第160章  我が城


 

 アメノミハシラにザフトの艦隊が迫る。それを知った地球軍は万全の迎撃態勢を整えてこれを迎え撃とうとした。アメノミハシラからは艦隊が出撃し、周辺からも次々に部隊が集まってその防衛線を強化していく。
 そして更に幾つかの部隊はアメノミハシラに到着する前のクルーゼ艦隊を攻撃していた。目的地を読み切られていたクルーゼ艦隊は敷設されていた機雷によってアメノミハシラへの航路を制限されてしまい、地球軍の許したルートでの攻撃を余儀なくされたのだが、その途中を付近を航行していた遊撃部隊のミサイルによる一撃離脱攻撃に晒されたのである。
 クルーゼ艦隊はアメノミハシラの防衛線に到達するまでに実に6回ものミサイル攻撃やMSやMAの攻撃を受け続け、12隻あった艦艇は10隻にまで減らされる事になっていた。更にアメノミハシラを守る外周部の早期警戒衛星に探知されたようで、現在は迎撃衛星から出撃してきたファントムやミサイルの攻撃に晒されていた。
 カリオペの艦橋から周囲で起きている戦闘の光を苛立たしげに見ていたクルーゼだったが、それ以上に大変だったのがロベルト艦長ら現場指揮官たちだった。敵の攻撃は少数による波状攻撃となっていて、これに対する迎撃対処でかなり疲労していたのだ。しかも何かしら被害を受けていてその対処にも追われている。


 クルーゼは自分たちがここまで叩かれたのは此方の動きが筒抜けだからだと看破はしたものの、今ここで打てる手は無いにも等しい。このままアメノミハシラに攻撃を仕掛けて戦場を離脱する以外に手はなかった。それに、失われた2隻のローラシア級程度ではクルーゼは特に困ってはいない。彼が期待をかけているのは自分のカリオペと、2隻のエターナル級に搭載されているMSとMAだからだ。
 カリオペの艦橋に立つクルーゼの元に次々に報告がもたらされる。既に敵艦隊の布陣は偵察機からもたらされており、その戦力は流石のクルーゼも冷や汗を隠しきれないほどのものであることが分かっている。

「敵艦隊、アメノミハシラ正面に展開中、戦力は戦艦6隻、駆逐艦32隻、空母4隻、その他にMS、MA多数が確認されています」
「周囲から我々に迫る艦隊が2つ確認されています。未確認の物も有ると思われます」
「後続のハーヴィック隊、遅れています!」

 送られてくる報告は自分たちが包囲されて孤立の危機にあることを教えている。クルーゼの隣に立つアンテラも流石に顔色を変えてクルーゼを見ているが、クルーゼは撤退の指示を出そうとはしなかった。

「MS隊の出撃準備は?」
「全艦整っています。ミーティア、ヴェルヌの準備も完了。ですがクルーゼ、これでは袋叩きにされます」
「ユーレクも居るし、我々だけなら何とか突破できるだろう。念のため、君のジャスティスと私のプロヴィデンスも準備させてある。心配するな」
「……了解しました」

 自信がありそうなクルーゼの態度を見てアンテラは渋々引き下がり、情報のまとめをする為に通信席の方に歩いていく。それを見送ったクルーゼは艦長に今まで分かっている情報を元にした状況図を正面の戦術スクリーンに表示させ、現在の敵味方の位置関係を確認した。
 こうやって図案化すると、正面の敵艦隊がいかに大軍かが分かるというものだ。実際のところクルーゼもその大軍を前にして少々怯んでいたが、そんな内心を表に出すような男ではない。色々と問題の多い男だが、指揮官として必要な物はしっかりと持っているのだ。




 そして程なくして両軍は激突した。クルーゼ艦隊はアメノミハシラから出撃してきた艦隊に正面から突入するようにして突っ込んできて、地球艦隊はこれをMSとMAを出して迎え撃とうとしたのだ。
 だが、その前にまず地球艦隊から一斉にミサイルが発射された。長距離対艦ミサイルの誘導性能はあまりアテにはならないが、数を撃てば確率勝負で何発かは当たるかもしれない。
 だが推進剤の光を放ちながら飛んでいったミサイルは、ザフト艦隊の放った迎撃ミサイルとデコイ、そして近接防御システムによって大半が空振りに終わってしまった。それを見た地球艦隊の司令官は迷う事無くMS隊とMA隊を前進させ、艦隊に広がって砲戦準備をするように指示を出す。
 命令を受けたダガー隊とファントム、コスモグラスパーはザフト艦隊に襲い掛かろうとしたが、彼らはザフト艦隊に到達する前に艦隊から前に出てきた6機の大型MAの迎撃を受ける羽目になった。それらから一斉に放たれたミサイル郡が迫るダガーやファントムに襲い掛かってこれを次々に損傷させ、あるいは破壊していく。そのミサイルの雨を潜り抜けたダガーのパイロットが急いで機種検索をかけ、その正体を知って顔色を変えてしまった。

