第123章  天秤は戻された



 星の海の片隅で輝く無数の光。その輝きを見た商船やジャンクシップが急いでその宙域から離れていく。その中には厄介な客を積んだ船もあった。そう、ラクスが乗っているジャンク屋の船である。
 船長は戦闘の光を見て巻き込まれないよう迂回航路に舵を切り、戦場から離れていこうとする。その異変に気付いたラクスが艦橋にやってきて何があったのかを聞いてきた。

「どうしましたか、船長?」
「戦争をしてますわ。危険なんで、迂回航路を行きます。ちょっと予定より遅れちまいますがね」
「戦争……」

 艦橋の窓から地球の方を伺えば、確かに軌道近くの宙域に幾つもの光が生まれては消えている。あそこで連合とザフトが戦っているのだ。
 それを見たラクスは船長の方に振り返ると、珍しく厳しい表情で船長にとんでもない事を命じてきた。

「船長、船をあちらに向けてください」
「な、何を言ってるんですか!?」
「ラクス様!?」

 いきなり何を言い出すのだ、という顔で船長とダコスタが驚愕している。周囲のクルーも唖然とした顔をラクスに向けていた。

「戦闘を止めさせます」
「冗談は止してください。確かにこの船は高速輸送艦を改造して、ローラシア級でも振り切れる足を持っていますが、軍艦と撃ちあったら勝負になんかなりゃしませんよ!」

 ジャンク屋の船はその性質上、多くはカーゴシップや民間商船の改修型、あるいは軍が払い下げた退役艦などが使われている。その中でこの船は連合の高速輸送船を強化した高速艦だ。マルキオがラクスの身の安全を考慮して特別に手配した船で万が一の事があっても振り切れる確率が高い。
 だが、それはあくまで逃げに徹すればの話だ。戦闘艦ではないのだから当然装甲などは無く、隔壁も十分とは言えない。武装もされてはいるがあくまで自衛レベルで、駆逐艦が相手でも撃ち負けるのは確実だ。軍艦とは武装した船というレベルでは相手に出来ない。軍艦に海賊船や武装商船で挑むのは自殺と同じだ。
 そんな事は常識であり、こんな輸送艦で艦隊戦が行われている戦場に近付くなど正気の沙汰ではない。船長はそう言ってラクスを諌めたのだが、ラクスは聞く様子は無かった。

「船長、早く船を向けてください。1分早ければそれだけ死なずに済む人が出るのです」
「無茶言わんで下さい。お客さんがどんな偉い人かは知りませんがね、一度始まった戦争を止めるなんて出来るわけが無いでしょう。下手に近付いたらぶっ放されてこっちは一巻の終わりですよ」

 船長はあくまで戦場に向かう事を拒否し、迂回航路へと向ける。彼はギルド本部からこの客人を拾ってL4まで送り、指定された宙域で待っている別のギルドの船に届ければいいという依頼を受けているので、ラクスの要請を受け入れる義理は無い。彼の依頼主はギルドであってこの傍迷惑な客人ではないのだから。
 そしてラクスは自分の指示を無視した船長を暫く睨みつけていたが、ダコスタに諭されて渋々艦橋から出て行った。それを見送ったクルーはホッと安堵の息を漏らし、迷惑そうな顔を船長に向けた。

「船長、何であんな客を運ばなくちゃいけないんですか?」
「しょうがないだろ、ギルドからの依頼なんだから。それに代金も破格だったんだ、多少の事には目を瞑ってろ」
「一体誰なんです?」
「さあね、俺も知らないし、知る必要も無いさ。ジャンク屋の船で移動するような人間の素性なんて、知っても碌な事無いぞ」

 ジャンク屋なんてヤクザな商売の船を利用するような客は同業者関係か、お日様の下を歩けないような素性の人間くらいだ。普通の人間なら民間航路を使った方がずっと楽で安いのだから。そんな人間の素性をあれこれ検索しても碌な事は無いし、知ろうとしないのがこの商売の鉄則だ。この人間を運ぶ仕事が法外な報酬で行われるのも、素性を一切聞かないという口止め料が含まれていることによる。だから船長はラクスたちの素性や目的を一切聞いていないし、船員たちもそれを聞こうとはしていない。
 船が戦場から離れていくのを隠し部屋の窓から見ていたラクスは、悔しそうにダコスタに愚痴を漏らしていた。

「ダコスタさん、私は無力ですね」
「ラクス様」
「目の前で戦闘が行われているのに、それを止める事も出来ないなんて」
「仕方がありません、この船では落とされに行くようなものです」

 ダコスタは船長の判断を良しとしていた。彼はラクスの護衛を兼ねており、ラクスを危険な場所に近づけることは避けたかったのだ。そういう意味では船長が常識的な判断をしてくれて内心ホッとしていたりする。前からラクスに言っている事なのだが、ダコスタとしてはラクスはメンデルに留まり、各国の要人などに対する働きかけは部下に任せるべきだと考えている。部下の代わりは居るが、ラクスの変わりは居ないのだから。
 戦場の光が見えなくなると、ラクスは手近な椅子に腰を降ろしてダコスタに質問をしてきた。

「ダコスタさん、新しい指揮官の目処は立ちそうですか?」
「まだ良い返事は得られて居ませんが、中堅あたりの指揮官が幾人かをこちら側に引き込めました」
「高級指揮官は?」
「それは未だに。優れた指揮官となりますと接触するのも容易ではありませんし、派閥が入り乱れていて誰がどの派閥なのかの判断も難しい状況です」

 ラクスは簡単に言ってくれるが、事はそう容易ではない。エザリア派の台頭でザラ派の指揮官達の多くが左遷されている。そしてクライン派からも幾人かがシーゲルを見限ってエザリア派に身を投じている。流石に指導者が投獄されている現状では身の保身を図る者も出るのだ。
 この情勢ならばザラ派の指揮官は自分達の側に取り込めそうに思えるのだが、ザラ派の多くはパトリックを殺したのはラクスだという宣伝を信じている。あるいは事実ではないかと疑っているのが現実だ。現在ザフト宇宙軍の中で最も優れているといわれる指揮官がウィリアムスとマーカストの2人の提督で、両方ともザラ派に属している。先のアメノミハシラ後略戦で指揮を取ったハーヴィックなどはエザリア派と言える。つまり有能な指揮官の大半はザラ派かエザリア派なのだ。この現実がラクスの人材確保を難しくしていた。兵士は揃える事が出来ても指揮官は簡単ではない。バルドフェルドというクライン派の名将は極めて貴重だったのだ。それだけにその損失は痛かった。
 ただ、ダコスタは1つだけ吉報を持っていた。

「ですが、前ボアズ司令官のイブン・ファウド提督が我々の接触に応じてくれました。積極的な協力が得られるかは微妙ですが、こちらに手を貸していただけるそうです」
「ファウド提督と言うと、先の地球軍のプラント攻撃の後に責任を問われて解任された方でしたね」
「はい。あの処分が不満だったようで、こちらの話に乗ってきてくれました」
「……動機が少々不満ですが、仕方ありませんね」
「はい、贅沢も言っていられません」

 折角味方に引き込める、もしくは好意的中立を約束してくれるのだ。ただでさえ苦しいラクス軍の内容を思えば、相手の人格を理由に不満を漏らすなどあって良い事ではない。自分達の勢力は、まだまだ弱いのだから。





