第32章 マルス作戦発動

 

 宇宙世紀0082年4月1日、連邦軍に所属する艦艇の半数以上がルナツーに集結しようとしていた。およそ半年前のコロネット作戦を遥かに上回る規模の艦隊は巨大なルナツーを光で覆い隠すほどで、まさに連邦の国力の強大さをまざまざと示していた。

 この日、ルナツーに集結した艦艇は第1連合艦隊と第2連合艦隊に分かれ、第1連合艦隊をハンフリー・リビック大将が指揮し、第2連合艦隊をブライアン・エイノー中将が指揮している。

 この大艦隊を指揮する提督たちはルナツーの作戦室に集まり、参謀長ヒョードル・クルムキン大佐が居並ぶ提督たちを前に作戦を説明する。

 

「今回の作戦は奇をてらいません。前回のコロネット作戦は敵の核兵器の使用という予測できない事態もありましたが、あれほどの混戦となったのは戦力の分断という用兵の原則に反した行為のためです。ですから今回は第1連合艦隊、第2連合艦隊共に十分な兵力を配備し、たとえファマスが全力でどちらかに襲い掛かってきたとしても互角以上の勝負ができるでしょう」

 

 そこで一旦話をきり、全員を見渡す。すると、前回の生き残りであるクライフ少将が質問をしてきた。

 

「艦艇数では確かに圧倒的かもしれないが、問題なのはMSの性能と数だ。前回の戦いでは主力であったジム改はシュツーカやガルバルディβに対して性能面で負けていたために最後までイニシアチブを握れなかった。確かにジムUは配備されたし、その高性能は認めるが、まだ数が少ない。依然として主力のジム改では前回の二の舞になるのではないか?」

 

 クライフの言葉に何人かの提督が大きく頷く。いずれも外洋系艦隊司令部を巡る戦いや、デラーズ紛争に参加した提督たちだ。だが、クルムキンは冷静だった。

 

「その点についてはすでに解決しています。性能で劣るなら数で補えばいい。というのが我々の判断でして、今回は前回の3倍以上のMSを揃えています」

 

 クルムキンの言葉に場がざわつく。その圧倒的な数に誰もが驚きを隠せないのだ。そんな中でエイノー中将が質問をしてきた。

 

「確かに物凄い数だが、そんなに動員して地球の防衛は大丈夫なのか。もしまたデラーズ

紛争クラスの戦役が起これば対処できないのではないか?」

 

 その不安にはその場にいる全員が頷いた。

 

「確かに、巡洋艦以上の艦艇だけでも300隻以上、駆逐艦以下の補助艦艇や輸送艦を含めれば1000隻を越える艦艇が参加する。これにさらに後続の物資やMSを輸送する支援艦隊が加わればその数ははかりしれん。地球圏は無防備といってもいいだろうな」

 

 参加する提督の1人が確認するように呟く。これは地球連邦軍宇宙艦隊の全保有艦艇の半数以上にもなる大艦隊であり、参加兵力は星1号作戦やルウム戦役を凌ぐものである。まさに連邦の総力をあげた大作戦といえるが、これだけの作戦を実行に移せる連邦軍の凄まじさもあった。

 これらの疑問に対し、クルムキンは苦い顔をして答えた。

 

「一応、地球軌道艦隊と各コロニー駐留艦隊の一部は残ります。それ以外の公海、及び暗礁宙域へのパトロールはティターンズが担当することになっています」

 

 それを聞いて多くの提督は「おお」と声を出して安堵して見せた。連邦最強のエリート集団ティターンズはすでに大きな信頼を勝ち得ていたのだ。もちろんここにもティターンズのメンバーがおり、バスク大佐率いる精鋭部隊が参加していた。何故バスク大佐が佐官でありながら提督級の会議に参加しているかというと、ティターンズは教導団と同じく一階級上位とみなされるためである。つまり、バスクは准将扱いなのだ。

 このティターンズに対する主だった提督たちの反応はさまざまで、リビック、クライフ、秋子といったメンバーははっきりと嫌っており、ジオン嫌いのエニーは好意的、エイノーは地球至上主義者だが軍人は政治に関与しないという建前を守る古い軍人なので、政治的な動きの多いティターンズとは距離をとりながら中立を維持していた。残る提督たちは多くが親ティターンズ派で、長いものには巻かれろという日和見的な連中が多かった。それでもここに集まっているのはリビックが認めた優れた指揮能力を有する提督ばかりであり、軍人としては皆優秀である。

 なおも作戦の説明は続く。

 

「第1、第2連合艦隊は二手に分かれ、フォスターTの前面で集結、総攻撃をかけます。もし途中でファマス艦隊が出てくるなら構わず殲滅していただきたい」

「もし、フォスターTに敵主力が集結していたら、そのときはどうする?」

「そうなればそこで雌雄を決するだけのこと。一撃で勝負はつくことになります。こちらは敵の総兵力の倍以上を揃えている事をお忘れなく」

 