「ミ、ミーティア、そしてヴェルヌ。これがあの化け物MAか!?」

 ミーティアとヴェルヌは地球軍から化け物呼ばわりされているザフトの切り札だ。勿論撃破不可能というわけではなく、当たれば落とせるということが分かっている。実際にアークエンジェル隊が初めて遭遇したヴェルヌを撃墜しているし、それを皮切りにヴェルヌやミーティアは何度かの撃墜が報告されている。それは艦砲のまぐれ当たりであったり、MS隊が仕掛けた罠に飛び込んだ機体が四方からのビームに絡め取られて撃破されたなどであるが、それがある程度の幸運によってもたらされた勝利であった事は間違いないのだ。つまりこれらへの効果的な対策は未だに無いのが現状である。




 地球艦隊が出したMS隊がミーティアとヴェルヌに苦戦を強いられている間にザフト艦隊は戦場を駆け抜けて地球艦隊に迫った。ミーティアやヴェルヌとの交戦を打ち切って艦隊に襲い掛かってくるダガー隊もいるが、数が少ないので艦隊周辺に展開しているゲイツやフリーダムの餌食となった。
 そして敵艦隊との距離が詰まったところでクルーゼはMS隊を前に出した。直衛機を除くMS隊がザフト艦隊からずいっと前に出てきて地球艦隊に向かい、これを迎え撃つ為に地球艦隊から直衛機が出てきて乱戦に持ち込もうとするが、彼らは距離を詰める前に4機のフリーダム隊の砲撃に晒された。数が揃っているフリーダムが並んで一斉に行う制圧砲撃の威力は凄まじく、1機辺り5門の砲を駆使して作り上げられる弾幕は次々にダガーを捉えて撃墜していく。
 フリーダム隊が荒ごなしに敵機の数を減らして混乱させたところにジャスティス隊とザク隊が突っ込んだ。その数はジャスティス5機にザクが6機。核動力MSが一度にこれだけの数を纏めて投入されたのは極めて珍しい事で、数で倍以上のダガー隊を蹴散らしている。クルーゼはこの作戦の為に核動力MSを掻き集めてきたのだ。だからMSの所属はバラバラで、本国防衛隊所属だったりヤキン・ドゥーエ駐留軍所属だったりと所属マークが統一されていない。
 これに続いてゲイツとゲイツRで編成された本隊が突入して傷口を広げにかかるが、これにはダガー隊も互角に戦って見せて簡単には突破させないでいる。

 MS隊はよく敵を食い止めていたが、これが何時までも続く訳ではない。核動力機とは決して無敵ではなく、ダガー隊の群れに囲まれれば落とされてしまう事がこれまでの戦績から分かっている。クルーゼとしては敵機が此方に殺到してくる前にアメノミハシラを潰しておきたいと考えていた。あそこを潰せば地球の守りは一気に薄くなるからだ。

 しかし、このまま突破できるかと思われたクルーゼ艦隊であったが、地球艦隊の砲撃が始まった事で壁にでもぶつかったかのように前進を止められてしまった。MS戦では苦戦を強いられても、艦隊戦ではやはり数が多い地球艦隊に軍配が上がってしまう。クルーゼは遮二無二突撃して地球艦隊を突破しようかとも考えたのだが、余りにも濃密な弾幕を前にそれを断念した。

「流石に地球艦隊の砲撃は凄まじいな、弾の消費など気にしないように撃ってくる」
「あちらは準備万端で、此方はこれまでに大分弾を使ってますからね。これではキツイですよ」
「仕方があるまい、補給艦とのランデブーはここを突破した先だからな」

 地球艦隊のばら撒くようなビームや砲弾、ミサイルの使い方にアンテラが羨ましくてたまらないという感じに溜め息をつき、クルーゼが苦々しい声でそれに答える。流石のクルーゼも補給物資まではどうにも出来ないのだ。
 それでも直衛隊を突破したMS隊が艦隊に取り付いてこれを沈めだし、少しずつクルーゼ艦隊への圧力は弱まっていった。これでどうにか突破できるかと思われたのだが、そこで最初の変化が訪れた。新手の敵がアメノミハシラからやってきたのだ。

「クルーゼ隊長、敵の増援です。MSは極東連合のオリオン!」
「オリオン、あの面倒な奴か!」

 どうやらアメノミハシラには極東連合の部隊も居たらしい。オリオンは部分的とはいえPS装甲を持ち、対MS戦闘に特化した迎撃機として完成されている。1対1でぶつかればゲイツRでも苦戦を免れないという手強い相手なのだ。その犠牲として対艦攻撃には向かないのだが。




 極東連合の艦隊はアメノミハシラで第2線を作っていたのだが、大西洋連邦とユーラシア連邦の艦隊が苦戦しているのを見てMS隊を出してきたのだ。
 極東連合第2艦隊の近藤提督は旗艦ナガトの艦橋から戦いの様子を見ていたが、ザフト艦隊の凄まじい強さには感嘆してしまっていた。

「凄いなこれは。話には聞いていたがこれがザフトか」
「どうします、艦隊を前に出しますか?」
「いや、余り前に出るとかえって混乱を拡大するだけだろう。我々はここで敵を迎え撃つ事に専念しよう。だが、MSくらいは出しても良かろうな。それに……」
「それに?」
「情報にあったはずのもう1つの部隊が気になる。そちらの同行が分かるまでは動かぬほうが良いだろう」