 完全な包囲下に置かれた連合の第5、第6艦隊。全方位から放たれる砲撃が戦艦を、駆逐艦を撃ちぬき、爆散させていく。ガルチエリとシャンロンはアンチビーム爆雷による防御を行わせていたが、既に艦隊の指揮系統は崩壊しかけていた。

「このままでは殲滅される、MS隊は敵を突破できないのか!?」
「駄目です、敵MS隊に押し返されています!」

 頼みのMS隊が負けている。この現実にシャンロンは唇を強く噛みすぎ、血を滲ませていた。今回の戦いは数において殆ど同数でぶつかっている。確かに連合もMSを投入する事で劣勢を挽回していたが、数で優位に立たなければザフトに対して不利だという現実がここに突き付けられている。
 しかし、MS隊は奮戦していた。主力のストライクダガー隊は数で勝るゲイツを相手に必死に戦っている。だがあらゆる性能でゲイツに劣るストライクダガーでは苦戦を免れず、正面から突っ掛かってはゲイツにひらりと躱され、そのまま側面や背面に回りこまれて致命的な一撃を叩き込まれている。ゲイツから放たれたビームがダガーのバックパクを吹き飛ばし、四肢を破壊し、あるいはコクピットを撃ち抜いて2度と動かなくしていく。
 そしてそれ以上に脅威となっているのが10機のジャスティスと3機のフリーダム、そして2機のザクだった。ジャスティスは驚異的な接近戦能力でストライクダガーを切り伏せ、あるいは両肩のビーム砲で吹き飛ばしてしまう。フリーダムはその強力な火砲を生かして複数のダガーを纏めて叩き落していく。かつてキラがアラスカで見せたマルチロックオンシステムを使っているのだろう。ザフトではこれへの対策が進んでいるが、連合ではまだ有効な対策は無い。
 このフリーダムの中で一際目立つ働きをしているのがハイネのフリーダムだった。彼は相棒のセンカのジャスティスと共に戦場を死神のように駆け抜け、死を振りまいている。両手で保持する長砲身ビームランチャーは対艦攻撃兵器として特筆するべき威力が有り、既に駆逐艦2隻とアガムメノン級MA母艦1隻を血祭りに上げていた。

「こいつは七面鳥狩りだな。ナチュラルの方から照準に飛び込んでくる!」
「そうね。でも数が多いのが面倒だわ!」

 ハイネの軽口に答えながらセンカのジャスティスがビームブーメランを投げる。それは近くに飛び出してきたデュエルダガーの胴体を切裂き、擱座させてしまう。それは余りにも一方的な戦いであった。

「拍子抜けね。もっと強い奴が居ると思ったんだけど」
「ならオーブ艦隊に仕掛ければ良い。あそこには奪われたフリーダムがあるはずだ」
「馬鹿言わないで。勝手に戦場を離れて独房入りはご免よ」

 グラディス隊長は規律に煩いから、勝手なことをすると後で小言を言われるのだ。センカもハイネも怒られたことがあるので、余りグラディスを刺激しないようにしている。
 だがこれでは確かに拍子抜けもいいところだ。どうせならもっと歯ごたえのある相手と戦いたい。こんな連中が相手ならば自分達と特務隊が出張る必要はなかっただろうと文句の1つも出てきてしまう。
 だが、センカのその不満はすぐに払われる事になる。周囲に居た味方のゲイツR1機がいきなり飛来した光線に真っ二つにされたのだ。最初は流れ弾かと思ったが、そのまま殴り込むようにやってきた赤い見慣れぬMSが持つ対艦刀に更に1機のゲイツがぶった斬られたのを見たセンカが慌ててビームキャノンを向ける。しかしその見慣れぬ新型は胸部から強力なビーム砲を発射してきてセンカに回避を強要してきた。

「なによこいつは!?」
「今照合している!」

 ハイネがフリーダムのコンピューターに敵機の情報を解析させている。そして弾き出された答えは、カラミティに良く似た新型だという答えだった。

「センカ、そいつはカラミティとかいう連合の新型だ。形状が僅かに違うから、カスタム機だろう」
「カラミティって、砲戦型じゃなかった。何で対艦刀持ってるのよ!?」
「さあな、そいつはナチュラルに聞いてくれ!」

 センカの文句に適当に返し、フリーダムの全ての砲をカラミティに向けて発射する。だが狙った相手、ソードカラミティは直撃コースの弾をシールドで受け止め、対艦刀でジャスティスを狙ってきた。
 狙われたセンカはどうするか悩んでいた。接近戦はジャスティスの力を最大限に発揮できるが、対艦刀を相手にできる装備が無い。ビームサーベルではあれを受ける事は出来ないだろうし、シールドで受ければシールドごと真っ二つにされてしまう。しかも胸から発射されるビーム砲はかなり厄介な威力を持っていた。つまりジャスティスとこいつは相性が悪いのだ。

「ああもう、こんなのが出てくるなんてツイてない!」
「歯応えのある相手が欲しかったんじゃないのか?」
「前言撤回、楽な方が良い!」

 至近距離から放たれるパンツァーアイゼンをシールドで受け止め、ビーム砲を交互撃ちで連射するセンカ。それをシールドで受け止め、あるいは回避して距離を詰めてくるソードカラミティ。腹立たしいがあの機体のパイロットはかなり腕が良かった。
 何とかジャスティスの懐に入ったソードカラミティは対艦刀を横薙ぎに振るうが、その一撃はシールドを叩きつけるという乱暴な防御によって軌道を逸らされてしまった。これだけ攻めても仕留められない相手にソードカラミティのパイロット、フォー・ソキウスは素直に感心していた。

「強い、機体もパイロットも」

 だからこそ、こんな奴を放っておく事は出来ない。放っておけばナチュラルをどれだけ殺すか分からないから。それに、ここで自分が頑張ればそれだけ多くの敵を引き付ける事になり、艦隊が反撃に出れるかもしれないのだから。
 周囲にまだ残っていた味方のダガー隊が暴れまわっているソードカラミティの周りに集ろうとしていたが、それらに対してソキウスは速く艦隊の方に戻るように言った。

「ここは僕に任せて、後退してください!」
「だが、それではお前が孤立するぞ。幾らなんでも1機じゃ無茶だろ!」
「僕は大丈夫です、それより急いで、長くは持たせられません!」
「お前……」

 デュエルダガーを駆る隊長はソキウスがここで死ぬ覚悟を固めている事を悟り、言葉を無くしていた。ソキウスがどういう存在なのか詳しくは知らないが、コーディネイターというだけでも好感は無く、その口数の少なさから薄気味悪い奴だという印象しかなかったのに、まさか命を賭けて自分達を助けようとするとは。

「馬鹿を言うな、部下を、仲間を残して隊長が退けると思うのか!?」
「このままじゃ全滅です、他の部下を連れて行ってください!」
「だが……」
「さあ、早く!」

 向ってきたゲイツRをスキュラの一撃で木っ端微塵にして、ソードカラミティは敵の群れに飛び込んでいく。それを見た隊長は制止の声を飲み込むと、まだ残っている健在機を連れて艦隊の方へと戻っていった。
 それを後方監視カメラで確かめたソキウスは口元に彼にしては珍しい笑みを浮かべると、改めてゲイツ部隊を見据えた。

