第3章 出撃



 ルナツー襲撃事件から3日後、ルナツーは慌しくなっていた。ジオン残党を掃討するために幾つもの艦隊が編成され、それぞれが暗礁宙域に向けて出発しているのだ。1つの艦隊は大体8〜12隻で編成されており、決められた暗礁宙域に向かっていく。そして、この作戦を立案した久瀬中将の決意をあらわすかのように自分の第2艦隊とシャーマン少将の第3艦隊、キンケード少将の第8艦隊を主力とし、これに急遽召集した艦艇を加えた連合艦隊が編成された。これは1年戦争以降に編成された最大の艦隊であり、しかも新造艦が多かった。新造艦の弱点であるMS搭載能力の欠如もコロンブス級MS母艦を多数随伴することで補っている。この艦隊は暗礁宙域に向かった艦隊がジオン残党の拠点を発見次第出撃し、圧倒的な戦力でこれを殲滅することになっている。
 この作戦には先の戦闘で大損害を受けた第4、第6独立艦隊は外されていたが、ほとんど損害を受けていない第8独立艦隊は新たに4隻を加えられて戦力を強化され、サイド5に向かうことになっていた。しかし、肝心の4隻がいまだに到着していない。
 戦闘空母カノンの艦橋で秋子は次々と出向していく艦隊を眺めていた。本当なら自分たちもとっくに出港しているはずなのだが、4隻の到着が遅れているために未だにこんな所で待ちぼうけを食らわされているのだ。
 退屈そうに外を眺めていた秋子の下に久瀬中将から通信が入った。

「水瀬君、すまないがグラナダに向かってくれるかね」
「グラナダ、ですか?」
「そうだ。フレーザー大佐の艦隊のサラミスの機関が故障下らしくてね。今グラナダのドッグで修理をしているそうなのだ。君はフレーザー大佐とグラナダで合流してくれ」
「・・・分かりました。艦隊は直ちに出港し、グラナダに向かいます」
「うむ、そうしてくれ」
「ところで中将、一つお聞きしたいことがあるのですが」

 そこで秋子は少し厳しい表情になった。

「連合艦隊なのですが、あそこまで強力な編成にする必要があったのですか?」
「・・・何が言いたいのかね?水瀬君」
「・・・いえ、ジオン残党の掃討にここまで大げさにする必要があったのかと思いまして」

 秋子の無難な返答に久瀬は不快そうに眉を寄せた。

「私はジオン残党を侮る気はない。水瀬君ともあろう者が敵を舐めているのかね?」
「いえ、そういうわけではありませんが・・・」
「ならいい、君は作戦に全力を尽くしたまえ」

 そう言って久瀬は一方的に通信を切った。
 白濁するスクリーンを見つめながら秋子は考え込んでいた。
 久瀬中将は何を考えているの。集められた艦隊は全て久瀬中将の息のかかった艦隊。中将の権限によって行われた行先不明の物資の流れ。そしてこの間の襲撃における不可思議な行動。まさか、久瀬中将は反乱を起そうとでもしているのかしら。確かに中将の能力と人望、そしてこの戦力なら可能かもしれない。でも、中将はどこに拠点を持っているというの。ルナツーは地球に近すぎる。直ぐに討伐の艦隊が派遣されてくるわ。そうすればいくら何でも数の差に押し切られてしまう。なら一、体どこに・・・・・・
 そこまで考え秋子は苦笑した。私は何を考えているのだろう。まだ久瀬中将が反乱を起すと決まった訳ではない。この艦隊だって久瀬中将の行った通りの目的で編成されたとすれば何もおかしい訳ではない。私は少々神経質になっているようですね。大きく息を吐くと秋子は艦隊にグラナダへ向かうように指示を出した。





 秋子に未来が見えたわけではないだろうが、その予想は完全に当たっていた。ルナツーの司令室で久瀬中将は先ほどの会話を思い出して舌打ちしていた。その隣に立つ男が声をかける。

「中将、どうされますか。水瀬准将は我々の動きに気付いているのでは」
「いや、それはないだろう。彼女の話し方は探りを入れているようだった。恐らく、何ら
かの情報を得て私を警戒しているのだろう」
「ならばなおのこと、今のうちに手を打っておいたほうがいいのでは」
「心配するな。もう何をしようとも遅い。こちらはすでに準備を終えているのだからな」

 それに、彼女はこんな所で死なせるのは惜しい。久瀬中将は最後に自分だけに聞こえる大きさで呟いた。




 カノンが出港準備に入っている頃、格納庫では新たに配属されたMS隊に多くのパイロットや整備兵が群がっていた。なんとその部隊は最新鋭のMSや、非常に珍しいMSを装備していたのだ。
 特にその中の1機を見て祐一が羨望の声をあげている。

「こいつは凄いな。ガンダムタイプじゃないか」

 祐一の前には黒く塗装されたヘビーガンダムがあった。新たに配属された部隊というのは第4独立艦隊から派遣されたアルハンブル中隊だったのだ。アルハンブル中隊は隊長のトルビアック中尉のヘビーガンダムと最新鋭のジム改2機、ジムコマンドGS9機で編成されている。このあたりにエニーの交渉能力の高さがうかがわれる。エニーはまだ主力艦隊にすら配備が進んでいない機体をすでに入手していたのだ。

