第150章  大天使は星の海へ




 ビクトリアのマスドライバーから次々にシャトルが上がっていく。それはビクトリア基地の最後の足掻きだった。ビクトリア基地周辺には多数の地上戦艦や車両、MSが展開して周辺から迫る地球軍を必死に食い止めている。そこに残っているのは全て陸戦型MSであり、宇宙に持っていっても仕方の無い機体ばかりだ。
 そして空ではディンやラプターたちが数で圧倒する地球軍のサンダーセプターやスカイグラスパーと死闘を演じている。かつてはサンダーセプターに対してその格闘戦性能の高さで優位にたった名機も、今ではスカイグラスパーという高高度性能と速度性能、火力で勝る強敵の登場で苦戦を強いられるようになり、数の差もあって圧倒されるようになってしまった。今も1機のラプターを数機のサンダーセプターやスカイグラスパーが追い回すという戦闘が各所で見られる。それは戦いというよりも一方的な虐殺と言いえるような状態であった。
 防衛軍を指揮しているザフトの指揮官たちは各方面の守備隊にとにかく時間を稼げと指示を出していた。自分たちの役目は敵に勝利する事ではない、シャトルの打ち上げが終わるまでの間、全滅しない事だと。それは玉砕を前提とした、最悪の命令であった。
 だがザフトの守備隊はこの命令に良く答えて見せた。指揮をとっている大西洋連邦とユーラシア連邦の指揮官たちは頑強に抵抗し、ビクトリア基地周辺の防衛戦を維持し続けるザフトに苛立ちと焦り、そして僅かな賞賛を送っている。

「よく粘る、流石はザフトというべきか」
「しかしネルソン司令、このままでは敵脱出を許してしまいます。ドミノフ将軍のユーラシア軍も順調では無いようですが」
「何、心配するな。そろそろ例の部隊が降下するはずだからな」

 副官の不安をネルソンは笑って受け流し、地図に指を当てて次の手を考え出した。この攻撃で無駄弾をばら撒いているように見えるのも作戦の内なのだが、やはり何処か一角を崩して戦線を突破してみたいという誘惑もある。その努力をネルソンはしていた。



 地形で遮蔽を取ったガンナーザウートが迫り来るユーラシア軍にアーバレストを向けて一撃必殺の砲弾を放つ。放たれた高速弾は迫るストライクダガーの胴体を一撃で貫通して砕き、ヴァデッド戦車の正面装甲さえ紙の様に貫通する。その破壊力と射程は脅威そのもので、ユーラシア軍の前進は止められていた。
 北東から侵攻していたドミノフ将軍の地上軍もまたネルソンと同じく足を止められていた。空軍の支援が無いとどうにも前進できないという状態で、ハンター戦車のロケットシステムによるトップアタック攻撃だけが確実な攻撃手段となっている。
 前進用の切り札と考えていた光波シールド装備のレギオンはガンナーザウートに集中的に狙われ、これの前進も阻まれている。アーバレストは光波シールドさえ貫通するのだ。この問題に対してユーラシアはより強力なシールドを装備するハイペリオンや大西洋連邦から供与されたデュエルを投入した事もあるのだが、ハイペリオンのアルミューレ・リュミエールやデュエルのPS装甲さえアーバレストは難なく貫通してしまい、MSレベルの装備では防御は不可能だと思い知らされる結果に終わっている。
 だが、ドミノフ将軍もネルソンと同じく焦る様子は無い。この攻撃が陽動である事は彼も知らされており、せいぜい派手に攻撃して敵の注意を引き付ければいいのだから。だからドミノフは残弾を気にせず撃ちまくれと命じていた。派手にやるのも仕事だと言って彼はとにかく撃ちまくらせたのだ。




 その変化は唐突に発生した。基地上空を数機の大型機が通過していってパラシュートの付いた爆弾を投下して行ったのだが、そんなものは簡単に着弾前に迎撃されてしまう。それが何なのかの意味を考える暇も無く基地の迎撃隊は新たな敵に砲を向けていく。
 だが、マスドライバー周辺で立て続けに変化が起きた。周辺に配置されていた対空型ザウートや予備のMS、そして打ち上げを待っていたシャトルがいきなり爆発したのだ。それをみた管制塔に詰めていた兵が何事かと周辺を捜索したところ、マスドライバー周辺にMSクラスの熱源反応が複数現れているのが確認できた。そして彼らの見ている前で、次々にMSが姿を現したのである。それは大半がブリッツであったが、少数のストライクやクライシスの姿もある。ストライクとクライシスは少数とはいえ生産されていたストライカーパックの1つ、シャドウストライカーを装備した機体で、ミラージュコロイドを使った隠密行動を短時間だが可能とする。
 だがもうミラージュコロイドは必要ないと判断したのか、次々に姿を現したこれらのMSはPS装甲を起動し、周囲のMSや施設に襲い掛かり始めた。驚いて動きが止まっているMSにランサーダートが叩き込まれ、ストライクが構えたビームライフルが管制塔を撃ちぬく。そしてカラミティ型の大型バズーカとシールドを装備したクライシスは一味違う強さを見せ付け、マスドライバー周辺の施設を次々に破壊して回っている。