「仲間……、そう呼んで貰えれば十分です」

 ナチュラルに尽くす事を至上の喜びと感じるようにされているソキウスにとって、ナチュラルの役に立って死ぬのならそれは本望なのだ。まして、そのナチュラルから仲間扱いされるというのは望外の喜びとなる。遺伝子操作の果てに生み出されたクローン体というおおよそ正気の沙汰とは思えない出生を持つソキウスは、その狂った満足感を胸に死地へと飛び込んでいった。


 だがフォー・ソキウスはすぐに劣勢に追い込まれる事になる。相手はセンカだけではなく、ハイネや周囲のゲイツ部隊も居たのだから。これらのMSの集中攻撃を受けたソードカラミティは機体の各所を次々に削られていった。それはクジラがシャチの群れに襲われるような姿であった。彼を助けてくれそうな味方の姿は既に周囲には残っていない。悲しい事だが、フォー・ソキウスはその狙いの通り敵の多くを引き付けて味方を逃がしていたのだ。
 友軍機を逃がすのに成功した。そう確信できたソキウスは満足げな笑みを浮かべていた。自分は己が使命を全うしたのだ。

「僕の役目は果した。あとは……」

 後は1機でも多くの敵を道連れにするのみ。そう叫んで沿ソキウスは手近なゲイツに向っていった。それは自殺も同然の、文字通りの特攻であった。





 目の前で連合艦隊が一方的に殺戮されている。それを歯噛みしながら睨みつけていたユウナは、とにかく動ける艦艇とMSを集めて援軍を送ろうとはしていた。既に駆逐艦6隻とイズモが集められて即席の艦隊を編成し、まだ戦闘力を残しているMSが集結している。その中にはキラのフリーダムは勿論、シンやステラ、馬場一尉、マユラにエドワード、アサギたちが含まれている。彼等が残っていたのは決して偶然ではないだろう。
 そして艦隊の前方に展開するMA部隊の戦闘に立っているのはキースのコスモグラスパーだ。彼を先頭とするMA隊は増槽を搭載して航続距離を伸ばしている。
 ユウナ自身も旗艦をクサナギからイズモに変更し、この寄せ集めの艦隊の指揮をとる事にしていた。とはいえこんな弱体な部隊であの強力なザフト艦隊に挑むなど無謀以外の何物でもなく、いつものユウナなら無理をせずに艦隊を退かせていただろう。実際カガリからも再編中に無理をするなという指示も来ていた。だが、ユウナは退く気にはなれなかった。ここで連合を見捨ててはオーブの同盟軍としての信義を疑われる事になるし、何よりユウナ自身が怒りの衝動に突き動かされていた。これまでに幾度も指揮を取ってきたが、自分の指揮でどれだけの部下を死なせてしまっただろうか。その無念が彼を復讐に駆り立っていたのだ。
 そして程なくしてオペレーターから全艦出撃準備完了の報告がもたらされ、ユウナは頷くと全軍に前進を命じた。

「いいか、ザフト艦隊の包囲陣に穴を開け、連合艦隊の退路を切り開くんだ。その後連合艦隊と共にアメノミハシラに後退する!」
「ですがユウナ様、我々だけであの艦隊を崩せるでしょうか?」
「極東連合の艦隊も近くに来ているはずだ。彼等が来てくれることを期待するさ」

 ユウナ自身も勝てるとは思っていない。だが一矢報いなければ気がすまない。その無念は他のクルーにも多かれ少なかれ共有されており、それ以上ユウナに疑問をぶつける者は居なかった。
 ユウナの指示で艦隊が発進し、ザフト艦隊へと突撃して行く。その先を行く形でキース率いるMS隊が突入して行った。そしてその後を馬場一尉率いるMS隊が続いていく。その中に混じっているキラは、シンに付いて来いと言った。

「行こうシン、僕たちで突破口を切り開くんだ!」
「キラさん?」
「オーブのMS隊じゃまともにぶつかっても勝ち目が無い。だから僕たちで迎撃機に穴を開けるんだ」
「また無理言うなよ。2機でそんな無茶できないだろ」

 キラがまた無茶苦茶言ってると呆れた顔で言い返すシンだったが、キラはそんなシンに微笑を浮かべていた。

「出来るさ、君はフレイが認めた教え子なんだろ。キースさんも良い腕だって褒めてたし、訓練じゃ僕だって結構本気を出してる」
「…………」
「僕に本気を出させるパイロットは殆ど居ないよ。シンは僕が知る中でもかなり強いパイロットさ、でなければ誘わないよ。こんな無茶に付き合えるのはアークエンジェルのみんなくらいだ」
「……なんか騙されてる気がするけど、まあ良いか」

 おだてられて乗せられた、という気もしないでもないが、キラにあそこまで言われて悪い気はしない。キラの実力はフレイやカガリに教えられていたし、自分でも模擬戦などで散々な目に合わされながら理解している。キラはフレイの更に上をいくパイロットだ。そのキラが自分を強いと言うのだから、パイロットとしては悪い気はしなくて当然だ。
 キラの誘いに応じたシンがキラと共に加速していく。それを見たステラが勝手に編隊を離れて2人に付いて行ってしまった。

「シン、ステラも行く!」
「ス、ステラ!?」
「ステラも強い、付いてく!」
「どうすんですキラさん?」

 困ってしまったシンがキラに助けを求めたが、キラは苦笑いをしてシンの期待していたものとはまるで違う答えを返してきた。

「まあ良いさ、ステラも凄腕なのは確かだし」
「女の子を連れてくのかよ!」
「危ないならシンが頑張って守りなよ。それくらいの覚悟が無ければ、その子はキースさんの言う通りにした方が良い」
「うぐっ……わ、分かったよ。やれば良いんだろやれば!」

 前にキースに啖呵を切った手前、そう言われると反論のしようが無い。そしてキラは、シンが文句を言いながらもそれを投げ出さないのを見て嬉しそうだった。自分はその覚悟を固めるまでに随分遠回りをして大勢の人に迷惑をかけてきたから、シンの愚直とさえ言えるほどどこまでも真っ直ぐな性格がまぶしく感じられる。それは自分が持っていないものだから。
 シンとの回線を切ったキラは、迫る敵艦隊と迎撃に出てきたゲイツ部隊を狙ってマルチロックオンシステムを起動する。馬鹿の一つ覚えと言われようと、フリーダムはこれが最大の武器なのだ。

「大丈夫さシン、その覚悟があれば、きっと守れる。覚悟が無い奴には何も出来はしないんだ」

 かつてハルバートンが自分に言った言葉。意思が無い者には何も成し遂げられないというあの言葉の意味を今では懐かしさと共に思い出せる。あの時は良く理解できず、ただ闇雲に突き進む事しか出来なかったが、今ではその意味が理解できる。自分は何の為に戦うのか、何を目的とするのか。それがはっきりと見定められなくては何時までも宙ぶらりんで、フラフラしてしまう。
 自分がそれを自覚しだしたのは何時頃だっただろうか、もう良く思い出せない。口に出してはっきりさせたのはラクスとの別れの時だったと思うが、それを何時覚悟したのかはもう分からない。だが、今でははっきりと言える。自分の仲間達を守る為に、この戦争を一刻も早く終わらせるのだと。だから今は、もう迷わずに戦える。

