第147章 南米の英雄


 

 目が覚め、ゆっくりと身体を起こして周囲を見回す。そこは見慣れない部屋だったが、どうやら宇宙船の中らしい。自分はベッドに寝かされていたようだ。

「私はどうしてこんな所に。確かダコスタさんと……?」

 ぼんやりとした頭で記憶を手繰ったラクスは、自分がダコスタに何かをされたことを思い出した。どうやら薬か何かで眠らされたらしいと察したラクスはベッドから飛び起きると急いで部屋を飛び出し、状況を確認するために艦橋を目指そうとしたのだ。だが、場所が分からずにすぐに立ち往生する羽目になる。
 通路のど真ん中でどうしたものかと考えていたラクスであったが、背後から名前を呼ばれて其方を振り返った。そこには白衣を羽織った眼鏡の女性が立っている。

「あら、もうお目覚め?」
「貴女は?」
「みんなはプロフェッサーって呼んでるわ。それと、勝手に出歩かないでくれる?」

 プロフェッサーと名乗った女性は何処か得体の知れない笑みを浮かべて近づいてくる。ラクスはそれを見て反射的に警戒感を持ったが、別に攻撃してくる様子はない。プロフェッサーは部屋に戻るように指示して通路の反対側に抜けようとしたのだが、それをラクスが呼び止めた。

「メンデルは、戦いはどうなっているのです?」
「……メンデルは陥落したわ。ラクス軍も大半が撃破されて、私たちみたいなのが僅かに生き残って脱出したくらいかしら」
「そんな、それじゃダコスタさんは!?」
「ヴェニスは最後までメンデルに留まって撃沈されたわ。脱出者は不明だけど、多分死んだでしょうね」
「……メンデルが、落ちた」
「ええ、そう。まあ貴女はダコスタに救われた命なんだし、せいぜい大事にしなさい。ロウはダコスタとの約束だからプラントにどうにかして送ってやるって言ってたけど、とりあえずは一度ギルドのステーションに身を隠して、その後アメノミハシラに入港して密航船と接触するそうよ」

 プロフェッサーの話を聞いて、ラクスは最初自分をロウに渡したダコスタの行為を肩を震わせて怒っていたが、すぐにその怒気は萎んでしまった。もうこの世にダコスタはおらず、自分は1人になってしまったという現実が認識できるに連れて、例えようもない孤独感が襲ってきたのだ。これまではダコスタが居てくれた。他にも大勢の同志が居てくれて、これまでの活動を支援してくれたのだ。
 でももうダコスタも、大勢の仲間も居ない。自分は1人になってしまったのだ。これからどうすれば良いのか、ラクスには何も思いつかなかった。プロフェッサーはプラントに送ると言っていたが、プラントに行ったとしても何が出来るだろう。いや、そもそもプラントの同志と合流できるのだろうか。

 これまでも決して先が見えた訳ではなかったが、絶望した事は無かった。何とかなると信じて行動してきたラクスであったが、今回ばかりはそうもいかず、表情には絶望の色が見て取れた。
 とぼとぼと自分が出てきた部屋に戻って行くラクスの後姿を見送ったプロフェッサーは、やっぱり面倒な事になったかと呟いて乱暴に髪を掻き回した。指導者としてのラクスはカリスマと決断力を兼ね備えた存在であり、ダコスタという有能な実務家を補佐役としたことで誰も予想もしなかったほどの規模の組織を作り上げて見せた。それは確かに偉業と呼べたのだが、組織とダコスタを無くしたラクスは唯の子供でしかない。後ろ盾を無くした彼女を助けてくれるような酔狂な権力者や勢力はもう無いだろう。彼女に従っていた者たちもこの敗北で多くが彼女を見限った筈だ。
 この後、彼女は1人でどうするつもりなのだろうか。状況を考えればプラントに帰っても味方もおらず、何処かで野垂れ死ぬのではないだろうかとすら思える。ダコスタが居ない以上、今後は彼女は全て自分でやらなくてはいけないのだから。

「まあ、ここからもう一度再起できるんなら、ダコスタの目は本物よね」

 果たしてどうなるのやら、そんな事を呟いてプロフェッサーは移動を始めた。果たしてこれからどうなるのか、それは誰にも分からない。





 その日は朝からフレイは酷く不機嫌そうであった。整った顔は苛立ちに歪み、こめかみが僅かにピクピクと痙攣している。紅茶を淹れたカップは微かに震え、その水面を波立たせている。その理由はといえば、早朝から自分の部屋に押しかけてきた5人の友人たちであった。

「シン、改造はとにかく装甲からだって言ってるだろ!」
「何チキンな事言ってんすか。まず武器からですよ!」
「いやいやお前ら、やっぱり運動性が基本だろ」
「とりあえず蒼星石に資金を全投入してと……」
「そんな鋏で接近戦しか出来ないのに金つぎ込むなよトール!?」

