第149章  星の歌声




 ザフト宇宙軍の最前線基地クリント、ここは地球に最も近い場所にあるザフトの宇宙拠点で、多くの艦艇が補給や休養、整備の為にここにやってくる。今も3隻のくたびれたエターナル級が湾口に入港し、埠頭に係留されている。そのエアロックからは久しぶりの上陸に喜ぶ兵士たちに混じって、白服を着た指揮官と副官らしい緑服の少女が出てきた。

「補給と整備に3日掛かる予定です。フレームに異常をきたしたザクは後送され、補充にゲイツRが同数送られてくるそうです」
「ザクの異常の原因を早く調べろと急かしておいてくれ。機体の一部が分解するなんて尋常じゃない」
「まあ、テスト予定を繰り上げて無理やり実戦に投入した物ですから」
「それを使わされるこっちは堪らないな。使ってたシホは危うく死ぬところだったんだ」

 新型機のザクウォーリアは確かに良い性能なのだが、とにかく故障が多かった。それも単純な故障ではなく、フレームの歪みや装甲の剥離、果ては部材の強度不足による分解まで起きたのだ。これは故障というより欠陥である。よくこんな物が軍の基準をクリアできたと感心してしまう。
 これに怒ったアスランは補給部に猛烈な抗議を叩きつけ、全部送り返すと突きつけたのである。だがこれに技術本部が反対してきて、異常が出ていない機体に関してはテストを継続してくれと言って来たのだ。これにアスランが抗議をして話が拗れ、上層部まで巻き込んだ騒動に発展してしまう。結局これはザクのテストをアスランが引き受け、代わりに状態の良いゲイツRを寄越すという事で決着が付いている。
 この機体異常はゲイツやジャスティス、フリーダムといった新世代MS全般の問題となっており、本国では各開発局やホリス重工、ラルドン・テクノ、コリアンスチールなど軍需企業を集めて問題解消に躍起になっているという。
 だが、残された3機のザクを渡されたディアッカとレイ、ルナはそれぞれの態度で文句を立て並べていたりする。こんな欠陥機で事故死するのは御免だという訳だ。逆にゲイツRを貰ったジャックとエルフィ、シホはホッとしていたりする。


 そしてアスランは後をエルフィに任せて、フラフラと通路上を漂いながら報告を出す為に基地司令部に出頭して行った。それを見送ったエルフィは書類入れを胸に抱えて心配そうな顔をしている。

「隊長、本当に大丈夫かなあ。ここのところ碌に寝てないのに」

 アスランの特務隊はその戦闘力ゆえにとにかく重宝されてきた。エターナル級3隻で編成された特務隊は騎兵隊の如く西へ東へと駆け回り、八面六臂の活躍を続けていたのだ。だが、その活躍は特務隊の将兵に著しい消耗を強いていた。連戦に次ぐ連戦は将兵を疲労させ、機材を消耗させていく。特にパイロットたちの疲労は大きく、ディアッカやハイネのようなベテランですら注意力散漫になるほどであった。格納庫や通路で疲れて眠りながら漂ってるパイロットたちの姿は珍しいものではなかった。
 そんな中で超人的な体力を見せつけていたのだアスランだ。彼は指揮官として頑張り、パイロットとして頑張り、24時間戦い続けていたのである。一体何時寝ているのだろうかと兵士たちが不思議に思うほどのその働きっぷりは、地上の頃の彼を知るディアッカたちですら大丈夫かと思うほどの頑張りぶりである。
 当然ながらそんな働きをすれば無事で済む筈もなく、クリントに帰還する頃には見た目にも疲労困憊し、目の下に真っ黒なクマを作って倒れそうだったりした。それでもまだ自分1人で動いているのだから大したものだろう。




 疲労しきったアスランの姿は司令部のスタッフたちすら驚愕させるものであったようで、入ってきた彼の姿を見た参謀や事務員たちはぎょっとして道を開けている。見た目からして血色が悪く、やばい雰囲気を漂わせるアスランははっきり言って怖い。
 司令下のオフィスに入ってきたときには司令官までが吃驚したくらいで、報告書を受け取った後は心配してこのまま仮眠室で寝ていったらどうだと勧めたほどである。

「アスラン・ザラ、働きすぎて倒れてはしょうがないぞ」
「いえ、まだ大丈夫です。仕事も残っていますし」
「多少の事なら此方でやっておく、良いから休め。なんなら命令するか?」

 こうまで言われては固辞する事も出来ず、アスランは司令官の勧めを受け入れて仮眠をとることにした。仮眠室はやってきた艦艇の将兵なら誰でも利用できる施設で、重力ブロックに多数のベッドが置かれている。その寝心地は艦の自室のベッドより寝易いと評判だ。
 そこで軍服を着たままの姿でベッドに倒れこみ、シーツを被る事もなく眠りに付こうとしたアスランであったが、中々寝付けずに幾度か寝返りを打ち、ようやく眠れそうだという時になっていきなり仮眠室の外から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
 その声はだんだん大きくなり、仮眠室の扉を破って室内に飛び込んできた。