「そうさ、僕はザフトを叩いてこの戦争を終わらせる。そしてカガリたちと一緒に地球に、フレイの待ってるオーブに帰るんだ!」

 決意を込めてロックオンした目標めがけてビームとレールガンを発射する。そして同時に、キラの中のSEEDが弾けた。





 連合艦隊を包囲したウィリアムスは勝利を確実な未来だと判断していた。もう包囲下の連合艦隊は3割ほどにまで撃ち減らされており、MS隊の抵抗も微弱だ。味方のMSには艦砲射撃の巻き添えを食らう危険があるということで退避を命じるほどの余裕が出来ている。

「どうやら勝ったな。この後は極東連合の艦隊と第8艦隊、近い方を撃破してプラントに帰還するぞ」

 このまま2個艦隊を宇宙の塵としてやれば連合軍の受ける被害は洒落になるまい。その後に第8艦隊なりを撃破すれば暫くは身動きできなくなる筈だ。ハルバートンを殺害できればなお言い。あの男の知略はこれからもザフトの脅威となる事は間違いないのだから。今回も陽動作戦を見抜いてこちらに急行して来ている。もしハルバートンの動きがもう少し速ければグラディス隊は第8艦隊に撃破され、逆に自分達が多数の連合部隊に囲まれて殲滅されていたかもしれないのだから。
 しかし、ここでウィリアムスにとって意外な問題が発生した。先ほど撃破したはずのオーブ艦隊が態勢を立て直して反撃に転じてきたというのだ。それを聞かされたウィリアムスはその状況を別のモニターに表示させたのだが、その数の少なさを見て呆れてしまった。

「たった7隻で来たのか。無茶をする」
「どうなさいます?」
「先程の戦いを見る限り、こんな無理をする指揮官とは思わなかったのだがな。だが放置してもおけまい。艦艇を5隻、MS隊を付けて迎撃に出させろ。それくらいの余裕はあるはずだ」

 それらの指示を出し終えたウィリアムスは、極東連合艦隊を示すシンボルに目を向けた。あの艦隊もあと1時間もすれば戦場に到着する。第8艦隊はこちらの索敵を振り切ったようで現在位置が不明だが、近くに来ていることは間違いない。ウィリアムスは先ほどオーブ艦隊の指揮官を無理をしていると評価したが、自分も少し無理をしすぎたのではないかと考えていた。

「オーブ艦隊が立ち直るほど時間が立っていたのか、連合の反撃もそれだけ熾烈だったという事だな。これ以上戦っていれば下手をすれば極東連合と第8艦隊、それにオーブ艦隊を同時に相手取る事になる可能性もあるか」

 そうなったら今度はこちらが敗北する。流石にそこまで戦い続けるほどの弾薬は無い。ただでさえ補給する間も惜しんで連戦をしているのに、小競り合いならいざ知らず、この後に更に本格的な戦いをするのは避けたかった。
 これ以上戦うのはリスクが大きいかと判断したウィリアムスは、艦隊に包囲を解いて戦場を離脱する事にした。もう目の前の艦隊は殲滅したと言っても良い。あれでは再建するとしても1からになるだろう。オーブ艦隊も当分再建は不可能だろうし、目標は概ね達成したのは間違いない。これだけの被害を与えれば連合軍の地球軌道における活動は大幅に鈍くなるのは確実だ。

「よし、戦果は十分だ。全艦に撤退を命じろ。殿にはグラディス隊を中心に傷の浅い部隊を残すんだ」

 ウィリアムスの命令が全部隊に伝達され、ザフト艦隊が包囲を解いて離脱していく。それを食い止める力はもう連合艦隊には無く、損傷艦、喪失艦から負傷者を救助するだけで手一杯の有様だ。しかも指示を出す者が居ないのか、統制された動きをしていなかった。
 しかしザフト艦隊の撤退も順調にいったわけではない。いつもの慎重ぶりをかなぐり捨てて猪突猛進してきたオーブ艦隊は、それまでのオーブ艦隊のイメージを破壊してしまうような攻勢をかけてきたのだ。突き進む槍の穂先のようにMS部隊がゲイツ部隊に食い込んでいき、イズモを先頭にして艦隊がザフトの迎撃部隊を突破しようとしている。
 イズモの艦橋ではユウナが彼らしくなく立ち上がって彼らしくない指示を飛ばし続けていた。カガリやミナが見たら目を擦った挙句、疲れを訴えてベッドに入ってしまいかねない様な光景だ。

「突撃だ、突撃しろ。奴等にオーブの意地を見せてやるんだ!」
「はい、ユウナ様!」
「ビームもミサイルもケチケチせずに撃ちまくれ。奴等は連戦してるんだ、心配しなくても必ず向こうが先に弾切れになる!」

 どうやらユウナは敗戦の衝撃から立ち直れなくなるというありがちな方向には向かわず、逆に怒りが戦意を際限なく駆り立てて、気合が入ってしまった新米突撃将校になってしまったらしい。さらにこの司令官の暴走は艦隊全体に感染してしまったようで、艦艇もMSも理解不能な勢いで突き進んでいた。このオーブ艦隊を包み込む暴走のオーラに気押されたかのようにザフト艦隊が後退している。
 そしてMS隊はキラとシンを先頭にこれまた突撃をしてきて、ゲイツ部隊を蹂躙していた。特に種割れしたキラの強さは凄まじく、ゲイツ部隊が1機、また1機と落とされていく。シンとステラもキラほどではないが確実に敵を仕留めており、ゲイツ部隊は確実に数を減らして後退していた。

「シン、このまま突っ切るよ!」
「ああ、もうどんどん行くぞ!」
「あははははは〜〜!」

 キラの呼びかけにシンはヤケっぱちに答え、ステラは何が楽しいのか狂ったように笑い続けている。その強さは止めようも無いほどで、ゲイツ部隊は怯みを見せてこの3機からは距離を取り出している。

「おい、何だよあいつ等!?」
「フリーダムは分かるが、M1があんなに強いなんて!」
「とにかく纏まれ。落ち着いて包囲すればたかが3機くらい!」

 ゲイツのパイロット達は狼狽しながらも反撃の準備を整えていく。だが、彼等は3機のMSに拘りすぎていた。彼等以外にも凄腕は居たのだ。小隊レベルで態勢を立て直そうとしていた彼等のコクピットに、聞きなれない声が響いてくる。

「お前等、フリーダムに拘りすぎで隙だらけだよ。それでもコーディネイターか?」
「なっ!?」

 驚いて周囲を確かめようとするが、その間も与えられず1機が側面からビームの直撃を受けて破壊されてしまった。そのビームが飛んできた方向に咄嗟に他の2機がビームライフルを向けたが、既にそこにはM1の姿は無かった。代わりに今度は下方から飛来したビームがゲイツ2機を撃ち砕いてしまう。
 そして3機のゲイツを瞬く間に撃墜したエドワードは、その無様な最後に怒りと空しさを感じてしまっていた。

「コーディネイターと言っても、所詮はこの程度。落ち着きを失くせばナチュラルと変わりもしない」

 俺はこんな奴等を妬んで、嫉妬して20年も生きてきたのか。そう思うと今更ながらになんて馬鹿な時間を過ごしてきたのだろうかと自分の馬鹿さ加減に自嘲を隠し切れない。何で自分はクルーゼ隊長の話に乗って、あんな事をしてきたのだろうか、と。