 そう、キラとシンとサイとトールとカズィだ。彼らはフレイが持ち込んでいたゲーム機とスーパーごた混ぜ大戦GXを求め、こうして入り浸っていたのである。元々はアスランの持ち物なのだが、そのままフレイが暇つぶしにやりだし、何時の間にやら男どもに奪われてしまったのだ。
 まあ彼女も男はこういうゲームが好き、という程度の事は知っていたのでこれまで余り気にしないようにしていたのだが、毎日毎日押しかけられてはいい加減頭にも来る。
 今も彼らはゲームに熱中し、改造が終わったところで次のマップに進んだようだったが、フレイにはさっぱり分からない単語の羅列が続いている。

『実は新しい情報を掴んだんだ、意味は分からないけど、重要な情報だと僕の感が告げている。それは「薔薇水晶改造計画」というんだ。それでは、僕はこれで!』
『真紅さん、これって?』
『くんくんの情報ね。薔薇水晶改造計画、危険な香りがするわ』
『いや、改造って……』

 なにやら訳の分からないインターミッションが終わり、戦闘マップに移行する。最近はバイキンマンとその手下たちが敵として出てくるようだが、途中で変な女の子が乱入してきた。変な服を着て炎を纏った剣を持った女の子だ。

『封絶の中で動いてる、でもなんか違うような?』

 出てきた女の子は敵のようで、いきなり襲い掛かってきた。攻撃を受けた味方ユニットがダメージを受け、シンが慌てて後退させている。どうやら結構強いようだ。それと入れ替わりに主力級ユニットが集まってくる。

『アーンパーンチッ!』
『ディバインバスター!』
『斬魔剣・弐の太刀!』
『秘剣・覇翔斬り!』

 タコ殴りにされた女の子はあっという間にHPを削り取られ、『何で、何でっ!?」と怒鳴りながら逃げていってしまった。

「シャナってまだ仲間にならないんだね」
「もう暫く掛かるみたいだぞ。条件も結構厳しいし」

 キラとトールが攻略本を片手に今後誰を仲間にするかで悩んでいる。その隙にシンがフェイトとなのはをぶつけてイベントを発生させようとして、サイに止められていた。ルート分岐がどうとか言っているが、何でそんなことにそこまで熱くなれるのだろう。

「まあまあフレイ、そう怒らないで」
「……ミリィ、朝の紅茶を邪魔されて笑っていられるほど、私は優しく無いわよ?」
「はははは、フレイって本当に紅茶にだけは妥協しないわよねえ」

 イギリス人は戦闘の真っ最中でもティータイムを楽しむという、頑固とかそういうレベルじゃないだろというほど伝統に拘る人たちである。
 そんなミリアリアはといえば、こちらはフレイが持ち込んでいた世界各地の旅行記録データを見せて貰っていたのだ。何でもソアラに連れられて世界の名所巡りをした時の記録らしい。その動画データを携帯端末で再生していたミリアリアはその中の変わった建物の発光現象を見てこれは何かと聞いた。それを覗き込んだフレイは「ああ」と頷いて教えてくれた。

「これは極東連合の神社よ、来福神社とか言ったかしら」
「これがこっちの神社かあ、本国のとは違って木で出来てるのね。で、この光るのは何なのよ?」
「ええとね、確か変な服着た女の人がかみちゅっとか言ったら光ったの。良く覚えてないけど、イベントか何かだったんでしょ」

 昔を思い出しながら答えるフレイ。それにミリアリアがなるほどと相槌を打って次を見ようとしたとき、また男どもが騒ぎ出した。どうやらルート問題で揉めてる様で、キラが銀様がどうこうとか、シンがカレーがどうこうと言っている。他の3人もそれぞれの主張をぶつけているようで収拾する様子は無い。
 この朝っぱらからの喧騒にフレイの堪忍袋の尾が千切れ飛びかけた時、いきなり艦内に第2戦闘配置の警報が鳴り響いた。





 南アメリカで起きた独立戦争は、大西洋連邦の主力が中南米から南太平洋に移動していた事もあって驚くほど上手くいっていた。重要視されていない戦線であっただけに配置されている部隊も従来の戦車や装甲車中心の部隊であり、MSはストライクダガーが大半であった。
 ここに強力なMSを装備したザフトや切り裂きエドが現れたのだ。大西洋連邦の現地部隊では対抗しきれないのも無理はない。中米を勝ち進みながら北上し続けたエドたちは、遂にパナマ基地を視界に収める事が出来たのである。パナマにはマスドライバーがあり、ここを奪還できれば大きな意味がある。南アメリカはこの独立戦争を勝利に終わらせる為の抵当物件を手に入れることが出来るのだ。
 だが、流石にパナマ基地ともなると守備隊もそれなりに居た。既に後方扱いされて守備隊を削られていたとはいえ、まだまだ連合の最重要拠点の1つとして大規模な守備隊が展開している。その守備隊とぶつかったエドたちは初めてその足を止められてしまった。

「流石にパナマか、大した数が居るようだ」
「どうします隊長、突っ切りますか?」
「いや、無理は止めとこう。そろそろコートニーたちが側面から突っ込むはずだから、それまでは正面の敵を引き付けるだけで良い」

