第4章 月の裏側




 ルナツーを出撃したカノン隊は月の裏側、グラナダでフレーザー大佐の艦隊と合流していた。秋子はここで2日間補給と整備を行うこととし、手の空いた乗組員に休養を与えた。これを伝えられた者たちは大いに喜び、我先にグラナダに飛び出していった。その中には祐一、北川、名雪、香里、あゆの5人もいる。はずだったのだが、何故か祐一と北川、トルビアックの3人はブリーフィング・ルームで一つのテーブルに向かっていた。3人の脇には大量の書類が積まれている。名雪や香里、あゆと彼らの違いはただ一つ、彼らが中隊長だということだ。加えて彼らは一様にこの手の作業を苦手としている。同僚である佐祐理はきちんと書類整理を行っており、すでに舞と一緒に遊びに行っている。
 3人ともすでにその精神は限界に達しつつあった。今までの付けが回ってきただけなのだが、若くて健康な彼らが、せっかくの上陸のチャンスを前に男だけで雁首をそろえて机に向かってもくもくと書類を書いている。これは3人にとって精神的な拷問に近く、特に祐一は切れかかっていた。

「なあ北川」
「なんだ、相沢?」

 冷静な祐一の声に疲れきった北川が応じる。

「何かが間違ってると思わないか?」
「ああ、俺もそう思う」
「どうだ、ここは共に青春を謳歌しに行こうと思うのだが」

 祐一の誘いは北川にとって悪魔の囁きに等しかったが、すんでのところで北川はこの誘いを振り切った。

「いや、俺はここで書類整理をしていよう」
「何でだ?せっかくの上陸のチャンスなんだぞ。ここでくじけたら男が廃るだろう!」
「そうだぞ北川、俺も相沢に賛成だ」

 祐一の勢いにトルビアックも同調する。だが、なぜか北川は悲しそうな表情を浮かべて2人の肩を叩いた。

「いや、俺はいいんだ。2人とも、頑張れよ」
「「・・・・・・なにをだ?」」

 北川の意味深なせりふに2人は不思議そうに聞き返したが、北川は顔を背けただけで答えなかった。
 そこに、2人の後ろから声がかけられた。

「皆さん、疲れたでしょう。お茶にしませんか」

 声をかけてきたのは秋子だった。それに気付いた2人は戦慄して振り返った。

「あ、あ、秋子さん・・・」
「み、水瀬司令・・・」
「あらあら、どうしたんです2人とも、そんな怖い顔をして」

 2人の恐怖に引きつった表情を見て秋子がにこやかに問いただす。しかし、2人は気付いていた。秋子のかすかに引きつった目尻に。それだけに、2人は引きつった笑顔を浮かべて頷くしかなかった。
 このあと、祐一とトルビアックは秋子の作ってくれたジャムサンドを食べて北川に医務室に運び込まれていた。特に初めて謎ジャムを食べたトルビアックの症状はひどく、時々うわごとで「永遠があるんだ」とか呟いている。


 祐一たちが死にかけているころ、名雪、香里、あゆの3人はグラナダの街を歩いていた。3人の手には買い込んだ品が詰まった紙袋が下がっている。

「それにしても、祐一たちも連れてくれば良かったね」
「相沢君と北川君が悪いんでしょ。きちんとやることをやっておけば良かったのに」
「でも、大丈夫かな、祐一君たち。暴れたりしてないかな?」
 
 あゆの何気ない一言に名雪と香里の笑顔が引きつる。

「だ、大丈夫だよ・・多分・・」
「・・多分、ね・・」
「・・うぐぅ・・」

 3人とも自信がなかったのだ。特に祐一は何をするか予想がつかない。まさか、ストレスの余り暴れてはいないだろうか。などのめちゃくちゃな想像が頭をよぎる。よもや、祐一とトルビアックが謎ジャムを食べて昏倒し、トルビアックが永遠の世界に片足を突っ込んでいるとは夢にも思うまい。
 なにやら怖い考えが頭をよぎり続けたため、あゆが違う話題に切り替えた。

「ところで、香里さんて1年戦争に参加してたんだよね?」
「ええ、そうよ。秋子さんと一緒に日本地区の防衛をしていたわ。星1号作戦にもア・バオア・クー戦にも出てる」

 香里は昔を思い出そうとするかのように懐かしそうな表情を浮かべる。

「秋子さんといたんだ。昔の秋子さんってどんな人だったの?」
「あ、それ私も聞きたい」

 あゆばかりか名雪までが興味津々と言う顔で詰め寄ってくる。香里は小さく笑うと頷いた。

「そうね、私は秋子さんに頼んで連邦軍に志願させてもらったの。そして秋子さんの部隊に配属されて、最初はセイバーフィッシュ戦闘機、次に陸戦ジムに乗っていたわね」

 香里の目が細められる。陸戦ジムというのはジム・シリーズの最初の機体で、宇宙用のE型という同系機が存在している。同時期に配備されていた陸戦型ガンダムに比べると見劣りするものの、ルナ・チタニウム製の装甲を持ち、高出力のジェネレーターを搭載するなど、後のジム系列機よりはガンダムに近い機体である。

「その時、秋子さんはオレンジ色に塗装された陸戦型ガンダムに乗っていてね。日本地区のジオン軍からは「オレンジの恐怖」って呼ばれて恐れられていたわ。まあ、味方の私が言うのもなんだけど、確かに凄かったわね。まるで噂のニュータイプみたいだった」