 艦艇とMSが入り乱れる戦場を、8機のコスモグラスパーが駆け抜けていく。彼等は一度戦場を天頂方向に駆け抜けて混戦から離脱すると、そのまま高みから獲物を探す海鳥のようにじっと下方を見据え、やがて1隻のエターナル級に狙いを定めた。

「全機突入する、俺に続け!」

 キースが機首を下げて急降下するかのような勢いで狙ったエターナル級に向っていく。付き従う他の7機もキースに習って突入を始め、キースと同じようにどんどん加速していく。それは危険な戦法ではあったが、他の戦法に較べればまだ生き残れる確率が高いのだと彼等は知っていた。そう、彼等はキースが月にいた頃に鍛えていた、新しいアーマー乗りたちだったのだ。
 キースの戦法はある意味古い物だ。まだ航空機という物が実戦で使われて間もない頃に開発された、急降下爆撃という戦法に近い。それは一撃離脱という空戦テクニックなどとは比較にならない、自殺紛いの戦術だ。使われていた当時でさえ自殺と同義に扱われていたような戦術であるが、対空砲火や敵機の迎撃に身を晒す時間が極端に短くて済むという利点があり、使いこなせれば有効な戦術ではある。
 今回も彼等は一直線に狙った艦めがけて突き進んでいく。速度はどんどん上がっていき、回避運動を取るのも危険という状態だ。周囲のゲイツ部隊が突っ込んでくるMAを見つけてビームライフルを向けるのだが、放たれたビームは悉くコスモグラスパーの後ろを貫いている。余りの速度に照準が合っていないのだろう。
 そして狙われたエターナル級があるだけの対空火器を動員してコスモグラスパーを叩き落そうと必死の努力をする中で、まずキースがガトリングガンとレールガンを叩き込んでそのまま下方に駆け抜けていく。それに続いて2番機、3番機が次々に抱えている砲を叩き込んで同じように離脱していき、すぐに全機が攻撃を終えて下方に駆け抜けていった。そして戦場から離れた所で一斉に機首を起こして巡航に入った彼等が視線を戻すと、狙ったエターナル級は上面に無数の爆発を起こして、それがゆっくりと艦全体に広がろうとしている。撃沈は確実だろう。カタパルトから噴出した爆発にはMSらしき残骸も混じっている。
 それを見たキースはすぐに次の目標を探し出した。まだ敵はいるのだ。だがキースたちもいつの間にか数が7機に減っている。何処で落とされたのか分からないが、1機食われてしまったようだ。どんなに上手く戦っても犠牲はゼロには出来ない、そういうものなのだ。



 突き進んでくるキラたち。この手の付けようの無い連中を迎撃しに出てきたのが特務隊のハイネとセンカ、そしてザクを駆るガザートだった。ハイネとセンカが同時にキラに挑み、ガザートがシンに向っていく。

「ハイネ、援護お願いね!」
「待てセンカ、不用意に突っ込むな!」
「ジャスティスが突っ込まなくてどうするのよ!」

 迂闊に出るなというハイネの注意を跳ね除けてセンカがキラのフリーダムに挑む。それを見て舌打ちしつつハイネがマルチロックオンシステムを解除し、近距離で単一目標を狙うブロウラーモードに切り替えた。試作機であるキラのフリーダムに対して量産型はFCSの面でも改良が施されており、キラのフリーダムでは出来なかった単機を狙った統制射撃が可能となっている。キラのフリーダムが単機を狙うと各砲ごとの単独照準射撃となるが、ハイネのフリーダムは1つの照準に全ての砲を合わせる事が出来る。
 何のことは無い、フリーダムを実戦で運用してみたら望んでいた様な中距離からの砲撃で多数の敵を一方的に殲滅するという戦いが、実際には虫の良い夢想でしかなかった事が実戦で証明されたので、急遽追加された近距離戦闘用の火器管制システムだ。このシステムは相手がジャスティスであっても対応することが出来る。

「センカ、無理するなよ。アスランから送られてきたデータが本当なら、そいつは化物だ」

 あのフリーダムにはブロウラーモードは無い。なのに奴はオーブ戦でアスランのジャスティスと互角に戦って見せている。そう、特務隊でも最強と言える腕を持つあのアスランが駆るジャスティスに、フリーダムで対等に戦っているのだ。これはつまり、あのパイロットがアスランと同等か、それ以上の腕を持っている事になる。相性の問題でフリーダムはどうしてもジャスティスには不利になるのだから。このブロウラーモードを使えばその差はある程度埋まるが、不利である事に変わりは無い。
 そして、ハイネはもう1つの事情を知っていた。このブロウラーモードは、オーブでのフリーダムの戦闘記録を元に作られているという事を。それはつまり、あのパイロットはシステムの支援無しで、ブロウラーモードと同等の芸当を手動照準でやってみせたということだ。それが化物でなくてなんだと言うのだ。

 センカのジャスティスがビームブーメランを投げつける。それに気付いたフリーダムがビームライフルでブーメランを撃ち落とすが、その隙を付いてジャスティスが距離を詰め、ビームサーベルを抜いた。

「貰った!」
「ジャスティスか」

 振るわれるビームサーベルを翼の振りを使った慣性機動による減速で空振りさせ、その伸び斬った右腕をシールドで思いっきり殴りつけ、関節を破壊した。一瞬で右腕を破壊されたセンカは警報に体が勝手に反応して機体を後退させてくれたおかげでどうにか次の致命的な追撃を逃れる事が出来たが、センカの受けた衝撃は大きかった。

「嘘、何よそれ。フリーダムなのに、ジャスティスより速く動いた?」
「下がれセンカ、後は俺がやる!」

 右腕を破壊されたセンカを押し退けるようにしてハイネのフリーダムが前に出て、全ての砲をキラのフリーダムに向ける。

「試作機が、量産型に勝てると思うなよ。こっちはお前の欠点を潰した完成型なんだ!」

 自分を鼓舞するようにハイネは叫んだ。そうだ、こっちはあの試作機をあらゆる面で上回る量産型なんだ。試作機などに負けるはずが無い。そう思わなくては、この化物の前に立つという恐怖に捉われてしまいそうだった。
 ブロウラーモード、主戦機を意味するFCSが起動し、キラのフリーダムに砲を向ける。接近戦で威力を発揮するFCSがフリーダムを捉えてプラズマ砲とレールガンが次々に放たれていく。キラはそれが届く前に回避運動に入ったが、ハイネのフリーダムはキラの動きに追いついて次々に砲を放っていった。この砲撃にキラは驚きを隠しきれないでいる。

「フリーダムが、この距離で付いてこれる。パイロットの腕か、それとも機体の性能なのか?」

 ジャスティスならともかく、フリーダムの砲撃が付いてこれるとは思わなかった。これまで戦ったフリーダムは近距離では砲撃力を無くして弱体化していたのだが、この機体は違うらしい。だが、それでも所詮はフリーダムだ。キラからすれば恐れるほどの相手でもない。今のキラにとって恐ろしいのはアスランの駆るジャスティスくらいなのだから。
 このキラの余りの強さに焦りを見せたハイネとセンカは、自分達だけでは無理だと考えて他のフリーダムやジャスティスを呼び寄せていた。このフリーダムとジャスティスの数に物を言わせた物量攻撃には流石にキラも止められる事になるが、フリーダム、ジャスティスの大半がキラに向かった為にオーブ艦隊の負担は劇的に軽減される事になった。