 エドはそう言って部下たちに無理に前に出ず、距離を保てと指示を出す。余り近づけば接近戦になり、消耗が加速してしまう。そうなったら回復力で著しく劣る南アメリカには勝ち目がなくなるのだ。元々南アメリカ軍の戦力はザフトの支援と、大西洋連邦の駐屯部隊から強奪した物、そしてジャンク屋から購入した物だけで、南アメリカ国内にはまともな生産力など無いのだから。特にMSは予備部品さえ作れず、整備部品が一度枯渇すればそれまでとなる可能性が高い。だからエドはパナマ基地を目指したのだ。
 パナマ基地はマスドライバーがあるだけではない。MSや宇宙艦艇、各種通常兵器の生産施設や、それを維持する為の様々な物資生産施設が揃った自己完結型の基地なのだ。ここを落とせば南アメリカは独立戦争を戦う為に必要な物資を生産施設を手に入れることになり、長期にわたって抵抗を続ける事も不可能ではなくなるのだ。まあ、大西洋連邦が本腰を入れてきたら敗北しかありえないのだが。



 エドたちが暫く持ち堪えていると、迂回していたザフトのMS部隊がエドたちと交戦していた大西洋連邦のMS隊の側面に現れ、これに猛攻を加えだした。ダガー隊はこの側面攻撃を受けて隊形を崩し、慌てて其方にライフルの銃口を向けようとするが、それを見たエドは自分の部隊を前進させてダガー隊を圧迫しだした。
 コートニーとエドの連携に迎撃に出てきたダガー隊は突き崩され、脆くも敗退して行った。それを見たザフトと南アメリカの兵士たちは喜びの声を上げたが、エドの表情は暗かった。彼はもう少し粘って欲しかったのだ。

「奴ら、すぐに後退していったな。てことはこの次には奴らも合流した大軍が待ってるって訳だ」

 エドは陽気で気さく、お調子者という男であるが、決して馬鹿ではない。自分たちがどれほど綱渡りな戦いをしているのかも理解していたし、パナマの防御力を過小評価もしていなかった。

「よし、補給をしたらすぐに前進するぞ。奴らに立て直す暇を与えるな!」

 パナマの守備隊が体勢を立て直したら勝ち目はない。このまま勢いに乗って勝ち進めるだけ勝ち進むしかないとエドは決意した。しかし、エドの命令を受けて南アメリカ軍が補給の準備を始めるのを無視してザフトの部隊が前進を始めた。それを見たエドが驚いてコートニーに通信を入れる。

「おいおい、補給も整備も無しかい?」
「俺たちは何時もそうやってきた、ナチュラルと一緒にしないで貰おう」
「……そうかい、ご立派なこった」

 コートニーの答えにエドは少しだけムッとしたが、それを表情に出す事は無く何時もの軽い調子で返事をし、ザフトの前進を受け入れた。このまま敵を立て直させないという目標を考えれば、攻撃は早い方が良い。ザフトがそれをやってくれるのなら任せれば良いのだ。
 ザフトは連合よりも弾を使い伸ばす術に長けていた為、補給無しで長期間戦う事を可能とする。今回もその特徴が発揮され、後退した連合軍を即座に追撃する事で混乱に拍車をかけることが出来た。




 ザフトが無茶をしてでも攻勢に出るのには理由がある。ザフトはブルーネストに向けて地球上の主要マスドライバーの破壊を目論んでおり、パナマとビクトリア以外の大型マスドライバーは全て破壊に成功している。ビクトリアも友軍の脱出後に破壊される事になっており、後はパナマを破壊すればブルーネストは達成されるのだ。
 大型マスドライバーを失えば宇宙への補給線が大打撃を受け、月基地を拠点として活動している宇宙艦隊は補給を立たれて動けなくなってしまう。勿論中小のマスドライバーは各地にあるし、それらを使えばある程度の補給は可能なのだがこれまでのような大規模な動きはし辛くなる。そうなればザフトは地球との間の航路の安全を確保できるようになるのだ。
 プラントの指導部はとにかくナチュラルを地球に封じ込めようと躍起になっている。地球周辺の制宙権が奪われていなければ再度の隕石落しさえ敢行したかもしれないほどに。それがどういう戦略に基づくのかは分からないが、とにかくエザリアは時間を欲していた。この戦略を達成する為、コートニーたちはパナマを目指していたのだ。この勢いならば基地を落とせるかもしれないし、そうなればマスドライバーを使って自分たちも宇宙に脱出する事が可能になる。


 エザリアたちにしてみればこの南米への支援は切り捨てた棄兵の再利用に過ぎず、彼らが脱出してくれる事など期待はしていない。いや、マスドライバーを落とせるとも考えてはいない。僅かばかりの補給は行ったが、彼らの戦力でパナマを落とせるとは思っていなかったのだ。だからコートニーたちの奮戦はエザリアたちの想像以上だったと言える。
 せいぜい大西洋連邦を混乱させ、その戦力の一部を引き付けてくれれば良いという程度の考えで実行に移した謀略であった筈なのに、現地部隊は僅かな補給を受けてまだ見捨てられた訳ではないと勘違いし、全力を挙げてパナマを目指していたのだ。