「全機、目的はマスドライバーの確保よ、周辺の施設を破壊し、爆破装置を破壊しなさい!」

 クライシスを駆るのは大西洋連邦の誇るエースの1人、乱れ桜のレナ・メイリアだ。彼女は腕を認められてクライシスを渡されたパイロットの1人であり、この重要な任務の指揮を任されている。そして彼女はその期待に良く答えているようだ。
 守備隊司令はもはやこれ以上のシャトルの脱出が不可能のである事を悟り、シャトル搭乗員にシャトルから脱出するように命令した。そんな所にいたら殺されるだけだから。
 だが司令の判断は遅かった。ブリッツの群れは脱出を待っていたシャトルにも襲い掛かり、これを次々に破壊し始めた。それをみた司令は怒りに顔を歪めたが、彼にはどうしようもなかった。主力機の大半は前線で、ここには対空砲火用に残してある機体ばかりなのだ。それらの半数は機体が損傷し、移動が困難という理由で固定砲台代わりにされていた機体だったりする。
 そんな機体でGやクライシスをどうにかできる筈も無く、迎撃に出てきたMSや戦車は片っ端から破壊されていった。そして司令の居た司令部も攻撃を受け、ミサイルが司令部を直撃して破壊してしまう。
 ミサイルに直撃された司令部ではまだ幾人かが生き残っており、司令官も重傷を負いながらも必死に身体をコンソールの上に這い上がらせた。

「おのれナチュラルども、だが貴様らの思い通りにはならんぞ……」

 司令官は必死の形相で右手を上げると、即席で作られたマスドライバーの起爆スイッチを押した。その反応してマスドライバーの2箇所で爆発が起きたが、それはマスドライバー自体を崩壊させるには到底足りる物ではなく、マスドライバーの機能を損なうにも不足していただろう。この程度なら連合はすぐに復旧してマスドライバーを使うようになってしまう。
 先の攻撃で起爆システムが破壊されていたのだと悟り、司令官は無念の表情を浮かべて崩れ落ちていった。



 レナ・メイリアの奇襲部隊は同時に少数のコマンド部隊も運んできており、彼らはMSの支援を受けながらマスドライバー周辺の敵兵を掃討し、爆破装置を無力化し、基地施設を確保して回った。この奇襲攻撃で他ならぬ中枢を叩かれてしまったザフトは途端に防衛力を激減させてしまい、地球軍に突破され、蹂躙される事になる。
 ここにビクトリア攻略戦は完了し、地球軍は2基目の大型マスドライバーを確保する事に成功した。ザフトの脱出は若手を中心として7割近く、およそ10万程度が脱出に成功したのだが、守備隊として残った者とシャトルに乗りながら脱出できなかった者、およそ5万強が地球軍に蹂躙され、8割近い死傷者を出して降伏する事となった。
 ここまで死傷者が増えた背景には順番待ちしていたシャトルの大半が人員を満載したまま破壊された事と、指揮中枢を叩かれた為に各部隊間の指揮系統が失われ、降伏のタイミングを逸して玉砕した部隊が続出した為だ。これはザフトの軍人全体の能力が低下している事を示している。指揮官級ですら教育期間が十分に取れず、このような失態を演じてしまうのだから。
 だが、この虐殺とさえ言えるような殲滅戦は連合諸国の政治家や軍人に衝撃をもたらした。オーブや台湾でもそうだったが、ザフトがここまで抵抗を続けるとは誰も思っておらず、その出鱈目な戦いぶりに薄ら寒い物を感じていたのである。これが宇宙に上がっても続くようなら、自分たちはプラントを屈服させるまでに後どれだけの犠牲を出すというのだ、と。





 宇宙ではビクトリアからの打ち上げ軌道にザフトの艦隊が集まってきていた。クルーゼが指揮をする収容艦隊が地球軍の僅かな抵抗を廃してここに到達していたのだ。地球軍は僅かばかりの抵抗を示したのだが、ザフトの数に圧倒されてしまっている。地球軌道に集まってきている艦艇は現時点で20隻を越え、輸送艦は50隻を越えている。これはザフトにとって久々の大艦隊というべき物量であった。
 その中にはアスランたちの特務隊や新編されたジュール隊の姿もあり、エターナル級3隻が収容作業中の船団外周を警戒しながら航行している。周囲には艦載機も飛んでいるようだ。
 この艦隊を指揮するクルーゼはカリオペの艦橋から満足げに作業の推移を見守っていたが、同時に常に気にかけていることもあった。いつ地球軍の艦隊がここに殺到してくるか、それを気にしていたのである。

「作業を急がせろ、ここはナチュラルどものテリトリーだ!」
「収容完了までまだ少しかかります。それと、どうもビクトリア基地が落ちたようです」

 アンテラは集められた報告を集計してクルーゼに報告したが、合わせて地上から上がってきた者から聞いた最新の情報も伝えた。それを聞いたクルーゼはそうかと呟き、それ以上は興味を示さなかった。彼にしてみればマスドライバーが多少残っていた方がありがたく、自分の失点となる訳でも無いので興味は無かったのだ。
 だが、これで地球軍は宇宙に大軍を展開させるなと呟いて、クルーゼは少しだけ愉快そうな笑いをこぼしている。それをみていたアンテラはクルーゼほどに事態を楽観視している訳ではなかったが、とりあえずは別の事を口にした。

