第87章  海鳴へ


 

 補給線を維持出来なくなった連邦アフリカ方面軍は遂に侵攻を断念し、旧エジプト領まで後退を開始した。祐一たちの西岸を南下していた別働隊は連邦首都ダカールを奪還し、後続部隊を待って周辺地域を制圧して回っていたが、本隊が後退した為にこれ以上の前進を諦め、ダカールを守る事に全力を傾ける事になる。
 連邦軍の後退を見てティターンズの一部は追撃の動きを見せたが、キリマンジャロを守る主力部隊は遂に動くことは無く、小競り合い程度の戦いを経て両軍は自然と距離をとる事になった。空白地帯となったアフリカ中部は両軍が睨みあう緩衝地帯と化し、小規模な部隊が小競り合いを繰り返す混沌としたエリアとなっていく事になる。
 前線を下げることを決意したエイパー・シナプス少将は司令部をアレキサンドリアに置き、ここで再侵攻に向けての部隊の再編成と補給物資の確保をする事になる。これにより祐一たちもアフリカ侵攻軍から外される事になり、ダカールの防衛をジャブローからやってくる第1
師団に任せて一度ベルファーストに戻る事になった。
 その為に撤収の準備を始めたのだが、そこで祐一たちは佐祐理と別れる事になった。彼女は第1師団と共に暫くの間ダカールの防衛を任されていたのだ。

「すいませんね祐一さん、ここでお別れです」
「佐祐理さんは元々地上軍ですからね、仕方が無いですよ。それにこれが今生の別れって訳でも無いですしね」
「そうだよ、きっとまた一緒に戦う時が来ます」

 別れの挨拶に来た佐祐理に祐一と名雪はきっとまた会えると言って笑顔で彼女を送り出していた。それは決して方便などではなく、ティターンズと雌雄を決する時には必ず秋子が佐祐理を宇宙に呼ぶ筈だと確信していての言葉だった。秋子は必要とあれば多少の無茶は通す強引さも持っているのだ。それに既に海鳴のシアンやマイベックも呼び戻す為に調整をしていると聞いてもいる。

「ところで、北川さんと香里さんは?」
「あいつらは撤収準備に駆け回ってますよ。こっちもベルファーストに行く為の輸送船の手配が大変です。ガルダ級1機じゃ足りませんからね。海軍の船を回して貰えないかって頼んでるんですけど、なかなか」
「海軍も船に余裕が無いでしょうからね。ですがそれはこちらからも意見具申してみますよ。いざとなったらお父様経由でちょっと口聞いて貰うって手もありますし」
「そ、それはちょっと不味いんじゃないですか?」
「あはは〜、あんな迷惑な人、これくらいして貰わないと帳尻が合いませんよ〜」

 あの戦いの後、佐祐理はゲリラと共に現れた父、倉田幸三を相手に笑顔で1時間以上にも及ぶ質問攻めという名の尋問を続け、一体何があったのかを洗い浚い吐かせていた。最初は潜水艦でダカールから脱出しようとしていたらしいのだが、逃げ遅れたのでそのまま郊外に脱出したらしい。
 そこで彼は他の連邦敗残部隊を自分の名前で集めながらこの辺りでゲリラを組織していたらしいが、そこでこの辺りを縄張りとしていた地元系ゲリラと対立が起きたらしい。だが交渉に赴いた幸三は地元ゲリラのリーダーだったガリッグという男と何故か意気投合してしまい、そのまま手を組んで反ティターンズのゲリラ活動を指導していたという。
 その過程で連邦情報部からの接触があり、バイエルライン少佐がゲリラに協力を求めてきたのだが、彼はそこで幸三を見て吃驚していたそうだ。まあ普通は行方不明になっていた上院議員がゲリラに参加しているなどとは思わないだろうが。しかもここで幸三はバイエルラインに自分の存在を隠せと指示していたりするので事態が複雑化した。緘口令を命じられたバイエルラインが黙っていたせいで連邦政府まで倉田幸三は死んだと思い込んでしまったのである。
 連邦がそうならティターンズなども当然そう思い込む事になり、彼に対する捜索の手は自然と消える事になる。おかげで彼はある程度自由に動き回れるようになり、ティターンズの後方で本格的なゲリラ活動を開始、補給線の寸断や情報収集などを組織的に始めたらしい。その為の支援は連邦海軍が継続し続けたらしく、彼らはゲリラでありながら豊富な物資を持って十分な活動をすることが出来たのだ。
 この近辺で頻発する輸送隊の襲撃事件や集積所、小規模な基地に対する攻撃などは彼らの仕業であった。

 だがこれを聞いた佐祐理は父の無事を喜ぶどころか激怒したそうで、娘に心配をかけて何をやってるのかと父を懇々と説教責めにしたらしい。怒れる佐祐理の怖さはそれはそれは怖いものであるらしく、流石の倉田議員もすっかり憔悴して深く反省した様子だったそうだ。
 その顛末を聞かされた祐一は怒った名雪の姿を思い出してしまい、幸三に同情を寄せてしまっていたりする。アレは怖い、本当に怖いのだ。


