第157章  ミネルバ竣工


 


 それは突然の事であった。海中を警戒していたゾノが、カーペンタリアに接近する音源を捉えたのだ。それはMSのようであり、カーペンタリアでは数の少なさからそれを偵察部隊だと判断し、迎撃部隊を送ろうとした。
 しかし、迎撃に出した水中部隊は一瞬で全滅させられたのである。その知らせにカーペンタリア司令部が驚く間もなく、新たな破壊がカーペンタリアの湾口を襲った。水中から襲い掛かってきた強烈な衝撃に船底を食い破られた艦艇が擱座し、あるいは竜骨を圧し折られて轟沈していく。メーザーだと思われる攻撃であったが、破壊力はまさに桁外れだ。
 湾口の艦艇を壊滅させ、海に接した湾口施設を引き裂いた破壊者は、海中からゆっくりと姿を現してくる。それは一見するとデフォルメされた巨人とでも言うのか。戦場よりもテーマパークなどに置いてあるロボットという方が似合っているだろう。
 だが、その姿を見た兵士たちの中から恐怖の声が上がりだす。彼らはオーブ戦に参加していた兵士たちであり、オーブでザフトが同じ兵器を投入し、地球軍の大軍を短時間とはいえ食い止めた実績があることを知っていたのだ。

「ま、まさか、あれはオーブにあった化け物!?」

 そう、オーブで地球軍に恐怖を植えつけた最強の破壊神、スーパーメカカガリであった。どうやら地球軍はあれを回収していたらしい。
 だがあれには致命的な弱点がある。そう、動力ケーブルを切断すればそれで止まってしまうのだ。それを知っている歩兵たちはケーブルを破壊しようとミサイルランチャーを担いでスーパーメカカガリの背後に回りこんだのだが、彼らはそこで信じられない物を目にする事になる。声を無くした彼らの元に迎撃をしているMS隊から悲鳴のような催促が飛んでくる。

「何をしてるんだ、早く、早くケーブルを破壊してくれ!」
「……無いんです、ケーブルが」
「何だと!?」
「だから、無いんですよ、ケーブルが何処にも!」

 それは悪夢のような知らせであった。あの最悪の悪魔の唯一とも言える弱点、動力ケーブルが存在しない。それはつまり、あの化け物は動力を内蔵型に改良されているという事を意味しているのだから。
 スーパーメカカガリの装甲にはビームも砲弾も通用しない。こんな化け物を相手にしてはカーペンタリアに残っている僅かな数のジンやゲイツではどうしようもなかった。アーバレストなら破壊も可能かもしれないが、頼みのガンナーザウートは全機がアフリカとオーブで失われてしまっている。
 それでもジンのシリーズ機があるだけの砲を動員して撃ちまくり、ゲイツがビームライフルを叩き込んでいく。だが大量の爆発の煙の中から金色の機体が姿を現したとき、彼らの顔が恐怖に引き攣った。
 そして、スーパーメカカガリの主砲として名高いサウンドブラスターが口から発射され、正面にある全ての人工物を打ち砕いていく。MSも叩きつけられた衝撃で接合部から分解してしまい、大量の部品をばら撒いて砕け散っていく。
 この最強の覇王を操っているのは、パワーに乗り込んでいるイレブン・ソキウスである。その両脇には2機のフォビドゥン・ブルーが展開して固めており、それぞれにシックスとセブンの2人のソキウスが乗り込んでいる。

「これがカーペンタリアか、思っていたより抵抗は少ないな」
「地上のザフトは既に死に体だ、こんなものだろう」

 シックスが意外そうに呟き、セブンがそうでも無いと返す。だが、そんな2人に対してスーパーメカカガリを駆るイレブンから抑揚の無い、だが僅かに怨めしさを感じさせる声がかけられた。

「シックス、セブン、このまま湾口を片付けて橋頭堡を確保しよう」
「分かった、僕は左に行く」
「では僕は右に。ところでイレブン、ひょっとして怒ってるかい?」
「そんな事は無い、クジで負けたのは僕さ。だから全然気にして無いんだ」
「…………」

 気にしている、絶対に気にしている。この機体に乗れと言われた時、3人は誰が乗るかで初めて揉めてしまい、最後にはくじ引きで誰が乗るかを決めたのだ。これで負けたのがイレブンだったのだが。この時のイレブンの顔にはなんとも言えない複雑な顔をして自分のクジを見詰めていた。
 そして乗らずにすんだシックスとセブンは、ソキウスには珍しく嬉しそうな顔をしてフォビドゥン・ブルーへと歩いていった。それは彼ららしくはない感情の見せ方であり、普段の抑揚の無い彼らを見慣れていた整備兵たちは驚いていた。
 イレブンのまるで鬱憤を晴らすかのような怒涛の攻撃の凄まじさは、後に語り草となるほどであった。これに続いて上陸してきた地球軍の部隊はサウンドブラスターによってバラバラにされたMSや戦車の部品の散乱している様を見て、自分たちの仕事は残っていないのではないかとさえ思ったほどである。
 第1波と共にカーペンタリアに前進してきたドミニオンとパワーも砲を向けるべき敵の姿が殆ど無く、拍子抜けしながら地上部隊に全てを任せている。こうなったら下手に艦砲を撃つとかえって味方撃ちの危険が出てくるのだ。
 艦橋でこの破壊の凄まじさを見ていたナタルは、隣で腕を組んで立っているキースにあれが敵でなくて良かったと漏らしていた。

