第169章  灰色の襲撃者


 

 そこはお世辞にも活気があるとは呼べない、明らかに外界とは隔離された場所にあった。そこに至るには複数の人間が守るゲートを抜ける必要があり、その場所の重要性を嫌でも認識させてくれる。
 その中の一室で、クルーゼの側近であるゼム・グランバーゼクは1人の男と会っていた。その男の顔は無精髭に覆われ、長期間にわたって監禁されている事を伺わせるが、その目には見る者を無言で怯ませるだけの眼光が備わっており、胆力に優れるゼムでさえ内心で意識していないと気圧されそうになるほどのプレッシャーを発していた。ただ酷く衰弱してはいた。食事などをギリギリしか与えていないのだろうか。

「シーゲル・クライン、いよいよ地球軍がプラントに進軍を開始しましたよ。プラント最後の日がもうすぐそこにまで来ています」
「貴様ら、分かっているのか。プラントが滅びればお前たちも無事では済まんのだぞ」
「それは勿論承知しておりますよ」
「承知していて、こんな事をしているわけか。狂っているな」

 自分が死ぬことを厭わず、ただ破壊だけを求める。それは狂っていると言う以外に表現する事の出来ない存在ではあったが、同時にそこまで追い詰められるほどに暗い過去を持っているということでもある。彼らは自分の命より復讐の方を選択しているのだ。
 何故そこまで自暴自棄になれるのか、と問いたい気持ちはあるが、問うてもまともな返事は得られまい。自分の命さえ惜しくないのでは交渉の余地さえ無いのだから。

「そんなに世界が憎いのか。私には分からんな、全てを憎んでなんになる?」
「別に何かが欲しい訳ではありません。人類が滅びる事、少しでも苦しむ事が望みと言えば望みですがね」
「その為にプラントを利用して最終戦争を目指す、か。それだけの事が出来るなら、もっと前向きな事をすればよかろうに」
「……そうですな、遺伝子操作などというふざけた事が流行らなければ、我々も前向きに考えていたかもしれませんな」

 それは既に手遅れだという宣告、人類の業が生み出した闇を消すには何十年か時を戻さなくてはならないのだと突きつける言葉だった。シーゲルの言う事は前向きに生きられる世界で生きてきた恵まれた人間の傲慢な発言であり、世界には前を見る事さえ出来ない生き方を強制されている人間が幾らでも居るのだ。
 そしてそれは、シーゲル・クラインという政治家の責任だとも言えた。どれ程言い訳を重ねようと、今の世界を作り上げたのは世界の政治家なのだ。勿論世論の後押しや偶然、時代の必然といったどうしようもない要素はあるだろうが、それが政治家の責任を完全に免責してくれるわけでは無い。
 そんなシーゲルの悔恨の表情が楽しいのか、ゼムは彼に驚愕するべき情報を伝えてやった。それは世界がまた1つ滅びへと向かう事を意味する言葉であった。

「そうそうシーゲル・クライン、いよいよプラントを守る希望の大砲が完成間近ですよ。既に一部は試運転が開始されています」
「……まさか、ジェネシスを!?」
「ええ、既に幾つかのミラーも完成しています。このままいけば1月もあれば試射にこぎつけるでしょうね。そしてあんな物を撃たれれば、地球側も必ず報復に出る。ふふふ、全くどちらも面白いように踊ってくれますよ」
「貴様等……」
「まあ、最も危うく我々の努力が水泡に帰す寸前までいった事もありますが。貴方たちが水面下で進めていた講和計画、アレがラクス・クラインの決起と連合のアラスカ放棄で拗れなければ全てがご破算になるところでした。そういう意味では貴方たちは実に恐ろしい相手でしたよ」

 そう、ラクスが何もしなければ、アラスカで決着が付いていれば戦争は半年前には終わっていた。それを考えればラクスの罪の大きさは計り知れない物がある。娘の責任を問われてシーゲルも収監されてしまったのだから。まあ、現在収監されているのは彼が密かに進めていたNJCのナチュラル側への供与計画の為なのだが。マルキオと共謀して進めていた計画がばれてしまい、本当に犯罪者扱いされているのだ。
 



 集結を完了した第8任務部隊の主要な人物は旗艦であるアークエンジェルに集まり、マリューは初めて第8任務部隊の指揮官たちの顔を拝む事になった。その中にはナタルやロディガン、イアン、キースといった知っている顔もあるが、半数以上は見た事の無い顔だ。
 集まった指揮官たちはそれぞれに自己紹介を行ってマリューとの顔合わせを行っていたが、印象として残ったのはやはり若いという事、そして階級が不自然なまでに低いという事だ。まあ指揮官であるマリューでさえ26歳で中佐という、平時ならふざけるなと言いたくなるような階級についている訳だが、それでもこの規模の部隊の指揮官に中佐は無いだろうと言いたくなる。本来なら少将が指揮する規模の部隊だ。
 だが、今の地球連合の人材の払底振りは凄まじい。正規艦隊を指揮する提督級でさえ少将や准将であり、任務部隊の指揮を大佐や中佐が取るのは常識ではありえないが、現状では止むを得ない事となっている。他の艦隊でも状況は似たような物なのだ。駆逐艦の艦長が中尉、という事さえある。下積みを積んだ艦長などもうあまり残っていないのだ。
 その指揮官たちを前に、マリューは僅かな気後れを滲ませながらもこれからの作戦を全員に伝えた。