 そこで香里は話を区切った。なにやら表情が暗くなる。

「でも、ジオン軍にも凄いパイロットがいてね。連邦軍の物量に任せた反撃をたった1機で支えていたグフ・カスタムがいたのよ。流石の秋子さんでもそのグフ・カスタム相手だと苦戦していてね、私も含めたMS隊総がかりで何とか追い払うことができたの」
「お母さん以上って、凄い人がいるんだねえ」

 名雪が素直に感心している。香里もそれに頷いてみせる。

「ええ、名前は分からなかったんだけどね」

 香里は肩をすくめて軽く首を振る。あゆもなにやらしきりに感心している。
 グラナダの中心街を抜けたあたりで香里が足を止めた。

「ごめん、私はこっちに用があるから」

 その一言であゆと名雪は全てを察したようだ。

「栞ちゃん、だね」
「ええ、お見舞いにくらいは行ってあげないとね」
「ボク達もいっしょに行こうか?」
「いいえ、今日は私だけで行くわ。いろいろ話したいこともあるし」

 そう言われて名雪とあゆは黙って頷いた。姉妹二人っきりで話したいこともあるのだろう。
 2人が宇宙港の方に歩いていったのを見送って、香里も自分の目的地、総合病院に向かって歩き出した。総合病院はグラナダの中心街から外れた巨大な公園の中にある。病院ということで、周囲の環境を心安らぐものにしているのだ。
 香里は病院に入ると何度も通った病室へと足早に進んでいった。久しぶりに栞に会える。そのことが嬉しくて仕方がないのだ。
 栞の病室の前まで来たところで一息入れ、身だしなみをざっと整える。それからおもむろに扉をノックした。

「どなたですか?」
「栞、入るわよ」

 そう言って扉を開けると、栞が驚いた表情でこっちを見ていた。

「お姉ちゃん!!」
「久しぶりね栞、元気だった。て、言うのはおかしいか」
「はい、病人は普通元気じゃありません」

 そう言って栞はにっこりと微笑んで見せた。香里もつられて笑顔を浮かべる。
 近くにあった椅子を寄せて栞の傍に座る。

「でも、本当に久しぶりね。最後に会ったのが3ヶ月前だもの」
「お姉ちゃんは今、どこで働いてるんですか?」
「私?私は今は秋子さんの艦隊にいるわ。名雪もあゆちゃんも一緒よ」
「え!名雪さんやあゆさんとですか?う〜、楽しそうです」

 栞がうらやましそうに唸る。その様子を見て香里はくすくす笑った。それから新たに知り合った人たちを紹介していく。その話が進むにつれて栞の顔はますますむくれていった。

「う〜〜、そんなに楽しそうに話すお姉ちゃん、嫌いです」
「あら、栞も早く良くなれば仲間には入れるわよ?」
「えう〜〜、頑張ってみます」
「そうよ、頑張らなきゃ」

 香里が励ますと栞が笑顔で大きく頷いた。
 やがて、看護婦が薬を持って病室に入ってきたため、香里は栞の病室を後にした。次はいつこれるか分からないが、栞は笑顔で送り出してくれた。
 病院を後にした香里は公園のベンチに座って空を見上げていた。月都市には天井があるのだが、この階層はちゃんと空が作られている。もちろん視覚的なものだが、気分だけでもというのだろう。だが、そんな青い空も香里の心を晴らしてはくれなかった。
 どうして、どうしてあの子があんな目に会わなくちゃいけないの?私は今もこうして歩き回れるのに。あの時、さらわれたのが幸運だったとでも言うの!?
 香里は自分の激しい葛藤のために、近づいてくる人影に気付いていなかった。その人影は香里のベンチの傍らに立つと香里に話し掛けてきた。

「隣、よろしいですかな?」
「・・・すいませんが、他を当たってください・・・」

 香里は感情を抑えてやんわりと断ったが、その男はさらに話し掛けてきた。

「まあ、そう言わずに、香里さん」
「っ!!どうして私に名前を!」
「おや、もう忘れたのかな。俺の顔を?」

 そう言って男はにやりと笑って見せた。香里は少し考え、そして驚愕した。

「貴方は、私をさらった、ジオンの工作員!」
「思い出したか。まあ、久しぶりというところかな」

 そう言って隣に座り込む。香里は激怒して怒鳴ろうとしたが男は機先を制してそれを抑えた。

「まあ話を聞け。今日はお前と取引をしに来た」
「・・・取引ですって?」

 香里の押し殺した殺気混じりの声を気にする風でもなく、アヤウラはタバコを出して火をつけ、大きく吸った。

「そうだ、ああ、私はアヤウラ・イスタス中佐だ。アヤウラと呼んでくれ」
「遠慮しておくわ。イスタス中佐」

 あっさりと断られてアヤウラは少し寂しそうだった。

「ま、まあいい。俺が欲しいのはお前が研究所から持ち出したデータだ。それさえ手に入れば2度とお前の前には現れん」
「・・・それを信じろというわけ?」
「信じるかどうかは自由だ」
「・・・それで、代わりになにをくれるのかしら?」

 香里が興味を示したのを見てアヤウラは満足そうに目を細めた。

「お前には妹がいるな。何でも不治の病だそうじゃないか」
「どうしてそのことを!!」
「私は情報の世界に生きている人間だからな。ところで、妹はかわいいか?」
「あたりまえよ!!」
「助けたいとは思わないか?」
「それってどういう意味?」