 近藤は艦載機の一部を割いて第1線の援護をする事にし、それを部隊に通達した。それを受けたMS隊から20機ほどが前進してダガー隊の支援に入り、ゲイツやゲイツRに槍を構えて突入していく。
 これを迎え撃ったゲイツ隊は初めて戦うオリオンのダガーとは全く違う戦法に最初戸惑い、そしてそれは驚愕へと変わっていった。オリオンの持つ槍はゲイツの持つABシールドを容易く貫通し、盾ごと機体を串刺しにしてしまう。それを恐れて距離をとってもレールガンによる砲撃が飛んでくるのだ。オリオンの動きはM1並に速く、接近戦ではゲイツRでさえ苦戦を強いられてしまう。
 さらにオリオンの一部は槍とレールガンではなく、ビームライフルとミサイルランチャーを装備している物もある。こちらは中距離での戦闘に向いているようで、接近戦を仕掛けてくるオリオンの背中を守っているようだ。


 このオリオン隊の加勢を見たアンテラは自分が第2波を率いて出るといったが、これはクルーゼが却下した。第2波はこの防衛線を突破したあと、アメノミハシラを叩く為の戦力だ。それを余り消耗してはアメノミハシラを叩く事が出来なくなるのだ。
 だが、この事についてはアンテラはアメノミハシラにそこまで拘らなくても良いのではないかと言った。

「この作戦の目的はあくまで陽動です。アメノミハシラの破壊には拘らなくても良いのではないでしょうか。我々だけでは元々数が足りないのですし」
「……アンテラ、お前は何時も慎重論を主張するな」
「これでも貴方の補佐役ですから。ザルクには積極に動く人間ばかりでバランスが取れていませんし」
「それはな……」

 確かにザルクにはクルーゼを筆頭に戦いになると無茶をする傾向がある。そんな中でアンテラは慎重論を唱えて仲間に冷や水を浴びせて頭を冷やす役割を自らに課しているのだ。そのおかげで救われた事も幾度もあるので、クルーゼとしてもアンテラの意見を無視できない。
 少し考えた末に、クルーゼはアンテラの意見を入れて彼女にMS隊を編成して出撃することを許可した。


 アンテラはクルーゼの許可を受けて自らジャスティスに乗って出撃し、ゲイツR2個小隊6機を連れて戦場にと踊りこんだ。そして周囲で戦っている他のゲイツを纏めて敵のMS隊を突き崩しにかかった。

「落ち着きなさい、ゲイツRなら距離を取ればオリオンに優勢に戦えます。ゲイツ隊は対艦攻撃で突破口を切り開くように!」

 アンテラは砲撃力に勝るゲイツRにMS戦を任せ、敵艦相手には性能に劣るゲイツを回す事にした。クルーゼにはああ言ったものの、やはり艦隊を突破してアメノミハシラに一撃入れなくては彼の面子も立たないと思ったのだ。それに、そろそろ後続の部隊が突入してくる頃だという読みもある。
 前に出てきたオリオンの槍を横滑りで回避しながらシールドで柄を叩き落し、背負い式のビームキャノンを叩き込んで破壊したアンテラは、全機に無理をするなと指示を出して1個小隊を連れて敵の集まっているところに突っ込んでいった。





 アンテラの予想は当たっていた。この時ハーヴィック艦隊はクルーゼ艦隊と地球艦隊が激突している宙域を迂回してアメノミハシラに迫っていたのである。ハーヴィックは既に2機のミーティアを発進させて艦隊に随伴させており、このままアメノミハシラに突入しようとしていた。

「急げ、クルーゼが敵の主力を引き付けている間にステーションを落とす!」
「提督、正面に敵の新手の艦隊が居ます!」

 だがハーヴィック隊の前には本隊の後方で第2線を形成していた極東連合艦隊だ。前に出ずに後方で待機していた事が幸いし、ハーヴィック隊の動きに対応できたのである。しかし、此方の部隊は違う意味でクルーゼ隊よりも厄介な部隊であった。そう、クルーゼに子飼いのザルクの兵が居るならば、此方には元特務隊のパイロットたちが居たのである。
 イザークは今の所はヴェザリウスの艦橋にあって艦隊の指揮を取っていたが、様子を見ていたアデス艦長はイザークが出撃したくてしょうがないのを見抜いていた。

「ジュール隊長、本艦隊もこれより砲戦距離に入ります、宜しいですか?」
「構いません」

 実は艦隊指揮の事はさっぱり分からないイザークは、基本的に艦の事は全部アデスに任せているのだった。イザークはこうしてアスランの教えどおり艦橋に踏ん反り返っているだけである。
 実際にジュール隊の運営はフィリスが担当しており、後方事務全般はエルフィがやっている。そして艦隊行動全般はアデスが指揮しているのが実情であるので、イザークは文字通りのお飾りだったりする。今も艦隊はアデスが指揮し、MS隊はフィリスの指揮で既に出撃している。
 イザークとしては自分もインパルスで出撃したかったのだが、フィリスから隊長が軽々しく艦を離れるなと念入りに釘を刺されてしまい、仕方なくこうしてヴェザリウスの艦橋で我慢しているのだ。


