第165章 ユウナ・パニック



 キラまで加わって朝食を摂った5人であったが、ここで彼らはそれぞれが持っている情報を交換し合う事になった。
キラとフレイの話によってザルクという組織がプラントにはあり、これがパトリック・ザラを誘拐した事、彼は今もクライン邸に監禁されて生存している事が判明した。
 そしてカガリの話によってザルクはラウ・ル・クルーゼを中心とするこの世界の有様に反感を持つ者で構成された組織であり、人類の滅亡を目的として戦前から今に至るまで歴史の裏側で暗躍していた事、独自に相当な規模の軍事力を持っていることなどが分かった。
 そしてアズラエルの話によってザルクという組織がステラたち強化人間の売却先であった事、調査の過程でザルクという組織が世界中で兵器を購入したり、妙な動きを繰り返している事などが分かっている事などを話し、フレイとカガリの話に裏付けを与えた。
 だが、これらの話を総合した事である程度浮かび上がってきたのは、ザルクという組織が戦争を利用して人類全ての抹殺を目論んでいるという、何処の小説に出てくる悪の組織だと言いたくなるような代物が現実に存在して地球を滅ぼそうとしているというという事であった。この結論に達したアズラエルはあまりの馬鹿馬鹿しさに呆れ果てて嘆息し、カガリは頭痛のしてきた頭を抱えて唸り声を漏らし、キラは何故か深刻そうな顔で思い詰めたような顔になっていて、ラクスは同じコーディネイターからこんな連中が出てきたことに恥じ入って小さくなってしまっていた。
 そんな4人を見てフレイはわざと明るい声を出して状況を楽観的に持っていこうと試みた。

「な、何よみんな黙り込んじゃって。敵の正体が分かったんだし、良かったじゃない。この事を公表すればプラントだってクルーゼって隊長を拘束してくれるわよ」
「フレイ、そりゃ無理だぞ。私たちだってネタだとしか思えないような話なのに、プラントに言ったって謀略としか受け取られないって」
「で、でも……」
「証拠を突きつけるしかありませんね、誰もが納得するしかない証拠を」

 アズラエルが疲れた声でそう言い、そして隣に座っているラクスを見た。

「ラクスさん、1つ賭けをしませんか?」
「賭け、ですか?」
「そうです、チップはプラントという砂時計全て」
「どういう事ですか?」

 プラントの全てをチップとした賭け、という提案にラクスは警戒を露にしながらどういうことかと問うたが、それに対するアズラエルの答えはラクスには想像も出来ないほどに出鱈目な物であった。

「簡単な事ですよ。貴女はプラントに戻り、パトリック・ザラを救出してみせなさい。そしてどのような方法でもかまいません、私たちにはっきりと分かるように彼の存在を示して見せなさい」
「パトリック・ザラを?」
「ええ、プラントが滅びる前にそれを達成できれば、例え地球軍がザフトを完全に殲滅してプラントを核ミサイルを発射しようとする寸前であっても、即座に停戦に応じましょう。だが間に合わなければ地球軍は躊躇無くプラントを攻撃します。どうです、シンプルで分かり易いでしょう?」
「おい、ちょっと待てアズラエル。プラントの破壊にお前は反対じゃあなかったのか!?」

 プラントの破壊を口にしたアズラエルにカガリが焦った声を上げたが、アズラエルは薄く笑うだけでカガリの問いには答えようとはしなかった。彼はただ、ラクスの答えを待っている。
 だがラクスには答えられなかった。自分にプラントの命運そのものを背負えと言われたにも等しいアズラエルの提案は、ラクスに容易ならざる決断を強要していたのだから。これはアズラエルが示せる最大限の譲歩であり、最後のチャンスだ。もし断ればアズラエルは2度と自分に力を貸してはくれまい。そしてこの提案を断っても地球軍はいずれプラントに到達し、プラントを完全に破壊し尽くしてしまうだろう。
 これはラクスがプラントを愛する限り、決して断れない提案だ。だが受けるには余りにも重過ぎる提案でもある。プラントの住人2千万人の命を背負えと言われたも同じなのだから。とてもではないが若干16歳の少女が背負えるような負担ではない。だが逃げればどの道プラントは破壊されてしまう。賭けなどと言いながら、これは選択の余地など無い強制なのだ。

「……卑怯、ですわね」
「卑怯? 失礼ですね、私は慈悲を示したつもりですよ。プラントにはもはや勝ち目はゼロです。このまま推移すればプラントを待つのは滅亡か無条件降伏のどちらかしかないというのに、それを貴女の頑張り次第で講和という形式をとった条件付の降伏にしてあげようと言っているのですからね。それとも貴女には私の提案を超える名案が有るというのですか?」

 そんなものがある筈が無い。アズラエルやカガリの手を借りなければ自分にはプラントに戻る手段さえ無いのだから。ラクスにはこの提案を断る術は無いのだ。それが分かるだけにラクスは悔しかったのだ。自分がこの男の掌の上で踊るしかないという現実を受け入れるのが。
 短いが深刻な苦悩の末、遂にラクスは項垂れるように頭を垂れてアズラエルの提案を受け入れた。パトリックを救出するから、力を貸して欲しいと頼み込んだのだ。それを聞いたアズラエルは機嫌良く頷き、早速プラントに密航する手筈を整えようと言ってフレイに電話を借りるために部屋を出て行った。それを見送ったカガリはアズラエルの性根の悪さを罵っていたが、すぐにそれをやめるとどうしたもんかと頭を掻きだした。

