第61章  果てしなく遠い道



 ズタズタにされたマドラス防衛力の補強のために呼び戻されたキラたちだったが、帰ってきた彼らはボロボロになった飛行場の様子にどれほどの被害が出たのかをすぐに実感する事になった。

「こいつは酷いな。復旧にどれだけかかるやら」

 困り果てた顔で周囲を見回すアルフレット。そこにボーマンが切羽詰った顔で駆け寄ってきた。

「た、隊長、俺、ちょっと出てきても良いですか!?」
「ああ、セランの見舞いか。良いぞ、行って来い」
「ありがとうございます!」

 敬礼をしたボーマンは軍服のままで大急ぎで駆けて行ってしまった。それを見送ったアルフレットはやれやれと右手で髪をかき回している。

「まあ、兄妹仲が良いのは結構なことだが、今日中にはこっちに顔を出せるっていうんだから、そう慌てなくても良いだろうに」
「良いじゃないですか。心配なんですよ」

 ボーマンが去った後を引き継ぐようにキラがアルフレットの隣に立った。アルフレットはキラを胡散臭そうに見下ろしたが、その言葉に反論したりはしなかった。変わりにキラが気になっているだろう話をしてくれる。

「そういえば、お嬢ちゃんは基地の復旧を手伝ってるって話だな」
「フレイが、ですか?」
「ああ、雑用なんかを買って出てるらしい。中々評判が良いらしいぜ」

 アルフレットの言葉にキラはなんとも複雑な表情になった。あのフレイが自分から雑用をしている姿が想像できないのだ。だが、同時に彼女が無事だと聞いて安堵した部分もある。アルフレットは戸惑っているキラを見てニヤリと笑みを浮かべると、持っていたボードでポンと頭をはたいた。

「まあ、今日はもう自由にして良いぞ。坊主に手伝って貰うような仕事はねえからな」
「良いんですか?」
「ああ、アークエンジェルに帰るなり、基地の中を見て回るなり好きにしな」
「それって……」
「顔を見るくらいなら構わねえよ。こっちに戻る間中、顔にずっと心配だって書いてあったぞ。ただし、見つからないようにな」
「そんな事は無いですよ……」

 アルフレットのニヤニヤ笑いにキラは顔を背けて恥ずかしそうにぼやいたが、図星だったので強く文句を言う事も出来なかった。フラガやキースもそうだが、誰も彼も自分の内心をあっさりと見破ってくれる。ひょっとして自分は感情が顔に出易いのだろうかと考えてしまうが、16歳の子供がこういう駆け引きで経験豊かな大人と張り合うのは著しく分が悪いので、仕方が無かっただろう。
 アルフレットのお墨付きを貰ったキラは嬉しそうに基地の中へと駆けて行ってしまった。それを見送ったアルフレットは持っていたボードで三回肩を叩いた後、復旧作業に送る人員を選ぼうかと輸送機の中に戻ろうとしたが、振り返った先にいきなり怪しい男が居てビクッと半歩引いてしまった。第10軍と一緒に居たジャーナリストのヘンリーだ。

「やあ、これはどうもどうも」
「あんたか。坊主にくっついて色々嗅ぎ回っていたようだが、何か収穫はあったかい?」
「収穫はまあ、色々とありましたよ。換条件で彼に自分の出生の秘密を少しだけ教えてあげましたけどね」
「出生の秘密?」
「まあ第1世代コーディネイターなんて、何かしらあるもんだって事ですよ。特にあの少年はね」
「その割には元気そうだったがね」
「別にそんな凄い事を教えた訳じゃありませんから。今の親は育ての親で、本当の両親は事故死してると教えただけですよ」

 ヘンリーの言葉にアルフレットは不快そうに眉を潜めたが、それを追及したりはしなかった。他人の過去など不必要に掘り下げる趣味は無い。アルフレットが追求してこないのを見てヘンリーは話題を変えた。

「ところで、彼は何処に行ったんですか。妙に嬉しそうでしたけど?」
「ああ、惚れてる女がここに居るのさ。そいつもパイロットだから、安否が気になるんだろ」
「へえ、その女性はコーディネイターのパイロットですか?」
「いや、ナチュラルだ。まあ色々と問題を抱えてるようだがね。見てると飽きないんだが、ちょっともどかしいと言うか、イライラするよ」
「問題、ですか」
「この御時世だからな。世間体とかしがらみとか色々あるのさ。しかも女の方はザフトに親を殺されてるからなあ。中々素直にもなれんさ」

 やれやれと肩を竦めるアルフレットだったが、何故かヘンリーは真剣そうだった。突然目の前で考え込んでしまった男にアルフレットは面食らってしまったが、声をかけても返事をしないので呆れて仕事に戻ろうかと思ったが、ヘンリーの話を聞いて少しきらの事が気にかかり、格納庫の方へと歩いていった。
 もっともこの時、ヘンリーが考えていた事を知ればアルフレットも黙っていられなかっただろう。ヘンリーはこの2人に興味を持ってしまっていたのだから。その口元にはヤバゲな笑みが浮かんでいる。

