第40章  仮面の男


 南太平洋に浮かぶ客船上で、アズラエルとラクスは穏やかな雰囲気のままに会談を行っていた。そこは客船の1番上にある展望室で、周囲全てが見渡せるようになっている

「ようこそ、ラクス・クライン。無事にお会いできて、とても嬉しいですよ」
「私もですわ、ムルタ・アズラエル様」

 アズラエルの差し出した右手を握り返し、ラクスは薦められるままに椅子に腰をろした。その後ろに護衛役のダコスタが付いているが、その内心では冷や汗が滝のように流れ、胃がギリギリと締め上げられるような緊張感に堪えている。

『じょ、冗談じゃないぞ。あっちこっち殺気だらけじゃないか。この船にはブルーコスモスしか乗ってないのかよ!』

 ダコスタはチラリと自分の主を見た。眉1つ動かさないその姿はダコスタにはとても同じ人間とは思えない。この人の神経はきっとワイヤーロープで出来てるに違いないと、ダコスタは確信してしまった。
 ラクスはテーブルに置かれたティーカップに注がれた紅茶に迷うことなく口を付け、アズラエルは眉を軽く動かして驚きを現した。

「おやおや、紅茶に毒が入れてあるとは思いませんでしたか?」
「あら、この状況でそんな姑息な手段に訴える必要がありまして?」

 可愛く小首を傾げて問い掛けてくるラクスに、アズラエルは苦笑を浮かべて指を鳴らした。それと同時に周囲から殺気が消えていき、ダコスタはホッと安堵の溜息を漏らす。

「O・K、良いでしょう。どうやら君は話す価値のある相手のようだ」
「な、何だと、貴様、ラクスさまを試したと言うのか!?」

 気色ばんだダコスタをジロリと睨むアズラエル。その視線はまるでゴミを見るかのように禍禍しい。

「どうやら、部下の教育がなっていないようですねえ、ラクス・クライン?」
「いいえ、ダコスタさんはとても頼りになる方ですわ」
「・・・・・・ふむ、そうですか。まあ良いでしょう」

 アズラエルはラクスの前で組んでいた足を組みかえると、徐に話を切り出した。

「それで、貴方は私に何を言いたいんですか?」
「簡単な事ですわ、戦争を止めていただきたいんです」
「おやおや、それはまた・・・・・・」

 アズラエルは面白そうな顔でラクスの表情を観察したが、そこには一片の曇りも動揺も見られない。どうやら本気で言っているらしいと悟り、アズラエルは苦笑を失笑に変えた。

「ラクス・クライン。貴方はこの戦争がどうして起きたのか、理解しているのですか?」
「ナチュラルとコーディネイターの憎悪がぶつかりあった結果、と理解していますが?」

 ラクスの答えにアズラエルは失笑を浮かべながら幾度か手を叩いた。

「くっくっく、それでは40点という所ですね」
「他に何があると仰いますか?」

 ラクスの問い掛けに、アズラエルはわざと説明口調で話してやった。

「世の中、差別くらいのことで大国間の大規模戦争なんかが起きると思っているのですか?地域紛争とは訳が違うのですよ。連合諸国の指導者はそんなに愚かじゃありませんよ。戦争するのにいったいどれだけの金が必要だと思ってるんです?」
「では、何が原因だと?」
「簡単な事。経済と既得権ですよ。この戦争の根底にあるのは、プラントの持つ経済的価値を手放したくないプラント理事国と、搾取される事を嫌い、全てを自分の物にしたいプラントの経済対立があるんですよ。各国の指導者にとっては、ナチュラルだの、コーディネイターだのといった種族対立は、まあ、無いとは言いませんが、その表面的な1面、上辺を取り繕う理由でしかないんです。選挙戦なんかで言う奇麗事と同じくらいの意味しかありません。勿論、中には本気でコーディネイター殲滅を唱える議員もいますがね」

 アズラエルの言葉に、ラクスは初めて顔色を変えた。唇を噛み、表情に朱がさす。

「では、プラントが連合に経済的な利益をもたらせば、この戦争は終わるのですか?」
「連合としては、まあ不満はあるでしょうが、終わるでしょうねえ。少なくとも終わらせる方向へと向くはずです。必要も無いのに続けられるほど、現代戦というのは楽なものじゃありませんからね。誰だって破産したくは無いですから。もっとも、プラント側がそれで納得する筈も無いですが」
「何故ですか?」
「簡単ですよ。話して納得出来るなら、最初から戦争になんかなりません。プラントにしてみれば戦争に負けたわけでもないのに、またナチュラルに搾取される生活に戻るのでは本末転倒じゃないですか」