「ああ、あいつのやり方は何時も気に食わねえ。何で何時もああやって人を追い詰めるのが好きなんだ。悪趣味にも程があるぞ」
「でもまあ、良かったんじゃないの。アズラエルさんに約束させたんだから」
「あいつの約束なんてアテになるかあ?」

 カガリはアズラエルが利益優先主義の守銭奴である事を知っている為、状況次第では平気で掌を返すような気がしてならないのだ。まあ日頃の行いが悪すぎるので信用が無いということなのだが。
 だが、この問題に対しては意外にもフレイはアズラエルを信じているようであり、カガリの不安を杞憂だと笑っていた。

「大丈夫よ、アズラエルさんはあんな人だけど、約束を破った事は無いもの。それに嘘を言った事も無いでしょ?」
「悪質な冗談は山ほど出てくるけどな」
「まあね。でも自分からああ言ったんだもの、言った事は守ってくれるわよ」
「……オーブの方針はあくまでも戦火の拡大を防ぐ事だ。私はプラントの殲滅はオーブとして受け入れられないと主張していくからな」

 オーブとしてこれだけは譲れない、という意思を込めてカガリはフレイに言い切り、そしてラクスの顔を一瞥した後、鼻を鳴らして彼女も部屋から出て行った。朝からここに居る彼女だが、ユウナの事務仕事を押し付けて無理してここに来ていたのだ。
 カガリが出て行ったのを見送ったキラとフレイとラクスは朝食を再開したが、食後の紅茶を口にしているところで、キラが何処かに遊びに行かないかと2人を誘った。

「ねえ、これから何処かに遊びに行かない?」
「何処かって、何処に?」
「何処でも良いと思うよ、気晴らしに街に出るだけでも良いんじゃない?」

 明るい調子で誘ってくるキラに、フレイとラクスは顔を見合わせてしまった。今はそんな時ではないと思うのだが、折角の誘いを断るのも気が引けると思ってしまったのだ。





 アメノミハシラ周辺で3機のMSが激しく動き回っている。1機は背中から4基のガンバレルを展開させ、更に周囲に2基のフライヤーを従えている。それはフラガの駆るセンチュリオンであった。これに対して立ち向かっているのはウィンダムとマローダーで、此方には4基のフライヤーが付きまとっていた。
 10基の端末を同時に操作するフラガの空間認識能力は凄いの一言に尽きるが、これを凌いでセンチュリオンに反撃を加えているウィンダムとマローダーもまた驚異的と呼びうる実力を持っているのだろう。四方から飛来する模擬弾を巧みに回避し、あるいはシールドで止めながら時折反撃の銃撃を行っている。
 この反撃を受けるたびにセンチュリオンは大きな動きでこれを回避しているが、その都度フライヤーの動きが乱れ、ウィンダムとマローダーはその隙にフライヤーを振り切っている。流石のフラガも機体を操りながらこれだけのシステムを使いこなすというのは困難を極めるのだろうか。フレイの時は通常3基程度に留めていたのだが。

 だが、センチュリオンを駆るフラガを焦らせているのは時折加えられる反撃が有り得ないものだからだ。ウィンダムを駆るトールは他所ではエースと呼ばれるパイロットであるが、化け物揃いのアークエンジェルでは雑魚扱いされる彼である。トールが弱いのではなく、他が余りにも強すぎるのだ。センチュリオンを駆るフラガの実力は地球軍でも上から何番目という程であり、トールが歯が立つ相手ではない。実際これまでの訓練ではトールはフラガに全く歯が立たなかった。
 そのトールが今、スティングの援護を受けながらとはいえフラガとどうにか渡り合っている。その理由はアークエジェルに試作型と交換で配備された新鋭機、量産型ウィンダムにあった。試作型ウィンダムがクライシスを量産化した機体であったとすれば、これは試作型で得られたデータにカタストロフィ・シリーズのデータをフィードバックした機体である。
 試作型ウィンダムのデータを元に不具合を修正し、更にフレイが偶然発見した脳波制御システムの誤動作による機体の反応速度の向上という結果を組み込んだ新型の操縦システムを装備、装甲は試作型と同じであったが、胸部とスカートアーマー正面にはモジュラー式の装甲が追加装備されている。これはABシールドと同じ物で、敵弾が命中し易い正面のコクピット周辺を守るための使い捨て増加装甲だ。これによってビーム、実弾のどちらに対しても強靭な防御力を得る事が出来た。側面や背後からは攻撃されたら終わりなので此方には追加装甲は無い。
 追加オプション装備には威力を落として反動を軽くした粒子砲や高周波ランス、スターファイアなどに採用された新型の複合誘導ミサイルを搭載した多連装ミサイルポッド、NJ影響下でも長距離を狙う事が可能な長距離狙撃ライフルなど、多彩なオプションが用意されている。
 当初の予定では核動力を搭載してゲシュマイディッヒ・パンツァーによるソフトキル防御も加えようという意見があったのだが、ここまですると更に完成が送れて戦局に寄与できないとされ、それらを搭載した新型の開発は試作機を除き、戦後に持ち越される事になっている。
 この新鋭機を駆るトールは普通のナチュラルでありながらブーステッドマン並の動きをして見せた。それまで使っていた試作型ウィンダムよりも明らかにワンテンポ早く動いており、一瞬の差が勝敗を分けるMS戦において驚異的な戦闘能力の向上となって現れている。
 フラガが苦戦するのも当然だと言えよう。今のトールはコーディネイターのパイロットに決して劣らない速さを持っているのだから。そこにこれまで積み重ねてきた経験と訓練も重なり、トールは強いパイロットというレベルから、侮れない強敵になったのである。

