122章  地球航路を賭けて



 この戦時下で暢気な空気が漂うアルスター邸に、珍しく驚きの声が上がっていた。それはフィリスの驚愕の叫びであった。

「何でそんなに驚く、俺が誘うのがそんなにおかしいか!?」

 その原因はイザークであった。イザークは悩みこんだ末にフィリスを誘う事にしたのだ。まあ彼の場合は彼女以外に選択肢が無いので悩む必要も無かったわけなのだが、実は女性には奥手なイザークはフィリスをパーティーに誘うという行為にもてる全ての勇気を掻き集めていたのだ。その緊張のしかたはMSに乗って戦場に出る時など問題とはならぬほどであった。
 誘われたフィリスはといえば、こちらはもう驚きを通り越してしまい、暫し呆然としていた。まさか、あのイザークが自分をパーティーの相手に選ぶとは思っていなかったのだ。というか、この無骨で不器用な男の何処にそんな甲斐性とか感性があったのだろうか。
 そしてこれを離れた所で聞いていたミゲルとジャックが気を利かせてか、コソコソとインテリアの影に移動してしまう。まあ、そこで聞き耳を立てているのは確実なのだが。

「あ、あの、ジュール隊長、何でいきなり?」

 もしかして、自分の気持ちが通じたのだろうかと僅かな期待を込めて聞いてみたフィリスであったが、質問されたイザークは何故か酷く憂鬱そうな顔となり、ガックリと肩を落としてしまった。なんだか自分の頭の中の都合の良いシミュレート結果とは随分と懸け離れた反応に、フィリスが僅かに首を傾げてしまう。
 そしてイザークは、なんとも言えない顔で吐き捨てるようにフィリスの問いに答えた。

「ク、クルーゼ隊長の命令なんだ、仕方が無いだろうがっ」
「……め、命令?」
「ああ、そうでなければなんで俺がこんな事言うか。大体この戦時下にパーティーなどと、気が抜けすぎなんだっ」

 イザークにしては珍しい上官批判であったが、内容はかなり愚痴っぽかった。だが、それを聞かされたフィリスはといえば、こちらは何故かニッコリと笑顔を浮かべていた。それがどういう笑顔であるのかを察するには、イザークには余りにも経験が無かったりする。

「しょうがありませんね、お受けします」
「す、すまんフィリス」
「いえいえ、気になさらないで下さい」

 まだニッコリと笑っているフィリス。その氷の微笑みの意味を理解できないイザークは良かった良かったと素直に安堵している。だからフィリスが右掌を持ち上げたのを見ても何の動作かさっぱり理解できなかったのだ。



 ドカドカと足音も高く部屋から出て行ったフィリスを刺激しないようにインテリアの物陰で小さくなっていたミゲルとジャックが恐る恐る部屋の中を振り返ると、左頬に見事なくらい真っ赤な紅葉を付けたイザークが呆然とした顔をしていた。なんで引っ叩かれたのか、さっぱり分からないという顔をしている。

「俺、なんか悪い事言ったか?」
「ああ、かなり悪い事言ったぞ。いい加減その超鈍感ぶりはどうにかならんのか?」

 フィリスの気持ちにいい加減気付いてやれよと呆れた顔で呟くミゲル。まあ、この男の朴念仁は今に始まった事ではないのだが、いい加減フィリスが見ていて不憫に思える今日この頃なのだ。先ほどもパーティーの連れ添いとして申し込まれたフィリスの喜びに満ちた顔を見れば察しても良いと思うのだが、どうにもこの男はそういった感情には疎い。いや、無関心なのだ。
 ミゲルとジャックが困ったもんだと大きく溜息を漏らすのを見て、イザークはますます分からないという顔をしている。この男がフィリスの気持ちに気付く日は果してくるのだろうか。



 そして、もう1人の男はイザークよりも更に斜め上の行動に走っていた。

「頼むフレイ、俺と一緒にパーティーに出てくれ!」
「……はぁ?」

 居間で紅茶を飲みながら学校で発表する新しいデザインを考えていたフレイの元にアスランが駆け込んでくるなりいきなり切り出した言葉がこれだった。いきなり駆け込んできたアスランに何事かと思ったフレイだったが、彼が口にした言葉にますます困惑の度合いを深めてしまう。いきなりこの男は何を言っているのだ。

「パーティーって、何の事よいきなり?」
「あ、ああ、そうだったな。すまない」

 自分が説明を思いっきり省いてしまった事を思い出してアスランは事情をフレイに話した。それを聞いていたフレイは時折頷いていたが、紅茶の入ったカップを傾けて中身を減らすと何で自分を誘うのかと聞いた。

「別に私じゃなくても、エルフィさんとかルナマリアがいるでしょ?」
「ああ、最初はどちらかを誘おうと思ってたんだが……」

 何故かその質問を受けたアスランは言い難そうに言葉を濁している。それを見たフレイの目に不審げな光が宿り、アスランを詰問するようにじっと見つめる。するとアスランは物凄く困った顔になってフレイに泣きごとを言ってきた。

