光と闇に満たされた不思議な空間に、一人の少年が立っていた。少年は声を張り上げて、その場にいない、目に見えない、何者か、に訴えかけるように、叫んでいた。

「どうしてですか!!? どうしてこの宇宙は滅んだ方がいいなんて、そんな・・・」

 それに対して”何者か”は静かな、底知れぬ威厳を持った口調で答えた。

「私は絶望している、お前達人間は、その生活の場を宇宙に広げた今にあっても、幼年期にいる。お互いの欲に溺れ、争ってばかりだ」

「でも!! それが幼年期だと言うのなら、子供はいつか大人になる、きっと・・・何の争いも無く、人と人が本当に分かり合える時がきっと来る、僕は、そう信じて・・・」

 反論する少年。だが、

「そう信じて戦ってきて、君は今まで何を見てきた? U.Cで、A.Cで、A.Wの世界で? どんな時代、どんな場所においても、人は戦い続けていたではないか? そうして、この時代に、己の手に余る力である私さえも利用しようとして・・・」

「それは・・・」

「私はお前達が分かり合えるよう、少しずつ、そう、お前達はニュータイプと呼んでいるのだったな、その力を分け与えた。だが、お前達はそれでも、その力を戦いの中でしか、見出す事が出来なかったではないか?」

「でも、それでも、僕は・・・」

 泣きそうな声で訴えかける少年。その姿に、その何者かの声が、少し柔らかくなったような、そんな気がした。

「いいだろう、では君が証明して見せろ。この私に、人と人が分かり合えると言う事を」

「え・・・? どうやって?」

 顔を上げる少年。

「これは賭けだ。お前と私のな。これからお前をある世界に送る。そこもこの世界と同じく、認めぬ者同士が争う世界だ。その世界で、お前がその可能性をこの私に示せ。行動する事でな。その世界の未来を変えて見せろ」

 あまりにスケールの巨大な話に、少年は圧倒されているようだ。声は構わず続ける。

「ただし、公正を期すために、ここでのこの会話の記憶は消させてもらうぞ。それでは行って来い」

 と、言うが早いか少年の姿がブレ始めた。戸惑う少年。

「え? あ? 何? ちょっと・・・」

 慌てているうちに、少年の姿はその空間から消え去った。誰もいなくなった空間に、ポツリ、と呟きが漏れる。

「見せてくれ、この私に。人の希望を・・・」

 その祈りにも似た言葉は、誰も聞き取る者のいないまま、消えていった。



「君、大丈夫かい?」

「おい、お前、しっかりしろ!!」

 自分を呼ぶ声が聞こえる。それに混濁していた意識を覚醒させ、目を開けてみると、そこには茶髪の少年と、金髪の少女が自分を心配そうに覗き込んでいた。

「ん・・・あ、はい、大丈夫です」

 と、立ち上がる。その、立ち上がった黒髪の少年。年齢は10歳、もしくはそれより少し上と言った所で、そのルビーのような真紅の双眸が、強い意志を秘めてキラキラと輝いていた。

「あの、質問があるんですが、ここはどこですか? それにあなた達は? 今は一体どういう状況なんです?」

 と、聞く少年。彼の目の前の二人は一瞬顔を見合わせると、話し始める。

「ここは中立コロニー、ヘリオポリスの工場区だよ。今、ザフトの攻撃にあっていて、僕達は避難しようと走っていると、君が通路に倒れていたんだ。僕はキラ・ヤマト」

 と、茶髪の少年。次に金髪の少女が、

「カガリだ、お前は?」

 と、聞いてきた。

「僕は・・・ショウ、ショウ・ルスカ・・・」



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ANOTHER GUNDAM SEED 

刻の末裔


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OPERATION,1 来訪者


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「つまり、このコロニーがそのザフト、という軍隊の攻撃を受けて、キラさん達は避難するためのシェルターを捜している、と言う訳ですね?」

 走りながら、ショウがキラに聞く。頷くキラ。カガリは黙って、ただ前を見ている。

『・・・さっぱり訳が分からない。僕は確か木星圏で伝説巨神と戦っていた筈・・・なのに気が付くとどことも知れないコロニーにいる・・・何でだ? 訳が分からない? 一体全体どうなってるんだ?』

 ショウは、走りながらもそんな事を考えていた。

 やがて、三人の前方に光が見えた。それまで薄暗い通路を走っていたので、一瞬、目が眩む三人。光に目が慣れると、そこには、

「これって・・・・・・」

「あああ・・・地球軍の新型機動兵器・・・」

「!! ガンダム・・・?」

 眼下にある、巨大な神像の如き、人型のマシンを見て、三者三様の反応を浮かべる。どうやら階下では銃撃戦を行っているようだ。とすればここも危険だ。と、ショウが判断を下す。その時、