「ちっ、あのウィンダムとんでもない代物だな。トールが昨日までとは別人の動きをしてるぜ。俺のセンチュリオンも改造してもらおうかなあ」

 センチュリオンは脳波制御システムを機体とリンクさせるようにはなっていない。ゆえにフラガは自身の持つ反応速度が頼りなのだが、トールは一瞬だがフラガより速く動けているのだ。まあ予備動作程度なのだが、その一瞬の速さがフラガたち空間認識能力者やコーディネイターの強さなのだから、それに普通のナチュラルであるトールが追い付けるというのは驚異的なことだ。
 このウィンダムには大西洋連邦の技術の粋が結集されていると共に、大西洋連邦技術陣の悲願が込められていた。それは、ナチュラルでもコーディネイターと対等に戦える兵器を開発すること。
 当初は互角に戦えると信じていたメビウスはベテランが乗ってもジンに圧倒された。その後開発されたストライクダガーは機体性能はジンに勝っていたが、パイロットが劣っていたので同数では不利を強いられている。それはゲイツに対する105ダガー、ゲイツRに対するダガーLの関係でも続き、数で勝らないと苦戦を余儀なくされるという屈辱を強いられたのだ。
 その屈辱を晴らすために開発されたのがクライシスを原点とする次世代主力MS開発計画だった。ダガー系から離れた新規設計の400番台フレームを用い、クライシスからカタストロフィ・シリーズに続く多くの試作機からもたらされた実戦データを組み込んでいったウィンダムはパイロットの能力不足を機械のサポートで補う事で遂にコーディネイター並みの戦闘能力を実現する事に成功したのだ。
 新型操縦システムは新規に開発された神経反応ヘルメットによってパイロットの脳波を読み取り、ヘルメットから伸びるコードによって有線でパイロットがやろうとしている動作を開始するのだ。それは脳波によるガンバレルやフライヤーの攻撃端末制御システムほど高度な物ではなく、量子通信装置も組み込まれていない。このシステムの能力を応用してMSを操縦する機能限定モデルなのだ。
 機能を限定したおかげで大幅な小型化が可能になり、ウィンダムの設計を変更する事無くコクピットに組み込む事が可能となった。これの導入でウィンダムは癖があるものの、極めて優秀なMSに仕上がったのである。
 これらの新機軸を組み込んだウィンダムはストライクダガーに替わる大西洋連邦の汎用主力量産機とされ、大量生産が決定されている。だが既存のストライクダガーやダガーLの消耗に対する補充の問題もあってそれらのラインを閉じる事も出来ず、105ダガーやデュエルダガー、ロングダガーといった少数生産機のラインを閉じてウィンダム用のラインを整備したのだが立ち上がりが遅れ、未だに大量配備には至っていない。
その為ウィンダムは試作ウィンダムやクライシスを配備されていた部隊に優先配備される事になり、第8任務部隊もその優先配備部隊の1つとなったのである。ストライカーパック換装システムを持つアークエンジェル級にウィンダムは意味が無いのでは、という意見もあったのだが、新鋭機だけに整備性に不安が残るという問題もあり、ストライカーシステムが無駄になるのを承知で配備される事になったのだ。まあストライカーシステムは無駄になるが装備の自動換装システムなどは使えるのでオプションの多いウィンダムなら生かせるという意見もあるのだが。


 アークエンジェルにはウィンダムが予備を含めて4機が送られてきており、そのうちの1機がトール用に調整されて訓練を行っていたのだ。更に1機がフレイ用にガンバレルシステムを装備して準備されている。これはバックパック上部に量子通信用の送受信機が追加装備される。
 このウィンダムを受領したトールは早速機種転換訓練を開始し、フラガとの模擬戦でフラガを苦戦させるほどの強さを見せていたのだ。その速さはエクステンデッドの筈のスティングが舌を巻くほどである。
 フラガを相手にトールが接近戦を仕掛けようとするのを援護するようにマローダーが新型のガトリング砲を向けて援護する。これはリニアガンの方針を束ねた回転式他砲身砲で、ガウスライフルと同様の新型磁気加速砲だ。それまで使っていたビームガトリングは威力に乏しく、ゲイツやゲイツR、ザクといった新型を相手にしては威力不足が指摘されていたので開発された凶悪な火器だ。ただし重量や反動も半端なものではなく、扱えるのはマローダーやカラミティといった支援機に限られている。バスターダガーは相変わらず超高インパルス砲による砲撃支援用として使われているので、マローダーは随伴支援機として住み分けが出来ていると言える。



