第3話  舞い降りた少女


 5月2日、撤退してきた連邦軍や避難民を一時的に海鳴基地に受け入れたことで、海鳴は基地も街も人でごったがえしていた。後退してきた部隊のうち、志願する者は基地に残って守備につくが、負傷した者や戦意を喪失している者はとりあえずジャブローに送られることになっている。重傷者だけはどうしようもないので海鳴にある軍病院に収容されたのだが、それだけではとても足りず民間の病院にも負傷者が送られていた。
 これらの多くは第3艦隊の艦艇に護衛されながら輸送船で南米に送られたのだが、負傷者などはミデア輸送機で空輸していた。この時期になるとキャリフォルニアベースとハワイ軍港を制圧したジオンのユーコン級潜水艦やゴッグが太平洋と大西洋で暴れ始めていたのだが、まだ数が少ないので第3艦隊にとってそれほどの脅威となる事はないだろう。
 また、南米ジャブローからはるばるやってきたミデア輸送機もある。30機を超すミデア輸送機が水平線の向うから徐々に大きくなって行く。よく見れば途中から出迎えに出ていた海鳴基地所属のフライマンタ12機が上下を固めている。やがてそれらが基地に降り立つと、膨大な物資や人員を基地に引き渡す作業が始まった。
 秋子仕事の手を休め、司令部にあるオフィスの窓からしばしその光景を見ていたが、小さく溜息をつくとまた作業に没頭し始めた。今やらなくては何時までも終わらないと思えるほど、机の上には未決済書類が積み上げられていたのだから。

 

 海鳴基地に物資が運びこまれている頃、東京に拠点を置いたジオン軍将兵は歓声を上げていた。地中海で準備の進められているジャベリン作戦、トライデント作戦を前にようやく補給部隊が到着したのだ。この基地を占領してから実に一ヶ月以上もまともな補給を受けられなかったために、連邦軍が遺棄した物資を使って何とか基地施設を復旧していたくらいである。キシリアは編成の進んでいる潜水艦隊の補給基地として東京に期待していたのだが、肝心の湾口施設が完全に破壊されていたのである。第3艦隊が撤退する時に艦砲で徹底的に破壊していった為で、倉庫一つ残さず大穴を開けられ、持って行けなかったらしい物資の多くは破壊されていたのだ。
 クルーゲ准将はこの事態に頭を痛めた。もともとジオン軍には物資を現地調達でまかなうという考えがあったので、こうも徹底的な焦土戦術を取られては致命傷になるのだ。バイコヌール宇宙基地に残されていた移民用シャトル数十機を改造して作られたガウ攻撃空母やファットアンクル輸送機でMSや各種車両、物資を運びこんでくれたので、ようやく一息つく事が出来る。

「ふう、これでどうにか海鳴基地攻略にとりかかれそうだな」
「はい、MS12機にマゼラアタック48両、装甲車72両が加わりました。不足していた食料や弾薬も補充されましたし、何とかなるでしょう」
「うむ、だが、連邦軍も補給を受けているだろう。甘くは見れんぞ」

 作戦部長と話をしながら、クルーゲは最近の威力偵察隊の報告書を見ていた。海鳴基地を拠点とする連邦軍はかなり補給を積み上げているらしく、苦しい台所から捻出した完動状態のザク9機を1個小隊づつ交代で送りこんでいるのだが、どうやら基地を中心に防衛線を敷いたらしく、どこから進入しても迎撃を受けるというのだ。それも最初は戦車部隊だけの突撃戦法だったものが、今では重砲や対戦車砲を高所に敷き並べ、戦車は徹底した待ち伏せ作戦を取るようになっているという。この一ヶ月で4機を中破させられ、2機を喪失してしまったのだ。明らかに連邦軍は戦い慣れしてきている。加えて、要塞化された防御陣地が海鳴基地を囲うように幾つも連結されており、これの攻略は今までのクルーゲ―の手持ち戦力では到底不可能だったのだ。
 だが、クルーゲにはそれだけではないと考えていた。確かに実戦慣れしてきているが、アジアの連邦軍はMSと戦ってまだ一月しかたっていないのに、ザクへの対抗手段を立てるのが早過ぎる。よほど良い参謀や指揮官が居るのだろう。

「・・・・・・面白いかもしれんな」
「は、なにがですか?」
「いや、何でもない、気にするな」

 クルーゲは緩んでいた口元を引き締めると、運び出されているMSに視線を向けた。そこから引き出されているのは配備が始まったばかりのザクUJ型だ。その中に1機だけYMS−07Bグフが混じっているのが目立つところだ。新型機まで送られたのだから何とか攻め落とさなくてはならないのだが、まさか連邦軍のほうも新型が配備されているとは思いもよらなかったのである。
 


 5月12日。中国から撤退してきた将兵や民間人の後送や、新たに指揮下に加わってきた部隊の再編、その他の雑務をようやく終えた秋子はホッと一息をつくと、鹵獲したザクの修復が行われている格納庫へと足を運んでみた。格納庫では整備兵たちが汗だくになってとりあえず作り上げてみた急造MSハンガーに中破したザクを組みつけている。指揮をとっているのは整備班長の石橋大尉だ。この石橋大尉は秋子が基地に赴任した当初から秋子に好意的だった唯一の幹部士官で、基地内での人望も非常に高い。