 それは事実である。だが、この時の連邦軍にはまだアクシズの参戦までは読めておらず、あくまで久瀬提督の反乱部隊とファマスの保有予想戦力のみで考えていた。

 今度は秋子が発言した。

 

「数の問題はクリアされたとなるなら、残るは将兵の錬度と補給の確保、そして指揮官の質ですね」

 

 この意見にエイノーが目を剥き、組んでいた腕を解いた。

 

「我が軍の人材に不安があるとでも言うのかね、水瀬君?」

「正直に申し上げますと、そうなります。残念ながら久瀬中将に賛同して連邦を離れたのは最精鋭の部隊と1年戦争を生き抜いた生え抜きの指揮官たちです。それに対して今ここにいるのは一部を除けば実戦の経験が浅い提督ばかりです。これは否定できないは事実のはずです」

 

 秋子の強い言葉にエイノーが詰まった。彼女の言うことは間違っていない。確かにここにいるのはリビックも認める指揮官ばかりだが、実戦経験の不足だけはどうしようもない問題だ。対してファマスの指揮官は文字通り、1年戦争を戦い抜いた歴戦の名将揃いだといっていい。フォスターTで経験をつんだ指揮官たちは軒並み戦死し、秋子とクライフだけが生き残っているに過ぎない。

 黙って視線をぶつけ合う2人の空気を感じ取ったリビックはわざとらしい咳払いをして2人の間に入った。

 

「まあまあ2人とも、その辺にしておけ。水瀬提督の言い分は儂も分かるが、今回はこの陣容で行くしかない。経験の不足は数でカバーできるものだとわしは考えておるんじゃがな?」

「・・・それは、そうですが」

「ならいいじゃろう。エイノー提督もいいかな?」

「長官がそう仰るなら」

 

 エイノーが黙ったのを見ると、秋子は矛先を後方参謀に向けた。

 

「後方参謀、補給計画の方は万全なのでしょうね。今回の作戦は史上最大の作戦となりますが、同時に最も長距離を遠征することにもなります。もし補給線を寸断されれば私たちは先の外洋系艦隊司令部を巡る戦いのファマス軍の醜態を数倍の規模で再現することになり、今度こそ再起不能といえるほどの打撃を受けることになります」

 

 秋子の矛先を向けられた後方参謀は居心地が悪そうに身動ぎしたが、とりあえず書類の束を持って立ち上がった。

 

「補給船団には常時多数の護衛をつけます。また、航路の警戒用として駆逐艦やフリゲートで編成した哨戒部隊も多数投入します」

「ですが、ここ最近になって商船や軍の輸送艦、輸送コンテナが襲撃されるという事件が頻繁に起こっていると聞きましたが?」

「いや・・・それは、その・・・」

 

 後方参謀は言いよどんだ。この作戦に向けて多数の小型艦艇を回したために通常航路の警備が疎かになっているのである。最も、これは最初から分かっていた問題であり、後方参謀にはこの問題に対処することが早期から要求されていた。加えて言うなら、最終的には火星まで伸びる補給路の方が遥かに長く、地球圏における航路維持のために回される艦艇の密度の方がまだ濃いのだ。果たして、連邦軍後方部隊に火星までの補給路を維持する能力があるのか、秋子が不安に思うのも無理はなかった。

 なおも細かいことを数時間話し合った後、彼らは各々に解散して帰っていった。だが、中には気分転換を図る者もいるわけで、秋子とクライフ、エニーは久しぶりに集まって飲んでいた。ルナツーの重力ブロックには慰安用の酒場もあり、その中には高級士官クラブも存在するのだ。

 久しぶりに顔を合わせた3人はワインのボトルと簡単な食べ物を注文して談笑していた。

 

「しかし、水瀬さんは相変わらず笑顔できついことを言いますね」

「あら、そうでしたか?」

「そうね、聞いてて後方参謀が可哀想になったわ」

 

 エニーがワイングラスを揺らす。そこに半分をど満たされた赤い液体がグラスの中で揺れ、不思議な色合いを見せていた。

 

「まあ、補給切れで負けるなんてのは私も御免だから、あそこじゃ何も言わなかったけどさ」

「あらあら、なら味方してくれればいいのに」

「私はあんたと違ってエイノー提督に喧嘩を売る気はないのよ」

「喧嘩を売ってるつもりはないんですけど」

 

 ちょっと困った顔をする秋子。2人の話を面白そうに聞きながらクライフはつまみに頼んでいたソーセージを摘んでいた。

 

「そういえば知ってる、最近の事なんだけど、またアルバート・クリステラ議員が襲撃されたって」

「アルが?」

 

 ワイングラスを置いて秋子が目をむく。アルバート・クリステラ議員は連邦議会でも珍しい誠実で真面目な政治家で、議会では他の政治家の痛いところを糾弾することで知られている。だが、その分敵も多く、命を狙われることも多いらしい。そんな彼は昔に秋子と個人的な友人となっており、今でも親交は絶えていない。友人を大切にする秋子だけに、その話は聞き捨てならないものだった。