「……マルキオ導師がSEEDを持つ者かもしれないと考えている少年、コーディネイター中最高の能力を与えられた、まさに選ばれた存在。彼の存在は現代にとって害悪となるのか、それとも最後の希望なのか…………暫く付き合う価値がありそうだねえ」

 マルキオからさえ一目置かれるこの男は、次はアークエンジェルに付き合ってみようと決めてしまった。思い立ったら側実行とばかりに基地本部の方へと歩いていく。軍上層部にも顔がきく彼は、自分の無茶な要求を押し通すことが出来るのだ。




 

 キラはフレイが居たMS隊の格納庫へとやって来ていた。ここも攻撃を受けたようで、壁に大穴が開いている。見れば1機のダガーが補修用の資材を持って、まるで人間がベニヤ板をあてがう様にして壁に板をあてがっている。キラはMSをただの兵器と見ていたから、こういった使い方をしているのは驚きであった。
 感心しながらその様子を見ていると、ヘルメットを被った工兵に怒鳴られてしまった。

「おい、そんな所で突っ立ってると危ないぞ!」
「す、すいません。人を探してたもので!」
「人? 誰だ?」
「フレイ・アルスターという女の子です。赤い髪の!」
「ああ、アルスター少尉なら格納庫の屋上だよ。洗濯物を干してる筈だぜ!」

 工兵に教えられたキラは早速屋上へと向った。そこは沢山の物干し用のロープが張られており、ベッドのシーツやら兵士たちのシャツや下着などが吊るされている。無数の洗濯物が吊るされている中を歩き出したキラは、それほど時を待たずに大きな洗濯籠を抱えているフレイを見つけることが出来た。少尉の制服を着て洗濯物を干しているのは何だおかしな光景ではあるが。制服の肩には何時の間にやらすっかりフレイのペットロボットと化しているトリィが首をクリクリと動かしている。
 フレイは沢山の洗濯物を手際よく干しており、パイロットになる前に生活班で雑用をしていた時の経験が生きていることが伺える。その表情や動作は生き生きとしており、ヘリオポリスに居た頃よりも綺麗に見えてしまう。アークエンジェルでは嫌々こういう仕事をしていたのに、ここでは進んで洗濯仕事をやっている辺りに精神的な成長が見て取れる。人間、環境が変われば変化するということだ。
 フレイに見つからないよう屋上への出入り口からじっと様子を伺っていたキラだったが、やがて寂しげに俯くととぼとぼと階段を降りていった。屋上から3階部分へと移り、はあっと妙に重苦しい溜息を漏らす。

「アークエンジェルに居るよりも、ここに居た方が君にとっては良いのかな、フレイ……」

 あんな輝いた表情を見せられては、そう思うのも無理は無いかもしれない。アークエンジェルには辛い記憶が多い彼女にしてみれば、何のしがらみも無い新天地で新たなスタートを切るのも良いのかもしれない。
 しかし、当たる前に砕けるというのはなんだか空しい。でも声をかけるタイミングが掴めない。かといって諦めて身を引くには未練がありすぎる。何故かフレイは距離が開くたびに輝きを増しているようで、手放したくないという執着心がキラの中でかなり大きくなっていたのだ。口説き方をフラガ辺りに教えてもらうという手もあるのだろうが、何というかそれをすると自分の世間体が終わってしまう気がするので却下する。

「はあ、何で僕ってこう、意気地が無いのかなあ」

 自覚はあるのだが、声をかける勇気は何処を探しても湧いてこない。でもこのままじゃいけないという事は分かっている。でも声はかけられないという思考のループに突入したキラは、ようやく1つの事を思い出した。

「……少佐の手を借りようかなあ。でも、フレイと勝負か」

 それはそれでかなり気の滅入る事態ではあるのだが、このまま顔を合わせる事も出来ない状態が続くのはもっと嫌だ。自分で声がかけられないのだから、この際取れる手段があるなら躊躇うべきではないのかもしれない。
 自分がヘタレなのが一番問題なのだという事実は遙か遠くに放り投げておいて、キラはアルフレットの提案に乗る事にした。ただ1つだけ問題があるとすれば、この基地に来てからフレイがどれだけ伸びたか分からないという事だろうか。


 まあ、そんな事は戦った時に考えれば良いと割り切ったキラは早速アルフレットを探そうと格納庫の一階に降りて外に出ようとしたが、何故かそこにはアルフレットが居て何やら部下に指示を出していた。逞しすぎる肉体にタンクトップ一枚でカーキのズボンという服装はアルフレットしかいまい。

「あ、少佐」
「よお、お嬢ちゃんには会えたかい?」
「はい、屋上で洗濯物を干してました」
「そうかい。それで、これからどうするんだ?」

 胸の前で腕を組み、ニヤニヤ笑いを顔に貼り付けてアルフレットは問い掛けてくる。その質問にキラは一瞬意味が分からなかったが、すぐに裏にある企みを察して渋い顔になった。