「石橋さん、状況はどうです?」
「あ、水瀬大佐、あんまりはかどってるとは言えませんな。何しろ人手が足りませんから」
「整備兵の増員もお願いしたんですけど、何処も人手不足らしくて、ここだけ優遇はできないって断わられましたからね」
「まあ、そうでしょうな。あれだけ派手に負ければ」

 秋子の言葉に石橋は最もだと頷いた。
 石橋は折角来たのだからと秋子を稼動状態にあるザクに案内した。現在この基地には研究用にジャブローに3機を送ってしまったが、鹵獲時に得た小破程度の機体が3機と、石橋達の不屈の努力と、機体から入手したマニュアルなどによって何とか組み上げる事が出来た機体がやはり2機ある。計5機が稼動状態にあり、航空機パイロットたちから選ばれた者が訓練を積んでいるのだ。秋子も興味を持って幾度か訓練に参加している。かつては宇宙軍で天才とまで呼ばれた戦闘機パイロットであった彼女には機動兵器に対する慣れがあったので、MSの操縦も比較的速く慣れることが出来た。ただ、その習得速度が他のパイロットに較べて異常とも言えるほどに速く、往年の名声を周囲に思い出させている。特に反応速度の高さは脅威的であり、その実力は他のパイロット達に良い刺激となっていた。
 ふと、石橋が得意げに秋子を1機のザクのもとに案内した。

「大佐、こいつに乗ってみませんか?」
「あら、良いんですか?」
「構いませんよ。ただ、今までのザクとは少し違うようなんですがね」
「と言うと?」
「随所の装甲が厚かったり、ちゃんと防塵フィルターが付けてあったりしてるんです。こいつは間違い無く陸戦使用型ですね」
「陸戦型、ですか」

 秋子は物珍しげにその機体を見上げた。言われただけではピンと来ないが、石橋がそういうのならそうなのだろう。早速ザクに乗りこんだ秋子は備え付けのヘルメットを被ると機体を動かしてみる。

「あら、レスポンスが軽いですね」

 秋子は今まで乗ったザクとは明らかに違う事に気付いた。動きが軽いのだ。

「流石は陸戦型、という事ですか。これが沢山出て来るようになったら手を焼かされそうですね」

 ざっと機体を走らせてみた秋子は、持ってきたザクマシンガンを使ってみた。軽い反動と共にカン高い音を立てて120mm弾が撃ち出され、射撃場に幾つもの着弾煙を上げている。今までにも幾度かザクマシンガンを撃った事はあったが、これほどに反動は軽くなかった。それを思えばこの機体がいかに安定しているかが分かる。

「凄いですね、今までのザクとは違います」
「そうでしょう、こいつは一級品ですよ」

 だが、石橋の自慢面もすぐに凍り付くことになった。なんと試射していたザクマシンがンがいきなりジャムを起こして撃てなくなってしまったのだ。撃鉄が空撃ちする音を聞いて秋子がちょっと困った声を出す。

「石橋さん?」
「・・・・・・まあ、調整が足りなかったようですな」

 ボリボリと頭を掻いて誤魔化そうとする石橋は、それでも負けるものかとばかりに次の目玉を出した。

「しかし、ザクマシンガンなんぞ無くても、我々は立派に戦えますぞ。見てください、この海鳴工廠製兵器の数々を!」

 ずらりと並べられた兵器の山を見て、秋子の頬をタラリと冷や汗が伝わり落ちていった。それらはいずれも何処かで見たことのあるパーツがふんだんに使われていたからだ。

「・・・・・・あの、もしかしてそのライフルみたいなのは・・・・・・」
「はっはっは、61式戦車の主砲を改造した手持ち式ライフルです。反動が大きいので両手で保持する必要がありますが、一発の威力は120mmマシンガンの比ではありません。まあ、連射が出来ないのが玉に傷ですか。玉は上に付いてるバナナ型弾装で12発です」
「・・・・・・大丈夫なんでしょうね?」
「試射した限りでは信頼性は抜群です。なにより砲身の代えが幾らでもありますから壊れてもすぐに直せます」

 石橋はそう保証してくれた。実のところ、ザクは鹵獲兵器なので壊れてもパーツの交換が難しい。まして消耗の激しい武器の問題は頭の痛いところなのだ。そういう意味では石橋の作った武器は確かにありがたい。ただ、連射できないという事が不満ではあるのだが。

 一通り兵器の説明をした石橋は、気になっていることを秋子に問い掛けてみた。

「ところで大佐、お聞きしたい事があるんですがね」
「なんですか?」
「ミデアが運んできたデカブツの事ですよ」

 石橋は格納庫に搬入されている巨大な戦車モドキと言うか、MSモドキを前に少々困惑した表情を浮べていた。これこそ連邦軍の誇る初めてのMS、RX−75−3先行生産型ガンタンクである。中東戦線のすぐ背後にあるテルアビブ工廠で評価試験が行なわれていた物と同じ機体だ。この機体が3機格納庫に納められており、ジャブローからやって来た技師の指導の元で整備点検を行っている。