 

「ええ、昔に結構大きな襲撃を受けて以来の規模らしいわよ。確か前はSPの1人が命と引き換えに制圧したらしいけど」

 

 エニーが思い出しながらしゃべる。秋子はエニーの話を聞いて辛そうにある人物の名前を出した。

 

「高町士郎・・・・・」

「ああそう、そんな名前だったわ・・・て秋子、あなたよく覚えてたわね?」

 

 不思議そうにするエニーに、秋子はぎこちない笑顔を向けた。

 今から4年前、1年戦争の始まる1年程前に連邦議員アルバート・クリステラはテロリストたちの襲撃を受け、危うく命を落とすところだったのである。だが、襲撃してきた十数人の武装テロリストたちは結局のところ、たった1人のSPによって失敗することになる。アルバート・クリステラの護衛についていた私設SP、高町士郎の手によって。彼は今では極めて珍しい古流武術の1つ、剣術の使い手で、1人で完全武装の兵士100人に相当するとまで言われた最高のSPであった。彼の使う「小太刀二刀流・御神流」は現在では使い手が絶えたとも言われる流派で、今に残っていた数少ない殺人剣である。その使い手は人の限界を超えた速さで動き、特殊合金すら断ち切ったという。まさに生ける伝説であった。だが、そんな彼もその時はたった1人でテロリストに立ち向かい、銃器で武装したテロリスト全員を切り捨てて息絶えてしまった。

 秋子はクリステラ議員の紹介で士郎の事を知っていたのだ。そして、今彼を守っている人間のこともよく知っていた。

 

「アルなら大丈夫ですよ、彼が、柳也さんがいますから」

「柳也って、確か今クリステラ議員の私設SPをやってる、あの柳也ですか?」

 

 クライフの質問に秋子は頷いてみせた。

 

「驚いたな、水瀬さんがそういう人と知りあいだったなんて」

「知人は多いにこした事はありませんから」

 

 頬に手を当て秋子はにっこりと微笑んだ。

 

 

 

 艦隊が集結を完了し、出撃準備に入った頃、宇宙港では一つの出会いがあった。

 いつものように部下の編成表を片手にハンガーに並ぶMSを見ていた。こうしてMSを眺めながら新しい戦術や部隊編成を考えるのが彼に限らず、部隊指揮官の最も重要な仕事の一つだ。だが、彼の場合は事務仕事をサボる口実として利用されていたりする。

 宇宙港に入港しているカノンはとにかく目立つ。何しろ600メートル近い巨体、際立つ白磁のカラー、改装に伴って試験的にビーム兵器に対する特殊コーティングを施したためにこのような輝く白となっているのだ。このコーティング処理はIフィールドと並んで効果的な対エネルギー防御となり、しかもジェネレーターに依存しないのでMSでも採用できるという画期的なものだったのだが、この時点ではまだコストが高すぎ、とにかくコストダウンが求められていた。ちなみに、これを採用されたMSも試験的に存在している。

 とにかく、ペガサス級やバーミンガム級よりも目立つカノンには多くの観光客、ではなく見学者が来ていた。そんな連中を無視しながらシアンがMSデッキを歩いてると、自分の愛機の方からシアンの注意を引く声が聞こえてきた。

 

「何だこいつは、でかいMSだな」

「・・・カノンのMSですよ、無駄に大きい訳じゃないと思うんですけど」

「そうかねえ、俺にはでかすぎるとしか思えんがな」

 

 自分の愛機にずいぶん酷い評価をしてくれるものだ。と思い、一言言ってやろうと歩いていった。

 

「ずいぶんな言い草だな」

「・・・うん? どっかで聞いたような声・・・だ・・・」

 

 振り向いたのは30過ぎといったぐらいの長身の男だ。シアンが一見優男なのに対し、こちらは戦場の勇者といった言葉がよく似合う逞しい体躯の男だった。その隣りにいるのは20前といったところか。元気一杯のかわいいといった感じの女性で、おそらくはMSパイロットなのだろう。

 

「ずいぶん酷いことを言ってくれるな、赤い死神」

「・・・なんだ、お前の機体だったのか、シアン」

 

 お互いに皮肉を言い合い、口元を歪めて笑いあった。

 

「久しぶりだな、デュラハン・カニンガム少佐。いや、ディの方がいいか。オデッサ以来か?」

「ああ、そんなもんだな。だが、まだ生きてたとはなあ、シアン・ビューフォート少佐、いや、今は中佐だったか」

「・・・知り合い、なんですか?」

 

 女性が不思議そうに2人を見る。それを聞いてシアンがデュラハンに問い掛けた。

 

「なんだディ、遂に彼女を作ったのか? いやあ、まさかお前が独身主義を放棄するとはなあ」

 

 大きな声でデュラハンを祝福し、その肩を強く叩く。ヂュラハンは露骨に顔をしかめた。

 