「あの2人のうち、どっちを誘っても角が立つんだよお……」
「……ヘタレね」
「ち、違うぞ。これは隊長としての部隊の和を考えた末での決断でだな、間違っても後が怖いとか、身の保身を考えての事じゃないんだっ」

 ヘタレ呼ばわりされて慌てて弁明を始めるアスランだったが、それはフレイにより一層の軽蔑を与えるだけの効果しかなく、フレイはジトッとした目でこの男を見ていた。そう、まるで生ゴミを見るような目で。
 そんな目で見られてしまったアスランは弁明の言葉も出てこなくなったようで、ソファーに腰掛けて悲しそうに俯いていた。自分でも情けないとは分かっているのだろう。それを見たフレイはやれやれと肩を竦め、紅茶を飲み干すと仕方ないなあと呟いた。

「良いわ、行ってあげる。でも、後でどうなっても知らないわよ」
「す、すまない、恩に着るよ」
「……私の貸しは、高いわよ?」
「うっ」

 その一言に一瞬怯みを見せたアスラン。それを見たフレイは艶っぽい笑みを浮かべたあと楽しそうにクスクスと笑い出した。どうやらフレイに遊ばれているようだ。



 この騒動は特務隊全体を巻き込む騒ぎへと発展し、幾つかの笑えない喜劇を生み出す事になる。ミゲルは早々にパーティーへの参加を「俺は緑服だから」と言って拒否し、留守番をする事にした。エルフィとルナマリアはアスランがフレイを誘った事に忸怩たる物を抱えていたが、互いにライバルが誘われなかっただけマシと割り切って特に何も言わず、ルナマリアは渋るレイを引き摺って参加する事になる。
 そしてディアッカは何故か参加を拒否し、同志を集めるべくオロファトの倉庫街に向った。ここには嫉妬団オーブ支部の基地があり、ザフトとオーブ人による敵味方を超えた集まりが良く行われているらしい。
 そしてエルフィはというと、この騒動に呆れた顔をしていた。うちの人たちはどうしてこうすぐに騒ぎを越すのやらとシホとジャックに愚痴っている。

「まったく、また騒ぎを起こさなければ良いんだけど」
「エルフィさんがそこまで心配しなくても良いのでは?」
「今回はクルーゼ隊長もいるし、騒ぎは起きないだろ。エルフィはどうするんだ?」
「そうね、ザラ隊長はフレイさんを誘っちゃったし、どうしようかな」

 凄く残念そうなエルフィにジャックはなら俺と行こうと言おうとしたが、それを出す前にエルフィがフルフルと頭を左右に振ってしまった。

「まあいっか、1人で参加する事にするわ。ルナが行くのに私が行かないじゃ後で後悔するかもしれないし」
「そ、そうか……」
「じゃ、私は仕事を片付けてくるね。パーティーに行くなら仕事を少しでも減らしとかないと」
「ああ、頑張ってくれ」

 小走りに離れに戻っていくエルフィを見送ったジャックはトホホと肩を落として項垂れてしまった。そんな2人のやり取りを見ていたシホがクスクス笑っていて、ジャックが恨めしげな声を出した。

「うう、振られた男を笑うなよお」
「すいません。でも、本当にガッカリしてましたね」

 エルフィに振られたジャックの落ち込み振りが余りにも哀れにみえて、逆に笑いを誘ってしまったようだ。不機嫌そうにブスッとしているジャックとクスクス笑いを続けるシホであったが、ようやくシホがクスクス笑いを収めた。

「まあ、仕方が無いですよジャックさん」
「なんだよ、シホだってジュール隊長はいいのか?」
「残念ながら、ジュール隊長はフィリスさんを誘ったようですから、私の出る幕はありません」

 やれやれと首を左右に振るシホ。どうやらこっちはさほどショックは無いらしい。そしてシホはジャックをパーティーに誘ってきた。

「どうですジャックさん、振られた者同士、一緒に行きませんか?」
「負け犬同士でか?」
「私も相方が居ませんから、1人ですとちょっと行き難いんです」
「そういうもんかね」

 赤服だから行かないというのも色々と具合が悪いというシホの頼みを受けてジャックは仕方なく引き受けたが、やはり残念そうではあった。ジャックはエルフィに惚れているのだが、エルフィはアスラン一筋でジャックの好意には全く気がつかないのだ。おかげで何時もジャックは空回りしている。それをシホが慰めるという形がすっかり完成していた。