コートニーの試作ザクを先頭に大西洋連邦の防衛線に切り込んでいくザフトの部隊。中には太平洋戦線から逃げてきたジンの現地改修機やゲイツなどの姿もあるが、その大半は旧来のジンやシグー、ザウートでとてもではないが大西洋連邦の防衛線を敗れるとは思えないのに、これが最後の脱出の機会だということを知る彼らは窮鼠と化しており、猫を噛み殺そうとしていた。
大西洋連邦軍は防衛線に切り込んでくるジンやシグーに気圧されたように後退を繰り返し、陣地を次々に失っていく。戦場の勢いは完全にザフトの側にあったのだ。

 しかし、ザフトも無傷では済まなかった。多数が配備されていたヴァデッド戦車部隊は多数の砲身を敷き並べての一斉発射による飽和攻撃でジンを確実に仕留め、上空からはスカイグラスパーやスティングレイがミサイルや爆弾、砲弾を見舞ってくる。まあ空襲は木陰に隠れる事である程度は防げるのだが、戦車は少し厄介だった。
 しかし、これらの抵抗を排除してザフトは前に進んだ。数は少ないが上空にはディンやラプターの姿があり、地上を駆け抜けるバクゥも居る。南アメリカ軍のスカイグラスパーやサンダーセプターも支援してくれている。不利ではあるが、決して孤立している訳ではないのだ。

「よし、このまま前に押し出せ。ナチュラルをここから叩きだせ!」

 ザクがレールガンを放ちながら前に出る。それは連合MSの放つビームの中での1歩であり、些か蛮勇と言うべきだったろう。だがビームかザクには当たらず、弾は勇者を避けて通るという言葉を体現するかのようにコートニーは連合のMS隊の中に踊りこんでヒートホークを振るった。
 これに続いて部下たちも一斉に突入を開始し、程なくして補給を終えたエドたちも加わってきた。ソードカラミティのレーザー対艦刀にストライクダガーやデュエルが真っ二つにされ、破壊されていく。このエドたちの突入でそれまで何とか持ち堪えていた大西洋連邦の前線に、遂に穴が開けられた。

「敵をこのまま突き崩せ。ニーダ、オレと来い!」
「はいはい、了解しました」

 自分の指示にやる気が無さそうな声で返してくる部下にコートニーは苛立ったが、特に何も言わずに通信を切った。どうせ物資と一緒に送られてきた新入りであり、腕は立つようだがそれ以外には興味は無いのだから。
 だが、もう少しマシな兵を調達できないものだろうかとコートニーは思わずにはいられなかった。民間人上がりの自分の方がまだ軍人らしくしているのではないかと彼には思えて仕方が無いのだ。




 パナマ守備隊司令部はこの南アメリカ軍の攻撃の激しさに焦り、周辺から戦力を呼び集めていた。パナマ基地周辺にはまだかなりの数の地上軍や空軍が残っており、これらを集めれば敵を阻止できると考えたのだ。

「とにかく数を集めろ。奴らを押し潰せ!」
「司令、宇宙に上げる予定の強化人間部隊はどうします?」
「出させろ、カラミティもあったはずだ!」

 連合軍は来るべき決戦に備えて強化人間を宇宙に上げていた。その為の部隊の1つがまだパナマに残っていたのだ。司令官はこの強化人間部隊にも出撃を命じ、カラミティやマローダー、ロングダガーといった強力なMSが次々にパナマ基地を出撃していく。その中にはスティングのマローダーの姿もあった。

「全く、アークエンジェルと合流してさっさと宇宙に上がる予定だったのに。アウルとステラも来ないし、どうなってんだ?」

 自分が一番安定性が高かったせいか、一番最初にロドニアのラボを出てパナマに向かったのは良いのだが、何故か後から来る筈のアウルとステラがさっぱり姿を見せず、代わりにやってきたのはアークエンジェルではなく敵の大部隊だ。味方が次々に撃破されているようだからそれなりに強いのだろう。
 スティングはカラミティやバスターダガー隊や他のマローダーと共に高所に陣取り、そこから地上をかける敵機を撃ち降ろそうと考えたのだが、その考えはいともあっさりと崩壊してしまった。ザフトの主力であるコートニーのザクとゲイツが先に高所を押さえ、ここを目指していた自分たちに逆に砲撃を浴びせてきたのだ。
 スティングは急いで機体を遮蔽物の陰に移動させたが、彼ほど速く動けなかったバスターダガー隊がこれに食われ、数機が破壊されてしまう。更にマローダーの1機がビームライフルの直撃を受けて上半身を吹き飛ばされた。

「ちっ、こんな所まで押し込まれたか!」

 味方の不甲斐なさを詰りつつ、スティングはホバーで移動しながらビームガトリングで掃射した。高所を舐めるように叩き込まれたビームにザクとゲイツが後ろに飛んで影に入り、スティングは舌打ちしてそれを追おうと高所に入ろうとしたが、高所に立った途端別のMSに襲い掛かられた。赤いカラミティとでも言うべきそれはレーザー対艦刀を持ち、自分めがけて振り下ろしてくる。それを見たスティングが慌ててマローダーを後退させるが、間に合わずに構えたシールドごと左腕を持っていかれてしまう。
 その一撃にスティングは顔を顰めたが、それでも怯まずにビームガとリングを向けようとした。カラミティでもこれを受ければ無事では済まないからだ。しかし、カラミティ型、ソードカラミティはビームガとリングの砲身を蹴り上げ、対艦刀でそれを破壊してしまった。

