターンズ艦隊からMSが発進するのを確認してこれ以上放置も出来なくなった。

「ティターンズがゲタ履きを出してきたぞ。アムロ、ZZは出られるか?」
「まだ調整中だ、出れそうにない。とりあえずμガンダムで出る」
「RX−90か。だがアレは性能が不足していたんじゃなかったか?」

 RX−90μガンダムはアムロ・レイ大尉の要請で開発がスタートしたZ計画とは異なる、新系統のMS開発計画で誕生した研究機である。そのコンセプトはNT専用機であり、RX−78に似た、MS本来のコンセプトに基づいて強力な機体を誕生させようというプランだ。その背景には際限なく巨大化、複雑化、高コスト化を招いているZ計画機に対する問題定義の意味もある。ようするにZZという恐竜的進化を遂げた怪物のような第4世代MSに対する運用側からの抗議の現われでもあったのだ。
 だがRX−90は肝心のサイコミュも未完成で、新技術のサイコフレームも満足のいくものが仕上がらなかったという問題もあってサイコミュ兵器を搭載できず、バイオセンサーよりマシ、程度の恩恵しかえられない。基本性能ではZZガンダムとは比較する事も出来ないような機体なのだ。まあ追従性は優れているのでパイロットが確かならば運動性能だけはZZ以上の性能を発揮するのだが。

「アレは俺が関わった機体だ、ZZが駄目ならアレが一番分かっている」
「Sガンダムに乗ればどうだ。カツよりお前の方が上手く使えるだろ」
「俺はSガンダムに乗ったことが無いからな」

 使ったことの無い機体で戦うのは無理だ、そういうアムロにブライトは頷くしかなく、μガンダムでの出撃を許可した。仮にこの機体を失っても機体データとサイコフレームの試作品は別に用意してあるので、連邦への手土産が失われるわけでもない。

「分かった、だが必ず帰ってこいよ」
「ああ、そうするつもりだ。ブライトこそ帰る船が無くなってた、なんて事は無しで頼むぞ」

 アムロは内線を切るとアストナージにμガンダムで出ると伝え、装備の装着を指示した。

「アストナージ、μガンダムにライフルとシールドを頼む」
「え、これで出るんですかアムロ大尉?」
「ああ、急いで準備してくれ。他は何機出せる?」
「動けるのは3機ですね、SガンダムにリックディアスUが2機です。クライン大尉のレッテンディアスも駄目になりました」
「そうか、厳しいかな」

 数も質も足りない、これで果たしてティターンズの追撃を食い止められるのか、アムロにも正直自信は無かった。唯一つだけありがたいのは、こちらに超エース級のパイロットが沢山居る事である。特に舞やトルク、クラインといった連中はトリプスルコア級のパイロットだ。
 
「まあ、何とかするしかないんだよな。何時もの事か」

 ホワイトベースの頃から何時も無茶の連続だった事を思い出して、アムロはこみ上げてくる思い出し笑いをこらえる事が出来なかった。自分はつくづくこういう目にあうらしい。




 追撃を仕掛けてきたティターンズのMS隊はエゥーゴ艦隊に近い宙域でエゥーゴMSと激突していた。数と性能に勝るティターンズMSを少数のエゥーゴMSが食い止めているのはエゥーゴのパイロットの技量の高さを示す物だろうが、消耗は確実にエゥーゴ命脈を縮めている。
 その戦況を追いついてきたシロッコは感心しながら眺めていた。戦術スクリーン上に投影された両軍の戦力図はエゥーゴの窮地をはっきりと証明しているが、それでもティターンズのMSはエゥーゴ艦隊に取り付けないでいる。

「やるな、特に最後尾を守るガンダムの動きは良い。サラ、あれをどう思う?」
「強い力を感じます。前にも幾度か感じた事があります」
「そう、あれは間違いなくあの白い悪魔、アムロ・レイだろう。だがあのMSは見たことが無いな、彼は確かZZガンダムに乗っていたはずだが」
「戦闘で使用不能になったのでは無いでしょうか。ZZは構造が脆弱で長期の戦闘には向かないと情報部の報告にもありましたし」
「ふむ、余り面白く無い想定だが、ありえる話だな」

 ZZとの一戦を楽しみにしていたシロッコとしては些か残念であったが、あれはあれで倒しがいのありそうなMSではある。シロッコは口元に皮肉そうな笑みを浮かべると、艦長に後は頼むと言った。