 CE71年10月12日、その戦いは始まった。10日にプラントを監視していた偵察艦から発進しいていたブリッツがプラントから出撃していく大艦隊を発見し、この情報を月に送っている。これを受けて月基地のプトレマイオス・クレーター基地が基地からの光学観測と複数の偵察部隊からの情報をあわせて検証した結果、プラントから40隻を超える大艦隊が地球に向けて出撃したということが判明したのである。40隻の艦隊ともなれば7月のアラスカ攻略戦に次ぐ規模の艦隊だが、まだザフトにこれだけの部隊を動かす余力があったのかと連合軍の将帥たちは驚いていた。
 だがこれを座して見ている事は出来ない。プトレマイオス・クレーターからは駐留している6個艦隊から第5、第6艦隊を緊急出撃させ、この大艦隊の迎撃に当たらせた。更に必要ならば増援を送ることも考慮して第7艦隊、第8艦隊が出撃準備に入っている。流石に基地を空にするわけにはいかないので第3、第4艦隊は留守番だ。
 更に周辺の独立艦隊に命令を出し、この部隊への迎撃を指示している。これらの小部隊がこの大部隊を止める事は不可能だろうが、足止めくらいにはなる筈だ。更に地球軌道にあるアメノミハシラや極東連合第2艦隊にも警報が送られる。


 だが、迎撃の為に出撃した第5、第6艦隊は敵艦隊の反応に追いついたところで驚愕する事になった。自分達が追っていたのは索敵機器に引っ掛かり易くしたダミーユニットで作られた囮部隊だったのだ。これらのダミーを牽引、制御してい高速艦は連合の部隊が近付いてくるとダミーを切り離して一目散に逃げていってしまう。
 このダミーを確認した第5艦隊司令官ガルチエリ准将と第6艦隊司令官シャンロン准将は驚き、そして事態を悟って慌てて月基地にこの事態を報告したのだがその時には既に遅く、ザフトの艦隊は地球軌道近くに現れて周辺の小部隊を次々に襲っていたのだった。更に1隻、2隻程度の部隊が複数同時に動いているようで、各地の中継ステーションや小惑星基地が襲撃を受けている。これによって通信、索敵網が各所で寸断されてしまい、ますます敵に振り回されている。

 月基地は第5、第6艦隊に急いでそちらに向うように命令を出すと共に、月に待機していた第8艦隊を出撃させた。第7艦隊はザフトの月艦隊が動き出したのに対応して牽制に出撃させる必要があったのだ。
 プトレマイオス基地を発進した第8艦隊であったが、メネラオスの中ではハルバートン少将が事態の悪化に顔を顰めていた。

「全てが後手後手に回っている。敵の狙いは何なのだ?」

 地球軌道に到達して周辺の艦隊を叩く事が狙いなのか、それとも先に攻撃失敗したオーブのアメノミハシラを再度攻撃するつもりなのか。それともこの大艦隊さえも陽動で、更に本命の別部隊があるのか。敵の狙いが読めない事にハルバートンは苛立っていたが、今は急ぐしかないと自分に言い聞かせて艦隊を地球軌道に向けた。月からは続々と敵艦隊発見の報が送られてきているが、ハルバートンはそれらの情報を自分で検証して取捨選択し、敵はアメノミハシラを狙っているという判断を下してそちらに艦隊を急行させる事にした。先行している第5、第6艦隊が、そして地球軌道に展開している小艦隊やオーブ軍、極東連合軍が持ちこたえてくれる事を祈りながら。




「艦隊を密集させろ、アンチビーム爆雷の効果を絶やすな!」

 オーブ艦隊にユウナの指示が走る。ウィリアムス率いるザフト艦隊はアメノミハシラに向かってきたのだ。これがパナマのマスドライバー打ち上げ軌道にやってきて防御拠点となった為、これを潰そうという狙いがあると自由オーブ軍司令部は判断し、ユウナに命じて艦隊を率いて迎撃に出させたのだ。未だにダメージから回復していないアメノミハシラに敵の接近を許すわけにはいかないので、ユウナは直衛ではなく迎撃を選択し、アメノミハシラから離れた宙域でウィリアムス艦隊を迎え撃った。ここ時オーブ艦隊にはイズモ級特務艦2隻、フブキ級駆逐艦8隻のほかに連合の戦艦3隻、駆逐艦14隻、特設空母2隻が加わっている。他の艦はアメノミハシラ防衛に残っていた。
 ユウナはウィリアムス艦隊に匹敵する戦力を展開させる事が出来たわけだが、正直勝ち目があるとは思っていない。既に連合の複数の小艦隊が撃破されており、オーブ艦隊とて彼等と同じ道を歩む事は間違いない。ただ、ユウナはこの戦いに勝つ必要は無い。負けなければ良いのだ。極東連合第2艦隊はもうすぐ到着するし、月の正規艦隊もこちらに向っているという情報があるので、それまで戦線を支えれば済む。

「敵艦隊の数は?」
「現在分かるだけで40隻前後!」
「……情報より少ないな。補給部隊を下げたのか、艦隊を分離したのか?」

 月からもたらされた敵情では60隻を程の大艦隊だったはずだが、目の前にはその半数くらいしかいない。二手に分かれたのだろうかと考えるユウナであったがそんな事を考えていられる暇は直ぐに無くなってしまた。ザフト艦隊との距離が砲戦距離にまで詰ったからだ。

「敵艦隊、発砲!」
「応戦しろ、30秒後に回避運動!」

 ユウナは艦隊に指示を出すと、これからどうやって時間を稼ごうかと考え込んだ。とにかく味方が来るまで無理をしないのは当然として、味方の被害を減らすにはどうすればいいのかを考えなくてはいけない。しかしその困難さを考えると、ユウナはどんよりと暗い気持ちになってしまった。

