37章 新型機受領


 オスマイヤーの輸送船団が入港したその日。フォスターTで何とも言えない物凄い模擬戦が行われていた。なんとたった6機のMSを12機のMSが追い掛け回そうとしているというか、振り回されているというか。
追いかけているのは北川が直接率いている北川大隊の指揮中隊で、総合的な能力ではカノン隊ではサイレン隊に次ぐとまで言われている部隊なのだが、それがたった6機のMSを追い詰められないでいるのだ。
 北川は追いかけても追いかけても一向に距離を詰められないという現実に正直呆れていた。

「なんだあの新型、出鱈目だぞ、こりゃ」
「隊長、これじゃ模擬戦にならないですよ」
「分かってるって。だが、あの足をどうやって止める?」

 部下の愚痴に真顔で応じて、北川はどうしたものかと目の前を悠々と飛んでいる1機のMSを睨みつけ、苦笑を浮かべた。

「あの野郎、誘ってやがる」

 目の前で適当な蛇行を繰り返している機体、自分のジムカスタムの発展型であるそれに乗る男、相沢祐一は間違いなくこう言ってることだろう。

「ふふふ、追いつけるもんなら追いついてみろ」

 何故かそう言って大笑いしている姿が思い浮かび、北川のこめかみに血管が浮かんだ。怒りを込めてペイントライフルの照準を目の前で飛びまわる祐一の新型、ジム・フルバーニアンに合わせる。

「思い知れ、相沢!」

 

 マイベックが擬装用として積んできた物資は、偽装ではあったが一応必要な物資ではある。その中には食料や推進剤、弾薬や補修部品などが積みこまれている。そして、本国からはるばる運ばれてきた新型機もその中に含まれていた。
 その数々の新型機を見せられて祐一を含めて全員がは呆然としていた。毎度の事ながら石橋整備長がニヤリ笑いを浮かべている。

「どうだ、驚いたか?」

 声も無くコクコクと頭を上下に振っている。まあ無理も無いだろう。そこにあるのは何十機という新型機と、連邦初の本格的MAなのだから。
 まず、比較的見慣れたジムカスタム系列の機体を説明していく。

「こいつはジム・フルバーニアン、バックパックにGP−01に使ってるユニバーサル・ブースター・ポッドの改良型を搭載してる。あと、機体構造もいままでのセミ・モノコックから一部がムーバブルフレーム構造っていうのに変えられてる。こいつのおかげで宇宙用のフルバーニアンを陸戦用のジム・ゼフィランサスに簡単に変更できるってのが売りらしい。おかげで機動性と運動性はGP―01並みだって話だ。まあ、見た目はジムだが性能はRガンダムを引き離してるぞ」
「GP―01並みって・・・・・・・・・」

 キョウが呆れたような声を出す。現在の連邦軍で間違い無く最速を誇るGP−01と同等の機動性を持つジムタイプのMS。冗談としか思えない性能だ。それが単機ではなく、2個小隊分、計6機も搬入されているのだ。

「まあ、こいつはGP−01の量産試作って所だ。開発そのものはデラーズ紛争前からやってたらしい。GP−01のデータを使ってな。それで、この戦争に間に合わせようと作り上げたのがこいつだ。いわゆる高級量産機って奴だな」
「こいつは、うちだけの配備なんすか?」

 北川が興奮気味に聞いてくるが、石橋は頭を左右に振った。

「いや、うち以外にも9機が運ばれてきてる。ティターンズに回ってないのが救いだがね」
「そうすか」

 北川ががっくりと落ち込んだ。上層部も理解が無い。こんな高い機体を送ってよこすなら、カノン隊に集中配備すれば良いものを。わざわざばらけたりしたらせっかくの戦力が無駄になっちまう。

 そして説明は次の機体に移る。それは、一年戦争を経験した連邦軍兵士達全てに奇妙な違和感を与える機体だった。

「こいつはRMS―106ハイザックだ。見た目はあれだが、一年戦争のザクよりは遥かに高性能な機体だぞ。ただなあ・・・・・・・・・」

 そこで石橋が言葉を濁した。不審に思ったシアン口を開く。

「どうしたんです、なにか問題でも?」
「いや、問題っていうかなんというか、こいつは新型機っていうより、ザクの皮を被ったジムUなんだよ。いや、基本性能はともかく、実際にはジムUよりも弱いな。ビームサーベルは無いし、ビームライフルじゃなくザクマシンガンの改良型が基本装備だ。ジムUには新型のビームライフルがようやく配備され出したのにな」

 はあ、と溜息をつく。石橋はそれ以上ハイザックの説明をする事もなく、次の目玉商品の説明に移った。

「こいつは連邦軍初の本格的MA、FFA―79Cハリファックスだ。戦闘機を巨大化したような機体だが、コクピット両脇にメガ粒子砲二門、上部左右にミサイルコンテナが二つ。機首に60mmバルカンが二つに近接戦闘用のクローとビームランスが機体下部に一つずつだ。火力と機動性は圧倒的だぞ。一応ビグロには互角以上の戦いが挑めるはずだ。反面防御力には難があるから、攻撃は避けろというのが基本だ」
「つまり、弾を浴びたら終わりってこと?」