「アスラン、おい起きろアスラン!」
「……うう、何なんだディアッカ。つまらない事だったら銃殺にしてやるからな」
「寝てる場合じゃねえ、これ見ろ!」

 ディアッカは部屋の壁にあるモニターをつけ、プラントからの放送を表示させた。それをアスランは寝ぼけた目で見たのだが、その内容が理解できるに連れて意識が急速に覚醒し、それは驚愕へと変わっていった。

「ラ、ラ、ラクス!?」

 そう、モニターに移っているのは宇宙港でエターナル改級戦艦から降りてくるラクス・クラインの姿であった。その後ろにはクルーゼの姿もあり、テロップには反逆者たちに誘拐されていた歌姫、救出される。などと表示されている。

「見たときは驚いたぜ、まさかラクス・クラインが救出されてたなんてなあ。クルーゼ隊長はこのためにプラントに残ってたんだな」
「そんな馬鹿なことが、ラクスが誘拐されていただと?」

 ディアッカが腕を組んで感心しているのを余所目に、アスランはこのニュースがありえない事だと呟いていた。あの劇場跡で出会ったラクスは間違いなく自分の意思で行動していたし、フィリスの話からも彼女が組織の中心的な存在であった事は間違いない。ニュースはラクス・クラインは誘拐され、無理やり協力させられていたのだと報じているが、それが捏造である事は彼には明白なのだ。
 だが、ではあれは誰なのだ。本物のラクスではない筈だから偽者なのだろうが、外見的にはラクスと酷似している。声もそっくりだ。強いて言うならラクスより周囲への態度が明るい事が違和感に感じるくらいだろうか。
 いや、それ以前に本物のラクスはどうなったのだ。反逆者たちの拠点をクルーゼが急襲したというのなら、本物のラクスはもうクルーゼの手に掛かったのだろうか。

「……情報が欲しい、一度プラントに戻るか?」

 プラントに戻って直接ラクスと会えば解決するのだろうが、現在は戻る事を許されてはいない身だ。アスランはエザリアに疎まれていて最前線で扱き使われているのだから。だが中央で何かが起きた事は間違いなく、何とかして情報を得たいとアスランは考えていた。


 しかし、アスランの願いも空しく彼らにはすぐに次の任務が与えられたのである。それはクルーゼが指揮をするビクトリア脱出部隊の収容作戦であった。





 このニュースは世界中で見る事が出来た。勿論ジャンク屋ギルドのステーションでも受信する事が出来、これを見たラクスは衝撃に身体を震わせることになる。彼女はリ・ホームにあてがわれた部屋から出ないように言われていたのだが、このニュースを見るように言われて艦橋でこれを見せられたのだ。

「これは、どういう……?」
「姫さんの偽者って事だろうな。ザフトも汚い手を使うぜ」
「大方は貴女の求心力を利用したかった、というところでは無いでしょうか。まさかこれほどそっくりな替え玉を用意しているとは、余程周到に準備をしていたようですね」

 ラクスの疑問にロウが腹立たしげに答え、リーアムが解説を入れてくれる。自分たちは完全にザフトの、いやラウ・ル・クルーゼの掌の上で踊らされたのだと認識できてしまった事で腹立たしさはあるが、それ以上に自分たちの現実認識の甘さを悔やんでいた。これは詰んだチェスのようなものだ。自分たちはどうう動いてもチェックメイトされてしまう状況に気付かぬうちに追い込まれていたヘボだったというわけだ。
 だが、これで本物のラクスは向こうという事になってしまった。今からここに居るラクスが出て行っても偽者呼ばわりされるか、下手をすれば表に出るまでもなく暗殺されかねない。何か手を考えなくてはいけないだろう。まあまずやれることはプラントに残っている筈の仲間と合流する事だろうが。

「まあ、プラントに密航する手立てはあるさ。ジャンク屋仲間と連絡を取ったから、すぐにアメノミハシラに行く。そこでそっちの船に乗り換えて、お姫さんはプラントに入ってくれよ」
「…………」
「余り気を落とさないでください。メンデルは壊滅しましたが、まだジャンク屋ギルドは貴女の味方ですから」
「まっ、ダコスタとの義理もあるし、マルキオ導師の頼みもあるしな」

 ジャンク屋ギルドは未だにラクスの後援者の立場をとっている。今回の密航船の手配もジャンク屋がやってくれたのだ。地球でもマルキオ導師の支援ネットワークは健在であり、ラクスは無力となった訳ではない。まだ起死回生の一手を打つチャンスはあると、少なくともロウとリーアムは思っているのだ。
 そしてこの3人の後ろでコーヒーを飲んでいたプロフェッサーは、さてどうしたものかと考えをめぐらせていた。どう考えても相手の方が数枚上手で、此方は後手後手に回っているというこの状況、おまけに味方は壊滅状態で生き絶え絶え、相手は国家規模の集団と来ている。この状況で逆転は可能かを暫しシミュレートしてみた。