「やれやれ、艦隊司令官なんかになるもんじゃないな、苦労ばっかり増える」

 それは甚だ建設性を欠く愚痴ではあったが、聞いてしまった艦橋のクルー達はユウナに同情の眼差しを向けていた。ユウナが自由オーブ軍に参加して以来、カガリの下で事務に現場にと八面六臂の働きをしている事を知らない者はアメノミハシランは居ない。故に彼がこのくらいの愚痴をこぼしても、それを咎めるような者は居なかったのだ。むしろ同情を誘っている。



 ユウナの感じた疑問の通り、ザフト艦隊は少なくなっていた。旗艦カトゥーンはともかく、ほかは全てローラシア級と補給艦だったのだ。一緒にプラントを出た他のエターナル級6隻とナスカ級7隻、それに補給艦も何隻が姿を消している。他にも先発した小艦隊があったはずなのだが、それらも居なかった。
カトゥーンの艦橋でじっとオーブ艦隊を見据えていたウィリアムスは、オーブ艦隊が最初から守りに入ってるのを見て舌打ちしていた。敵の意図が時間稼ぎにあると見抜けたからだ。

「厄介だな、面倒なタイプの相手だ」
「提督、どう対処されますか?」
「ここは速攻を仕掛けるしかあるまい。時間をかければ敵の増援が集ってくる」

 時差をつけての各個撃破を目論んでいたウィリアムスは多少の無理は承知でオーブ艦隊の撃破を目指す事にした。各艦からMSが次々に発艦し、オーブ艦隊へと向かっていく。これを見たオーブ艦隊もMSを出撃させた。その先頭を切るのはオーブ軍最強のMSだ。

「キラ・ヤマト、フリーダム行きます!」

 クサナギからフリーダムが発進し、それに続いてシンとステラのM1が飛び出す。シンのM1Sはソードパックを装備し、機体をそれに合わせて多少カスタマイズした改修型となっている。対艦刀を抜くと中距離火力が無くなるという欠点は、実はシンが知らなかったことなのだが、この対艦刀はソードカラミティなどが装備しているタイプの対艦刀であった事が判明し、距離が離れている時でもレーザー砲として使う事ができる。おかげでビームライフルほどではないとはいえ、申し訳程度の中距離火力は持っていた。
 これに対してステラのM1は超高インパルス砲アグニを装備していた。これはストライクダガー用に開発されたエネルギーパック型のアグニで、バスターダガーの量産化で必要性が薄れた物が廃物利用のような形で自由オーブ軍に供与されたのだ。機体のバッテリーではなくエネルギーパックで3発撃てるという変わった砲ではあったが、M1でも運用できるので自由オーブ軍の火力強化に役立っている。ただ、M1には少々重い砲であったが。

 オーブMS隊の先頭に出たキースは、各部隊に指示を出して迎撃配置を取らせた。今回はユウナから持久戦を指示されていたのでこちらから仕掛けるわけにもいかないので、彼にしては消極的な準備を整えている。

「キラ、フリーダムとM1じゃ編隊行動は出来ん。お前は自由に動いて敵の数を減らせ」
「分かりました」
「シンとステラは敵の化物が出てくるまで待機だ。フリーダムやジャスティスに対抗できるのはキラとお前達だけだからな」
「はい」
「うん!」

 言ってて情けなくなるが、フリーダムやジャスティスにはM1やストライクダガーでは対抗のしようがない。せめてクライシスがあれば何とかできるのだが、まだあれは増加試作型が出てこないのだ。キースとしてはここのフレイがいたらと思い、今更ながらに自由オーブ軍の人材の少なさを嘆いた。
 そして各部隊に指示を出し終えたキースは、連合軍のコスモグラスパー隊と合流するために編隊を離れた。残念ながら彼だけがMAなので、M1とは連携がとりにくいのだ。それならば同じ性能のコスモグラスパー隊を率いた方が良い。連合の指揮官にも話は通っており、キースは一時的にMA隊を指揮官となっている。まあ高名なエメラルドの死神が言うのだから断わる手は無かったのだろうが。
 そして、ザフト艦隊が最初の砲撃を行うと同時に戦いが始まった。双方のMS隊が一斉に加速して戦闘機動に入り、ビームとミサイルが交差する。その中でキラのフリーダムがマルチロックオンシステムを起動し、プラズマ砲とレールガンの照準を接近するゲイツ部隊に向ける。ゲイツ部隊はロックオンに気付いて回避運動に入ったが、キラは逃げ回る敵の中から1機を選んで集中砲撃を加え、これを粉砕してしまった。先の戦いで二兎を追うと一兎も得られない事を学んだキラは、今度は最初から確実に落とすやり方に変えてきたのだ。
 更にアグニを装備したM1がフリーダムと共に砲撃を開始、ゲイツ部隊に強力なビームを浴びせかけた。連合のダガー隊でもバスターダガーが高エネルギー火線収束ライフルを発射しており、ゲイツ部隊は圧倒的な火力の砲撃を受けて編隊を崩されている。ザフトにはこの手の中距離支援機を配備する余力が無いので、この分野では連合に一方的に押される状況になっている。
 ゲイツ部隊の編隊が崩れたところにM1とストライクダガー、105ダガーが突入して接近戦を挑んだ。数の上では決して負けていない地球側のMS隊は負けないと考えていたのだが、ここで彼等はザフトの力を思い知らされる事になる。
 ゲイツ部隊は地球軍の機体が懐に飛び込んできたのを見て喝采の声をあげていた。折角中距離から一方的に戦かえる状況にあったのに、わざわざ向こうから突入して来て砲撃をし難くしてくれたのだから。ゲイツ部隊は個々に散開すると、突入してきたダガーやM1に襲い掛かっていき、これを次々に屠っていく。ダガーやM1は相手を侮っていたといわれても仕方が無いだろうが、それを加えてもゲイツ部隊は強かった。
 乱戦になってキラはフリーダムのレールガンを戻し、プラズマ砲とライフルに武装を絞った。なまじ多数の武装が使えるとかえって接近戦で隙をつくる事になると、ガザートとの戦いで学んでいたのだ。
 しかし、向ってくるゲイツ部隊を攻撃しながらキラは焦っていた。このゲイツ部隊は恐ろしく強く、フリーダムでも楽な勝負が出来ると言える相手ではなかったのだ。