「おいおい、誰が彼女を作っただと?」

「照れるな、照れるな。いやあ、良かったなあ」

 

 どこまでも楽しそうなシアンにデュラハンが言い返そうとしたところで、女性が大きな声で否定してきた。

 

「私は、少佐のただの部下です!!」

「わ、分かってるよ、ちょっとからかっただけだって」

「冗談にしては凶悪すぎます」

 

 女性はまだぷりぷりしていたが、一応自己紹介してくれた。

 

「私はレベッカ・プルシエンコ伍長、カニンガム少佐の部隊のMSパイロットです」

 

 自己紹介してくれるレベッカ、シアンはレベッカの若さに僅かながらの不安を覚え、デュラハンを見た。

 

「ディ、あんたの見立てだから大丈夫とは思うが・・・」

「ああ、腕は一流だよ、俺が保証してやる」

「ならいいんだが」

 

 妙に納得しつつ、シアンはデュラハンに顔を向けた。

 

「そういえば、お前の部隊はどこに配属してるんだ?」

「うん? ああ、俺の隊は第1艦隊第4戦術大隊だ。通称D大隊さ」

「そうか、じゃあ作戦中は殆ど顔を合わせる機会はないかな。俺は機動艦隊MS隊指揮官だしな」

「ほう、出世したもんだ。まあ、お前の実力なら当然かもしれんがな」

 

 そう言ってデュラハンはケタケタと笑い出した。そういう彼も連邦軍屈指のエースであり、格闘戦では無類の強さを誇っている。赤い死神ディの名前は1年戦争当時、ヨーロッパのジオン軍の間では恐怖の代名詞となっていたくらいだ。

 その後もしばらく昔話をしてデュラハンとレベッカはカノンを後にした。

 

「少佐が、あんなに饒舌になったのは、珍しいですね」

「そうか? まあ、そうかも知れんな」

 

 レベッカに言われてデュラハンは苦笑を浮かべた。いかついこの男が苦笑を浮かべるとなんともいえない迫力があって周囲の人間は大抵引くのだが、レベッカは気にした風もなく話を続けた。

 

「シアン中佐、でしたっけ。あの人は強そうですね。一緒にいて、そう感じましたよ」

「まあ、「絶対者」って言われてたくらいだからな」

 

 そう呟き、不意にデュラハンは真顔になった。

 

「あいつが、何で絶対者って呼ばれてたか、分かるか?」

「・・・いえ」

「あいつはな、強すぎたのさ。戦闘機やMSに乗っても、白兵戦でもな。あいつに勝てる奴はいなかった。信じられるか、脱出した戦闘機パイロットが、その辺りにいたジオン兵1個中隊を全滅させるなんて」

「・・・1人で、どうやって?」

「分からん。ただ、戦場に到達した部隊から聞いた話だと、そこの陣地には死体と怪我人が居ただけで、シアン1人が携帯コップでコーヒーを飲んでたっていうことだ。聞いたときには耳を疑ったし、人間じゃないと思ったね」

 

 すこし顔をしかめてデュラハンが言う。この男をしてここまで言わせるシアン・ビューフォートという男に僅かに恐怖を抱いた。

 

 

 

 艦隊の出撃準備が進む中、作戦前の最後の上陸となる僅かな時間を利用して最後の平和を満喫している連中もいた。スペース・バスで近くにあるサイド7に来ているカノン隊の連中だ。

 

「祐一〜、イチゴサンデー食べにいこ〜」

「・・・あんまり食ってると太るぞ」

「うっ!!」

 

 祐一の漏らした一言に名雪が固まる。だが、すぐにいつもの調子を取り戻した。

 

「毎日運動してるから大丈夫だよ〜」

「・・・最近、頬の辺りがこう、ふっくらと・・・」

「・・・・・・」

 

 冷や汗を流して頬に手をやる名雪、どうやらすこしは気になってたらしい。

 そんな名雪を見かねてか、親友が助け舟を出した。

 

「相沢君、あんまり名雪をいじめないの」

「いや、ここは心を鬼にして言ってやらなくちゃいかん」

「でもね、あの様子を見ると・・・」

 

 香里の視線の先には頬に手をやってひたすら深刻そうに考え込む名雪の姿があった。

 

「わ、私太ってる、嘘、嘘だよね・・・」

 

 祐一もそれを一瞥し、溜息をつくと香里に向きなおった。

 

「それで、香里の相方はどうした?」

「・・・誰よ、相方って?」

「はっきり言ったほうがいいと思うぞ、名雪も心配してたし」

 

 祐一は視線を反対に向けた。そこには右腕に栞、左腕に天野に引かれた状態の北川がいた。

 

「北川さん、早くアイスを食べに行きましょう」

「いえ、それよりも甘味屋でみたらし団子でも」

「天野さん、なんかおばさんくさいですよ?」

「アイスジャンキーに言われたくありません」

 