「何でこんなものをここに運びこんだんですかね?」
「実戦データを得たいという事だそうですよ。あと2〜3ヶ月もすれば本格的なMSの配備も始まるという事ですから」
「本格的って、じゃあ、連邦軍のMSの開発はそこまで進んでるんですか!?」

 石橋は驚きのあまり愕然としてしまっていた。まさかこんなに早く連邦軍がMSを開発できるとは思っていなかったのだ。
 だが、石橋の想像は少し間違っていた。連邦軍のMS開発計画は戦前から始まっており、RX−75も開発そのものは4年も前、75年に始まっていたのである。ただ、遅々として進んでいなかったこの計画もジオンとの戦争のために一気に加速される事となり、V作戦の名を与えられている。もっとも、開戦時の段階で連邦のMS開発技術はザクT程度のMSならば生産可能なレベルにまで達しており、ザクTのコピ−生産を行ってはどうかという意見があったのである。
この意見は急場をしのぐという意味では正しかったのだが、レビル将軍はこの意見を退けている。レビル将軍は連邦独自の技術で開発されたMSにこだわった訳だが、その理由としてすでにザクUS型で性能限界に達していたザクシリーズには発展性が無く、今後登場してくるであろうジオン新型MSには対抗できないという判断があった。
一介の大佐でしかない秋子は流石にこんな事情までは知らなかったが、先行量産型とでも言うべきMSが開発されている事は知っていたのである。

 

 連邦軍防御陣地を光学センサーで捉えたジオン部隊は一度前進を止めた。先頭集団と一緒に行動していた装甲車に将旗を掲げたクルーゲは上部ハッチから上半身を出して双眼鏡を防御陣地に向けた。

「・・・・・・砲台3つに戦車か。トーチカも多いな。頂上にあるのはレーダーサイトか」

 防御陣地の状況を自分の目で確かめたクルーゲはニヤリと口元を歪めた。ここに持ってきた戦力はザク14機にグフ1機、マゼラアタック30両にもなる。これに歩兵を乗せた装甲車が50両ほど続いているのだ。あの陣地を落とすには過剰とも言える大軍である。
 そのまま暫く待機していると、上空から空気を切り裂く轟音が聞こえてきた。空を見上げればドップ12機に護衛されたドダイ爆撃機8機がこちらに向かってきている。ある程度近づいたところで陣地から対空砲火が撃ち上げられだしたがそれほど濃密な火網を形成している訳でもなく、攻撃隊は僅かな犠牲を出しただけで陣地上空に達すると爆弾を投下し、ロケット弾を叩き込みだした。
この様子を見ていたクルーゲは装甲車の中に戻ると、通信機のマイクを持って命令を出した。

「MS隊、攻撃開始。マゼラアタック隊はMS隊の攻撃を援護しろ!」

 連邦軍陣地に向けてMS部隊が一斉に駆け出した。それに続いてマゼラアタックと装甲車部隊が土煙を上げて疾駆して行く。戦線が膠着して以来、実に1ヶ月ぶりのジオン軍の本格攻勢の再開であった。

 

 ジオン軍急襲の報告はザクUJ型の試験を行っていた秋子の元に直ぐに届けられた。いきなり繋がった通信モニターの向うには司令部ビルにある作戦室に居るらしいマイベックの動揺した顔がある。そのただならぬ様子に秋子は何か非常事態が起こったことを悟った。

「司令、大変です。ジオンが第12監視所に攻撃をかけてきました!!」
「・・・・・・来るべき物が来ましたか。それで第12監視所の戦況は?」
「敵は戦爆連合による空襲をかけた後、MSと戦車を押し出して攻撃をかけてきたという事です。現在交戦中ですが、食い止められそうも無いと言ってきています」

 どうやら敵はかなりの大軍を持ってきたらしい。秋子は胃に何か重いものを飲みこんだような重さを感じたが、それを顔に出す事は出来なかった。

「・・・・・・第12監視所には陣地を放棄して後退するように命令を。無理に死守を考えて兵力まで失う愚は避けなくてはいけません。それから海鳴基地の全軍に戦闘配置を指示。私はMS隊と戦車隊を率いて第12監視所に急行します」
「ちょっと待ってください。司令がMSで出る必要は無いでしょう。ここで全体の指揮をとって下さい!」

 マイベックはモニターの向うで滑稽なほどに慌てふためいている。海鳴基地・・・・・・いや、日本地区司令官である秋子が自ら前線に立つというのはいかにもまずい。もし戦死でもしたら取り返しのつかないことになる。
 だが、秋子は意思を変えるつもりは無かった。MSの運用法を自ら体験して確立したいという考えもあったが、現在の海鳴基地にはMSを扱えるまでに成長したパイロットは自分を含めてもまだ5人しかいないのだ。つまり、稼動するザクの数と等しくなる為、1機でも多くのザクを投入したい秋子としては自分がザクを操縦するしかなかったのである。
 暫く騒ぎ立てていたマイベックであったが、説得が不可能であると悟ると諦めたように重く深い溜息をついた。