「不味いっ、これじゃこっちが全滅させられる!」

 目の前でM1Aがビームライフルを連射してゲイツを近づけまいとしていたのだが、そのゲイツは平然とビームの弾幕を回避しながら距離を詰め、シールドを叩きつけるようにしてビームクローで胴体を抉り、M1Aの腹部を削り取ってしまった。そのままゲイツは駆け抜けていき、腹部を半ば失ったM1Aは爆発する事も無く漂っている。パイロットがどうなったかなど考える必要も無いだろう。
 キラは3機のゲイツを同時に相手取っていたのだが、このゲイツ部隊はキラの予想外の武装を持っていてかなり梃子摺らされていた。ゲイツは胸部にエクステンション・アレスターを装備しているのだが、このゲイツはフリーダムのようなレールガンを装備しているのだ。更にシールドの形状も異なっている。ザフトはゲイツの改良型を出してきたのだ。
 フリーダムがビームライフルで相手の進路を塞ぎ、動きが鈍った所にプラズマ砲を叩き込む。それの直撃を受けて右腕を吹き飛ばされたゲイツが衝撃で駒のように回り、動けなくなった所にビームを叩き込んで止めを刺す。だがそれに安堵する間も無く爆発の光から飛び出すようにしてゲイツRが突っ込んできてビームサーベルを抜いた。
 回避が間に合わないと悟ったキラは咄嗟にシールドを前に出してそれを受け止めた。ゲイツはそのままビームサーベルをシールドに押し当て続け、シールドを溶解させようとしている。フリーダムのシールドはラミネート製なので連合のシールドほど強靭ではないから、このままだと溶断されてしまう。
 キラの顔に焦りがうかんできて、何か手は無いかと必死に考え込む。だが、その窮地は援護の手で救われた。シンのM1Sが対艦刀を引っさげてゲイツRに斬りかかったのだ。これで右腕を落とされたゲイツが逃げに入ろうとしたが、その前にステラのアグニに撃ち抜かれてしまった。
 そのままシンとステラがフリーダムの左右につき、円陣を組んだ。

「大丈夫かよ!?」
「すまない、助かったよ」

 態勢を立て直し、周囲に集ってくる敵機を見据えるキラ。既に周囲に友軍は居ないようだ。

「気をつけてシン、ステラ。こいつらはプロだ、この前の奴等とは違う!」
「分かってるよ、こいつらむちゃくちゃ強い」
「どうする、キラ?」

 ステラに問われたキラはさてどうするかと考えたが、直ぐにそれを投げ出してしまった。こういう時、彼が乗っていたアークエンジェルはどうしてきたかを考えれば答えは1つしかないのだ。

「シン、ステラ。こういう時は悩むより行動だよ」
「と言うと?」
「僕がアークエンジェルに居た頃は、こういう時は迷うより前に出る方が上手くいったんだ」

 いきなり行動と言われても訳が分からないシンだったが、アークエンジェルといわれてますます困惑の度合いを深めてしまった。だがステラは分かったようで、楽しそうに頷いていたりする。

「あははは、おじさん言ってた。前にいる敵はぶっ飛ばせって!」
「そうそう、分かってるねステラ」
「ちょっと待てお前ら、マジか!?」

 何も考えていませんと宣言したにも等しい2人の発言にシンが吃驚仰天しているが、2人は本気だった。アークエンジェルの戦いに後退は無い。圧倒的な敵を前にひたすら前進し、力で粉砕していくのが本領なのだ。まあ、1隻で敵中突破する事が多かったせいなのだが、キラはこのやり方で勝ってきた。そしてステラもそういう分かり易いやり方のが好きだった。こんなごり押しの力技でこれまで勝ち抜いてこれたのだから、アークエンジェルがザフトから死神の如く恐れられるのも無理は無いだろう。
 とりあえず、そりゃ無茶だろと言っているシンが一番正気だ。だが、作戦は極めて民主的な手続き、多数決により決定された。突撃である。