「ところで、プラントから搬入した弾道ミサイル、それと弾頭はどうするのです?」

 折角ここからマスドライバーを破壊する手段があるのだ。使わないと後で議長に何を言われるか分からないぞと言外に込めてアンテラは聞いたが、クルーゼは全くそれを気にしなかった。今のエザリアはもうクルーゼを切り捨てる事など不可能なほどに追い詰められているのだから。

「案ずるな、全ては順調だよ。あれも今回の作戦を私の思う方向で成功させる為の小道具だ」
「……本気で、あれを使うのですね?」
「まあ使わないかも知れんがね、全ては敵の出方次第さ。だがまあ……」

 アンテラの問いに危険な笑みを浮かべながら答えたクルーゼは、視線を窓の外へと向けた。

「地球軍が来てくれない事には、折角の準備が無駄になる。多少は彼らにも頑張って欲しい物だよ」
「ですが、アスランを罷免したのは不味かったのでは? あれで特務隊の士気に影響が出ています」
「作戦に従えない指揮官など不要だよ。ハイネ・ヴェステンフルスに後は任せたのだ、気にすることはあるまい。アスランもこの戦いが終われば作戦本部に辞表を出すだろうから、ザラ派も力を無くす」

 この作戦前に行われた作戦会議でアスランはクルーゼの作戦計画を痛烈に批判していた。このような作戦を遂行する事は出来ないと言い切り、結果彼はクルーゼの不況を買って特務隊隊長を罷免されてしまった。これを受けてアスランは隊長職を追われ、立場は待命状態となっている。現在は仕方が無いのでハイネに代わってジャスティスで前線指揮をしている有様だ。
 このアスランの反逆は特務隊のパイロットや他の実戦部隊にも衝撃を与え、今回の作戦に疑いを持つようになっている。あのアスランが拒否したという事実が事態を複雑にしてしまっているのだ。
 これによる士気の低下をアンテラは気にしていたが、クルーゼは気にしていなかった。最後の切り札を持っているのは自分たちだという確信が彼にはあるのだ。そう、世界を破滅に追い込むために背中を押してやる切り札が。




 クルーゼの思惑とは関わりなく、地球軍も艦隊を月基地から出撃させてはいた。第8艦隊を中心とする合計50隻の艦隊であり、これに周辺から駆けつけてくる部隊をあわせればザフトに数倍する大軍になることは間違いない。ハルバートンは艦隊を真っ直ぐに地球へと向け、合わせて戦闘に参加してくれる部隊の集計をさせていた。

「赤道連合艦隊に第8任務部隊も来れるか、助かるな」
「第8任務部隊と合流予定でしたアークエンジェルも単艦で向かわせましょう。あれ1隻でもかなりの戦力となります」
「ラミアス君も成長したものだな。若手の技術屋が、今や任務部隊司令官か」

 自分が目をかけていた士官が階段を登っていくことはハルバートンにとっても嬉しい事であったが、技術士官である彼女が前線指揮官として重用されていくのは何だか皮肉な話しでもある。人生どうなるか分からないものだ。
 報告をしていたホフマン大佐は最後に付け加えるようにして面白い事を言ってきた。

「それと、極東連合の第1艦隊もこちらに向かっています。これが一番先に戦場に到着するかと」
「極東連合の第1艦隊、ではあの噂のヤマト級が出てくるのか?」
「でしょうな」
「アークエンジェル級さえ上回る戦闘力を持った新世代の戦艦だというが、この目で見られるとは楽しみだな。お披露目さえなかった機密の塊のような船だからな」

 極東連合のヤマト級戦艦は建造そのものが極秘にされていた謎の多い戦艦で、これまで一度も実戦を経験していない。観艦式などにも顔を見せた事はなく、謎の塊と化している船なのだ。数少ない目撃例では白く優美な流線型の船体を持つ大型艦らしく、既存の如何なる艦船とも似ていないらしい。撮影された望遠写真でも砲塔や艦橋のような物がなく、本当に戦艦なのかと疑われたほどだ。
 この噂の戦艦を見られると知ったハルバートンは彼にしては珍しく楽しそうな笑みを浮かべていた。彼も興味津々であるらしい。





 同じ頃、パナマを出たアークエンジェルは宇宙空間に出ていた。ここから一度アメノミハシラに入り、第8任務部隊の主力と合流して月基地を目指す事になっているのだ。艦の外ではトールとフレイの訓練が行われており、無重力下での機動をアルフレットから叩き込まれていた。ただ2人ともスペースコロニーに居た頃があるためか、初めてという割にはそこそこまともなマニューバを見せている。だがフレイはウィンダムに組み込まれた新装備のために少々戸惑っている様で、トールに比べると何だかぎこちない動きをしている。どういうわけか操縦系に影響が出ているらしい。
 それを艦橋から見ていたマリューは大した物だと感心し、ノイマンに航路を尋ねた。