 北川を挟んで激しい火花を散す美少女2人、一応その後ろには両者の後援者達が付いてきているのだが、正直言って皆うんざりした表情を浮かべている。

 

「・・・佐祐理、何とかして・・・」

「あ、あはは、はは、舞、それはちょっと無理そうです」

「あう〜、美汐がどんどん壊れてくよ〜」

「女の戦いって、怖いな」

「ぼくも女だけど・・・うぐぅ〜」

 

 舞、佐祐理、真琴、住井、あゆが憔悴しきった顔でとぼとぼ歩いている。彼らは2人の「北川さんGET作戦」に付き合わされた疲れですっかり燃え尽きていた。

 これ以上見るに耐えない、と祐一は視線を後ろに向けた。そっちにはシアンが仕事にでこれなかったせいか、1人寂しそうな郁美と、そんな郁美を励ます七瀬、男同士で談笑している中崎とキョウがいる。

 

「ふう、シアン少佐も一緒に来れればよかったのに」

「まあ仕方ないじゃない、シアンさんは総隊長なんだしさ」

 

 郁美の肩を七瀬がぽんぽんと叩くが、郁美は未練ありまくりな顔で足元を見ていた。すこし困った七瀬は仕方なく隣りに助けを求めた。

 

「ねえ中崎君、何か郁美を元気付けれそうなものってないかな?」

 

 そっと耳打ちしてきた七瀬に中崎はキョウとの話を打ち切ってしばし考え、キョウに質問した。

 

「キョウ、お前、金あるか?」

「金? まあ、すこしは」

「ちょっと、何か思いついたの?」

 

 少し期待をこめて七瀬が聞くと、中崎はにやりと笑って見せた。

 

「ああ、つい最近できた総合スポーツセンターてのがね。まだ行った事なかったからさ、ちょうどいいと思って」

「ふむ、確かに汗でもかけばいい気晴らしになるかもね」

「・・・なるほどね、中崎にしてはいい思い付きだな」

 

 2人は少し感心し、祐一に話を持っていった。

 

「・・・というわけなんだが、どうだ?」

 

 キョウに話を持ちかけられて、祐一は全員を見渡した後にうなずいた。

 

「俺はいいと思うけど、他の皆はどうなんだ?」

「大丈夫、お前が来れば皆付いて来るから」

 

 どういう意味だ? と思ったが、あえて聞き返さなかった。なんとなく返事が怖かったのだ。

 キョウの予想したとおり、祐一が行くと言い出したらあっさりと全員の行く先が決まった。その理由について祐一は首を捻っていたが、何故か名雪に睨まれていたことを付け加えておく。

 スポーツセンターは確かに立派なもので、巨大グラウンドやプールまで完備している。名雪はトレーナーに着替えると嬉しそうにグラウンドに駆け出していった。まあ、名雪は元陸上部なのでこれはおかしなことではない。むしろ意外だったのはあゆと郁美も名雪と一緒に走っていることだった。

 

「名雪はともかく、あゆと郁美があんなに速いとは意外だな」

「ああ、特にあゆがな」

 

 祐一とキョウがボーゼンとして呟いた。なんと、3人とも100メートルを10秒フラットで走っているのだ。

 グラウンド組以外に、室内組は筋トレをやったり、体操などをしていた。そんな中に混じって凄いのが舞と香里だ。舞は竹刀を持ってまるで道場破りのようなことをしている。具体的に言うと剣道場にいる者全てに試合を申し込んでいるのだ。香里はというとストリートファイターのごとくリングの上で拳を振るっている。

 体の弱い栞は必死の形相で腹筋をやっていたが、僅か15回でダウンしてしまった。

 

「はう〜、もう駄目です」

「しおしお、そんな事でどうするのよう!」

「ううう、そんなしなびそうな呼び方する人は嫌いです」

 

 栞に付き合っていた真琴が栞のだらしなさを糾弾する。栞は不満そうだったが疲れきっているためか反論には元気がない。その向こうでは天野と佐祐理がバーベル上げをやっていた。

 

「こ、こんな、酷な、事は、ないで、しょう」

 

 顔を真っ赤にして必死に腕を上げようとしているのだが、何故かさっぱり上がらない。なぜかというと・・・

 

「あはははは〜、天野さんはもっと頑張らないといけないですね〜」

 

 この人が笑顔で錘を増やしているからだ。こんなえぐい事を笑顔でできる辺り、この人もなかなか侮れない。

 一方、剣道場で並み居る男たちを叩きのめしていた舞は何時の間にか相手が残っていないことに気付いた。

 

「・・・しまった」

 

 全員叩きのめしてしまったことに気付いた舞は延々と転がっている屍を前に途方にくれていた。

 すると、そこに1人の女性が入ってきた。何も言わずにざっと場内を見渡し、ついで舞に視線を向けた。

 

「・・・これは、君が?」

 

 問い掛けられたので舞は素直に頷いた。女性はそれ以上舞を問い詰めることはせず、「そうか」とだけ呟き、壁にかけてある短めの木刀を2本と普通の木刀を取った。

 