「何時から見てたんですか?」
「何の事かな?」
「……まあ良いです。話す手間が少し省けたと思っておきます」

 格納庫の中にあった無傷のダガーとフレイ用の105ダガーの整備を始めさせておいて、何をしらばっくれるのだろうと思ったが、それをつっこむと色々と面倒になるのであえてつっこまず、代わりに別の事を問い掛けた。

「少佐、使えるダガーはありますよね?」
「……そいつを聞いてくるって事は、やる気になったのか?」

 アルフレットの問いに、キラは暫し逡巡した。面向って問われるとどうしても迷いが出てしまうのだ。この辺りはキラの決断力の欠如が原因で、これまでこれのせいでさまざまなトラブルを引き起こしているのだが未だに直る様子が無い。でも、前回とは異なり今度はアルフレットも何も言わなかった。ただじっとキラの答えを待っている。そしてキラはようやくアルフレットに頷いて見せた。

「やりますっ」
「よぅし、それでこそ男だ」

 アルフレットはキラの背中を思いっきり平手で叩いて豪快に笑いだした。叩かれたキラは余程悪い所にでも入ったのか、咽かえってその場で激しく咳き込んでいる。その姿に観衆達は悪いとは思いながらも大笑いしてしまった。

「でも、この手を使うって事は、言いつけ破って話しかけたりは出来なかったってことだな?」
「……言わないで下さいぃぃぃ!」

 一番つっこんで欲しくないことをつっこまれて、キラは目から滝のような心の汗を流していた。

 


 

 アンダマン諸島にあるザフトの潜水艦基地に帰還した攻撃隊は、降下してきた援軍のMSを得ていよいよマドラス攻略だと騒ぎ立てるようになっていた。新鋭機のゲイツも9機が配備され、MSの数と性能では連合軍に勝るだろう。モラシムも勝算を持って戦いに望む事が出来る。
 近日中の総攻撃を決定したモラシムは指揮下の潜水母艦の準備を急がせると共に、近隣の部隊に協力を要請した。降下してきたジンとゲイツも地上用に再調整が行われ、この攻撃に投入される事が決定していた。幸いにしてマドラスの防御施設は前回の攻撃でかなりの被害を与えており、前回よりは抵抗も少ないと判断していたのだ。前線から精鋭を呼び戻した事は現地の諜報員から報告を受けているが、数は2個MS中隊と1個飛行隊でしかない。
 この攻撃には前回参加していたグリアノスやイザークたちも参加が決定しており、機体の再点検を急いでいる。本来なら後方に下がって本格的な整備を受けるべきなのだろうが、2つの侵攻作戦と、この戦争に決着を付けるべく進められているスピットブレイクの準備を同時に進めている今のザフトには予備兵力が枯渇していたのだ。
 これまでは比較的余裕があった宇宙軍も最近では新型のMSやMA、艦艇を配備した連合軍と熾烈な通商破壊戦を繰り広げるようになっており、消耗を積み重ねて戦力を磨り減らしている。先の月面侵攻作戦「ムーンクライシス」の失敗によって生じた損害は未だに回復しておらず、一部制宙権も奪い返されている有様だ。おかげで寸断され気味だった月−パナマ間の補給路の安全が確保されるようになり、プトレマイオス基地の戦力は急速に回復してきている。
 これ等の事情を考えれば、マーケット作戦における最終目標とも言えるマドラスを攻略する為に多少の無茶をするだけの意味はある。これが成功すればインドの連合軍は後方拠点と補給路を一挙に失う事になり、連合軍は味方に救出してもらうか降伏するかの選択をするしかなくなる。

 最も、帰ってきたばかりでこれ等の事情を認識していないアスランは危機感が少なく、自室に積み上げられた書類を見ていきなりトホホ顔になってしまった。

「さようなら、安らぎの日々。ただいま、理不尽な日々」
「隊長、そんな絶望交じりにぼやかなくても」

 自室に入るなり背中に哀愁を背負ってしまった上官にエルフィが困った顔でつっこんだ。一応、これでもニコルとミゲルが始末してくれていたのだが、やはり2人では無理だったらしい。
 でも、それでもアスランの顔色は出立する前に較べると随分良くなっており、美人2人に囲まれての休暇が中々に楽しいものであった事は疑いない。その休暇中の出来事を自室にて色々と妄想してしまったイザークは目に暗い炎を燃やして拳を握り締め、ディアッカに向けて叫んでいた。

「このままにしておくものか。ディアッカ、同志を招集しろ。今夜は集会だ!」
「おう、それで制裁対象は!?」
「決まっている、アスランだ!」

 



 