「でも祐一、何でトルク中尉がうちに来たのかな。第4のエニー大佐とお母さんて凄く中が悪いって噂だよ」
「俺が知るかよ。秋子さんに聞いてくれ」

 祐一が羨望の表情を浮かべたまま名雪に言い返す。まあ無理もないだろう。連邦MSパイロットにとって、ガンダムタイプに乗るのは夢なのだから。祐一は先の戦いで自分の機体を大破されており、新しい機体を受け取ってはいたが、やはりジムコマンドだった。
 二人の会話を聞きつけたのか、ヘビーガンダムからトルビアックが降りてきた。

「どうしたんだ水瀬曹長、この機体が珍しいのか」
「ううん、私は前に見たから。それよりトルク中尉、どうしてうちに来たの?」

 トルクに笑顔を返しながら名雪が聞く。

「ああ、うちは前の戦闘でかなり痛めつけられたからな。さすがの大佐も今回は留守番をすることにしたのさ。でも、何にもしないのはさすがに体裁が悪いんだろうな。こうしてMS隊を出したんだが、どういう訳かここに配属されちまった」
「ふ〜ん、そうなんだ」

 名雪は納得したように頷く。その間も祐一はずっとガンダムを見上げていた。
 3人が話し込んでいると、格納庫に退避の指示が流れた。また別のMS隊が到着したのだ。

「一体幾つの部隊が合流するんだろうな」
「さあ、この船大きいから。もともとここ空いてたしね」
「そうなのか?」

 二人の会話にトルビアックは不思議そうな顔をする。彼はカノンには常時2個大隊以上のMSが配備されていると思っていたのだ。

「ああ、カノンにはもともと2個中隊しか配備されてなかったからな。ほとんどの格納庫は予備パーツの保管庫になってた」

 祐一が苦笑しながら答える。これだけの艦に2個中隊しか配備されていないのだ。祐一でなくてもおかしくなるだろう。
 何だかんだで格納庫には5個中隊以上にも及ぶMSが収まっていた。これでまだ余裕があるのだからカノンのMS運用能力は驚異的というしかない。実際、この艦の定数は120機(予備12機含む)で、ここにはまだ65機しか納まっていないのだ。他に、数合わせなのか36機のセイバーフィッシュ隊と24機のボ−ル隊も来ている。
 カノンに配属されたMSは新たな指揮官に再配置されることになっており、中尉以上の者がブリーフィング・ルームに集まっていた。そこで艦長の秋子が人事を発表した。カノンMS隊は2個大隊で編成され、それぞれが3個中隊で編成されるという、定数より1個中隊少ない構成となっている(カノン以外にサラミス4隻の搭載機で1個中隊分)。ここで祐一と北川は中隊を任されることになった。中尉で中隊長というのは早すぎるが、戦争の影響で経験を積んだ士官が足りない為のやむない処置だった。実際、ここには2人に勝る実績を持つものなどトルビアックぐらいしか見当たらない。ただ、1人珍しいことに女性の中尉がいた。年も祐一たちと同じくらいだろう。なんだかとても笑顔の似合うやさしげな美人だ。
 秋子さんに似ているのかな。祐一は自分のいつも笑顔を絶やさない叔母に視線を移してそう思っていた。
 ブリーフィング終了後、祐一と北川は食堂に向かった。名雪たちとここで待ち合わせていたのだ。食堂についてみると予想以上に込み入っていた。どうやらお客さんが沢山来たせいで食堂の人口密度が上がっているらしい。しかし、歴戦の戦士である2人は食堂の戦い方を誰よりも心得ていた。巧みに人の流れを避けながら食堂を探し回った二人は直ぐに名雪とあゆを発見したが、さらに見知らぬ人物が同席しているのに気付いた。
 名雪とあゆもこっちに気付いたのか手を振っている。2人ともとりあえず疑問は後回しにして席に座った。

「はあ、疲れた。名雪、俺の飯は?」
「自分で取ってきてよ〜」
「むう、気が利かない奴だ」
「祐一、言ってることが無茶苦茶だよ〜」
「祐一君、ボクが取ってこようか」

 あゆが2人の話に割り込んできた。

「・・・いや、やめておこう」
「うぐぅ、どうして?」
「絶対に転ぶと分かっている奴に頼むほど俺は馬鹿じゃない」
「うぐぅ、ボク転ばないもん!」
「ほう、今までの実績を思い出してもそんな事が言えるかな」
「・・・うぐぅ・・・」

 祐一の厳しい突っ込みにあゆが沈黙する。すると今まで黙って事の成り行きを見守っていた同席者が声を立てずに笑い始めた。

「フフフフ、ホント、名雪の言う通りね」
「香里もそう思うよね」
「・・・何のことだ、名雪」
「ううん、何でもないよ」

 祐一の問いに名雪は意味ありげに笑って見せる。香里と呼ばれた女性は笑うのをやめて祐一を見た。

「はじめまして、相沢中尉だったわよね。私は美坂香里、新しくやってきたMSパイロットよ。階級は曹長。名雪とは同郷で親友なのよ」
「そうか、でもなんで俺のことを知ってるんだ?」

 祐一が当然の疑問を口にする。それを聞いて香里がまたくすくす笑い出した。

「だって、相沢君のことは昔から何度も名雪に聞かされていたもの。おかげで始めて会った気がしないわね」
「ほう、なるほどね」
「でも、香里ったら4年前に突然どこかに行っちゃったんだよ。お別れも言えなくて私寂しかったんだからね」