 祐一の何気ない質問に石橋の動きが止まり、次いで寂しそうにこっちを見る。

「まあ、そういう事だな。図体がでかい分、MSよりも脆いかもしれん」
「まあ、俺達戦闘機パイロットにそれはあんまり関係無いけどな」

 キョウが腕組みしながら石橋の答えに続く。

「俺達はもともと攻撃を受けたらそれまでだからな。ジムの60mmバルカンでも戦闘機には致命傷だ」
「なるほどねえ」

 キョウの言葉に祐一はなるほどと頷いた。彼は戦闘機乗っていた時期が短いので、そういう事には理解が薄かったのだ。
 
「まあ、そんなに深刻になるほど、こいつの装甲は薄くないから心配するな。90mmマシンガンにも何とか持ち堪えられるよ」

 石橋は保証してくれたが、はっきり言って気休めにしか聞こえないのは皮肉だ。だが、機体の性格上このMAには戦闘機隊からパイロットを選抜するしかない。これはジオンMA隊も同じで、MAの運用がMSよりも戦闘機に近い事を示している。

 石橋の説明が終わったところで、シアンが部隊の編成変更を伝えた。

「あ―、新型機が配備された事は真に喜ばしい事だが、この機体はMSとしては破格の機動性を持っており、在来機との連携は非常に取りにくい。そこで、この機体は一つにまとめて運用する事になる」

 そして、ジロリと一堂を見渡した。皆も誰の所に回されるのか、固唾を飲んで聞き入っている。

「このジム・フルバーニアンは相沢大尉の隊にすべて預けることとする」
「「「ええええ〜〜〜〜〜!」」」
「やったぜ!」

 文句の声を上げた北川と佐祐理と天野をよそに、祐一は歓喜の声を上げた。そして、新型MAだが、これは誰もが予想した結果が出る事になる。

「ハリファックスはとりあえずこのデカさだ、搭載できるのはカノンかアレキサンドリア、あとは次の補給で到着予定の最新型空母くらいだな。とりあえず3機だけだが、あと9機配備されるはずだ。この全てをキョウに預ける。戦力化を急いでくれ。操縦系統はダガ−フィッシュのコクピットシステムの改造型だから、ダガ−フィッシュやセイバーフィッシュのパイロットを当てると良いだろ。もちろんお前もこれに乗るんだぞ」
「・・・・・・まあ、コアブースターがでっかくなったと思えば良いんですけどね」

 ちょっとキョウは不満そうだった。生粋の戦闘機乗りとしてのプライドがMAという兵器に乗ることに反発しているのだろう。

「なお、今度の補給により我が機動艦隊の主だったMS隊は全搭載機をジムU、ジムカスタム、ジムキャノンU、ハイザックで固める事が出来た。これは他の艦隊に対して、我が機動艦隊の優越性が認められた上での優先配備である事を自覚してくれ。また、これに伴い各部隊でバラバラになっている機種を再編し、合わせて四つの大隊それぞれに火力中隊を設ける事にした。火力中隊はジムキャノンUを集中配備し、大隊内における火力支援を専門に行う部隊だ。天野大隊における沢渡中尉の部隊を範として編成される部隊である。運用に付いては沢渡中尉に聞いてくれ」

 驚きの内容だ。誰もが信じられないという顔をしている。

「相沢大隊の主力はジムカスタムとする。北川大隊と倉田大隊、天野大隊にはジムUを主力として当てることにする。なお、各大隊指揮官もこれに合わせて機体を乗りかえる事になるからそのつもりでいるように」
「それって、俺達にジムカスタムからジムUに乗換えろって事ですか?」

 さすがに嫌そうな顔で北川が聞いてくる。まあ当然だろう。

「そうだ。機種は統一した方が運用もしやすいし、集団戦力としても好ましいだろう」
「まあ、それはそうですけど」
「それに、ジムUはジムカスタムよりも機体構造が単純で故障が少なく、頑丈に出来てるから堕とされ難い」

 シアンの説明は理に叶ってはいるが、それでもこの時点で乗り換えろというのは無茶だろうと誰もが思った。機種転換には時間がかかる。次の作戦まで一週間も無いのだから、これは無謀と言われても仕方が無い。
 だが・・・・・・・・・・・・・・

「機種転換にかかる時間は問題だが、これは猛訓練によって補う事にする。かなりの無茶だということは分かるが、やってくれ」
「中佐、でもこれは・・・・・・・・・」
「とまあ、ここまでは建前で」

 突然口調が変わった上官に、意表を付かれた全員がぽっかりと口をあけている。

「まあ本当の事を言うとだ、ティターンズがジムクウェルとハイザックで完全に装備を一新したことに対抗する為にうちの部隊の装備を一新する事になったんだ。ようするに対抗意識だな。その派閥争いに巻きこまれたって訳だ」

 はっはっはと笑うシアンに全員がジトーとした視線を向ける。誰もがそんな理由で現場に無茶を強いるなと言っていた。シアンもそれを察してか、右手をパタパタと振って全員の非難を受け流す。