「……まあ、無理よね」

 結論はすぐに出てしまった。世の中そんな激甘には出来ていないのだ、こんな条件で政権転覆など可能な訳が無い。何処の田舎の国でも政権をひっくり返すにはそれなりの準備が必要なのだから。
 この目の前で困惑と絶望に浸っているお姫様はこれからどうするのだろうか。プラントに行かず、このまま連合に亡命して自分が本物だと訴えた方がまだマシなのではないだろうか。オーブやスカンジナビアなら受け入れてくれるかもしれない。政治的に利用される事を覚悟すれば大西洋連邦も選択肢に入れられるだろう。
 だが、プロフェッサーはそれをラクスに勧めるつもりはなかった。彼女の人生なのだから彼女が自分で考えればいいのだ。まだ暫くの間は考える時間など幾らでもあるのだから。





 この放送を同じように地球で見た者たちもいる。雑音交じりの荒い受信画像ではあったが、それは間違いなくラクス・クラインであった。それを見たアズラエルなどは驚愕の余り椅子を蹴って立ち上がり、マルキオは眉間に皺を寄せていた。カガリは何がどうなってるのかと首を傾げており、メッテマリットは状況を把握する為に動き出した。
 だが、中には一目であれは偽者だと断言した男もいた。そう、アークエンジェルのキラである。

「嘘だ、あれは偽者じゃないか!」
「どうして分かるの、キラ君?」
「俺にはあの時のお姫様とか見えないけどな?」

 艦橋でそう断言したキラにマリューとパルが疑問をぶつけてくる。それに対してキラは、自信たっぷりに断言してくれた。その直後に起きる惨劇など考えもせずに。

「決まってますよ、ラクスの胸はあんなに大きくありません!」

 その直後、キラは真横から飛んできたスコップの直撃を受けて見事に吹っ飛び、CIC席に居るチャンドラを巻き込んで豪快にコンソールに叩き付けられてしまった。そのスコップをフルスイングした犯人、フレイは顔を真っ赤にして大魔神のような怒りを漲らせていた。

「キラ、何でラクスの胸のサイズを知ってるのかしら。あんたプラント何してきたわけ?」
「フ、フレイさん、誤解です。僕は決してラクスの裸なんか見てません!」

 殺されると察したキラは悲鳴のような声で弁明をしたが、一歩一歩ゆっくりと迫ってくるフレイの姿は怖いというか恐ろしい。幾多の戦場を駆け抜けたキラがヘビに睨まれた蛙のように動けなくなり、その場でガタガタと震えているのだから。
 そしてキラは隣を見てサイとミリアリアに助けを求めようとしたのだが、2人はキラがこっちを見たのに気付いてそそくさとCICを出て行ってしまった。その仲間の露骨な裏切りにキラが顔をゆがめ、そして今度はフレイの後ろに見えるマリューとシンに視線を向けたが、2人は両手で×を作ったり此方を拝んできた。完全に見捨てられたようだ。
 そしてキラは最後の希望を込めて通信席に居るカズィの助けを求めようとしたのだが、カズィは何故かカメラを手に笑顔でびしっと親指を立てて決めていた。記念撮影は任せろということだろうか。
 もはや助けは無い、可能性が有るとすればアルフレットくらいだろうが、残念ながら彼の姿はここにはない。助けは無いと悟ったキラは、泣き笑いのような顔で自分の冥福を祈ろうとした時、最後の助けの手がフレイの肩を押さえてくれた。

「まあまあフレイ、キラがスケベなのは今に始まった事じゃないし」
「でもトール、胸のサイズを一目で見分けるなんて、まるでイタラおじいちゃんみたいじゃない。あんな変態になるくらいなら今ここで引導を渡してやるわ!」
「今はキラの追及より、何で偽者があそこに居るのか、だろ?」
「……むう、トール、何だか口ぶりがキースさんみたい」

 怒りの矛先を微妙に逸らされてしまったフレイは渋々と怒気を静め、トールの言うとおりキラに私的制裁を加える事は止めにした。大人しくも説いた場所に戻っていくフレイを見てキラは安堵の息を漏らし、助けてくれたトールに満面の笑顔で感謝の賛辞を送っていた。

「助かったよトール、やっぱり君は僕の親友だね」
「随分と打算的な親友だな、おい?」
「そんなこと無いさ」
「……まあそれは良いとして、何で偽者があそこに居て歓迎を受けてるんだ。本物はどうしたんだ?」
「さあ、そんな事言われても僕にも分からないよ。そもそも、ラクスって今何してるんだろ?」
「あれ、キラ知らないの?」

 キラがラクスがどこに居るのかは知らないといったのを聞いて、フレイは驚いた顔をしていた。それでみんなの視線がフレイを向き、フレイはオーブに居た時に放送で音声だけだったがラクスの演説を聞いた事があると伝えた。
 ラクスは今は知らないが、当時は地下に潜ってレジスタンス的な活動をしていたらしい。その活動のおかげでプラント穏健派は弱体化し、今は強硬派が力を持っていると。