「私はジ・Oで出る。あれの相手は他のパイロットでは荷が勝ちすぎよう」
「パプテマス様、私もお供します」
「ああ、そうしてもらおうかな。だがサラ、相手はあのアムロ・レイだ。お前の腕では荷が勝ちすぎよう。今回は離れていて邪魔が入らぬようにしていてくれ」
「……はい、分かりました」

 シロッコにそう言われては強くも反論できず、サラは渋々シロッコの頼みを受け入れた。残念ながら流石に自分ではあの最強のNTと呼ばれる白い悪魔、アムロ・レイに勝てるとはとても思えない。まして自分の使っているポリノーク・サマーンは偵察機、これで仕掛けるのは完全な自殺行為だ。
 サラが無念そうな顔をしているのをシロッコは好意的な顔で見ていた。悔しさは成長に繋がる糧だ、サラはまだまだ伸びると信じているシロッコにとって、このサラの若さは好ましいものと感じられていたのだ。



 追撃してきたティターンズMS隊は思いの他頑強なエゥーゴのMS隊に手を焼かされていた。数が少ないので囲んで各個撃破するのは難しくないのだが、時々居る1機で3機くらいを相手取る化け物の存在が厄介であった。

「くそ、なんて奴らだ。これだけ押し込まれてもまだ抵抗を続けてやがる!」
「隊長、下方よりネモが来ます!」

 バーザム隊を突き上げるように下からネモ4機がビームライフルを放ってくる。バーザム隊は回避運動に入ったが、初動が遅れた1機が直撃を受けて左上半身を吹き飛ばされ、残骸へと変わった。
 ネモ隊が崩した部隊に2機の百式改が襲い掛かり、さらに2機がビームに撃ちぬかれて撃破される。生き残りは慌てふためいたように反転して離脱にかかっていたが、それを追うMSはいなかった。
 アムロはティターンズのMS隊が退いていくのを見て、こちらも体勢を立て直す為に部隊を後退させる事にした。余り艦隊から離れるのも不味い。

「各部隊長は損害を報告しろ、戦えない奴は艦に戻すんだ」

 アムロの命令を受けてMS中隊の中隊長が損害を報告してくるが、それは芳しいものではなかった。絶対数ではこちらの優勢であったが、相対的に見れば確実に追い込まれている。特に補給に戻るMSの入れ替えが出来なくなっているのが辛い。
 舞の百式改が近づいてきて、ワイヤーを飛ばしてきて接触回線を開いてきた。

「アムロ、そろそろ持たない」
「分かってるさ舞。でも連邦の勢力圏に達するまでにはもう1回か2回は敵が来るぞ」
「……私もアムロも、このままじゃエネルギーも体力も持たない」
「だからトルクとクラインを戻らせた。これ以上出来ることがあるのか舞!?」
「…………」

 アムロに強く言われて、舞はそれ以上口を出すのを止めてしまった。アムロも分かってはいるのだろうが、何をするにも戦力が決定的に足りないのだ。追撃してくるティターンズの消耗も馬鹿には出来ないだろうが、自分達を殲滅するという決意を固めているのか今日は手を休める様子が無い。
 舞は自分の機体の調子を確認し、僅かに眉を顰める。機体の各所にガタが来ている事を示すエラー信号が出ており、さらにライフル、サーベルのビームエネルギーも不足している。どちらもチャージ中であるがまだ満たされていないのだ。MS用のメガ粒子充填装置は効率が悪いので余り役には立たない。やはり艦船に戻ってチャージした方が良いのだ。
 ガンキャノン系から始まった支援MSの場合は専用のビームジェネレーターを別に搭載しているのでこういう問題は無く、砲身が耐えられる限り連射する事が出来るのだが、汎用MSにはそんな能力は無いのだ。

 そんな時、アムロと舞の元にブライトから恐るべき情報がもたらされた。追撃してきている艦隊とは別に、新しい艦隊が急追してきてMS隊を出してきたというのだ。敵が増えたのだ。この知らせを受けたパイロットは背中に氷を入れられたかのようなショックを受け、そして今度こそ悲壮な物を感じさせるようになってしまった。無理やり前向きになろうとしていたアムロでさえ今度の衝撃には冷静さを保てなかったようだ。
 一方の舞は逆に冷静になっていた。はっきりと勝てないと分かってしまった分、逆に諦めが付いてしまったのだ。自分とアムロが抜かれれば後は数の勝負になるしか無い。トルクやクラインが出てきても艦隊への被害は避けられまい。