 そうなのだ。話し合いで解決できないから、人は戦争という解決手段を生み出したのだ。言って駄目なら力ずくで我を押し通す。それが古来より続くこの解決法であった。
 ただ、歴史が続いて行くに従って、世界は戦争を起すのに大義名分という衣を着せる必要が生じるようになった。昔のように領土が欲しいから、金や食料が欲しいから、その国が自分の邪魔になるから攻撃する、とは言えなくなったのだ。
 ならばどうすれば良いのか、答えは簡単だ。より分かり易く、かつ本音とは異なる綺麗事を取り繕うか、あるいは言い訳出来ない大きな事件を起こせば良い。今回の連合とプラントの戦争の発端も、ナチュラルとコーディネイターの確執から始まり、遂に血のバレンタインという事件が起きた事によるのだ。

「つまり、貴方1人がどれだけ頑張っても、戦争を終わらせる事は出来ないんですよ。もし出来るとすれば、連合とプラントの世論が戦争終結に完全に傾むいた時でしょうね。連合もプラントも民主国家ですから、世論が戦争を支持しなければ止めるしかなくなります」

 まあ、だからこそどの国の指導者も、世論を主戦論に向けるよう誘導するんですけどね。と続け、アズラエルは楽しそうに笑った。
 近代民主国家の誕生以来、民意が戦争を止められた例は少ない。だが、あるにはあるのだ。第1次大戦のドイツやロシア、第2次大戦のイタリアなどで、指導部が戦争を継続したがっても、国民や兵士が戦争を拒否した為に継続が不可能になったという事例だ。これは指導部が国民から見放されたという事だが、通常ここまで事態が悪化する事は少ない。余程酷い事にならない限り、国民は自分の国を支持するものだからだ。

「・・・・・・しかし、貴方個人はどうなのですか。アズラエル様?」
「何がです?」
「貴方個人は、この戦争を継続したいのですか?」
「愚問ですねえ。私はブルーコスモスですよ。せっかくコーディネイターを合法的に始末出来るこのチャンスを、手放したがる訳無いじゃないですか」

 何を馬鹿な事を言っているのだと言いたげに肩を竦めるアズラエル。だが、ラクスは視線に込めた力を弱める事はなく、じっとアズラエルを見ていた。

「アズラエル様は私との会見に応じられました。これはつまり、戦争以外の解決策があるということではありませんか?」
「・・・・・・・・・・・やれやれ、怖いお嬢さんだ」

 アズラエルは椅子から立ちあがると、のんびりと窓から外を見た。そして、ラクスの方を見ずに話題を突然変えた。

「そういえばご存知ですか。お宅の所の議長閣下、爆弾テロに狙われたようですよ」
「ええ、存じています」
「誰がやったのか、知りませんか?」

 アズラエルの問い掛けに、ラクスは暫く沈黙した。無言で紅茶を一口啜り、ソーサーに戻す。

「私は存じ上げませんわ」
「そうですか」

 アズラエルはラクスの方に身体を向けなおした。その表情には人の反感を買いそうな、どす黒い笑みが浮かんでいた。

「世の中には、人命は地球より重いという言葉があります。パトリック議長を狙ったテロリストも酷い事をしますよねえ」
「そうでしょうか。1人の命で数十万、数百万の人命が救えるなら、それはベストではなくとも、ベターな選択なのでは?」
「この時期にパトリック議長が倒れれば、プラントの戦争継続は危ぶまれる。なるほど、それは惜しい事をしましたね」

 ラクスの答えを聞くと、アズラエルはまた席に戻ってきた。両腕を床に乗せて手を組み、顎をそこに乗せる。

「良いよ、君。これまでに話してきたコーディネイターの指導者どもよりずっと良い」
「お父様や、パトリック叔父様の事ですか?」
「そう。君の父、シーゲルは潔癖過ぎた。そしてパトリックはコーディネイター至上主義に捕らわれていた。どちらも交渉相手としては問題があったよ。おまけにコーディネイターというのはとにかく結論を急ぎすぎる。なんでもかんでもその場で答えを出そうとするし、自分が正しいと確信してるのか、人の意見を聞かないしね」
「・・・・・・そう、ですね」

 それはラクスにも理解できた。確かにコーディネイターは結論を急ぐ傾向がある。高い理解力を持つがゆえにコーディネイターは話し合いというプロセスを重視しない。そして、一度出した結論を覆す事も少ない。高い知能を持つ彼らは自分の出した結論の正しさを重視する為、他人の判断より自分の判断が正しいと決めてかかる傾向があるのだ。
 評議会でもこの傾向は続いており、強硬派と穏健派の対立は深く、お互いに1歩も譲る気配が無い。
 だが、ラクスもそこまでは考えが及ぶのだが、じゃあ自分は他人に妥協できるのかというと、彼女も全く妥協する様子は無い。結局、彼女もコーディネイターなのだ。