 そして祐一は佐祐理への引継ぎと同時に、残していく装備の一覧を佐祐理に渡した。

「とりあえずジムVは全部そっちに引き渡すって事だけど、パイロットは後から来るのかな?」
「多分第1師団の装備更新も兼ねてるんでしょうね。地上軍ではジムVへの更新が遅れていますから」
「これでこっちに残るのはゼク・アインとストライカーか。機体の無いパイロットがかなり出るけどどうするのかね」
「きっと宇宙に戻すんだと思うよ。宇宙の方もパイロット不足だろうし、シャトルで戻して宇宙で新品に乗り換えじゃないかな」

 名雪が今後の動きを予想して意見を口にする。それは祐一も考えたのだが、それならば何故ゼク・アインやストライカーは残すのだ。これらは宇宙に持って帰るということだろうか。

「なんか、また嫌な予感がする。秋子さん今度はどんな難題吹っかけてくる気だ?」
「祐一〜、気持ちは分かるけど真顔でお母さんを疫病神みたいに言わないでよ〜」

 何時も無理難題吹っかけられている祐一なので気持ちは理解できる名雪であったが、母親が相手なので何とも複雑な気分になってしまった彼女は何とも言いがたいぎこちない笑顔を浮かべていた。

 


 

 地上での戦いが小康状態を迎えたころ、宇宙では新たな戦線で連邦軍とティターンズが激しくぶつかっていた。月の大半を掌中に収めたティターンズであったが、連邦に下った都市も多く、連邦軍は環月方面艦隊司令部を拠点にティターンズに対抗していたのだ。
 グラナダやフォン・ブラウンといった主要拠点をほぼ無傷で押さえる事に成功したティターンズはその生産力を背景に自軍の戦力の回復を図っていたが、この連邦軍との戦いが彼らに大規模な消耗をもたらしてもいた。特に環月方面艦隊司令部は目の上の瘤であったが、秋子もここには大規模な部隊を展開させているので容易に陥落させることは叶いそうもなかった。
 司令部には20隻ほどの艦艇が常に配備されており、多数のMSや戦闘機が常駐している。本格的な大攻勢を受けなければ十分な戦力だと言えたが、この新たな環月方面艦隊の新設は連邦宇宙軍に大きな負担を強いることとなった。特に補給の問題が大きく、こちら側に付いた月面都市への生活物資の問題が巨大な負担となった。その分だけ余分に輸送艦が必要となるし、船団が大規模になるので護衛も増やさないといけない。
 これらの新たな負担は宇宙軍の補給部に悲鳴を上げさせた。現在でもネオジオンと戦うコンペイトウ、ペズンの2つの要塞に物資を運び、ティターンズと戦う為に交代でサイド2に駐屯している第3、第4艦隊にも補給をし、サイド2からサイド5に避難してくる市民の護衛もし、地球軌道に展開している警備部隊にも補給をしなくてはいけない。正直言って物資も船も人も足りない有様なのだ。その上で更に新たな負担が増えたとあって、補給部からは怨嗟交じり悲鳴が絶えなかったのである。
 ジャブローの兵站本局からも何とかしてくれという悲鳴のような要請があり、秋子は戦略の見直しを迫られることとなった。他の2つの勢力に較べると連邦には守る箇所が多すぎたのだ。各地から宇宙軍の主要な人物を呼び集めて会議を開いた秋子は、これからどうしたものかと相談をしていた。

「どうしましょうねえ、皆さん?」
「どうしましょうじゃないでしょ、どうするのよ秋子?」

 自分の上官を白い目で見ながらエニー・レイナルド中将が呆れた声で突っ込みを入れる。その隣では僚友のクライフ・オーエンス中将が眉間に皺を寄せながら配られた資料に何度も目を通していた。そして何時までも困った顔をしている秋子に変わってジンナ参謀長が全員に事態を説明した。

「ジャブローからはどうにかして物資の消費を減らせと言ってきています。残念ながら現在の消費量ではサイド5の生産力では賄いきれる物ではなく、ジャブローからも大量の物資を打ち上げて貰っている状況です。ですが昨今の情勢はそれでさえ不足をきたすという最悪の状況になっています。それでこの会議で各方面の物資配分をどれだけ削れるかを決めようという事でして」
「今でも不足しているのに、これ以上削られたら戦線が維持出来なくなるぞ!?」

 流石にこれは参列者たちから抗議の声が上がった。何処の方面も物資を削られれば今まで以上に不利になる。それを易々と受け入れるような司令官が居る筈が無い。だがジャブローからの要請である以上は何処かで妥協点を見出す必要があり、互いにお前の取り分減らせという不毛で醜い争いが繰り広げられる事になる。
 この激しい対立は案の定収拾がつかない事態となり、秋子は仕方なく会議による理解は諦め、補給部の計画をそのまま採用する事になる。列席した司令官たちは一様に不満そうであったが、無い袖は振れない以上どうしようもない事は分かるので口に出したりはしていない。
 だた、サイド5に新たな軍需プラントを建設して必要な物資の生産量を増加させることが合わせて決定されている。特に消耗が激しいミサイルなどの火器弾薬の生産が追いつかないので、これのライン強化が求められている。勿論それ以外にも食料生産なども必要になっているのだが、こちらは新たな農業コロニーを建造するしかない。