「まあ、そう嫌そうな顔をするなって。こんな無茶を言われたんだ。俺だって黙って受けたわけじゃない」
「じゃあ」
「とりあえず、機種転換訓練にこの要塞で二週間、フォスターUまでに一週間の計3週間の時間は貰えた。この大半を機種転換と技量の擦りあわせに費やせば何とかなるだろう。幸い、ジムUはジム改やジムカスタムと操縦系統はほとんど変わらないからな」

 どうやら、シアンは皆をからかって遊んでいたらしい。からかわれた事に気付いたパイロット達が恨めしそうな目で睨んでいるが、まったく気にした様子も無く、今度は名雪を見た。

「それで、ハイザックだが、こいつは名雪を中心に編成される支援部隊の直援機として運用することにした」
「え、私の部隊?」

 物凄く意外そうな顔をする名雪に、シアンは編成表を渡した。

「とりあえず、名雪を中心とした新編成部隊で、狙撃中隊を組織する事になった。ジムスナイパーUが4機と、ハイザックが20機あるから、スナイパー1機に護衛が5機付くということになる」
「へえ、名雪が指揮官かあ、よかったな」

 祐一が名雪の肩を叩いたが、名雪の答えはちと的を外れたものであった。

「う――んと、護衛が付くのは助かるよ」
「・・・・・・・・・いや、中隊長になった感想を聞いてるんだけど?」
「え、私、中隊長さんになるの?」
「だああああああああああああ」

 祐一が豪快にずっこけた。いや、無重力だからぷかぷか浮かぶだけなんだが。こけはしなかったが他の者も呆れたり、引き攣った笑顔を浮かべたりしている。

「さっき言ってただろうが、お前を中心に中隊を作るって!」
「でも、中隊長さんになれなんて言われてないよ?」
「だからあああああああああ!」

 頭を抱えて喚く祐一に不思議そうな視線を向けて、名雪は小首を傾げながらシアンを見た。

「シアンさん、私、中隊長さんになるの?」
「いや、言った覚えは無いんだが」
「そうだよねえ」

 嬉しそうに頷いて、名雪は得意げに祐一の方を向く。

「ほら祐一、言った通りでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 祐一は困惑した表情でシアンを見ていた。ちょっと悔しそうなのが祐一らしいと言うか。シアンはニヤリ笑いを浮かべているので、この状況を面白がってたのは間違いない。

「別に、俺は名雪を中隊長にするとは言ってないぞ」
「で、でも、名雪を中心にして編成するって・・・・・」
「編成はするが、中隊長は別だぞ。今度配属される新しい中隊長にまかせるぞ」
「新しい中隊長?」
「ああ、いくらなんでも准尉でMS中隊は任せられんよ。地上軍の歩兵なら珍しくはないそうだけどな」

 いくらなんでも、MSのような最強の決戦兵器を12機、ないしはそれ以上も束ねなくてはならない指揮官に准尉を当てるような事は出来ない。一年戦争中ならそういう事例もあったようだが、少なくとも今はまだそこまで追い詰められてはいない。だが、まったく無いというわけでもなく、他の艦隊では中級指揮官の不足から准尉の中隊長は結構現れてきているらしい。また、地上軍から引き抜いて来て中隊を任せている部隊もあるそうだ。
 そして、シアンは地球圏に居残っている地上軍から新しい中隊長を引っ張りこもうとしていたのだ。これは、狙撃中隊という特殊な部隊を率いられる人材が少ないからである。
 実は、シアンはデラーズ紛争前からこの構想を持っており、秋子を通じて名雪の少尉への昇進を打診していたのだが、仕官学校も出てなく、実戦の経験も浅く(実際にはこれまでの戦歴を見れば名雪は十分な経験を積んでいる)、まだ18歳に過ぎない名雪では少尉に昇進させる事が出来なかったのだ。まあ、名雪の昇進に秋子が口を貸すのはなにかと非難の口実とされかねないという政治的な判断もある。
 そんな訳で、シアンは狙撃中隊を任せられる人材を探していたのだが、遠征前に何とか見つかり、ようやく秋子の力で機動艦隊への配属が決まったのだ。

「それで、その人は誰なんです?」
「ああ、前に北川や佐祐理を助けに行ったときに同行したバニング大尉の紹介でな。ディック・アレン中尉。バニング大尉の部下だった男だ」
「アレン中尉が来るんですか!?」

 アムロが驚いた声を出した。どうやら知っているらしい。香里が興味津々という顔で問い掛ける。

「知ってるの、アムロ?」
「ああ、前にアルビオンでオーストラリアのトリントンに行った時にそこであったんだ。あの基地ではバニング大尉に次ぐ腕を持ってたな」
「そう、あのバニング大尉の推薦だからな。俺もざっと経歴を調べて、すぐに受け入れたよ」

 ディック・アレン。一年戦争を生き抜いた歴戦のパイロットで、その技量はカノン隊のパイロット達に混じっても決して見劣りはしない。だからこそシアンは彼を招いたのだ。それでも、いくらバニングの推薦でも、実力が無い者をカノン隊の中隊長に据える程、シアンは愚かではない。それを知っているカノン隊の面々はシアンの話に素直に頷いていた。