 アズラエルは実に楽しそうに話す内容を変えた。それまでの探り合いから、一気に重要な話題へと移ったのだ。

「僕が貴方に求めるのは、貴方に協力する事で得られる利益です。僕は武器商人でもありますし、この戦争でかなり稼がせてもらっています。とはいえ、今の時代、軍需産業というのは余り旨味が無いもので、稼ぐと言ってもたかが知れてますけどね。ですが、貴方に協力する事でより大きな利益が得られるというのなら、講和に向けて僕も手を尽くしましょう」
「利益、ですか?」
「そう、貴方は戦争を終わらせたい。僕はより儲けたい。お互いの利害が一致するのなら、わざわざ殺し合う必要なんてありません。ついでにコーディネイターがプラントから出てこないという保証も欲しいですねえ。僕はコーディネイターが反吐が出るほど嫌いですから」

 アズラエルの問い掛けに、ラクスは徐にポケットから1枚のファイルを取り出した。

「これは?」
「外洋を航行できる大型推進器ですわ。まだナチュラルには無い技術です」
「・・・・・・ふむ、つまり、貴方は僕たちにプラントの隠している技術を提供すると?」
「悪い条件ではないと思いますけど?」
「確かに悪い条件じゃない。僕だってプラントの技術は喉から手が出るほどに欲しいからね。この戦争が続いて、プラントをフッ飛ばしたりしたら確かにそれらは手に入らなくなります」

 アズラエルの中でコーディネイターへの嫌悪感と、現実における損得感情が暫しせめぎあう。それをラクスは笑顔を浮かべながら見ていたが、この状況で笑顔が浮かんでいる事のほうがかえって不気味だ。傍らに立つダコスタなど、もうすでに緊張で顔色が青くなってきているというのに。

「良いでしょう、ラクス・クライン。貴方の提案はそれなりに魅力的です。ですが・・・・・・」

 そこで一度アズラエルは言葉を切り、ラクスを値踏みするように見た。

「今の貴方にはなんの力も無い。この場で貴方が何を約束してくれても、それは不渡りを起す可能性が高い」
「では、どうすれば良いのですか?」
「貴方に力がある事を証明していただきたい。貴方が起した行動如何で、僕も貴方を信じましょう」

 つまり、何かの結果を出せという事だ。ラクスもそれくらいの事は承知していたので、特に反論する事もない。

 これで会談は終わりだった。ヘリに乗りこむラクスを見送るアズラエル。その傍らに立つ部下がアズラエルに問い掛けて来た。

「宜しいのですか。あのような約束をしてしまって?」
「永久に続けるわけにもいかないからね。何処かで折り合いを付ける必要があるのさ。それに、彼女の方がパトリック・ザラより話が分かりそうだと感じたのは本当だよ」
「そうでしょうか?」

 部下が首を傾げるのを見たアズラエルは、口元を小さく歪めた。まるで、誰かを嘲るように。

「そうだとも。少なくとも、彼女はパトリック・ザラより相手にし易いからね」

 それに、とアズラエルは1つ間を入れて、妙な事を喋り出した。

「そういえば知っていますか、ザフトの中に連合への内通者が居るという話を」
「いえ、初耳ですが」
「複数のルートから連合に情報を流す士官が居るそうなのですが、今の所それが誰なのか良く分からないそうです。その狙いも、目的も分からないが、送られてくる情報だけはそれなりに確かなものばかり。変な話でしょう?」
「変と言いますか、気味の悪い話ですな」
「まあね。でも、今回会ってみて、もしかしたらその発信者は彼女かもしれないと思ったよ」

 アズラエルは飛び立っていくヘリコプターを見上げる。発信者の行動は明らかにザフトの、プラントの利益に反しており、普通のザフト軍人や役人がするとも思えない。第1、軍事機密とは素人がそうそう持ち出せるものではない。そうなれば、発信者はそれなりの組織に身を置いているという事になる。ラクス・クラインはそれらの条件を満たす、数少ない者であったから、アズラエルはこの発信者をラクスではないかと思ったのだ。

 

 飛び立つヘリコプターの中で、ダコスタはラクスに問いかけた。

「ラクス様、あの男、本当に信用出来るのでしょうか?」
「今はまだ何とも言えませんわ。ですが、あの方が戦争を止めてくだされば、それだけ犠牲となる人も少なく済むのです。今は信じましょう」

 ラクスはこう言うが、ダコスタにはアズラエルを信じる気にはなれなかった。何しろあのブルーコスモスの総帥である。コーディネイターとの約束など、平気で反故にするに違いない。
 だが、ラクスは不安そうなダコスタの背中を押すように語り掛けた。

「・・・・・・私達には、成さねばならない事があります。今は立ち止まれません」

 それは、ラクスの現在の状況を示す言葉でもあった。自分はもう立ち止まる事も、いや、振り返る事さえ許されない事をしてしまったのだから。
 ダコスタもその言葉には頷いたが、どうしても問い掛けたい事があった。アズラエルがラクスに問い掛けたあの言葉を、ラクスに確かめなくてはならない。