「でもそんなプラントを新規建造する余裕があるの。コロニーは民間人の受け入れで手一杯なんでしょう?」
「いっそ近くのサイドから廃棄コロニーでも引っ張ってきますか。直して改修すればいい工業コロニーになりますよ」
「何処にそんな余裕があるってのよ?」

 エニーが何を言ってるんだこいつはという目で秋子を睨み、秋子は小さく笑って冗談だと返した。だがコロニーの数には限りがあり、新規に建造している暇がないなら既存のコロニーを改造して新たな軍需工廠を建造するしかない。だがそれをしてしまうとサイド2からの受け入れ用のコロニーを潰してしまう事になるのだ。この辺りの問題をどうするのかでまた悩まなくてはならなかった。しかもコロニーを使わなくてはいけないので行政府との折衝も必要となる。
 面倒な事だなあと秋子は今の地位に疲れを感じてしまったが、まだ倒れるわけにも引退するわけにもいかない。せめてこの戦争が終るまでは宇宙軍を掌握する必要があった。今の連邦軍には人材が不足しすぎているのだ。


 会議が終った後で、ネオジオン方面とティターンズ方面の責任者であるエニーとクライフが秋子の執務室でコーヒーを飲みながら改めてこれからどうするのかを話し合う事になった。問題は兵站だけではなく、戦力配置の事など様々なものがあるが、その辺である程度のすり合わせをしておきたかったのだ。
 秋子の淹れてくれたコーヒーもお茶請けの菓子も絶品であり、エニーもクライフも暫しの間それに舌鼓をうっていたのだが、コーヒーを半分ほど飲んだ所でクライフがゼク・アインをもっと回して貰えないかと言い出した。

「ネオジオンはガザ系からドライセンやザクVに主力をほぼ切り替えたようで、ストライカーやゼク・アインでないときつくなってきていますよ。ジムVでは対抗しきれないんで、もっぱら支援機に使っています」
「それはこっちも同じよ。ティターンズはハイザックやマラサイから主力をほぼバーザムとグーファーに切り替えてきてる、ジムVじゃバーザムにも苦戦してるわ」

 クライフの要請にエニーも苦笑いしている。連邦軍は今1つ新型MSがぱっとせず、次期主力量産機として上がっていた機体群はどれもが大して使えない代物であるか、未だに試作の域を出ないものばかりである。

「ジード、とかいう新型は結局不採用なんだって?」
「元々コロニー防衛隊用のMSとして開発されていた機体でしたからね。戦争で主力機として使うには性能不足でした。そこでゼク・ドライ完成までの繋ぎとしてエゥーゴのMSを採用する案が検討されています」
「エゥーゴのMSと言いますと、ネロですか?」
「いえ、あれは余りにも生産コストが高すぎます。投降してきたエゥーゴから多数入手することが出来ましたが、私は今はまだエゥーゴから入手したMSを前線に送るつもりはありません。どうせ壊れたら直せないですし」
「そりゃそうよね。幾ら高性能でも直せないんじゃ使い様がないわ」

 エニーがうんうんと頷いている。MSとは壊れやすい兵器であり、常に整備を必要とする面倒な代物なのだ。実は連邦軍でジム系が好まれるのはMSとしては異常なほどの信頼性の高さに起因している。簡単には壊れず、部品が豊富に手に入って何処の部隊でも直せるジム系は非常に好まれているMSなのだ。
 だが、現実は厳しく、宇宙ではジムVですら性能の低さで苦戦するようになってきている。ジムVで戦えるのはせいぜいガザDやマラサイ辺りまでであり、ドライセンやバーザムが相手だと苦戦を強いられる。ましてネロやグーファー、ザクVの相手が出来る機体では無い。
 これらの問題から連邦軍ではゼク・アインの生産が増やされているのだが、ジムVの改修作業の進みの方が遥かに早く、依然としてゼク・アインは高嶺の花であった。また、ゼク・アインは激戦区に優先配備されるので消耗も早く、作っても作っても数が増えないという事情もあった。実際コンペイトウやサイド2ではネオジオンのNT用MSやティターンズの可変機やグーファーと戦い、次々に撃破されている。だが、それでも頑丈なゼク・アインのパイロットの生還率は高いと言える。損失と勘定された機体は多いが未帰還となった機体は少ない、大破しながらも何とか帰還してくるケースが多いということだ。