 昼休み後になって、フレイは105ダガーに乗ってテスト場に来ていた。昼休みにアルフレットから模擬戦があるので出て欲しいと頼まれたのだ。新兵との模擬戦は別に構わなかったので、今日の午後から予定も無かったフレイは世話になっているアルフレットの頼みならと快諾し、こうしてパイロットスーツを着ている。幸い、セランも午後からはこっちに顔を出せるそうで、セランに起動できるようになったミサイルコンテナを見てもらおうという考えもあった。
 テスト場と言っても陸軍の演習場の一角で、MS隊に属する整備兵やパイロット達がぞろぞろ集って見学している。半分お祭りのようなものなのだ。
 既に相手役と思われるストライクダガーが待っており、小高い丘の上には多数の観客と共に移動指揮車があった。そこにはアルフレットがいるようで、通信で今回の模擬戦の概要を説明してくれた。

「お嬢ちゃん、今回の模擬戦は1対1の勝負だ。対戦相手はこいつだけから、始末すれば今日は終わりだ」
「それは分かりましたけど、また妙な事してないですよね?」
「はっはっは、勝ったらお嬢ちゃんを明日デートに連れて行く権利が商品だ」
「ま、またそんな勝手な約束をっ!?」

 前回に続いてまたしてもとんでもない事をしてくれた上官にフレイは激昂したが、そんな事を気にするような相手ではないとこの短い付き合いで理解しているので、今更食い下がったりはしなかった。

「はあ、分かりました。前みたいに勝てば良いって言うんですね」
「おう、その通りだ。分かってきたじゃねえかお嬢ちゃん」
「うう、分かりたく無かったです」

 だんだん自分もこの人たちに毒されているような気がして、フレイは心の中で涙を流していた。因みにこの移動指揮車の上にはカガリ、トール、ミリアリア、サイ、カズィの5人も連行されて来ており、特等席で観戦させてもらっていた。全員仲良く移動指揮車の天蓋部に正座させられてはいるが。
 よいしょっと掛け声を出しながらアルフレットが天蓋部へ出る片開きの扉を開けて上半身を乗り出してきた。

「さてと、これからお嬢ちゃんとあの坊主の運命の対決が拝める訳だ。どっちが勝つと思う?」
「あ……あ……も、もう許して」

 問い掛けられたカガリは真っ青な顔で全身を痙攣させながら苦悶の表情を浮かべていた。正座というのは、慣れていない人間がやると地獄の責め苦を味合わされるのだ。因みに横一列に並んでいる他の4人も同様のようで、みんなプルプルと痙攣している。アルフレットは上半身を出したまま右腕で頬杖ついて今にも死にそうな5人に冷たい眼差しを送った。

「たく、一体何時の間に格納庫に忍び込みやがった。少しは反省しやがれ」
「キ、キ、キラが格納庫に行ったって変な格好の奴に聞いたんだ。仕方ないだろ」
「……そうか、あの新聞屋か。何処にでも湧いて出やがるな」

 アークエンジェルに顔を出したヘンリーから話を聞かされたというか、向こうが一方的に教えてくれたらしく、カガリは早速仲間を募って格納庫に忍び込んだのだ。そしてあろうことかこいつ等は休息室にあった冷蔵庫から夜勤連中の夜食などとして準備してある食べ物を腹が減ったからと食べてしまったのだ。まあ昼前で何も食べずに出てきたと言うのだから気持は分からなくも無かったし、詰め所の食べ物はなくなったら補充するという程度の物なので、本来なら嗜める程度でよかった筈なのだ。
 問題となったのは、詰め所の整備兵たちが8人ぐらいいなければ食べ尽くせないだろう量を、何と5人で平らげてしまった事だろうか。主にカガリとトールが食いまくったらしいのだが。止めとばかりにアルフレットが楽しみにしていた、この御時世では手に入りにくい本物のコーヒー豆を粉にしておいたコーヒーまで飲まれてしまったのだ。
 これを見たアルフレットは頭を抱えて悲痛な声を上げ、勢いのままに5人を拘束したのである。まあ食料はキラとトールの給料で弁償して、整備兵の若手が使いっぱしりとなって買いに出かけたのだが、5人はアルフレットに拘束され、こうして移動指揮車の天蓋部で晒し者にされていたのである。

「まあ、そこで戦闘が終わるまで反省してな。上手くすりゃすぐ終わるぜ」
「終わる訳ねえだろ。あの2人、前に一回殺りあってんだぜ」

 トホホ顔でカガリはぼやいた。それを聞いたアルフレットが少し驚いた。

「前に戦ってるだと?」
「ああ、ストライクとデュエルだったけどな。キラのが少し優勢くらいだった」
「……なるほどねえ」

 アルフレットは少しだけ脳内予想を変える事にした。彼は前模擬戦でのフレイの強さを見てフレイが勝つと踏んでいたのだが、まさかあの坊主がそんなに凄かったとは思わなかった。見た目では頼りない印象しかなかったのだが。