 艦隊が砲戦を交わす前に、まずMS隊が激突した。オリオン40機ほどが艦隊から出てきて、これと激突するコースでフィリスのインパルスを先頭とするMS隊が向かっていく。その横にはジャックのゲイツRがつけていた。

「フィリス、こっちのが数が多いがどうする?」
「策を弄する余裕はありません、此方の半数は素人です」
「……ちっ、やるしかないか」

 ハーヴィック隊から出てきたMSは60機ほどと数では5割り増しだったが、その半数は実戦経験の無い新兵であり、彼らが使っているのは旧型のジンだ。ジンHMへの改修が進められているのだが、新兵には操縦性能に優れる旧型のジンの方が良いという前線部隊からの要望で配備されているのだ。
 しかし、これらの旧型機で対抗できるのはせいぜいストライクダガーまでで、より強力なデュエルダガーや105ダガー、ダガーLといった新型には歯が立たない。ダガーLよりも強力と言われるオリオンを相手にしては分が悪いどころではないのだ。
 オリオン隊は4機ずつに分かれて散開を始め、フィリスはそれを見て悔しそうに唇を噛んだ。悔しいが敵のMS隊は訓練を積んだベテランの動きだ。整然とした編隊機動はやるのに並ならぬ訓練の蓄積を必要とする。
 だが、その散開したMS隊のうち2つが集中して撃ち込まれたミサイルのシャワーを受けていきなり壊滅させられた。2機のミーティアが前に出てきていたのだ。他のMS隊はそれを見て此方に襲い掛かろうとしていたのを中止して慌てて散開していく。
 このミサイルのシャワーを見たフィリスは、それが誰の攻撃であるのかをすぐに察して見せた。こんな攻撃が出来るのはこの場では1つしかないからだ。

「ハイネさん、センカさん!?」
「フィリス、俺たちが敵艦隊を潰す。お前たちは目の前に集中してろ!」
「新人に無理は禁物よ、フォロー忘れないで!」

 ハイネとセンカはフリーダムとジャスティスを使ってミーティアを操り、オリオン隊に再度ミサイル攻撃をかけてそのまま駆け抜けていった。それで敵の隊形か崩されたのを見たフィリスは2人に礼を良い、その混乱に乗じる形で突撃を命じた。

「行きます、各小隊は新人を守るようにして敵1機を集中的に叩きなさい。ジャックさん、エルフィさん、シホさん、私たちで数を減らしますよ!」
「またかよ、特務隊は解散した筈じゃなかったか?」
「ジャック、文句言わないの!」
「ああ、お2人とも喧嘩しないで下さい」

 特務隊は解散したのに相変わらず無茶させられる事にジャックが愚痴り、エルフィがそれに一言言ってシホが宥めている。これが何時もの彼らのペースといえばペースであるが、それを見た新人たちは目を丸くしてしまっていた。ベテランになると、戦場でもこんな気の抜けたやり取りが出来るのかと。

 突入してきたザフトMSを狙ってオリオンはレールガンとビームライフル、ミサイルで攻撃を加えてくる。これを受けて2機のジンが破壊され、初陣のパイロット2人が何もする事無く戦場に散っていく。だが残りはオリオンに接近戦を仕掛け、数の差で敵を飲み込んでいった。
 その中でこれが初陣となるインパルスをフィリスは使っているが、彼女はインパルスの特性がジャスティスに近いと感じていた。外見はフリーダムに近いが、加速の良さと反応の良さ、機体バランスはジャスティスと同じ接近戦闘型だ。
 オリオンの1機に目を付けたフィリスはビームライフルを向けたが、向こうも気付いたのか機体を左に振って照準を外してきた。そして急激な機動で機体を旋回させ、槍を手に接近してくる。その小回りの良さはフィリスでも見事と思わせる物だ。なるほど、ゲイツ隊が手を焼くわけだ。

「ですが、私の相手をするには少し不足ですね」

 フィリスはインパルスを加速させ、オリオンの側面を取ろうとする。それを見たオリオンも回り込ませまいと旋回をかけようとするが、ダッシュ力の差は決定的だった。初動では負けなくてもインパルスの加速にオリオンは置いていかれており、遂に側面ではなく背後を取られてしまう。それに後悔する間もなくインパルスはビームを放ってオリオンを貫き、コクピットを焼き払ってこれをガラクタにしてしまう。
 1機を仕留めたフィリスは戦果には拘らず、次の目標を探して周囲を見回した。敵はまだ残っており、艦隊の安全を確保するために更にすり減らさないといけないのだ。

 フィリスだけではなく、ジャックとエルフィ、シホもチームを組んで確実に敵の数を減らしている。流石にフィリスのインパルスに付いていくのは無理なので3機で連携しているのだ。

「エルフィ、側面に回れ。シホは狙撃頼む!」
「OK、ヘマしないでねジャック!」

 エルフィがオリオンの側面へと動き、ジャックが正面からビームを2度放つ。それをオリオンは回避してジャックに反撃のレールガンを放ったが、その直後に飛来したビームに右足を吹き飛ばされてバランスを崩され、側面と正面から放たれたビームに撃ち抜かれて四散してしまった。数を減らされたのでオリオンは孤立し始めていたのだ。
 また1機を仕留めた3人は次の獲物に行こうとしたが、彼らは少し離れたところでオリオンを圧倒しているザクウォーリアを見てしまった。ザクウォーリアはビーム突撃銃を連射して1機のオリオンを叩き続け、オリオンを少しずつ削るようにして撃墜してしまった。それは射撃の腕は別として、戦術も何も無い力技の戦い方であった。