「それで、採用を検討してるエゥーゴのMSって何よ?」
「ヤング准将が持ってきた試作機の1つなんですが、ジェダというジムVの発展型と思われるMSがあったんです。これを持ってきた資料と共に調べさせた所、現行のジムVとの部品共有率が高く、これといって変わった技術も使用されていないという事で急場凌ぎに使えるのではと考えていまして」
「ですが、どの程度の性能なんです?」
「持ち込まれた3機の試作機をテストした所ではネロには遠く及ばないですが、バーザムには互角以上に戦える性能を持っているという判断が出ています。それでジムVのラインをこれに切り替えてはどうか、という意見が出ているんです」
「ジムVの強化案みたいなものね」

 ジムVの性能は頭打ちであり、これ以上の性能強化は困難だという報告が上がってきていたが、エゥーゴはそれを可能としていたのだろうか。エニーは驚いたという顔をしていたが、資料に目を通していたクライフはジムVを叩き台にした新設計機のようだと応えていた。

「強化案と言えば強化案ですが、かなり再設計されているようですよ。ジムVとは言えないんじゃないですかね?」
「似たようなもんよ。そうでないなら秋子がジムVの代わりにしようかなんて言い出す訳無いじゃない」

 チラリと横目で秋子の顔を見るエニー。その視線に秋子はニコニコとした無敵の笑顔で返していたが、エニーの言う事を否定はしなかった。実際ジェダはジムVやバーザムと同じガンダムmk−Uの量産型と言えるMSで、ジムVを経由してmk−Uの特徴を多く受け継いでいる。連邦のジムVにエゥーゴの新技術をふんだんに盛り込んで完成度を高めたMSだと言えるだろう。
 これの試作機をテストしたパイロットたちは基本性能に優れた使い易いMSだという評価を下しており、それが秋子に生産を考えさせるに至らせている。まあこんな物を量産に移すなんて無茶が出来るのもヤング艦隊と共にやって来たアナハイムの技術者や膨大なデータがあってこそで、エゥーゴがもたらした土産は連邦で大いに役に立っていたのだ。

「ですが、アナハイムはジェダを更に改良した高性能型を作っていたそうです。そちらは試作機もまだ未完成でデータも持ち出せなかったそうですが。ジェダは試作のみで打ち切られる予定だったそうです」
「じゃあ、それは今頃?」
「はい、ティターンズに渡ったでしょう。ティターンズがグーファーに代わるコストパフォーマンスに優れるMSを得たとなると、これからますます厳しい戦いになる事が予想されますね」
「こちらも戦力強化を急ぐ必要がありますね。相沢少佐たちはまだ地上に?」
「はい、まだ少しやって貰うことがありますから。とりあえずパイロットを宇宙に戻して新しい打撃部隊を編成するつもりです。そろそろ反撃に出たい頃ですから」

 祐一に与えた戦力を宇宙に呼び戻して再編成する。それはすなわち、秋子が反撃用の部隊に着手するという事だ。それが意味するところを悟ってエニーとクライフの顔にも緊張が走り、そして納得したように頷いた。

「OK、それで、とりあえず何処を殴るつもり?」
「そうですね、とりあえず、ルナツーを軽く押してみようかと思っています。成功すればかなりの戦力を後方に戻さざるをえなくなるでしょうから」

 少し意地悪な笑みを浮かべて、秋子はとんでもないことを口にした。だが2人はそれに驚いた顔はせず、むしろ当然だという顔をしている。ルナツーに向かう宙域は連邦とティターンズが制宙圏争いを繰り広げている戦場であるが、基本的に連邦が守ってティターンズが攻めるという状況が続いている。そろそろ一度反撃に出て将兵の士気を高めたいと言う考えがあったのだ。





 ベルファーストに後退した祐一たちは、予想通りそこで宇宙から秋子からのレーザー通信を受ける事となった。主だった士官を集めた祐一は用意してもらった会議室でその通信を受け、久しぶりに懐かしい上官の顔を見ることとなる。通信モニターに現れた秋子は、変わらぬ笑顔で祐一たちの前に現れた。

「お久しぶりですね皆さん、任務ご苦労様でした」
「かなりこき使われましたけどね。機体の消耗はともかく、幸いにパイロットの消耗は少なく済みました」
「そのようですね。ですが送ったストライカーの半数を緒戦で失うとは思いませんでした」

 秋子が困った顔で首を少し傾げている。その仕草は可愛いと表現するしかないものであったが、祐一は額に汗を浮かべて焦っていた。ストライカーは現在の連邦宇宙軍の最新鋭MSであり、まだ配備数が少ない貴重な機体だ。それを丸々1個大隊分も寄越してくれたのは秋子の好意の表れであったろうが、それをあっさり緒戦で磨り潰してくれた自分に秋子が怒っていない筈が無いのだから。たとえ見た目が穏やかであってもだ。
 そして秋子は1人で冷汗流している祐一に気付いているのかいないのか、これからの事に付いて話し始めた。