「……まずったかな。お嬢ちゃんに賭けちまったんだが」
「賭けって、何を?」
「隊内のちょっとしたお遊びだよ。どっちが勝つかで賭けてんのさ」

 アルフレットは少し渋い顔をして答えた。



 フレイは目の前に立つダガーを見て、何故か違和感を感じていた。前に闘った事があるような気がしてならないのだ。

「何なのかしら、この感じ」

 疑問はあったが、負けてやる気にはなれなかった。確かにキラに対しては暴走していたせいもあって体を許してしまったが、元々フレイは男と付き合うという事に抵抗がある。昔は極度のファザコンであった為、他の男に興味が無かったし、今でもキラとの関係をリセットしてからは女友達とばかり行動している。
 そんな訳で、フレイはデートなどしてやるつもりは欠片1つ分もありはしなかった。ここで徹底的に叩きのめして、2度とそんな気を起こさないようにしてやろうと考えていたのだ。
 だが、そんなフレイの予定は、開始の合図と共にあっさりと崩壊した。打ち上げられた開始の信号弾と共に両者は同時に動き出したのだが、目の前のダガーはこれまで相手にしてきた新兵とは比較にならない程に上手く機体を走らせたのだ。

「何、新兵じゃないの?」

 動きもこちらに容易に捉えられないよう定石を無視した動きを交えており、明らかに実戦慣れしている事が伺える。

「誰よこの人、アルフレット少佐以外にこんな人がいたの!?」

 ライフルの照準がさっぱりつかない。どれだけ先読みしても当たるというイメージが湧かない。まさか、こんな物凄いパイロットがマドラスにいたとは。
 相手のダガーの動きはどんどん速くなり、それに引き摺られるようにフレイの105ダガーも激しい機動を繰り返していく。だが、信じられない事にこのダガーはフレイよりも速く動いている。このままでは明日デートをしなくてはいけないではないか。

「嫌、そんなのは絶対に嫌!」

 生まれて初めてのデートの相手が何処の誰とも知れない男だなんて冗談ではない。こうなったらもう形振り構わず、使える手は全て使って勝ちにいくしかない。
 バックパックが起動し、4発のミサイルがダガーに向けて発射される。NJ影響下でありながら6発のミサイルは緩い放物線軌道を描いて全てが正確にダガーを目指している。キラはこのミサイル3発を回避するという離れ業を見せたが、最後の一発は紙一重で回避しようとしたが、この瞬間近接信管が働いてミサイルが炸裂した。模擬弾なので爆発自体はたいしたものではないが、コンピューターが判定で機体にダメージを計上する。
 だが、キラが本当に驚いたのはこの後だった。回避した5発のミサイルはぐるりと旋回して戻ってきたのだ。

「そんな、なんで誘導できるんだ!?」

 背後から襲ってくる物、側面に回ってくる物、頭上から飛来してくる物。四方八方から飛来するミサイルをキラは必死に回避し、あるいはライフルで撃ち落としていくが、105ダガーから更に追加のミサイルが発射されたのを見て吃驚仰天してしまう。

「ちょ、ちょっと待って、冗談でしょ!?」

 ミサイルを振り切って得意の接近格闘戦を挑もうと目論んでいたキラだったが、これでは接近するだけで命がけの難事だ。フレイまでの距離は走れば数秒で詰められるような近さなのに、今やその数十メートルが無限にも等しい距離になっていた。
 だが、その一方でフレイもまたこのダガーのふざけた回避能力に辟易していた。このミサイル制御システム、実は結構疲れる代物で、こうも連続で使用すると集中力を維持するだけで一苦労だ。今フレイは6発のミサイルを同時に制御しているのだが、これは慣れるまで時間がかかりそうである。
 まあ前回の戦闘では12発を動かしていたのだから、慣れれば6発くらいどうということも無くなるのだろうが。

 

 それを観戦していた新兵や整備兵たちは声を無くしてしまっていた。目の前で演習場を所狭しと駆け回り、ライフルを向け合っては発射せずにまた移動に入り、有線ミサイルが駆け回る。自分達ではあの間には決して踏み込めない。そう思わせるだけの実力差が確かに目の前の2機にはあった。
 アルフレットはマイクを持つと、呆然としている新兵達に向って話しかけた。

「いいかお前ら、あれがエース級の戦いだ。互いに隙を見せず、常に相手に有利な射点を取らせない移動を考えて動く。背中を取らせてくれるような甘い動きはしねえ。互いに相手の動きを先読みして戦いを組み立てているんだ」

 あれがお前らの目標だ、と言われているようで、新兵達は皆、一様に青褪めてしまった。あんなレベルに達しなくては凄腕とは呼ばれないのか。あんな化け物じみた戦闘が出来るパイロットが戦場にはいるというのか。
 自分達では決して勝てない。その事がはっきりと理解出来てしまった。あんな物凄い操縦は自分達には出来ない。そう誰もが思ってしまった。
 実は今見ているアルフレットも内心では薄ら寒い物を感じていたりする。フレイは目の前で6発のミサイルを完全に制御しているのだが、メビウス・ゼロでも4基のガンバレルの制御が手一杯だったのだ。あれよりもシステムが性能向上していたとしても、フレイの空間認識能力と制御能力は凄いものだと言える。今のフレイなら、同時に6基のガンバレルを使いこなせる計算になるのだ。