 香里が訝しげに問う。アヤウラはやや間を置いてから答えた。
「・・・お前の妹の病気はジオン公国の開発したウィルスによるものだ。そして、そのウィルスの特効薬もわが国は開発していた」
「ま、まさか、その薬があるとでも言うの!?」
「・・・どうだ、渡すか?」

 香里は悩んだ。だが、すぐに結論は出た。香里にとって、妹の幸せはいかなる物にも替え難いのだから。

「・・・その話に間違いはないでしょうね」
「信じる信じないはお前の自由だ」
「分かったわ。でも、今日は無理ね」
「それは承知している。作戦が終わればカノンはまたグラナダに来る。その時に渡してもらおう。場所と時間はこちらから連絡する。言っておくが、この事は誰にも話すなよ」
「・・・分かってるわ・・・」

 香里の返事を聞いてアヤウラはベンチから立ち上がり、公園の外に向かって歩き去っていった。


 死にかけていた祐一と、永遠の世界に片足を突っ込んでいたトルビアックは無事に生還したものの、3人は今度は別の問題に直面していた。カノン艦内は広い。その中には祐一や北川ですら知らない幾つも区画が存在する。封鎖区画と呼ばれる部分で、秋子以下限られた者しか入ることを許されない謎の区画だ。格納庫のかなりのスペースをその区画が占領しており、なにが入っているのかは誰も知らない。
 その区画に進入しようと無謀な計画を実行に移した3人は、あっさりと侵入できたことにむしろ不気味さを感じてさえいた。もっとも、計画とは言っても、やった事といえば封鎖区画の扉をあけただけだが。
 3人が入っているのは封鎖区画の1つ、第6格納庫だ。

「てっきり、鍵がかかってるなり警報が鳴るなりすると思ったんだが」

 祐一が落胆したように呟く。どうやら期待していたらしい。

「でも、何があるのかと思えば、ジムやザクが数機並んでるだけか」

 北川も残念そうに言う。こいつも期待していたらしい。

「ああ、ガンダムタイプでもあると思ったんだが」

 トルビアックまでが残念そうに言う。
 そうしていても仕方がないので3人は薄暗い部屋を歩いて置いてある機体に歩み寄っていった。そこには漆黒ともいえるカラーリングを施された、どこか奇妙なザクと、ジム系列に間違いはないが、見たこともない機体が3機横たえられている。

「なんだ、これは?」
「さあ?俺も分からんぞ」

 祐一と北川がMSから目を話さずに言い合う。トルビアックだけがしきりに首をひねっていた。

「どうしたトルク?見たことでもあるのか?」

 北川がトルビアックを覗き込む。

「いや、見たことはないんだが。このザク、俺がソロモンで戦った化け物に雰囲気が似ているんだ」
「化け物?ビグザムとか言うMAのことか?」

 祐一が問いただすがトルビアックは頭を横に振った。

「いや、あれも化け物だが、それじゃない。俺がソロモンで戦った相手、形式不明の新型だったんだが、色といい、纏ってる雰囲気といい、そっくりだ」

 トルビアックがザクを見て不気味そうに言う。

「あれが何だったのか、正直俺にも分からんが、化け物だって事は言える。奴はソロモンの主戦場から外れた所に陣取って外から進入してきた第27,28戦隊に襲い掛かってきたんだが、俺も含めたMS隊は奴1機に全滅させられ、艦隊も1隻残らず沈められた。生き残ったのは機体が爆発を免れ、近くの岩礁に避難できたからだ。捜索隊が発見してくれなければ窒息死だったな」

 その話に祐一と北川は色を失った。

「でも、何でそんな化け物の話が伝わってないんだ。ビグザムやソロモンの悪夢の話は有名なのに?」
「誰も信じなかったのさ。無理もない。たった1機のMSがジムやボールを30機以上も撃墜し、戦艦2隻、巡洋艦6隻を沈めたなんて、誰が信じられる?」

 トルビアックが自嘲気味に笑ってみせる。その言葉に祐一も北川も納得した。自分達だって素直には信じられないだろう。だげ、目の前にある未知のジム3機と、全長20メートル以上の巨体を誇る漆黒のザク、これらがトルビアックの話を信じさせた。

「だけど、何でそんな物がこの船にあるんだ?ジムは連邦製だから分かるけど、ザクはジオンの機体だろ?!」

 北川が当然の疑問をぶつけてくる。祐一もトルビアックも頷いた。

「そうだな、どうしてジオンの機体がここにあるんだ?」
「戦後に接収したのか?それとも、連邦で作ったザクタイプのMSなのか?」
「どちらも違いますね」

 後ろからの答えに3人はおどろいて振り返った。そこには困った笑顔で頬に手を当てている秋子がいた。

「祐一さん、ここは立ち入り禁止のはずですけど」
「あ、いや、その・・・」

 秋子に笑顔で問われて祐一が困り果てる。だが、そこで秋子は小さく笑い出した。

「ふふふふふ、冗談ですよ。いつかは話そうと思っていましたから、丁度いいかもしれません」

 そう言って秋子は3人に並んだ。

「この機体はシェイド・ザク。ジオンからの亡命者が土産として持ってきた機体です。その隣に並んでいるジムはシェイド・ザクの技術を取り入れて製作された試験機です。右から反応速度を再現した機体。機動性を再現した機体。防御力を再現した機体です」
「なんで、3種類に分けたんですか?」