 名雪が不貞腐れたように文句をいう。それを聞いて香里の顔に影が差した。

「御免なさいね。でも、私にもいろいろと事情があったのよ」
 香里の辛そうな表情に祐一と名雪は声を失った。だが、その気まずい沈黙を打ち破るかのように別の声が割り込んできた。
「それで、俺はいつ紹介してもらえるのかな?」

 北川が寂しそうに呟いた。

「あ、そうだったな。すっかり忘れてた」

 祐一が本気で忘れていたとでも言いたげに驚いてみせる。その態度に北川はさらに寂しそうな顔になった。

「おい、相沢」
「冗談だ。ああ、こいつは北川潤。俺の悪友だ。根性捻じ曲がってるが気にしないでくれ」

 さわやかに断言する祐一に北川が突っ伏した。

「おい、誰が根性捻じ曲がってるって?」
「お前が」
「相沢に言われたくはないわ!」

 北川の主張に名雪とあゆが大きく頷く。

「そうだね、祐一のほうが曲がってるよね」
「うん、これ以上ないって位に曲がってるよね」
「…………」

 名雪とあゆに断言されて祐一が黙り込んだ。対照的に北川は勝ち誇ったように笑顔になる。

「はいはい、相沢君がどういう人かはよく分かったから、名雪も苛めるのはそれくらいにしておきなさい」

 香里が助け舟を出す。別に祐一を助けようと思ったからではなく、このままでは話が進まないと思ったからだ。
 北川も特に追求するようなことはせず、すぐに話題を変えてきた。

「ところで、美坂はどこの隊に配属になったんだ?」
「私は181戦術大隊の第2中隊よ。ジムコマンドに乗ってるわ」
「「へ!!」」

 香里の返事に祐一と北川が声をあげた。

「それって、俺の中隊だぞ」

 北川が驚いた表情で言う。香里も少し驚いたようだがすぐに元のポーカーフェイスに戻った。

「そうなの?まあ、まったく知らない人の下につくよりはましかもね」
「ちなみに私とあゆちゃんは第3中隊だよ」
「……まあ、そうだろうな」

 名雪の話を聞いて祐一はあゆと名雪を見た。

「2人とも実戦を経験したんだが、何で訓練のときよりも遥かに成績がいいんだ?特にあゆ!」
「うぐぅ、あの時は夢中だったから・・・」
「いや、別に責めてる訳じゃないんだが」

 あゆが涙目になったので祐一が困っている。

「駄目だ祐一、あゆちゃんを苛めたら」

 名雪が祐一を叱る。さすがの祐一もこれではどうしようもなく、あゆに謝った。

「すまんあゆ。別に怒っているわけじゃないんだ。ただ訓練の時よりも動きがずっと良かったから驚いただけなんだよ」
「うぐぅ、いいよもう。でも、どうしてなのか、ボクにも分かんないんだよ」 
あゆがすまなそうに答える。祐一もそれ以上追及しなかった。

 祐一の話が終わったところで香里が口を開いた。

「ところで、この船グラナダに行くのよね?」
「ああ、そのはずだが、何でだ?」
「……別にいいじゃない、何でも」

 また香里の表情が曇る。だが名雪は何かに気付いたらしく、心配そうな視線を香里に向けている。
 結局、休憩の時間が終わってしまったので、5人はそれぞれの仕事場に戻っていった。もっとも、同じ格納庫の中なのだが。
 格納庫脇のパイロットルームで祐一は名雪を捕まえた。

「名雪、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「……香里の事、だね」

 祐一の質問を予想していたのだろう。名雪は躊躇して答えた。

「ああ、グラナダに何があるんだ」
「・・・香里にはね、妹がいるんだよ。でも、1年戦争が始まった時香里の家族はサイド4にいたんだよ。その時、香里の両親はコロニーに散布されたウィルスで死んじゃったの。運良く妹の栞ちゃんだけが脱出する連邦軍に救助されたの。栞ちゃんはお母さんが引き取ったんだけど、栞ちゃんは両親の敵討ちがしたいって言って連邦軍に入ったんだよ。お母さんも私も止めたんだけど聞かなくて、仕方なく適性を調べたらMSの操縦に適正があったらしくって、MSの訓練を始めたの。そしてお母さんと一緒に戦争を戦ったんだけど、それがまずかったんだろうね。コロニーに使われたウィルスが原因らしいんだけど、病気にかかっちゃたんだよ。他人に感染する心配はないそうなんだけど、治療法は未だに見つからないんだって・・・お医者さんの話だと・・・もう長くないって・・・・」
「そうか、だけど、俺はその子を知らないぜ?」

 祐一の疑問に名雪は顔を伏せたまま答えた。

「祐一が出て行った後の話だよ」

 名雪の肩が震えていく。祐一は聞いたことを少し後悔していた。まさか、こんな答えだったなんて。
 祐一は名雪を静かに抱き寄せた。名雪は驚いたのか体を硬くしたが、すぐに祐一に体を預けてきた。