「ノイマン中尉、アメノミハシラへの軌道計算は出来た?」
「もう少しです、何しろ久しぶりの宇宙なんで」
「まあ近くには敵も居ないだろうし、確実にやって頂戴」

 この辺りの制宙権は此方のものだと気楽に考えていたマリューであったが、それは突然のパルの報告によって粉々に打ち砕かれる事になる。パルがいきなり接近してくる3隻の艦艇をレーダーに捕らえたと報告してきたのだ。
 それを聞いたマリューは吃驚してカズィに確認をとるように言い、ミリアリアにMS隊を呼び戻すように指示した。そして待つ事2分、カズィは接近する目標からの応答が無いことを告げ、パルは目標の識別データがローラシア級3隻だと伝えてくる。もう間違いない、あれは敵なのだ。
 マリューは戦闘配置を命じ、直ちに戦闘態勢を取らせる。クルーは慌てて宇宙服を着込み、急いで持ち場へと移動していく。そして格納庫ではマードックたちがMSを発進ゲートに移動させようとしていた。

「急げ、装備は標準仕様で良い、まずクライシスとフリーダム、ヴァンガードから出すぞ!」

 MSが整備ベッドごと移動していき、コクピットの中ではパイロットたちが急いで最終チャックをしていく。緊急発進はとにかく忙しいのだ。そんな中でフレイは自分のウィンダムの背中を見て、そして格納庫の反対側にあるハンガーを見る。そこには小型のMAとでも形容すべき機体が並んでいたのだ。

「こんなの渡されても、私に使いこなせるのかなあ。まだ父さんの方が良いと思うんだけど」
「しょうがないだろ、少佐はこういうのは嫌いだって言うんだからさ」

 続いてやってきたトールがぼやいているフレイの肩を叩き、床を蹴って自分の機体の方へと飛んでいく。それを見たフレイはトールに慌てて声をかけた。

「トール、今日はキラたちに前衛を任せて、前に出ちゃだめよ。私たちはこれが初めての宇宙戦なんだから!」
「大丈夫だって、分かってるから!」

 トールはフレイに笑って答えてMSに乗り込んでいく。それを見たフレイはまた調子に乗らなければ良いがと不安に思ったが、自分の方も状況は同じなのだから人の事は言えない。とにかく今日は生き残る事だ。



 アークエンジェルから発進した6機のMSはアークエンジェルの正面上下に展開し、アルフレットの命令でアルフレット自身が第1小隊を率い、キラとシンを伴って前衛をする。第2小隊はトールを小隊長としてフレイとスティングを伴い、アークエジェルの直衛をするという事になった。これはまだ宇宙に慣れてないトールとフレイが迷子にならない為の配慮だろう。
 そしてザフトも3隻のローラシア級からゲイツとジンHMを発進させ、18機という3倍の数を展開させてきた。敵はそれなりの精鋭のようで出撃から展開までの時間がかなり速く、アークエンジェルは正面に3隻の戦艦、そして左右に18機のMSという大兵力を迎え撃つことになる。
 このザフト艦隊を率いているのは偶然にもかつて地球への逃亡を続けていたアークエンジェルを追撃した事のある指揮官、ガモフの艦長であるぜルマン隊長である。今では出世し、1部隊を任されているのだ。ゼルマンは敵があの足付きだと知ると、勇んでこれを撃沈する事を決めていた。

「足付きか、見るのは随分久しぶりだが、奇縁というべきかな。今度こそ沈めてくれよう」

 アークエンジェルの地上での活躍は聞いているが、宇宙ではナチュラルより自分たちコーディネイターの方が上だという自負がある。実際に宇宙ではまだザフトは地球軍と対等に渡り合っているのだから。




 向かってくる3隻の艦艇と18機のMS、これを見たアルフレットはフレイに新装備のテストをするぞと言った。

「フレイ、中距離誘導弾を試すぞ!」
「りょ、了解、スターファイアを起動します!」

 アルフレットのクライシスとフレイのウィンダムの両足には大型のランチャーのような物が増設されており、そこには3発ずつの大型ミサイルが装填されている。こういう兵器はNJ影響下では十分な効果を上げられないのだが、大西洋連邦はこれまで作り上げてきた数々の試作品を元にある程度の成果を上げていたのだ。
 アルフレットとフレイの制御の元に12発のミサイルが発射され、それは多少違う軌道を描きながらそれぞれの目標に向かっていく。その射程と誘導性能は、向かってくるザフトパイロットたちの想像を遥かに超える物であった。

「馬鹿な、NJ影響下でどうしてミサイルが誘導できる!?」

 中、長距離誘導兵器が無力化されたからこそMSは意味を持つのだ。もし誘導兵器が復活したら速度性能で劣るMSなど戦艦の敵ではなくなる。目標を捕らえたところでミサイルの飽和攻撃を仕掛ければ、それでMSなど近づく事も出来ずに仕留められてしまうのだから。運動性能だけでミサイルを回避し続けることは出来ないのだ。
 1機辺り3発のミサイルが弧を描きながら襲い掛かり、それらはMSに近づいた所でいきなり4つの子弾を発射して目標に命中、4つの光の華を宇宙に咲かせた。これは地上でテストされた脳波制御ミサイルの中距離バージョンなのだ。このミサイルの利点はユニットそのものは使い捨てランチャーであり、使用後はパージして機体を身軽に出来るという点である。
 このミサイルを見た他のMSは慌てて散開し、それを見たアルフレットがキラとシンに付いて来いと言う。