 攻撃手段の大半を奪われたスティングは流石に青褪めたが、その時コクピットに司令部からの緊急信が飛び込んできた。

「全機急いで司令部周辺に戻れ、海中からも敵が来た!」

 どうやら別働隊が居たらしい。予備が前に出た隙を狙って海から上陸してきたのだろう。どうやら自分たちは負けたらしいと悟ったスティングはこれまでかと覚悟したが、今度はマローダーのレーダーが接近してくる何かを捕らえた。




 スティングのマローダーを中破させたエドは戦闘力を無くしたマローダーなど構いはせず、敵の主力と思われるカラミティを狙った。これを潰せばこの辺りの敵は大体始末できた事になる。

「どうやら上手く行ったな。やりゃ出来るもんだ」

 まさかこの程度の数でパナマを本当に攻略できるとは思っておらず、エドは些か驚いていた。だがまあこれは喜ぶべき事であり、南アメリカの戦略は成功したと言えるのだろう。
 エドは勢いに乗ってカラミティに切りかかり、これを対艦刀で撃破してその対艦刀を高々と掲げた。パナマを落としたという事を高らかに宣言しようとしたのだが、それは新たな乱入者によって強制的に中断させられてしまった。エドが見ている前で、2機のディンが側面から飛来したビームに飲み込まれて消し飛ばされてしまったのだ。

「何だ、艦砲か!?」

 アレはビームライフルなどではない。破壊力もビームの太さもそういうレベルではなかった。それが飛んできた方向に目をやったエドは、パナマに迫る1機のMSを見つけたのだが、それはエドが姿を確認する前に更にビームを放ち、密集しながらパナマに向かっていたジン3機を飲み込んで吹き飛ばしてしまった。
 それは超高インパルス砲と同等かそれ以上の威力を持ったビームだったが、迫るMSが持っているのは大型のビームライフルとでも言うべき物で、アグニのような両手持ちの大型砲ではなかった。

「何だありゃ、新型か?」

 迫るそのMSをエドは見たことが無かったが、それに少し遅れて姿を見せた船はエドも知っていた。その姿は味方に希望と勝利への確信を、敵には絶望を与える最強の戦艦、アークエンジェルだった。




「足付きだと、それにアレはフリーダム!?」

 アークエンジェルに気付いたコートニーは、暴れまわっているフリーダムを見て驚いた。アレはプラントから強奪され、各地でザフトに大損害を強いているフリーダムの試作機に違いない。若干外見に変化が見られるが、基本はフリーダムと変わってはいない。だが、あの火力は何なのだ。フリーダムにはあんな化け物じみたビーム砲は装備されていなかった筈だ。あのビームはアンチビームシールドでも防げないようで、アンチビームシールドを構えたストライクダガーがシールドごと消し飛ばされている。
 そしてそれに続いて4機のクライシス型のMSが足付きから出てきた。それはアルフレットのIWSPクライシスとシンのヴァンガード、そしてフレイとトールのウィンダムである。アークエンジェルを出撃したアルフレットは苦戦しているパナマ基地を見て、フレイとトールに基地正面に回るように命令した。

「フレイ、トール、お前らは基地正面の敵を止めろ。アークエンジェルと一緒に奴らを食い止めるんだ。勢いさえ止めれば数の差で押し返せる」
「はーい」
「分かりました」
「よし、キラとシンは俺と一緒に敵に切り込むぞ。奴らを押し返す!」

 アルフレットに命令されてフレイとトールのウィンダムが基地正面の防衛に加わるべくアークエンジェルと共に向かっていく。そしてアルフレットとキラとシンはパナマ基地に向けて進んでいる南アメリカ軍へと襲いかかった。たった3機で何が出来ると怒鳴ってザフトや南アメリカのMSがこれに向かってくるが、彼らはすぐに自分の判断の甘さのツケを取り立てられた。彼らの前に現れたのは地球連合でも間違いなく最強の3機だったからだ。