「どうだい、私と一戦してみないか?」

「・・・いいの?」

 

 この状況を見てなおも挑んでくる女性に、舞は嬉しそうに聞き返した。女性は小さく頷き、普通の木刀を投げてきた。それを受け取った舞は静かに青眼で構える。対する女性は見たこともない不思議な構えを取った。

 

「小太刀二刀御神流、御神美沙斗」

「・・・川澄舞」

 

 お互いが名乗りあったのが合図となった。美沙斗が異常な伸びを見せる刺突しを加えてきた。舞は何とかそれをかわしたものの、その目には驚きがあった。

 刺突しをかわされた美沙斗は素直に舞に感心していた。

 

「いい動きだ、反応も速い」

「・・・速い・・・」

 

 美沙斗は今度は立て続けの連撃を放ってきた。まず右袈裟懸け、ついで横薙ぎ、そして空いていたもう一方での刺突し。舞は2つまでは防いだが、最後の刺突しは防ぎきれず、左腕に受けてしまった。

 直撃を受けた左腕は折れてはいないだろうがかなりの打撲になっている。それを察した美沙斗は構えを解いた。

 

「その左腕では無理だろう、ここらで止めておくかい?」

「・・・まだ、負けた訳じゃない」

 

 右腕一本で舞が木刀を構える。それを見て美沙斗も説得を諦め、再び構えを取った。

 舞は信じられない思いだった。S級シェイドである自分と互角以上に戦える人間がいる。そのことが舞のプライドをいたく傷つけていた。普段あまり見せないものの、舞もシェイドであるという事へのこだわりがあるのだ。

 普通の人間に負けるという焦りが、舞に一つのタブーを犯させた。舞の瞳が徐々に金色に変わりだし、その長いポニーテールがゆらゆらと揺れだす。その変化を見ていた美沙斗は膨れ上がって行く舞の殺気と闘気に背筋が凍る思いを味わっていた。

 

『な、何だ、この殺気は? これが人間の発する殺気だというの?』

 

 美沙斗すら怯ませる殺気を発しながら、舞の力は完全に解放された。金色に輝く目で美沙斗を見据える。

 

「これで、負けない」

 

 舞が右腕一本で木刀を振り上げ、切りかかってきた。そのあまりに速さに美沙斗は迷わず奥義の一つ、神速を発動した。世界の色がくすみ、全てがスローになる中で自分だけがまともに動けるはずのこの技だが、舞の動きはこの中にあってさえかなりのものだった。その事実に美沙斗が驚愕する。

 

『普通の動きで神速に近い速さだというのか!?』

 

 美沙斗はシェイドという存在は知らなかった。だから彼女はこの川澄舞という少女の持つ才能に惚れ込んでしまった。もし、彼女がちゃんとした訓練をつんだなら、自分を確実に超えられる。そう確信させるだけのものがあった。

 

『だからこそ、今は全力で!』

 

 舞の渾身の一撃をかわした美沙斗は迷うことなく自分の最も得意とする技の構えに入った。

 

「小太刀二刀御神流・裏、奥義其の参、射抜っ!」

 

 左肩に持ちかげた形での刺突しの構えから神速を併用した超高速の一撃。御神流の中でも最長の射程を持つこの技と神速の併用は美沙斗の切り札とも言える技だった。

 舞は美沙斗の動きについていけなかった。舞はシェイドの中でも最強クラスの力を持つ超人であり、肉体能力では美沙斗を遥かに凌いでいる。だが、舞には自分と互角、ないしはそれ以上の相手との殺し合いをした事がない。シアンは舞より強いが、流石に殺す気ではこない。対して美沙斗は生身での殺し合いの経験が十分すぎるほどにある。そして何より、舞は訓練を積んだ事がなく、美沙斗は超一流の剣士だった。この差が2人の明暗を分けていた。

 気が付いた時、舞は自分が倒れていることを知った。左肩にとんでもない激痛が走る。砕かれてはいないだろうがしばらく動かすことはできないだろう。いや、これは舞の体がシェイド能力を開放することで異常な強度を得ていたからこそ持ち堪えたのであって、普通なら粉砕骨折は免れないところだ。そこまで確認して、はじめて舞は美沙斗が自分を見下ろしていることに気付いた。

 

「すまなかった、少しやりすぎたらしい」

「・・・私、負けた・・・」

 

 普通の人間との戦いでの初めての敗北だった。

 

「ああ、だけど、驚いたよ。まさか神速についてくるなんてね」

「神速?」

「御神流奥義、初歩の技、神速。目に映らないほどの速さで動く移動法の事さ」

「・・・そう」

 

 舞はゆっくりと上半身を起こした。その背中を美沙斗が支えてやる。

 