 トルビアックが疑問をぶつけてくる。

「それは、この機体の性能が尋常なものではないからです。当時の連邦にはこの機体を再現するだけの技術力はありませんでした」
「それで、3種類の機体を作ったんですか。でも、どうしてこんな所で死蔵してるんです?」
「それは、この機体が使い物にならないからですよ」
「使い物にならない?」 

 秋子の言葉に祐一が疑問を持つ。秋子は小さく頷いた。

「そう、この機体は人間に扱える機体ではありません。防御力を再現した機体はともかく、反応速度を再現した機体は過敏すぎて、ニュータイプと呼ばれるようなパイロットでなくてはまともに動かせません。また、機動性を再現した機体は人間の限界を超えた加速率とスラスター推力を持っています。残念ですが、これに乗ったテストパイロットは肋骨数本を折り、内臓に大きなダメージを受けて入院し、数日後に死亡しました」

 秋子の声が格納庫に重く響き渡る。3人はしばらくの間何も言えなかった。やがて、永遠とも思える沈黙の後に、トルビアックが口を開いた。

「何故、何故そんな機体を、ジオンは作ったんでしょうか?そんな化け物を扱えるパイロットがいるとでも?」
「正確なところは分かりません。ただ、この機体を持ってきた亡命者もこの機体に乗ってきただけで、使いこなせていた訳ではありません。ただ、その人が言うには、この機体を扱えるパイロットはジオンで造られている。と言うことです」
「造られている?」

 北川が眉をひそめる。

「はい、強化人間、とでも言うんでしょうか。そんなパイロットが造られていたそうです。それが事実かどうかは確認できませんでしたが、いくつかの事実から推測することはできます。たとえばトルビアックさん。貴方が出会った漆黒のMS、そして私が日本で戦った漆黒のグフ・カスタム。そしてここにある漆黒のザク。これらはそのパイロットと機体が存在していることを示しています」
「もしそうなら、どうしてジオンはこれを量産しなかったんでしょう?」
「たぶん、完全じゃなかったんじゃないかしら。パイロットの強化の成功率が低いとか、1人を強化するのに莫大な予算がかかるとかで、割に合わないと思ったんじゃないかしら。でも、このザクの性能は驚異的ですよ。過剰なほどの装甲を施され、重量化した機体の機動性の低下を強力なスラスターユニットで無理やり補い、MA並みのジェネレーターを積むことで強力なビーム砲が使える。そのおかげでかなり大型化してますが、使いこなせれば敵は無いでしょうね」

 秋子も自信がなさそうだ。だが、1つだけ言えることがある。もし、この機体が量産されて、連邦の前に立ちはだかってきたなら、連邦は1年戦争に負けていたということだ。
「さてと、そろそろここを閉めますよ。あんまり開けておくと誰かが入ってきてしまうかもしれませんから」
 秋子が3人を追い出しにかかる。3人はまだ聞きたいことがあったのだが、後が怖いので素直に出て行くことにした。やはり、謎ジャムが怖いのだろう。


 香里と別れた名雪達は遅めの昼食を食べようと手近な食べ物屋に入っていった。普通ならレストランや喫茶店というところを、あえて食堂風の所に入るのが2人の凄いところだ。
 店に入った2人はそこで凄い光景を目にした。7人の先客がいたのだが、その客の1人が異常な量を食べていたのだ。見た感じはお嬢さまなのだが、どう見ても体の許容量を無視した量を食べている。他の6人は皆呆然と、あるいは蒼白になってそれを見つめている。

「・・・あゆちゃん、これって一体・・・」
「うぐぅ、ボクにも分からないよ」

 2人もまた店に入ったところで呆然と立ち尽くしていた。そうしてる間にもその女性はどんぶりを空にして積み上げる。

「おじさん、あと天丼大盛り3つにカツ丼大盛り2つお願い〜」
「あいよぉ!!」

 奥から威勢のいい声が帰ってくる。それを聞いた男性が顔を真っ青にして口を開いた。

「あ、あの、みさき先輩。もう、これくらいにしたほうが・・・」
「う〜ん、そうだね、おなかいっぱいになっちゃうと後が辛いかもね」
「そう、そうですよ」
「うん、浩平君の言う通り、注文した分で止めるよ」

 にっこりと微笑むみさきに、周囲は一斉に突っ伏す。同席していたもう1人の男はレシートを見ながら涙を流している。

「予算が、持ってきた予算が消えていく〜」
「・・・世の中には、凄い人がいるんだね・・・」
「・・・うん、ボク達なんか足元にも及ばないよ・・・」

 昼食をとるのも忘れ、2人は呆然と目の前の怪現象に見入っていた。それに気付いたのだろう。1人の女性がはにかんだ笑顔で頭を下げてきた。

「あ、すいません、驚かせちゃいましたか」
「あ、いえ・・・はい」

 流石に違うとは言えず、名雪は頷いた。それを聞いた女性は深深と溜息をついた。

「すいません。まだしばらくかかりそうなんで、気にしないで食べてください」
「う〜、瑞佳ちゃん、酷いこと言ってるよ」

 みさきが箸を握り締めて言う。だが、瑞佳はさらに深い溜息をついた。

「そう思うんでしたら、もう少し減らしてください」
「・・・う〜〜・・・」

 何も言い返せず、みさきは運ばれてきた天丼をつつき始めた。ちなみに、みさきが食べた量はグラナダの歴史に残るほどのものだったらしい。



 グラナダのドッグに停泊しているカノンは目立つためか、入港して以来多くの見物客が来ていた。その多くは宇宙港の従業員だが、中には外部から入っている業者などもいる。これらを全て抑えることは不可能で、秋子もそのことは良く分かっており、見学できる場所を設けてそこからなら見学を許可した。流石に艦内には入れなかったが。
 その観客に混じっていた佐祐理と舞は余りの人の多さに少々辟易していた。