「とりあえず、祐一さんは部隊を1個大隊に再編成して海鳴に向かって下さい。そこでマイベックさんの指揮下に入り、作戦に従事して貰います。編成から外れたパイロットは宇宙に戻らせてください、こちらから迎えの艦を出しますので」
「そ、それは良いんですけど、何で参謀長、じゃなかった准将の所に?」
「そちらで大規模な反抗作戦を実施するそうです。それで、祐一さんたちを送り込んで戦力を補強しようというわけです。それに、この作戦が成功したらマイベックさんたちをこちらに引き抜いて大規模な攻勢作戦を実施する事にしています」
「攻勢って、それじゃあいよいよグリプスに!?」
「その辺りの事はこちらに戻ってからお話します。そちらでの作戦は海鳴で直接マイベックさんに聞いて下さい」

 それでは後はお願いしますと言い残して秋子からの通信は途切れた。話を聞き終えた祐一はさてどうしたものかと一堂を見回し、秋子の要請に応えて1個大隊に再編成する作業をしなくちゃなあとぼやいた。基本的に彼は面倒くさがり屋であり、特に事務仕事を苦手としている。やる気が出ないのも当然だろう。

「まあ、それじゃあ誰を残して誰を宇宙に戻すか決めようか。とりあえず俺は残ることが決定してるから名雪も残るとして、他に海鳴に行きたい奴は手を上げろ」

 すると全員が一斉に挙手をしたので、祐一は呆れた顔で部下たちを見回してしまった。

「お前ら、そんなに俺の下で働きたいのか?」
「何を言ってるんですか、海鳴と言えば結構知られた観光地ですよ。折角観光地で骨休めをするチャンスを逃すわけ無いじゃないですか!」

 部下の1人が拳を握り締めてそう力説し、周りの者がうんうんと頷いている。あゆや栞は海で泳げるかなあと場違いな相談を始めだし、それを見た香里がこめかみに血管浮かべて怒りを露にしていたが、上官の祐一までもがその意見に納得しているのでその場で頭を抱えてしまった。駄目だこいつら、という諦めの感情が彼女を支配している。
 そんなどうしようもない空気の中で、いきなり紙を弾く乾いた音が妙にはっきりと響き渡った。ざわめいた喧騒の中にあって何故かはっきりと聞こえたその音の発生源は、それまでじっと資料に目を通していた名雪であった。

「みんな、今は会議中だから、そういう事は後で相談しようね。祐一も脱線は駄目だよ?」

 何時もの優しい笑顔に穏やかな物腰、暖かい声であったが、それが怒り出す前兆である事を祐一は良く知っていた。怒った名雪の怖さは身に染みて知っている祐一は慌てて本題に戻るように全員に促し、精鋭に絞って残す事を告げた。

「まあ、あのシアンさんとマイベック准将の所で働かされるんだ。となるとさぞかし無茶をさせられるだろうな。ここは生き残り易いベテランを残す事にしよう」
「となると、クリスタル・スノーだけで大隊を作ると?」
「秋子さんが苦笑いをしてそうだけどな。あと北川以外の中隊長以上の奴は今回は宇宙に戻って貰う、多分部隊編成で必要になるだろうからな」
「あの、まさか少佐、北川大尉は戻さないんで?」

 北川は当然祐一の代理として戻るだろうと思っていた一同は吃驚した顔をしている。まさか北川をこのまま自分の部下として使う気なのか。
 この疑問に対して、祐一は当然という顔で頷いていた。

「ああ、大隊4つのゼク・アインとストライカー中隊で編成する。天野の大隊と同じだな。俺が第1中隊を率いる、北川は第2中隊だ」
「でも、それじゃあ第3と第4は誰が率いるんだ。中隊長以上は全員戻すんだろう?」

 北川が中隊長が足りないぞと疑問をぶつけたが、それに対して祐一はとんでもない回答を返してきた。

「第3中隊は香里に任せる、第4中隊は栞、お前だ」
「は、何言ってんの相沢君?」
「私たちが中隊長って、私たち中尉ですよ?」

 香里と栞が意表を突かれた顔をしているが、同時に訝しげな顔をしている。中隊長をするなら大尉か少佐が妥当な所だ。中尉の中隊長が居ない訳ではないが、やはり格という面では劣ると言わざるをえない。だが秋子の部下でMS隊を取り仕切る祐一が少佐である事を考えれば低すぎるとも言い難いところだ。
 元々秋子の部下たちは地位と階級が釣り合っているとは言い難い。本当なら祐一は中佐か、出来れば大佐であるべきだろう。だが幾らなんでも祐一をポンポンと出世させるのも体裁が悪いので、未だに祐一は少佐に留まっていたのだ。

「まあ心配するな、この作戦中は大尉にして貰うから階級はクリアだ。それにお前らも短期コースで士官教育を終えてるし、1年戦争を戦い抜いた大ベテランだ、そろそろ指揮官の経験を積んでも良い頃さ」
「指揮官、ね」
「何処も人手不足ですからねえ」