「ラクス様、1つお聞きしたい事があります」
「なんです、ダコスタさん?」
「パトリック議長襲撃事件の事です。ラクス様は、あの事件に何か関わっているのですか?」
「・・・・・・・・・・ダコスタさん。もし、そうだと答えたら、貴方はどうしますか?」

 ラクスの問い掛けに、ダコスタは小さく肩を振るわせた。彼は基本的に汚い手段を好まない人物だ。確かに汚れ役をやる事もあるが、好んでそういう事をする人物ではない。それが分かるだけに、ラクスはダコスタに話さなかったのだろう。

「綺麗事だけでは、世界の流れは変えられませんわ。もう手段を選んでいられる状況ではないのです」
「・・・・・・分かってはいます」

 ダコスタにもそれくらいの事は分かる。だが、自分のやっている事に胸を張る事が出来ないというのは、なかなかに辛いものがあるのだ。

 こうして、ラクスとアズラエルの会談は終わった。戦争を望んだ死の商人と、平和を望む歌姫。この水と油のような2人が妥協点を見つけ合う事がはたして出来るのだろうか。

 

 


 そして、ラクスもアズラエルとの戦いとは違う、血と硝煙、泥に塗れる戦いが、今も何処かで行なわれているのだ。
 そう、ここでも・・・・・・・

 アークエンジェルが着陸した場所は、ドゥシャンベにある飛行場だった。全身ボロボロになったその姿は見ていて引くものがあるが、歴戦の勇者というふうに見ることも出来る。そして、降り立ったアークエンジェルから降りて来たマリュ−やフラガのもとに、この街を守っている部隊の指揮官らしき人物がやってきた。

「アークエンジェル隊か。噂には聞いていたが、良くここまで辿り付けたものだ」

 大西洋連邦の大佐の記章をつける初老の人物は、感心したように白い戦艦を見上げていた。

「私は大西洋連邦軍のネルソン大佐だ。ここまでどうにか後退してきたが、もうこれ以上下がる事は出来ない」
「何故ですか?」
「ここから後ろにはヒンズーグシ山脈がある。ともに逃げてきた民間人1万6千人を抱えたまま、あの山脈を超える事は出来んよ」

 ネルソンの答えに、マリュ−は愕然としてしまった。民間人1万6千人。それだけの人数を抱えてここまで逃げて来たと言うのだろうか。だが、マリュ−は驚いているが、冷静に考えればたったの1万6千人なのである。この荒れた地域にどれだけの人が住んでいたのかは分からないが、1億を下る事はあるまい。果たして、どれだけの犠牲が出たのだろうか。
 マリュ−はネルソンの顔に刻まれた深い皺が、その心労を物語っているような気がしていた。

 アークエンジェルの幹部クルーはネルソン自身の案内で地下の防空壕へとやってきた。どうやら地上は危な過ぎるらしい。
 案内された粗末な会議室のような部屋で、ネルソンとマリュ−達は改めて今後の事を検討する事になった。

「すまんな、何しろ全てが不足しているのでな」
「いえ、構いません。酷い状況には、慣れていますから」
「ふむ、しかし、良く敵の先鋒隊を突破できたものだ。君達が撃破したのは敵の第15師団だが、あれは中央アジアを蹂躙している部隊でも最精鋭部隊なのだぞ。MSも多数保有し、これまでその進撃を止める事は出来なかったというのに」

 感心するネルソンに、マリュ−はチラリと横に座るナタルを見た。ナタルもこっちを見ている。その目にはやはり戸惑いの色があった。果たして、キラの事を出して良いものかどうか。
 だが、2人の心配を余所に、キースがさっさと切り出してしまった。

「まあ、うちには頼りになるMSパイロットが2人もいますし、地上で陽電子砲をぶっ放すなんて無茶までしましたから」
「アークエンジェルのMSか。確か、コーディネイターのパイロットに、真紅の戦乙女、だったかな。2人ともまだ子供だと聞いていたが」
「ええ、そうですよ」

 キースは答えながら、ネルソンの表情を観察していた。そして、以外な事に、ネルソンの表情には特に嫌悪感や敵意が浮かんでいない。

「大佐は、彼を気にしないのですか?」
「コーディネイターのパイロットかね。別に、役に立つなら構いはせんよ。もうそんな贅沢を言っていられる状況ではないのでね。強いのならコーディネイターだろうが悪魔だろうが、喜んで手を貸してもらうさ」