「いくよシン、ステラ!」
「うん!」
「ああもう、どうにでもなれ!」

 ステラがアグニのカートリッジを交換し、正面に向けて3発連続発射した。これでエネルギーを使い果たしたアグニを捨ててビームライフルを取り出す。そしてアグニの砲撃で開けた正面にシンが対艦刀を構えて突入していく。切り込み隊長は彼の仕事だ。それをサポートするようにステラが続き、この2機を狙おうとしたゲイツをフリーダムの砲撃が容赦なく撃ち落とす。
 エース級3機が一丸となって突っ込み、ゲイツ部隊を切り崩していく。シンもステラもキラも相手を落とす事には拘らず、とにかく目に付いた敵機にビームを叩き込み、あるいは斬りつけていく。そして当たろうと外そうともう気にすることは無く、すぐに次の敵に向っていく。それはキラたちが意識してやった事ではなかったが、MS隊を大きく混乱させる効果があった。
 だが、突き進んでいくうちにキラはおかしな事に気付いた。何処まで行っても出てくると思っていた敵が出てこない。自分達がここで暴れている事は分かっている筈なのに、何故出てこないのだ。

「おかしい……」
「どうしたんすか、キラさん?」
「フリーダムやジャスティスが1機もいないんだ。これだけの大軍なのに、なんで……」
「あれ、そういや、1機も見ないな」

 言われてみて初めて気付いたシン、確かに前来た時は沢山居たあの白いのとか赤いのが今回は1機も見当たらない。前回で使い切ったのだろうか。それとも……。キラはそれを考えて酷く不吉な予想をしてしまった。もしかしてこの攻撃は囮で、ザフトは本命を別に用意しているのではないのかと。




 迎撃に出たMS隊は瞬く間に叩きのめされ、雪崩をうって艦隊の方に後退する羽目になった。MS隊が蹴散らされたのを見た艦隊は防空陣形に隊形を移行しはじめたが、それが完成する前にゲイツが襲い掛かってきた。
 しかし、MSはもう以前ほど効果的に戦艦を沈めることは出来ない。連合の対MS戦術も進化しており、対空砲火の密度の濃密化、射撃指揮システムの向上などでMSが食われる確立が飛躍的に高まっているのだ。不用意に艦艇に取り付こうとしたゲイツ2機が四方八方から叩き込まれた火線に絡め取られてバラバラに引き裂かれ、それを見た他のゲイツが慎重に距離を取っていく。
 そのゲイツ隊に対して撃ち減らされたM1Aやダガーはなお義務を果そうとしていた。

「こいつら、よくも!」
「オーブ軍を舐めるんじゃない!」

 アサギとマユラのM1Aが1機のゲイツに襲い掛かる。マユラのビームの連射で動きを止められたゲイツを側面に回ったアサギがビームライフルで仕留め、すぐに役割を逆にして次の敵を狙う。結局1対1では勝てないと理解したのだろうか。その隣ではエドワードのM1BがゲイツRの胴体をビームサーベルで串刺しにしていた。

「これで、3機か」

 コクピットに大穴を開けられたゲイツRを蹴って距離を取るエドワード。その実力はエース級というほどではないが、他のM1とは明らかに違う場慣れを感じさせる動きをしている。エドワードはオーブMS隊の正規の訓練だけではなく、幾度かの実戦を経験した事があるのだろう。
 だが、彼等のように健闘できるパイロットは稀であり、M1隊はゲイツ部隊に対抗する事は出来なかった。性能には劣っても戦訓を反映して訓練をしているダガー隊の方がまだ頑張っている。特に105ダガーやデュエルダガーは強力で、ゲイツに引けを取らない強さで対抗で来ている。だがそれらもより強力なゲイツRには劣勢を強いられており、敵を食い止める事は出来なかった。
 ゲイツやゲイツRの空けた穴からバズーカを担いだ対艦攻撃装備のゲイツや、アーバレストを装備した重砲撃使用のゲイツが突入してきて駆逐艦を何隻か仕留めていく。アーバレストは確かに強力だったが、結局MS程度の照準システムでは望んだような超長距離射撃では満足できる照準精度が得られず、パイロット達は近づく事で無理やり命中率を引き上げている。ガンナーザウートの成功はまさに車両型という形状から来る安定性の良さからだったのだ。
 超長距離砲として開発されながら中距離砲のような使い方をされるアーバレストではあったが、その威力は凄かった。一撃で駆逐艦の胴体を貫通して大穴を開けてしまう。あまりに貫通力が高すぎて信管が作動せず、小さな穴を開けるだけで終わりという笑えない事まで起きるくらいだ。クサナギも1発被弾し、兵員室などを吹き飛ばされている。アークエンジェル並の防御力を持つ本級の装甲ですらアーバレストには撃ちぬかれてしまうようだ。
 直撃の振動に揺れる艦橋で顔を顰めていたユウナは対空砲火にしっかり狙えと檄を飛ばしていたが、そこに今度はオペレーターが悲鳴のような報告をもたらした。

