第7章  それぞれの決断


「180度回頭、減速、相対速度あわせ」
「しっかし、良いんですかね。メネラオスの横っ面なんかにつけて?」
「ハルバートン提督がこの艦を良くご覧になりたいでしょう。自らこちらにおいでになるというし」

 マリュ−は微笑みながら言った。知将ハルバートン、Xナンバー計画機とアークエンジェルの建造計画を強行に推進した連合の名将。マリュ−の直属の上司とも言える人物だ。
 艦が慣性航行に移ると、マリュ−は後を部下に任せて自分はエレベータ−に向った。その後をナタルが付いてくる。2人はエレベーターの中で向かい合った。

「ストライクのこと、どうなさるおつもりですか?」
「どうとは?」
「あの性能だからこそ、彼が乗ったからこそ、我々がここまで来られたのだという事は、すでに誰もが分かっていることです!」

 ナタルの意図を悟り、マリュ−は顔を顰めた。ナタルはそんなマリュ−の内心など気にせず話を進める。

「彼も艦を降ろすのですか?」
「ナタル、キラ君は軍人じゃないのよ」
「ですが、彼の力は貴重です。それをみすみす・・・・・・?」
「力があると言って、彼を強制的に徴兵することは出来ない。そうでしょう?」

 マリュ−の言うことは正論だが、ナタルは不満そうであった。


 艦隊と合流したキラは、頑張って最後の仕事を終えようとしていた。キースに頼まれたシグーのOS改造。それを完成させたかったのだ。下の方では傷付いているフラガのメビウス・ゼロに整備兵やフラガ、キースが群がって直している。
 何故こんなに急いでゼロを直すのかがキラには分からなかった。これだけの規模の艦隊に仕掛けて来る敵がいるとも思えないのだが。
 そんなことを考えてると、コクピットの入口に誰かがやってきた。

「あら、何をしてるの、キラ君?」
「え・・・・・・艦長?」

 来たのはマリュ−だった。マリュ−は興味津々そうにキラの手元を見ている。

「OSの改造・・・・・・何でそんなことを?」
「キースさんに頼まれたんですよ。これが最後の仕事だと思うと、投げ出せなくて」
「そう」

 マリュ−はこの生真面目な少年を微笑ましく見ていた。そして、優しい声でキラに話し掛けた。

「今までこうして君と話す余裕も無かったわね」
「はあ・・・・・・」

 キラの顔に僅かな警戒心が浮かぶ。マリュ−はそんな彼を安心さえようと微笑んだ。

「その、一度、ちゃんとお礼を言っておきたかったのよ」
「え・・・・・・?」
「あなたには、本当に大変な思いをさせたわ。いままでありがとう」

 マリュ−は深々と頭を下げた。思いもかけぬマリューの行動にキラは動転してしまう。

「いや、そんな、艦長・・・・」

 赤くなってしどろもどろとしていると、マリュ−がニッコリと笑いかけてきた。

「口には出さなくても、みんなあなたには感謝しているのよ。バゥアー中尉なんかは手放しの褒めようだったわ。こんな状況で地球に降りても大変でしょうけど、頑張って」

 マリュ−は片手を差し出した。キラは戸惑いながらもその手を握る。その手は暖かかった。

 そんなマリュ−を少し離れた所からじっと見ていたナタルの視線は冷たい。だが、そんな肩をキースが叩いた。驚いてナタルが振りかえる。

「バ、バゥアー中尉」
「どうしたの、覗き見なんかして?」

 キースの問われたナタルはキッとキースを睨みつけた。

「中尉も、キラ・ヤマトを降ろすのに賛成なのですか?」
「まあ、あいつは民間人だからねえ。当然でしょ?」
「ですが、彼の力は!」

 詰め寄るナタルに、キースは諭すように話した。

「なあ、バジルール少尉、俺たちは何の為に戦ってるんだ?」
「決まっています、この戦争に勝利するためです」
「・・・・・・俺は違う。俺は、最初は復讐の為に軍に入った。だが、今は・・・・・・」
「中尉、それは」