 祐一が何を言いたいのか、ようやく2人にも分かった。連邦軍は1年戦争、ファマス戦役で多くの軍人を失って弱体化が著しい。特に指揮官になれるようなベテランは枯渇している状況なのだ。そんな中で1年戦争の生き残りである香里と栞は貴重な人材であり、この際指揮官としての経験を積ませて将来に備えようとしているのだ。連邦内でも優秀な人材を独占していると影口を叩かれていた緊急展開軍時代ですら実際には人材不足に苦しんでおり、明らかに指揮官に向かない人材ですら使っていたのだ。
 それを考えれば、機会を見つけて指揮官を育てる事は必要だったのだ。香里と栞は既に高度な指揮官としての能力を有する事が分かっており、経験を積ませればすぐにでも部隊を任せる事が出来ると祐一は見ている。

「それじゃ、頼むぞ香里、栞。すぐに部隊の編成にかかってくれ。人事は全て2人に一任するから」
「祐一、それで大丈夫なの?」
「俺が許すんだからOK。必要な物があれば申請してくれ、こっちで手配するから」

 話を勝手に進められてしまった香里と栞は顔を見合わせていたが、どうやら断る事は出来ないようだと理解したのか渋々と頷いている。名雪は相変わらず祐一の副官として残る事になり、あゆは栞の部下として配置換えになった。




 祐一たちが向かう事になった海鳴基地では、マイベックやシアンが大陸での反攻について議論を重ねていた。既に中国大陸を舞台にした戦いが始まっており、ほとんど消耗戦のような戦いが延々と続いている。欧州と違ってこちらでは大規模な戦いがほとんど起きず、無限に続く小規模な戦いの連続だったのだ。
 この戦いを指揮しているマイベックは、そろそろこの膠着状態を打破したいと考えていた。消耗戦は連邦にとって望む展開ではあったが、それでも些か消耗が多すぎたのだ。

「少し戦力の梃入れが欲しい所だな、いっそ1個MS師団くらい奮発してくれんものだろうか」
「絶対に無理ですから諦めてください准将」

 マイベックの愚痴を聞いていたシアンがアイスクリームを食べながら突っ込みを入れてくる。それを聞いたマイベックがそんな事は分かってると返しながら、どうしたもんかと地図を指で叩いている。

「そういえば、そろそろ相沢たちがこっちに来る頃だったか。あいつらがこれば1個師団分くらいの戦力になるかな」
「流石にそりゃ無理って物ですよ。まあ俺が出向けば1個中隊くらいの活躍を期待してもらっていいですがね」
「ああ、里村君と氷上君も入れて1個大隊分の活躍を期待させてもらうよ。まあそんな冗談は置いておいて、相沢の隊がどれだけの戦力になるかで予定が変わりそうだな」
「じゃあこの話は相沢が来たらって事で。それより、問題は輸送路の確保でしょうが」
「ミデアの数が足らんからなあ、どうにもならん」

 中国大陸は広い。この広い戦場で戦うには輸送機による物資輸送が不可欠であったが、多くのミデアが欧州やアフリカでの反攻作戦に投入された為に海鳴基地からも多数の機体が引き抜かれてしまい、基地にある大量の物資を生かしきれなくなっていたのだ。
 まあ、この問題はアフリカでの作戦が終了した事で解決の目処が立っていた。いずれ引き抜かれた機体も帰ってくるだろう。

「まあ、どちらにせよまだ先に話です。今は将兵を訓練して少しでも戦力を強化しないと」
「ああ、そうだな。しかし、もう少し良いMSを回してくれんものかな。ジムUとハイザックばかりではティターンズを押し切れん」

 主戦場となっている欧州やアフリカに新型を回すのは当然と言えば当然だが、こちらもティターンズの地球における第2の拠点であるマドラスの相手をしているのだ。その辺りの事情を考慮して、こちらの戦力ももう少し強化して欲しかった。



 前線が大陸に遠のいた事で海鳴基地は比較的平穏な状態となっていた。日本周辺の支配権をほぼ手中に収めた事で敵の攻撃が少なくなり、海鳴の街にも平穏な日々が戻ってきている。街にはまだ戦渦の跡が生々しく残っているが、敵の攻撃が少なくなった事で復興作業が進んでいるようだった。
 この街は1年戦争でも最前線となった経験があり、その頃から街のあちこちにシェルターが設けられている。そのおかげでこの戦争では市民の犠牲者はかなり少なくて済んでいた。今日も避難訓練が行われていて、軍の誘導を受けながら大勢の市民がシェルターに移動していた。

「ほらほら、モタモタしてると敵が来た時に纏めて吹き飛ばされちまうよ。死にたくなかったら慌てず急いでさっさと避難するんだよ」

 連邦軍の制服に身を包んだシーマ・ガラハウ大尉が指揮棒を振ってシェルターに移動している市民に急げと指示を出している。彼女はシアンに拾われた後、海鳴基地で貴重なベテランの士官という事で重用され、前線で指揮を任されたり後方で訓練を任されたりと多忙な日々を送っていたのだが、今日は市民の避難訓練の指揮という変な事をやらされていた。負かされたシーマはといえば、コロニーを毒ガスで全滅させた事もある自分が避難訓練の指揮とは何の皮肉だと思ったが、これで意外に任務は真面目にこなしていた。
 ただ、彼女の下に配置された部下は何でか必至な形相で動き回っていた。彼女の下に配属された兵士の話によると、シーマの声には逆らい難い何かがあるのだそうだ。