 そこまで追い詰められているのかと考え、キースは表情を曇らせてしまった。これでは難民を降ろすどころか、逃げる事も出来るかどうか。
 だが、これは人間としてごく普通の反応だろう。マリュ−やナタルだって、ヘリオポリスであそこまで追い込まれていなければキラを捕らえて独房にぶちこむなりした可能性が高い。そもそもあんな事態でなければ民間人をMSに乗せたりはしなかっただろう。
 艦のクルーとて、あんな状況でなければコーディネイターにストライクを任せる事に賛成したりはしなかったはずだ。ネルソンがキラの存在に喜んでいるのも、この場を切り抜けたい一心からなのだ。

 ネルソンは地図を持ってきてテーブルの上に広げた。ドゥシャンベの周囲に展開する敵軍の様子が書かれているが、その内の1つに×が付けられていた。

「これは、我々が叩いた部隊ですか?」
「そうだ。おかげで随分楽になったが、正直、最悪という状況に変化が起きた訳ではない。相変わらずこの街は包囲されておるし、物資は欠乏している」

 マリュ−の問いにネルソンは苦々しく答えた。確かに、一方の囲みを食い破ったのは事実だが、依然として周囲には敵が展開している。包囲網はなかなかに分厚いようだ。
 ナタルは地図上の敵の配置を見て、思わず絶望の吐息を漏らしてしまった。

「これは、回りは敵だらけではありませんか」
「そう、しかも、味方に助けを求める事も出来ない状況なのだ」
「では、どうやって脱出するのですか。まさか、難民もろとも玉砕するおつもりですか!?」

 ナタルの口調がいささか熱を帯てくる。だが、ネルソンはそんなナタルを右手で制した。

「勿論、玉砕するつもりは無い。我々にも一応脱出する手段くらいはあるぞ。だが・・・・・・」

 ネルソンは少しだけ苛立たしげに天井を見上げ、話を再開した。

「とりあえず、その辺りの事はユーラシア連邦のドミノフ大佐と話し合わなくてはいかん。明日その協議があるから、君たちも参加したまえ」
「宜しいのですか?」
「ああ、君達がいれば、あの頑迷な馬鹿者も、我々の言うことを聞くようになるかもしれん」

 さっきから言葉の端に漏れ出る悪意に、マリュ−は僅かに表情を曇らせた。一体、何があったというのだろうか。


 ネルソンの元を辞した4人は、状況の厳しさに暗い顔をしていた。味方と合流したというのに、どうにもお先真っ暗だ。

「フラガ少佐、ネルソン大佐は、ユーラシア連邦が嫌いなんでしょうか?」
「まさかそんな。今は戦時ですよ。同盟国とそんな対立を見せる筈がありません」

 何とも、暢気な事をいうマリュ−に綺麗事を言うナタル。そんな2人をフラガとキースは呆れた目で見た。

「・・・・・・艦長と副長は、本当に世間知らずだな」
「どういう事ですか?」
「ユーラシアと俺達が仲悪いのは、もう随分昔からの事さ。戦争が始まったって、一朝一夕に不和が解消したりするものかよ」
「ですが、ヨーロッパではクライスラー少将は私達を歓迎してくれましたよ?」
「俺達の戦力を歓迎したのさ。その証拠に、いきなり俺達を侵攻の先鋒に配置してくれたしな。それでもまあ、クライスラー少将が良い人だというのは確かだろうけどさ」

 フラガは国家間の対立は根深いのだと言う。確かに今は味方ではあるのだが、ユーラシア連邦と大西洋連邦の間にはそれなりの確執があるのだ。それが、過去に積み重ねてきた歴史なのだ。

 

 

 アークエンジェルでストライクの整備をしていたキラは、疲れを感じて整備台から降りて来た。自分以外にも6人の整備兵がストライクに取り付いているが、自分の方を見ようともしない。これまでは普通に話し掛けてきた整備兵たちなのに、こうもあっさりと対応が変わってしまうものだろうかと思ってしまう。
 視線をデュエルに転じれば、マードックとボードを手に何やら話しているフレイの姿がある。あちらは頭部を損傷してセンサー系の狂いが生じ、かなり手間取っているらしい。
 それ以上何も言わずにその場から立ち去ろうとしたキラの背中に、フレイの声がかけられた。

「キラ、コクピットの調整は終わったの?」
「・・・・・・う、うん、終わったよ」
「そう、じゃあ、悪いんだけど、キースさんを探して来てくれない。ちょっと頼みたい事があるの」
「ああ、分かったよ」

 キラは解放されているハッチから外に出ていった。それを見送ったフレイは妙な違和感に首を傾げてしまう。

「どうしたのかしら。なんだかキラ、暗いわね?」
「ああ、そりゃあ、暗くもなるさ」

 マードックがキラの出ていったハッチの方を見ながら呟く。フレイはどういう意味かを問い質した。すると、マードックはいささか面食らった様子でフレイを見た。

「なんだお嬢ちゃん、何も知らないのか?」
「さっぱりです」
「はあ、相変わらず回りの空気に疎いと言うか、なんというか」

 呆れたように右手で顔を覆い、どうしたものかと暫し考える。そして、言い難そうに話しだした。

「お嬢ちゃんも見ただろう。この間のあいつの戦いを?」
「いえ、私、あの後医務室に行ってましたから」
「そうかい・・・・・・じつはなあ、あの時のあいつの戦いぶりが凄すぎてなあ。みんな怖がってるんだよ」
「キラが化け物だからですか?」