 全員が納得したのを見て、シアンはさっそく新型機のテスト運用をしてみる事にした。

「ようし、まずジム・フルバーニアンがどれだけ使えるか見てみるとしよう。相沢は腕利きを5人選んで乗せろ。もちろんお前もだぞ。北川、お前の直属中隊で相手をしてやれ」
「え、でも、相沢達はこいつに乗るのは初めてなんですよ?」

 北川は驚いた。初めて乗る機体でいきなり模擬戦をやれというのだから。

「心配するな、こいつの操縦系統はジムカスタムと変わらん。ジムカスタムに乗れるんならとくに違和感無く乗れるはずだ。それに、北川達も全員ジムUに乗ってもらうんだからな」
「え――――!!」

 北川の悲鳴が格納庫に木霊した。

 

 祐一と北川はある程度機体を動かしたところでようやく部隊をまとめた。二人ともさすがに幾つも機体を乗り換えてきただけあって機体の癖を掴むが早い。部下たちがまだ戸惑っているにもかかわらず、二人は機体をほぼこの機体を乗りこなせる様になっていた。

「相沢、そろそろいいか?」
「ああ、模擬戦開始だ」

 北川と祐一が同じに動いた。それにつられて他の機体も一斉に動き出す。たちまち幾条もの火線が飛び交い、辺りはたちまち騒がしくなった。
 この時点ですでに祐一と北川は互いに自分の機体のコンセプトを掴んでいた。ジム・フルバーニアンの強みは圧倒的な機動性にある。これを生かしてひたすら一撃離脱を繰り返せばいい。
 ジムUの利点は癖の無いバランスの良さにある。これは集団戦向きの特徴であり、数が増えれば増えるほど威力を増していく。何よりパイロットの技量が低くてもそれなりの性能が引き出せるという点が大きい。
 この特徴の差の為、二人の命令は対極のもとのなった。

「全機、散開して北川達を振りまわせ!」
「小隊毎に編隊を組め。連携を崩すなよ、攻撃を集中して各個撃破する!」

 祐一の、北川の命令が飛び、それに従って部下たちが動いて行く。一斉に散って行く6機のジム・フルバーニアンと、それを3機一組で追っていくジムU部隊。互いに超一流の腕を持ってるだけに動きにまったく無駄がない。ただ、北川の部下の方が動きに統一感があった。部隊としての連携を重視する北川の性格がよく現れている。
 だが、この戦いではジムUとジム・フルバーニアンの性能差がはっきりと出ていた。高級量産機と汎用量産機では機体の完成度に決定的な差が出る。ジムUはクリスタル・スノ―を与えられる程のパイロットが扱うには特徴が無さ過ぎるのだ。反対にジム・フルバーニアンはクリスタル・スノーを持つパイロット達の力を完全に引き出せるだけのポテンシャルを秘めている。
 北川はあえて祐一を追わず、手近にいる機体に向けてペイントライフルを撃ち放ってみたが、予想を遥かに越えるスピードの為に全ては空しく宙を抉るだけだった。あらぬ方向に飛んで行く火線を見送って舌打ちをしてしまう。

「ちっ、予想よりもずっと速いな」

 もちろん機体性能だけではないだろう。パイロットの技量も半端なものではないのだ。しかし・・・・・・・・・・カノン隊の隊長の例に漏れず、北川もまた桁外れなパイロットであった。

「確かに速いが、足を殺す方法が無い訳でもないぜ」

 北川は目標の予想進路に次々と弾を送りこんだ。動きを読まれたジム・フルバーニアンが慌てて回避機動を変えるが、旋回に入った僅かな時間はどうしてもスピードが鈍ってしまう。北川はそれを見逃さなかった。動きが鈍ったところに次々とペイント弾が撃ちこまれ、ジム・フルバーニアンの機体が赤く染まった。

「速い機体で回るんじゃない。高速を生かして振り切るんだ!」

 MSパイロットは運動性を生かして敵の攻撃を避けようとする癖があるが、これは高速性能に優れる機体だとその性能を殺してしまう事になる。北川や祐一はセイバーフィッシュに乗っていた時期があるのでそういう戦い方が身についているのだが、最近パイロットになった連中はそういう発想が無いのだ。まあ、普通は接近乱戦の訓練を積んでいるのだから仕方が無いかもしれない。
 
 その模擬戦の様子をモニターで確認していた一同は新型機の動きに素直に感心していた。

「さっすが新型、速いなあ」
「ううう〜、これでRガンダムもロートルですか」

 中崎の漏らした感嘆の呟きを聞いて栞ががっくりと項垂れる。今まで連邦最強の量産機の座を維持してきたRガンダムであったが、ジム・フルバーニアンの登場によってその座を明渡す事が確実になったのだ。そりゃ残念だろう。
 栞が項垂れてる隣では名雪と香里が祐一と北川の超人的な技量に感心していた。