「フリーダムの前に出てくるなんて!」

 地上に降りたキラが粒子ビーム砲を向け、重突撃機銃を撃ってくるジンの群れめがけて発射した。トリガーを引いて一瞬送れて重金属粒子が叩き出され、射線上の全てを高速の金属粒子が蒸発させ、更に光線周辺の空気がプラズマ化して周囲を焼き払ってしまう。僅かとはいえ質量を持つ重金属粒子は膨大な運動エネルギーを持って目標に衝突し、衝突箇所を連続的に融解、気化させてしまう。更に粒子の持つ運動エネルギーによって衝撃を与え、対象を破壊してしまうのだ。
 しかし、このライフルには幾つもの欠点があった。一撃ごとに大量の粒子を消費する為、何度も発射できないのだ。エネルギーカートリッジを交換すれば良いのだが、それも無限に持っているわけではない。砲もビームライフルより大型であり、取り回しもちょっと悪いのが欠点と言えよう。そして最大の物が、発射する粒子ビームの反動だ。ビームとしては低速でもそれなりの速さで発射される粒子ビームには相応の反動が掛かる。それを受け止める機体の負担はかなり大きいのだ。加速が遅いのも機体への負担を考慮した物である。上げれば飛躍的に威力が増すが、撃ったらデルタフリーダムも壊れてしまうからだ。
 デルタフリーダムの粒子ビーム砲が荒ごなしに敵をなぎ払い、その穴にクライシスとヴァンガードが突っ込んでいく。クライシスはIWSPの4門の砲で目に付く敵を砲撃し、接近してくる敵には対艦刀で対応している。そしてヴァンガードは突撃槍で1機、また1機と串刺しにしていた。いや、中には真っ二つに胴体を両断された機体もある。
 その突撃槍の刃は大型化されており、刺すだけではなく横薙ぎの攻撃を行う事も可能となったのだ。クローカーは更に槍に追加機能を組み込んんでいるそうなのだが、能力の一部を封印されている現状では使えないらしい。クローカーの説明ではヴァンガードには余り必要無い機能だということだ。
 そしてアルフレットのクライシスはエドのソードカラミティに切りかかった。背負い式のリニアガンとレールガンが続けて砲弾を叩き出し、ソードカラミティの動きを封じる。幾らTP装甲でも直撃のダメージは小さくは無いのでエドも迂闊な動きが出来なくなる。そうやって敵の足を止めたアルフレットは対艦刀を手にとってソードカラミティに斬りかかり、ソードカラミティも自分の対艦刀でそれを受け止めた。

「クライシスか、厄介な奴が出てきやがった!」

 クライシス型は現在の地球連合で最高のMSであることは有名だ。4機の試作機のみならず、各地に送られた少数の増加試作型も凄まじい戦果を挙げており、この機体を死神にも等しい扱いを受けている。エドワードはその死神を敵としてしまった自分の不幸を呪いたくなった。
 だが、まだ負けるとは思っていない。ソードカラミティも接近戦ならクライシス以上に戦える強力な機体なのだ。自分が使っていれば梃子摺る事はあっても負ける事は無い筈、そう思っていたのだが、相手のパイロットの声を聞いたとき、彼は血の気が引くような恐怖を味合わされてしまった。その声をエドは良く知っていたのだ。

「よお、久しぶりだな切り裂きエド」
「まさか……その声は?」
「元上官の声を忘れたか、俺だよエド、アルフレット・リンクスだ」
「しょ、少佐。なんでこんな所に!?」
「ああ、パナマから宇宙に上がる予定だったんだが、偶然お前らの攻撃時期と重なっちまったんだよ」

 なんという偶然か。エドはここまで来る間に人生の幸運を使い果たしてしまい、その反動で不幸が纏めて押し寄せてきたのではないかとさえ思ってしまった。まさか、あと少しというところであのアークエンジェルが現れて、そかもそれにはナチュラル最強のパイロットが乗っていたというのだから。
 エドは必至になって機体を退がらせようとしたが、アルフレットの前から撤退するというのは容易な事ではない。あのキラですら押さえ込むような腕の持ち主な上に機体は連合最強のクライシス。これはエドからすれば反則だろと叫びたくなるような組み合わせだった。
 接近戦に限定すればクライシスと互角以上に戦える筈のソードカラミティなのだが、エドはクライシスを攻めきれずにいた。レーザー対艦刀を装備して戦う事に特化しているソードカラミティにとって接近戦、とりわけ近接格闘戦は最も力を発揮し易い戦闘である。だがクライシスの動きはエドのソードカラミティに引けを取っていない。その動きは新兵の訓練で使われる教科書通りとも言うような基本的な斬撃の繰り返しなのだが、とにかく1つ1つの動作が速い。教科書通りの動きということはそれだけ無駄が少ないという事であるが、基本を完璧にこなせれば応用や小細工など必要はないのだと言うかのようにアルフレットはエドと互角以上に切結んでいる。
 だが、アルフレットと互角の勝負をしているという事はエドの接近戦での優れた能力を証明しているだろう。アルフレットの繰り出す斬撃を受け流し、払い、時に反撃して押し返す。それは同じクライシスを使っていたフラガにさえ出来なかった事だ。
 格闘戦では勝てない、と悟ったエドは至近距離から胸部のスキュラを奇襲的に発射してクライシスの撃破を目論んだが、スキュラ直撃の後に大量に発生した煙が晴れた後にはコンバインドシールドを半ば溶解させたクライシスの姿があった。どうやらシールドは抜けたようだが、クライシスの防御システムが残ったエネルギーを打ち消してしまったようだ。

「この距離で反応できるのか、何て奴だ!?」

 強いとは知っていたが、やはりこの親父は化け物だとエドは思い知らされた。それでも身体は最善の行動、アルフレットの前からの急速退避を開始し、ソードカラミティは大地を蹴って大きく後方へと後退する。そして周囲を確認したエドは、戦局がひっくり返されている事に気付いた。クライシスと一緒に現れた2機のMS、フリーダム型と見慣れぬ新型が戦場で暴れまわり、強力なビームでMSを防御の上から消し飛ばし、槍で手当たり次第に突き刺し、あるいは薙ぎ払っている。
 これに加えてパナマ基地の正面にはアークエンジェルが居座って猛烈な弾幕を張っており、ディンや戦闘機が近づけないでいる。その周囲では2機のクライシスに似た赤と青のMSが飛んでいて、こちらも絶大な攻撃力を見せ付けている。どうやらコートニーはその新型の1機、赤い方と交戦して動きを止められているようだ。