 ナタルも聞いた事があった。エメラルドの死神、キーエンス・バゥアーは、昔は気が狂っているのではないかと囁かれるほどに恐ろしい男だったと。それが今はこんな飄々とした性格をしている。噂に出てくる男と、目の前の男は余りにも違いすぎる。何がこの男にあったというのだろうか。
 同時に、ナタルは考えさせられてしまった。自分は、何のために戦うのだろう、と。

 

 アークエンジェルに1人の長身の将官が降りてきた。この人物こそ月に駐留する第8艦隊司令官、ハルバートン提督である。マリュ−たちがいっせいに敬礼した。

「閣下、お久しぶりです!」
「ナタル・バジルールであります」
「第7機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガであります」
「同じく、キーエンス・バゥアーであります」
「おお、君らがいてくれて助かった」

 ハルバートンがフラガとキースに労いの言葉をかける。

「いえ、さして役にも立ちませんで」

 提督は士官たちとの挨拶がすむと、今度は後ろの方で整列しているキラたちに目を向けた。

「ああ、彼らがそうかね」

キラたちは提督がこっちにやってくるのを見て慌てて背筋を伸ばした。

「はい、繰艦を手伝ってくれたヘリオポリスの学生たちです」

 マリュ−が誇らしげに紹介してくれるのを、彼らはくすぐったい気持ちで聞いていた。彼らを1人1人見つめるハルバートンの目は優しかった。

「君達のご家族の消息も確認してきたぞ。皆さん、ご無事だ」

 みんなの顔がぱっと明るくなった。何より嬉しい朗報であった。

「とんでもない状況の中、良く頑張ってくれたな。私からも礼を言う。あとで、ゆっくりと話をしたいものだな」

 提督と聞くと、お堅いイメージがあるが、このハルバートンはとても気さくで意外な印象をキラたちに与えていた。だが、この人がマリュ−の上司というなら何故か納得できてしまう。
 ハルバートンはマリュ−たちと一緒に去ってしまった。その後姿を見送りながら、キラはあの人と話がしてみたいと思っていた。

 

「ツィーグラー、エデス、合流しました」
「ふむ、ガモフは無理だったのか」
「残念ですが、大破しております。MSはエデスに移されていますが、ストライクと交戦したブリッツも損傷が大きく、今回は作戦参加は不可能という報告がきております」
「こちらの戦力は?」
「ツィーグラーにジンが6機、こちらにイージスを含め、5機、エデスにバスターとデュエルを含め5機」

 アデスの読み上げる数字を聞いて、クルーゼはしばし勝算と損害を天秤にかけた。そしてふっと底冷えのする笑顔を作る。

「知将ハルバートン、か。そろそろ退場してもらおうか」


 アークエンジェルではトールたちがナタルから除隊許可証を渡されていた。狐にでも包まれたかのような顔でそれを受け取った4人にハルバートンの副官のホフマン大佐が説明する。

「例え非常事体でも、民間人が戦闘行為を行えば犯罪となる。それを回避するため、君らは日時を遡って志願兵として入隊していたことにしたのだ。無くすなよ」

 ややこしい処置だと思ったが、必要なことと言われれば仕方ない。それに、降りられることには変わり無いのだから。
 まだ説明を続けるホフマンに向って、遠慮がちに声をかけた者がいた。フレイだった。ナタルが不審げに彼女を見る。