「今日のティターンズは動きが速い、残念だけど向こうのほうが上手だった」

 バスクは一体どれだけの戦力をエゥーゴ討伐に動かしたというのだ。フォン・ブラウンに迫ってきていた部隊が全てではなかったという事なのだろうか。だとすればティターンズは一時的に連邦と戦っているルナツー方面やL4方面の戦線から戦力を引き抜いたのか、それともサイド7を空にしたとでもいうのか。
 いずれにしても、今回のティターンズの覚悟は並ならぬものがあったという事だろう。それに対してエゥーゴは内部崩壊を起こしていて、戦う体制さえ出来ていなかった。軍事力だけで滅亡する事は無いと言うが、その意味を舞は身に染みて思い知らされていた。

 一方、アムロは彼なりに引けない理由を抱えていた。追撃してくるティターンズとは別の方向から強烈なプレッシャーを感じていたのだ。この感じは前にも覚えがある。

「パプテマス・シロッコとか言ったな。奴が来ているのか」

 それは新たな敵が近づいている事を示している。この上で更なる敵を迎える事が何を意味するのか分からないアムロではなく、だからこそ彼は殿に残っていたのだ。



 しかし、アムロと舞の心配は杞憂に終わった。再び攻勢に出てきたティターンズ艦隊と増援に駆けつけた木星師団は新たな敵の出現に出鼻をくじかれたのだ。エゥーゴ艦隊の眼前に出現した新たな艦隊に最初は回り込ませていた別働隊だと思って勝利を確信したのだが、それはすぐに吹き飛んでしまった。出現した艦隊には連邦軍しか装備していないクラップ級巡洋艦やフォレスタル級空母の姿があったのだ。
 連邦軍現る、この報に2つの艦隊は慌てて減速し、連邦艦隊との激突を避けようとする。彼らは既にジムUやハイザック、ダガーフィッシュといった艦載機多数を展開しており、迎え撃つ体制を整えている。艦隊にも戦艦の姿こそ無いが、巡洋艦2隻に駆逐艦4隻、空母1隻が砲を向けている。哨戒部隊としては大規模な部隊だ。いや、それだけでは無い。別方向からもラザルス級空母を中心とする打撃部隊が接近している。
 戦えば恐らく勝てるだろう。だが問題はこの次なのだ。連邦の哨戒艦隊は常に複数の部隊が動いていて、敵が接近してくると付近から集まってきてすぐに大軍になってしまうのだ。そうやって時間を稼いでいるうちに後方から任務部隊が出てきて侵入者を叩き出してしまう。それでも駄目ならその方面を担当している正規艦隊が出てきて完膚なきまでに叩き潰す。それが連邦の戦い方だ。
 哨戒部隊と遭遇したという事は、すぐに敵の増援が出てくるという事を意味している。だからティターンズは足を止めたのだ。このままだとバスクや幕僚が恐れていた最悪の事態、フォスターUから出てくる連邦主力艦隊との戦いにまで発展しかねない。それはバスクからの命令で止められているので、彼らは戦うわけにはいかない。
 そして止まったティターンズと木星師団に連邦艦隊から警告が送られてきた。それをジ・Oの中で受け取ったシロッコは芸の無い台詞だと笑い捨てたが、さてどうしたかと考えてしまう。

「バスクには手を出すなと言われているが、このまま奴等を行かせて良いものだろうか。アムロ・レイを水瀬秋子の元に送る事、後々の禍根となるのではないかな?」

 前にシロッコは秋子と会見し、その時にシロッコは言い知れぬプレッシャーを感じていた。認めたくは無かったが、自分はあの女に気圧されていた。
 あの水瀬秋子の元にアムロ・レイを渡して良いのだろうか。そういう疑問がシロッコの中に渦巻いていたが、同時にあの男とアムロ・レイが交わる事でどういう変化が起きるかを見てみたいという相反する感情もあった。

「……やむをえんか。アムロ・レイと一戦交えてみたい、という個人的な欲求もあるのだが、今回は仕方が無い」

 また次の機会がある、そう考えて自分を納得させると、シロッコはジ・Oから降りて艦橋へと戻っていった。無理をして押し込めば最悪連邦軍との消耗戦に発展し、木星師団を磨り潰してしまいかねない。そうなっては今後に差し障るのだ。

 だが、ティターンズは戦えば勝てる、と判断していた自分達の甘さをすぐに撤回させられる事になった。少し遅れて姿を見せたラザルス級空母から1個大隊のゼク・アインが出撃してきたのだが、それがなんと連邦最強の天野大隊だったのだ。更に巡洋艦や駆逐艦からもMSが出撃してきて、60機ほどの部隊になっている。これに加えてもしかしたらラザルス級は腹にGレイヤーを抱えているかもしれないと思うと、洒落にならない。