「まったく、昔は宇宙海賊家業で荒稼ぎしてたあたしが、今じゃ指揮棒もって避難誘導かい。人生どう転ぶか分かんないもんだねえ」
「シーマ様、そんな事言ってるとますます老けますぜ」
「死にたいのかいバーグマン?」

 自分の呟きを聞いて余計な事を言った部下に、シーマは冷たい笑みを浮かべて指揮棒を向けた。指揮棒を喉元に突きつけられたバーグマンはそんな事は無いですと愛想笑いを浮かべて誘導に戻っていった。
 そして一息ついて指揮に戻ろうとしたシーマであたが、いきなり聞いた事のある声に気軽に名前を呼ばれて誰かとそちらを見た。

「あらあら、シーマ大尉じゃないですか。お仕事ご苦労様です」
「あ、ええと……確か中佐の親戚の?」
「はい、高町桃子です。この前はどうもありがとうございました」

 ニコニコと頭を下げてくる桃子に、シーマは何だか戸惑った様子で落ち着きなくそわそわとしていた。その姿を一言で表すならば、照れていると言うべきか。彼女は少し前に海鳴基地が攻撃を受けた際、何故か逃げ遅れていた高町なのはを救助して近くのシェルターに運んでやったという事があったのだ。
 それが上官であるシアンの遠縁の親戚みたいなものだと分かった時は流石に驚いたが、その後に家に食事に招待された時は更に驚いたというか、困り果てたものだった。その時のシーマの様子は同じく招待されて同席していたシアンによると、今思い出しても笑いが込み上げてくるほど可笑しかったそうな。
 どうもシーマはこの底抜けお人好し一家がどうにも苦手というか、どう対応していいか分からなくて戸惑ってしまうらしい。それがそのまま彼女のこれまでの人生を表しているとも言えるが、彼女から見ると高町家は眩しい存在であったようだ。
 そしてシーマは照れ隠しでもするかのように一緒に非難してきていた子供たちの方を見ると、殊更に海賊時代のような高慢な態度を剥き出してみせた。

「ほらほら、あんたらもさっさと避難しな。遅れるようだったら、お仕置きしちゃうよ」

 まるで獲物を見るような目を向けられた美由希となのはが怯えてオタオタしている様は中々に可愛かったが、兄の恭也はそんな妹たちに呆れた顔をしていた。

「睨まれたくらいで取り乱すな、情け無い」
「だって恭ちゃん〜」
「わ、私もちょっと怖いよ〜」

 兄の叱咤に情けない返事をする妹2人。その背中を母に押されて彼女らはシェルターへと向かっていったが、それを見送ったシーマは少し深刻そうな顔で考え込んでしまっていた。

「あたしゃそんなに怖いのかねぇ?」
「そりゃシーマ様の迫力は荒くれ者揃いの海兵隊を震え上がらせるほどでしたからねえ」
「バーグマン、あんたはそんなに今日を命日にしたいのかい、ああっ!?」
「シ、シーマ様、痛いから指揮棒で殴るのは止めてください!」
「そのシーマ様ってのも止めなって何度言ったら分かるんだい。あたしらはもう海賊なんてヤクザな商売から足洗って、真っ当な軍人に戻ったんだよ!」

 部下をしばき倒しながらシーマはガミガミと怒鳴っている。それは彼女なりの海賊時代との決別を意味しているのだが、やはり昔の癖は中々抜けない物であるようだ。今ではシーマ様ではなくシーマ大尉と呼べと何度も言っているのだが、部下たちは未だに自分をシーマ様と呼んでしまう。時々シアンなどもふざけてシーマ様と呼んでいるので、違う意味でその呼び方はシーマを表しているのかもしれない。




 だが、この一見平和な時は長くは続きそうもなかった。連邦軍が欧州を奪還してアフリカに侵攻したことで手薄となっている極東戦線にティターンズは反撃の可能性を見出して作戦を発動させていたのである。そう、海鳴基地の襲撃作戦を。その為に地球軌道にティターンズの艦隊が侵入して迎撃に出てきた連邦の艦隊と交戦していた。
 重巡のロンバルディアとサラミス2隻とコロンブス2隻が地球軌道に侵入してくる。それを捉えた連邦軍の部隊が迎撃に出てきたのだが、ティターンズのMS隊によって逆に撃破されてしまった。
 ジムUをビームライフルで撃破したジ・Oに似たMSが周辺を見回し、こちらに向かってくる敵の姿が無いのを確かめてロンバルディアに発光信号を送る。それを見て護衛艦隊がコロンブスの上方に傘をかけるように展開し、ゆっくりと降下軌道に入っていった。