「君は戦ってないだろう。彼らと同じ措置は必要無いぞ」
「いえ、そうでは無くて・・・・・・」

 フレイは俯き気味に前に出て、目に決意を秘めて顔を上げた。

「私、軍に志願したいんです」

 一瞬誰もが呆気に取られ、ついで驚愕した。サイまでが驚いた顔をしているという事は、彼も聞かされていなかったのだろう。ナタルは眉を顰めた。

「何を馬鹿なことを」
「いいかげんな気持ちで言ってるんじゃありません!」

 フレイは必死に食いさがった。

「先遣隊と共に父が殺されて、私・・・色々考えたんです・・・・・・・・・・」
「では、君がアルスター事務次官の・・・・・・」

 ホフマンが思い当たったように頷いた。フレイは小さく頷く。

「父が討たれた時はショックで・・・もう、こんなのは嫌だ。こんな所にはいたくない。と、そんな思いばかりでした・・・・・・でも、艦隊と合流できて、やっと地球に降りられると思った時、何かおかしいと思ったんです」
「・・・・・・おかしい?」

 ナタルが聞き返すと、フレイは頷いた。

「だって、これでもう安心でしょうか。これでもう平和なんでしょうか。そんな事、全然無い!」

 フレイは激しく首を振り、潤んだ瞳でナタルを見た。

「世界は、依然として戦争のままなんです」

 誰もが言葉も無く、彼女の言葉を聞いていた。

「私、中立の国にいて全然気づかなかった・・・・・・父は戦争を終わらせようと必死に働いていたのに」

 フレイの言葉は、トールたちにも言えることだった。自分たちの周りの平和が、どれほど幸福なことかさえ知らなかったのだ。

「本当の平和が、本当の安寧が、戦わないと得られないのなら、私も・・・父も遺志を継いで戦いたいんです!」

 フレイの言葉はトールたちに大きな衝撃を与えていた。これで地球に降りられると喜んでいるだけだった自分たち。だが、戦争は依然として終わらない。共に戦ったこの艦の人たちはこれからも戦い続けるのだ。
 ふいに、サイが自分の除隊許可証を引き裂いた。