「第8任務部隊はこれよりクリントを攻略に向かいます。目的はあくまでも占領であって破壊ではない事に気をつけて下さい。陽電子砲の要塞への使用は厳禁とします」
「となると、我々の任務は海兵隊の要塞への突入が最優先になりますね」

 マリューの話は各艦の艦長も知っていた事なのでとりわけ目新しい物ではなかったが、ナタルは真面目に考えていた。実のところ、この編成なら破壊を目論んだほうが早いのだ。アークエンジェル級4隻があれば8門のローエングリンが使用可能となる。これだけあれば数度の斉射で要塞を破壊する事が可能なのだ。
 だが今回の目的は破壊ではなく占領、つまりここをボアズ攻略の橋頭堡として使うつもりなのだ。となると宇宙港を潰すのも拙い事になり、大火力を集中して要塞をズタボロにするのも困るという事になる。

「となると、MSによる接近戦で敵の防空火力と迎撃部隊を叩いた後、揚陸艦を送り込むという事になるか」

 イアン・リー少佐が面倒な事だと言いたそうな顔でそんな事を呟く。MSとはそういう仕事をするのに適した兵器ではあるが、こちらに被害が出るかもしれない作戦だ。どうせなら犠牲は少ないほうが良いに決まっている。
 だがやらなくてはいけない。この中では最年長のロディガンが苛立っているイアンをそう言って宥め、そしてマリューにこれからどうするのかを問うた。

「それで司令官、我々はこのままクリントに直進して攻撃するのですかな?」
「いえ、真っ直ぐ向かうと気取られますし、敵の哨戒部隊と接触するのも嫌ですから、迂回コースを取ります。デブリベルト寄りの航路を取り、可能な限り近付きましょう」
「まあ、何もしないよりはマシですか。ですがジャンク屋などが居るかもしれませんぞ?」
「彼らはザフトに通報はしないと思いますが?」
「いえ、彼らはアレでフリーという訳でも無いようです。連合寄り、プラント寄りの者も多いそうですからな。そういった連中に見つかれば厄介です」

 ジャンク屋の中立とは虚構であり、実際には双方の勢力に尻尾を振る者は多い。それ以前にその中立性に目を付けて連合もザフトもスパイ活動などに利用しているのだ。双方の間を公然と行き来する手段があるのならば、それを使わない手は無い。
 実際にジャンク屋に忍び込んで偵察活動を行っている大西洋連邦の部隊は存在するのだ。それを知っているイアンは同種の存在を警戒していたのだが、それはマリューから退けられてしまった。流石にそこまで気にしていては何も出来ない、と。
 イアンもそれは確かに、と呟き、それ以上は何も言わなかった。イアンが引いたのを見てマリューは全艦に航法データを送るからそれに従って動くようにと伝えて解散を命じた。それを聞いて会議室からぞろぞろと人が出て行ったが、人気が少なくなった会議室にいきなり轟音が鳴り響いた。一体何事か、と吃驚してそちらを見たマリューたちの前では、何時の間にか両手で100tと書かれたハンマーを握ったナタルがそれを振り下ろしてテーブルを1つ爆砕しているのを見てしまった。
 そしてその振り下ろされたハンマーと紙一重のところに危ない危ないと呟きながら立っている男が居た。

「また腕を上げたなナタル、とうとう人間凶器の域に達したか」
「黙りなさい、この性悪破廉恥駄目人間。今日という今日こそはその腐った性根を叩き直してあげましょう!」
「おお久しぶりに聞いたなその台詞、相変わらずセンスの無い奴だ」
「デカイお世話です!」

 再び電光の如き速さでハンマーが振り下ろされ、一撃の下に椅子が破壊される。その威力、スピード共にフレイなどとは比較にならないもので、流石は師匠である。だがそれを軽々と避けている男の方はもっと凄いかもしれない。
 何時もの冷静さをかなぐり捨ててハンマーを手に男を追い掛け回すナタルという、想像の埒外にある光景を目の当たりにしたマリューたちは暫し脳がフリーズしてしまい、何が起きているのかを認識できないでいたが、ようやく理解したところでそれを止めに入った。

「ま、待ちなさいナタル、貴女何してるのよ。殺す気!?」
「この程度で兄上は死にません!」

 止めようとしたマリューにナタルは鋭く言い返して更なる攻撃を加えようとしたが、マリューに答えている間に男は何時の間にかナタルの視界から消えうせ、マリューの傍についてその手を取っていた。

「いや、まさかこのように若くて美しい司令官の下で戦えるとは、私はついていますな」
「あら、それはありがとう。でも手を握らないでくれます?」
「兄上、だからいい加減にしろと!」
「ふ、そう怒らないでくれナタル。僕が悪いんじゃあない、この人の美しさが僕を惑わしたんだ。困ったものさ、愛は常に僕を捕らえて離さない」
「……な、何なのこの人は? これだからイタリア人は……」
「いえ艦長、私たちは生粋のアングロサクソンです」