「凄いね、二人とも〜」
「・・・・・・ええ、日頃目立たないけど、やっぱりあの二人って凄いのね」

 香里から見ても二人の動きは凄かった。トリッキーな動きで相手の懐に飛び込み、ライフルやサーベルで止めを刺す祐一と、最低限の動きで敵の攻撃を避け、完璧な射撃で敵を仕留める北川は確かに他の機体とはあきらかに違う。
 もし自分が戦ったら勝てるだろうか? それはこの戦いを見ている全員に共通する思いであった。


 祐一はジム・フルバーニアンの機動性にものを言わせて向ってきた3機のジムUを翻弄していた。だが、翻弄はしていてもなかなか手を出すタイミングが掴めないでいる。さすがに相手も半端な技量ではないので隙がないのだ。迂闊な機動をすればたちまち集中砲火が飛んでくる。カノン隊の特徴は集団戦法にあるが、その中でも北川と佐祐理は自分の部下に特に徹底した訓練を施している。その北川の部下だけあって、3機1組でいられると洒落にならない強さになる。
 高速で一瞬引き離し、僅かな照準時間を得て射撃を加える。だが、これでは撃てるのはせいぜいにニ、三射が精一杯でこの位の射撃で当たってくれるようなパイロットはこの艦隊には一部の新兵を除いてほとんどいない。
 当然ながら、祐一は苛立っていた。

「あああああ、何でこう上手いんだ、なまじ味方なだけになんか嫌だ!」

 もともと気が短い上に、射撃よりも格闘戦の方が好きときている祐一だ。すぐにペイントライフルを左腕に持ち替え、ビームサーベルを抜いた。エネルギーレベルは訓練用の最弱に合わせる。これなら切りつけても表面に焼き跡つく程度で済むのだ。だが、これは整備士泣かせの訓練でもあった。案の定格納庫からは祐一に対する悲鳴と罵声の大合唱が上がっている。

「馬鹿やろ―――!」
「やめてくれ、仕事を増やすな!」
「誰が装甲直すと思ってやがるんだ!」
「今度機体に細工してやる!」

 などなどの物騒な台詞が格納庫にとどろいている事も知らず、祐一はジムUに斬りかかって行った。それに対してジムU3機は祐一と斬り結ぶのを避けるかのように退いて行くが、ジムUではどうやってもジム・フルバーニアンを振り切る事など出来ないのである。  
最初の一機がたちまち祐一に捕らえられ、斬りつけられそうになったが、逃げ切れないと悟ったジムUは自らもサーベルを抜くと逆に立ち向かってきた。2度斬り合ったところで仲間のジムUが2機戻ってきて援護射撃を加えて来るが、仲間が至近距離にいるだけに思いきって撃てないらしく、今までに比べると及び腰の射撃である。
 祐一は弾が飛んでこなくなったことで自分のペースに持ち込む事が出来るようになり、技量差に物を言わせて最初の一機を判定破壊してみせた。

 祐一は自分にかかってきた3機のジムU全てを片付け、ようやく一息ついていた。

「ふう、さすがは北川の直率部隊、強いわこりゃ」

 さすがに疲れてぼやいてしまう。味方のときはあまり気にしてなかったが、こうして敵にしてみると自分たちの部下が出鱈目な技量を持っていることを再確認してしまう。敵でなくて本当に良かったと思ってしまうのだ。
 やれやれと視線を戦場に戻した祐一は、あまりの光景にあんぐりと口を開けて固まってしまった。何と北川はビームサーベルを抜いて斬りかかってきたジム・フルバーニアンの攻撃を、敵の機体を巻き込む様に左に一瞬で回りこみ、無防備な左後方からペイント弾を叩きこんだのだ。
 倒されたジム・フルバーニアンのパイロットは斬り付けた瞬間、完全に北川のジムUを見失ってしまっている。

「・・・・・・嘘、だろ、ジムUであんなに速く動けるなんて」

 呆然と呟いている。だが、信じられないのは観戦している連中にしても同じであった。ジムUであんな動きができるなんて。

「まじ、かよ」
「ジムUって、あんな動きが出来たのか?」
「すげぇ・・・・・」

 格納庫でパイロット達が自信を喪失しそうになりながらもモニターを食入るように見つけている。それを離れたところから眺めながら、石橋と住井にバイエルライン、それにあゆは妙な笑顔を浮かべていた。

「祐一君も北川君も強いねえ」
「なるほどな、確かに凄い。サイレン隊の超エースと較べてもまったく引けをとらんだろう」
「ええ、ニュータイプパイロットとだって五分に戦えるでしょうね」
「ふん、あのくらいやってもらわなくては困る!」
「まあまあ、そう無茶言うもんじゃないな、バイエルライン少佐」
「・・・・・・は、申し訳ありません」

 バイエルラインが石橋に窘められてしぶしぶ持論を引っ込める。それを見て石橋に住井が問い掛けた。

「ところで、いつあれを出しますか?」
「ああ、機体はもう下部搬入ハッチに準備してある。タイミングは・・・・・・・・・」

 石橋はあゆの顔を見て、ニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「月宮、お前が出たい時に行けばいい」