「サイ!」
「フレイの言ったことは、俺も感じていたことだ。それに、彼女だけ置いていけないしさ」

 その言葉を聞いて、トールの決意も固まった。彼が許可証を破り捨てると、ミリアミアが驚いた目で彼を見る。

「アークエンジェルは人手不足だからな。俺が降りた後に艦が沈められたら、なんか嫌だし」

 すると

「トールが残るなら、私も」
「みんなが残るって言ってるのに、僕だけじゃな」

 ミリアミアとカズィが続いた。結局、みんな残ることにしたのだ。
 トールはまだ残されているキラの除隊許可証を見、キラの立場が自分とは全く違うことを思い出す。

「あいつは、降りるよな」

 寂しげに、トールは呟いた。


 キラはストライクを見上げていた。乗っていた間に良い思い出などありはしなかった。だが、いざ降りるとなると一抹の寂しさも感じるのだ。
 その背後から声をかけられた。

「降りるとなると、名残惜しいのかね?」

 振り返ると、どこにはハルバートン提督がいた。

「キラ・ヤマト君だな?」

 まさか名前を知っているとは思わなかったキラは驚きながらも頷く。

「報告書にあったんでね。しかし、改めて驚かされるよ。君達コーディネイターの力というものにな」

 ハルバートンの言葉にキラは身を固くしたが、ハルバートンの目は二心があるようには見えなかった。

「ザフトのMSに攻めて対抗せん、と造った物だというのに、君らが扱うととんでもない怪物になってしまうようだ」
「え、ええと・・・・・」

 キラは返答に詰まってしまった。色々話したい事はあるのだが、いざとなると上手く言葉にならない。ハルバートンはそんなキラを温かい目で見ていた。

「君の両親は、ナチュラルだそうだが?」
「え、あ・・・・・・はい」
「どんな夢を託して、君をコーディネイターとしたのか」

 キラは動揺した。今までそんな事を考えた事も無かったからだ。

「なんにせよ、早く終わらせたいものだな、こんな戦争は」

 その時、キャットウォークの向こうから一人の士官がやってきてハルバートンに何事かを報告した。ハルバートンは肩を竦めるとキラを見上げる。

「やれやれ、君らとゆっくり話す暇も無いわ」

 ハルバートンは改めてキラを見ると、しっかりした口調で言う。

「ここまでアークエンジェルとストライクを守ってもらって感謝している。良い時代が来るまで、死ぬなよ!」

 そのまま身を翻して帰ろうとするハルバートンにむかって、キラは遠慮がちに尋ねた。

「あの・・・・・・アークエンジェルは、ラミアス大尉は、これから?」
「アークエンジェルはこのまま地球に降りる。彼女らはまた、戦場だ」

 当たり前の様にハルバートンは答えた。そうなのだ。マリュ−達は軍人であり、アークエンジェルは戦艦なのだから。だが、自分がいなくて誰がストライクを動かす。どうやってこの艦を守るのだ。
 悩むキラを見て、ハルバートンは足を止めた。

「君が何を迷っているのかは分かる。確かに魅力的だ、君の力は。軍にとってはな」

 キラはハルバートンの顔を見た。だが、その顔には自分を利用しようとする様子は見受けられない。まるで孫を見るかのような優しい目をしている。

「だが、君がいれば勝てるというものでもない。戦争はそんな甘いものではない。自惚れるなよ」
「で、でも、『出来るだけの力があるなら、出来る事をしろ』と!」
「その意思が、あるならだ!」

 キラは言葉を飲んだ。

「意思の無いものに、なにもやり抜く事は出来んよ!」

 そう言ったハルバートンの目には、確かに強い意思の光が宿っていた。

 

 敵の接近が知らされたことでアークエンジェルではランチの発進が急がれていた。キラもデッキにやってきたが、そこに友人たちの姿は無かった。暫く待っていると、子供特有の甲高い声が響き、振り返った。避難民のマスコット的な存在だったあの女の子がキラを見つけて飛び出してきたのだ。

「おにいちゃん、これ」

 女の子が差し出してきたのは、折り紙の花だった。キラは目を瞬かせる。

「僕に?」
「うん、いままでまもってくれて、ありがとう」

 キラは振るえる手でそれを受け取った。女の子はにこやかに手を振ると、母親の方へと戻って行く。キラはその手に折り紙の花を持ったまま、じっとその後姿を追っていた。
 その時、いきなり背後からヘッドロックをかけられた。こんなことをする奴は決まっている。

「止めろよトール!」

 笑いながら振り返ったキラは言葉に詰まった。仲間たちは何故か連合軍の制服のままだったのだ。怪訝な顔のキラに1枚の紙を突き付ける。

「これ、持って行けって。除隊許可証」
「え?」
「俺達、残る事にしたからさ」
「残る?」
「アークエンジェルにさ」

 キラは目を見開き、仲間たちの顔をまじまじと見た。

「どういう事・・・なんで・・・・・・?」
「フレイが志願したんだ。それで俺達も」

 サイが答え、キラが更に驚愕する。まさか、彼女が志願するとは思っていなかったのだろう。
 そして、艦内に警戒警報が響き渡る。

「総員第1戦闘配備、繰り返す、総員第1戦闘配備!」

 みんなが反射的に振りかえり、持ち場へ向おうとする。背後から声がかかった。

「おい、そこの。乗らんのか、出すぞ!」
「待ってください、こいつも乗ります!」
「トール!?」

 トールはキラの肩をぐっと掴み、しばしその顔を見つけた。そしてニッコリと笑う。

「これも運命だ。じゃあな、お前は無事に地球に降りろよ!」
「元気でね、キラ!」
「生きてろよ!」
「何があっても、ザフトには入らないでくれよ!」

 仲間たちの別れの言葉に、キラは顔を俯かせた。取り残されたという焦燥感と、これで良いのかという迷い。自分は、何の為に戦ってきたのだろう。次々に浮かんでくる友人たちの顔。そして、赤い髪の少女の顔が浮かんでくる。
 悩むキラの背後からランチの搭乗員の急かす声が聞えてくる。その声に弾かれるように、キラは決断した。

「行ってください!」

 キラは床を蹴った。後にくしゃくしゃになった除隊許可証を残して。

 