「ごめん、こんなことを聞いてしまって」
「ううん、いいよ……」

 名雪は涙声で小さく答えた。2人はそのまま何も言わずにしばらく抱き合っていた。
 パイロットルームの扉の傍の廊下にもたれかかって話を盗み聞きしていた北川はどうしたものかと頭を掻いて悩んでいた。最初から盗み聞きをするするつもりだったのではない。用事があって祐一を探していたのだ。それが見つけてみればこんな話をしている。そのせいで入るには入れなくなってしまったのだ。

「とりあえず、2人が出てくるまで待つか」

 それまでは誰もここには近付けん。そう決めると扉の傍で見張りをすることにした。
 パイロットルームから祐一が出てきたのはそれから20分後のことであった。




 出撃した第8独立艦隊を見送るルナツー残存艦隊、いや、主力艦隊というべきか。主力艦隊から離れたところで1機のジム改が高速で飛び回っていた。そのジム改はまるで散らばっている岩礁など見えないかのような速さで飛び回っており、もし誰かが見ていたとすれば驚愕しただろう。自分には到底不可能な機動をしているのだから。少なくともジム改の機動性ではない。
 この機体を操っているパイロット、シアン・ビューフォート少佐はやや不満げに機体を上昇させた。

「まあ、ジム改ではこんなもんか。このシステムを完璧に使いきれるMSはそうないからな」

 独り言を呟いたシアンはモニターに出港していく巨大な艦艇を見つけた。

「カノンか、行くんだな。トルク、死ぬなよ。そして……」

 シアンは連邦艦とは思えぬ巨大なカノンの姿をモニターで見ながら思いにふけった。いろんな意味であの船とは縁がある。

「無事に帰ってきてくれよ」

 一通りのテストを終えたシアンは機体を格納庫に戻すとシャワーで汗を流し、制服に着替えるとぶらぶらと歩き始めた。艦隊が再編状態の今、やることなどほとんどなく、事実上準待機も同然なのだ。部下を鍛えるという役目もあるのだが、未だに補充の機体がこないのだ。
 シアンのように無為の日々を過ごす者はルナツーにはそれほど多くなく、いたとしてもほとんどがパイロットだった。パイロットというのは戦いがなければ基本的に暇なのだ。
 いつものように目的もなく散歩していると、通路の反対側からきょろきょろとあたりを見回しながら女性士官が歩いてきた。シアンはそれを見て迷子だと思った。このルナツーは広く、慣れない将兵がよく道に迷うのだ。シアンはその女性士官に声をかけるべく近づいた。困っている新人を助けてやろうという心遣いからだ。もっとも、その容姿に心を動かされてもいた。その女性士官は目の覚めるような美少女だったのだ。いや、もう2,3年経てば美人と言っただろうが。

「どうかしたのかな?」

 声をかけられた女性士官は驚いてこちらを見直し、ついで敬礼してきた。階級章に目がいったのだろう。

「失礼しました」
「いや、咎めているんじゃないんだ。こんなところできょろきょろしてどうしたのかなと思っただけだから」

 そう言われて女性士官の顔が赤くなる。

「いえ、その、道に迷いまして……」

 やっぱりな。予想が当たったことにシアンは小さな快感を覚えていた。それが表情に出たのだろう、女性士官が少し不貞腐れた顔になる。それを見てシアンは素直に謝った。

「いや、すまんすまん、笑っていたかな?」
「いえ、そんなことはありません」

 うそだ、声が怒っている。

「はははは、まあ、すまなかったな。それで、何処に行くんだい?」
「……えっ?」
「笑ったお詫びだ。案内してあげよう」
「いえ、でも、少佐にも仕事が」
「いいんだ、どうせ暇だからな」

 少し寂しげに言う。それを聞いて彼女は哀れむような視線を向けてきた。

「もしかして、窓際なんですか?」
「・・・なんでそうなる?」

 思わずジト目でシアンはつっこんだ。

「冗談です」

 さらりと彼女は言ってのける。どうやら只者ではないらしい。

「……まあいい、それで、何処に行きたいんだ?」
「あ、私は久瀬中将の執務室に行きたいんです」
「久瀬中将の? それが何でこんなところに?」

 シアンは呆れ顔で言う。それを聞いて彼女は不安そうになった。

「その、どういうことですか?」
「久瀬中将の執務室はここからかなり遠いんだ」
「……そ、そうなんですか?」

 彼女の疲れたような呟きにシアンは大きく頷いた。それを見て彼女の肩が大きく落ちる。どうやら相当迷っていたらしい。
「まあいいさ、それでは行こうとしようか・・・ええと・・・」

 シアンが言いよどむ、その意味を察したのだろう、彼女は笑顔で答えた。

「あ、私は郁未です。天沢郁未少尉です」




 シアンに心配されていることも知らず、トルビアックは自分の愛機を点検していると、下から自分を呼ぶ声が聞こえた。コクピットから出てみると整備兵の一人が自分を呼んでいる。

「アルハンブル中尉、倉田中尉が呼んでます!」
「「分かった、今行く!」

 倉田中尉は自分の愛機であるジム・コマンドの足元で部下と思われる女性と話をしていた。トルクがそっちに歩いていくと倉田中尉はその女性との話を打ち切ってこちらに歩いてきた。