「ステラちゃん、顔に似合わず強引ですね」
「うん、何だか人が変わったみたい」

 それを見たシホとエルフィがステラのイメージとは似ても似つかない戦い方に僅かな怯みを見せている。いや、別に普段がポケポケだからといって戦場でもそうだとは限らないのだが、あの戦い方はまるでイザークやディアッカのようだ。
 そんな事を考えていると、新たに突っ込んできたオリオンがレールガンを放ってきてシホ機の至近を貫いていく。それで敵機に気付いたシホがビームライフルを牽制のために無照準で2度放ったが、オリオンは回避運動も取らずに突っ込んできて槍を手にチャージをかけてきた。シホはそれを咄嗟にシールドで受け止めたが、オリオンの勢いは殺せず槍にシールドをもぎ取られてしまった。
 オリオンはそのまま勢いのままに駆け抜けていき、エルフィがカバーに入って追い撃ちしたが当たらなかった。

「シホ、大丈夫!?」
「シールドを無くしました。左腕肘駆動系に損傷があります!」
「ちっ、ヴェザリウスに戻れシホ、こっちは俺たちで持たせる!」
「ですが!?」
「命令だ、せめてシールドくらいつけて来い!」

 戻れと言われたシホは抵抗を見せたが、ジャックが有無を言わせぬ口調で強引に戻らせてしまった。それを見たエルフィは珍しく強引なジャックに感心した声を漏らしている。

「珍しいね、ジャックがあんな風に言うなんて」
「仕方ないだろ、片腕無くした奴が居ても足手纏いだ」

 ジャックのいう事は正しい。MSは機体の一部が欠けても戦闘を継続できるという珍しい兵器であるが、だからといって全力を出せる訳ではない。被弾したのなら引き返すのが正しい判断なのだ。
 エルフィはこの同期の同僚が随分と頼もしくなったと実感し、嬉しそうに頷いて彼の後ろに機体を付けて支援の態勢をとった。ザラ隊以来ずっとコンビを組んでいる2人のチームワークは今では完璧と言えるレベルにまでなっているのだ。





 迎撃に出た艦隊の苦戦を見たミナは、アメノミハシラを守る最後の壁、オーブ艦隊と駐留MS隊に出撃を命じた。そして自らもMSで出ると言い出し、周囲の者を驚かせている。

「ここは私の城だ、ザフト如きの好きにはさせん」
「ですが、MSと言われましても、ゴールドフレームはギナ様と共に」
「こんな事になるのであればサルベージしておくのだったな。だが無いもの強請りをしても仕方があるまい、確かM1Sがあった筈だな」
「あれですか。確かに使える状態ですが……」

 M1Sはシンが使っていた機体だが、地上に降りる際にアメノミハシラに残していったのだ。それは今でも予備機として保管されているので、使おうと思えば使えるし、その基本性能はゴールドフレームにも劣らない素晴らしい物だ。だが装甲はM1よりは強化されてるとはいえM1系の類に漏れず紙同然であり、今や首長家の数少ない生き残りであるミナが乗るのには相応しいとは言い難い。
 その事を部下は気にしていたのだが、ミナは聞き入れなかった。

「私が倒れてもまだカガリが居る。だがアメノミハシラが落ちれば変わりは無いのだ」
「しかし、ロンド様が倒れればサハク家はどうなります?」
「サハクが倒れてもオーブは残ろう。それに、カガリは首長家に拘りが無かろうしな」
「はぁ?」
「いや、気にするな。とにかく私はMSで出る。後の防御指揮はお前に任せるぞ」

 そう言ってミナは身を翻したが、背後から部下の諦めたような声がかけられた。

「分かりました。ですが、せめてパイロットスーツは着用していただきますぞ。貴女には生き残る義務がおありの筈です」
「……ふっ、そうしよう」

 部下の出してきた譲歩にミナは小さく笑って発令所を後にした。


 アメノミハシラからは次々にMSが出撃していく。それの多くはストライクダガーであったが、ダガーLの姿も雑じっている。月基地や正規艦隊にも少ないこの新型が配備されている事がアメノミハシラの重要性を物語っているが、その中でも一際目を引くのはやはりセンチュリオンだろう。周囲に6基のフライヤーが展開し、更に背中に背負った2基のコンテナには合計6基の小型化されたガンバレルが搭載されている。センチュリオンはフライヤーが攻撃用、ガンバレルが防御用と用途を完全に分けているのが特徴であり、そのコンセプトの有効性を確認するという目的も込められている。
 フラガ着任したばかりということもあって少佐であるが指揮権は無く、隊長から単独行動を許されるに留まった。まあ機体性能が違いすぎてアメノミハシラ駐屯軍の機体では連携が出来ないので、部隊を組んでも意味が無いのだが。
 ダガー隊に続いてM1Aがオーブ艦隊と共に展開を始め、アメノミハシラに迫る敵に対して第3線を形成していく。正直ここまで来たとしても力を使い果たしているのは確実で、アメノミハシラには届かないと思われるのだが敵艦隊は止まろうとはしない。その遮二無二の突進を見たフラガはザフトらしくないと感じていた。