「ふむ、流石にこんな所にはNTは居ないか。まあ、私も期待していたわけでは無いが……」

 シロッコはつまらなさそうに退いていく連邦軍を見据えていた。今回彼が乗ってきたジ・Oは自分で作ったPMX−003ではなく、来栖川で製作されたジ・Oのデータを用いて製作されたスティレットと呼ばれている実験機の1つだった。来栖川はスティンガーに続く2機目の量産型MSの開発をしており、シロッコと協力する事でそれに目処を立てていたのである。
 それは基本性能では流石にジ・Oには及ばなかったものの、全体的にバランスが良い安定した仕上がりを見せている。まあジ・Oの高性能はシロッコの設計によるワンオフ機だからこその物で、実用機として考えれば多少性能を犠牲にするのもやむをえないだろう。シロッコも一般兵が使う機体に自分が使う事を前提にしたようなMSが使えるわけが無いとは分かっているので、この劣化も仕方が無いと理解はしていた。
 だが、ジ・Oが随分と面白みの無いMSに変わったものだと少し寂しく思っていたりはする。

「スティレット、か。ファマスの開発したブレッタというMSをベースに設計した機体だという話だが、纏まりが良すぎてどうにも面白みが無い」

 せめて少しは歯ごたえのある敵が居れば、そう思うシロッコであったが、流石にこんな所にはそんな相手もいないようだ。
 そのままコロンブスから降下部隊が出てくるのを見ていたシロッコであったが、そこに周辺警戒をしていたポリノーク・サマーンのサラから新手が来たという知らせが入った。

「パプテマス様、新たな敵部隊が急速に接近しています。速度から判断するとMSではなく戦闘機かMAかと」
「MSではない、か。いやサラ、そいつは少し違うかも知れんぞ」
「どういうことですか?」
「少しは歯応えのある相手が出てきてくれたかもしれん、という事さ」

 連邦軍がエゥーゴのZガンダムの量産型であるZプラスをカラバから入手し、宇宙でも使えるように改修した上で量産している事は既にティターンズにも伝わっている。まだ配備されているという情報はなかったが、すでに本国艦隊に配備されていたのではないか。そう予想したシロッコの前にそれを証明するかのように10を越すウィブライダーが姿を現した。これが連邦軍の生産したZプラスA型の地上、宇宙兼用ZプラスC型である。
 シロッコはジムなどより余程面白い相手が出てきた楽しそうであったが、このZプラスにはシロッコも知らない大きな意味があった。これは連邦宇宙軍が可変MSを多数投入した初めての戦いである事を。離れた場所にある空母から短時間で広範囲にMSを展開させる能力を連邦宇宙軍が持った事を意味するのだ。

 降下作戦を阻止する為に現れたウェイブライダーが散開してティターンズのMS隊を突破しようとするが、シロッコ率いるMS隊もそれを許すほど甘い相手ではない。上方で激しい戦いが繰り広げられる中で、コロンブスから出てきた降下部隊は次々に大気圏へと突入していく。彼らが降りる先には、海鳴基地があった。



機体解説

ZプラスC1

兵装:ビームスマートガン
   ビームガン×2
   ビームサーベル×2
   頭部60mmバルカン×2
<解説>
 連邦軍がカラバから入手したZプラスA1を元に再設計した可変攻撃型MS。連邦地上軍の期待の星とも言える次世代可変MSで、可変機としてはかなり安価な所も特徴の1つ。性能面では非常に優れており、ティターンズやアナハイムの誇る新鋭機にも十分に対応する事が可能。その最大の特徴は量産機でありながら単独大気圏突入能力を有する事で、宇宙軍では地球軌道を守る本国艦隊に優先配備されている。



後書き

ジム改 順調に行けばもうすぐ宇宙に戻れるぞ。
栞   う〜ん……
ジム改 どうした栞、食いすぎか?
栞   ブリテン島で何食えって言うんですか、ここのご飯は絶望的ですよ。
ジム改 まあそうらしいがな。
栞   ところで、私は何時までmk−Xなんですか?
ジム改 あれ以上のMSなんて連邦軍には無いぞ。
栞   ジャブローで開発してる試作機とか無いんですか?
ジム改 G−9作ったから暫く無いな。
栞   それじゃ海鳴基地に隠されている謎のMSとか。
ジム改 海鳴基地にそんな物があったらとっくにシアンたちが使ってるだろ。
栞   ではどこかに伝説のMSが埋まっているとか!
ジム改 イデでも発動させる気かお前は?
栞   噂では木星圏に埋まってるらしいですよ。
ジム改 一体何処でそんな噂が……。
栞   それは乙女の秘密です。それでは次回、海鳴に降下してくるティターンズ部隊。迎撃に出るシアンたちであったが、敵は見慣れぬ新型を持ち出してきた上に直接海鳴基地に降りて来られては基地を守りきる事は出来ず、大きな被害が出てしまう。さらに流れ弾が市街地にも及び、街が焼かれる事に。次回「燃える海鳴」で会いましょう。って燃えちゃったら私のバカンスはどうなるんですか!?