「どうもすいません、わざわざ来ていただいて」
「いや、別にいいんだが、何の用なのかな?」
「あ、そうでしたね」

 笑顔でボケた返事を返してくる。それを聞いたトルビアックはどう反応したらよいものかと悩んだ。

「実はですねえ。佐祐理の中隊はまだ実戦経験がないんです。ですから、中尉の隊と訓練をしたいんですよ」
「なるほど、それはかまわないが、艦長の許可がないとな」
「あ、それなら大丈夫ですよ。もう秋子さんには許可をもらってますから」
「……なるほどね、分かった。それで倉田中尉。今からやるのかな?」
「はい、お願いします。それと、佐祐理のことは佐祐理でかまいませんよ」
「……ああ、分かった。それじゃ佐祐理さん、行くとしようか」
「はい!」

 始終困った顔だったトルビアックだったが、佐祐理の絶えぬ笑顔を見ていてなにやらおかしな気持ちになった。軍に入って以来、こんなに晴れ晴れとしたのはなかったことだ。この艦の雰囲気がそう感じさせるのか、それとも、佐祐理さんの笑顔がそういう気持ちにさせたのかは分からなかったが、とにかく気分が良かった。

「くくく、ははははは!」
「はえ、どうしたんですか」

 突然笑い出したトルビアックに佐祐理が不思議そうな顔をする。

「いや、なんでもない。佐祐理さん。黒い雷の実力、しっかりと見ておけよ」
「はえ〜、お手柔らかにお願いしますね」

 トルビアックの愉快そうな声に佐祐理もうれしそうに答えた。




「それじゃ佐祐理さん、準備はいいのかい」

 宇宙に出た24機のMSは2つに分かれて向かい合っていた。

「はい、いいですよ」
「それじゃ、いきなり集団戦といくか。先に全滅したほうが負けということで」
「はい。それじゃ合図をお願いしますね」
「よし、それじゃ」

 トルビアックはペイントライフルの銃身に備え付けられたグレネード・ランチャーから信号弾を打ち出した。それを合図に24機のMSが一斉に散開する

「いいか、シアン隊長の言ったことを忘れるな。単機での戦闘は絶対に避けろ。小隊単位で1機の敵を袋叩きにするんだ。それじゃあ、いくぞ!!」

 そう言って通信を切ると、シアンは2機のジム改をを連れて倉田中隊の機体を素早く確認した。

「なるほど、確かに錬度が低い。どいつもこいつも直線的に動く事しかしてない」
 その中で際立った動きを見せているのが佐祐理のジムコマンドとあと1機、直線的な動きだが非常に切れのいいジムがある。特にトルビアックはジムの動きに目を見張った。

「速いな。とてもジムとは思えん」

 そこまで考えたところでシアンは味方に指示を飛ばした。

「全機、倉田中尉機と速いジムには手を出すな。それ以外の機体を先に叩くんだ!」

 そう言うと、自分も手近な所にいるジムを目標として襲い掛かった。目標とされたジムは一度に3機に襲い掛かられたことに驚いたのだろう。動揺がはっきりと伝わってくる。慌てて放たれた銃撃は最初から照準がつけられておらず、回避運動をする必要もなかった。

「無駄弾を使うんじゃない。狙って撃て!」

 シアンの声が聞こえたわけではなかろうが、そのジムは狙いをつけようとした。シアンの目の前で動きを止めて。

「戦場で止まる奴があるか!!」

 怒鳴ると迷わずライフルを放った。正確な射撃は目標のジムをペイントで赤く染め上げ、コンピュータが撃墜と判断する。撃墜を確認したシアンはそのジムの肩をつかんで接触回線で話し掛けた。

「いいか、戦場、特に敵が近いときには絶対に止まるんじゃない。あと、弾の無駄使いも避けろ。弾切れは戦場では致命傷になる」
「は、はい!」

 ジムから若い男の声が聞こえる。どうやら新兵らしい。これでは佐祐理が訓練をしたいというのも分かる。ならば、せいぜい落としてやるか。そう意気込むと、更なる目標に向かった。
 10分後、倉田中隊の機体は佐祐理のジムコマンドと敬遠されたジムの2機になっていた。対するトルビアック中隊は3機がやられただけである。情けないが、倉田中隊はまったく歯が立たなかったのである。

「あははは〜、舞、私達だけになっちゃいましたね」
「……仕方ない。みんな新兵だから」

 舞と呼ばれたジムのパイロットは無愛想に答えた。だが、佐祐理の態度からするとこれが普通なのかもしれない。
 そこに、トルビアックから通信が入ってきた。

「どうする佐祐理さん。9対2だ。ここは負けを認めて第2ラウンドにするか?」
「あはは〜、舞、中尉がああ言ってますけど、どうします?」
「……まだ、終わってない」
「そうだね。すいません。最後までやらしていただきます」
「そうか、じゃあ、覚悟してもらおうか」

 佐祐理の答えを聞いたトルビアックは全機に命令した。

「俺は倉田中尉をやる。お前達はジムのほうを叩け。1機だからって手を抜くんじゃないぞ!」
「了解!!」

 部下の威勢のいい声を合図に9機は一斉に襲い掛かった。対する佐祐理と舞も同時に散開した。佐祐理は回避行動と銃撃を同時に行い、舞はビーム・サーベルを構えてMSの群れに突っ込んでいく。
 佐祐理に向かったトルビアックは動きながらの正確な銃撃に迂闊な機動はできないことを悟っていた。部下達は素人同然だったが、佐祐理は明らかに十分な訓練を積み、実戦の洗礼を浴びていた。
 トルビアックは迷わず右肩のビームキャノンと腰の左右に増設された2連装グレネードランチャーを使った。ビームキャノンから訓練用に調整されたビームが発射され、ランチャーから4発のグレネードが飛び出していく。佐祐理は咄嗟に機体を翻したがビームは交わせたがグレネードはかわしきれず、シールドごと左腕は判定破壊になってしまった。