「たった1隻を相手にこのザマかよ、ここまで勝ち進んできたのにな」

 最後の最後で負けて終わりとは、何処のドラマのストーリーだよと言いたくなったエドだったが、残念ながらそういう前例は歴史に幾らでも見つけることが出来る。どんな英雄も最後まで勝ち続けることは出来ないのだ。必ず何処かで力尽き、倒されてしまう。
 これ以上無理をしてゴリ押ししても勝てはしないだろうとエドは考えたが、時をおかずにその予想は現実の物となった。海岸で戦っていたジェーンが増援の到着を告げてきたのだ。

「エド、北から大西洋連邦の空軍が来たわ。数は数えるのが馬鹿らしくなるくらい!」
「戦闘機か?」
「MS輸送機もかなり来てるわね、どうするのエド?」

 強気なジェーンですら声が震えている。そのことがエドに状況の厳しさを教えてくれた。もしここで攻撃続行と伝えればジェーンは反対はしないだろうが、それはジェーンを確実に死なせる事になるだろう。そして自分も。自分だけならともかく、勝てない戦いで恋人や仲間を無駄死にさせるような趣味はエドにはなかった。

「潮時だな、ここは退くとしようか。生きてればまた来る事が出来るさ」
「……そう、ね」

 ジェーンはエドの言葉に仕方無さそうに頷いたが、内心ではもう二度とここに来る事はないだろうと思っていた。元々自分たち南アメリカ軍に後は無い。大西洋連邦と南アメリカでは国としての格に差がありすぎ、それはそのまま国力、軍事力の差となっている。言ってしまえば大西洋連邦は幾度か負けても最後に勝てばそれで良いのだが、南アメリカは一度負ければそれまでだということだ。
 現に今、エドが率いているのは南アメリカ軍の実戦部隊の主力であるが、彼らが相手にしているのは大西洋連邦軍の極一部でしかない。唯の基地守備隊と周辺からの増援を相手にしただけで南アメリカ軍主力は限界を超えてしまったのだ。これでは一度勢いを失えば、二度と立ち直る事は出来ないだろう。



 エドの打ち上げた退却の信号弾を見て南アメリカ軍とザフトは撤退を開始した。既に消耗し尽くしていたパナマ守備隊にはこれを追撃する余裕は無く、エドたちはそれほどおきな損害を受けずにパナマ地峡から脱出する事になる。この後彼らは南アメリカ最北の大都市、メデリンにまで後退して体勢を立て直す予定でいる。だが、失った戦力の補充が来るのかどうかは分からない。
 これを見たキラとシンは追撃をかけようとしたのだが、アルフレットはそれを止めさせてクライシスをアークエンジェルに運ぶように命令した。クライシスは先のエドが放ったスキュラのダメージが大きく、上手く動けなくなっていたのだ。スキュラを防がれたのを見てエドが退かなければ、アルフレットは倒されていた事になる。今回ばかりは運がアルフレットを救ったようだった。


 そして大西洋連邦は追撃をしようと思えば出来たのだが、守備隊を纏めていたアークエンジェルのマリューが生存者の救出を優先した為に追撃は行われなかった。アークエンジェルの機動力を持ってすればすぐに追いつけるという考えもあったのだが、この態度が消極的だとして大西洋連邦軍の上層部から指摘される事となる。
 この件を問題視されたマリューは仕方が無くエドワード・ハレルソンの追撃任務を承諾するのだが、これはサザーランドから待ったが掛かった。宇宙軍はとにかく兵力を欲しており、アークエンジェル隊が遅れるのは困るというのだ。この件では双方の主張がぶつかり合い、結局アークエンジェルは敵を撃滅したかどうかに関わり無く一週間後には宇宙に上がる事となった。アークエンジェルは軍内部の勢力争いの具に供されるまでに強くなっていたのだ。



 このことをサザーランドから聞かされたマリューは疲れた顔をしたが、まあ世の中そういうものだと自分を納得させてそれを受け入れた。

「分かりました、とにかく南アメリカ軍を追撃します」
「すまんな。あと、出来ればエドワード・ハレルソンは仕留めてくれ。南米の英雄であるあの男を倒せば敵の戦意は失われる」
「エドワード・ハレルソン、切り裂きエドですか?」
「そうだ、あの男は強いからな。奴にぶつけるならこちらもそれなりのエースを出すのが犠牲を抑えられて丁度良いのだよ。君の所ならその点は何の心配も無い」
「は、ははは……、まあ、確かにそうですが」

 自分たちの有する戦力がどれほど化け物地味ているかを理解しているマリューは笑顔を引き攣らせたが、サザーランドは真剣だった。アークエンジェルがエドを倒してくれれば余計な犠牲が出ず、英雄という精神的な支柱を無くした南アメリカは時をおかずに降伏するなりしてくるだろう。
 だが、アークエンジェルに任せておけば良いと単純に考えていたサザーランドは、そこでマリューから奇妙な事を聞かされることになった。