「ユウナ様、敵艦隊が!」
「今度は何だ!?」

 慌てて戦術スクリーンに目を向けたユウナが見たものは、一斉に前進を開始したザフト艦隊を示すシンボルであった。





 オーブ艦隊を相手に優勢な勝負を続けていたウィリアムスの下には逐一周辺の敵情がもたらされている。もうすぐ陽動に引っ掛かって別の場所に行っていた2個艦隊がこの場に到着する事も、極東連合の第2艦隊が少し遅れていることも掴んでいた。それらの現在位置と予想接触時間を表示させた作戦図を前に、ウィリアムスは小さく頷いている。

「ここまでは予定どおりだ。後はグラディス艦長が上手くやってくれる事を願うだけだが」
「彼女なら大丈夫でしょう、これまでも大きな失敗はありませんし」
「そうだな、彼女の活躍に期待しよう」
「それよりも提督、1つ面倒な事が」
「何かね?」

 部下が僅かに顔色を悪くしているのを見てウィリアムスはどうしたのかと聞く。そして部下のもって来た情報を聞いたウィリアムスもまた厄介な事になったと呟いた。

「第8艦隊、ハルバートンがもう来たのか?」
「はあ、どうやら月を出立して暫く様子を見ていたようです。囮には引っ掛からなかったようで」
「陽動作戦を見抜かれたか、やってくれるな」

 第8艦隊が出てきたのは運が悪かったなと苦笑を交えて言い、ウィリアムスはマーカスト隊の位置を尋ねた。

「マーカストは、何処に居る?」
「護送中の船団をポアズに届けた後、全力でこちらに向っている筈ですが、無線封鎖の為に詳しい位置は分かりません」
「そうか……」
「ですが、大丈夫でしょう。マーカスト提督の事ですからきっと間に合わせますよ」

 部下の言葉にそうだなと頷いて、マーカストは作戦図を見る。もうすぐ連合の2個艦隊がここに現れるだろう。アメノミハシラという餌は大魚を釣り上げる魅力があったようだった。そう、ウィリアムスの狙いはアメノミハシラではなかった。アメノミハシラも確かに重要だが、より大きな脅威は月にある6つの正規艦隊だ。この機動戦力を叩けば動けない基地など大した脅威ではない。ウィリアムスはそう判断し、アメノミハシラを攻略すると見せかけて連合の艦隊の一部を月から引き摺りだして艦隊決戦に持ち込む作戦を立てたのである。
 先のマーカストが行った月攻略作戦は敗北に終わったが、あれは月基地の傍だった為に敵が全力を迎撃に振り向ける事が出来たのが敗因だったとウィリアムスは判断していたので、敵が全力を出せない月の勢力圏外で決戦に持ち込むことを考えた。そして月の艦隊を撃ち減らし、敵を月に封じ込める。それがこの作戦の真の狙いであった。
 その為に大規模な陽動作戦まで展開して連合の独立艦隊や正規艦隊を各方面に分散させて混乱を誘い、各個撃破をし易くしたのだ。既に陽動に引っ掛かって関係の無い方向に誘き出された独立艦隊の幾つかは放っておいた少数艦で編成した遊撃隊に狩られていて、既に10以上の艦艇を始末した事が分かっている。ただこれだけの大作戦だけに物資の消耗は半端な物ではなく、もし負けたりしたらザフトは再起不能になりかねないというかなりギャンブル性の高い作戦ではあった。

しかし、この作戦は成功させなくてはいけない。しかもなるべく損害を少なくしてという制約付きであったが、とにかく早く終わらせなくてはいけなかったのだ。だからウィリアムスは少し無理をする事にした。

「よし、全艦前進。オーブ艦隊を叩きのめして戦闘不能にするんだ!」

 この命令を受けてザフト艦隊が一斉に前進し、オーブ艦隊との距離を詰めだした。この圧力に屈するようにオーブ艦隊は陣形を崩して後退し、被害を拡大させていく。残念ながら、経験の足りないユウナはザフト最高の知将ウィリアムスの相手ではなかった。




 そして、遂に連合の第5、第6艦隊が戦場に到着した。合わせて60隻を超える大艦隊が迫る姿は中々の迫力で、ピケット艦として配置されていたローラシア級のクルーが息を飲んでいる。
 ピケット艦から報せを受けたウィリアムスの動きは速かった。もう目の前のオーブ艦隊は壊走状態であり、十分に叩きのめしたと判断した彼は全軍に反転を命じたのだ。