「まあ、全部アスランの解説なんだけどね。プラントの方も結構大変みたい」
「アスランがそんなことを、ね」

 なるほどと頷いてキラは、じゃあラクスはプラントで殺害されるか逮捕されでもしたのだろうかと不吉な方向に考えを持っていってしまった。そしてフレイは当時のことを思い出し、そしてある事を思い出した。そうだ、そういえばキラに渡してくれと頼まれていた手紙があったのだった。

「そうだキラ、キラに手紙を預かってたんだったわ」
「僕に手紙、誰からの?」
「ユーレクって人から。キラに渡してくれって頼まれたんだけど、変な手紙だったわよ」
「ユーレクさんが僕に?」

 はて、あのユーレクさんが僕に何を知らせようというのだろうか。キラは首をかしげ、後で見せてとフレイに頼んだ。


 この後、アークエンジェルはパナマ基地に達し、そこからマスドライバーで打ち上げられる事になる。宇宙に上がったらまずフレイとトールは無重力下での戦闘訓練を受ける予定になっている。アルフレットはその為のプログラム作成をしているのだ。もっとも2人ともコロニーで暫く暮らしていた経験があり、無重力下での感覚を全く知らない訳ではないことが救いだろうか。



 プラントから発信されたニュースは地球の情勢にも変化をもたらした。ラクス・クラインがプラントに救出されたという事は、そのまま連合内に沢山いた反ブルーコスモス派の人間に衝撃を与え、今後の身の振り方を考えさせる事になる。もしラクスへの協力が暴露されれば自分たちの失脚に繋がるどころか、軍法会議にかけられて死刑にされかねない。
 ジークマイア大将などは慌てて保身に走り、証拠の抹消を行ったくらいだが、他にも多くの軍人や政治家があれこれと動いている。今回の件で叩かれると埃が出る人間はかなり多いようだ。
 そんな中で彼らとは全く違う理由で困っている人間もいた、大西洋連邦のササンドラ大統領とその側近たちだ。彼らはラクス・クラインの動向くらいは掴んでいながらあえて放置していたのだが、こうもあっさりと消えてしまった事に失望していたのだ。

「参ったな、ザフトの戦力を多少でも削ってくれると期待していたのだが、こうも簡単に潰されるとは」
「ですがメリットもありました。特に今回確認された新型MSのデータと、後から出てきた別働隊の存在などと、役にも立ってくれましたぞ」
「それは確かに気になるところだな。特に後から出てきた艦隊はこちらの情報に全く捉えられなかった部隊だった」

 ササンドラの苦みばしった声に大統領顧問のセレンソンがフォローを入れ、統合参謀本部議長のダルハート大将がラクス・クラインよりも気になる相手の存在を告げた。

「これはメンデル付近のデブリに流しておいた偵察衛星から送られてきた映像データなのですが、此方の知らないザフト艦隊が写っています。我々の情報収集が甘かったのか、敵がザフトに属さない部隊を持っているのかはまだ判明しておりません。唯の傭兵部隊という可能性も無いわけではありませんが」
「傭兵にしては装備が統一されている、これは正規軍だろう」

 国防長官のマクナマラが写真を手にとって唸っている。統一した装備を整えている海賊や傭兵が居る訳が無い。そういう事をするにはそれなりの金が必要であり、必然的にそんなことが出来るのは国家規模の集団という事になる。
 そしてマクナマラは、写真の中からもう1つの注目するべき機体が写っている写真を取り出し、机の上に置いた。

「これは新型のようだが?」
「これは情報を入手しております、プロヴィデンスという名前を与えられている新型で、ドラグーンという量子通信を利用した遠隔攻撃端末の運用試験機ですな。我が軍のフライヤーと同じ類の兵器です」
「面倒だな。だが、そうなるとザフトにも空間認識能力者がいるということなのか?」
「かも知れませんが、数は多くないでしょう」

 ササンドラはザフトも此方と似たような兵器を開発していたのかとその偶然に苦笑いしたが、これは量産されたりしたら厄介だなと考えていた。大西洋連邦は量子通信を利用した新たなミサイル運用システムの開発に着手しており、ガンバレルの技術を利用して既に空間認識能力者用の物は実用化されている。だが本当に必要な兵器、艦船や基地、衛星から発射するミサイルの誘導システムは未だに完成していないのだ。これが完成すればNJの神通力は消滅し、MSなど唯の的となり、戦争を終わらせられるのに。
 だが無いものを強請っても仕方が無い。ササンドラはその事を頭から追いやると、ダルハートにその新型の事を聞いた。

「それで、フライヤーはどうなっている?」
「試験機をパナマでアークエンジェルに搬入している筈です。あそこには能力者が2人居りますから」
「リンクス少佐と、アルスター家の令嬢か」