「よし、キラとシンは俺に続け。敵艦を沈めるぞ!」
「MSはどうします?」
「そっちはフレイたちに任せておけ。数機のジンやゲイツじゃアークエンジェルは沈まん!」

 キラの問いに答えてアルフレットはクライシスを加速させ、それに続くようにフリーダムとヴァンガードが加速する。そしてそれを遮るかのように数機のジンやゲイツが向かってきたが、それはシンが引き受けた。

「行って下さい、ヴァンガードは対艦戦には向きません!」

 対MS戦闘に極端に特化されているヴァンガードにはまともな砲撃兵装が無い。これでは船を沈めるのは無理なので、シンは護衛のMSを相手にする事にした。それを受けてクライシスとフリーダムが敵艦に向かおうとするが、その前に彼らを追い越すようにして6条のビームが敵艦隊へと駆け抜けていった。アークエンジェルがゴッドフリートを放ったのだ。




 そしてアークエンジェルの傍ではフレイとトール、スティングが向かってきた7機のジンHMとゲイツを相手取っていた。このときフレイのウィンダムの周囲には3つの小型MAのような物がぴったりとくっついていて、何とも奇妙な状況となっている。まるで3機のMAがウィンダムを守っているかのようだ。
 これはスターファイアと同じ新型の空間認識能力者用の兵器フライヤーで、ファントムなどの無人機をベースに発展させた最新の半自立攻撃端末なのだ。サイズがMSの胴体並とかなり大きく、内部のバッテリーと推進剤でMSの戦闘可能時間に十分対応する事が可能となっている。まあメビウスなどよりは遥かに小さいのでMAにしては小型と言えよう。
火器はリニアガン1門に小型ミサイルランチャーが4基という小型のわりには重武装であり、ファントムで改良を重ねられた無人戦闘システムを採用する事でパイロットの負担を軽くすることに成功していた。これはアルフレットが強く要望していた改善で、ガンバレルとは違って1から10までパイロットが意識せずに済むようになったことが大きい。フライヤーはパイロットが制御しなくても自分で敵を探し、戦闘を行えるのだ。パイロットは必要に応じてフライヤーを操作すれば良く、MSの操縦に意識を向けていられるようになる。
 迫る敵機に対してミリアリアから迎撃支持が出され、トールのウィンダムを中心に迎撃シフトを組む。スティングのマローダーが支援の位置に付き、フレイとト−ルが前に出て敵の突撃を防ぐのだ。

「フレイ、俺とお前で数を落とすんだ。スティングは敵が突破しないよう気をつけてくれ!」
「ああ、分かってる。こっちは上手くやるから心配するな」
「私も分かってるわよ、トールこそ死ぬんじゃないわよ」
「へいへい、どうせ俺はアークエンジェルで一番下手ですよ」

 エース揃いのアークエンジェルでは撃墜王に数えられるトールでも雑魚扱いされてしまう。その現実は悲しい物であったが、まあ腐る事は無いだろう。そして向かってくるMSに向けてトールとフレイはウィンダムを加速させた。

「さあ、フライヤーの性能テストよ。まともに使い物になれば良いんだけど!」

 フレイは1機のジンHMを狙ってガウスライフルを放ったが、見越し射撃をジンHMは軽々と回避して反撃の重突撃機銃を叩き込んでくる。それをシールドで受け止めたフレイだったが、あっという間にジンが位置を変えてこちらに向かってくるのを見て驚いた。地上で戦っていた敵とは格が違う動きの良さだ。キラから聞いてはいたが、宇宙のザフトは本当に腕が良いらしい。フレイも機体を操作して距離をとろうとするが、どうも初めての宇宙戦闘のためか動きがぎこちない。いや、それだけではなく、機体の状態が何時もと明らかに違うのだ。

「何だか変よ、ウィンダムの反応が何時もと全然違う、何でこんなに速いの!」

 操縦感覚の違いに戸惑っているためかフレイのウィンダムの動きは確かに悪く、ジンHMの動きに遅れている。それを見て未熟なパイロットだと判断したらしく重突撃機銃で牽制しながら距離を詰め、重斬刀をもって斬りかかってくるジンHMだったが、その周囲を3機のフライヤーが囲もうとした。リニアガンを放ちながら襲ってくる3機の小型MAを見たジンHMのパイロットはMA風情がと怒って銃撃を加えたが、そのMAは有人機ではありえない機動を見せ、銃撃を容易く回避してしまった。それをみたパイロットはファントムと同じだと思ったが、それにしては動きがおかしい。機械には無い、人の意思があるような動きをしているように見えるのだ。無人機なら戦術的な動きを取れるはずが無い。しかもこのMA、銃撃を受けても正面で弾き返すほど強固な装甲を持っている。