「よし、予定通りだ。全艦反転、連合艦隊に向かうぞ!」

 ウィリアムスの命令を受けて各艦が整然と反転していく。これは予め予定されていた艦隊行動なので混乱も無く、すぐに各艦が指示通りの位置に動いて陣形の再編をしていく。オーブ艦隊に背を向ける形になるが、既にオーブ艦隊は壊走状態であり、組織的な攻撃を加えるなど不可能な状態であった。旗艦であるクサナギからして数箇所に被弾しており、消火作業中なのだから。


 ようやくザフト艦隊を捉えた第5、第6艦隊であったが、ガルチエリとシャンロンはザフト艦隊が整然と反転して陣形を再編するのを見て驚いていた。ザフトがこれほど見事な艦隊運動を見せるとは思わなかったのだ。そして、この動きは既にオーブ艦隊が撃破されたことを意味している。そうでなければ敵前回頭など出来る筈が無い。

「ガルチエリ、どうやらオーブ艦隊は持たなかったようだな」
「そのようだな。どうするシャンロン、ここは第8艦隊を待つか?」

 艦艇数はこちらが5割り増しほどだが、無理をせず第8艦隊の到着を待って2倍の戦力で挑む手もある。その方が良いのではとガルチエリは考えたのだ。シャンロンもその方が良いかと思ったのだが、その考えはすぐに不可能であると分かったレーダー手の驚愕の報告がシャンロンの耳朶を叩いたのだ。

「4時方向から新たな敵艦隊来襲、数7隻、すべてナスカ級です!」
「なにっ!?」

 ナスカ級7隻の艦隊が4時方向から現れ、砲撃を加えてきた。正面に意識を集中していた連合艦隊はこの攻撃に咄嗟に対処できず、第5艦隊の駆逐艦2隻が瞬く間に轟沈していく。この砲撃を受けたガルチエリは10隻ほどを割いてそちらへの反撃を指示したが、先手を取られた劣勢は覆しようも無かった。ナスカ級はどうやら探知圏外に潜んでいて、その高速を生かして急速前進してきたようだ。
この砲撃にシャンロンが顔を紅潮させて怒りを見せるが、そこに更なる凶報が舞い込んできた。

「後方を6隻の艦艇が駆け抜けていきます。これはナスカ級より高速です!」
「馬鹿な、そんな高速艦が!?」
「映像出します!」

 後方の映像がモニターに映し出された。そこにはピンク色の見慣れない新型艦6隻が信じられない速度で自分達の後方を駆け抜け、8時方向に展開するのが見て取れる。これで第5、第6艦隊はザフトに完全包囲された形となった。あの速度はアークエンジェル級より速い。
 だが、そこに更なる凶報が出てくる。後方を駆け抜けたザフト艦を照合したオペレーターが照合データを報告してきたのだ。

「新型艦はオーブからの情報にあったエターナル級です。核動力MSの運用艦です!」
「核動力MS!? それじゃあ奴等はあのフリーダムやジャスティスを積んでるのか!」

 フリーダムとジャスティスは連合内でもその脅威が広まっている。1機でMS中隊1つを相手取れるという破格の性能を持つ化物であり、対抗するにはエースが駆るクライシスが必要である。他のカラミティ、フォビドゥン、レイダー系列機では単独では対抗できない。
 これらの動きが実にスムーズに行われるのを見たシャンロンは、自分達が完全に敵の掌の上で踊らされていたことを悟った。これまでの攻撃と自分達をこの罠に誘い込む事までがザフトの計画された作戦だったのだ。

「我々は、嵌められたのか……」
「提督、正面の敵本隊が左右に陣形を開いて前進してきます!」
「MS対の発進を確認、少数の艦と共に上下に展開を開始!」
「…………」

 ザフト艦隊に完全に包囲された連合軍。ここにかつてのカンネー、そしてタンネンベルクの再現とも言える宇宙の完全包囲陣形が完成した。



後書き

ジム改 ザフトと連合の艦隊決戦勃発。
カガリ うちの艦隊は何しに出てきたんだ!?
ジム改 ボコボコにされる為。
カガリ ただでさえ少ない戦力を減らすんじゃねえ!
ジム改 人が残れば軍は幾らでも再建できるよ。装備は大西洋連邦から貰えば良い。
カガリ ……うちはWW2のイギリスか?
ジム改 某国だからフランスではないかと?
カガリ オーブを腰抜けフレンチと一緒にするな!
ジム改 お前はイギリス人か。
カガリ 挙句にやっと来たと思った連合の援軍は何の役にも立ってねえし!
ジム改 いや、ザフトから見ればお前等が餌で、あっちが本命なんだが。
カガリ フレイは地上で暢気に暮らしてるのに、何で私だけこんな苦労をするんだ!
ジム改 おかげで出番は増えてるじゃん。
カガリ 私よりユウナの方が増えてないか?
ジム改 まあ気にするな。
カガリ おもいっきり気にするわ!
ジム改 それでは次回、激突する連合とザフト、包囲されてなお激しい抵抗を見せる連合艦隊にウィリアムスからも余裕が無くなっていく。だが健闘は勝利に直結せず、連合の戦力はたちまちすり減らされていく。だが時間は連合の味方だった。次回「天秤は戻された」でお会いしましょう。

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