 だが、そんな新兵達に声をかけた奴がいた。

「エースって言っても、キラもフレイも絶対に勝てない相手じゃないですよ」

 トールだった。アークエンジェルパイロットとしては物凄く目立たない彼だが、これでも撃墜スコア20機近くを誇るエースである。単に他の4人が化け物過ぎるので雑魚っぽく見えているが、他の部隊に行けば彼も一級のパイロットなのだ。伊達にフラガとキース、キラの猛特訓を延々と受け続けたわけではない。
 周囲の新兵達はトールの顔を見て、そしてまた演習場に視線を戻す。キラはライフルを腰にマウントし、ビームサーベルを抜いて斬り合いに持ち込もうとしている。何とか距離を詰められたのだ。逆に距離が詰まった事で105ダガーには怯みが見えている。フレイは格闘戦が余り得意ではないのだ。
 そして遂にキラのダガーのサーベルが105ダガーを襲い、フレイもビームサーベルを手に格闘戦を始めた。互いにシールドを上手く使ってチャンバラ紛いのドツキ合いを繰り広げているが、人間同士の動きから見れば鈍い動作も、MS同士の動きとしては破格の機動である。MSも機械であり、人間が反応して操作し、その操作をコンピューターが処理して各部位を動作させる。つまりどんなに頑張っても動きにはタイムラグがある。それであんな機動が出来るという事は、2人の反応速度が自分達とは桁違いだという事の証明だ。
 もっとも、2人の戦闘を移動指揮車の助手席から見ていたセランは、パイロット達とは別の意見を持っていた。

「物凄い動きですね。でも、あれじゃあ機体の方が持ちませんよ」

 セランの声には若干の恐怖が混じっている。それを耳に捕らえたアルフレットがセランにどういう事かを聞くと、セランはMSの機械的限界を口にした。

「MSも機械なんです。当然動作限界は存在していて、それを超えれば駆動系が壊れてオーバーホールが必要になってしまいます」
「だが、ストライクはともかく、デュエルは壊れたなんて話は聞いてねえが?」
「Xナンバー系列機は部品の質が違うんです。ダガー系列機はコストを抑える為に部品も安価で構造も簡素化されていますから、あんな動きをしていたら焼き付いてしまいますよ」

 セランには既にMSの駆動系が上げる悲鳴のような摩擦音が聞き取れるような気さえしていた。アルフレットが使っているストライクG型なら何の問題も無いだろうが、あれでは遠くないうちに駆動系が焼き付いて動けなくなってしまう。



 だが、この絶対的な強さを見せる2人は、まだ限界ギリギリのところで戦っているわけではなかった。キラはSEEDを発動させてはいないし、フレイは相手が誰なのか、何となく気付いてしまっていたからだ。
 キラにしてみればフレイ相手に形振り構わぬほどに勝とう、という気概を持てずにいたし、フレイは相手から感じる気配と、その動きの癖からダガーのパイロットはキラではないかと考えていたのだ。
 105ダガーのコクピットの中でフレイは渋い顔をしながら懸命に機体を操っている。相手がキラでは如何にフレイでも分が悪いのだ。それに加えて、相手がキラだと認識してしまった事による迷いが動きを鈍らせている。

「なんでキラがここに居るのよ。なんで……」

 自分はこんなにも身勝手だ。会えないと逃げ出したのに会いたくて、会いたいと思っていても会って何を話せば良いのか分からない。
 責任を取る方法なんて無いのかもしれない。そしてキラもそんな事は望んでいないことは知っている。それでも、キラが許してくれるからといって、それに甘えるのは間違っている気がして、結局堂々巡りになってしまう。キラと全てをやり直そうと決めて以来、ずっとこんな調子だ。だからキラと余り距離を詰めようとはしなかった。いつも一定の距離を保って、友達というスタンスを取り続けた。
 この危うい状態が、アズラエルとの会食で崩れてしまったのだ。再び罪悪感にとらわれてしまった自分は感情のままに動き、アルフレットに拾われて今に至っている。
 何をやっているんだろう。他人に迷惑をかけて、心配をかけて、1人で落ち込んで、逃げているようで甘やかされて、考えれば考えるほど落ち込んで更なる悪循環を呼んでいる。これではまるで……

「キラのせいよ、うつっちゃったじゃない……」
「何が?」

 あるはずの無い返答が通信機から飛び出してきた。吃驚したフレイは機体操作を誤り、ビームサーベルを空振りしてしまう。そこを突いてキラがビームサーベルを突き込み、105ダガーの胴体すれすれの所に突きつけて止めていた。

「僕の勝ちだよ、フレイ」
「……な、何よ、あんなの卑怯じゃない」
「でも勝ちは勝ちだよね。戦闘に卑怯は無いでしょ?」

 なんとも嬉しそうなキラの言葉に、フレイは反論も出来ずにガックリと肩を落としてしまった。まさにキラの言う通りで、戦闘に卑怯は無いのだ。キラの声に動転して操作を誤った自分が全て悪い。