 手を払ったマリューが歯の浮くような台詞をポンポンと吐くこの男に流石に呆れた顔をしてそう呟いたのだが、それはナタルによって否定された。というかこれは本当にナタルの兄なのだろうか、フラガの兄弟と言われた方がまだ納得できるのだが。

「まったく、忙しいんだから早く艦に戻ってください。ええと……」
「レイモンド、レイモンド・バジルール少佐であります司令官。一応ナタルの先任で、現在は第28駆逐隊司令を任されています」

 そう言ってレイモンドは完璧な動作でマリューに敬礼をしてきた。その動作には全く隙が無く、礼儀作法というものを完璧に身に付けた上流階級出身のエリート将校である事を初めてうかがわせた。なるほど、エリートであの話術と甘いマスク、そしてやろうと思えばこんな模範的な軍人らしさも出せるとなれば、女性を引っ掛ける事も容易いだろう。
 そしてはははと笑いながら会議室から出て行ったレイモンドを見送ったマリューたちはコメントに困る顔でナタルを見る。彼女は既にハンマーをしまったようで、椅子に腰掛けてドンヨリと落ち込んでいた。

「何で、何であんなのが私の兄なんだ……?」

 どうやら余程嫌らしい。いや、確かに自分たちもナタルの血縁者と言われても俄かに信じられないのだが、本人がそう言ってるのだからそうなのだろう。そして落ち込んでいるナタルに変わってキースが少し細かい説明をしてくれた。

「俺も知った時は驚きましたけどね、まさかナタルの兄さんがあんな性格だったとは。フラガ少佐以上のプレイボーイですよ」
「ムウとは全く別のタイプね。ナタルが妙に潔癖症で身持ちが堅かったのも、あの人が反面教師になってたからかも」
「ああ、そうみたいですよ。兄のように女性をとっかえひっかえするような男は最低です、って言ってますから」
「それであんなくそ真面目になったのね。中身は潔癖純情少女だし」

 ナタルが25歳という年齢に似合わぬ純情と潔癖症を併せ持っていた原因が分かって納得したマリューであったが、これからあんな男を付き合っていかなくてはいけないのかと思うとマリューは気が重かった。
 そして、マリューとは全く違うベクトルで気を揉んでいる男もいたりする。

「くっ、あんな奴に負けてたまるかよ。連合の撃墜王は俺だぜ」

 ムウ・ラ・フラガ、その女性に対する戦歴では他者の追随を許さない男であったが、その地位を脅かすライバルの登場に焦りを見せていた。こんなんだから浮気がばれる度にマリューに折檻されているのに全く反省はしていないあたり、違う意味で尊敬に値すると言うべきか。彼の直弟子に当たるトールに浮気癖が出来たのは仕方の無いことだったのかもしれない。




 ヴァンガードと2機のウィンダムが激突している。ビームサーベルを手にしたウィンダムがヴァンガードに接近戦を仕掛け、ライフルとフライヤーを使うウィンダムが援護をする形になっていて、ヴァンガードが少しずつ追い込まれていく。
 ヴァンガードは加速性能に優れているのでウィンダムを振り切る事は容易い筈なのだが、真紅のウィンダムの銃撃とフライヤーが加速に入るのを悉く阻害していた。まるで此方の動きが全て見えているかのような見越し射撃と巧みなフライヤーの配置にヴァンガードを駆るシンは悲鳴を上げていた。

「何なんだよこれ、逃げ道が全部塞がれてるなんてアリかよ!?」
「シン、文句言ってないで動きなさい、模擬戦なのよ!」
「フレイさん、そのフライヤーっての卑怯だろ!」
「戦場に卑怯なんてあるわけ無いでしょ!」

 実際のところ、フレイはまだ手心を加えている。未だに両足のスターファイアミサイルを使っていないし、フライヤーもリニアガンしか撃っていない。切り札である複合誘導弾を封じているのだから文句を言われる筋合いは無い。
 それに今回の自分は助攻に徹すると決めているので、ヴァンガードを落とす気は無いのだ。この訓練はトールに誘われての物で、彼が腕を磨きたいだけなのだから。フレイに逃げ道を塞がれているヴァンガードに対して果敢に接近戦を挑んでいるトールの姿を観察しているフレイは、トールの接近戦での強さを改めて確認させられていた。

「良く動くわよねえ。昔から上手かったけど、また速くなってるじゃない。距離詰められたら私じゃ勝てないかもね」

 ヴァンガードの突撃槍は対ビームコーティングされた柄と高速振動する高周波ブレードの刃を持つ致命的な武器であり、これを防ぐ事の出来る防具は現在のところレギオンやカタストロフィ・シリーズの一部が装備する光波シールドだけだ。PS装甲やABシールドも容易く切り裂かれてしまう。
 だがトールもそれは良く知っているようで、右手にビームサーベルを持ち、左手にガウスライフルを持って対抗している。対ビーム防御が完璧なヴァンガードの相手をするには実弾が一番効率が良いのだ。
 右手でスピードを重視したコンパクトな動きで連続でビームサーベルを振るうトールに、長い柄を持つヴァンガードの突撃槍は間合いに入られないように必至に動き回っているのだが、それをフレイに邪魔されている為にシンはトールと格闘戦をする羽目になっていたのだ。