 そしてこの戦いは修理後のテストを兼ねて出港していたアークエンジェルからも管制されており、艦橋のクルーはそのいつものトールとはまるで違う動きをするウィンダムを驚きをもって見ていた。
 機体の実働データを収集しているサイは、試作型を使っていた時を大幅に上回る数値を叩き出しているトールのウィンダムに驚きと賞賛の言葉を漏らしていた。

「こりゃ凄いや、マローダーを使ってるスティングより上になってる。オルガのカラミティにも引けをとってないよ。ミリィ、そっちはどう?」
「トールのウィンダムが3発被弾、スティングのマローダーが1発被弾ね。2機とも判定小破、戦闘継続可能よ」
「マローダーはともかく、ウィンダムは3発貰ったのに?」
「全部胸部装甲で受けたから。追加装甲に当たったのは撃墜判定にならないのよ」
「なるほどね、そりゃフラガ少佐も大変だ」

 それは反則だと呟いて、サイはCIC指揮官席に座っているチャンドラに次の指示を求めた。

「チャンドラ少尉、この後はどうします?」
「まだお互いに余裕があるからなあ。ウィンダムが何処まで動けるか、もう少しデータを取っておいてくれ。良いですよね艦長?」
「そうね、トール君もまだやれそうだし、ムウもまだ余裕がありそうだしね。でもこの勝負、ムウを梃子摺らせてる2人が凄いのか、あの2人を同時に相手取るムウが凄いのか、微妙ね」

 艦長席で指揮下の3機のMSの動きを見ていたマリューは感心半分、不満半分でそう呟く。彼女としてはトールが更に強くなる事はありがたいが、更に高いレベルを望んでいたのだ。今のアークエンジェルはフラガ、キラ、シンの第1小隊とトール、スティング、フレイの第2小隊の2つのMS小隊を抱えているが、この中ではトールがどうしても見劣りしてしまう。その為第2小隊には余り無理をさせられず、第1小隊が攻撃、第2小隊が護衛という役割分担が自然と出来てしまっている。
 このパターンを解消するにはトールのレベルを引き上げて第2小隊の戦闘力を高めるのが一番確実なのだ。まあ余りにも贅沢すぎる悩みであるが、マリューはこう考えていたのである。トールでは時々出てくるザフトの鬱陶しい部隊に対抗困難だと。

「ムウにはもう少しトール君を叩いてもらいましょうか。センチュリオンもまだ限界性能が出てないようだし」
「でも、センチュリオンの部品は少ないですよ。あまり壊すと後で不味い事になりませんか?」
「ある程度はウィンダムの部品と互換性があるそうだし、何とかなるでしょ。アルフレット少佐のクライシスも修復して予備になってるし、いざとなったらクライシスを出せば良いわ」
「それで良いんですかね?」

 チャンドラはマリューの楽観主義に不安そうであったが、仕方なくミリアリアに訓練続行を指示した。
 そしてマリューはノイマン中尉に命じて艦を第2戦速に加速するように命じる。全力航行テストを始める事にしたのだ。




 幾度かの激突の後、トールのウィンダムは初めてフラガの意表を突く動きに出た。それまではセンチュリオン本体を狙った攻撃を繰り返していたのに、いきなり銃の照準をMSから鬱陶しいフライヤーへと切り替えたのだ。
 それまでフライヤーへの攻撃など無かったのでフラガも油断していたのだが、いきなりフライヤーに攻撃を加えられたのを見て初めて焦りを見せてしまった。

「おい、ちょっと待てトール!?」

 センチュリオン最大の泣き所はフライヤーとガンバレルを失えばMSとしての能力はウィンダムとそう変わらないという点だ。カタストロフィ・シリーズなどと言われているが、カタストロフィという名のMSは存在していない。カタストロフィはクライシスを改修して機体を強化したベース機であり、これに様々なオプションを装備して試験項目に特化させた機体群をベース機の名称からカタストロフィ・シリーズと呼んでいるのだ。勿論実験機なので機械的信頼性は最悪で、だからこそアークエンジェルに押し付けられているとも言える。
 トールの銃撃を受けたフライヤー1基が判定撃破されたようで、コントロールから切り離されてアークエンジェルの方に戻っていってしまう。それを見たフラガはフライヤー全基でトールを包囲して叩き落そうと試みたのだが、そのトールを守るようにマローダーが弾幕射撃を仕掛けてきてフライヤーたちが自立回避を開始している。
 どうやらトールとスティングのコンビもだんだんと息が合ってきたようで、接近戦を挑もうとするトールをスティングが上手く援護している。新型ガトリング砲はビームガトリングよりも発射速度が高いおかげで効果的な弾幕が張れるようで、フライヤーが逃げ回っている。その自立行動能力は賞賛するべきものであったが、こうなるとフラガはトールとサシで勝負をする事になるのだ。