「キース、あれが敵でなくて良かったですね。あれに落とされて戦死したのではとてもではないですが死に切れません」
「いや、そこまで言わんでもね。元々はただの特撮用機材なんだし」
「それが分かりません、何故特撮用の玩具にあれほどの性能が必要なのです?」
「なんでもただ作るだけじゃつまらないから、という製作側の事情らしいけど、まあオーブ政府も一枚かんでたんだろうなあ」

 実はユウナやアズラエルが噛んでいた、とは知らない2人は、あの化け物の強さにただただ感心する事しか出来なかった。




 カーペンタリアの施設を破壊しながら歩く様はまるで怪獣のようで、ザフトはこれを食い止めようと爆撃機ではない筈のラプターに爆弾を積んでの空爆まで行おうとしたのだが、これはスカイグラスパー隊によって阻止された。
 そしてスーパーメカカガリの攻撃は単なる橋頭堡確保と陽動でしかなかった。後から続々と上陸してきた地球軍のMS部隊や海兵隊がカーペンタリア基地に襲い掛かり、そこの守備隊を次々に叩きのめしていったのだ。
 ザフトの司令官は遂にカーペンタリアの防衛を諦め、大洋州連合軍との合流を求めて基地を放棄して脱出を図った。まだ動ける部隊は次々に基地から脱出を始め、動けない部隊は地球軍に降伏する以外の道を無くしてしまう。
 しかし、司令官と共に脱出できた部隊は少なかった。上陸してきた海兵隊の展開能力は非常に高く、また海兵隊所属のサンダーセプターやスティングレイ攻撃機は地上からの要請に応じて行う対地支援攻撃に卓越した技量を発揮していた。
 これらの航空機や車両の援護を受けながら海兵隊は各種施設を次々に制圧していた。ザフトの守備隊が果敢に抵抗してきていたが、師団規模で上陸してきた海兵隊を食い止めるには彼らは余りにも少なく、また装備も弱体に過ぎた。守備隊が急ごしらえで構築した守備陣地は戦車砲によって吹き飛ばされ、歩兵分隊が担いでいる携帯ATMによって短時間で制圧されていく。戦車や火砲、歩兵用ミサイルランチャーが少ないザフト歩兵の常であるが、せいぜい重機関銃程度しか持たないカーペンタリア守備隊に対抗できるような相手ではなかった。重装備をMSに偏重した為に通常兵器が極端に不足するザフトの弱点は最後まで克服されずに終わったようだ。

 だが、基地施設に突入した海兵隊はそこで妙な事態に直面する事になった。ジブラルタルやビクトリアといった拠点ではあまり例がなかった事だが、ここではおよそ戦闘員とは思えない兵士が銃を手に防戦してきたのだ。
 建物から引っ張り出してきたらしい機材を積み上げて即席のバリケードを作って銃を手に乱射してきているが、突入してきた海兵たちからすればまるで訓練されていない適当な射撃であり、ただ闇雲に撃ちまくっているだけに過ぎない。鏡で敵の位置を確かめていた海兵は敵の銃撃が止んだ瞬間に身を出し、狙っていた場所に続けて銃撃を叩き込んだ。そこには慌てた様子で弾装を交換しようとしていた兵が居て、放たれた銃火に身体を貫かれて弾かれたように後ろに飛ばされて、近くの仲間が慌てて引き摺っていくのが見える。
 銃を取っている者の中には年頃、と呼ぶにも足りないような若い少女の姿もある。泣きながら銃を撃っているのは恐らく戦闘要員ではないのだろう。カーペンタリアはザフトにとって唯一とも言える完全な後方兵站基地であり整備工廠であったが、同時に福利厚生施設が集中した休息地でもある。そういった施設に勤めていた事務員やウェイトレスなのだろうか、などと考えて海兵は撃ち返した。
 肩を撃ち抜かれた少女が崩れ落ち、母親を呼びながらもがいている。それを助けようと周囲からの銃火が俄かに激しさを増し、遮蔽物から飛び出した兵士が少女のベルトを掴んで物影へと引き摺っていこうとしたが、身を晒した兵士目掛けて周囲から多数の銃撃が集中され、もがいていた少女と助けに出た兵の双方をズタズタにしてしまった。