「どうも変だな、ザフトってここまで無理押ししてくる奴らだったか?」

 ザフトは船の快速を生かして相手の弱いところを探して突いて来るのが常套手段だった筈で、数で負ける奴らがこんな真似をしたらすぐに消耗しきってしまうのだが、一体何を考えているのだろうか。
 そんな疑問を抱いていたフラガであったが、ふと頭を過ぎった独特の感覚に表情を険しくした。彼にとってこの感じ方は特別な意味を持つからだ。

「この感じ、ラウ・ル・クルーゼか!」

 それは敵艦隊と交戦中のクルーゼにも感じ取れた。彼もまたフラガの存在を感じ取って顔に好戦的な笑みを浮かべている。

「まさかこんな所で、か。つくづく縁があるようだな、ムウ・ラ・フラガ」
「隊長?」
「ロナルド、ここは任せる。私はプロヴィデンスで出る」
「隊長がですか。しかし、そこまでせずともミーティアが戻ればケリがつくのでは?」
「いや、個人的な因縁だよ。どうもここに決着をつけなくてはいけない男が居るようだ」

 個人的な因縁、と言われてロナルドは首を捻ったが、それ以上は何も言わずに黙ってクルーゼを送り出した。元々艦橋に収まっているような男ではないのだ。だが、あのクルーゼが興味を持つような相手がこの先に居るとなると、この艦隊を突破してもまだ楽は出来ないようだと嫌でも認識せざるを得なかった。




 だが、先に突破に成功したのはクルーゼ艦隊ではなくハーヴィック艦隊であった。やはり数の差が大きかったのか、極東連合第2艦隊の懸命の砲撃にもかかわらず、突進してくるハーヴィック艦隊を止められなかったのだ。
 極東連合艦隊の前で上下に別れたザフト艦隊はミサイルの波状攻撃で極東連合艦隊に迎撃と回避を強要し、動きを限定させながら突破を試みたのだ。MS隊は敵より数が少なく、これを食い止めるには足りなかった。更に2機のミーティアが艦隊を崩している。
 ナガトの艦橋から指揮をとっていた近藤提督は駆逐艦部隊を突撃させてでもこれを阻止しようかと考えたのだが、2機のミーティアが暴れまわっていてそれの対応でどの艦も手一杯という現実を前にはどうにも出来なかった。ミーティアは四方八方から撃ち込まれる対空砲火の弾幕の中を必死に動き回りながらミサイルを叩き込んで回り、ビームで砲撃して駆逐艦を損傷させているのだが、ミーティアもその巨体の為にどうしても被弾を免れず、積み重なるダメージにとうとう機体が限界に達してしまった。

「推力25%低下、主砲損傷、もう駄目ね、ミーティアを捨てるよハイネ!」
「分かった、幸運を祈る!」

 センカが中破したミーティアを切り離してジャスティスを離脱させる。切り離されたミーティアは直進しかせず、次々に放たれたビームに貫かれてミサイルに誘爆、粉々に吹き飛んでしまった。
 離脱したセンカはジャスティスを駆ってフィリスたちと合流しようとしたが、その時モニターに変な物が表示されたのに気付いた。複数の光点が突然表れたのだ。それが何であるか、この状況ならすぐに察する事が出来るだろう。そう、地球軍の増援が近付いているのだ。
 ハーヴィック隊の勝利はそのままMS戦の勝利を意味していた。フィリスはそれまで使っていたライフルのエネルギーが切れたのを見ると迷わずそれを捨てシールドの裏にマウントされているエクスかリバー対艦刀を抜いて迫るオリオンに叩きつけた。オリオンはそれをシールドで止めようとしたが、対艦刀は力任せにシールドを叩き割り、PS装甲に守られた胸部を両断してしまった。
 これが最後だったのか、フィリスの周囲に敵機の姿は無かった。どうやら艦隊が離れたのでそちらの傍に戻って行ったようだ。敵の姿が無くなったのを確認したフィリスはようやく一息つき、自分の状態を確認する。コンディションモニターを確認したフィリスは僅かに眉を顰め、そして軽く肩を落としてしまった。

「まあ、分かっていた事ですがやはり駆動系がやられてますね。まだまだ改善の必要が有りですか」

 試作機を初めて実戦に出したのだ、不具合が出るのは仕方が無い。それを考えれば大きな問題が出なかったインパルスの初陣は大成功と言えると思うが、それでもフィリスはどうしても愚痴りたくなってしまう。なんで自分たちにはこう乗るだけで気を使わなくてはいけない機体ばかり回ってくるのだろう、と。




 アメノミハシラに迫っていたのは周辺から集まってきていた哨戒部隊や任務部隊だった。その中にはアークエンジェルを旗艦とする第8任務部隊の姿もあり、アークエンジェルと駆逐艦4隻が急行していたのだ。
 アークエンジェルの中ではMS隊が出撃準備をしており、整備兵たちが忙しそうに機体の最終検査や武装の確認をしている。シンのヴァンガードは特に手間がかかるのか、シンがまだコクピットに入って調整をやらされている。それを眺めていたキラとコンテナに腰を降ろしていたスティングであったが、2人の前を妙に気合が入っている、と言うか殺気だっているトールが通り抜けようとしたのを見て吃驚してしまった。