 ティターンズ艦隊が進撃を止めた頃にはエゥーゴ艦隊も動きを止めていた。連邦軍はティターンズだけではなくエゥーゴにも警告を送っていたのだ。その警告を受け取ったヤングは全軍を停止させ、連邦軍の出方を待つ。

 エゥーゴはMSを出して艦隊前方に展開させて警戒をさせている。だが前に出ていたトルクはこの程度の数ではもし戦闘になったら天野に勝てる訳が無いと分かっていたので、頼むから撃ってくるなよと心の中で念じていたりする。
 そのトルクの百式改に大隊長マークをつけたゼク・アインが近づいてきた。

「そちらが指揮官機ですか?」
「おお、そうだぞ天野」
「……その状況を理解しない身の程知らずの、いかにも相沢さんと気の合いそうな声はトルクさんですね?」
「相変わらず言葉にナイフが突き出てるな天野は」

 言う事に容赦が無さ過ぎるぞと愚痴るトルクであったが、勿論天野は聞いていない。彼女はそんな愚痴を聞いてやる為に通信を繋いできたわけではないのだ。

「まあ貴方なら丁度良い。今こちらに第6艦隊が急行していますから、抵抗せずに大人しく降伏することを勧めておきます。秋子さんはエゥーゴを完全に敵と看做していますから、その時はティターンズ諸共完膚なきまでに殲滅されますよ」
「やっぱり、許す気は無いか?」
「ファマスがどうなったかを考えれば分かるでしょうに。だから抵抗せずに降伏しろと勧めているのです。貴方からそちらの司令官に伝えておいてください」
「いや、でも先にティターンズの援軍が来たら一気に押し込んでくると思うんだが」
「ああ、それなら大丈夫です、こちらに来る前に叩き潰しましたから。巡洋艦5隻の部隊でしたがね」

 何でも別の哨戒部隊からティターンズ艦隊を派遣したという知らせを受けて急行し、攻撃を加えて1隻残らず沈めるか航行不能に追い込んだのだそうだ。その後こちらからの通報を受けて自分達が急行してきたのだという。動きから見てエゥーゴ艦隊の頭を塞ごうとしていたようだが、連邦の勢力圏に入ったのが不味かったのだろう。
 だが、幾ら先行していた小部隊とはいっても短時間で殲滅してしまうとは、相変わらず恐ろしい連中である。クリスタル・スノーの実力は未だ健在のようだ。


 そして待つ事10分、連邦艦隊からエゥーゴに降伏勧告が、ティターンズには退去勧告が通達され、更に別働隊がすでに撃破された事もあわせて伝え、そこから僅かでも前に出れば同様の運命を辿る事になると警告も出された。



 誰もが動く事も出来ずにじっと成り行きを見守っている。暫く待っていると連邦軍の部隊が次々に姿を現し、遂にはサイド5から出てきたと思われる艦隊までが加わってきた。その大軍から砲を向けられたエゥーゴ艦隊は生きた心地がせず、一体どうするつもりなのかと息を呑んで見守っている。
 そして連邦艦隊の旗艦と思われるカイラム級戦艦から通信が送られてきた。

「准将、連邦軍のロバート・ディル・オスマイヤー提督より通信です」
「オスマイヤーか、久しぶりだな。よし、繋いでくれ」

 ヤングの許可を受けてオペレーターが相手とやり取りし、すぐにメインモニターに見慣れた男の顔が現れた。

「久しぶりだなオスマイヤー提督」
「ヤング提督、生きてまた会えて嬉しいよと言いたい所だが、今はそういう状況ではない。単刀直入に用件を伝えよう、君達のこれ以上の侵入は認められない。連邦軍はエゥーゴを受け入れない」
「そんな、後ろにはティターンズが展開している。今はお前達を見て動きを止めているが、もし我々がここを離れれば即座に攻撃して来るんだぞ!」
「それは君達の都合であって、我々の都合ではない。水瀬提督はエゥーゴを受け入れるつもりは無いし、連邦政府もエゥーゴを許すつもりは無い。ここを進むなら降伏か死、いずれかの運命しか与えられていない」

 裏切り者、という言葉はヤングにズシリと重く響いた。そう、エゥーゴの大半は連邦からの離脱組みなのだ。そして幾度と無く連邦軍と戦火を交え、多くの犠牲を出してきた。連邦軍からしてみればティターンズと同様に許し難い存在だろう。
 だがそれではようやくここまでたどり着いたのに、全てが無駄となってしまう。だからヤングとしてはなんとしても連邦に受け入れてもらわなくてはいけないのだ。