「分かりました。私はここに留まって戦況をお伝えします」
「ごめんなさいね」
「いえ、もう慣れました」

 何やら大切な何かを捨て去ったような、妙にぐったりした表情でマイベックを通信を切った。それを見てしまった秋子は何やら罪悪感にかられてしまい、次は前線に出でるのは止めようかと思ってしまっていた。
 だが、秋子のそんな罪悪感も全軍の出動準備が整うまでであった。すでに秋子のザクUJの周囲には4機のザクUFと3両のガンタンク先行生産型が集まり、更に100両近い61式戦車が並んでいる。他にも支援部隊の自走砲やミサイルキャリアー、歩兵を満載した装甲車などが集まっている。
 戦力が整った事を確認した秋子は出撃を命じると、自らの機体を前進させ始めた。

 秋子達が出撃した少し後には航空隊も出撃しようとしていた。ノーマルスーツを着込んだパイロット達が並べられているフライマンタやフライアロー、セイバーフィッシュに乗り込んでいく。
 飛行隊長のサッチ大尉が各機の状態を確認していると、何故か未だに出撃準備が終わっていないフライマンタがあった。気になって近くの整備兵を捕まえて聞いてみる。

「おい、美坂伍長はどうした?」
「自分は見てませんが・・・・・・」

 すまなそうな整備兵にサッチは気にしなくて良いと手振りで伝えると、辺りを見まわした。栞は短期養成で戦場に送られてきた志願パイロットなので、戦技以外の面ではどうにも軍人らしさが足りない。まあそういうものはおいおい身に付いて来るものであるし、そんな事を教えている暇は自分にはないのだ。それに、これからは栞のような補充兵が増える事は間違い無いので、早めに慣れる必要もある。

「教育カリキュラムを作った方が良いかもな」

 何となく憂鬱な未来を想像してしまい、サッチは少し深刻になってしまった。
 暫く機外で待っていると、ようやくパイロットルームからヘルメットを引っ掴んだ栞が駆け出してきた。

「美坂伍長、何をしていた!?」
「す、すいません、ノーマルスーツを着るのに手間取ってっわきゃぁっ!!」

 慌てて答えようとして足をもつれさせ、転んでしまう栞の醜態にサッチは呆れてしまい、小さく溜息をついた。

『新兵にしては良い腕なんだが、こういうところでは抜けてるというか・・・・・・』

 起き上がって慌てて自分の機体に駆けていく栞の姿に、まだ16歳の少女だという事が脳裡を掠め、ふと緩みそうになった口元を慌てて引き締めると自分もフライマンタに乗りこんだ。

「よし、これよりジオン軍に対する空襲に出かけるぞ。奴等を叩き出すんだ!」

 
 極東方面軍・・・・・・今では残ってるのは海鳴基地だけとなってしまったが(マドラスから東南アジアにかけて展開してるのは位置的に南アジアか、インド方面軍となるだろう)、そこに所属する第12監視所は、監視所と言ってもほとんど要塞化されてるが、形ばかりの抵抗を見せた後、戦車を殿としてジオン軍が拍子抜けするほどあっさりと撤退して行ってしまった。
 なんともあっけない緒戦に装甲車から降りたクルーゲも暫く呆然としていたが、気を取り直すと部下を呼んで工兵に監視所の調査を命じた。余りにもあっさりと逃げて行っただけに、罠の可能性を考慮したのだ。もし弾薬庫に爆発物でも仕掛けられていようものならこちらは致命的な打撃を受けかねない。
 暫く監視所の制圧を控え、工兵隊の調査完了を待っていたジオン軍であったが、海鳴の方角の空に芥子粒のような黒い点がポツポツと現れたのを見て慌てだした。

「おい、連邦の航空機が来たぞ!」
「やべえぞ、早く何処かに隠れろ!」

 慌てて森に身を隠そうとする車両や歩兵達。遮蔽物の無い開けた地形では航空攻撃は最大の効果を発揮するので、これらの目標はいい的になってしまうからだ。MS部隊はマシンガンを空に向けて迎え撃とうとしているが、これは自信の現れだろう。
 だが、この時彼らは連邦空軍がこれまでとは違う戦法を準備している事までは知らなかった。
 ジオンMS部隊を確認したサッチはその上空に12機のドップがいる事を確認した。離れて行くのは爆撃機だろう。となれば、空戦性能に優れるセイバーフィッシュにドップを叩かせ、旧式のフライアローに爆撃機を叩かせるのが良いだろう。

「セイバーフィッシュ隊はドップを叩き落せ。フライアロー隊は逃げて行く爆撃機を始末しろ。フライマンタは予定通りMSをやれ!」

 サッチの指示に従って編隊が三つに分かれていく。ドップ部隊もこちらに向かってきたが12機のドップに対してセイバーフィッシュは18機もいる。うち3機はこちらの直衛に充てているから15機だが、まず負ける事は無いだろう。制空権に不安がない事を確認したサッチはマシンガンを撃ち上げ始めたザクを睨みつけた。