「どうなってるんだ、ファントムの改良型なのか、それとも有人機か!?」

 あの動きではコーディネイターでも死んでしまうはずだから有人機はありえないと思うのだが、この3機は連携しながら1機の新型を完全にサポートしている。どういう理屈なのかは分からないが、こんな代物をナチュラルが投入してくるとは。
 幾ら腕が良かろうと、これでは4機を同時に相手取っているような物だ。流石に何時までも戦う事は出来ず、リニアガンに撃ち抜かれて撃墜されてしまった。

「ようやく1機、かなり強い!」

 ジン1機にここまで梃子摺るとは思っていなかったフレイは一息つこうとして、通信機からのミリアリアの悲鳴に吃驚する事になる。

「フレイ、トールが、トールが!」
「い、いきなり大声出さないで、どうしたの?」
「トールが敵機2機に追われてるの、援護に入って!」
「トールが!?」

 慌てて周囲を確認すれば、確かにウィンダムが2機のゲイツに襲われて逃げ惑っている。それを見たフレイはウィンダムを加速させてサイに周辺の状況を聞いた。

「サイ、周りはどうなってるの。父さんたちは!?」
「少佐とシンが敵に足を止められてる。スティングはジン2機と戦闘中、アークエンジェルにはゲイツ1機が来てる。もう1機は撃墜!」
「父さんたちの方に7機か。7機であの3人を梃子ずらせるなんて……」

 凄い敵だと感心しながら、フレイはトールを追うゲイツの1機を射程に捉えてガウスライフルを放った。高速で放たれる銃弾が見越し射撃でゲイツの予想位置に向けて放たれ、此方の接近を察知したゲイツが回避運動に入る。ジャスティスの装甲さえ撃ちぬくガウスライフルの銃弾を機敏な会費運動で避けきったゲイツは反撃とばかりに此方にビームを放ってくる。それを機体を沈めて回避したフレイは、こちらに向かってくるゲイツめがけてフライヤーからミサイルを放った。
 近距離で使用する小型ミサイルだけに威力は大した事が無いが、MS程度になら十分な威力を持つ。弾頭に装備されている複合誘導システムによってある程度の命中率を確保しているのだ。この複合索敵誘導システムはアークエンジェル級に採用されたオーブ製のミサイルに使用されていたシステムの改良型だったりする。モルゲンレーテの技術が流れた事でこんな兵器も出てきたのだ。
 フライヤー自身が敵に近づいたら使用する装備で、発射後に自分の索敵システムで目標を探して突入していくのだ。スターファイアミサイルの子弾もこれと同じ物で、短距離小型ミサイルの次世代型の1つである。


 フレイのミサイル攻撃で1機を撃墜し、1対1となったトールはそれまでの苦戦が嘘のように相手との距離を詰め、格闘戦を仕掛けてこれを押し出した。ゲイツとウィンダムの間にはかなり大きな性能差があるが、それを差し引いても接近戦ではトールの腕は確かな物があるようだ。
 ガウスライフルを使った接近射撃戦を暫く繰り返したトールとゲイツだったが、このドッグファイトは上手く相手の背後を取ったトールに軍配が上がった。放たれた高速弾に背後から抉られたゲイツは上半身を砕かれ、撃墜されてしまう。



 敵を撃破したフレイとトールは合流してスティングの援護に回り、アークエンジェルはその火力に物を言わせて正面のローラシア級3隻を撃ちまくっている。ゲイツが1機遠巻きにしているが、此方は対空砲火を抜けられずに立ち往生しているので怖くは無い。どうせビームライフルの1発や2発ではアークエンジェルの装甲は煤けもしないのだから。
 アークエンジェルの放った4射目のゴッドフリートの斉射が敵の3番艦を捉え、2発の光の柱が船体に突き刺さってこれを爆砕してしまう。2発では撃沈には至らなかったが、直撃された艦首方向はズタズタにされ、よろめくように進路を変えようとしている。これに対してさらにバリアント2発が放たれ、動きが鈍った3番艦に止めを刺した。

「バリアント直撃、3番艦撃沈です!」
「よし、砲撃目標を2番艦に変更。ミリィ、少佐たちはどうなってるの?」
「アルフレット少佐とシンは敵MS2機を撃墜、残る2機を追い込んでいます。キラは敵2番艦を狙っているようです!」

 アルフレットのIWCPクライシスとシンのヴァンガードはジンやゲイツを圧倒する性能を持つが、敵も中々の手練れのようで地上の時ほどには楽な勝負はしていないようだ。それでも2倍の敵を相手に短時間で勝利しているのだから大した物なのだが。
 マリューは2番艦はキラに任せれば良いかと考え、パルに砲撃目標の変更を伝えた。

「目標変更、敵1番艦を沈める。ローエングリン用意!」

 地上では1度しか撃った事の無い反物質兵器、陽電子砲ローエングリンの使用許可が出される。それを受けてパルがローエングリンを起動し、エネルギーチャージを始めた。




 ヴァンガードのレーザーガンがゲイツのシールドを捕らえるが、これはシールドを抜くには弱すぎるようで何の変化も無い。それにシンが舌打ちするが、次の瞬間にはヴァンガードがビームの直撃を受け、これを偏向して背後に抜けさせてしまう。
 シンはゲイツ1機とジンHM1機を相手取っていたのだが、これが思いの外強敵でシンは苦戦していた。此方が接近戦主体の機体だと見抜かれたのか、2機とも距離を取ってビームや銃弾を叩き込んでくる。