「分かったわ、私の負けよ。約束通り明日は付き合うわ。ええ、誰か知らないけどキラをダガーに乗せてたり、裏で手を組んで誰かがこんな賭けを押し付けてきたりしたけど、負けたんだから文句は言えないわよね」

 思いっきり嫌味をぶちまけてくるフレイ。それを聞いたアルフレットはこそこそと移動指揮車の中に逃げ込んでしまった。そして2人はそれぞれのMSをMSキャリアーに乗せ、コクピットから出てきた。MSに取り付いた整備兵たちが何やら物凄い悲鳴を上げているが、その理由はフレイには分からない。セランがテーピングで固めた体で105ダガーに取り付き、股関節の辺りで涙を流していたりもするが、とりあえず無視する。
 そしてキラとフレイは、移動指揮車の前で久しぶりに再会した。キラははにかんだような笑顔を浮かべ、フレイは困った顔で視線を逸らせている。

「どうやって、ここが分かったの?」
「キサカさんが調べてくれたんだ。後はフラガ少佐の手引きでね」
「……フラガ少佐ったら」

 全く余計な事をしてくれると思ったが、こうなってしまった以上は仕方が無い。フレイは「はあっ」と溜息は漏らすと、ジトッとした視線を移動指揮車の上に向けた。

「それで、あなた達は何やってるわけ?」

 天蓋部に正座してプルプルと痙攣している5人に呆れた声で問い掛けたフレイだったが、かえってきた返事は半分悲鳴であった。

「ちょっと、摘み食いをしたら怒られた……」
「摘み食いって、休息室の間食を?」

 それを聞いて、そういえば自分もあそこに買ってきておい焼きプリンを入れていた事を思い出したフレイは、まさかと思ってカガリに聞いてみた。

「ねえカガリ、もしかしてさあ、中にあったプリンも食べちゃった?」
「ああ、あのプリンか。なかなか美味かったぞ。でもそれが……おい、どうしたフレイ?」

 プチン。
 何かが壮大な音を立てて切れた。聞こえない筈のその音が、何故か周囲に居た者たちの精神にはっきりと聞き取れてしまった。フレイの特徴的な赤い髪が、なぜか筋肉も神経もない筈の髪が“ゆらぁ”と舞い上がっており、ごく自然な動作で近くに落ちていた木の枝を拾い上げる。

「ねえカガリ、あれは私が食後のデザートとして楽しみにしていたのよ。それを食べたですって?」
「フ、フレイ、ままま待て、その棒で何をする気だ!?」

 カガリはフレイの目に殺気が篭もっているのを見て悲鳴を上げたが、フレイは一切の躊躇をしなかった。その表情はまさに獲物をいたぶる猫のようであり、カガリは抵抗さえ許されない哀れな小動物である。何しろ足が完全に痺れて動く事さえままならないのだから。
 そして、フレイは長時間の正座で完全に破壊されているカガリの足の裏を棒で突っつきだした。突っつかれる度にカガリの足か全身に電流が走り、表現し難い苦痛にカガリが不恰好にのたうっている。

「や、止めろ、悪かったってばっ!」
「ふふふ、私のプリン……」
「その笑い方は止せ、洒落抜きで怖い!」

 今のフレイは地獄から舞い戻ってきた夜叉の如き状態だった。狙われるカガリはフレイが正気に戻るまで許してもらうことは出来まい。その様が余りにも怖いので誰もフレイを止めようとはせず、カガリはさっきから苦しみにもがき続けている。
 なお、プリンはカガリだけでなくミリアリアとサイも食べているのだが、あの責め苦を味合わされるのは怖いので黙っていたりする。誰だって我が身は可愛いのだ。

 そして、完全に忘れ去られているキラはというと、すっかりいじけてしまって移動指揮車の装甲板を指で突っついていた。

「僕、頑張ったと思うんだけどなあ」
「ああ、お前は良くやったよ」

 その背中が余りにも哀れすぎ、アルフレットには慰めの言葉をかけることしか出来なかった。

「でも、毎回こうなんです。何時も肝心なところで邪魔が入るというか」
「気にすんな。俺なんて、女房を振り向かせるのに何十枚とラブレターを書いたもんだぜ。渡す手段もあれこれ工夫してな。女房の友達に頼んだり」
「……少佐も、苦労してたんですね」

 無言でがっしりと肩に手を回しあう両名。何となく奇妙な親近感が2人を包んでいた。

 


 

 だが、これで明日キラとデートをする事になってしまったフレイは困り果ててしまった。婚約者だったサイとさえ一度もデートをしなかったというフレイである。当然ながらデートに関する知識などは持っていない。更に服はアークエンジェルにあるピンクの服しかないのだ。
 この初デートという気負いもあってパニックを起こしてしまったフレイの姿に、やれやれと肩を竦めたミリアリアがフレイのために一肌脱いでくれる事になった。とりあえずこれから服を買いに行き、更にデートスポットのチェックに連れて行ってやると言うのだ。
 これにフレイが感謝すると、ミリアリアは先輩風吹かせて胸を張った。