「各小隊毎に狙いを定めろ。同時に爆弾を叩きつけて確実に破壊するんだ!」

 サッチは狙う敵を決めると部下に付いて来るように言った。

「美坂、ブロイ、マヌエル、右端の奴をやるぞ!」
「「「了解!」」」

 4機が一本槍となって急降下をかける。ザクは対空砲火を放ってきているが急降下爆撃機を光学射撃で捕らえるのは容易ではない。サッチ達は600メートルまで降下すると抱えてきていた8発の500ポンド爆弾を一斉に投下し、一気に機体を引き戻した。たちまち血が下半身へと押し下げられ、視界がぼやけてくるが構わずに無理な機動を続ける。そして何とかミラーに目をやると、栞達も自分の狙ったザクに爆弾を叩きつけて引き戻しをしているところだった。何発が直撃したかは分からないが、あれだけの爆弾を集中的に叩き込まれては無事という事はまず有り得ない。あのザクは木端微塵になったはずだ。
 機体を2千メートルまで持って来て水平飛行をしながらサッチは地上の様子を観察してみた。フライマンタ36機の急降下爆撃を叩き込まれて9箇所で激しい火災が起こっている。それ以外にも4箇所で煙が上がっているのは撃墜された部下たちだろう。見ている間にもまた1機がザクのマシンガンを受けて木端微塵に砕け散ってしまった。引き起こしたあとの急上昇中を狙われると脆いのがこの戦法の欠点だ。もしかしたら何機かは引き起こしに失敗して地上に激突しただけかもしれないが。急降下爆撃は引き起こしのタイミングを誤ると地面に激突してしまうし、引き起こし中に失神してしまう事も珍しくないという危険な戦法なのだ。
 だが、急降下爆撃という危険な戦法を採用した勇気は正当に報いられた。1機のザクに4機を集中する事で破壊力と、何よりも戦車に較べて回避能力に著しく優れる(何しろザクは横飛びや上へのジャンプという戦車には不可能な動きが可能なのだ)ザクに対して数を落とす事で命中率を稼ぐという目論見も辺り、地上では4機のザクが直撃弾と至近弾の中で四散しており、更に2機が損傷していた。

「4機完全破壊、2機撃破、か。悪くないな」

 もっとも、この次はこう上手くはいかないだろう。次からは敵も対空砲火を強化するだろうし、制空権確保の為にドップを沢山連れて来るようになるだろうから。
 そこまで考えてサッチは軽く頭を振った。今はそこまで考えても仕方がない。それよりもまずは生き残る事だろう。
 そう気持ちを切り替えた時、部下の栞が自分を呼んでいた。

「大尉、サッチ大尉!」
「どうした美坂、そんなに慌てて?」

 どうやらザクに対する攻撃を生き残ったらしい最年少の部下の声に僅かに安堵しながらも、サッチは落ちついた声で聞き返した。

「森の中に戦車や装甲車が隠れてるみたいです。攻撃しますか?」

 言われて地上を見てみるとザク部隊が爆撃で大きなダメージを受けた事でパニックにでも陥ったのか、隠れていたらしい車両がちらほらと上空から見える所を走りまわっている。見逃すには惜しい獲物だが、さてどうしたものか。
 などと考えていると、部下たちが次々に急降下を始めた。

「なあ!? 待てお前達、攻撃命令は出していないぞ!」
「早く来ないと大尉の獲物が無くなりますぜ!」

 からかうような部下の返事にサッチは怒るのも忘れ、降下していった部下たちを見ていた。部下たちのフライマンタは森に向けて次々にロケット弾を撃ちこみ、隠れている車両や歩兵の燻り出しを始めている。これで飛び出してくれば容易く始末出来るというわけだ。
 まあ、ここは杓子定義に咎める事もあるまい。そう考えを改めると、サッチは少し高度を上げて旋回を始めていた。高見の見物としゃれ込むのだろう。
 空から思うがままに叩かれているジオン軍であったが、決して反撃していない訳ではない。少ないとはいえ自走高射機関砲部隊は曳航弾混じりの砲火を撃ち上げているし、ザクもマシンガンを空に向けて撃ちまくっている。これに捕らえられて撃墜されるフライマンタが続出しているのも間違いないのだ。
 ただ、やはり陸戦兵器であるMSはどうしても航空機には分が悪いのだ。注意さえしていればそうそう直撃を受けるような事はないと分かってはいるのだが、こちらの反撃もなかなか相手を捕らえられない。
 そして、更なる災厄が丘の向うからやって来た。
 最初にそれを教えてくれたのはどっからともなく飛来してきた大口径砲弾であった。ザク部隊から少し離れた所に着弾したそれは地面にクレーターを作り出しており、間違い無く重砲の砲撃だと教えてくれる。

「なんだ、連邦の重砲部隊か!?」

 砲撃に晒されたザクのパイロットが狼狽した声を出す。すると今度は驚愕した叫びがジオン軍の通信網をかけ巡った。

「な、何だあれは!?」

 新たに現れたもの。それは連邦マークを付けた5機のザクと、そのザクを援護するように砲撃を加えてくる3機のMSモドキであった。
 それを確認したクルーゲは驚愕してさえいた。

「馬鹿な、ザクは鹵獲機を使ってるからまだ分かるが、後ろのMSモドキは連邦が開発したというのか。奴等はこんなにも早くMSを投入してきたのか!?」

 クルーゲには信じられない事態であった。確かに先のアフリカ北部から中東を制圧するジャベリン作戦において、連邦軍が戦車のようなMSモドキを投入してきたと言う話しは報告書などで回ってきていたから知っていたが、いざ目の前に出てこられると信じられない思いだ。
 だが、敵である以上、やるべき事は1つしかない。