 あっさりとした言い方に、マードックは面食らってしまった。まさか、フレイがそんな事を言うとは思っていなかったのだろう。

「おいおいお嬢ちゃん、好きな男を化け物呼ばわりかい?」
「事実ですから。私はキラが本物の化け物だって事は、ヨーロッパと、前にキラと戦った時で嫌になるくらい実感してますよ。多分フラガ少佐やキースさんだって知ってる筈です」
「じゃあ、お嬢ちゃんは坊主が化け物だって承知で、あいつに惚れてるのかい?」

 マードックの問い掛けに、フレイは僅かに頬を染めて頷いた。フレイは、キラを意識しだした頃には、キラが自分とは違う存在、強大な力を持った化け物だと気付いていたのだ。今、マードック達が気にしている問題は、フレイにはもうとっくに通過してきた問題に過ぎなかったのである。
 フレイが頷いたのを見たマードックは、やれやれと右手で頭を掻いた。

「参ったな、お嬢ちゃんは1番あいつを理解してたんだな」
「色々ありましたから」

 色々という所に、マードックは言い知れぬ重みを感じてしまった。確かにこの2人の関係は一言で言い表せるようなものではない。マードックも詳しい事は知らないのだが、フレイ本人から大筋は聞かされている。最初は憎んでいた事、復讐の為に利用しようと思って近付いた事、そして、近付いた為に、キラの抱える苦悩と、化け物だと思っていたコーディネイターが、実は誰よりも優しく、そして脆い心を持った普通の少年でしかないと知ってしまった事。そして彼を憎めなくなった時、全てが罪悪感へと変わった事。知らなくてはいけない事を知るため、デュエルに乗って戦い、自分の過ちを受け入れ、キラと別れた事などを聞かされていたのだ。
 この年で、なんでこの娘はこんな人生を歩んでいるのかと思ってしまう。ヘリオポリスがあんな事にならなければ、平和の中で戦争なんか知らずに過ごしていけただろうに。

「やれやれ、お嬢ちゃんはあいつを信じてるんだな」
「はい。私はもう、キラを信じるって決めましたから。それがどれだけ辛いことでも、私はキラから、現実から目を逸らさないって決めたんです」
「俺は、まだ信じられねえ。いや、あいつが俺達を殺したり、見殺しにするわけがないって頭じゃ分かってるんだ。だけどなあ・・・・・・」

 マードックはストライクを見た。これまではただのMSでしかなかったのに、今ではキラの愛機だという印象を抱いてしまう。これは化け物の使う凶器なのだと。

「一度生まれた恐怖ってのは、なかなか消えるもんじゃねえ」
「・・・・・・分かります。私もそうでしたから」
「だけど、お嬢ちゃんはそれを乗り越えたんだろ。凄い奴だよ」
「私一人で乗り越えられた訳じゃありません。キースさんが、トールが、艦長やバジルール中尉が私を支えて、色々教えてくれたからです。勿論、マードックさんたち整備の人たちもですよ。ここの人たちは、私を避けたりしなかったから」

 フレイは整備班の者には感謝していたのだ。ここの仲間達がいたから、フレイは自分が誰かの役に立てていると実感できたのだから。
 素直に人に感謝できる。これが昔のフレイからは考えられない、フレイの成長を示すものであった。カガリに通じる資質だが、カガリと接するうちにその影響を受けたのかもしれない。
 そしてフレイは、前に偶然であった黒髪のザフトパイロットを思い出した。キラの昔の友達でラクスの婚約者。そして、自分を撃墜したという数奇な繋がりを持つ変わり者、アスラン・ザラを。

「前に、私に大切な事を教えてくれた人がいました。理解できないと思い込んで、逃げてちゃ駄目なんです。知ろうとしなくちゃ、話し合わなくちゃ、分かる事も分からないままなんです」

 でも、そんな当たり前で分かりきった事を、人に教えられるまで気付かなかったんですけどね。と言って、フレイは恥ずかしそうに苦笑いを浮かべた。だが、その笑顔はどこか嬉しそうで、輝いて見える。
 そんなフレイを、マードックは眩しそうに見た。その目には、成長した子供を見る親のような光が宿っている。子供は、ほんの小さなきっかけで短期間に見違えるように成長する事がある。フレイにとって、その「大切な事を教えてくれた人」との出会いは、それまでの自分という殻を破るきっかけとなったのだろう。