「くっそお、トールさんしつこいってば!」
「フレイとの約束でね、あいつが足止めて俺が斬るって!」
「2人がかりなんて卑怯だと思いません!?」
「何言ってんだ、2人じゃなくて3人がかりだろ?」
「……え?」

 そう、ケーニッヒ小隊にはこの2人のほかに、もう1人居るのである。その弾幕射撃によって敵の動きを封じ込め、味方を支援する為の機体がこの場には居ないのだ。それを思い出したシンは慌てて周囲に索敵をかけ、天頂方向に探している物を見つけて悲鳴を上げてしまった。

「ちょ、嘘おお!?」
「シン、お前の負けだぜ!」

 ガウスライフルを撃ちながらトールが僅かに距離を取り、次の瞬間には真上から物凄い弾丸のシャワーが降り注いできた。スティングのマローダーが天頂方向から新型のリニア・ガトリング砲を放ってきたのだ。これはガウスライフルと同じ弾丸を長大な加速バレルでガウスライフルよりも高速で発射する事が出来る。大型のガトリング砲なので連射性能にも優れており、強力な高速弾を驟雨のように降らせる事が出来るのだ。弾丸は腰に取り付けられた弾薬箱からベルト給弾で送り込まれてくる。
 これを真上から叩き込まれたシンは急いでシールドを上に向けて逃げようとしたが、間に合わずにシールドが連続した直撃弾の火花に包まれ、やがて耐久限界を迎えて砕け散る。その後は機体を火花が包み、ヴァンガードは撃墜されてしまった。


 直後、コクピットのモニターが全て真っ白になり、ハッチが解放された。汗だくになったシンは這い出るようにしてコクピットから出てきて、目の前の手摺にもたれかかるようにしてぐったりとしてしまっている。

「キ、キツイ、やっぱ一度に3人同時は無理だって……」
「何言ってるのよ、キラやフラガ少佐はもっと持ったわよ」

 先にコクピットから出てきたらしいフレイがタオルを投げて寄越し、それを受け取ったシンがヘルメットを脱いでそれで汗を拭き、そしてふうっと息を吐いた。

「でもやっぱり3人揃うと勝てないなあ。アルフレット少佐はこの条件で勝てるんでしょう?」
「義父さんは戦い方が上手すぎるわよ。シンと同じ状況でも、トールを盾代わりにされて私たちが撃てなくなってたわ」
「どうすりゃそんな戦い方が出来るんだか、俺には分からないなあ」
「まあ、その辺りはもっと考えるのね。それが分かるようになればキラにも勝てるかもよ」

 悩みこんでいるシンの頭をぽんと叩いて、フレイは自分のMSを見上げた。外見的には増加装甲が追加された以外には目立った変化は無いが、実際にはかなり改良されていると実感させられたこの量産型ウィンダム。これならばアスランたちが出てきても十分に対応できるに違いない。
 そんな事を考えていると、向こうからトールとスティングが何やら言い合いながらこっちにやってきた。

「だからあそこでもっと早くシンの動きを止めてればもっと早く始末できたんだよ」
「んな事言ってもさあ、ヴァンガードの足を止めるのがどれだけ大変だと思うんだよ」
「それをやるのがトールの仕事だろうが、今回の俺はとどめ専門だぞ」
「でもあの槍は一発貰ったら終わりって反則な武器だからなあ。接近するのは心臓に悪い」
「そりゃまあ気持ちは分かるけどな、マローダーのTP装甲でも防げねえってんだから確かに反則だ」

 どうやら先のシミュレーターの模擬戦の事で話しているようだ。スティングは強化人間の中では最も安定していて話がし易い相手であり、こうしてチームプレイをとる事も出来るし議論をする事も出来る。ドミニオンのブーステッドマン3人は昔に較べればマシになったとは言っても、相変わらず連携などは上手く出来ないらしい。
 2人が来たのを見てフレイはシンを誘い、食堂で何か食べることにした。流石に疲れたのだ。
 だが、この時整備ベッドではマードックたちがキラを交えて難しい顔をしていたのである。それはアズラエルが持ち込んできた新型装備の事であった。MS用の追加武装だったのだが、それはかなり物騒な代物だったのだ。

「試作の腕部粒子ブレードユニットに、量産型のエグゾスター粒子ビーム砲、ハードポイントに搭載するガトリングガンに背負い式ミサイルコンテナ、光波シールドユニットと交換で装備できる試作の小型エネルギー偏向装置、重斬刀みたいな高周波ブレード、ねえ……」
「凄いのか凄くないのか分からないですねえ」
「班長、このハイパーハンマーとかドリルとかはどうするんです?」
「……そんなのまであるのかよ」

 使えそうな物から使えなさそうな物、浪漫溢れる物まで至り付くせりの追加装備の山を前に、彼らは唖然としてしまっていた。というか、これのを本当に付けるのだろうか。幾つかは既に正式採用された物だから良いのだが、大半に試作と書いてあるのが何とも恐ろしい。こんな物を使わされる方の身にもなって欲しいものだ。