「いけない!」

 佐祐理が左腕をやられて焦ったところに2機のジム改が銃撃を加える。左腕が動かなくなって動きが鈍っていても佐祐理は何とかこれをかわしたが、ここまでが限界だった。続くトルビアックの正確な銃撃が佐祐理の機体を捉え、これを赤く染め上げた。

「あはは、やられちゃいましたね」

 佐祐理からの通信にトルビアックは笑って見せた。

「いや、佐祐理さんの腕もたいしたものだったよ。こっちは3機がかりであれだけてこずったからね」

 これはトルビアックの本心だった。性能の劣るジムコマンドで性能に勝る3機を相手にあれだけ戦ったのだ。佐祐理の腕前はたいした物だといえる。

「さてと、あとは残ったジムだが……」

 改めてレーダーを確認したトルビアックは思わず絶句した。レーダースクリーンには6機のうち4機がすでに判定撃破されており、残る2機も明らかに逃げに入っていた。

「馬鹿な、たった1機のジムに6機のジムコマンドが押されているだと?!」

 そう叫んでみても現実が変わるわけではない。そう言ってる間にまた1機落とされている。

「何てことだ。全機、残るジムに向かう。生半可な相手じゃないぞ、注意しろ!」

 トルビアックの警告は正しかった。迫り来るジムは目の前で激しい機動を見せながらもライフルを放ってきたのだ。その射撃は機体の無茶な機動からは考えられないほどの正確さであり、1機のジム改がこれを受けて脱落してしまった。それを見たジムは迷わずこちらの懐に飛び込んでビーム・サーベルを抜き放った。近接戦でかたをつける気なのだ。

「いいだろう、受けて立ってやる!」

 対するトルビアックも本気だった。ビームサーベルを抜き放つと果敢にジムに向かっていく。両者は最初の一撃を交すと激しい切りあいに入った。鍔迫り合いがおこらないのは舞がジムとガンダムのパワー差を考慮してのことだ。鍔迫り合いなどをすれば非力なジムのほうが必ず負ける。それを知っているからこそ、舞はサーベルを合わせてもすぐに引いてしまうのだ。
 トルビアックは信じられない思いだった。ヘビーガンダムとジムでは本来なら勝負になるはずがない。なのに、目の前のジムはほとんど互角の勝負をしている。こんなことができるパイロットをトルビアックは1人だけ知っている。今この場には居ないはずの男だ。

「あんな人がごろごろしていてたまるか!」

 トルビアックはいささか八つ当たり気味に怒鳴ると勢いに任せて突っ込んだ。ガンダムとジムの違い、総推力の差を生かしての突進だ。ジムの機動性ではこれをかわすことはできない。はずだ。
 ヘビーガンダムが真っ直ぐ突っ込んでくるのを見て舞は一瞬と惑った。砲撃力に勝っている以上、距離をとって砲撃してくると思っていたのだ。それがまさか向こうから、それも高速で突っ込んでくるとは。

「くっ!」

 珍しく焦りの色を浮かべた舞は回避するべく動こうとしたが、チューニングされたジムとヘビーガンダムでは差がありすぎた。ヘビーガンダムの突撃を完全に回避することはできず、タックルをまともに受けてしまったのだ。衝突の衝撃で舞の体が激しく揺さぶられる。シートベルトでは吸収しきれない衝撃が舞を一時的にとはいえ朦朧とさせた。その一瞬が勝敗を分けていた。舞が正気になったとき、目の前にはビームサーベルが突きつけられていたのだ。

「俺の勝ちだな」

 トルビアックが疲れた声で宣言する。

「……うん、中尉の勝ち」

 舞は相変わらず抑揚のない声で返してきた。だが、僅かに悔しげな響きがあった。やがて戦いが終わったのを見て取ったのだろう、周囲にMSが集まってきた。
 その中の1機、佐祐理のジムコマンドが2人の機体に触れてきた。

「あはははは、負けちゃいましたか」
「……次は負けない」

 佐祐理の明るい声に舞が悔しそうに言う。どうやら舞は佐祐理の前だと少しは素直になるらしい。

「でも驚きましたよ〜。接近戦で舞に勝った人、佐祐理は始めて見ました」

 そりゃそうだろう、とトルビアックは思った。自分とて黒い雷と呼ばれた男、まあ、知名度は低いが、接近戦には自信がある。ましてこちらの機体はヘビーガンダムだ。負けるほうがおかしい。だが、機体が同じだったら勝てるという自信はトルビアックにはなかった。
 結局、その後2回模擬戦を行い、倉田中隊は2度ともきっちりと敗北していた。ただ、3回戦目には流石に慣れてきたのか、最初とは別人のようにいい動きをしており、模擬戦の成果はあったといえる。ちなみに、舞はトルビアックに何度も挑みかかったが、遂に打ち勝つことはできなかった。