「参ったよなあ。本当に参った」

 そう言って大きな声で笑い出すマードック。回りの整備兵達がどうしたのかとこちに視線を向ける中で、マードックは一度フレイの肩を大きく叩いた。

「そうだな、お嬢ちゃんが信じるんなら、俺も信じてみるか」
「はいっ」

 嬉しそうに頷くフレイ。そんなフレイの所にトールがやってきた。両手には山ほどのファイルを抱えている。

「フレイ、調整データを持ってきたけど・・・・・・どうかしたのか?」

 何やらマードックと笑っているフレイを、トールは不思議そうに見ていた。そんなトールにフレイが問い掛ける。確信の笑顔を浮かべて。

「ねえトール、貴方は、キラを信じられる?」
「はぁ、何を当たり前の事言ってるんだ、お前?」

 さも当然の事のように言うトール。それを聞いて、フレイは嬉しそうにマードックを見た。

「マードックさん、私以外にも居ましたよ。キラを信じてる人が」
「・・・・・・なんだかねえ」

 呆れたように頭を掻くマードック。それを見てトールは訳分からないという顔でフレイを見た。

「なあ、一体何の話なんだ?」
「キラがね、化け物なんだって。みんな怖がってるの」
「おいおい、なんでキラを怖がるんだよ。あいつが俺達に何かする訳無いだろう」

 呆れたように答えるトール。そうなのだ、トールはこういう人なのだ。格好付けで無鉄砲な所があるが、友人を疑うような事はしない男なのだ。友情に篤いと言うか、人と人の絆を大事にする所がある。悪い事は悪いとはっきりと言ってくれる勇気を持っている。そして、誰よりもキラと長い付き合いを持つ親友でもある。
 こういう人だから、他の仲間達が自分達を避けていた時にも、1人で自分達と関わりを持とうと骨を折ってくれたりしていたのだ。

「あーあ、ミリィが羨ましいかな」
「え、なんで?」
「だって、こんなに良い彼氏がいるんだもの」
「お、おいおい、フレイ。おだてたって何も出ないぞ」

 少し慌てるトールに、フレイは悪戯っけを出して見せた。その腕をとって身体を軽く押し付けてみる。

「うーん、私もキラと別れてフリーだし、トールにアタックするのも良いかなあ」
「なぁ! だ、駄目だよ、俺はミリィとラブラブになる予定なんだから!」
「あら、私ってそんなに魅力無いかしら?」

 少し傷付いたように表情を曇らせると、トールは面白いくらいに狼狽してしまった。

「い、いや、そんな事は無い。フレイは艦内の男の垂涎の的だからね。その気になれば幾らでも男はなびくと思う」
「あら、ありがと。じゃあトールを落とす事もできるかもね」
「ア、 アウアウ・・・・・・・」

 トールは焦っていた。もし今のフレイが本気で自分にアタックしてきたら、その誘惑を跳ね除けられる自信は流石に無かったりする。ヘリオポリスの頃は余り気にもしていなかったし、アークエンジェルに来てから暫くは嫌ってもいたのだが、その内心を知ってからは憎む事は出来なくなった。そしてキラと和解した後のフレイは、ヘリオポリスにいた頃を上回る輝きを放っているのだ。ミリアリアはフレイを「恋する乙女」と言い表わしていたが、なるほどと納得してしまったものだ。
 だが、それだけに今のフレイがその気になったら、自分は断り切れるだろうかと不安になってしまうのだ。男の性とは愚かである。

 しかし、赤くなって慌てているトールを見て、フレイがプッと噴出し、マードックが声を上げて笑い出した。それでトールもからかわれていた事に気付いた。

「ああ、俺で遊んでたな、フレイ!」
「ふふふふ、馬鹿ねえ、私が貴方とミリィの仲を裂くと思うの?」
「くそぅ、この魔性の女め。将来はとんでもない悪女としてたくさんの男を泣かすに違いない!」
「ふっふっふ、ミリィやカガリと組んで、アークエンジェルの男を弄ぶのもいいかもね」

 何やら物騒な事を言い出すフレイ。その状況を想像してしまい、トールは表情を青ざめさせた。そして、そんな2人に別の方から声がかけられる。

「こらフレイ、私をそんな事に巻き込むな」
「あらカガリ、今日はどうしたの。格納庫の掃除?」

 何故かカガリが格納庫に来ていた。何時もなら持っているモップを持っていない所を見ると、掃除ではないようだが。カガリはフレイの問いに露骨に顔を顰めた。

「私は掃除のおばちゃんじゃないぞ!」
「あら、そうだったかしら?」
「ああ、もう良い。それよりフレイもトールも、行くぞ!」
「え?」
「行くって、何処に?」

 いきなり自分達を誘うカガリに、トールとフレイが首を傾げる。それでカガリも自分が色々な説明をすっ飛ばしてしまった事に気付き、頭を掻いて誤魔化しながら事情を話だした。