「ト、トール、どうしたのその顔?」
「なんかあったのか、凄い形相だぞ?」

 トールの凄まじい形相に怯みまくっているキラと少し腰が引けているスティング。なんというか、今のトールには勝てないと本気で思えるような異様なまでの迫力がある。その撒き散らされている怒気に当てられた整備兵が慌てて逃げていくほどだ。
 キラとスティングに呼び止められたトールはというと、何だかかなりやばい眼差しでキラとスティングを見やり、そして地獄の底から聞こえてくるかのような恨みがましい声で2人の疑問に答えてくれた。

「いや、何、そんな大した事じゃないんだけどさ」
「う、うん……」
「どうしたんだ?」
「ミリィのブラに手をかけたところで警報が鳴ったのさ」
「…………」
「…………」

 思いもかけない理由にキラとスティングは開いた口が塞がらなくなってしまった。こいつは一体何をしてたんだと突っ込みを入れたくなったが、何となく突っ込んではいけない気もして口から先に出てこない。というかキラには言う資格が無い。
 初エッチという人生の山場を豪快に踏みにじられた事でトールはかつて無い闘志を漲らせていたのだ。まあ男としては分からなくも無いが、そこまで怒らんでもと思う2人であった。
 トールがMSの方に行ってしまうのを見送った2人は顔を見合わせて安堵の息を漏らしたが、今度はそこにアルフレットとフレイがやってきた。アルフレットは何だか妙に疲れている2人を見てどうしたのかと声をかけてくる。それに対して2人は顔を見合わせ、何とも言えない微妙な笑みを浮かべて誤魔化してしまった。
 そしてキラはアルフレットに出撃かと聞いた。

「それで、いよいよ出撃ですか?」
「いや、まだ遠い。もう少ししたら出撃だ。攻撃は集まってきた周辺の艦隊と共同で行うから、気をつけろよ。俺たちの仕事は敵艦隊の撃破だ」
「また厄介な仕事を押し付けられたんですね」
「仕方ねえさ、俺たちは厄介事請負人だからな」
「父さん、私そんなのになった覚えない」

 とんでもない事を言い出した義父にフレイがジト目で突っ込みを入れ、突っ込まれたアルフレットは大笑いしながらそれを無視した。まあフレイの不満はともかくとして、周囲がアークエジェルをそういう目で見ているのは間違い無いのだから。
 しかし、ここで問題が生じた。機体を調整していたマードックがヴァンガードに取り付いていたのだが、こりゃ駄目だと言い出したのだ。

「坊主、悪いがゲシュマイディッヒ・パンツァーは使えそうも無いぞ。どうにも安定しねえ」
「え――っ!?」
「残ってた部品が不良品だったみてえでよ、付け替えたんだが上手く動かねえんだ。どうする、これ無しで出るか?」
「これって、盾代わりにはなります?」
「磁場が発生できなけりゃ増加装甲程度だな。シールドほどアテにはならねえよ」
「……んじゃ外してください、その分軽く出来ます」

 シールドとして役に立たないのならば無い方が良い、と判断したシンはアクティブシールドを外してくれと頼み、マードックは分かったと請け負って部下に指示を出していく。それを聞いた整備兵たちが威勢良く返事をして作業に取り掛かった。
 その様子を見ていたアルフレットは不味いなあと呟き、持っているボードで2度ほど自分の頭を軽く叩いている。

「とうとうパーツが底ついたか、ここ暫く戦闘が連続したからなあ」
「この艦って面倒な機体が多いですからね、壊れるのも早いです」
「ウィンダムやマローダーはまだしも、俺たちのはなあ」

 アルフレットのクライシスやキラのデルタフリーダムは実用性という言葉を遠くに放り投げた超高級機だ。当然運用できる母艦は限られ、アークエンジェル級のような高度な設備をもつ艦でないと運用できない。必要とする消耗部品も多く、この手の面倒な機体に慣れているアークエンジェルだから何とかなっているというのが実情だ。この点だと切り札の核動力MSを規格化して実用性を向上させているザフトに一日の長が有るといえるかもしれない。まあ核動力機も最初はかなりアレだったのだが。
 幸いにしてヴァンガードは偏向シールド以外は問題が無かったようであり、出撃する事は可能だった。ただ防御面では致命的なまでに低下しており、これまでのような便利な使い方は出来そうも無かった。



 アークエンジェル隊の接近はすぐにクルーゼとハーヴィックにもたらされ、2人は全く同じ反応を示した。面倒な時に面倒な奴が現れたと感じたのだ。そしてクルーゼはこれを無視して敵の突破を優先し、ハーヴィックは後方から来る敵の新手に備える事にした。

「極東連合艦隊を突破後、アメノミハシラには向かわずに敵の増援を迎え撃つ。アメノミハシラはクルーゼに任せよう」
「ですが、我々だけであれを止められるでしょうか?」
「なあに、此方はあくまで囮だ。本隊が目的を達するまで頑張れば良いだけのこと」