 石橋に言われて、あゆは元気に頷いて駆け出して行った。それを見送り、住井は石橋を見た。

「どうです、相沢と北川があゆちゃんに勝てるかどうか、賭けませんか?」
「ほお、お前は当然月宮だろうな」
「まあね、自分で作った機体ですから」

 ちょっと誇らしげに答えた住井に、石橋は懐かしげな視線を投げかけた後、モニターに視線を戻した。

「俺なら、相沢達に賭けるな」
「そうですかな、月宮のパイロットとしての能力は確実に相沢、北川を上回ってると思いますが?」
「・・・・・・何でです、石橋整備長?」
「そうだな、俺はあいつらをお前よりも良く知ってるのさ。それが理由だ」

 石橋は何かを思い出すように目を閉じ、小さく呟いた。

「見せてくれよ、ルナツーの悪ガキども」

 それは、ごく一部の者にだけ通じる通り名であった。

 

 残っているジムUとジム・フルバーニアンは手を出すことも出来ずに呆然と戦いを遠巻きにしていた。祐一と北川が激しい銃撃戦を演じているのだ。これに手を出した双方は一機ずつを撃破されている。第一、二人の動きについていくだけで一苦労なのだ。
 だが、通信波に乗って交わされる言葉は聞く者を呆れさせるものであった。

「北川ぁ、先任に花を持たせようとは思わんかあ!?」
「相沢こそ、部下に勝ちを譲ろうって気は無いのかあ!?」
「ええい、前に食堂で飯を三回奢ってやっただろうが!」
「俺はお前に八回奢ってるぞ!」
「く・・・・・・ああ言えばこう言う・・・・・・可愛くない奴!」
「男が可愛くて嬉しいのか、お前は!?」
「いや、嬉しくないぞ!」
「なら馬鹿な事言ってんじゃねえ!・・・・・・ところで、前に貸した金、いつ返してくれるんだ?」
「うっ! つまらん事を覚えてやがる」
「おいっ!」
「・・・・・・次の給料まで待ってくれえ!」
「水瀬に奢らんといかん苦労は分かるが、俺も苦しいんだ!」
「くっ・・・・・・・・こうなれば、ここでお前を倒してやる!」
「踏み倒すつもりなのかあ!」

 弾と一緒にお馬鹿な言葉が応酬されている。これだけ見ると漫才のようだが、洒落にならない戦闘技術で機体を操り、弾を叩きこみ、鍔迫り合いを演じているのだ。見ている方にしてみればあまりのギャップに唖然とするか、感心するか、馬事雑言を浴びせるかのどれかであった。

 機体を激しく捻りこませ、急激な加速で距離を詰め、強烈なGに余裕で耐えながら横滑りする。二人はお互いの技量に笑顔さえ浮かべ、ぶつかり合って行く。

「やるなあ、北川!」
「腕は落ちてねえな、相沢!」

 機動性にものを言わせ、ひたすらに北川に次々と無駄弾を撃たせる祐一。時折牽制で射撃を加えるが、牽制と読まれているらしく北川は回避運動さえとろうとはしない。一見すると北川に弾を消費させている祐一の方が有利そうだが、実の所祐一は冷や汗をかきながら必死に回避しているのだ。さっきから時折牽制射撃を加えているように見えるのは、牽制ではなくちゃんと北川を狙っているのだ。ただ、照準を合わせている暇が無いので正確さを欠いているにすぎない。おまけに急激な回避運動を続けているので推進剤の消費が馬鹿にならないのだ。
 その一方で北川もだんだん焦ってきていた。ペイント弾は無限にあるわけではない。このままだと弾切れで敗北という事にもなりかねない。
 
互いに少しづつ焦りが見え出したとき、新たなる乱入者が現れた。祐一はいきなり飛んできたペイント弾に慌てて機体に制動をかけ、急激なGに顔を歪ませながらも何とかそれを回避した。

「なんだ、誰が撃って来た?」
「どうした相沢?」

 急に動きが変わった祐一に北川が問い掛けてくる。

「気をつけろ北川、誰か撃ってきた」
「誰かって、部下じゃなくてか?」
「ああ、別の何かが、ここに居る」

 祐一と北川が周囲に視線を走らせる。二人の部下たちも警戒して辺りを伺うが、それらしい敵はいない。

「いないぞ、相沢」
「いや、間違い無く誰かが撃ってきた」
「・・・・・・まさか、水瀬さんじゃないだろうな」

 北川が生唾を飲みこむ。『美貌の死神』水瀬名雪の恐ろしさはほかならぬ自分たちが一番良く知っている。彼女は超長距離射撃を正確に当ててくるだけの実力があるのだ。だが、祐一はその予想を否定した。

「いや、名雪じゃない」
「じゃあ誰だ?」
「そいつは分からんが、さっき見えた推進剤の光からすると、かなり速いMSだ」
「かなり速いMSねえ、うちにそんな機体あったか?」

冷静に考えた二人は、そう言えば一機そういう機体がいくつかあったのを思い出した。ついでに言うと、それらの機体はパイロットともども、非常に厄介な相手であったりする。

「・・・・・・シアンさんか、舞か、それとも・・・・・・」
「キョウのコアブースターだったらいいなあ」

 祐一と北川の予想は何とも言えない厄介なものであった。シアンのザイファ、舞のセレスティア、あるいは秋子のアサルトガンダムやアムロのGP−01FB、このどれが来ても厄介な事この上ない。はっきり言って勝てる気はしない相手だ。