「全軍、攻撃開始。乱戦に持ちこめば航空攻撃も出来なくなるはずだ!」

 クルーゲの命令を受けてザクとマゼラアタック部隊が一斉に駆け出した。全ての武器を撃ちまくり、距離を詰めようとして全速で走っている。もともと起伏は多いが距離的には大して離れていない両軍だ。たちまちその距離は縮まって行く。
 これに対して連邦軍は足を止めて武器を撃ちまくっていたが、先頭を走るザク部隊が想像を遥かに超えて頑強であった事が事態を悪化させようとしていた。秋子は焦りを浮べて戦車隊に命令した。

「第1・第2戦車中隊はここで攻撃を続行。第3戦車中隊は右に、第4戦車中隊は左に回りこみなさい。包囲します!」

 2個戦車中隊が分かれて動き出す。それを阻止しようとマゼラアタック隊が砲撃を加えるが、単純な戦車同士の戦いなら61式戦車はマゼラアタックに負けたりはしないので、暫くの間激しい砲撃戦が続けられた。
マゼラアタック隊と両翼に展開しようとした61式戦車隊が至近距離で激しく撃ち合っているのを尻目にザク同士の戦いは苛烈さを増していた。マシンガンの弾を撃ち尽くした連邦側のザクがマシンガンを捨てて石橋自慢のライフルを手に戦っている。この為に弾数の差がまともに出ていた。
 次々に機体に当たる敵弾に顔を顰めながらも秋子は射撃を止めない。撃つ手を止めればたちまち攻め込まれるから。
 戦車同士の戦いは連邦有利に推移しているようだが、MS戦で敗北するということは、戦場の支配権をジオンが握ろうとしているという事である。改めて秋子はMSの威力を思い知らされていた。

「でも、これじゃいずれ押し切られますね」

 頼みの航空部隊も多くが補給の為に帰ってしまった状態では期待できない。まだ何機かのフライマンタが飛んではいるのだが、味方撃ちを恐れてか手を出そうとはしない。
 そして遂に均衡の破られる時が来た。秋子の隣で頑張っていたザクUFが直撃を受けて右肩を撃ち抜かれてしまったのだ。爆発する右腕の衝撃でバランスを崩し、横転して地面に叩きつけられるザクの姿に秋子は一瞬息を飲んだ。これでバランスが崩されたのは間違いないから。
 機体からパイロットが這い出してきたのを見て少し安心したものの、直ぐに表情を厳しくして迫ってくる敵を見据えた。こちらのザクが1機減ったのを見ていよいよ前に出てきている。このまま数で押し切るつもりなのだろう。

「・・・・・・ガンタンク隊と砲兵隊、支援砲撃をしてください。戦車隊とMS隊は後退して第2線を作ります!」

 後方では歩兵部隊と工兵隊が万が一に備えて即席の防衛線を作り上げているはずなのだ。そこまで下がれば良い勝負が出来るかもしれない。
 暫く待っているとザク部隊の周囲に大口径溜弾や徹甲榴弾が降り注ぎはじめた。だがザク部隊はこの手の攻撃には慣れているのか、怯んだ様子も無く突進してきている。
 この勢いに気圧されたのか、61式戦車部隊に犠牲が増え出した。マシンガンやバズーカの直撃を受けて各座する車両が続出し、ザクですら直撃に動きが鈍り出している。
 このままだと第2防衛線まで引くまでに大打撃を受けてしまい、戦う力を失ってしまうかもしれない。

 だが、この時余りにも予想外のことが起こった。突然横殴りの火線がジオン軍を襲い、マゼラアタック2両が立て続けの直撃弾に炎上四散した。
 突然の事に誰もが唖然とする中で、森の影から1機の黒いザクが姿を現した。

 

 連邦とジオンの戦いをじっと観察していた黒いMSは、連邦軍が敗走して行くのを見て眉を顰めた。

「まずいわね、ここで連邦軍に負けられるとあたしの予定が狂うわ」

 予定ではザクを隠して連邦軍に投降を申し出るつもりだったのだが、これでは連邦軍が負けてしまう。今この近くで纏まった勢力を持つ連邦軍はここにしかいないので、ここで連邦軍が敗北して壊滅させられると自分にとっては非常に困るのだ。

「・・・・・・まあ、仕方ないか。少し手順が変わるけど、ここで連邦軍に手を貸せば結果として恩を売る形になるから、少しは後の展開を有利に持っていけるかもしれないし」

 予定を変更すると、少女はMSを起動した。熱源センサーにも引っかからないようにギリギリまで機体の動力をおとしていたので、直ぐには動けないのだが、少し時間が立ったあとに何とか起動した。

「ふう、ここ暫く整備してなかったから起動するかどうかヒヤヒヤ物だったけど、どうにか動いたわね」

 外見はザクだが、明らかに通常のザクよりも二回りは大きいかもしれないその巨体がゆっくりと動き出し、機体に較べて小ぶりに見える普通のザクマシンガンを構える。

「それじゃあ、行くかな」

 照準で捕らえたマゼラアタックの側面に向けて、マシンガンを叩きこんだ。

 