「なあオスマイヤー提督、何も客人としての待遇を期待しているわけじゃないんだ。それにエゥーゴにはそちらが有していない多くの技術がある、それをそちらに提供しよう。それにティターンズとの戦いにも協力するつもりだ」
「Z計画に関する技術かな?」
「それだけではない、アナハイムはNT関連技術も含む、多くの研究を行っていた。それらのデータや実機も含まれている。そちらにとっても悪い話ではないだろう」
「確かに悪い話ではないが、こちらはエゥーゴ艦隊の撃滅も命じられていてね。今こうやって降伏を勧めているのは俺の好意でしかない」

 フォスターUを出撃してくる際に秋子はエゥーゴ艦隊が来たら敵として対応せよ、と命令を受けている。それを無視する訳にはいかなかった。本来ならこのようにのんびり話をしているのも不味いのだ。
 そして交渉の余地が無いと悟ったヤングの顔には絶望が広がっている。いや、ヤングだけではなくこの通信を聞いているエゥーゴ艦隊全員にだ。連邦軍は自分達を許すつもりは無いのだと誰もが理解できてしまった。

だが、降伏にはヤングが抵抗を見せた。既にトルクからも一度進言されて却下しているのだが、戦って負けたわけでも無いのに降伏など出来るかと言い返していたのだ。それが軍人のプライドだと言ってしまえばそれまでだが、トルクもそれを理解できない訳でもなかったのでその時は引き下がっている。
 だが、ここでそれを言ってしまったら待っているのは全滅だけだ。それでは自分達を逃がしてくれたブレックスに申し訳が立たないではないか。そう言われてヤングは暫し悩みこみ、そして苦渋の決断を下す事になった。

「……分かった、投降する。それならば良いんだな?」
「武装解除に大人しく従う、と言うんだな?」
「ああ、その通りだ。だが全将兵の身の安全は確約して貰うぞ」
「それは大丈夫だろう、水瀬提督も皆殺しにしろとは言わないだろうしな」

 もっとも、無罪放免にもしてもらえないだろうが。オスマイヤーはエゥーゴの降伏を受け入れると艦隊を前進させ、ティターンズとエゥーゴの間に移動させた。そしてティターンズ艦隊にエゥーゴは連邦軍の捕虜となったので、当方に保護義務が生じたと通達し、エゥーゴ艦隊の追撃を続行するのならば我々が相手をすると恫喝した。
 ティターンズもこの動きは予期していたので驚きはしなかったが、一応型どおりの抗議だけはして形ばかりの抵抗を見せていた。実際に戦ったら勝負にはならないというのは子供でも分かる。今目の前には自分達の3倍近い大艦隊が展開しているのだから。結局ティターンズは勝ち目の無い勝負を挑む愚を避け、月へと撤退していく事になる。今はまだ連邦と決着をつける時ではないのだから。


 


後書き

ジム改 エゥーゴは完全に終わりました。
栞   アムロさんたち、せっかく色々持ってきたのに全部奪われて牢屋の中ですか。
ジム改 まあ、ぶっちゃけ連邦から見ればただの裏切り者だし。
栞   これまで散々煮え湯を飲まされましたからねえ。
ジム改 エゥーゴが蜂起しなければティターンズもクーデター起こすチャンス無かったし。
栞   ネオジオンなんてサイド3に到達する事も出来ずに迎撃されて全滅でしたよね。
ジム改 アクシズの全軍を集めても連邦の1個艦隊より多い程度の戦力だったからな。
栞   でもネオジオンはグラナダを放棄しちゃいましたね。
ジム改 ネオジオンにはグラナダを維持する戦力が無いのだ。
栞   欲しかったのはグラナダの技術や機材であって都市はどうでも良かったと。
ジム改 まあデメリットの方が多いしね。
栞   ティターンズに占領された後のグラナダ市民には良い迷惑ですね。
ジム改 これで月面は連邦とティターンズの新たな戦線が生まれる事になる。
栞   でも次からは地上ですよね。
ジム改 そろそろ祐一たちの方に戻らないとな。
栞   それでは次回、アレキサンドリアを落とした私達はキリマンジャロ攻略に向けての陽動を兼ねて、首都ダカール奪還作戦に参加するように要請されます。休む間も無く次の作戦に身を投じる事になった祐一さんはどうするのか。次回「祐一の苦悩」で会いましょうね」