 第8任務部隊に先行する形でクリントに向かっていた第7任務部隊はワイオミング級戦艦ワイオミングを旗艦とし、姉妹艦のアーカンソーと空母1隻、護衛艦10隻を伴ってクリントに向かっていた。クリント攻撃に一度に投入される規模としては最大の部隊であり、制圧能力を持たないとはいえ、第8任務部隊が到着する前にクリントの防衛力を叩き潰す事は十分可能だろう。既にクリントは戦力をすり減らし、弱体化が著しいのだから。
 しかし、彼らはとにかく運が悪かった。彼らはよりにもよってアスランたちが張り巡らせていた哨戒網に飛び込み、彼らの攻撃を受けるというとんでもない目にあったのだ。本当なら第8任務部隊が襲われる筈だったのだが、功績争いが裏目に出た結果だった。


 多数の偵察機によって作り上げた哨戒線に第7任務部隊が引っ掛かった事を聞かされたアスランは、些か苦々しい顔でブリッジに上がってきた。

「艦長、敵艦隊を発見したとか?」
「はい、数は15隻前後、戦艦2隻、空母1隻を主力としているようです」
「15隻、ですか。空母も居るとなるとMSだけでも30〜40機は持っているでしょうね」
「どうなさいます、これを攻撃しますか?」
「……放置も出来ません、やりましょう」

 アスランはガルム隊の出撃を決定し、部隊をそちらに向かわせた。長距離攻撃が作戦であるが、なるべく近づいた方が楽な事に変わりは無い。それにアスランとしてはこの作戦に抱えている不安要素が大きすぎる事も気がかりであった。

「俺とジャックの機以外はこれが初陣とは、な。数は輸送船に詰めるだけ詰め込んで40機、質も数も足りないがやるしかない」

 幸いにして今回の攻撃は敵艦隊に近付いて抱えている2本の対艦ミサイルを発射し、全力で逃げ出す通り魔的な作戦だ。パイロットには敵艦に肉薄する度胸も敵機を振り切る技量も必要は無く、ただアスランの機体に付いてきて命令があったら敵艦をロックしてミサイルのトリガーを押せば済む。作戦とも呼べないような代物ではあったが、アスランに与えられた戦力ではこんな作戦以外にやりようが無かったのだ。
 苦々しい顔で宙域図を睨みつけるアスラン。その顔に僅かばかりの苦痛の色が浮かんでいる。久しぶりの前線勤務は未だに癒えたとは言えないアスランの体の傷を開いていたのだ。そう、アスランの抱える持病、胃痛が再発していたのである。

「……シホ、すまないが胃腸薬を貰ってきてくれるか」
「了解しました、ザラ隊長」

 アスランに言われてシホは艦橋から出て行った。医務室に向かったのだろう。それを見送ってアスランは少し寂しげな笑みを浮かべた。

「エルフィなら、こういう時何も言わなくてもクスリと水を出してくれたものなんだがな。やっぱりエルフィを連れてくるべきだったか」

 アスランが隊長となって以来、常に自分を補佐してくれたエルフィは、アスランの副官としては最高の人材だった。その事をエルフィを外した今になってアスランはしみじみと実感させられていた。何しろ顔色だけでアスランの体調加減まで察してくれたのだから。




 アスランたちが出撃したという知らせは周辺に展開していた打撃部隊にも届いた。シエラを旗艦とする本隊にもそれは届き、ブリーフィングルームで暇そうにしていたイザークたちにもその知らせは届けられ、イザークはそれを聞いて楽しそうな笑みを浮かべた。

「そうか、アスランめ、決断の早い奴だな」
「ですが、大丈夫でしょうか。NJの援護も無しで」
「あいつなら何とかする、というか何とかしてくれないと後が続かん」

 今回の作戦はアスランたちが第一撃を加えて混乱させる事が絶対条件なのだ。最初で躓けばマーカスト率いる打撃部隊は強襲をしなくてはならず、そうなれば自分たちも甚大な被害を覚悟しなくてはいけない。真っ向から勝負して圧倒できるなど、余程の戦力差が無くては出来ない事なのだ。
 イザークは仏頂面でそう返すと、置いてある菓子を1つ摘まんで口に放り込み、また視線を部隊の編成表に落した。急造部隊なのに時間が余りにも足りず、まだ部隊の編成が完全に頭に入っていないのだ。
 これを聞いていた同室のディアッカとデュラントは持ち込んでいたドリンクを賭けてトランプをしていたのだが、ようやく出番が来たと知ってトランプを片付けた。

「ようやく仕事だな、久しぶりの前線だ」
「そういやデュラントは殆ど教官勤務だったか、大丈夫かよ?」
「模擬戦は延々と繰り返してたから、まあ並の連中よりは出来ると思ってるぞ。それとも新兵の方が良かったか?」
「馬鹿言え、俺はまだ死にたく無いんでね」

 デュラントの問いに肩を竦めて負けを認めたディアッカはトランプを片付け終えると、何だかジトッとした目を部屋の隅に向けた。

「ところで、おっさんは何処の部隊なんだ?」

 ディアッカに声をかけられた男、ユーレクは読んでいた本から視線を上げると、何処の部隊にも入っていないと答えた。

「私は基本的に1人で動く、僚機などいても足手まといなのでな」
「あぁそうですかい、凄い自信なことで」

 ユーレクの傲慢としか思えない言葉にディアッカとデュラントは呆れた顔になっていたが、ディアッカはこの男のそれが大言壮語ではないことを知っているので馬鹿には出来なかった。何しろこの男、たった1機のM1でオーブの防衛線の一角を支え、特務隊の総力を相手に勝利しているのだから。
 ユーレクは呆れ顔の2人には興味が無いようで、視線を本に落して2人を無視してしまう。だが、最後に1つだけ文句をつけてきた。