 そう、このアメノミハシラ攻撃はあくまで敵の注意を引き付けるための陽動に過ぎない。クルーゼ艦隊が地球艦隊の目を引くための陽動なら、ハーヴィック艦隊は自分たちが後続の増援部隊だと思わせる狙いがある。流石にこれだけ頑張れば、よもや此方が陽動などとは思わないだろう。実際に地球軍は此方に集まってきており、本隊からの緊急電は来ていないのだ。
 ならばもう少しここで頑張り、少しでも多くの敵を引き付ける。それがハーヴィックの考えであった。クルーゼの狙いはまた少し違うが、結果的にハーヴィックの思惑と合致しているので問題は無い。
 だが、ここまで来てハーヴィックは1つの問題を考えていた。それは艦隊の残っている戦闘力である。すでに全力で一度戦っているのだ。この上更に交戦したら、最悪弾切れを起こしかねない。

「引き際を見誤ったら、目も当てられんな」

 ハーヴィックは緊張から冷や汗を浮かべ、参謀に各艦の残弾を確認するように指示を出した。可能ならMSも戻して補給をさせろとも。核動力MSといえども推進剤や弾薬、ビームエネルギーは有限であり、補給してやらないと動かない唯の鉄くずになってしまうのだ。
 これを受けて各艦では所属機を後退で着艦させだした。幸いにしてオリオンは粗方片付いたので補給をさせる余裕が出来たのだ。極東連合艦隊はまだ残っているが、どの艦も何らかの損傷を受けて戦力を著しく落としている。ハーヴィック艦隊と再度戦う余裕は既に無かった。
 ヴェザリウスにもフィリスのインパルスが着艦して補給と整備を受ける事になったが、ここでインパルスは恐ろしい方法で機体を仕上げて見せた。何とインパルスの上半身を外してしまい、新しいシルエットを取り付けて終わらせたのである。新しいシルエットは被弾もしていないし熱も持ってない。弾も満タンで砲身も磨耗して無い新品同然の状態なので、インパルスはすぐに再出撃が可能となる。この点はインパルスが持つ最大の利点と言って良いだろう。一緒に着艦したエルフィのゲイツRはまだ充電と弾薬補給、機体の冷却などを行っているのに、インパルスはもう出れる。外したシルエットは後でじっくりメンテナンスすれば良いのだ。
 シルエットにかかるコストを考えると問題は山積みだが、この利点は戦場ではかなり大きい。特に熟練パイロットが枯渇してきているザフトにとってはフィリスのようなウルトラエースに長時間頑張ってもらえるという点では非常に大きな利点が有ると言えるだろう。



 そして、遂に彼らの前に地球連合の艦隊が姿を現した。複数の部隊が合流したようで、その数は13隻にもなっている。その中にはあのアークエンジェルの姿もあり、ハーヴィックは苦々しい顔で全軍にMSの出撃を命じた。




機体解説

ZGMF−X56S インパルス

兵装 ビームライフル
   対装甲ナイフ×2
   対艦刀
   機動防盾
   76mmバルカン×2

<解説>
 ザフトが開発した次世代型MSの試作機の1つ、連合のストライクの設計思想が伺え、シルエットシステムと呼ばれる上半身と下半身の換装システムが特徴である。当初は多くの新機軸を盛り込んでいたが、運用側の反発で設計が変更されている。その際に核動力を搭載した。
 現状ではフォースシルエットとブラストシルエットしか完成していないが、将来的には更に複数のシルエットが作られる予定。フォースシルエットの機動性はジャスティスを凌ぐとされ、特に加速性能に優れている。エクスカリバー対艦刀は元々ソードシルエットの装備であったが、機体のパワー向上による余剰から若干小型化された上でシールド裏に装備される事になった。
 また、CIWSは当初は20mmの予定であったが、威力不足と補給の問題から取り止め、通常の76mm砲に変更された。




後書き

ジム改 ザフト、規格外兵器のワゴンセールです。
カガリ ミーティアとヴェルヌを全部持ってきたのか?
ジム改 ミーティアは全部。ヴェルヌは全部じゃないな。
カガリ だからこの数で来た訳か。でも持つのか、ミーティア落ちたぞ。
ジム改 そりゃまあ、十字砲火の中を撃ちまくりながら飛んでるんだから、いずれ落ちるわな。
カガリ ところでミナって、強いのか?
ジム改 名前があるからそれなりに。
カガリ いやそうじゃなくて、クルーゼの手下に勝てるのかどうか。
ジム改 ミナ様は偉い人なので訓練が足りてません、以上。
カガリ 不味いじゃんかよ、ミナが居なくなったら誰が面倒引き受けてくれるんだ!?
ジム改 ……こいつは。
カガリ そ、それでは次回、クルーゼとフラガの因縁の対決が始まる。そしてイザークたちとアークエンジェルも。アスランが居ない今、フリーダムに立ち向かうのは。戦いは混戦になったが、その中でシンは彼女とぶつかる。激戦の中でアークエンジェルが地球に向かう敵の別働隊を捉えた。次回「悲しき再会」でお会いしましょう。

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