 そして、シンもこの時苦戦を強いられていた。現れた見慣れぬ新型機に大苦戦を強いられていたのだ。M1Sも悪い機体ではないのだが、この新型はそういうレベルではない。右腕にある斧状の武器はこちらのシールドを容易く切裂き、そのパワーはM1Sを吹き飛ばすほどに凄い。

「こいつ、フリーダム並のパワーだ。何でこんなのが!?」
「シン、下がって!」

 回りこんできたステラがアグニを新型に向けて発射する。それは正確に新型への直撃コースを辿っていたが、新型はそれを回避して見せた。ただ流石にシンから離れる事は避けられなかったが。その隙に合流してアグニとビームライフルを向けるステラとシン。そんな2人に、新型は声をかけてきた。

「中々良いコンビだな、君たちは」
「誰だあんたは?」
「俺は前に君と戦っているよ。M1の新型のパイロット。俺は君にフリーダムを仕留める絶好のチャンスを奪われた」
「……あの時のゲイツか」

 前の戦いでフリーダムを追い詰めたゲイツのパイロット。確かにあのゲイツは強かったが、どうやら根に持っていたらしい。それを理解できたシンは心底嫌そうな顔をしていた。

「しつこい男は嫌われるよ」
「そうでもない、この業界では中々に役に立つ」

 高周波トマホークを構え直し、腰からレールガン2門を前に向ける。

「さあ、ザクの性能テストだ。精々足掻いてくれよ」

 ガザートがレールガンを放つ。その攻撃を2機が左右に散って回避する間に距離を詰めたザクの高周波トマホークが容赦なくシンを襲う。シンはビームライフルを連射してこれを止めようとしたが、このザクというのは両肩にスパイクシールド、そして左腕にはABシールドを持っていて防御がやたらと固い。ビームは3つのシールドに阻まれてダメージを与えていなかった。
 ガザートは距離を詰めたところで高周波トマホークを振るい、シンのビームライフルを破壊した。それでシンが後退し、ステラがアグニを発射する。流石にアグニは受けられないのかガザートは後退してそれを回避し、邪魔者を見る目でステラを見た。

「良い所だ、邪魔をしないで貰おうか!」

 ザクがステラの方に向う。それを満たステラがアグニをもう一発発射したが、それはザクを捉えられなかった。それを見たステラが悔しそうに顔を顰めたが、いきなりその顔が苦痛と驚愕に歪んだ。

「ガハッ……ァ?」

 いきなり体に走った不快感と吐き気。そう、禁断症状だ。オルガたちに較べれば軽いとはいえ、ステラの体を蝕む縛鎖は太く強靭だ。その毒がよりによって最悪の時にステラの体を蝕んでしまった。
 動きが突然止まったM1にガザートは訝しげな視線を向けたが、攻撃を止めはしない。振るわれた高周波トマホークは容易くアグニを両断し、返す刀でM1を両断しようとした。だが、その一撃は柄を掴んだM1Sに止められた。

「ほう?」

 まさかそう止めるとは思わなかったガザートが感心した声を漏らす。そして接触回線で聞こえてきた音声にわずかに眉を顰めた。

「ステラ、大丈夫か。また薬が切れた!?」
「ご免……シン……」
「謝らなくて良い、早く艦に戻って!」

 薬が切れた。その言葉に状況を理解したガザートは嘲るような笑いを漏らした。まさか自分の戦いを邪魔していたM1のパイロットが、そんな薄汚い欠陥品だったとは。

「なるほど、ブーステッドマンか、エクステンデッドという訳か」
「何だと?」
「そんなガラクタ放っておけ。どうせ長くは持たん、くだらん欠陥品だ」
「ガラクタ? 欠陥品?」
「さあ、続きをやろうか。お前は中々に面白い相手だ」

 わざわざ自分から距離を取って戦いを仕切り直すガザート。だが、シンはそんな言葉は聞いていなかった。元々余り強く出来てない堪忍袋の尾が容易く千切れ飛び、胸の内でどす黒いものが渦巻いている。シンにはそれを押し留める術など存在はしなかった。

「……ざけるなよ。ガラクタとか、欠陥品とか、人を何だと思ってやがる?」
「うん?」
「お前みたいな奴がいるから、こんな時代になっちまったんだ。遺伝子を弄くったり、改造したり、薬を使ったり、なんでそんな狂った事が出来るんだよ。ちょっと考えればおかしいって分かるだろ?」

 シンには理解できなかった。どうしてステラのような強化人間が作られたのか、どうして遺伝子操作をしてコーディネイターなどが生み出されたのか、どうして目の前の男のように命を軽く見れるのか。人はどうしてそんな狂った事が出来るのか。
 このシンの疑問に対して、ガザートは酷く冷たい声で答えてくれた。まるで真理を解くかのように。

「それが人間の本質だからだ。どいつもこいつも狂っている、そして誰かを憎まずにはいられない。人間は誰も他人を理解しようとはしない、エゴイストなのさ。愚かで救いようが無い」
「……ああ、そうかい」

 色々ぶち切れた頭でシンははっきりと理解した。自分はこいつが、こういう事を言うことをいう奴が大嫌いなのだと。こういう自分だけ分かった気になっているような奴が、他人を見下してるような人間とは相容れないのだ。

「そんな小難しい事、僕には分からない。だけど1つだけ言えることがあるそれは……」

 一度だけ目を閉じ、瞼の裏に浮かんだ人たちの顔を頭に刻み込んでいく。ザートがどう言おうと、自分は世の中の人たちがそんな人間ばかりではない事を知っていのだから。だから、自分は目の前の男をはっきりと否定できるのだ。

「……それは、俺はあんたみたいな奴が、大嫌いだってことだ!」

 その時、またシンの中でSEEDが弾けた。沸点を超えた怒りの感情がシンを突き動かしたのだろう。シュゲルトゲーベルを構えて斬りかかるシン。それに対してガザートは律儀にもレールガンによる砲撃を行わず高周波トマホークで迎え撃ってきた。

「さあ来い!」
「舐めるなあ!」

 対艦刀と高周波トマホークは相性が悪いのでぶつかり合えない。高周波ブレードで対艦刀を受け止めればレーザーの熱で焼き切られてしまう。だが対艦刀もレーザーの刃部分以外に刃を当てられたら真っ二つにされてしまう。高周波ブレードはナノチューブの振動で物質を切り分けてしまうので、実剣としては恐ろしい切れ味を持つ。シンはそんな事は知らなかったが、シールドを容易く切裂いた事から斬り合わない方が良いとは気付いていた。
 ガザートはいつものように相手に空振りをさせて、反撃の一撃で仕留めようと考えていた。既にこのM1の動きは大体見切っているので、十分間に合うと考えていたのだ。だが、今回は様子が違った。シンはガザートの想像以上の早さで対艦刀を斬り返し、ザクの左肩スパイクシールドに叩きつけてきた。