 だが、やってきたのはそのどれでもなかった。見た事も無いフォルムをもち、背中に二枚の翼のようなユニットを付け、異常な高速で迫ってくる。

「な、なんだありゃ?」
「気をつけろ相沢、あいつ、ジム・フルバーニアンよりも速いぞ!」

 北川がペイントライフルを三連射してみたが、その全てが空しく宙を切ってしまう。なかなか良い腕をしているらしい。

「気をつけろ相沢、良い反応をしてる!」
「ちっ、北川に無駄弾を撃たせたか・・・・・」
「俺が支援する。相沢、前に出てくれ」
「分かった、久しぶりに行くぞ!」

 祐一が真っ直ぐ突っ込んだ。北川が゙それに続く。加速性能が違うので北川はあっという間に引き離されていく。だが北川はあせった様子も無く、離れていくジム・フルバーニアンを眺めていた。
 
 ジム・フルバーニアンが突っ込んでくるのを見て、その新手はペイントライフルを容赦無く叩きこんできた。まだまだ弾が沢山あることを誇示するかのように雨霰と撃ち込んでくる。祐一はそれを横滑りを繰り返しながら必死に回避しまくっていた。

「うだああああ、ポンポン撃ちまくりやがって!」

 自分は弾数を数えながら撃っているので、はっきり言うと面白くない。次々と飛来してくるペイント弾を避けながらなんとかビームサーベルが使える距離まで迫ろうとするが、向うもそれは読んでいるのか巧みに距離をとって近づかせないでいた。

 その新型機を操ってるのはなんとあゆだった。逃げ回る祐一を見てちょっと嬉しそうだ。

「うっぐっぐ、さすが祐一君、上手く逃げるよ」

 予備の弾装がたくさんあるためか、余裕の表情で弾をばら撒くあゆのセイレーン。高性能な照準器の助けもあってかなり正確な射撃を加えている。
 だが、いきなりロックオンのアラームがコクピットに響き渡った。

「ロックオンされた、誰!?」

 翼が動き、機体が左に反れた。その直後に火線がそれまでいた場所を貫いて行く。何かと周囲を確かめると、北川のジムUが移動射撃を繰り返しているのが見えた。

「さすが北川君、あんなに動き回ってるのにちゃんと当ててくるよ」

 あゆは必死にセイレーンを動かしていたが、僅かなレスポンスの遅れに苛立ちを覚えてきていた。

「もう、この外装邪魔だよ!」

 あゆは擬装用の外装をパージした。機体を包みこむ無骨な鉄板が剥がれ落ち、中からセイレーンの本当の姿が現れる。その姿を見て祐一と北川は驚きを浮かべた。

「あいつは、セイレーン!」
「あゆちゃんだったのか」
「さあ祐一君、北川君、勝負だよ!」

 セイレーンが祐一と北川に襲いかかる。この時代としては最新の理論であるウィングバインダーによる補助AMBACシステムと、GP−01FBのコピーながらもムーバブルフレームを持つセイレーンの運動性能は桁外れだ。加えてシェイド仕様なので加速率を始めとする各種リミッタ―が人間の限界を無視したレベルに設定されている。ようするに普通の人間なら呼吸困難を起したり、骨や臓器に損傷を負いかねない危険な機動を繰り返せるのである。
 祐一はこのセイレーンの動きに完全に置いていかれていた。

「こいつは・・・・・・・・」
「遅いよ、祐一君!」

 物凄い速さで距離を詰めてくるあゆに祐一はビームサーベルで立ち向かった。はっきりうのは癪だが、自分の射撃技量であのセイレーンに近距離で当てられる自信は無い。
 それに、祐一が銃を使わなくても、もう一人がやってくれるのだから。

「相沢は突っ込め、俺が動きを押さえこんでみる!」
「ああ、頼むぜ北川!」

 北川と祐一があゆに突っかかる。あゆは二人の動きが不思議なほどに奇妙な連携を見せている事に驚いていた。

「なんであんな風に動けるの、連絡を取り合ってる様子も無いのに?」

 祐一は後方から撃たれているのに平然と突っ込んでくる。それは北川は絶対に自分に当てないという自信があるからだろうが、果たしてそこまで信じられるものなのだろうか。だが、実際に北川の射撃は祐一のジム・フルバーニアンを掠る事も無く、正確に飛んでくる。信じがたい話だが、北川は祐一がどう動くか分かっているようだ。


 カノンの艦橋ではあゆが出撃している事に驚き、各部署に問い合わせが行われていた。それを眺めながら秋子はどうしたものかとマイベックに問い掛ける。

「誰の仕業でしょうね、参謀長?」
「おそらく、石橋整備長でしょうな。アーセン博士も一枚噛んでると思います」
「でしょうねえ・・・・・・たぶんバイエルライン少佐と住井さんもね。でも、祐一さんも北川さんもやりますね」