 アルフレット・リンクスはこの戦争が始まるずっと以前から知られている大西洋連邦のエースであり、メビウスゼロとガンバレルシステム、そしてメビウスの開発にテストパイロットとして関わった人物だ。その名は大西洋連邦軍に広く知れ渡っている。そしてフレイは宣伝に活用され、別の意味で名を知られている。最も彼女はオーブ軍に移ってしまったが。
 アルフレットはともかくフレイに能力が備わっていた事は大西洋連邦にとって幸運であった。空間認識能力を持つパイロットは極めて強力であり、1人でも大いに越した事は無いのだから。
 果たしてアークエンジェルに送ったフライヤーはどういう成果をもたらすのだろうか。その行方によっては、月基地で再建されつつあるガンバレル部隊の装備も変わってくるだろう。決戦の時に向けて、連合も開発してきた兵器の成果が出つつあるのだ。




 そしてアズラエルはジブリールのやらかしてくれた行為に感情を荒げていた。何とも厄介な事をしてくれた物だと激怒していたのだ。

「ジブリール君もふざけた事をしてくれました、強化人間関連の技術をユニットごと売り払うとは。アウル・ニーダの状態からメンテナンスベッドが使用された事は確実です!」
「だがどうする、ロドニアの件は此方の管轄外だぞ?」

 キースは今回の件の難しさを気にしていた。ジブリールは確かに愚かな事をしてくれたが、ロドニアのラボはあくまでジブリール家の所有物だ。私財を処分したという理由でジブリールを糾弾する事は出来ない。

「これは利敵行為です、彼が誰に売り払ったかは知りませんが、ザフトに渡っていたわけですから!」
「ふむ、まあそうだがね。ではどうする?」
「ブルーコスモス総会にかけます、彼は調子に乗りすぎました」

 ブルーコスモス総会、それはブルーコスモスの要人を集めて行われる最も規模の大きい会議であり、普通は年1回しか行われない物だ。だがアズラエルには盟主としての権限でこれを開く事が可能となる。その場でアズラエルはジブリールの利敵行為を糾弾し、彼の社会的な地位を剥奪してやろうと考えていた。
 だが、ブルーコスモスがそれを了承しても財界がぞれを受け入れるかどうかはまた別だ。ジブリール家もそれなりの力を持った一族であり、完全に排斥するとなればロゴスの中からも受け入れない者が出てくるだろう。ジブリール家が潰れれば経済的な影響は無視できないものとなる。
 キースがその事を指摘すると、アズラエルは渋々矛先を収めた。そう言われると言い返せなかったのだ。

「まあ、この戦争を終わらせればジブリールを始末する事も出来るだろ。戦後の復興事業から締め出すとかな」
「それは確かに痛いでしょうが、それでは私の腹の虫が納まりません」
「そこは別の事で押さえてくれよ。そうだな、総会でジブリールを吊し上げて鬱憤を晴らしてくれ」
「総会は私の憂さ晴らしですか?」

 相変わらずこの男は、とアズラエルは苦笑いし、そして肩を軽く落とした。

「ですが、今回の件は厄介な問題を含んでいます。行方が知れない強化人間は12人、その中にはステラ・ルーシェも含まれています」
「……そいつは俺も悩んでる、シンたちにはきついだろうな」

 敵の中に記憶を奪われた仲間が居るかもしれないなどという、何処のSFだと聞きたくなるような状況が現実として突きつけられたのだ。エドワード・ハレルソンを倒したアルフレットも立場は同じだが、アルフレットは軍人として割り切れるので彼らとは全く覚悟が違う。シンたちは仲間を撃つ事は出来ないだろう。
 ただ、アズラエルはこの件に関しては余り心配はしていないようだった。彼が調べさせた結果では、どうもジブリールから流れた強化人間はザフトの普通の部隊に流れた訳ではないようなのだ。

「細かい事はまだ調査中ですが、南米のザフトの捕虜から得た情報ではアウル・ニーダはザフトの補給部隊が連れて来たそうなのですが、この補給部隊というのがどうもおかしくてね。何処から来たのか分からない補給部隊なんです」
「どういう事だ?」
「そのままの意味ですよ、捕虜もこの補給部隊の所属を知らなかったんです。軍の警戒網にも引っ掛からずにザフトの補給艦が何時南米に物資を降ろしたのか、不思議ではありませんか?」
「補給を運んできたのはザフトじゃない、と言うのか?」
「まだ分かりませんがね。ただジブリール君の方からの釈明では、売り渡した相手はザルクという反コーディネイターを標榜している団体だそうです。私は知らない相手なんで、これから色々と調べてみるつもりです」