「なに!?」

 この時のガザートの気持ちを表すなら、予想外の一撃に戸惑っていると言うべきか。そのガザートの戸惑いなど知る由も無いシンは続けて対艦刀を叩きつけていく。その反応の速さはガザートが我が目を疑うほどの物だった。だが頭では驚いていても体は反射的に迎撃行動を取ろうとする。
 そしてシンはザクの左脇からスイングして出てきたレールガンの砲身を右足で蹴り上げて破壊してしまった。千切れ飛ぶ砲身が宙に舞い、M1の右腕が対艦刀を無理やり振り回す。しかし、その無茶な動きとシンの速過ぎる操縦に機体が付いていけなくなっていた。いくら改修したとはいえ、元々対艦刀を片手で振り回せるような頑丈な期待ではないのだから。そして、シンの操縦も異常なレベルだった。そのレスポンスの悪さにシンが顔を顰めている。

「どうしたM1、もっと速く動け!」

 対艦刀を振る右腕が悲鳴を上げるのは今のシンでも理解できたが、それ以外の部分が自分の操縦に付いてこれないのは納得できない。それまで自分の思うとおりに動いていたM1が、今は明らかにワンテンポ、あるいはそれ以上に遅れているように感じられ、シンの苛立ちと不快感は募る一方だった。これじゃこいつを叩きのめせないじゃないか。
 だが、シンにとっては苛立つような鈍い動きであっても、ガザートにとっては驚くような速さの動きだった。それまでとは別人のような動きにガザートは狼狽し、完全に冷静さを失っている。

「馬鹿な、こんな速さで動く奴じゃなかった!?」

 ありえない、という否定の思いを込めて叫ぶガザートだったが、シンは止まってはくれない。それでもガザートは近距離に踏み込んできたM1Sに高周波トマホークを叩きつけようとし、シンはそれをシールドで受けようとした。それを見たガザートはシールドごとM1Sを叩き斬ろうとして、シールドで一瞬止まった後に強引に押し斬ってしまう。これでM1Sを仕留めたと思ったのだが、シールドの裏にはM1Sはいなかった。シンはシールドを腕と直角になるようにして受け止めていたのだ。勢い余ったザクは高周波トマホークを振り下ろしてしまい、無防備な姿を晒してしまう。
シンはこのチャンスを逃さなかった。シールドがマウントされていた左腕にはいつの間にかビームサーベルの発信機が握られており、振るわれた一撃が高周波トマホークを持つ右腕を切り飛ばしてしまう。シンは最初からこれを狙っていたのだ。更に至近距離から放たれた胸部マシンキャノンが装甲に火花を散らし、幾つかのセンサーを破壊してしまう。そして一番致命的だったのは、頭部を襲った射撃だった。この一撃でモノアイを潰され、メインカメラが使えなくなってしまったのだ。
 ガザートは急いでカメラを切り替えると共に機体のパワーに物を言わせてショルダーチャージを仕掛けた。スパイクシールドはこの為の装備でもあるからだ。スパイク部分がM1の装甲に突き刺さり、腰部の数箇所に穴を穿つ。軽量のM1にはこの衝撃には耐えられず、大きく吹き飛ばされてしまった。
 この隙にガザートは離脱を図った。メインカメラを潰されて戦闘継続は無理だから。しかし、逃げながらもガザートはこの屈辱に肩を震わせていた。自分がM1相手で手も脚も出せなかった。

「覚えていろ、この次にあった時、必ず借りを返してやる。復讐は必ず果されるのだっ!」

 腹の底から吐き出すような怨嗟の声を残してガザートは逃げていった。それを追撃しようとしたシンだったが、それはステラにしがみつかれて止められてしまう。

「駄目シン、もう無理!」
「離せステラ、あいつを叩き落としてやるんだ!」
「シンのMS、ボロボロ!」
「それくらいなんだって……ボロボロ?」

 はて、弾を食らった覚えは無いのだがと思って機体をチェックしたシンは、コンディションモニターが真っ赤な警報で埋め尽くされているのを見て顎をガクリと落としてしまった。特に酷いのは右腕で、対艦刀を振るっていた無茶が祟って油圧系が全滅、もう対艦刀を握っているだけとなっている。この有様ではザクどころか、ゲイツにも勝てないだろう。

「あ、あれ、何でこんなにボロボロに?」
「シン、すっごい速く動いてた。キラみたい」
「……何で?」
「さあ?」

 何でこんな事になったのか、理由が分からないシンは首を傾げており、聞かれたステラも一緒に首を傾げていた。だがまあこれでは戦う事は不可能なので、薬の禁断症状が出てきているステラと一緒にシンもイズモに戻っていった。
 そして、この頃には戦いは終局を迎えていた。戦いの幕を引く最後の参加者達が戦場に現れたからだ。



 ザフト艦隊の旗艦カトゥーンの艦橋に悲鳴のような報告が飛び交っている。そう、とうとう地球軌道から急行していた極東連合艦隊が戦場に到着したのだ。彼等は間も無くこちらを主砲の射程に捕らえるだろう。そして間の悪いことに月から来た第8艦隊も到着していた。若干数が減っているのは脱落艦を出すほどの強行軍でやってきたという事だろうか。到着して一戦するだけの推進剤が残っていれば良いという判断なのだろう。

「極東連合艦隊からMS隊の発進を確認、データによるとオリオンという新型です!」
「ダガーではないのか。敵の艦とMSの数は?」
「艦数16、MS40機前後!」
「たいした数ではないな。第8艦隊がいなければ相手をしてやるところだが……」

 こちらに迫る第8艦隊は艦数26隻、MSやMA100機以上を展開させているという報告が来ている。その中にはアークエンジェル級戦艦の姿もあるというのだ。これ以上戦えばこちらの被害も無視できないものとなる。

「戦場を離脱する。極東連合艦隊を無視し、プラントの帰還コースに向うぞ」
「ですが提督、このままでは第8艦隊と一戦交える事に」
「やむを得まい、砲戦を交しつつ敵前を駆け抜けるのだ。グラディス隊にはオーブ艦隊との交戦を打ち切って合流するように伝えろ」

 これ以上留まっていたら自分達も無事ではすまない。ウィリアムスの決断でザフト艦隊は第8艦隊と交戦しつつ戦場を一気に離脱する事となった。艦橋の司令部スタッフが各戦隊に指示を伝達し、艦隊陣形の再編成を行う中で、ウィリアムスは戦術スクリーンをじっと見上げ、迫る第8艦隊のシンボルを見つめていた。

「こんなに速く現れるとはな。何処までもザフトの前に立ちはだかるのだな、ハルバートン」

 過去、幾度もの戦いでザフトに苦杯を舐めさせてきた連合宇宙軍の知将ハルバートン。その歴史に新たな1ページが加えられた事にウィリアムスは腹立たしさと同時に、強敵に対する賞賛を感じていた。ナチュラルでありながらコーディネイターの自分達と対等以上に渡り合うあの男は確かに凄いのだろう。
 だが、今は敵を賞賛しているような状況ではない。第8艦隊はこちらの意図を見抜いたかのように更に速度を上げて迫ってきている。しかも嫌らしいことにこちらの進路と並行すうように進路を変えようとしていた。ハルバートンは同航戦を挑むつもりなのだ。これには流石にウィリアムスも顔色を青褪めさせ、拳を握り締めてしまう。弾薬が欠乏してきているこの状況で消耗戦になり易い同航戦などやられたらこちらが確実に負ける事になる。