「入りましたよ、フラガ少佐!」
「トール、こっちは押さえとくから早く済ませろよ!」
「ちっ、やるようになったじゃないか2人とも!」

 懐に飛び込んできて模擬サーベルを手に取るトールのウィンダム。それに対してフラガも模擬サーベルを手に取ったが、格闘戦をするのかと思った途端、フラガは手持ちのシールドを投げつけてきた。それを慌ててトールがシールドで受け止めたのだが、次の瞬間に機体に衝撃が走り、コクピットにアラートが鳴り響いて機能停止してしまった。

「あ、あれ、殺られた!?」
「トール、こっちの武器はライフルとサーベルだけじゃないって事、忘れたのか?」

 ウィンダムの周囲を囲むように何時の間にか4基のガンバレルが浮かんでいる。どうやら格闘戦を受けて立とうとしたのはフェイクだったようだ。咄嗟の駆け引きではまだまだトールはフラガに及ばないようであった。
 フラガのフェイクに引っかかってしまった事を悔しがるトールであったが、それはトールだけではなくアークエンジェルで観測していたミリアリアとサイも同じであった。

「あ〜あ、落とされちゃった。今度は勝てると思ったのになあ」
「残念だったねミリィ。でもトールも凄くなったよ、あのフラガ少佐に肉薄してるんだから」
「そうだけどさあ、一度くらい勝つとこ見たいでしょ」

 自分の彼氏がアークエンジェルの訓練だと仲間にボコボコにされるだけ、という現実はミリアリアにはどうにも腹に据えかねるものがあったようだ。これで他部隊との合同演習などでは相手を圧倒しているのだから弱くは無いはずなのだが、身内が相手だとボコボコにされてしまう。
 今日こそはいけるのでは、という淡い期待を抱いていただけに、ミリアリアの落胆は激しかったようだ。だがトールはまだ諦めてはおらず、再戦の許可を艦橋に求めてきた。それを聞いたマリューはトールの負けず嫌いに苦笑いを浮かべて一度帰還して休養とメンテナンスをしろと命じて戻らせる事にした。
 そしてCICのミリアリアを見た後、小さく笑い出した。

「トール君も上手くなったものね、昔はまともに動かす事も出来なかったのに」

 昔はMSをまともに動かせず、デュエルでジンに惨敗するようなヘッポコだったのに、何時の間にやらフラガと戦えるほどの凄腕にまで成長していたのだ。よほど才能があったのか、教えを受けた師匠たちが凄かったのか。だが一番の理由はあの訓練に脱落せずに付いてきた根性にあるのだろうとマリューは思う。トールやフレイが受けていた特訓は、マリューやナタルから見ても過酷と思うほど凄いものであったから。

 



 真夏に入ったオーブは暑い。赤道に近いから年中暑いと言われるかもしれないが、雨季と乾季という季節の違いはあるのだ。その猛烈な湿気と気温は大西洋連邦の気候に慣れているフレイとラクスには辛いものであった。だが2人とも久しぶりに街に出てショッピングをしたりケーキを食べ歩いたりと、それなりに楽しんではいた。そんな少しバテ気味な2人を元気な声で引っ張っているのがオーブ生まれで暑さも平気なマユだった。

「お姉ちゃんたち、こっちこっち!」
「マユちゃんは元気よねえ……」
「地元の方ですから。ですが案内していただいた店のケーキは確かにおいしいですし、頑張りましょうフレイさん」
「そうね、私もまだまだこの街を知らないからね」

 暑さに参ってはいても、甘いお菓子は食べたいのか2人は元気の塊のようなマユの後について歩いている。そして、それに続くようにして歩いているシンはドンヨリとした顔で隣を歩くキラにこの不条理を問いかけた。

「キラさん、1つ聞いて良いすか?」
「なんだい、シン?」
「何で俺まで連れて来られてるんです?」
「たまには良いだろ、戦場から帰ってきたんだ、少しくらい羽を伸ばそうよ」
「俺には今の状況が羽を伸ばせてるとはとても思えないんすけどねえ?」

 シンは両手に下げている沢山の紙袋を少し掲げてキラに抗議と非難の視線をぶつけたが、キラはそれを完璧に無視していた。ついでに言うと彼らの後ろにはカズィも居たのだが、此方はもう付いていくので精一杯という有様だったりする。
 何故シンとカズィがここに居るかといえば、フレイとラクスの2人を相手に自分だけではどうにも心細いと感じた彼がマユを誘い、マユと一緒にシンも引きずり出したのだ。更にカズィに電話をして遊びに行こうと行って誘い出し、彼も巻き込んだ。
 結果としてキラの悪い予想は的中し、女性陣は久々のショッピングで思う存分に買い物をしまくり、買った商品を男どもに持たせていたのだ。このあたりの事をフラガやトールから散々に愚痴られていたキラは同様の運命が自分にも降りかかると読み、負担を分散しようと2人の犠牲者を作ったのだ。
 シンは巻き込まれたことに散々に文句を言っていたが、楽しそうにはしゃぎ回っているマユの姿を見ては相好を崩しており、そのシスコン振りを存分に発揮していたりする。実は一部からはステラにも手を出していた事からシスコンではなくロリコンではないか、という疑惑も上がっている彼だが、流石にそれは無いだろう。
 そして今回は間違いなく唯の被害者であるカズィは本当なら不満が山ほど出てくるだろう状況なのだが、何故か彼は一言も文句を言わずに黙々と歩いていた。まあ単に疲労困憊していて文句を言う気力が無いだけなのだが。