「お前たち、あの家族団欒を何とかしろ、煩くてかなわん」
「いや、アレは俺たちにも理解不能な領域だし」

 ユーレクに言われたデュラントは困った顔で言われた方を見る。そこには小さな机があり、ステラが知恵熱を出しながら必至に考え込んでいた。そして時折物欲しげな顔をイザークの方に向けるのだが、イザークはその度にガアァと威嚇していた。

「お前はその算数のドリルを解き終えるまでおやつはお預けだ!」
「うう……お菓子、ジュース……」
「隊長、そんなに辛く当たらなくても」
「こいつの為だ、文句言うな。大体お前はステラに甘すぎるんだよ!」

 どうやらまともな社会常識も無く、勉強のベの字も出来ない有様のステラにイザークの怒りが爆発したようで、イザークは自分で本屋に足を運んで買ってきたリトルスクールの教材をステラに渡して勉強をさせていたのだ。
 当然ステラに算数など分かる筈が無く、鬼のイザーク先生に足し算引き算からみっちり叩き込まれていたのであるが、ステラは普段は使わない頭を全力で回している為に過熱異常を起こしている体たらくであった。
 まあ、それでもコーディネイターの中でも優秀なイザークの教育ペースにどうにか付いていっているのだから、ステラは優秀だと言えるのかもしれない。

 だが、それを横目で見ていたユーレクは小さく吐息を漏らし、そして憂鬱そうに呟いた。

「エクステンデッドに勉強とは、酔狂だな。その娘も長くは無かろうに」
「エクステンデッド?」

 その呟きを捉えたらしいフィリスがユーレクを振り返ったが、ユーレクは既に自分の本に視線を戻しており、フィリスの問い掛けの視線を完璧に無視していた。




 クリントに進撃していた第7任務部隊は、そろそろクリントに対する攻撃準備に入ろうかとしていた時になって全く予想もしていなかった事態に直面していた。自分たちに高速で迫る移動物体多数を警戒配置についている駆逐艦のレーダーが捉えたのだ。

「どういうことだ、レーダーが艦隊に迫る目標を捉えただと?」
「はい、数は40、真っ直ぐこちらに向かっています」
「ザフトのMSなのか?」
「いえ、MSにしては速すぎますし、動きも直線的です。ミサイルではないかと」

 オペレーターたちの報告を聞いた艦長はザフトの長距離ミサイルかと考え、迎撃準備を指示すると共に司令部にそれを報告した。NJ干渉が無い以上、近くにザフトの艦隊はいないと考えて良いのだから。
 司令部も艦長と同じ判断をし、迎撃ミサイルによる迎撃を指示した。直ちに全艦の迎撃システムが起動し、迫るミサイルに向かって迎撃ミサイルの照準を合わせていく。レーダーが使えるので迎撃は容易だった。
 だが、ミサイルを発射した直後に異変が生じた。突然迫るミサイルの数が数倍に増えたのだ。それだけでなくレーダーに妨害の症状が出たり、それまで見えていた目標が突然パネルから消えたりするようになったのだ。

「艦長、目標がデコイを放出しました。それにECMを使っています!」
「デコイにECMだと、ミサイルがそんな事を!?」
「目標、加速しました!」

 迎撃用のレーダー波を受けた事で補足されたと気付いたのだろう。もう間違いない、これは敵機なのだ。司令官は全艦に迎撃態勢に入るように指令を発し、MS、MAの緊急発進を命じたが、これは間に合いそうも無かった。敵は余りにも近付きすぎていたのだ。


 迎撃用のレーダーに捉えられたことをロックオン警報で知ったシホは迷わずガルムに装備されている欺瞞装置をフルに使い出した。ECMにレーダー透過装置を作動させ、囮を射出する。僚機もそれに倣って囮を発射し、敵の迎撃ミサイルをそらせにかかる。これらが何処まで有効かは分からないが、やらないよりはやった方が良いのだ。
 だがここからが問題だった。ここからミサイルが接近するまでの間、自分の命をサイコロの出目にかけなくてはいけない。NJほどに効果的な妨害が出来ない以上、全ては運次第なのだ。経験豊富なアスランやシホといえども、これは精神を締め上げるような緊張を強いられた。

「た、隊長、本当に大丈夫なんでしょうか?」
「……こればかりは運だからな。まあ、お前は周辺への警戒と火器管制に集中しててくれ」
「は、はい!」

 アスランに言われてシホは自分の仕事に意識を戻した。それを感じたアスランはそっと通信機を切ると、シホに聞かれたくは無いことを呟いた。

「心配しなくても、死ぬ時は一瞬さ」

 こればっかりは運次第だと割り切って、アスランは全軍に増槽を捨てて加速するように指示した。こうなればもう突っ込むしかないのだ。



 加速したガルム隊を狙ったミサイルは妨害を受けてデコイに引っ掛かり、大半はガルムを外れていった。だがそれでも4機がミサイルの直撃を受け、木っ端微塵になって四散してしまう。そんな中で見事な回避運動でミサイルを振り切って見せたガルムもいた。第2部隊を率いていたジャックのガルムだ。