「くそっ、やってくれるなハルバートン!」

 忌々しさを拳に乗せて肘掛に叩きつけるウィリアムス。だが、その時通信士が歓喜の声を上げた。


 第8艦隊ではハルバートンの指揮の下、各艦が同航戦をするべく各戦隊が縦列陣を作っている。そしてザフト艦隊と併走しようとしたとき、前衛の駆逐艦がその艦列に割り込むようにして1時方向から突入してくる少数のザフト艦隊に気付いた。そちらの注意が疎かになっていたために発見が遅れたようだ。
 その報せを受けたハルバートンは迎撃を指示しようとしたが、その速度を見て急速回避を命じた。このままでは撃沈するより速く艦列に割り込まれ、最悪体当たりを受けてしまう。いや、あるいは最初からそれが狙いの艦隊特攻かもしれない。

「くそっ、何処のどいつだ、こんな無茶をするのは!?」
「提督、敵艦がこちらに突っ込んできますぞ!」
「撃沈できんのか!?」
「味方との距離が近すぎます。撃てば同士撃ちになりかねませんし、爆発すれば味方も無事では済みません!」
「狡猾な……!」

 ハルバートンはこの突入して来た敵、たった5隻の艦隊に忌々しさをこめた呟きを放った。そしてメネラオスが緊急回避の為に無茶な針路変更をかけ、その振動にクルーが慌てて自分の椅子にしがみつく。ハルバートンも肘掛を掴んでいたが、それでもその眼差しはゆっくりと真横を通過しようとするナスカ級の艦橋を睨みつけていた。そして、その窓に1人の黒服を着た高級士官がいる事に気付いた。その男に見覚えがあったハルバートンが目を見開いた時、その男がこちらに敬礼をしたのが確かに見えた。
 大質量物体が至近距離を通過し、一瞬艦同士が接触する。それ程の無茶苦茶な特攻に第8艦隊が引っ掻き回され、完全に戦闘隊形を崩されている。これではとてもザフト艦隊と一戦を交えるどころではなかった。MS隊もMA隊はこのザフト艦隊を追撃していたが、敵艦隊から出てきたMS隊に邪魔されて仕留め損ねたようだ。

「追え、奴等を逃がすな!」
「もう良い、止めたまえ大佐」

 たった5隻で虚仮にしてくれた屈辱を晴らそうとホフマンが追撃を指示したが、ハルバートンがそれを止めさせた。既に敵の主力艦隊は前方に逃げてしまっている。今から艦隊を纏めて追撃してももう追いつけまい。もう戦いは終わったのだ。今は第5、第6艦隊の生存者を救出する事に全力を挙げた方が良いとハルバートンは判断した。
 やれやれと肩の力を抜いたハルバートンの元に、通信士官が一枚の通信用紙を持ってやってきた。

「閣下、先程の敵艦隊から電文が」
「電文? 読んでみたまえ」
「はい、『月での借りを返させてもらった。決着は次の機会に』です」
「月での借り、か。マーカストめ」

 月防衛戦でマーカスとトハルバートンは激突し、マーカストは完膚なきまでに敗北している。その時の借りを返されたのだと知って、ハルバートンは小さく笑っていた。たった5隻で30隻近い艦隊の足を止め、主力艦隊を見事に逃がしたのだ。確かに今回は奴の勝ちだろう。あの艦橋からの敬礼は、これを皮肉った意味でやっていたのだろうか。
 奴なりのプライドという事なのだろう。ハルバートンはその電文を受け取ると、マーカストが去っていった方向を振り返った。次に戦う機会が得られるかは分からないが、その時は改めて決着を付けようとハルバートンも思っていたのだ。




 こうして地球軌道を巡る戦いは終わった。連合軍はこの一連の戦闘で合計40隻を越す艦艇を喪失し、30隻ほどの損傷艦を出している。オーブ艦隊も5隻を喪失し、ほぼ全艦艇が損傷するという大損害を受けた。特に大きな問題は第5艦隊司令官ガルチエリ准将、第6艦隊司令官シャンロン准将の2人が揃って戦死していたことだろうか。艦艇は建造すれば良い。兵士も3ヶ月もあれば何とか訓練できる。だが士官、とくに将官は補充できない。1人の将官を育てるには長い時間が必要なのだ。この深刻な人材難には流石の地球連合諸国も頭を痛めていた。そしてこの問題が、古参の参加国たちに重大な決断を強いる事となる。
 一方、勝ったザフトの方も決して無事とは言えない。今回の作戦には本隊、独立部隊合計で80隻ほどの艦艇が参加しているが、そのうち13隻が未帰還となり、その3倍の艦艇がドックで修理を必要としている。これはザフトにとっては目の眩む様な損害だ。実際これを聞かされたエザリアは暫し何も言えなかった程である。だが勝利は勝利であり、エザリア政権はこの勝利を大々的に報道して市民を喜ばせていた。これは双方の損害を比較すれば、久々の圧倒的な勝利だからだ。
 だが、ザフトは憂鬱だった。この勝利は宇宙軍に残されていた精鋭を掻き集めて行われた、言うなれば開戦期のレベルの部隊をザフト最高の名将たちが率いて得られた勝利であり、同じ勝利を2度得られるわけではない。確かに数ヶ月は地球軌道で連合の動きは衰えるだろう。その間に地球から部隊を撤収させられれば人員の補充も行える。そう、ザフトにとってはこの勝利はほんの入り口に過ぎない。本当の戦いはこれから始まるのだ。後にザフト将兵から自嘲を込めて『自殺航路』と呼ばれる事になる壮絶な撤退作戦の、これが始まりであった。




後書き

ジム改 宇宙の決戦はこれで暫く終りかな。
カガリ うちはボロボロだ。
ジム改 まあ気にするな。アメノミハシラがあれば大丈夫だ。
カガリ うちの価値はあれだけか!?
ジム改 連合軍としてはその通り。
カガリ 畜生、こうなったら入港料吹っかけてやる!
ジム改 物資を貰ってるんだから文句言うなよ。
カガリ うう、貧乏って辛いなあ。
ジム改 それでは次回予告だな。

 それは、クロノ君からの助けを求める通信から始まった、私たち全員を巻き込んだ事件。執務官として現地に赴いたまま連絡が取れなくなったフェイトちゃんを探す為、私はクロノ君、シャマルさんと一緒にフェイトちゃんが向った世界、コンウォールに向います。フェイトちゃんが最後に知らせてきた敵の正体とは。リリカルマジカル、頑張ります!

カガリ 何だこれは?
ジム改 すまん、間違えた。こっちだ。

 あれは今思い出しても身震いするような事件だった。絢爛豪華なパーティー会場で幾人の美女を相手にダンスを踊っていた俺は、少し夜風に当たろうとテラスで1人佇んでいた。見上げた夜空に輝く星の美しさは今でも思い出すことが出来る。だが、この煌びやかな会場を悲劇が襲った。テロリストの強靭が会場を火の海にし、客たちが我先に逃げ惑う。その炎の中を俺は仲間達を探して駆け抜けていたんだ。
(ディアッカ・エルスマン著、我が心のバスターより抜粋)

カガリ だからこれは何だあ!?
ジム改 次回予告だ。

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