「はえ〜、たくさんいますね〜」
「・・・佐祐理、苦しい・・・」

 佐祐理は意外と器用に人の流れをかわしていたが、舞は人波に押されて思うように動けないようだ。流石の佐祐理にも人波をどかすことはできるはずも無く、舞はだんだんと人波の中に消えていってしまった。
 何とか人波から抜け出した佐祐理は息を整えるのに少し苦労していた。

「はぁ、はぁ、少し、運動、不足、ですか」

 壁際で少し休むと、周囲を見渡して舞の姿を探したが、残念ながらどこにも見えなかった。

「舞、何処に行ってしまったんでしょうねぇ」

 流石に再びこの流れに飛び込む気にはなれず、やむなく壁沿いに人の流れが無くなる所まで脱出することにした。
 ようやく見学者がいなくなったところで佐祐理は一息ついた。その時、誰かに肩を叩かれた。

「はい、舞ですか?」

 振り向くとはにかんだ笑顔で見知った男が立っていた。

「あ、久瀬さん」
「久しぶりだね、倉田さん」

 この男は久瀬隆之大尉、佐祐理と士官学校のMS実技2位を争った男で、学年の次席だ。ちなみに、主席は佐祐理だった。佐祐理とは家同士の付き合いもある。周囲からは親の七光りで出世した男とも言われている。

「しかし、どうしたんだい、こんな所で溜息なんかついて?」
「あ、それは、舞とはぐれちゃいまして」
「はぐれた?ああ、見学者のせいか」

 佐祐理の返事を聞いて久瀬は小さく笑った。

「なるほどね、それなら、川澄さんを探すとしようか」

 そう言って久瀬は佐祐理の手を取った。佐祐理は驚いたが久瀬はかまわずに人波に入っていった。

「あ、あの、久瀬さん?」
「手を離さないほうがいい。離すと、はぐれてしまうからね」

 久瀬の真剣な表情を見て佐祐理は顔も手も赤くして何も言えなくなってしまった。それが手を握られてることへの気恥ずかしさなのか、久瀬の顔を見てのものなのかは佐祐理にも分かってはいなかったが。




 一方、佐祐理とはぐれた舞は困り果てた顔で歩いていた。何しろ、ようやく人波を抜けてみれば見たこともない区画に出てしまったのだから。

「・・・佐祐理はいないし、ここも何処だか分からない」

 口調からは感じられないが、舞はこの上なく焦っていたのだ。今まで常に佐祐理といっしょに行動していた舞は、佐祐理と分かれて1人で行動するということが無かっただけに、1人で見知らぬ所に放り出されたのが不安でしょうがないのだ。
 その時、奥から足音が聞こえてきた。そちらに不安げな視線を向けると、3人の男がやってきた。来ている服から軍人やドッグの従業員ではない。だが、舞はそのうちの1人をどこかで見たことがあるような気がした。
 相手も舞に気付いたのだろう。足を止める。特に、舞が気になった男が驚いたような顔になり、ついで嫌らしいい笑いを浮かべた。

「これはこれは、連邦軍の中尉さん。すいませんが、入港した新型艦というのは何処ですか?」

 男の声を聞いた舞は全身に悪寒が走るのを感じた。間違いない、私はこの男に会っている。だが、一体何処で?

「・・・分からない、私は迷子だから」
「ほう、そうですか。仕方ありません。自分達で探すとしましょう」
 失礼、と言って3人は舞の脇を通り過ぎようとする。
「待って」
「・・・何か?」
「・・・どこかで、会ったことが無かった?」
「・・・・・・」

 男は振り向いた。

「さあ、知りませんな。何故そうお思いで?」
「・・・何処かであった事があるような気がする」

 舞は必死に記憶を掘り返していた。この顔、この声、この悪寒、昔に感じたことがある。あれは確か・・・
 舞の放つ気配に変化が起こったことを感じたアヤウラは迷わず駆け出した。彼は舞を知っていた。そして、舞が自分では絶対に勝てない相手であることも知っていた。
 舞もようやくアヤウラを思い出したのだろう。怒りの感情を隠そうともせずに襲い掛かってきた。アヤウラの部下の1人が銃を抜いて発砲したが、舞はそれをいとも簡単にかわした。だが、その一瞬の隙にアヤウラは別のブロックに逃げ込んでしまった。
 銃声を聞いたトルビアックと祐一は頷き合うとそちらに向けて走り出した。2人とも拳銃を抜いて安全装置を外す。場合によっては、侵入者との銃撃戦もありえるからだ。
 2人は意外にあっさりと現場についたが、そこに居たのは瞳を金色に輝かす舞と、倒れている男が1人だった。どうやらこの男が発砲したらしく、近くにジオンの正式拳銃が転がっている。