 流石に基地内部での戦いとなると航空機の支援も受けづらく、大量の瓦礫のために車両の移動も困難となってきて、更に敵に地の利があって手を焼きだし、遂に攻撃部隊はサーモバリック弾頭を投入し始めた。これは弾頭から周囲に固体燃料を放出し、これに引火させて大爆発を起こさせるという面制圧兵器である。これをロケットランチャーから発射して敵の陣地ごと吹き飛ばしに出たのだ。
 この攻撃が始まったことでザフト守備隊の運命は一気に凄惨な物となった。何しろ遮蔽物に身を隠していてもたった1発のロケット弾の爆発で何が起きたのかも分からないうちに全員が焼き払われてしまうのだから。なまじ破壊力が大きい為に壊してはいけない物も吹き飛ばしてしまうので使用を躊躇っていたが、ザフトの激しい抵抗がこれを使わせてしまったのだ。



 一方、脱出した部隊も無事ではすまなかった。基地を放棄した車両やMSは南へと向かおうとしたのだが、そこには大洋州連合の戦車師団が待ち構えていたのだ。旧型主体とはいえ数個師団の大軍であり、これに迎えられたザフトは最初困惑してしまった。どうしてこんな所に大洋州連合の部隊が居るのだ。
 そんな彼らの疑問に答えるように、1つの通信が目の前の大洋州連合軍からもたらされた。それを受け取ったカーペンタリア基地司令官は驚愕し、そして何が起きたのかを悟って身体を怒りに震わせた。

「脱出の道は無い、降伏せよ、交戦規則にのとった捕虜待遇を約束する、だと。奴ら、裏切ったのかっ!」

 大洋州連合はとっくに地球軍と手を組んでいたのだ。自分たちはそれに気付かぬままに踊らされていた愚か者だったという事なのだろう。脱出してきた部隊は戦車や自走砲、ロケットシステムに航空機という大洋州連合軍の布陣を見て完全に怯えており、とても戦闘など出来そうも無い。交戦規則を出してきた辺りに大洋州連合軍の引け目のような物が感じられた。
 司令官は通信文を怒りに震えながら握りつぶしたが、遂にはガクリと肩を落として降伏に同意した。このまま地球軍に降伏するよりは、まだ此方に降伏した方が部下と自分の身の安全を図れると考えたのだ。それに、もうこれ以上部下を死なせる気にはなれなかった。降伏の意思を示した司令官に部下たちが反対の声を上げたが、司令官は彼らを身振りで制止し、そして悔しそうな声で彼らに自分の内心を明かした。

「私とて勿論悔しい、だが、手持ちの戦力で何が出来る、どうやって戦うのだ?」
「ですが司令官、ザフトの最後の意地を見せるべきではないでしょうか!」
「我々を見捨てている本国の為にかね?」

 司令官の言葉に、部下たちは衝撃を受けたような顔で言葉を無くし、そして誰もが肩を落としたり悔しそうに顔を背けてしまった。そうなのだ、もう地上軍は本国から見捨てられた棄兵でしかないのだと、彼らもようやく思い出したのだ。
 自分たちを見捨てた本国のために命を賭けて最後の抵抗をするのか、そう言われてなお抵抗の意思を持続させられるような者は珍しいと言えるだろう。まして、ここまで情勢を悪化させたあの議長のためにだ。


 こうして、ザフト地上軍の最後の部隊は消滅し、ここに地上における本格的な戦闘は終結したことになる。



 脱出した司令官の降伏を受けて、カーペンタリアに残って戦っていた部隊も地球軍に投降していった。特にカーペンタリアに大勢収容されていた傷病兵は逃げる事も動く事も出来ず、逃げ惑って脱出する機会を見出せなかった未熟な兵士たちと共に地球軍に降伏した。しかし、ここで彼らはこれまでのザフトの地上での蛮行の数々を復讐という形で返される事になった。

「降伏だ、ふざけるな。俺たちの国を散々荒らしてきたくせに!」
「貴様らのせいで、何人の仲間が焼き殺されたと思ってやがる!」

 地球軍の将兵はザフトに対して激しい憎悪を抱いている。ブルーコスモスが宣伝してきた成果とでも言うか、彼らは人間ではなく、宇宙から侵略してきたエイリアンだというプロパガンダは国を追われた人々や戦火で家族や友人を無くした人々には大変効果的であり、彼らはブルーコスモスなどに身を投じてコーディネイターへの復讐を行う事も多い。
 今回でもそういった兵士たちが暴発し、降伏したコーディネイターの将兵を虐殺して回っていた。捕虜の大半は逃げる事も出来ない傷病兵であり、それらに対して兵士が銃を向けるのだから、虐殺という他は無いだろう。それまで病人や重傷者が入っていたシェルターや病院に入れなかった負傷者を収容していた施設が瞬く間に死体に埋め尽くされ、助けを求める悲鳴と断末魔の絶命が木霊していく。
 そんな中で一際異彩を放っていたのがアルビム連合、その中でもアーモニア出身の部隊の凶行であった。彼らは母都市が破壊されて大勢の犠牲者が出た事を知らされており、ザフトへの復讐を望む者が多かったのだ。その復讐心からブルーコスモスと同じようにザフト将兵に銃口を向ける者が続出したのである。