 秋子の目から見ても二人のコンビプレーは素晴らしいものと映った。どうやらお互いに呼吸は完璧らしく、普通に考えれば無茶苦茶な戦い方をしている。祐一は誤射されるのをまったく恐れてないし、北川は祐一の背後から、あるいはあゆの周囲に回って躊躇無く射撃を加えている。あれではどんなパイロットだって苦戦するだろう。

「うちに来た頃よりも更に腕を上げてますね、二人とも」
「・・・・・・ですが、あんなものを見せられれば、ティターンズも心中穏やかではないでしょうな」
「そうでしょうね、連邦最精鋭部隊というのが謳い文句ですから」

 秋子とマイベックはとても嬉しそうな顔で離れたところに停泊している重巡洋艦アレキサンドリアを見やった。二人に超能力があったわけではあるまいが、この時アレキサンドリアの艦橋ではバスクが祐一達の戦いの様子を見ていたく気分を害しており、「あれくらいのパイロット、我々にもおるわ!」と激昂していたのである。
 そして、カノンの艦橋にあゆの悲鳴が響き渡った。

「うぐううぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「あ、どうやら堕とされたようですな」
「あゆちゃんもまだまだですねえ」

 のほほんとしている秋子だが、内心では怒ってたらしく、この後帰ってきたあゆと共犯者全員に仲良く機体の修理と、山のような始末書を与えている。



機体解説

RGM―79N−FB ジム・フルバーニアン
兵装 ジムライフル 又は ビームライフル
   頭部60mmバルカン×2
   ビームサーベル×1
   シールド

<解説>
 GP−01FBの量産型で、連邦の依頼ではなくアナハイム社の自主企画MS。始めて本格的にムーバブルフレームを採用した量産型MSで、熟練者が搭乗することの前提に設計されている為にかなり使い難い機体となっている。基本性能はGP−01FBとほぼ互角であり、設計の見直しによってのムーバブルフレームの簡素化やコア・ブロック・システムの廃止によるコストの著しい削減を達成している。ただし、装甲をはじめとする各種構造材にはファマスの新型機に仕様されていたガンダリウムβが採用されており、試作機に較べれば遥かに安価であるものの、ジムUやハイザックと比べて遥かに高額な機体である事に変わりはない。

RMS−106 ハイザック
兵装 :ザクマシンガン改
    ヒートホーク
    シールド
    4連ミサイルポッド×2
<解説>
 連邦とジオンの技術融合を目指した機体の第一号の栄誉を獲得したMS。本当なら開発中のリニアシートや全周スクリーンを装備するはずであったが、配備を急いだ為にそれらは諦め、従来のシステムを搭載している。
 その性能は決して悪くはないが、どうにもぱっとしない。さらにその外見から一年戦争生え抜きのパイロットからは忌避される傾向にあるなど、問題も多い。特に連邦MSの最大の武器である複数のビーム兵器のドライブが不可能というのは致命的で、ビームサーベルを装備する事が出来ない。これはジェネレーター出力が低いのではなく、エネルギー効率に問題を抱えているためである。
 生産コストは同時期の主力であるジムUやガルバルディβに較べて安価であり、将来的には連邦軍の主力の地位を得る事は約束されているとも言える機体である。

FFA−79C ハリファックス
兵装 :メガ粒子砲×2
    ミサイルコンテナ×2
    60mmバルカン×2
    クロー
    ビームランス
<解説>
 連邦初の本格的MA、戦闘機から発展したような機体で、コクピット形状は完全にセイバーフィッシュを踏襲している。兵装は開発中のGP−03を参考にしており、大口径メガ粒子砲2門とコンテナミサイルは圧倒的な火力を約束している。また、格闘戦装備としてある程度自由に動く格闘クローと、正面固定だがビームランスが装備されている。それとコクピットの機首には戦闘機の名残とも言えるバルカンが装備されている。コクピッとの左右はシールドのようなもので防御されているが、装甲はジオンMAに較べて薄いのは否定できない。反面火力と機動性は圧倒的で、ジオンMAよりも更に一撃離脱思想を推し進めた機体といえる。



後書き
祐一  ふははははははははは!!
ジム改 ど、どうした、やけに機嫌が良いが?
祐一  決まっている。やはり主役は目立たなくてはいかんのだあ!
ジム改 まあ、確かに今回は目立ってるけどね。二人ががりとはいえあのあゆの乗った
    セイレーンを堕としてるわけだし。
祐一  そのセイレーンとあゆだけど、実際どれくらい強いんだ?
ジム改 単純な強さならリヴァ−ク乗ったみさきくらい。
祐一  化け物じゃねえか!
ジム改 いまのあゆはそれくらい強いんだよ。まあ、機体性能がパイロットの技量差を
    かなり補ってるからこそなんだが。
祐一  セイレーンてそんなに強いのか?
ジム改 所詮リヴァークは一年戦争中の実験機だからねえ。対するセイレーンはほぼ完
    全な第二世代MSだもの。さすがに世代の差が出てくるよ。
祐一  パイロットの腕よりも機体の性能か。
ジム改 さすがに3年も前の機体だからな、仕方ないって。それでは次回でお会いしま
    しょう。

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