「ま、舞、何があったんだ」

 トルビアックがかすれた声で聞く。舞の発する殺気のようなものに気圧されているのだ。どうやら祐一も同じらしく、引きつった表情で現場を見ている。舞はしばらく身動ぎもしなかったが、やがて一息ついた。瞳の色も元の黒に戻っていく。

「・・・ジオンの侵入者がいた。1人は倒したけど、2人逃げ出した」
「ジオンのスパイが、畜生、そういうことか」

 トルビアックは事態を悟ると集まってきた警備兵にスパイの捜索を命じた。

「このドッグから外に出る通路は限られている。必ず捕まえろ!」
「はっ!!」

 警備兵達が散っていく、何人かは倒れている男を担いで連れて行った。現場には舞とトルビアック、祐一の3人が残っていた。

「それで舞、一つ聞いていいか?」
「駄目」
「・・・・・・」

 あっさりと言われてトルビアックが沈黙する。そこに、祐一が声をかけてきた。

「なあ、トルク、一つ聞いていいか?」
「何だ?」
「この少尉、誰だ?」

 祐一の質問にトルビアックは疲れたような表情になった。

「・・・川澄舞少尉、倉田佐祐理中尉の隊のエースだ」
「ほう、その川澄少尉と、随分と親しそうだな」
「・・・前に模擬戦で佐祐理さんの隊と何度か戦ったからな。その時に知り合った」
「なるほど」

 納得したのか、祐一は舞の方に視線を向けた。
「よろしく川澄少尉。俺は相沢祐一中尉だ。俺のことは祐一でいいぞ」
「・・・なら、私も舞でいい」

 祐一と舞の間に奇妙な空気が流れていた。だが、すぐに舞はトルクに向き直った。

「どうしてここに」
「こんな所で銃声を聞けば、何事かと思うさ」

 トルビアックは肩をすくめて言う。舞も納得して頷いた。だが、トルビアックの厳しい表情を見て舞も表情を引き締めた。

「舞、さっきの金色の瞳はなんなんだ?それにあの殺気、説明してくれないかな?」
「・・・・・・」
「舞」
「・・・ごめん、今はまだ言えない」
「今は、ということは、そのうち話してくれるんだな」

 トルビアックに聞かれた舞は頷いた。それを見てトルビアックも表情を和らげた。

「分かった、今は聞かないことにしよう」

 その時、近付いて来る新しい足音を聞いた。そちらを向くと、佐祐理と見知らぬ男が走ってきている。

「佐祐理さん?」
「ああ、トルクさんも舞も、相沢中尉も無事でしたか」

 佐祐理がにっこりと微笑む。その後ろから男が話し掛けてきた。

「トルク中尉、だったかな。何があったんだ?」
「・・・?あんたは?」
「ああ、僕は久瀬隆之大尉、ここに入港している戦艦リシュリューのMSパイロットだ」

 言われてみれば軍服の襟には大尉の階級章がついている。それに気付いたトルビアックは姿勢を正した。

「これは失礼を。私はトルビアック・アルハンブル中尉です。実は、川澄少尉がジオンのスパイを発見し、戦闘になったらしく、現在警備兵を動員して捜索させています」
「そうか、それは大変だったな。私も艦に戻った方が良さそうだ。君達も一度戻った方がいいだろう」

 そう言って久瀬は来た道を引き返していく。

「倉田さん、川澄さんも見つかったようだし、僕はこれで失礼するよ」
「あ、はい、どうもありがとうございました」

 そう言って佐祐理は久瀬に深深とお辞儀をする。久瀬はやさしげに笑うと歩いていった。
 久瀬を見送ったトルビアックと祐一は佐祐理と舞に向き直った。

「しかし佐祐理さん、どうして久瀬大尉と一緒に?」
「あはは―、私と舞は、久瀬さんと士官学校の同期なんですよ」
「へえ、しかし、あれが久瀬大尉、か」

 佐祐理の返事を聞いて祐一が複雑そうな顔で呟く。

「・・・祐一、どうしたの?」
「ああ、いやな、久瀬大尉には何かと噂があるからな。親の七光りだとか、実力も無いのに威張ってるとかな」

 祐一の答えを聞いてトルビアックも頷く。そんな2人に舞が無言でチョップを入れた。

「「ぐお、何をするんだ舞」」
「・・・久瀬は弱くないから・・・」

 2人同時の非難に舞は動じずに答える。

「そうですね。久瀬さんは弱くはありませんよ。MSの成績は舞の次に良かったですし、全体の成績も学年2位でしたからね」

 佐祐理の説明にトルビアックと祐一が驚く。

「なに、じゃああいつは佐祐理さんより強いのか!?」
「ええ、そうですよ」

 佐祐理はあっさりと言う。佐祐理の答えに2人の中で久瀬の評価がだいぶ修正されていった。しかし、久瀬が現在やっていることを知れば、4人の評価は急降下することだろう。



 カノンが入港しているドッグの隣のドッグに入港している連邦艦隊の戦艦リシュリューの艦橋で久瀬がアヤウラを睨み付けていた。

「余り目立ったことはしないで欲しいですな中佐。僕とて庇えることにも限度があります」
「ククククク、すいませんでしたな、久瀬大尉。確かにあそこで騒ぎを起してしまったのは軽率でした。申し訳ない」