 この暴走を知ったゴームレー大将は憲兵隊にカーペンタリアの治安確保を命じると共に、一部のMS隊にも治安出動と称して混乱の鎮圧に当たらせた。この騒動で地球軍側にも少なからぬ犠牲者が出る事になり、カーペンタリア攻略戦は最後の最後で汚点を残したと言える。
 この事件を知らされたササンドラ大統領は地球軍の規律の乱れに頭を痛めたが、口に出しては何も言わず、命令違反を犯した将兵を軍法会議で裁くという軍部の報告を了承するだけに留めた。そして補佐官のセレンソンと2人っきりになったのを確認して、彼に事態の深刻さを語った。

「まさか、ここまで軍内部の規律が乱れているとはな。降伏した捕虜を命令に背いて虐殺、本来ならば考えられない事だ」
「無理もありません、訓練が足りない兵士では感情を制御できませんから。特に捕虜の扱いは特別な訓練を受けた専門部隊でないと」

 同様のケースは過去に幾度も起きている。AD世紀の頃からずっと問題になっている事だが、人間は圧倒的優位に立つと相手に対して極端に高圧的になり、どんどん暴力的に、そして残虐になっていくのだ。実際にそれの検証実験が行われ、それが事実である事が判明している。それが分かった各国の軍隊では捕虜を取り扱う為に専門の訓練を受けた部隊が編成されたのだが、数が少なくて間に合わない事も多く、事件を防げない事も多かった。
 今回のケースはこれに復讐心が加わった事で起きた事件であったが、収容施設には殊更気を使わなくてはいけないという事でもある。もし復讐を望む兵が捕虜収容所に居れば、また事件が置きかねないのだ。特に傷病兵は此方の病院に入れる事になる為、病院内にも同様の配慮が求められてしまう。その事を考えただけで頭が痛くなってくるのだ。

「だが、これで地上のザフトは壊滅した訳だ。まずは喜ぶべきなのだろうな」
「はい、各地に残っている残党もゲリラ程度の事しか出来ませんし、いずれ殲滅されるでしょう。これで我々は全力を宇宙に向ける事が可能となります」

 セレンソンの言葉にササンドラは頷いた。物事は悪い面ばかりを見ても仕方が無い、良い面もあるのだからそちらを考えれば良いのだ。気持ちを切り替えたササンドラは、これからの事に思考を向けだした。




 現在の世界で唯一の中立国となっているスカンジナビア王国。立地条件にも恵まれて周辺国から無視される事で中立を保っているこの国に、1人の厄介な客人が足を下ろしていた。彼女が長い黒髪を風に揺らせてタラップを降りると、降りた先に数人の護衛らしい男を伴った女性が近付いてきた。

「連絡を受けた時はまさかと思ったけど、本当に生きていたのねラクスさん」
「はい、私も中々にしぶといようでして」
「そのようね、それで、今になって私に何の用なのかしら、公式には今プラントに居る筈の歌姫が?」

 やや皮肉げなメッテマリットの言葉にラクスはすこしムッとしたが、顔には出さずに素直に頭を下げた。

「実は、今回は無理をお願いしようと思いまして伺いました」
「それは分かってるわ。まあ、とりあえず車に乗りなさい。詳しい話は私の私邸で聞くとしましょう。ここに居る間の安全は私が保証してあげるわ」
「ありがとうございます、メッテマリット様」

 メッテマリットの配慮に感謝して、ラクスは彼女に続いて歩き出した。この後メッテマリットは私邸でラクスからとんでもない事を求められ、暫し絶句する事になる。ラクスは連合諸国の要人と話がしたいといってきたのだ。それも、早急に。






 ザフトでは遂に待望の新型戦艦がドック内での艤装を終え、竣工式が行われようとしていた。それは地球軍のアークエンジェル級戦艦の存在を確認してからザフトが「敵が装備する兵器と同種の兵器は対抗上必要」という軍事常識を元に要求していた艦艇で、アークエンジェル級戦艦が地球軍で量産されて自分たちに大きな犠牲を強要するようになった今では切望された艦となっている。何しろアークエンジェル級に単独で対抗可能な戦艦はザフトには1隻も無かったのだから。
 完成した戦艦は1番艦をネームシップとしてミネルバ級と呼ばれることになっており、既に2番艦、3番艦の建造も始まっている。ただ戦時という事もあって建造を急いだ為、本来の設計からは省かれた機能も多い。
 最大の特徴は船体中央に設置されたローエングリンにも匹敵する陽電子砲タンホイザーの採用だろう。これにより、ローエングリンの破壊力にはどうする事も出来なかったザフトにもようやく対抗手段が出来た事になる。
 艦長はかつてエターナル級3隻を率いていたタリア・グラディス隊長が就任し、グラディス隊の旗艦として運用されることになっている。
 ミネルバのそれまでのザフト艦とは全く異なるフォルムがドックから曳船に曳かれて出てきたのを見たザフト高官や国防委員たちは、その姿に歓声を上げてこの艦がこれからの戦いで大きな力となってくれる事を期待したが、その中に混じっていた歴戦の指揮官たちは彼らのようにはしゃぐ気にはなれなかった。
 地球でアスランたちの上官として活躍していたジュディ・アンヌマリー隊長もここに居たが、彼女は完成した新鋭戦艦の戦力には期待していたが、これが戦力化できるまでザフトは持つのかと冷めた目でミネルバを見ていた。