「エルフィ、フレア撃て。思いっきり動かすから舌噛むなよ!」
「了解、フレア射出。後は任せるわよジャック!」

 ジャック機からフレアが放たれ、ミサイルに最後の欺瞞をかける。そしてナチュラルでは有り得ない様な急激な機動でジャック機は自分を狙ってきたミサイル2発を見事に振り切り、自爆させる事に成功した。
 だがそれに喜ぶ間も無く、今度は正面からビームが襲ってきた。敵艦隊が艦砲射撃を開始したのだ。

「くそお、中々の火力じゃないか!」
「ジャック、どうする。ここからミサイルを撃って逃げに入る?」
「いや、もう少し距離を詰める。ECMを最大にしてくれ!」

 そう言ってジャックは更に機体を加速させた。それに続くように部下たちも一斉に加速して後続してくるが、それを見たジャックは舌打ちを隠せない。敵艦隊を攻めるなら多方向同時攻撃が基本だ。誘導弾が使えなかった旧世紀の攻撃機ではあるまいし、隊列を組んで一斉に発射して命中率を稼ぐ意味は余り無い。それよりも広く散開して思い思いの方向から突入して敵の砲火を分散させた方が良いのだ。
 だがこれが初陣の新兵にはそこまで望む事も出来ず、ジャックは20機近い部下を連れて固まって突入する事を余儀なくされた。だがそれは、敵艦隊の砲撃が集中する事を意味していた。
 地球艦隊はミサイルを突破されたのを見て防空陣を組んで砲撃を開始していた。特に2隻のワイオミング級は正面に背負い式に2基、後部に1基、下部に1基の計4基の連装ビーム砲ゴッドフリートを装備しており、側面には8門の主砲を向ける事が出来る。これは本級がアークエンジェル級などの艦載機の運用を主軸とした空母的な艦ではなく、砲力を重視した主力戦艦として作られた事を意味していた。
 ワイオミングとアーカンソーを中心に空母を守りながら砲撃を開始する第7任務部隊。この砲火に捉えられて1機、また1機とガルムが消し飛んでいく。命中率は決して良くは無かったが、それでも砲の数でそれを補っていた。
 考えられた陣形が生み出す火力密度は侮れる物ではなく、アスランはその密度にこれ以上の突撃を断念した。

「これ以上は無理だ、全機ミサイルを発射、離脱するぞ!」
「隊長、この距離では迎撃にどれだけ落とされるか分かりませんが?」
「構わない、これ以上すり減らされるよりはマシだ!」

 アスランはこれ以上仲間が減らされる事に耐えられなくなったのだ。それを察したシホが全機にミサイル発射を伝達し、自らも抱えてきた対艦ミサイル4発を敵旗艦らしい戦艦にロックオンして発射する。
 ミサイルを放ったアスラン機は急いで機体を引き起こし、戦場からの離脱を図った。他のガルムも次々にミサイルを発射して離脱していく。
 第7任務部隊の方はもう逃げていく敵機などには目もくれず、迫るミサイルの迎撃に全力を傾けた。ミサイルを放ったガルムなどに意味は無いのだから。ただガルム隊もすんなりと逃げられた訳ではなく、空母から出撃してきたコスモグラスパー隊の追撃を受けて8機を失っている。

 迫るミサイルに対して艦隊は短距離ミサイルランチャーから迎撃ミサイルを放ち、対艦ミサイルを絡め取っていく。それを突破してきたミサイルに対しては艦砲とCIWS、そして出撃したMSの火器が迎え撃った。
 この弾幕を掻い潜る事の出来た少数の幸運なミサイルが敵艦に襲い掛かる事が出来た。護衛についていた駆逐艦3隻が直撃の閃光を走らせ、旗艦ワイオミングにも直撃弾がでた。

「駆逐艦フィラデルフィア、セント・ロー、マスカンが被弾、応急対処中!」
「第2区画に直撃弾、居住区に被害が出ましたが損傷は軽微、現在対応中です。火災の危険は無し!」

 ワイオミングのラミネート装甲が対艦ミサイルの貫通を許さず、装甲表面で砕いてしまったようだ。被害は爆発による1次被害は無く直撃による装甲の凹み程度であり、後は衝撃で艦内に負傷者が出る2次被害が多少出た程度である。
 続々と上がってくる報告はさほど深刻な事態を伝えては来ず、司令官は安堵の息を吐いた。40機の敵機に襲われたにしては大した被害は出なかったようだ。

「一瞬どうなるかと肝を冷やしたが、まあ大した事が無くてよかったな」
「対MS戦術の研究の成果ですな。開戦期とは比較にならないほど防空火力も迎撃システムも格段に進歩していますから」
「だが、あれはMAのようだったが、ザフトは何時からMAを使うようになったんだ?」
「ミーティアとかヴェルヌとかいう化け物MAの小型版、というには今二つな火力でしたが」