 そんなカズィの様子を見兼ねたのかフレイがホテルのレストランで食事をしていこうと言い出した。そこはオーブでもそれなりに名の知られた高級ホテルであり、案内されたキラたちはあまりの場違いさに呆然とそれを見上げている。こんな場所に縁があるのはフレイとラクスくらいだろうか。
 呆然としているキラたちにフレイは払いは自分が持つから大丈夫だと言って先頭を切って中へと入っていき、ラクスが自然とそれに続いていく。そしてそれに続いてどうにも臆した様子の4人が恐る恐る中へと入っていくと、ホテルの従業員らしき男性が畏まった様子で4人をフレイたちが向かった席へと案内してくれた。フレイは何やら急ぎ足にやってきた男性の挨拶を受けているが、何か関係でも有るのだろうか。
 フレイたちは窓際の周囲からは見えないようにアンティークや樹木で隠された席に座っており、余り人目に触れたくないラクスへの配慮が伺えた。そこでフレイはメニューをキラたちに提示し、何でも好きな物を頼んで良いと気前良く言ってくれたのだが、本当に大丈夫なのかと不安そうなシンにフレイはくすくすと笑いながら事情を教えてくれた。

「大丈夫よ、ここうちのホテルだから何頼んでもタダにしてあげるわ」
「……はい?」
「ソアラがねえ、私が軍務に戻った間に価値が低下してたオーブの色んな会社に乗っ取りをかけたらしいのよ。おかげでオーブの幾つかの主要企業を傘下に収めちゃったのよね。このホテルもそんな買収した物件の1つよ。まあ私はオーナーで、経営は人任せなんだけどね」
「くっ、スケールがでか過ぎて嫌味に聞こえないのが余計ムカつく。これだからブルジョワ階級は」
「ホテル1つを丸ごと買収なんて、僕らじゃ想像も出来ないよなあ」
「大西洋連邦の金持ちはオーブとは桁が違うって聞くけど、何だかなあ」

 フレイの説明を聞いたシンは脱力してメニューに顔を隠しながら怨嗟の声を漏らし、キラとカズィが改めてアルスター家の凄まじさを思い知らされたようにボソボソと話している。このアルスター家でもアズラエル家に較べれば大した事無いのだが、彼らにはそんな世界は創造の埒外にあった。
 そしてフレイはそんな男どもの愚痴りあいなど全く気づくことはなく、マユにデザートのメニューを示して何でも好きな物頼んで良いよと言ってマユを喜ばせていた。その隣ではラクスがメニューのカロリー表示を前に額に険を浮かべ、結構真剣に悩んでいたりする。プラントを脱出してメンデルに移って以降、生活サイクルが乱れまくった上にストレスも重なってスタイルが崩れ気味だった彼女の悩みはかなり深刻であった。


 暫くして食事が運ばれてきて、6人は昼食を開始した。それを口に運んだフレイを除く5人はその美味に舌鼓を打ち、育ち盛りの食欲を発揮してパクパクとそれを口に運んでいく。特にラクスは驚きさえ浮かべている。

「凄いです、プラントでもイタリア料理は食べられますが、何故こうも味に差が出るのです?」
「材料の違いじゃないかしら。プラントの人口の環境で作られた食材じゃ再現しきれないものがあるんでしょ。こういうのは工業製品じゃないからね」
「輸入で食料を運び込んでいたりもしていたのですが、地元には及ばないという事ですか?」
「う〜ん、まあ地元なりの良さがあるしね。同じ料理でも地方によって微妙に味が違うし、作り方にも差があるし」

 世界中食べ歩いた経験でもあるのか、フレイは各地の料理の差についてラクスにあれこれと話し出した。ラクスはその話を興味深そうに聞いており、時折なるほどと頷いている。だがその様子を見ていたキラは何だか急に顔色が悪くなり、脂汗をだらだらと流しだした。

「ん、どうしたんすかキラさん、食あたりでもしました?」
「い、いや、そうじゃないけどね、は、はははは……」
「無茶苦茶怪しいんすけど?」

 シンは不信げにキラを見ていたが、キラは引き攣りまくった笑みを浮かべる事しか出来なかった。キラはラクスの興味が料理へと向かう事を恐れていたのだ。彼女の料理はもやは劇薬の類と言っても良い。最高のコーディネイターである自分の身体に甚大なダメージを与え、幾度も死線を彷徨わせたあのラクスの料理をまた振舞われたりしたら、今度は死ぬかもしれない。その恐怖がキラを震え上がらせていたのだ。

 だが、恐怖に震えるキラとシンの隣で黙々と食事をしていたカズィが、ふとレストランの片隅に見慣れた2人の人間を見つけて驚きの声を漏らした。

「あれ、あの人たちは」
「どうしたのカズィ?」
「ソアラさんとユウナさんがいるんだ。ほらあそこに」

 カズィが指差す先には確かにユウナとソアラがいた。何故こんな所に2人が、それも2人っきりで会っているのだろう。ユウナは仕事に使う普通のスーツのようだが、ソアラは滅多に着ない外出用の私服を着ている。不審に思った5人、マユはデザートのアイスに夢中、はばれない様に注意しながらこそこそと樹木の陰に隠れながら距離を詰め、2人の話に耳を傾けた。
 だがやはり距離が遠くて上手く聞こえず、じれったくなったフレイはキラに聞き取るように言った。