 ラクスの件といい、どうもここ最近は世の中の動きが速くて困ると呟き、アズラエルは部下を呼び出してあれこれと指示を出し始め、キースはそれを邪魔しないように部屋から出て行き、廊下の窓から遠くに見えるワシントンの街を眺めた。ここはワシントンの郊外にあるアズラエルが所有するブルーコスモスの支部の1つなのだ。南が夏真っ盛りな時はこちらは当然冬であり、雪がちらほらと残っている。
 この景色を見ながら、キースは一面にうっすらと雲がかかっている空を見上げ、少しだけ寂しそうな顔をした。ここ最近は全く飛んでおらず、地面に足を付けた生活をしているのがどうにも不満に思えていたのだ。やっぱり自分は戦闘機やMAに乗っている方が性に合っているらしいと呟き、キースは廊下を歩いていった。午後からブルーコスモスの重鎮であるルフトを交えて中道派の面子と会合をする事になっているのだ。





 アメノミハシラの宇宙港ブロックを黒い髪をポニーに纏めた作業着姿の女性が歩いていた。実はこの女性、ラクスの変装した姿であったりする。リ・ホームの中に監禁状態に置かれていた彼女だが、流石に見かねた樹里やリーアムがロウを説き伏せ、変装を施した上でならばという条件で彼女に宇宙港の移動を許可していた。どうせ彼女だけでは何処の船にも乗ることは出来ないのだから逃げ出される心配も無い。
 ラクスは久しぶりの外に少しだけ気分が晴れていたが、やはり込み上げてくる焦りや無力感は隠せなかった。ダコスタを失い、メンデルに集めた戦力も失い、プラントには自分の偽者が居て民衆は偽者を本物と信じている。この状況で自分に何が出来るのだろうか、どうすれば求めた理想を実現できるのだろうか。

「……私は、無力ですわね。ダコスタさんがいなければ何をして良いのかも分からないでいる」

 自分の思いついた考えをダコスタは現実レベルに仕立て直して実行に移してくれた。余りにもそれが当たり前だったからこれまで気付かなかったが、こうしてダコスタに頼れないとなるとそのありがたさが身に染みるというものだ。自分がどれだけ理想を求めようと、実行してくれるものが居なければ絵に描いた餅でしかないのだから。
 1人になった自分はこんなにも弱くて無力な存在だったのかと自覚できたラクスは、肩を落としてとぼとぼと通路を歩いていた。途中で連合軍の人間やジャンク屋の人間と幾度か擦れ違ったが、彼らは擦れ違った相手がラクス・クラインだとは気づく事もなく通り過ぎていく。樹里とリーアムが施した変装は効果的なようだった。
 1人で暗い気持ちを抱えて1人ただ通路を歩いていたラクスの耳に、何処からともなく歌声が聞こえてきた。決して上手いとは言えない、素人が好きで歌っているような歌なのに、何故か聴く者を不思議と惹きつける様な力に満ちている。その歌声に誘われるように行ってみると、丁度休憩所のような場所で、1人の女の子が一生懸命に歌っていた。
 プロであるラクスからすれば全然大した事は無いはずの歌なのに、ラクスは何故かその場を離れる気にはならず、壁によってじっと聞き入っていた。見ればそこに集まってきている者たちも同じようで、誰もが楽しそうな顔で聞いている。
 そんな時、ラクスの傍にいた30前くらいの先客の女性が声をかけてきた。

「あの娘の歌、気に入ってくれたのかしら?」
「え、ええ……不思議な歌ですね、心が軽くなるような、そんな気持ちにさせてくれます」
「あら、何か悩み事でもあるの?」
「……どうしてです?」
「歌は魂で歌って、心で聴くものだからよ。そういう気持ちになる時は、心が沈んでいる証拠」

 女性は優しい笑顔で問いかけてくる。そう聞かれたラクスは言うつもりなどなかったのだが、その優しい笑顔に気持ちが緩んだのか、ぼそぼそと話し出してしまった。

「これまで必至にやってきた事を、全て無駄にしてしまいました」
「…………」
「やれると思っていました。私たちの求めた理想は間違ってなどいない、いつか皆さんも理解してくれる、と信じていました。でも……」

 いつかきっと民衆も自分たちの声に共感し、動いてくれると信じていたのだ。それまで自分たちは活動を続け、戦い続けなくてはいけないのだと信じて準備を整えてきた。負けるかもしれないと考えた事はあったが、僅かでも残って戦い続ければ誰かが続いてくれると考えていたのだ。
 だが、誰も自分たちに続こうとはしなかった。それどころかエザリア・ジュールの謀略を信じて偽者に歓声を上げているのだ。地球軍にも積極的な同調者は現れず、あのオーブまでもが戦争に加わってしまった。世界を救おうとしたはずの自分たちを世界が裏切ったのだ。
 その結果として自分はメンデルとそこに集めた実戦部隊を失い、支え続けてくれたダコスタも無くしてしまった。父シーゲルの消息も不明で、アスランやフィリスとも敵対している今、ラクスは完全に1人になってしまったのだ。