 発射してきたのはたかだか4発の対艦ミサイル、1機で1部隊を壊滅させたミーティアやヴェルヌと較べると余りにも貧弱にすぎる。これが量産型とは思えないのだが、では何で今になってMAを出してきたのだろうか。

「我々と同じように、対艦攻撃をMAに任せる事にしたのだろうか?」
「それにしてはMSがいません。護衛無しで攻撃機だけで突っ込ませるのは唯の自殺です。それに少数の攻撃機だけでは攻撃力が不足です。現に今回の攻撃は奇襲となりましたが、彼らの攻撃は大した戦果を挙げていません。これが艦艇やMSを加えた物ならば我々は甚大な被害を蒙っていた筈です」

 参謀長も首を捻っている。ザフトの攻撃はどう考えても中途半端なものであり、苦し紛れの攻撃としか思えなかったのだ。確かに攻撃を受けて此方の陣形は崩れているし、被弾した護衛艦3隻も引き返すしかないだろうが、まだクリントへの攻撃を断念するほどではない。一体敵は何がしたかったのだろうか。
 その疑問に対する答えはすぐに得られた。レーダーと通信機がNJ干渉を受けていきなり正常に機能しなくなったのだ。

「NJ干渉です!」
「敵艦隊が出てきたのか!?」
「損傷艦の対処と負傷者の救助作業が終わっていません!」

 最悪の時に現れてくれたと司令官が呟き、そして敵の狙いがようやく分かった。敵は此方が救助作業を行っていて身動きが取れないところを狙って本命の攻撃を加えてくるという、かなり非情な策を考えていたのだろう。誰が考えたのかは知らないが卑劣な手を使ってくれる。

「救助作業は一時中止、作業クルーを収容しろ。全艦迎撃準備だ。MS隊とMA隊は周辺に展開急げ!」

 司令官の命令を受けて艦隊が慌しく動き出す。それまで救助作業を行っていたMSやランチが慌しそうに損傷艦から離れ、母艦へと戻っていく。残っている生存者には悪いが、救助作業をしながら戦闘など出来るはずも無い。戦闘が終わったらまた戻ってくるからなと言いながら戻っていく者も居たが、本当に戻ってこられる保証は無い。何故なら1時間もすれば彼らが救助を求める側になっているかもしれないのだから。
 そしてNJ干渉からおよそ3分、遂に第7任務部隊にザフトの第2波が襲い掛かってきた。2機のインパルスと数機のザクウォーリアという最新型MSを含むザフトのMS隊がやってきたのだ。




機体解説

ワイオミング級戦艦

兵装 連装ビーム砲×4
   側方VSL16セル×2
   8連装対空ミサイルランチャー
   75mmCIWS×24
   艦尾MS用着艦デッキ
   MS4機搭載

<解説>
 大西洋連邦がネルソン級の代替艦として建造した350メートル級新型戦艦。アークエンジェル級で得られたデータを参考に主力戦艦として完成されており、正面への火力はアークエンジェル級に劣らず、全方位に砲を向ける事が可能となり死角を無くした。船体は紡錘型の普通の形状であり、これといって奇をてらう点は無い。
 装甲にはクライシスやウィンダムに採用された第2世代ラミネート装甲を用いた複合装甲が採用されており、アークエンジェル級を上回る防御力を持っている。またMS搭載能力を有しているが、カタパルト等は装備しておらず、艦尾側の格納区画から出入りするだけである。
 大型の船体に余裕を持って武装や格納庫を納めるなど、設計は堅実な物があり、最新技術を堅実に纏め上げた実用艦だと言える。




後書き

ジム改 実は地球側で新型艦が出てきたのは初めてだったりする。
カガリ まあ殆ど改良発展型ばかりだったもんなあ。
ジム改 MSも大半はダガーの派生型だしな。ザフトの方がどんどん新型を投入している。
カガリ でも今更戦艦かあ、空母の方が良かったんじゃないか?
ジム改 空母はアガメムノン級で性能は十分だし。
カガリ アークエンジェル級の量産型は?
ジム改 あっちはバッチ3の改造を設計段階から取り入れたアークエンジェル級だから。
カガリ コストダウンのおかげで量産化、か。
ジム改 ある意味アークエンジェルを戦艦にしたのがワイオミング級だしね。
カガリ 次回はこれにイザークたちが襲い掛かるわけだが、なんかこいつら強そうだぞ?
ジム改 強いよ、強襲をやらされるくらいだから弱い事は無い。
カガリ ……イザークたちって数は多いのか?
ジム改 こんなはぐれ者がうじゃうじゃ居たらヤバイだろ。
カガリ つまり、結構強い奴等に少数で突っ込んで勝てって事か。無茶苦茶だな。
ジム改 まあ第8任務部隊よりは弱いし。
カガリ ありゃスパロボのロンド・ベルみたいなもんだろうが!
ジム改 それ言っちゃあお終いよ。それでは次回、第7任務部隊襲撃さるの報を受けて急ぐ第8任務部隊、第7任務部隊と交戦したイザークたちは意外な苦戦を強いられる事に。そしてクリントに入った輸送部隊は急いで物資の搬出を始めるが、彼等はクリントの惨状に言葉を無くしてしまう。そして駆けつけてきたキラはユーレクと激突する事に。次回「極点の炎」でお会いしましょう。


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