「キラ、貴方なら聞こえるでしょ、私たちにも教えてよ」
「何で僕なら聞こえるのさ?」
「貴方の体は最高のコーディネイターなんでしょ、こういうときに役立てなくて何時使うのよ?」
「…………」

 僕の体は世界で一番金をかけた盗聴器なんでしょうか? フレイに断言されてしまったキラはそんなことを思ってしまい、何だか悲しくなってしまった。最高のコーディネイターという自分の呪われた出生が急に安っぽいものに感じられてしまったのだ。
 そしてフレイのその評価を聞いてしまったラクスは、きっとキラの生みの親であるユーレン・ヒビキがこれを聞いたら絶望するのだろうなと場違いな感想を抱いていたりする。
 キラは心の中で僕の価値って一体? と悩みながらも言われたとおり耳に全神経を集中し、距離の離れた場所にいるユウナとソアラの会話を聞き取り始めた。

「お心遣いは嬉しいのですが、私はアルスター家に仕える者です。お嬢様を残しては……」
「君はいつもそうだね。自分の為に、とは考えないのかい?」
「私は今でも十分に報われているつもりです。それに最近は来客も増えて賑やかになりましたし」

 何だか変な話だ。ソアラの転職先でもユウナは斡旋しているのだろうか。この事をキラから聞かされたフレイは流石に顔色を変えてしまっている。
 そして話は更に進んだのだが、それはだんだんとキラの予想外の方向に向かいだしていた。ユウナの声にこもる熱意が増したように感じられ、少し興奮しているような感じになりだした。

「でも、僕の話ももう少し考えてほしいな。これでも本気で君が欲しいと言ってるんだよ?」
「ですが、お嬢様はまだ成人されていませんし……」
「別に彼女と縁を切れといっているわけではないんだ。それに必要なら此方で使用人を手配しても良い。あそこなら募集すればすぐに応募があるだろう」
「もう少し、時間を頂けませんか。すぐに決められるような事ではありませんから」
「……ああ、そうだね。僕も少し強引だったかもしれないな。では今日はこれで引き上げさせてもらうよ。返事は君に任せるから、何時でも連絡してくれ」

 何だか申し訳無さそうなソアラの態度に頭が冷えたのか、ユウナは今日はこれで、と告げて立ち上がろうとしたが、そのユウナにソアラが問いかけた。

「ユウナ様、この事はカガリ様には?」
「いや、まだ話していない。でもカガリだって子供じゃないんだ、きっと分かってくれるよ」

 ユウナはそう答えてレストランを後にした。ソアラはその後も暫くその場でじっと考え込んでいたが、やがてバッグを手に取ると彼女も出て行った。それを隠れながら見送った5人はこそこそと席に戻り、先の話はどういうことかと真剣な顔で語り合っていた。

「何でユウナさんとソアラがこんな所で会ってるのよ?」
「先ほどの話からしますと、ユウナ様がソアラ様に何か頼み事をなされていたようでしたが」
「カガリに話すと不味い事で、ユウナさんとソアラさんが関わる事。というより、ユウナさんがソアラさんを欲しがってる感じだったよ」

 フレイとラクスが首を傾げ、キラが声から感じた印象を告げる。それを聞かされたシンとカズィがう〜んと腕を組んで悩みだした時、それまでオレンジジュースを口にしていたマユがストローから口を離すと兄に向かってとんでもない事を言い出した。

「何だか、TVのドラマに出てきそうなお話だね」
「TVドラマって、どんな?」
「ほら、ドラマで結婚してくれって言うシーン。そんな感じになってるでしょ?」
「ああなるほど、言われて見れば確かに……」
「おい、それってひょっとして?」
「ちょっと洒落にならないんじゃないかなあ?」

 マユの何気ない感想を聞いたシンとカズィとキラが顔色を青褪めさせる。その変わりようを見たラクスがどうしたのかとフレイに聞くと、フレイは頭を抱えながらユウナはカガリの婚約者なのだと教えてやった。
 それを聞かされたラクスはなるほどと頷き、ユウナとカガリは仲が悪いのかとフレイに聞いてそんなことは無いという答えを得るとどうしてだろうかと首を傾げてしまった。

「仲が悪い訳でもないのにこういう話をしているという事は、カガリ様をユウナ様は恋愛対象とは見ていないという事でしょうか?」
「う、う〜ん、どうなのかなあ。カガリはユウナさんを唯の幼馴染だって言ってたけど、ユウナさんの気持ちは聞いた事無いし」

 でもまさかそんな事が、と思うフレイ。カガリとユウナはあれで結構上手くいっているコンビだったのに、仕事と恋愛は別問題という事なのだろうか。いや、そもそもあの色恋沙汰など噂も立った事の無いソアラがいきなり結婚話をしているなど信じられない。
 だが、悩むフレイとラクスとシンを差し置いてカズィだけは何故か納得したように頷いていた。