 そんな話を詳細をぼかしながらぽつぽつと口にしたラクスだったが、話を聞き終えた女性はそれまで閉じていた目を開けると、ラクスに問いかけてきた。

「それで、貴女はどうしたいのかしら?」
「どうしたい?」
「ええ、もう諦めて、夢を投げ出すのか。それともまだ夢を追いかけ続けるのか。どっちを選ぶのかしら?」
「わ、私は……」

 もうどうしようもない、何も出来ない、理想を実現する手段は失われたとばかり考えていたラクスだったが、とりあえずどうするのかなどとは考えていなかった。もう駄目だという後ろ向きな考えばかりで、どうすれば良いのかと自問自答を繰り返してきたが、理想を捨てるのか、それともまだ求め続けるのかという一番根底の事は考えていなかった。
 問われて改めてラクスは考えてしまった。自分はまだ理想を求め続けられるのだろうか、と。ダコスタがいないのにまだ自分は信じた理想を追い続けられるのかと。いや、そもそも自分の信じた理想を投げ出せるのだろうか。婚約者も親友も切り捨てて進んできたこの道を。
 いや、そもそも、自分は何をしたかったのだろう。

「……分かりません、今はもう、見えなくなってしまいましたから」

 何だか自分の求めていた何かが見えなくなってしまったような気がして、ラクスはその問いにはっきりとした答えを返す事が出来なかった。昔ははっきりと見えていたはずの理想が、求めていた世界が何故か今は思い出す事が出来なくなっている。
 理想なんてものは、泡沫の夢でしかないのだろうか。今考えればそんな風に思えてしまう。手が届かないものだから理想なのだという言葉もあるが、それは真理なのではないのかと思えてしまうのだ。

 でも、女性はラクスの答えを聞いてもあらあらと笑うだけで、ラクスの考えに同調したりはしなかった。

「貴女の夢は、見えなくなったのかしら。本当はまだ見えていなかっただけじゃないの?」
「見えてなかった、ですか?」
「ええ、夢なんて漠然としたものだから。何となく見えたような気になるというのは、よくある事なのよ。だから夢なのかも知れないけどね。そしてその夢は途中で形を変えてしまうこともある」

 女性はそう言って楽しそうに笑っている。その笑顔を見たラクスは何故か微かな苛立ちを感じてしまっていた。

「では、貴女の夢はどういう物なのです?」
「あら、私の夢はもう叶ってるわよ。私は歌手を目指して、歌手になれた。大勢の人たちに歌を聴いてもらって、その歌で少しでも誰かの心が救えれば良い。それが私の願いだった。そして私の魂を受け継いでくれる跡継ぎも出来そうだわ」

 女性は本当に嬉しそうな顔でまだ歌っている女の子を見ている。あの少女がこの人の魂を受け継ぐ後継者だというのだろうか。でも歌だけで人を救うことなど出来ないだろうに。その疑問をぶつけてみると、女性は少しだけ真面目な顔でラクスに答えてくれた。

「いいえ、救われる人は大勢居るわ。確かにそんなに大きな事は出来ないけれど、救われる人は確かにいる。私も先生の歌に惹かれて、この人みたいになりたいと思ったんだもの」
「…………」
「私の先生は面白い人でね、何時もこう言っていたわ。歌は魂で歌い、心で聴くものだ。歌い手の心は歌に表れて、聴く人に必ず伝わるんだってね。私はその先生の教えを今でも信じてるわ。私が楽しい気持ちで、優しい気持ちで歌っていれば、聴いてくれる人もきっと優しい気持ちになれる、とね」

 自分の言葉に一部の疑いも持っていない、力強い目で言い切った女性に、ラクスは何故か既視感を覚えてしまった。私はこの目に会った事があるのだとラクスは過去の記憶を手繰り、そして思い出す事が出来た。これは自分の父シーゲルや、自分が敵視していたパトリック、そしてオーブのウズミなどがしていた目と同じなのだと。
 この人も自分の信じている正義に絶対の自信を持っているのだろうか。それの善悪は関係なく、確固たる信念を持つ者は皆がこういう目をするのだろうか。

「貴女の夢や理想がどういうものなのかは分からないけど、本当にそれを掴みたいと思うのなら何度でも挑みなさい。挫折する事もあるだろうし、投げ出したくなる事もあるでしょうけど、生きていればそういう事もあるわ。世の中は自分を中心に回ってるんじゃないんだから、上手く行かない事の方が多いわよ」
「…………」
「絶望して胸にぽっかりと大きな穴が開く事もあるかもしれない。疲れて立ち止まる事もあるわ。そういう時は少し休んで、そしてまた歩き出せば良いのよ」

 その言葉に、ラクスはまた俯いてしまった。そんな事を言われても、もう一度立ち上がってもどうすれば良いというのだ。この状況から逆転できる手段など、自分にはもう思いつけないというのに。もう戦う力も助けてくれる人も居ないのだから。
 そんな風に落ち込んでいると、歌が終わって女の子が女性の傍にやってきた。女性は少女を迎えると、一緒に宇宙港の方に歩いて行こうとする。それに気付いたラクスは、この人の名前を聞いていない事を思い出してそれを確かめた。