 カノンがルナツーを離れてグラナダに向かっていくのを追尾している艦隊があった。チベ級とムサイ2隻の小艦隊だ。アヤウラのザイドリッツがカノンを追尾しているのだ。

「ふん、カノンか。我らのドロス級を手本に造られたというが、全く似てないな」
「仕方がありません。あれはどちらかというと戦艦ですから。ドロスは空母とは言っても、実際には移動要塞で、建造の趣旨が違いすぎます」

 アヤウラの呟きに部下が生真面目に返す。部下の意見は一般論なのでアヤウラは面白くなかったが、口に出したのは別のことだった。

「それよりも、たしかな情報なんだろうな。エターナルの連中と目の前の連邦艦隊がグラナダに行くというのは?」
「はい、連邦の動きは逐一教えられておりますし、エターナル隊の動きも通信傍受で大体のところはつかめています。エターナル隊のほうが1日ほど速くグラナダに着くでしょう」

 部下の報告を聞いてアヤウラはしばらく考え込んだが、考えをまとめたのか口を開いた。

「よし、私は奴らより先行してグラナダに行く。ザイドリッツは予定通りエンブロウに向かえ。後のことは全てクルーガーに任せてあるから、奴に従え。間違っても連邦に見つかって戦闘になどなるなよ」

 アヤウラは部下にそう命令すると、同行するメンバーを選別して搭載していた小型の民間宇宙船に乗り込み、商人に偽装して月に向かった。この船は外見は民間船だが、中身は最新の戦闘艦であり、機動性は巡洋艦など勝負にもならないほど優れている。また、気休め程度の武装と2機のMSを搭載している。この船でアヤウラはカノンを追い越すつもりなのだ。


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人物紹介

美坂香里 18歳 女性 曹長
 カノンにやってきたMSパイロットで、北川の指揮する中隊に配属される。名雪とは小さい頃からの親友どうしだったが、4年前に姿を消し、以後は戦争中期まで音信不通だった。MSパイロットとしては超1流と言えるほどの実力を持ち、現在のカノン隊で相手になるのは北川やトルビアック、祐一、舞の4人だけである。

倉田佐祐理 19歳 女性 中尉
 カノンにやってきた新たな中隊指揮官で、士官学校を卒業してまだ1年足らずの中尉である。その為、経験の不足を懸念する声は多い。しかし、指揮官としては有能で、MSの技量に関しても十分なものを持っている。実戦も経験しており、周囲が懸念するほど経験不足というわけではない。彼女の父親は連邦議会の議員であり、そのことも関係して誰もが部下にする事を躊躇っていた所を秋子が引き抜いてきた人材である。

川澄舞 19歳 女性 少尉
 カノンにやってきたMSパイロットで、佐祐理の親友。MSパイロットとしては天才で、今まで実戦、訓練を問わず負け知らずの実力を持つ。特に白兵戦闘に強く、白兵戦ではカノン隊でも最強の実力を持っている(トルクが勝てたのは機体のおかげ)。士官学校に入るまでの経歴が全く不明という人物だが、先の戦争のおかげで個人データなどは多くが失われており、経歴不明など珍しくも無いので、それほど問題視されていない。また、彼女は個人戦闘で銃ではなく、剣を使うということで有名でもある。

天沢郁美 18歳 女性 少尉
 シアンがルナツーで出会った迷子の女性仕官。久瀬中将の部下らしいが、詳しいことは分からない。その方面に疎いシアンが目を見張るほどの美少女だが、方向音痴であったり、さらりときついことを言ったりと、なかなかに只者ではないところを見せる。


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機体解説

ここでは、作品中に登場した機体を簡単に解説しています。といっても、データよりも作品や機体の特製から見た実際の印象が中心です。なお、機体の設定は本作品の内容にあわせて、多少手が加えられることがあります。また、オフィシャルの機体や艦船以外に、オリジナルの機体や艦船、改造機もここで解説していきます。

RGM79 ジム
兵装 ビームスプレーガン 又は90mmマシンガン 360mmバズーカ
   ビームサーベル
   頭部60mmバルカンX2
   シールド
<説明> 
 連邦軍初の正式量産機。よく弱い弱いと言われるが、実際にはかなり強力な機体。量産型MSとして初めて対MS戦を想定して開発された機体で、ビームサーベルと手持ちのシールドがそれを証明している。また、ビームスプレーガンはジェネレーター出力の問題と、熟練パイロットが少なかったという事情から簡易で命中率が高いという事で採用された兵装である。
 しかし、往年の名機も本作中では旧式機であり、すでに生産は終了しているが、未だに多くが前線にあり、どこでも見ることができる。

RGM79−GS ジムコマンドGS
兵装 ビームガン 又は90mmマシンガン 360mmバズーカ
   ビームサーベルX2
   頭部60mmバルカンX2
   シールド
<説明>
 ジムのマイナーバージョン。ジムスナイパーカスタムなどで蓄積されたデータをもとに改良された機体で、ジムよりも基本性能が僅かながら向上している。しかし、それほど顕著な差があるわけではない。終戦間際に生産が開始され、現在にわたって生産されており、それなりの数が実戦部隊に配備されている。

RGM−79C ジム改
兵装 90mmマシンガン 又は360mmバズーカ
   ビームサーベル
   頭部60mmバルカンX2
<説明>
 ジムコマンド系列機をベースにジムを再設計した機体。これといった特徴が無いが、全体の性能がジムよりも数段向上しており、ジムの後継機として大量生産が始まっている。現在は少数が各部隊に少しずつ配備されているに過ぎないが、徐々に全部隊がこれに機種改変する予定になっている。