「まあユウナさんの気持ちも分からないではないなあ」
「何でよカズィ?」
「だってさ、カガリって何かあるとすぐ殴るだろ。あれがきっと嫌だったんだよ」
「う……」

 確かにユウナに対するカガリの暴虐の数々はオーブ行政府の中でも話の種になるほどで、ユウナは良く耐えているなあと職員たちから尊敬の眼差しを向けられている。実際自分も幾度かその現場を目撃した事があるのだが、大抵はユウナがカガリに余計な事を言って怒らせた時だったので仕方が無いかと思っていたのだ。それにユウナの方もカガリの反応を楽しんでやっている節があった。
 実は平気そうに見えていても内心では鬱憤が溜まっていたのだろうか。それともカガリとの関係はあくまで友人であって、婚約はあくまで政治的なもの、と割り切っていたという事なのだろうか。
 そしてふと過去の自分のキラに対する所業にも考えが行ってしまったフレイは、ひょっとしてキラも溜め込んだりしてるのではと不安に思ってそちらに目をやると、キラは何故か携帯電話を取り出して何やら操作をしていた。

「キラ、貴方何やってるの?」
「え? ああ、とりあえず状況をカガリに教えてたんだ。ユウナさんが浮気してたよって」

 フレイの問いに当然のように答えてくれるキラ。だがそれを聞いたマユを除く4人は愕然とした顔になって顔色を青褪めさせ、そして話に参加していなかったマユが締めくくるようにポツリと呟いた。

「ドラマだと、こういう時は泥沼コースに行くんだよね、お兄ちゃん」

 マユの一言は余りにも核心を突き過ぎていて、キラを除く全員が絶句したまま頭を抱えてしまった。このまま黙っておいてどういうことかを問い質した方が状況がこんがらがらずに済むだろうに、何でカガリをいきなり巻き込むか。
 そして事態は、マユの言葉通りに混迷の度合いを深めていくのである。




機体解説

GAT−04  ウィンダム

兵装 ビームライフル 又はガウスライフル
   ビームサーベル×2
   頭部40mmバルカン×2
   ABシールド

<解説>
 X04の正式量産モデル。ストライクダガーの後継機と位置付けられ、総合的な性能面では現行の地球軍MSでは最高の物を持つ。試作ウィンダムで起きていた不具合はあらかた潰されており、量産機として満足しうる仕上がりとなった。
 試作機と大きな変更点は無いが、操縦システムに神経反応ヘルメットを介した制御システムが導入されており、機体の追従性能が飛躍的に向上している。これによって大西洋連邦技術者の求めていたコーディネイターと互角に戦えるナチュラル用MSが完成した。
 シールドは剥き出しのミサイルへの被弾による誘爆などがあり、撤去されて普通のABシールドとなってしまった。この為火力不足が懸念されたが、追加オプションをハードポイントに装備する事で補っている。一番多いのは背負い式リニアガンや短距離ミサイルポッドである。この他に試作機で露見した対弾性能の不足の対処として胸部とスカートの正面にABモジュラー装甲を追加装備されている。




後書き

ジム改 遂に量産型ウィンダム登場、その性能はクライシスになんら劣らぬ化け物だ。
カガリ まあ元々がバックパック換装出来ないクライシスだったしな。
ジム改 間違ってもバイオセンサー装備と言ってはいけないぞ。
カガリ 他にどう突っ込めというのだ。でもこれ強すぎ。
ジム改 まあザフトのザクウォーリアも試作ザクに負けぬ高性能機なんだがな。
カガリ ところでうちには新型は?
ジム改 オーブにそんな余力は無い。
カガリ とほほ、まだ当分M1で頑張るのか。M2やムラサメは出ないのかなあ。
ジム改 あれでもダガーLやゲイツRと同等なんだけど。
カガリ M1は装甲紙だから被弾すると終わりなんだよお、パイロットが帰ってこないだろ。
ジム改 深刻な悩みだな。
カガリ なんでM1は装甲が紙なんだろうな。
ジム改 戦車と同じだな、どうせ防げ無いなら軽くして回避すれば良いじゃない、って考えだ。
カガリ 上手くいくのかそれ?
ジム改 第2世代がその考えで作られてて、当時は砲弾が遅かったから見てから回避は不可能じゃなかったらしい。
カガリ でも廃れたのか?
ジム改 APFSDSという超高速砲弾の登場やミサイルの発達でな。
カガリ うちのM1もその状態なんだよなあ。
ジム改 まあ複合装甲というふざけた装甲の登場でこれを防げるようになり、第3世代が出て来るんだが。
カガリ ウィンダムとかがその世代になる訳だな。
ジム改 その世代というか、第1世代の試行錯誤状態のような気が。
カガリ それでは次回、ユウナの浮気が元で嵐が吹き荒れるオーブ。ソアラとカガリの間で悩むフレイ。連合の攻勢にクリントも頑強に抵抗し続け、その頑張りは遂にザフトを動かした。ウィリアムスを中心とするクリントへの補給作戦が動き出す。だが同時に地球軍も。次回「複雑な気持ち」でまた会おうな。って何だこの台本は!?
ジム改 次回予告の台本だが?
カガリ 私は認めんぞお!


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