 アヤウラは神妙に頭を下げる。その態度に久瀬は不快感を覚えた。

「艦隊は2日後に出港予定です。中佐にはもう外出を控えていただきましょう」
「・・・まあ、仕方が無いでしょうな」

 そう言うと、アヤウラは一礼して艦橋を出て行った。それを見送って久瀬は唾を吐きたい衝動に駆られたが、場所と立場を考えて何とかこらえた。そこに、中佐の階級章を付けた士官が近寄ってくる。

「よろしいのですか。奴は危険な男です」
「分かっていますよ斎藤中佐。ですが、あれは父が連れてきた男です。こちらで処分するわけにはいきません」
「そうですか、分かりました。しかし、見張りは付けさせていただきます。それとなく悟られても、それ自体が牽制となるでしょうから」
「・・・そうですね、お願いします」

 久瀬は斎藤に頭を下げた。何故中佐である斎藤が大尉の久瀬に敬語を使っているかというと、斎藤は久瀬中将に心酔しており、その息子の久瀬大尉を自分の上官と扱っているためだ。このあたりに久瀬の悪い噂が立つ一因があるのだが、斎藤が本心からそうしていることを知っている久瀬は拒否することもできず、こういう状態が続いている。
 艦橋の外を眺めながら、久瀬は1人考え込んでいた。もう、引き返すことはできないのかと。このままいけば、僕は確実に連邦軍と戦うことになる。そうなれば、倉田さんや川澄さんと戦うことになるかもしれない。そうなった時、僕は銃を向けられるのだろうか?自分でも答えを出せないまま、いつまでもそこに立ち尽くしていた。


--------------------------------------------------------------------------------


人物紹介


美坂栞 17歳 女性 予備役軍曹
 戦前はサイド4に住んでいたが、開戦と同時に行われたジオンの攻撃で家族と故郷を失う。脱出後は秋子によって引き取られ、のちに連邦軍に入って秋子と共にジオンと戦う。その実力は秋子も認めるほどで、ティンコッドに乗って日本地区の制空権確保に努めていた。後にジム先行量産型のパイロットに抜擢されるが、やがてコロニーでジオンが使用した細菌兵器を浴びていたのが元で発病し、前線を離れる。戦後はグラナダの病院に移されるが、やはり完全な治療法は無く、徐々に弱っていく毎日である。

久瀬隆之 18歳 男性 大尉
 佐祐理や舞と士官学校の同期生で、2人とは仲がいい。久瀬中将の息子ということでスピード出世を遂げ、同期の中ではいち早く大尉になっている。よく親の七光りといわれるが、実際には指揮官として、パイロットとして優れた才能を持っており、さわやかな好青年とあって部下の信頼は得ている。じつは、佐祐理とは親同士の付き合いがあったことから小さい頃からの知り合いであり、佐祐理とは幼馴染である。そして、同時に片思いの相手でもあるのだが、その方面には奥手な久瀬の性格と、かなり鈍い佐祐理のおかげで未だに片思いで終わっている。

斎藤 31歳 中佐 
 マゼランS級戦艦リシュリューの艦長で、第14戦隊の司令官でもある。久瀬中将に心酔しており、久瀬中将も斎藤を信頼して自分の息子を預けている。指揮官としては地味だが堅実な用兵をする男で、持久戦などの粘り強い戦いを得意とする。


--------------------------------------------------------------------------------

機体解説 
MS−06F ザクU
兵装 120mmザクマシンガン 又は280mmバズーカ
   ヒートホーク
<説明>
 通常、ザクといえばこの機体を示す。ジオンMSの中でもっとも大量に生産された機体で、主目的はサラミスやマゼランといった連邦戦闘艦艇を撃沈することにあった。その為、命中率よりも威力を重視した兵装を持っている。しかし、対MS戦には対応していなかった事が裏目に出て、ガンダムには全く歯がたたなかった。そればかりか、その量産機であるジムにすら苦戦するという事態を招く。
 本作中では余り出てこないが、出てきても雑魚で終わっている。

MS−06F2 ザクU
兵装 120mmザクマシンガン 又は280mmバズーカ
   ヒートホーク
   シュツルムファウスト
   対MSハンドグレネイド
<説明>
 F型の改良型で、後期生産型とも呼ばれる。全体の性能が向上し、使いやすくなってはいるが、やはりザクでしかなく、ジムより弱い。兵装にあるシュツルムファウストは炸薬による推力のみで飛んでいく炸裂弾で、当たればMSなら一撃で破壊でき、戦艦級でも大きな被害を与えることができる。対MSハンドグレネイドは簡単に言うなら手榴弾で、手で投げて相手の傍で炸裂させる武器。だが、実用性は低く、グレネードランチャーでの使用が一般的になっていく。

MS−09R リックドム
兵装 ジャイアントバズーカ
   ヒートサーベル
   拡散ビーム砲
<説明>
 地上用に開発された重MSドムを宇宙用に改装した機体で、ザク系列機よりは強い。だが、ジャイアントバズーカの弾は少なく、継戦能力に難がある。また、白兵武器のヒートサーベルはビームサーベルとは斬り合えないので、やっぱり近付かれたら負ける。1年戦争ではゲルググの完成が遅れたおかげでこの機体が終戦まで主力を勤めることになった。なお、兵装の拡散ビーム砲は正確には相手のビームを拡散させ、威力を弱めるための防御兵器だったのだが、いざ使ってみると役に立たず、単なる目くらましと化している。