「・・・君は、強くなりたいかい?」

「・・・うん」

「なら、ちゃんとした訓練を受けてみるんだね、君なら1年も頑張れば皆伝くらいにはなれるだろう?」

「・・・私が?」

「ああ、君なら強くなれる。もしかしたら、私よりもな」

「・・・私が・・・強く?」

「たぶんね、まあ、すぐに決めることでもない。今は考えておいてくれるだけでいいよ」

 

 そう言い残して美沙斗は道場を出て行った。舞は上半身を起こした姿勢でしばらくぼんやりと天井を見上げていた。

 

「訓練さえ積めば、あの人に勝てる」

 

 

 

 強力な艦隊が終結する中で、まず第1連合艦隊が出撃し始めた。総旗艦バーミンガムを中心に第1艦隊の戦艦8個戦隊32隻、巡洋艦10個戦隊40隻を主力とし、その周囲を多数の駆逐艦やフリゲートが囲んでいる。これに続くのが戦艦2個戦隊8隻、巡洋艦10個戦隊40隻を中心とする第2、第3艦隊が続いていく。これに支援艦隊である第9、第10、第11艦隊が続いていく。各艦隊はMSや物資を満載したコロンブス級輸送艦40隻と護衛の巡洋艦6隻、駆逐艦やフリゲート多数で編成されている。

 これに変り種としてアレキサンドリア級重巡洋艦アレキサンドリアを中心とするティターンズ艦隊16隻が加わっている。

 これに続くのは第2連合艦隊で、旗艦であるバーミンガム級戦艦のアンソンを中心に第4、第5艦隊がそれぞれ戦艦2個戦隊8隻、巡洋艦10個戦隊40隻、駆逐艦、フリゲート多数で編成されている。さらに戦闘空母1隻、大型空母8隻、軽空母12隻、戦艦2個戦隊8隻、巡洋艦8個戦隊32隻、駆逐艦、フリゲート多数で編成された機動艦隊が加わり、これに支援艦隊である第12、第13、第14艦隊が続いている。

 この2つの艦隊は主力艦隊であり、直接ファマスの主力部隊と交戦することになる。もちろん、これ以外にも後方支援艦隊として主力部隊に補給をおこなう輸送艦隊が編成されており、300隻を超える輸送艦とこれを護衛する艦艇が用意されている。これに予備として現在も編成中の第6、第7、第8艦隊が存在するが、これは本当に予備であり、規模でも将兵の錬度でも主力とは比較できない。

 ルナツーから大小300隻を超える第1連合艦隊が出撃していく。その威容はまさに連邦軍の力を如実に示しており、もしこの光景をファマスの士官が見れば恐怖のあまり失禁したかもしれない。特に第1、第2、第3艦隊の旗艦を勤めているバーミンガム級戦艦3隻はグワジン級すら凌ぐ大型艦であり、嫌でも目立っている。

 そして、この出撃はいきなりファマスの知るところとなっていた。この大艦隊の出撃を観察していたのは橘啓介が送り込んだ潜宙艦の1隻で、通商破壊や偵察が目的である。その中の1隻がルナツーから出撃していく空前絶後の大艦隊を発見したのだ。

 

「な、何だあれは!?」

 

 超高倍率の光学センサーを見ていた艦長が驚きの声を上げる。その声に反応して艦橋に詰めていた乗組員がセンサー画面に詰め寄る。

 

「艦長、どうかしたんですか?」

「あ、ああ、こいつを見てみろ」

 

 艦長がモニターの正面から退く。そこに映されていたのはとんでもない数のサラミスやマゼラン、コロンブス、少数だがアキレウスやリアンダーの姿もある。それらを無数の小型艦艇が取り囲んでいる。ファマスの将兵は見たこともない大軍に声を無くしていると、1人の女性士官が艦橋に入ってきた。

 

「どうカしましタカ?」

 

 見た目まだ20に達していまい。だがその襟には艦長の上位であることを示す少佐の階級章が光っている。艦長は艦橋に入ってきた女性士官に敬礼し、モニターに移る艦隊を見せた。それを見て女性士官は息を呑んだが、すぐに落ち着きを取り戻してモニターを見詰めなおす。

 

「遂にうゴきましたカ、橘大佐の読ミどおりデス」

「それで、これからどうしますか泊龍少佐?」

 

 艦長が問い掛けてくる。彼女の名は泊龍(ぱくりゅうと読む)、アヤウラ配下の特殊コマンド部隊で、誘拐や暗殺を専門とする【龍】のメンバーで、暗器術をと情報収集を得意としている。今回も情報士官として潜宙艦に同乗していたのだ。ちなみに、これ以外にもアヤウラには打撃部隊である【鵬】、諜報部隊である【鳳】、潜入工作部隊である【麟】があるのだが、このうち鵬は秋子襲撃作戦の際にシアンと舞の手で壊滅状態になっており、現在は機能していない。

 艦長の問いかけに、泊龍はしばし考え込んだ。

 

「・・・・・・モう少シ、ルナツーで張ってイまショウ、あれデ全グんとも思えマせんカラ」

「はっ、了解しました」

 