「完成したのは良いけれど、地球軍の攻勢までに配備できるのかしら。公試運転中に敗戦なんて事になったら何の意味も無い」

 戦艦とは竣工してもすぐには戦力化出来ない。何処かに異常が無いか、ちゃんと動くかどうか、そして乗組員の訓練などで可能なら半年から1年程度のテストを経て配備するものだ。今は戦時下なのでそんな悠長な事は言ってられないが、それでも3ヶ月程度は欲しい。だが地球軍の攻勢は早ければ2ヶ月以内と見られており、それまでに戦力化出来る可能性は低いだろう。もしかしたらあの艦の初陣は、プラント本土決戦かもしれない。
 そんな事を考えて不満そうな顔をしているジュディに上機嫌そうな顔でヘルマン・グルードが声をかけてきた。

「どうしたアンヌマリー隊長、嬉しく無さそうだな」
「グルード議員、いえ、そんな事は……」
「顔に出ていたぞ、君はミネルバの完成を喜ばないのかね?」
「……遅すぎるのです、完成が。あれが戦場に出る頃には、ザフトはもう戦えません」

 地球でナチュラルの恐ろしさを存分に思い知らされたジュディだ。あの大軍が宇宙に上がってきたら、ザフトの現有戦力では止められまい。例え自分たちが最後の一兵まで死力を尽くして戦ったとしても、だ。
 ナチュラルは既にMSとの戦い方を身につけている。彼らはMSの運用を何時の間にか自分たちの物とし、更にMAや艦艇でMSと戦う手段まで身に付け出していた。兵器の性能と兵士の個人能力だけで戦うしかないザフトに対して戦闘システムそのものので対抗してきた地球軍の力は、もう自分たちにどうにかできる物ではない。
 ジュディの無念そうな言葉に、グルードも押し黙ったまま視線をミネルバへと向けた。国防委員として軍政を担当してきた彼にもそれは痛いほど分かる。だがそれを認めるわけにもいかないのが彼の立場だ。

 黙りこんだままじっとミネルバを見ているグルードであったが、そんな彼を不審に思ったのだろう、同じ評議会議員のジェセックが声をかけてきた。

「どうしたグルード、浮かない顔だな」
「私は何時もこんな顔ですよ、ジェセック議員」
「まあそうだが、期待の新鋭艦の完成式典の割にはと思ったのでな」

 温和なジェセックは気軽に話しかけてくるが、グルードは先のジュディとの話が尾を引いていてどうにも気が乗れないでいる。ジェセックは仏頂面のグルードと暗い表情のジュディを見てどうしたのかと首を傾げたが、その事には深くは関わらずに別の話題を振った。

「パトリックが生きていたら、この艦を見てどういう感想を口にしたかな?」
「議長が生きていたら、今頃戦争は終わっていたでしょう。そうなればあの艦は本来の設計で完成されていたでしょうな」
「あいつが生きていたら、か。もし本当に生きていたら、君ならどうするね?」
「勿論馳せ参じますとも。あの方がまだ生きておれば、我々は大勢の若者を死地に送り込まずにすんでいた」

 グルードが懐かしそうな顔で過去に思いを馳せ、それを聞いていたジュディもパトリックが議長だった頃を思い出してしまった。あの頃は自分たちはアラスカを攻撃したりパナマを攻撃していたのに、今ではプラント本土を脅かされそうになっている。

「あっという間でしたね、議長が亡くなられてから、戦線が崩壊するのは」
「本当にな。今だから言えるが、アラスカで戦争を終わらせようとしていたザラ議長は正しかった」
「その話は聞いた事がありますが、本当だったのですか?」
「ああ、当時は私を含むごく一部の人間だけしか知らされていなかったがな」

 公表すればプラントにどのような混乱が起きるか予想もつかなかった。何しろあの頃はまだ勝っていたのだから、勝っているのに此方から一方的に譲歩した講和を持ちかけるなど何事か、という反対が噴出すのは目に見えていたから。だからパトリックは信頼している僅かな人間だけで事を進め、結果的に講和までの道筋を完成させてしまった。
 パトリックが生きていればパナマ戦の結果に関わらず戦争は終わっていただろう。あの頃はどうして此方からと思わずにはいられなかったが、今にして思うとパトリックはザフトの限界を正確に見切り、限界点を超える前で勝ち逃げしようとしていたのだ。そのためなら多少譲歩しても止むをえないと判断したのだろう。
 