「くっそ、こいつらしつこい!」

 シンはヴァンガードの弱点を突かれた事に腹を立てていたが、怒っても敵が此方の懐に入ってきてくれる訳ではない。いや、確かにシンは勝てないことに苛立っているのだが、敵を落とせないのは彼の心の問題と言える。目の前のゲイツにステラが乗っているのでは、という不安をどうしても拭えないシンは無意識のうちに致命傷を与える攻撃を避けていたのだ。
 そしてシンは助けを呼ぼうとしてアルフレットの方を見て、とんでもない物を見ることになる。
 アルフレットのクライシスが相手にしているのはゲイツRが2機であったのだが、クライシスはそのうちの片方にIWCPのレールガン門とリニアガン2門の砲撃を集中し、その1機を防御一辺倒に追い込んでいる。そしてもう1機が背後からビームサーベルを抜いて斬りかかろうとしているのを見たシンが危ないとコクピットの中で叫んだが、次の瞬間にはビームサーベルを僅かな横滑りで回避したクライシスが左手に持っていた対艦刀を横薙ぎに振るい、そのゲイツが横を抜けようとしたところを両断してしまった。
 1機を仕留めたアルフレットはそのままもう1機への砲撃を続け、回避運動をしくじったゲイツRはレールガンに胴体を撃ちぬかれて大穴を開けられ、唯の漂う残骸に成り果ててしまった。

「す、すっげぇ。流石おっさん」

 自分がここまで梃子摺ってる相手をまるで寄せ付けないアルフレットの強さにシンはただ感心することしか出来なかった。そして飛び込んできた通信がステラの事で戦いに迷いを持ち込んでいたシンの耳を叩いた。

「何やってるシン、お前死にたいのか!?」
「こ、こいつらが強いんです。手を抜いてる訳じゃないですよ!」
「どう見ても腰が引けてるぜ。良いか、今はステラの事は忘れろ。そんなんじゃお前が死ぬぞ!」

 コンバインドシールドから放たれる高速弾がシンを狙うゲイツに放たれ、ゲイツが慌てて後退していく。それで距離をとったヴァンガードの隣にクライシスが付き、マニュピレーターで肩を掴んで思いっきり揺さぶってきた。

「今は戦いに集中しろ。あいつは敵だ、お前を殺そうとする敵なんだよ。戦場では銃を向けてくるなら兄弟でも敵なんだ!」
「でも……」
「お前だって死ぬ訳にはいかねえだろ。国で待ってるお袋さんや妹はどうするんだ!?」

 母親とマユを出されたシンはハッとして顔を上げた。既にクライシスはヴァンガードを掴んではおらず、最後のジンHMに牽制の砲撃を加えて近づけまいとしている。

「少佐、俺は……」
「気持ちは分かる。俺だって悩む事はあるし、ステラを助けてやりてえとは思ってる。だが戦場では迷うな、迷うのも悩むのも戦いが終わった後にしろ。良いな!」

 叩きつけるようなアルフレットの言葉にシンは殴られたように顔を顰め、そして渋々それに分かりましたと返事を返した。そして槍を構え、チャージモードを起動するシンに、アルフレットはちょっとだけお節介をしてくれた。

「それに多分だが、ここにステラはいねえ。あいつを感じないから」
「どういう事です、感じるって?」
「何となくだが俺はそういうのが分かるんだよ、フレイやフラガなんかもな」

 だからまあ、多分大丈夫だと言ってアルフレットはクライシスをジンHMに向けた。そしてシンは一度目を閉じて何かを考えた後、気を取り直してヴァンガードを加速させた。とりあえず今は言われた通り、迷わずに戦おうと思ったのだ。





 ザフト艦隊の方ではあっという間に味方が追い込まれたのを見て焦りを見せていた。ゼルマン隊長もアークエンジェルの圧倒的なまでの強さに当初の余裕を完全に無くし、狼狽していた。

「馬鹿な、1隻なんだぞ、たった1隻の敵に、こんな……」
「隊長、敵艦攻撃に出したMS隊が全滅したようです。敵機の迎撃に出した機体も半数を喪失、残り4機です!」
「ふざけるな、戦闘開始から10分もたってないんだぞ。それで戦艦1隻にMS14機を落とされたというのか!?」

 ありえない、こんな馬鹿げた戦いがあって良いはずが無い。これではまるで1年前のナチュラルたちのようではないか。自分たちコーディネイターがナチュラル相手にこんな無様な戦いを演じるなどある訳が無い。
 そう自分の言い聞かせていたゼルマンであったが、それも新たな敵機の報告が来るまでだった。