 側面から奇襲を受けた事でジオン部隊は僅かに動揺した。

「なんだ、伏兵がいたのか!?」

 慌てたザクの1機がそちらにマシンガンを向け、そして現れた敵を見て驚いた。ザクのようだが、明らかに普通のザクよりもでかい。黒系統の色で塗装されているし、なにより発する雰囲気のようなものが教えてくれるのだ、これは何かが違うと。

「う、う、うわああああああああああっ!!!」

 マシンガンの引き金を引いた。120mm徹甲弾が吸い込まれるようにそのザクに向かい、被弾の火花が散る。だが、それは直ぐにジオンパイロット達に恐怖を呼びこんだ。

「馬鹿な・・・・・・当たってるんだ、確実に命中してるんだ。なのに・・・・・・なんで・・・・・・何で破壊できないんだ。あれはどういう装甲をしてるんだ!?」

 120mm徹甲弾を叩きこまれながらも平然としている黒いザクに、攻撃を加えているザクのパイロットは恐慌状態に陥っていた。

「1機じゃ駄目だ、全機で攻撃を集中するんだ!」

 YMS−07グフに乗る指揮官が部下に指示を飛ばした。それに従って次々にマシンガンの銃口がその黒いザクに向けられたが、次の瞬間、叩き込まれた火線の先にその黒いザクの姿は無かった。

「何!?」

 慌てたザクのパイロットが辺りを見まわした時には、その黒いザクはすでに味方の戦列に踊りこんでいた。ヒートホークを振りかぶり、手近なマゼラアタックの砲塔を斬りつける。その一撃でマゼラアタックは戦闘力を失ってしまった。

「や、奴はこっちだ!」
「待て、撃ったら味方に当たる。撃つな!」

 ザク部隊の指揮官は敵らしき黒いザクがマゼラアタック部隊の隊列に割り込んだために攻撃を止めさせた。1機のザクを仕留める為に攻撃しても、これではマゼラアタックにばかり被害が出てしまうのは間違い無い。
 だが、部下達は不満の声を上げた。

「隊長、それじゃああいつの好きなままにしておくんですか!?」
「そんなつもりは無い、接近して攻撃しろという事だ!」

 隊長のグフがマゼラアタックを蹂躙している黒いMSにむけて駆け出して行く。それを追って他のザクも駆け出したが、2機が側面からの砲火に捕まって大きく仰け反ってしまった。

「なんだ、横だとぉ!?」

 なんと、何時の間にか回りこんだ61式戦車隊が撃ってきていたのだ。更に今まで後退していた連邦のザクやMSモドキまで前進しながら攻撃してきている。更に航空機がちらほらと戻り始めているのも問題だった。このままでは袋叩きにされかねない。

 クルーゲは遂に撤退を決断した。


 攻勢時と同じように手際よく撤退していったジオン軍を秋子は追撃はしなかった。確かに追い返したのだが、逆侵攻できるほどの余力は流石になかったのだ。いや、たとえあってもしなかっただろう。侵攻作戦となれば航空支援の面で押されるのは確実だし、陸戦兵器だけの勝負であればMSに戦車は抗し得ないというのは常識だからだ。
 どうにか敵の大攻勢を撃退できたと判断した秋子は一息つくと、視線を乱入してきた黒いザクに向けた。ザクというからには敵なのだろうが、居場所の無くなった反乱兵とでもいう辺りか。

「投降者なら、色々情報が貰えるかもしれませんし、MSの教官として役に立ってもらう事も出来ます。受けいれるのに問題は無いですか」

 だが、歩兵に銃を付きつけられてやって来たノーマルスーツ姿のパイロットを見た時、先ほどの計算が全て吹き飛ぶほどの衝撃を受けてしまった。そのパイロットには確かに見覚えがあったのだ。

「まさか、彼女がどうしてジオンのパイロットに?」

 ザクから降りてそのパイロットに駆け寄った秋子は近くで改めて観察し、自分の記憶に間違いが無い事を確信した。何故なら、相手もまた鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたからだ。

「やっぱり、香里ちゃん」
「あ、あ、あ、秋子さん!?」

 行方不明だった栞の姉、香里と秋子の再会であった。

 

 海鳴基地まで装甲車で護送された香里は秋子の特別の計らいで手錠こそかけられていなかったものの、武装した憲兵2人に両脇を固められた状態で秋子との面会に望んだ。だが、司令官オフィスに通された香里を待っていたのは秋子とマイベックと、そして栞であった。
 香里は最初それが誰だかわからなかったが、見ている内に自分の過去の記憶とその少女の姿が少しづつ重なっていく。

「まさか、栞なの」
「はいです、お姉ちゃん」
「だって、サイド4は全滅したって」
「私は運良く連邦軍の救助船に乗り込めたんです。お父さんとお母さんは助かりませんでしたが」
「・・・・・・そう、父さんと母さんが」