MS−14A ゲルググ
兵装 ビームライフル 又はジャイアントバズーカ
   ビームナギナタ
   シールド
<説明>
 ジオニック社がザクに変わる次期主力MSとして開発した重MS。ジオンMSとしては初めてビームライフルを持ち、その性能はガンダムにすら迫ったが、完成が余りにも遅く、唯一の戦場であったア・バオア・クー戦では学徒動員兵が乗っていたのでたいした活躍もできず、歴史の闇に消えていった悲劇のMSである。
 兵装を見ても分かるとおり、この機体は連邦MSを倒すために作られた、ジオン初の対MS戦を想定したMSである。

MS−14B 高機動型ゲルググ
兵装 ビームライフル 又はロケットランチャー ジャイアントバズーカ
   ビームナギナタ 又はビームサーベル
   シールド
<説明>
 通称ゲルググB。ゲルググAとの違いは特に無く、単にバックパックを高機動型に換装しただけである。しかし、この型はA型と違い、主にエースパイロット部隊に支給されたので、性能に見合った活躍をしている。しかし、生産された数は少なく、知名度は低い。

MS−15B 高機動型ギャン
兵装 ビームランス
   シールドミサイル
   速射砲
<説明>
 ゲルググと張り合った次期主力MS、ギャンの改良型。結局敗れ去り、量産はされなかったギャンだが、その後も試作は続けられ、このギャンB型もパーツだけは試作されていた。エターナル隊に配備されていたのは、終戦に伴って住井がパーツを持ち出し、組み上げた機体である。住井は4機ほどが組めるほどのパーツを持ち出していたが、組み上げられたのは1機だけで、3機は予備パーツにまわされた。

ムサイ級巡洋艦
全長234メートル
兵装 2連メガ粒子砲3基
   大型ミサイル発射管X4基
搭載機数 4機(コムサイにも積めば6機)
<説明>
 旧ジオン公国軍の主力艦で、MS母艦として機能する点でサラミス級に勝る巡洋艦。最大搭載機は4機だが、通常は1個小隊3機のMSを積んでいる。ジオン公国が滅びた現在でも残党によって広く運用されており、各地で見ることができる。

ムサイ級後期型軽巡洋艦
兵装 2連メガ粒子砲X5基
   連装機銃X10基
搭載機数 4機(コムサイにも積めば6機)
<説明>
 ムサイの改良型で、連邦軍のゲリラ戦に悩まされたジオン軍が、戦訓を取り入れて設計した巡洋艦。当初予定されていなかった戦闘機やボール、パブリクなどの近接攻撃に対処するために機銃を増設。さらに後方や下方からの攻撃に対処するために主砲を増設してある。

チベ級重巡洋艦
全長235メートル
兵装 3連装メガ粒子砲X2基
   連装機銃X18基
   12連ミサイル発射管X12基
搭載機数 8機
<説明>
 主に小艦隊の旗艦に使用される重巡洋艦。グワジン級が完成するまでは戦艦に分類されていた。火力は大きいが、今では旧式艦であり、どうしても時代遅れという感じがする。生き残った数も少なく、目にすることは少なくなった。

ザンジバル級機動巡洋艦
全長255メートル
兵装 メガ粒子砲X4基
   連装メガ粒子砲
   大型ミサイル発射管X2基
   連装機銃X5基
搭載機数 6機
<説明>
 大気圏に突入できる巡洋艦。ジオンの最新鋭艦で、もっとも使いやすい艦艇でもある。しかし、生産された数はそれほど多くなく、目にする機会は少ない。1年戦争末期にはシャアが乗ったり、キシリアが脱出の際に乗り換えたなど、ザンジバル級が好まれた事実を証明している良い好例であろう。


--------------------------------------------------------------------------------

後書き 
ジム改 こんにちは、ジム改です
栞   わっ、お姉ちゃんにやられてもう復活してます
ジム改 ふ、俺があの程度のダメージで再起不能になるわけなかろう
栞   ・・・ゾンビですか?(ポケットからベレッタを取り出す)
ジム改 違う! 第一、何だそのベレッタは?
栞   某ゲームではこれでゾンビを倒すんです
ジム改 ・・・俺はゾンビでない
栞   ・・・残念です(しぶしぶとポケットにしまう)
ジム改 まあいい、それでは、今回はガンダムの主人公、ジムについてお話しましょう
栞   ガンダムじゃないんですか?
ジム改 あれはジムの試作機じゃない。DG細胞が取り付いた化け物だ
栞   ず、随分な偏見ですね
ジム改 俺は量産機より強い試作機なぞ認めん・・・まあ、それはおいといて、ジムと  
    いうのはガンダム世界の代表的なMSで、連邦軍に勝利をもたらした傑作機で
    す
栞   誉めすぎです。ジムは一生主役になれない脇役君なんですから
ジム改 そこがいいんじゃん。それに、初めてビーム兵器を標準装備した量産型機動
    兵器だって点で考えると、歴史に残る名機だぞ
栞   それなら、ザクだって名機なんじゃ・・・
ジム改 ザクはザクでいいんだけど、俺はジム派なの♪
栞   はあ、どうにもならないですね、この人



<次へ>  <前へ>  <ガンダム外伝TOPへ>