 昔を懐かしむグルードとジュディであったが、それを聞いていたジェセックはこの2人に対して1つの確信を持った。この2人とは手を組めると。特にグルードはパトリックから講和の工作を打ち明けられていたというのなら、彼は現実が見えている人間だ。
 ジェセックは2人を人気の無いところに誘った。2人はその誘いに怪訝そうな顔をしたが、他ならぬ評議会の重鎮であるジェセックの誘いとあっては断る事も出来ず、黙って彼についてきた。
 そして人気の無い場所でジェセックから自分たちの計画を打ち明けられた2人は、最初それを何かの冗談だと笑ってしまった。まさかパトリックが生きていてプラントの何処かに監禁されているだの、犯人はラクスでは無い誰かだのと、そんな与太話をどうして信じられるだろうか。
 だが、言っているのはパーネル・ジェセックであり、仲間には本国防衛隊司令のユウキ隊長まで加わっているとあっては、与太話で済ませられない物がある。

「本当、なのですか、ザラ議長が生きているというのは?」
「確証は無い、だが状況証拠を集めて分析した我々は、パトリックは死んでいないという結論に達したのだ。司法局内のデーターの改竄など、これに関わっている相手は決して個人レベルではない。もっと大きな組織が絡んでいる」
「ですが、何故そんな事を。講和の動きを掴んだブルーコスモスの仕業ですか?」

 ジュディには理解できなかった。戦争が終わろうとしているのに、それを阻止して利益を得るような組織が有るというのだろうか。犯人がプラントの中に居るとは思いたくない彼女はブルーコスモスの可能性を出したが、ジェセックはそれを否定した。

「いや、ブルーコスモスはプラント内にそこまでの力を持っていない。パトリックを拉致したのは、恐らくコーディネイターだ。そうでなければプラント内を自由には動けまい」

 地球軍のスパイという可能性もあるが、それならば拉致などという面倒な事はすまい。何者かは分からないが、敵は生きたパトリックに用があったのだ。そしてパトリックを排除する事で講和を妨害したがっている。この事件以降の世界の流れはその組織の思惑に近いものとなっている筈だ。
 そしてジェセックは、2人に協力を求めた。パトリックを探し出して救出し、地球連合とも一度講和の話し合いをする為に。プラント内にはまだパトリックへの支持は根強く残っており、彼ならば国内の不満を押さえて不利な条件での講和を市民に納得させられる筈だと。いや、それ以外にプラントを破滅から救う道はもう無いだろう。

「手を貸してくれないだろうか、プラントを救う為に」
「……本当に、救えるのでしょうか?」
「グルード、それは分からない。だがこのまま戦い続けて破滅するだけよりは、まだ可能性があるとは思わんか?」

 パトリックが生きている確証は無い、努力を重ねても無駄に終わるかもしれない。だが、それでもこの戦争に勝てるという可能性に賭けるよりはまだ可能性があるのだと、ジェセックは語った。このまま戦い続けても待っているのは確実な敗北だけ、例えジェネシスが完成して地球を焼き払えたとしても、残った地球軍が復讐の念に燃えてプラントを滅ぼしに来るのは間違いない。
 そんな未来を回避できるのなら、賭けてみるのも悪くは無い。グルードもジュディもジェセックの誘いに対してそう思い、彼の手を取った。だが、ジュディは1つだけ気になっている事を問いかけた。

「ジェセック議員、アスラン・ザラは加わっていないのですか?」
「いない、彼には声をかけていないからな」
「何故ですか、彼ならば当然仲間になってくれる筈ですよ」
「敵も当然そう考えるだろう。敵が此方の動きに全く気づいていない筈が無いが、まだ細かい事は把握していまい。ならばどうするか、分かるだろう?」
「アスラン・ザラに此方が接触するのを待っている、という訳ですか?」

 アスランは敵から見れば丁度良い撒き餌であり、此方からは敵の目を欺く為の囮なのだ。だからアスランには声をかけることが出来ない、此方の動きを敵に教える事になってしまうから。
 この日を境に、パトリック救出計画は一気に進む事になる。また、ジュディはアスランはともかくとして、彼に近い人間の中で誰かを味方に引き込んでおくべきではないかと具申し、ジェセックの誰か心当たりがあるかとの問い掛けに自身ありそうに頷いて見せた。それを見てジェセックも頷き、ジュディはザラ隊の中で最も思慮深くて話がし易い相手に話をする事になる。