FA−78−2 ヘビーガンダム
兵装 ビームライフル 又はヘビーランチャー
   右肩固定ビームキャノン
   ビームサーベル
   頭部60mmバルカンX2
<説明>
 トルビアックの愛機で、大火力重装甲がうりの機体。トルビアックはこの機体に更に2連装グレネードランチャーを腰の左右に増設している。本来は赤茶色のカラーリングだが、トルビアックの機体は黒を基調としている。この機体はFA計画によって開発された機体だが、いざ作ってみると使うような局面が無く、3機が試作されたのみに終わった。

サラミス級巡洋艦
全長228メートル
兵装 単装メガ粒子砲6基
   6連ミサイルランチャー2基
   連装機銃6基
搭載機数:なし
<説明>
 1年戦争前に大量に建造されたサラミス級で現在も多数が就役している。しかし、MSを搭載することができず、現在ではたんなる旧式艦でしかない。このタイプは主にコロニー駐留艦隊や辺境の警備艦隊に配備されている。また、兵装を目的に合わせて特化した改装を施されている艦もある。

サラミス級巡洋艦 バッチA
全長228メートル
兵装 単装メガ粒子砲3基
   6連ミサイルランチャー2基
   連装機銃6基
搭載機数:3機
<説明>
 サラミスA型とも言われ、ビンソン計画で建造されたタイプと、従来の型の改装型の2種類がある。火力こそ低下しているが、MSを搭載できる点で現代戦にも対応できる艦となっている。しかし、この艦はMSを運搬できるだけで、MSの本格的な整備といった母艦機能は持っておらず、ジオンのムサイ級にはやや劣っている。このタイプはソロモン戦とア・バオア・クー戦で多くが戦没しており、現在はそれほど多くない。

カノン
全長583メートル 
兵装 2連メガ粒子砲4基
   単装メガ粒子砲8基
   2連装機銃36基
   対艦ミサイル発射管16門
   対空6連装ミサイルランチャー6基
   大口径レールキャノン4門
   プロメテウス
搭載機数:120機
<説明>
 終戦に伴い押収した資料から得られたドロス級空母のデータを元に、同級を超える艦艇を宇宙艦隊が要求したことにより、連邦軍が設計した戦闘空母で、ドロス級、ペガサス級、マゼラン級の設計が生かされている。ドロスよりは遥かにスマートで、戦闘艦として見るならドロスよりも優れている。また、ドロス級の特徴であるMS生産施設や、ペガサス級の特徴である大気圏突入、離脱、航行能力は削られており、変わりにサイズを抑えながらMS運用能力と戦闘艦としての能力向上に努めた結果、全長こそドロス以上であるものの、遥かにスマートな流線型になり、大幅な小型化に成功している。
 この艦の最大の特徴はMSの運用能力と、優れた旗艦設備にある。この艦にはMSなら120機、戦闘機やボールならその2〜3倍の機数を搭載、整備できるだけのスペースと設備があり、複数の艦隊を単艦で指揮できるだけの旗艦設備がある。また、大量のMSや航宙機を運用するために3基のMSカタパルト・デッキと、2基の着艦用デッキを装備しており、さらにグワジン級にも撃ち勝てるだけの砲撃力を備えている。
本来は第1艦隊に配属されるはずだったが、軍高官同士の足の引っ張り合いにより行き場がなくなったところを秋子が貰い受けてしまった。
 また、通常は船体下部に収納されている超大型エネルギー兵器、プロメテウスはカノンの全エネルギーを使って発射される超兵器で、史上最強の艦載砲である。カノンの莫大なエネルギーの全てを使用するだけあって、その射程、効果範囲は凄まじく、直撃を受けたらたとえグワジン級の戦艦でも蒸発してしまう。ただ、再度の発射にはしばらくの時間が必要であり、またその威力ゆえ船体にかかる負担も凄まじく、準備が不十分だったり、船体に損傷がある状態で撃てばカノンにも何らかのダメージが来ることになるという、諸刃の剣でもある。


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後書き
ジム改 香里ちゃん、舞ちゃん、佐祐理さん登場〜
香里    なんか私、暗くない?
ジム改 おや、今日は君かね
香里  日替わりでしょう
ジム改 まあいいけどね。君が暗めな理由はいずれ分かるだろう
香里  ところで、私って強いのかしら?
ジム改 うーん、強い予定だけどねえ、まあ、君以上に強い奴が何人もいるからねえ、トップにはなれないな
香里  そう、まあ別にいいけど。そういえば、栞はどうなるのよ?
ジム改 うむ、栞は現在入院中だ。このまま行けば遠からずあの世に行くだろう
香里  何ですって?
ジム改 ・・・どこから出した、そのメリケンサック?
香里  いいじゃない、私の基本装備でしょう? 聖別化されてるからアンデッドにも有効だし
ジム改 それは別の話だ! ここはガンダムなの。
香里  後書きだからいいのよ
ジム改 む、無茶苦茶な理由だな
香里  じゃあ、さようなら

    グシャ、バキ!

香里  ふう、いい事をした後は気持ちがいいわ。それじゃ、私の次の活躍、期待しててね〜