マリュ−はハルバートンの指示でメネラオスの傍にいた。各武装が次々に起動し、戦闘準備が進んでいく。格納庫ではフラガとキースが緊急発進の準備を終えていた。

「艦長、メビウス・ゼロ、出撃する。ヒヨッコどもだけじゃ持たない!」
「ですが、大尉」
「艦長、俺からも頼みます。第8艦隊だけでは持ちこたえられない!」

 フラガだけでなく、キースまでが出撃許可を求めてきた。暫く黙考していたマリュ−も遂に頷く。

「分かりました、出撃してください!」
「「了解!」」

 2機のMAが飛び出して行く。それを合図に戦闘準備が一気に進みだした。艦橋が騒然とした空気に包まれる。
そこに降りたはずのヘリオポリスの学生たちが飛び込んできた。

「あなたたち・・・・・・」

 マリュ−が呆然として呟く。

「志願兵です。ホフマン大佐が承認し、私が受領しました」

 事情を知っているらしいナタルが報告する。

「あ、キラは降ろしました」
「俺達じゃあいつの変わりにはならないでしょうけど」

サイとトールがマリュ−に教える。トールはノイマンに合図を送り、トノムラは背後の2人を見て笑みを浮かべる。はじめは驚いていたクルーたちも、今は嬉しそうに彼らを受け入れていた。
 マリュ−は彼等の決意をありがたいとは思ったが、同時に重荷にも感じてしまう。彼らの決意は余りにも甘く、愚かだ。後の人生にこの決断はどのような影響をもたらすのだろうか。

 キラがパイロットルームに飛び込むと、そこには先客がいた。

「フレイ・・・・・・?」

 キラが声を上げると、彼のロッカーを前にたたずんでいた少女が弾かれた様に振り向いた。

「キラ・・・・・・・降りたんじゃなかったの?」

 次の瞬間、フレイはキラの胸に飛び込んだ。柔らかい質感にキラは戸惑う。

「フ、フレイ・・・・・・なんで?」
「あなた、行っちゃたかと思ってた・・・・」

 以前から憧れていた少女に至近距離から見つめられ、キラは冷静な思考が出来なくなっていた。そんなキラの様子に気づいていないのか、フレイは続ける。

「私・・・みんな戦ってるのに・・・最初に言い出した私だけが何もしないなんて、だから・・・・・・」

 キラはようやくフレイがなんでここにいたのかを悟った。中からパイロットスーツが覗いているのを見て、フレイの意図に気づく。

「まさか!」

 フレイを引き剥がし、じっと彼女を見る。こんな華奢な体で、あのストライクに乗ろうとしていたのか。そこまで決意していたというのか。

「・・・・・・無理だよ、君には・・・・・・」
「でも・・・」

 諦めそうも無いフレイに、キラは微笑んだ。

「大丈夫、ストライクには僕が乗るよ。フレイの分も」
「なら・・・・・・」

 フレイは自分の体をキラにすり寄せた。

「私の思いは、あなたを守るわ」

 フレイの顔が近づき、唇が重なる。その熱い吐息に、その言葉に、キラは酔った。

 パイロットスーツに着替えて出て行くキラを見送って、フレイは自分の唇をそっと拭った。コーディネイターなんかとキスをしてしまったという屈辱が心に暗い影をおとす。だが、同時にもう1つの何かが過去に聞いた言葉を思い出させた。

「アスランは、僕が月にいた頃の友達なんだ」
「アスランはザフトにいたんだ・・・・・・」
「イージスのパイロットになって・・・・・・僕と戦ったんだ」

 フレイは浮かんできたその言葉を必死に否定しようとした。俯き、両手で体を抱きしめる。その口から漏れるのは、呪詛の言葉。

「そうよ、キラはコーディネイターを殺して、殺して、そして最後には自分も死ぬのよ。そうでなくちゃ、許さない・・・・・・そうじゃないと、いけないんだから」