 そうじゃないかと思っていたから意外とは思わなかったが、やはりショックは大きかった。暫く室内に沈痛な空気が漂ったが、それを振り払うように秋子が口を開く。

「香里ちゃん、分かってると思いますが、あなたの持っている情報は全て提供していただきますよ」
「・・・・・・はい、分かってます。ジオンに義理なんかありませんから」
「そう。でも、その前に1つ聞きたいのだけど、香里ちゃんは今まで何処にいたの。なんでMSに乗って地球に来ていたの」

 秋子の質問はある意味当然のものだったが、香里は言い難そうに口を閉ざした。言って良いものかどうか迷っているようだったが、やがて意を決して秋子を見た。

「秋子さん、2人で話させて頂けますか」
「・・・・・・捕虜の尋問は2人以上で当たるのが原則です」
「承知してます。ですが、この事はちょっと・・・・・・」

 深刻な表情の香里に、秋子はしばし目を閉じた。そしてマイベックと栞、2人の憲兵に部屋から出て行くように言った。当然ながらマイベックは反対したが秋子が上官の権威を出してきたので渋々と部屋から出て行く。
 そして一対一となった秋子に、香里は衝撃的な事を語って聞かせたのである。シェイドという最悪の兵士達の話しを。
 香里からこの事を聞かされた秋子は上層部へ報告するべきかどうか迷ったが、結局自分の胸の内に留めておく事にした。下手に報告すれば香里の身に危険が及ぶかもしれないし、そんな化け物の存在が広まれば将兵の士気が低下しかねない。
 結局秋子はジャブローに敵軍からの投降者があった事と、ジオン軍がこちらの想像以上に疲弊しているという事実だけを報告した。香里の持ってきたシェイド・ザクはそういう塗装がされただけのザクとして扱い、機体の管理を信頼する石橋に一任する事で情報の漏洩を局限することにしている。事情を聞かされた石橋は快く請け負い、シェイド・ザクは石橋の許可無くしては決して入れない倉庫の奥深くに封印されたのである。
 こうして香里は海鳴基地で連邦パイロット達にMSの使い方を教える教官として、ジオンが攻めてきたら迎撃に出るパイロットとして海鳴基地に受け入れられる事になる。栞が喜んだのは勿論だが、秋子にとっても開戦以来久しぶりに舞い込んできた嬉しいニュースなだけにこの日以来ニコニコ笑顔が絶えない。司令官の機嫌の良さが伝播した為か海鳴基地にも明るい空気が流れ出していたのだが、やがてその空気を凍りつかせるような凶報が舞いこんできた。アフリカ北部から中東にかけていた展開していた連邦軍とジオン軍が激突し、中東に展開していた連邦軍は支援にやってきた地中海艦隊もろとも壊滅させられたというのである。

 


兵器解説

MS−06J ザクU
兵装 120mmザクマシンガン 又は 280mmバズーカ
   ヒートホーク
   3連装フットミサイル×2
<説明>
 ザクの陸戦使用で、F型の別バージョンである。陸戦用に各部位の装甲を増し、重力下でも軽快な運動性を確保できるよう駆動部を改善し、ジェネレーターを空冷にしているなど、地上で使う事を前提にした改良が各所に見られる。後継機の配備が遅れた事もあって終戦まで実質的なジオン地上軍の主力として運用され、地球上の何処に行っても見る事が出来た。総生産数は不明だが、3000機は作られたのではないだろうか。まさにジオンを代表するMSであった。

ドップ
兵装 ロケットランチャ−×2
   機銃×12
<説明>
 ジオン軍が開発した戦闘機で、ミノフスキー粒子下での戦闘を想定した設計をされている。格闘戦性能は優れているが戦闘機としての性能そのものは連邦軍主力戦闘機に僅かに及ばず、また後続距離が短いという欠点もあった。それでもミサイルを気にしなくても良いという戦場では有効に機能しつづけ、連邦空軍を相手に良く戦いつづけた。

RX−75−3 先行生産型ガンタンク
兵装  120mm低反動砲×2
    4連装ポップミサイル×2
<説明>
 連邦軍が始めて開発したMSのようなもの。性能的には後に有名となるホワイトベースに搭載されている75−4型と差は無く、概観に違いが見られるくらいである。中東戦線ではジオン軍のジャベリン作戦阻止の為にテルアビブ工廠でテスト中だった機体十数機がジオン軍の前方に空挺降下され、それを目の当たりにしたジオン軍将兵は大きな衝撃を受けたと言われている。単体の火力はジオンMSの比ではない。


後書き
ジム改 ようやく第3話だ。
香里  随分間があったわね。
ジム改 新年だからねえ〜。
香里  じゃあ新年らしいの書きなさいよ。
ジム改 ・・・・・・良いじゃないか
香里  大体私のセリフがあれしかないってどういう事よ。せっかく相沢君も名雪もいないのよ。私達の天下なのよ。もっと出番があったって良いじゃない!
ジム改 出てきたばっかで文句言わないでくれ。それにこの話しの主役は秋子さんだ。
香里  ・・・・・・ふっ、ふふふ、所詮何処に行っても私は脇役なのね。
ジム改 うおっ、なんか知らんが頭の上に黒い影が一杯!
香里  良いのよ、どうせ私は日陰の女、フフフ・・・・・・
ジム改 おーい、帰ってこいよ香里さーん。

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