「あ、あの、貴女の名前は?」
「私? 私はエレン・コナーズよ。この娘はジーナ」
「エレン・コナーズ……あの、難民から世界に知られる歌手にまで上り詰めたという?」

 歌手であるラクスは、その名を聞いたことがあった。中東や東欧といった紛争が続く地域を流れていた難民という立場から、歌1つで世界という舞台にまで登ってきた偉大な歌姫の名は。その人生はさながら物語の登場人物のように波乱に満ちていて、出生は謎に包まれているという信じ難い人物だ。
 だが、それでラクスは理解できた。どうしてエレンが諦めるなと言ったのか。どうしてあんなアドバイスをしてくれたのか。あれは彼女自身の人生経験だったのだろう。でも、どうやってもう一度這い上がればいいのだろうか。
 どうすれば良いのだろう。自分でもう一度立ち上がれといわれても、今はまだ何も見えないというのに。エレンはどうやって自分を励ましたのか知りたくなったラクスは、それを聞こうとした。

「あの、1つ聞いても良いでしょうか?」
「いいえ、それは駄目よ。それじゃ意味が無いわ。それは貴女の夢なんでしょう」
「……自分で考えて、答えを出せというのですね?」

 この人は優しいようで厳しいのかもしれない、とラクスは思った。この人は先ほどからアドバイスはくれるが一度も解決策を提示してはくれていない。道を探せと言ってくれても道そのものを示してはいないのだ。エレン・コナーズといえば世界各地の戦争被災地域などを巡ってボランティアのように歌を歌っているという人物として知られており、ラクスはマルキオと同じくこの世界の現状を憂う心ある人だと思っていたのだが、どうやらマルキオよりずっと厳しい人であるらしい。マルキオは自分何をすれば良いのかきちんと教えてくれたのだから。
 ラクスの返した答えに小さく頷いて、エレンはジーナを連れて歩いて行ってしまった。それを見送ったラクスは歌が終わって人気が無くなった休息所で1人、ココアを買ってベンチに腰を降ろした。

「マルキオ導師が教えてくれた私たちの求めた理想と、私たちの見たかった世界。でも、私がやりたかった事は、何だったのでしょうか?」

 ナチュラルとコーディネイターの対立を悲しく思ったのだ。全てはそれが始まりだったのだと思う。でも、そこから先の事を思い出そうとすると、何故か上手く思い出せなかった。これまで一度も振り返らずにひたすら駆け抜けてきたように思うが、余り記憶に残らないほど自分は速くその場を駆け抜けてきたのだったろうか。
 ココアを口に含みながら、ラクスは初めてゆっくりと考え始めていた。これまでは常に前を見続けていて後ろを振り返るような事はしなかったし、メンデルを出てからは余りの衝撃に胸に開いた空白を持て余してひたすら自責と後悔を続けていた。何もかも無くしてしまった今になって彼女はようやく1人でゆっくりと過去を振り返る時間を得る事が出来たのだ。
 でも、その前にラクスは何となく込み上げてきた衝動に身を委ねてしまった。あの歌を聴いていたら、久しぶりに自分も歌いたくなってきてしまったのだ。ベンチに腰掛けたままの姿勢でラクスは小さな声で歌を口ずさみだす。その歌はラクス・クラインの歌であったが、アスランやフィリスなどが聴いたら微妙な違和感を感じたかもしれない、ほんのちょっとだけ違う歌声であった。




後書き

ジム改 エレンとラクスの邂逅は一瞬の事でした。
カガリ アスランってどんどん不幸になってないか?
ジム改 多分このシリーズでベスト・オブ・不幸賞を受賞できるだろうな。
カガリ 私も出てこないし、このままじゃヒロイン街道から外れてしまうじゃないか!
ジム改 まだ拘ってたのか、お前はヒーローだというのに。
カガリ なにおう、私だって一応ヒロインの一角なんだぞ!
ジム改 でも立ち位置を見るとまんまヒーローだし。
カガリ ああ、早く私にも出番寄越せ!
ジム改 当分無理だ。
カガリ シクシク……、ところで、ラクスはこれからどうなるんだ?
ジム改 どうしようか?
カガリ おい!?
ジム改 いやだって、ここからラクスを再起させるのは難しいんだぞ。カガリと違ってどん底にいるから。
カガリ そういう時こそご都合主義で。
ジム改 伏線も無いのにご都合できるかい!
カガリ 全く使えん奴だ。それでは次回、ビクトリアからの脱出が始まる。地球軍も攻勢に出るが、ザフトも必死の抵抗を繰り返す。そして宇宙ではクルーゼ率いるザフトの大艦隊が地球軌道に迫っていた。パナマからアークエンジェルは宇宙に上がる。そこでフレイとトールは訓練を始めるが、アメノミハシラに向かおうとしたアークエンジェルの前にザフトの艦隊が。次回「大天使は星の海へ」でお会いしましょう。

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