「大丈夫、ミリィにお任せよ」
「お願いします」

 もう感謝感激して深々と頭を下げるフレイ。その気持ち悪いくらいに素直な姿に、カガリが気味悪そうにフレイを見ている。

「まあ、頑張れよ。私は遠くから応援してるから」
「あら、折角だからカガリさんも行きましょうよ」
「何で私が!?」

 女の買い物は長い。まして服を選ぶなどとなったら泣きたくなるほどに長い。それを知っているカガリは悲鳴のような声を上げて抗議しようとしたが、フレイにじっと見詰められて「うっ」と唸り声を上げて気圧されるように上半身を引いた。その心細そうな上目遣いの視線がカガリの罪悪感を直撃したのだ。そのままフレイの視線に晒されたカガリは暫し唸り続けていたが、遂にガックリと肩を落として諦めたような声を出した。

「はぁ、分かった、行きゃいいんだろ」
「うんうん、カガリさんもたまには女の子らしい格好をしないとね」
「私の服も買うのかよ!?」
「あったりまえでしょ。さあ行くわよ!」

 こうして妙に気合の入ったミリアリアに連れられてフレイとカガリは街へと向かった。なお、この時のミリアリアを見た恋人のトール氏はこう語っている。

「なんか、お気に入りの玩具を見つけたみたいだった」

 なお、同行しようとしたキラはミリアリアとカガリに「明日のお楽しみ!」と言われて見事に蹴り飛ばされている。合掌。

 そしてこの情報を聞きつけた関係者たちは、それぞれにこの2人の行動を生暖かく見守ろうと画策し始めた。保護者気分で見守りに行こうとする者。その男に一緒に行かないかと誘われ、顔を真っ赤にして湯気を出しそうになりながら上司に相談しに行く者。上手くいくかどうかを賭けにする者。各種記録機器を準備し始める者。周囲の挙動を見て2人の事を心配する者。デートコースをチェックする者。その他にも沢山居るが、この2人のデートがそれだけ周囲の関心を引くものだということだ。

 そして、当事者の1人であるキラはもう何処から見ても情緒不安定な挙動不審者と化しており、フラガやノイマンといった人生の先輩に相談に行ったりしていた。相談を受けた者たちは苦笑交じりにアドバイスをしていたが、それがキラにどれだけ役に立つかは全くの未知数だろう。
 



 その夜、アンダマン諸島の島のひとつでサバトか何かと錯覚しそうな怪しい集会が行われていた。緑だの赤だのといった軍服に身を包み、頭から真っ黒な頭巾を被った物凄く怪しい集団だ。
 彼らの視線の先では一段高い壇上に赤い服を着た男2人が上がっており、あやしマントを付けている方が拳を握り締めて演説を行っている。

「諸君、我々が遂に決起する時が来た。これまでも我々はこの世の悪に正義の名の下に私的制裁を下してきた。だが、とうとう我々の前に最大の敵が立ちはだかったのだ!」
「「「「ウオオオオオオオオオッ!!」」」」

 ボスらしい男の台詞が夜の島に木霊する。因みに、彼らが騒いでいるのは基地のすぐ傍なのだが、何故か憲兵の1人もやってこない。どうなっているのだろうか。
 いや、ただ1人だけこの集会を見ている人物がいた。フィリスである。彼女は背中に流れる豊かな金色の髪を風に靡かせながら少し離れた海岸側からこの集会を伺っていたのだ。仕事の途中で居なくなった上司を探しに来たのだが、その過程で不幸にもこんな怪しい集会を見つけてしまった。

「……世界のために、今ここでインフェルノ・ミサイルでも撃ち込んでやりましょうか」

 短距離ミサイル発射筒を持ってこなかった事を、フィリスは酷く悔やんでいた。




後書き

ジム改 デートイベント発生。
カガリ こういうイベントは邪魔される為にあるんだよな。
ジム改 お約束だねえ。
カガリ みんなで面白がって手を出してきそうだし。
ジム改 はっはっは。
カガリ でも、なんだかザフトのほうも元気みたいなんだけど?
ジム改 何しろマドラス防衛施設は壊滅状態だからねえ。MSの数だけは回復してるけど、航空隊と艦隊はズタボロだし。
カガリ 頼みは2機のストライク、か。
ジム改 今度はアスランたちも参加するけどな。
カガリ 大丈夫だ、どうせまた戦闘中に壊れる。
ジム改 イージスって一体……。
カガリ あれ、今までまともに役に立った事あったっけ?
ジム改 それを言われると非情に心苦しいのだが。
カガリ いっその事、アスランもゲイツに乗り換えたらどうだ?
ジム改 いや、アスランが乗るとゲイツって物凄く強いから。
カガリ ゲイツって弱いとか言ってなかったか?
ジム改 弱いとは思ってないぞ。パイロットがベテランで整備状態が良ければストライクにも負けんだろう。
カガリ じゃあ、なんで使えないんだ?
ジム改 パイロットを選ぶ時点で問題有りだ。新兵でも使える機体でないと。
カガリ 折角の新型なのに……

次へ  前へ  TOPへ