「ステラ・ルーシェとアウル・ニーダが到着していない?」
「はい、スティングレー・オークレーは合流してきたのですが、彼の話では調整がすぐ済んだ自分が先にこちらに来て自分たちを待っていたそうですが、アウルたちが来ないと」
「おかしいな、既に到着している筈なのだが。分かった、調べておこう。パナマに戻ってきたら連絡を入れてくれ」

 そう伝えてサザーランドは通信を切った。だが、マリューの方はこれから南米に行ってとんぼ返りかと考えて少しだけ気を重くしてしまっている。サザーランド准将は自分たちを便利屋か何かと勘違いしているのではないだろうか。

「……まあ、私が准将の立場だったらやっぱり任せるんでしょうけどね」
「は、何がですか艦長?」
「何でもないわ。それより、撤退した敵の追跡を空軍に要請して。敵の集結地を発見次第叩くわよ!」

 まさか思っていたことを口にする訳にはいかず、マリューは少し大声を出してこの件を誤魔化した。こうしてアークエンジェルは予定外の戦いに参加する事になったのだが、それは1つの事件の始まりである事を彼らはまだ知らなかった。





 瓦礫の中に佇むロングコートの男、寒風が吹く廃墟の中で男は足元に転がっている崩れているコンクリートの破片を蹴っ飛ばし、不機嫌そうな顔で周囲を見回した。

「またダミー会社ですか、キラ君の情報も侮れませんね」

 ヘンリーはキラに頼まれたクルーゼの調査を行い、ある程度の成果を出していたのだ。何しろスチュワート財団の情報網を駆使したので集まる情報の質と量はかなり凄い。その調査の過程で幾つかの資金の流れを発見し、それを追った彼は幾つかのダミー会社へとたどり着いたのだ。
 正直、ここまで身を守る手段を講じているとは思わなかったヘンリーであったが、それがクルーゼの怪しさを倍増させている。そして僅かに分かった情報の中から、ヘンリーは気になる物を取り出して呟いた。

「ラウ・ル・フラガという人物が、フラガ家に存在していたか。しかも出生記録に不審な点があると。面白い話ですが、フラガというのがねえ」

 フラガといえばアークエンジェルのムウ・ラ・フラガ少佐が出てくるところだが、ヘンリーの頭に浮かんだのはその父、アル・ダ・フラガだ。色々と悪い噂が立っていた人物ではあったが、こうなって来ると噂ではすまないものを感じてしまう。一体、何があったというのだろうか。

「フラガ家を調べますかねえ。それと、メンデルの研究も洗い直さないと。忙しくなりそうです」

 これからやる事を決め、ヘンリーは廃墟を後にした。最初はただの興味であったが、どうも想像していたより大きな秘密がありそうだと彼のジャーナリストの嗅覚が感じとっていたのである。そしてそれは、後に1つの成果を上げる事になる。



機体解説


MBF−X10A デルタフリーダム

兵装 粒子ビーム砲
   プラズマビーム砲×2
   ビームサーベル×2
   頭部バルカン×2
   光波シールド

<解説>
 フリーダムを地球連合の技術を用いて改修した攻撃用MS。最大の特徴はエグゾスター粒子ビーム砲で、一撃でMSを跡形も無く破壊する事が可能。これを防ぎきれる装甲、防御システムは現状では存在せず、光波シールドやABシールドで身を守っていてもシールドごと破壊されてしまう。
 ただ、プラズマ砲と違ってかなり重い粒子を加速するために洒落にならない反動があり、それに耐えるために機体構造が大幅に強化されている。その結果機体が重くなり、低下した運動性をパワーや推力の強化で補っている。その結果ヴァンガードほどではないが扱い難い機体となってしまい、キラ専用機という前提でなければ使い道の無い機体となっている。



後書き

ジム改 南米編は長引かない、ポケットの中の戦争で終わる予定。
カガリ まあ、エドが倒れたら終わりだからな。アークエンジェル無しでも勝てたんじゃないか?
ジム改 本土の部隊を送れば圧倒できる。複数同時侵攻してエドが居ない所を狙えば良いんだから。
カガリ まあ英雄でも同時に2箇所は守れないからなあ。オーブもそれで殺られたし。
ジム改 エドは孤立した後でフクロにすれば良い、そのうち動けなくなるから。
カガリ バッテリーだもんなあ。この点はザクやジム以下なんだよなあ。
ジム改 だからMSで出脱出した後、ゲリラ化するって事が出来ないんだよな。動かなくなるから。
カガリ 燃料が切れた戦車と一緒の扱いか。
ジム改 だがこの戦いの本当の意味は南米には無かったりする。ストーリー的にはエドはおまけだ。
カガリ なぬ!?
ジム改 それでは次回、エドを追撃してきたアークエンジェル。エドとアルフレットが再び激突し、大西洋連邦の精鋭と南アメリカ軍の主力が激突する。南米の英雄として全てを背負ったエド、その叫びはキラとシンの足を止める力強さがあったのだが。次回「結末は悲劇と共に」でお会いしましょう。

 

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