「隊長、敵機1機、天頂方向から急降下してきます!」
「対空防御急げ。狙われてるのは本艦か!?」
「違います、ツィーグラーです!」

 ゼルマンがそれを聞いて僚艦の方を見ると、1機のジンHMが上方に迎撃に向かい、ツィーグラーの全ての砲が天頂方向を向いて撃ち出していた。放たれたミサイルが途中で進路を変えて天頂方向のMSへと向かっていく。だがそれは全く効果を上げていないようで、それどころか天頂方向から降り注いだ強烈なビームの奔流によって船体の右舷側を丸ごと抉られてしまっている。それに驚く間もなく2発目が降り注ぎ、迎撃に出たジンHMを消し飛ばして船体中央を撃ち抜いた。これが止めとなったようで、ツィーグラーは動力炉から弾けるように爆発してしまい、2隻目の喪失艦となってしまった。
 これを見たゼルマンがよろけるようにして2歩後ずさり、表情を凍りつかせてしまう。そしてそれに追い討ちをかけるように残っていた3機のMSがクライシスの砲撃に砕かれ、あるいは見慣れぬ新型の槍に貫かれてしまう。

「こんな、馬鹿なことが……」

自分の艦隊が交戦開始から数分で全滅しようとしている。この現実を受け入れられないでいるゼルマンは震える声で目の前の現実を否定していたが、それもアークエンジェルの艦首の輝きを見るまでだった。アークエンジェル級が装備する最強の艦砲が自分を狙っていると知ったゼルマンは慌てて回避を指示したが、それは余りにも遅すぎた。
アークエンジェルの艦首から放たれた陽電子の束は途中の水素原子と対消滅反応を起こしながら一直線にガモフに向かい、これを飲み込んだ。ガモフは陽電子と接触し、対消滅反応を起こして消滅爆発を起こして消滅してしまった。



「敵艦隊、全滅しました!」
「MS隊も全機健在、損傷機もありません!」
「何でこんな所にザフトの艦隊がいたのかしら……まあ良いわ、ミリィ、MS隊に帰艦指示を。本艦は現宙域を離脱し、アメノミハシラに向かいます」

 こんな地球軍が制宙権を握っている宙域でどうしてザフトの艦隊が、それもたった3隻でこんな所をうろついていたのだろう。マリューにはそれが気にかかったが、まあ自分が考えても仕方が無いかと割り切り、当初の目的地に急ぐ事にした。

 ザフト艦隊を一方的に殲滅したアークエンジェルは急いでこの宙域を脱出してアメノミハシラに入ろうと考えたのだが、これは月からの通信で急遽変更されることとなる。月の司令部から地球軌道に侵攻して来たザフト艦隊を叩けという命令が届いたのだ。既に月からも艦隊が出撃しており、地球付近にいる艦艇にも召集がかけられ、アークエンジェルにも参加が命じられたのである。
 これを受けたマリューは仕方が無いかといって進路をビクトリア打ち上げ軌道に向けるのだが、この戦いが多くの人々の怒りと悲しみ、そして憎悪を煽る戦いとなる事を、彼らはまだ知らなかった。




機体解説

GD−03 フライヤー
兵装 リニアガン
   短距離ミサイルランチャー×4
   ABシールド
<解説>
 空間認識能力者用に開発された無人戦闘端末。ファントムで実用化された無人戦闘システムを採用した小型MAであるが、機械では困難な人間レベルの状況判断能力を空間認識能力による制御で補い、ファントム以上に恐ろしい無人機となっている。
 基本的にMSの支援ユニットであり、母機の支援を基本動作としている。使用者の脳波制御により、母機が狙った敵を優先攻撃対象とする。機体正面は砲身を除いてモジュラー式のABシールドで防御されている事も特徴である。火器もユニット式であり、リニアガンやミサイルではなくビームガンやガトリングガンなどを装備する事も可能。



後書き

ジム改 今回はアークエンジェルの人外魔境な強さでした。
カガリ 強すぎだろ、ザフト歯が立ってねえじゃん!?
ジム改 元々アークエンジェルは無茶苦茶強いんだよ。単艦で1個戦隊潰せるくらいに。
カガリ こんな所で3隻失うなんて、ザフトには痛いんじゃないのか?
ジム改 痛いというか、艦政本部が泣くくらいに辛い。
カガリ この調子でアークエンジェルが通り魔のようにザフト艦を沈めて回れば。
ジム改 その前にザフトの総攻撃を受けて沈められると思うぞ。
カガリ そのくらい蹴散らせ!
ジム改 流石にそれは無理だ、アスランたちも居るし。
カガリ ところで、フレイだけなんか変な事になってないか?
ジム改 気にするな、そのうち分かる。
カガリ んじゃヤマト級は?
ジム改 次回で分かる。一応戦艦としては本作最強の船だ。
カガリ スーパーメカカガリみたいなゲテモノか?
ジム改 いや、ゲテモノじゃあない。ただガンダム世界には馴染まない船ではある。
カガリ どういう船なんだ?
ジム改 次回で分かる。それでは次回、極東連合艦隊に襲われるザフト。強力なビームにクルーゼが驚き、アスランのジャスティスが戦場を駆け抜ける。そして続々と地球軍の艦隊が駆けつけ、アークエンジェルも到着する。キラはここで再びアスランと再開し、最後の戦いを繰り広げる事に。そして敗北が見えたとき、クルーゼは。次回「破滅の足音」でお会いしましょう。

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