 このミネルバの竣工式が行われている宙域の傍では、なんとも奇妙な姿の機体がテストを行っていた。それはMSというよりもMAに近い姿であり、それまでのザフトMSとは似ても似つかない異形のフォルムとなっている。
 それは上半身はジンに近く、右腕には重突撃機銃を持ち、左腕にはゲイツRと同様のシールドを装備している。だが下半身には脚部は無く、スラスターユニットと閃光を遮る遮光シールドがあるに過ぎない。それはMSとMAとの奇妙なキメラとでも表現するべき機体であった。
 これこそが開発局第3課がクローカーの残した図面を元に現在の情勢にあわせて再設計を行った機体、ガルムだ。クローカーの設計した遺産はジンよりも更にプラント防衛任務に特化した、宇宙専用機だったのである。
 これを駆っていたアスランは思いのほか良好な操縦性能に素直に感心していた。他のザフトMSには見られない充実したサポートシステムで操縦は極めて楽だ。ただ加速Gは自分のようなベテランならともかく、新人には少々キツイかも知れない。だがこの速度がガルムの防御力なので、これを落とす訳にもいかない。
 ガルムを幾度か加速させていたアスランの元に、観測班から射撃テストの要請が入った。それを受けたアスランが待っていると標的が4つ射出され、それに向けてアスランが訓練弾を連続発射する。MSの上半身を持つために射撃は手持ち武装だが、スカート部には多目的ランチャーや対艦ロケットランチャーなども据え付けられている。
 これらの標的を容易く射抜いたアスランは、ガルムの想像以上の使い易さに感心してしまっていた。射撃もコンピューターのサポートを受ける事で実に合わせやすいのだ。
 テストを終了して格納庫に戻ってきたアスランは、やってきた技官と笑顔で握手をし、そして整備ベッドに固定されているガルムを見上げた。

「良いMSを作りましたね、実に乗り易いです」
「加速性能が最大の売りですが、どうですか?」
「MA並の速さですね。ただ、MSに慣れたパイロットには違和感が有ると思います。新兵を乗せてこれで戦わせるなら問題は無いと思いますが」
「元々がジンとメビウスを融合させたような機体でしたからね。脚部が無い分安いんですから、多少は我慢してください。その代わり操縦性は保障しますよ」
「それは認めますよ。良くこんな機体を作れたものです」
「いや、それが恥ずかしい話なんですが、このMSのサポートシステムは地球軍の物をコピーした物なんです。鹵獲したストライクダガーのシステムを元に此方のシステムを改良、と言うより真似て作ったんです。ナチュラルでも使えるようにできるなら、新兵でも扱い易いMSが作れるだろうという事で」

 なるほど、そういうことかとアスランは納得した。ストライクダガーの操縦性の良さはカーペンタリア基地でも評判であり、ジンから鹵獲機への機種転換を求めるものまで出てきた始末だ。
 ナチュラルのMSを真似て新兵用の機体を完成させる。合理的といえば合理的だが、確かに情けない話ではあった。ようするにこの機体はストライクダガーのように大半の操作を機械がサポートしてくれる訳だ。ナチュラルはそうしないとMSを動かせない訳だが、そのシステムを流用すればコーディネイターなら新人でもそれなりに動かせるようにはなる。
 だが欠陥も無いとは言えない。機体パーツの実に6割ほどをジンからの流用部品に頼っている為、形状は似ていてもオリジナルのガルムと比べるとどうしてもパワーや運動性に難がある。更にABシールドが追加されている為に機体バランスも若干悪化しており、それが運動性を低下させている。
 ようするに運用はMAに近いという事だ。MS相手には格闘戦はなるべく避け、接近されたら申し訳程度に受けてたってすぐに距離を取った方が良い。利点としては多少でも格闘戦が可能な為にMSに接近されても無力ではない事、MAのように加速力がそのまま防御力に直結しているところだ。
 アスランのような超一流のパイロットからすれば物足りない性能ではあるし、MSに慣れた感覚ではどうにも違和感が拭えないのも事実であるが、確かに新兵や訓練生にはこの機体のほうが良いかもしれない。慣れないパイロットには格闘戦は危険なので、このような格闘戦は危険という機体の方が無理をさせなくて済むかもしれない。やりたくてもやれないのでは自然と避けるようになる。基本的に格闘戦で敵を倒すというのは熟練者向けの戦法であり、普通は射撃戦をするべきだからだ。
 これ以外にもアスランはいくつか注文をつけた。特に問題となったのが機体構造がやや脆い事だ。本来の設計では完全な新規設計のフレームを採用していたのだが、ガルムはこれを変更してなるべくジンのパーツを使っている為にやや強度が足りていない。この辺りは今後補強が必要となるだろう。他にもダガー系を相手にするには火器がジンの重突撃機銃では火力不足である事、推進剤タンクがやや小さく、航続距離が短い事などが上げられている。

 これらの意見をボードに書き取った技官はなるほどと頷き、これを参考に改良した2号機をすぐに組み上げてテストに出しますよと約束してアスランの傍から離れていった。パーツの大半がジンなどの流用なので試作機の組上がりが信じられない程に早いのもガルムの特徴と言えるだろうか。
 テストを終えたアスランは身支度を整えると学校に戻ろうと軍港からアカデミーに移動しようとしたが、そこでアスランは懐かしい顔に出会った。

「ユウキ隊長じゃないですか」
「うん? ああ、アスランか、どうしたこんな所で?」

 ユウキは自分を呼ぶ声に振り返り、アスランの姿を見て表情を緩めた。

「暇を持て余してるので、開発局に協力しているんです。上層部はあっさりと許可を出してきましたよ。ユウキ隊長は?」
「私は本国防衛隊司令という名誉職だからな。君と同じように暇を持て余してる身だよ」
「ユウキ隊長ほどの人が、勿体無い」
「ははは、まあ時代の流れに置いていかれた男だよ。今はエザリア派の天下さ」