「艦長が呼んでるんだよ。今から会議があるから、士官は全員来いってさ」
「会議って、なんで私達まで?」
「まあ、行きゃ分かるだろ」

 また首を傾げるフレイに、トールが余り気にせずに言う。確かに今気にしても分かるものではないので、トールの言う通りなのだろう。
 2人が整備台から降りると、何故かトノムラまでもが来ていた。

「行くぞ、こっちだ」
「トノムラ曹長も行くんですか?」
「ああ、面倒な事さ」

 本当に面倒くさそうに言うトノムラ。相変わらずこの男はやる気があるのか無いのか分からない。フレイとカガリとトールは顔を見合わせると、大人しくトノムラに付いて行く事にした。

 


 アークエンジェルが突破したのは、ザフトのインド侵攻作戦であるマーケット作戦に参加し、北部から侵攻をしようとしていたザフト第4軍の先鋒であった。精鋭であったがゆえにここまで連合を押してきた部隊だったのだが、アークエンジェルとぶつかったことが彼らの不運だった。アークエンジェルと遭遇したザフト部隊はことごとく不幸になる運命にあるらしい。キース辺りなら「俺たちが不幸なのはまあ仕方ない。でも、俺たちだけ不幸ってのも癪だから、頑張ってザフトも不幸にしてやるぞ」とか言うかもしれない。
 第4軍司令部は先鋒を務めていた第15師団が文字通り壊滅したとの知らせを受け、流石に驚愕を隠せなかった。

「まさか、一体何が起きたのだ?」
「それが、1隻の見た事も無い飛行型の戦艦とMS2機、戦闘機2機に襲撃されたと。最初は優勢に戦いを進められたそうですが、追い詰められた戦艦が陽電子砲と思われるエネルギー兵器を使用し、部隊を焼き払ったと、報告がきております」
「まさか、たったそれだけの敵にか?」
「しかも、その後は敵のMS1機が残存部隊を蹴散らし、戦線を突破したそうです。死者は3000人近くに上り、負傷者はおよそ倍の5000人です。余りの死傷者の数に第15師団は身動きが出来なくなり、車両とヘリコプターを総動員して負傷者の後送を行っていると言ってきています」

 信じ難い話に、第4軍司令部の幕僚達は騒然となったが、指揮官らしき白い制服を纏った男がくぐもった笑い声を漏らし出した。

「くっくっくっくっくっく、なるほどな」
「ク、クルーゼ司令?」
「また私の前に立ちはだかるのか、脚付き」

 そう、その男こそラウ・ル・クルーゼ。かつて、ヘリオポリスを攻撃し、キラ達の運命を大きく捻じ曲げた人物である。そして彼もまた、脚付きによってその運命を、人生の予定を捻じ曲げられていた。地球軌道で第8艦隊に敗北した事でザフト内での地位が下がり、更にはヨーロッパでアークエンジェル隊に手駒だったザラ隊、ジュール隊が完敗したために、半ば左遷のような形で第4軍の司令官に回されたのだ。
 クルーゼにとって、これが自分の目的から大きく後退する事は確実であり、その原因となったアークエンジェルに恨みを向けるのも仕方ないだろう。まあ、完全に逆恨みではあるのだが。

「奴は、今どこに居る?」
「この先の都市部です。どうやら連合の部隊と合流したようで」
「ほう、あそこは大西洋連邦とユーラシア連邦の部隊が追い込まれている所だったな。これは面白い所に逃げ込んだものだ」

 クルーゼは口元に血の匂いがする笑みを閃かせた。それを見て幕僚達の表情に一瞬不快な色が閃く。付き合いの長かったアデスでさえ、クルーゼの残虐な所に反感を隠せなかったのだ。まだ部下になって日が浅い彼らがクルーゼの性格に反感を抱くのは当然だったろう。
 クルーゼはそんな部下たちの感情など気にする事もなく、地図にある街を指で叩いた。

「ドゥシャンベを攻略するぞ。ここを脚付きの墓場にしてやる」

 


後書き
ジム改 久々にクルーゼが登場
カガリ ラクスとアズラエルがなんか怖い事してるぞ
ジム改 あれは裏での出来事だ。お前さんたちは関係ないぞ
カガリ まあ良いけどさ。でも、なんかまた変な所に来たな
ジム改 うむ、今度は追い詰められた味方との出会いだ
カガリ 今すぐに逃げたくなるな
ジム改 ふっ、そう簡単に逃げられるわけ無かろう
カガリ やっぱりかあ
ジム改 次回はユーラシアと大西洋連邦の士官が出てくるのだ
カガリ 私も何だか凄い事してるな
ジム改 いまやカガリはキラの敵みたいなもんだな
カガリ ううう、弟と知ってればこんな事には・・・・・・
ジム改 ヒントはもう得てるけどね
 


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