 泊龍の指示に従い、潜宙艦G−57は熱源をできるだけ押さえてそこに留まった。すると、泊龍の読み通りそれから2時間後に第1連合艦隊にも匹敵する規模をもつ第2連合艦隊の出撃が始まった。その中には一際輝く巨大な艦があった。モニターを見ていた泊龍はその美しさに一瞬見惚れ、ついで慌てて自分を正気に戻した。

 

「艦長、見テくだサい」

 

 泊龍に場所を譲られて艦長はモニターを覗き込んだ。

 

「こいつは凄い、先ほどの艦隊にも引けを取らない大軍ですな。しかし、あの光り輝く巨大な艦はカノンですかな。こう言ってはなんですが、美しい」

 

 敵の船ではあっても、その美しさには惚れ込んでしまうらしい。敵と味方を問わず魅了するカノンは、この後に白磁の女王という名を送られることになる。

 モニターから目を離した艦長は改めて泊龍の隣りに立ち、今後の方針を話し合った。

 

「どうします、攻撃しますか?」

「艦長ナラ手を出しマスか?」

 

 逆に質問されて艦長は苦笑を浮かべた。

 

「私なら御免ですな、あれだけの駆逐艦やフリゲートが囲んでる艦隊に手を出すなんてのは自殺行為です」

「ナら止めてオおきまショウ、ソれよりモ、他ノ作戦行動中ノ艦に通信ヲ」

「はっ? 内容は?」

「全艦タダちにフォスターUに帰還、次の作戦に備えマス」

「帰還ですか、しかし、まだ撤収期限ではありませんが?」

「コれ以上ココに留まってるト、フォスターTを落トされてしマいマス。ソうナタら私たちハ降伏するしカナくナりマス」

 

 泊龍の判断に艦長は得心し、急いで各艦に通信を送るように通信士をたきつけた。にわかに騒がしくなった艦橋を尻目に泊龍は今後のことを考えていた。

 

 


人物紹介

 

デュラハン・カニンガム 男性 少佐 33歳

 「赤い死神」、「D」などの2つ名で呼ばれる連邦軍で最も知られたパイロットの1人。専らヨーロッパ方面で活躍した戦車将校で、戦争初期に編成された捕獲ザク部隊を率いている。その時に機体を赤く塗装したために、シャアと勘違いされて味方から攻撃された経験を幾度か持っていたりする。

 格闘戦の名人で、その素早い動きを捕らえるのは至難の業である。現在にいたるまで、彼は格闘戦においては実戦であろうと模擬戦であろうと破れた事はない。

 

レベッカ・プルシエンコ 女性 伍長 16歳

 戦後になって軍に志願したパイロットで、デュラハンにその才能を見出されて以降は彼の直属小隊のパイロットとして活躍している。バランスのいい、機動性重視のパイロットで、経験不足ではあるが思い切りのいい動きを見せる。少将夢想癖あり。

 

ブライアン・エイノー 男性 50代 中将

 連邦軍の中でもタカ派として知られる主戦論者。骨の髄から軍人という人物で、前線勤務を心から望んでいる。1年戦争終戦時、彼は残存艦隊を率いてサイド3を直撃する事を進言しつづけたほど戦争を愛する人物ではあるが、無駄な争いを好んでするほどに無茶な人物でもない。その性格は若手の将校から熱烈な支持を得ており、連邦内部で侮れない勢力を持っている。

 

御神美沙斗 女性 29歳 民間人

 舞がサイド7のスポーツセンターで出会った女性。本気になった舞に勝ってしまうほどの実力を持っており、白兵戦における強さは本作品中でも屈指の物。どういう仕事をしているのかは一切不明。

 


 

後書き

ジム改 遂に艦隊総出撃、果たして連邦軍は今度こそ勝てるのか。

祐一  これだけ集めて負けたら馬鹿だと思うが?

ジム改 甘いぞ祐一、圧倒的大軍が戦略的な失敗で数と質の双方で劣る敵に負けた事は歴史上数え切れん。

祐一  でもさ、今度のリビック長官は馬鹿じゃないんだろ。

ジム改 長官は馬鹿じゃないよ。長官はね。

祐一  なんだ、その厭らしい笑いは。

ジム改 今はファマスはオールキャストなのだよ。

祐一  はあ?

ジム改 そう、オールキャストなのだよ。

祐一  そ、そうなのか。

ジム改 ふふふふふふふ、オールキャストなのだよ。

祐一  しつこいわあっ!

 

ぼぐぅ!

 

ジム改 ぐはぁ、何するんだ!

祐一  お前がトリップしてるからだろ。

ジム改 何を言う、俺はこう見えても・・・・・・なんだったっけ?

祐一  忘れるんじゃねえ!

 

ぐわしぃ!

 

ジム改 ぐはぁ!

祐一  どうだ思い出したか、て、寝てるんじゃねえ!

ジム改 (気絶中)

 

 

 次へ>  <前へ>  <ガンダム外伝TOPへ>