 ユウキは過去の地位には特に未練が無いようで、仕事が減って楽させてもらっているなどと冗談まで口にしている。それはアスランも同じなので窓際族同士、暫し話に花を咲かせていたが、暫くしてユウキが表情を少し曇らせてアスランにとんでもない話を切り出してきた。

「ところでアスラン、実は君に1つ教えておきたい事がある」
「何ですか、改まって?」
「……実は、先の評議会で決定された事なのだが、アカデミーの学生の繰り上げ出陣が決定された。今度は前回の様に訓練が進んでいる者のみに限定ではなく、在校生全員だそうだ。プラント中のアカデミーや訓練校からおよそ30万人ほどが出征することになる。地球から上がってきた兵が中心となるだろうな」
「ちょっと待ってください、在校生全員って、14歳の子供も居るんですよ。これまでの最年少は14歳で、それもあの時のみという限定での事ではなかったのですか!?」
「プラントは決戦兵器と位置付けたジェネシスの完成まで、とにかく敵をプラントに近づけないという戦略を採用したのだ。言い換えるなら、ザフトは後数ヶ月の間全滅しない事が任務となったという事だ」

 冗談ではない、ザフトの兵士に評議会は死ねとでも言っているのだろうか。十分な訓練もされていない兵士が戦場で役に立つとでも思っているのだろうか。つい最近になって入学してきた14歳の最年少の志願兵などはまだ何も学んでいないというのに。
 アスランはこの評議会の決定に激怒したが、それは空しい怒りでしかない。彼には上層部の決定に逆らう権限は無く、言われたとおりアカデミーの学生を全て前線に送る事しか出来ないのだ。
 更に地球から上がってきて再訓練を受けている兵士たちも前線に送られる事になる。此方は学生に比べればまだマシと言えるが、宇宙に慣れる時間も貰えずに前線に出なくてはいけないとは、酷い話だ。

「ジェネシスは元々は脅しの為に建造していた筈、それが今では最後の頼みの綱ですか。エザリア議長は地球を焦土と化すつもりなのですか?」
「そのようだ、議長はあれを発射するつもりでいる。流石にいきなり地球に撃つ事は無いだろうが、恐らく最初に狙うのは月だろうな」
「プトレマイオス基地、ですか」

 それは分からないでもない、プトレマイオス基地こそは地球軍の宇宙における最大拠点であり、あそこを無くせば地球軍は宇宙での展開能力を大幅に削がれる事になる。輸送船や工作艦だけでは艦隊を維持できないのだから。
 だが最近の地球軍は月の裏側にあるダイダロス基地の拡張を行っている。此方にも既に建艦ドックや各種生産プラント、兵士たちの休息に必要な宿舎や慰安施設が建設されて一部が稼動していると聞く。プトレマイオス基地ならばプラントから破壊する事も可能だろうが、此方は手を出す事が出来ない聖域にあるのだ。
 プトレマイオス基地を潰しても地球軍が止まらなかったら、エザリアはどうするつもりなのだろうか。このままではパトリックでさえ躊躇っていた最悪の状況、種族の存亡を賭けた殲滅戦に突入してしまうのではないのか。アスランは言い知れぬ不安に囚われてしまった。



後書き

ジム改 ミネルバ完成、でも宇宙用限定、インパルス運用能力なし!
カガリ 普通の戦艦だろ、それじゃ。
ジム改 だから普通の戦艦なんだってば。ザフト初めての本格的な戦艦だ。
カガリ 一応タンホイザーなら何でも沈められるのか?
ジム改 おう、当たればヤマト級だって沈むぞ。
カガリ ふん、ローエングリンならオーブ軍なら駆逐艦でも装備してるぜ!
ジム改 変わりにMS運用応力はアレだけどな。
カガリ 良いんだ、オーブの独自色があれば!
ジム改 ならばスーパーメカカガリでも量産するか、同種の兵器はまず出てこないぞ。
カガリ あんな物量産したら国が傾くわ!
ジム改 いや、あんな物だが買いたいという国はある。大西洋連邦とか。
カガリ …………
ジム改 アレだけ強ければM1が20機分のコストでも割に合う、と言えるのだ。
カガリ 理不尽だ、つうかなんでアレ出撃してるんだよ?
ジム改 ユウナの判断だ。オーブ地上軍はボロボロだが、アレなら大活躍できるからな。
カガリ 国に帰ったらシメてやるう!
ジム改 まあ好きにしてくれ、それでは次回。パナマからの打ち上げ準備が進む第1、第2艦隊。フラガはすぐにアークエンジェルには戻れず、アメノミハシラで艦隊の打ち上げまで防衛の任に就くことに。プラントでは地球艦隊の打ち上げ阻止を目論んで艦隊を送り込もうとしていた。だが、これに参加する予定のイザークの元に送られてきた補充のパイロットは、イザークを精神的に追い詰める危険人物であった。次回「悪夢の始まり」でお会いしましょう。

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