「お父様の裏切り者ぉぉぉぉーーーーっ!!!!」

 手すりを持って、しゃがみこんでいたカガリが大声で叫んだ。その声は大きく響き、それを聞きつけた作業員だろうか、栗色の髪の女性が手に持っていたマシンガンをこちらに向けるのが見えた。

「チッ!!」

 舌打ちして、手をかざすショウ。すると、飛んできた銃弾は、彼等の手前で何か目に見えない壁に当たったかのように、弾かれてしまった。銃を撃った女性はあんぐり、とそれを見る。

「こんな修羅場に長居は無用です、早く逃げましょう」

 二人を促すショウ。キラがカガリの手を引いて、三人は走る。すると、今度は目の前に数人の緑色のパイロットスーツを着た人間が現われた。ザフトの兵士だ。彼等はショウ達を見ると、敵だと判断したのか、それとも咄嗟の反応なのか、とにかく銃を向け、引き金に指をかける。

 カガリを庇うように前に出るキラ。しかし、それより早く、ショウが兵士達に飛びかかり、一瞬で全員を打ち倒してしまった。コンマ1秒にも満たぬ瞬間の早業である。

 目を丸くして、固まっているキラとカガリ。そこをショウに引っ張られ、何とかシェルターの前まで来た。

<まだ誰かいるのか?>

「はい、僕と、二人の友達もお願いします」

 と、安堵の表情で言うキラ。しかし返ってきた答えは、そんな安心を裏切るものだった。

<三人? 駄目だ、ここはあと一人・・・いや、どう詰めても二人までだ。左ブロックに37シェルターがあるが、そこまでは行けないか?>

 凍りつくキラ。左ブロックに行くためには、この銃撃戦の最中を突っ切らねばならない。自分なら何とかなるかもしれないが、この幼いショウと、カガリは・・・

 そう判断したキラは、二人に入るように言う、つもりだったのだが、

 トン

 背中を押され、シェルターに入ってしまう。彼だけでなくカガリも。二人の背中を押したのは勿論残りの一人、ショウだった。

「ちょ・・・ショウ君、何を・・・」

「左ブロックのシェルターには僕が行きます」

 と、事も無げに言うショウ。カガリは、

「ちょっと、お前・・・」

 何か言いかけるも、その前にシェルターのドアが閉じ、二人は下層へと運び去られた。残されたショウは、溜息をつくと、

「どうも僕はこういうのに縁があるんだね・・・こんなどことも分からない所に来てまで巻き込まれるなんて・・・」

 そう呟いて、走り始めた。



 ショウが階下で繰り広げられている銃撃戦を見ると、かなり守備側が不利なように見えた。人数が少なく、そのほとんどが作業員なのもあるが、なにより攻撃側の動きが速い。かなりの訓練を積んでも出来るかどうか、という動きで戦っている。

「!」

 ショウの目に、一人のザフト兵が、先程自分達に銃を向けた女性作業員を狙撃しようとしているのが映った。

「危ない、後ろ!!」

 咄嗟に叫ぶショウ。女性作業員は、振り向きざまにその兵士を撃ち殺すと、拳銃を抜いて、怒鳴った。

「来い!!」

「左ブロックのシェルターに行きます、お構いなく」

「あそこはもう、ドアしかない!!」

 それはつまり既に破壊された、と言う事だ。それを聞かされたショウの判断は素早かった。無造作に5,6メートルはある落差を飛び降りる。枯葉のように音も無く着地したショウを見て、その女性は驚愕する。そこに隙が生まれた。

「アウッ」

 銃弾が彼女の肩に命中し、うずくまってしまう。慌てて彼女に駆け寄るショウ。銃弾の飛んできた方向を見ると、赤いパイロットスーツを着た兵士が、マシンガンを捨て、ナイフを抜いてこちらに向かってくるのが見えた。

 迎撃しようと身構えるショウ。しかし、彼のような子供がこんな場にいることに驚いたのか、その兵士、アスラン・ザラはその緑の瞳を見開き、動きを止めてしまう。その隙を衝いて、女性、マリュー・ラミアスが拳銃を彼に向けた。

 アスランは素早く飛び退くと、彼等が立っていたのとはまた別の、もう一機のMS、イージスに乗り込んだ。

 それを見たマリューは、ショウを自分達の立っているMSの開きっぱなしのコクピットに押し込むと、自分もその中に飛び込み、システムを立ち上げた。その時、コンソールに表示された文字の頭文字を拾い上げるショウ。

『G,U,N,D,A,M・・・・・・やっぱりガンダムか・・・』



「ラスティは失敗だ、あの機体には地球軍の士官が乗っている」

 通信を外で待機していた、『黄昏の魔弾』ことミゲル・アイマンの乗るジンに入れるアスラン。

「ならあの機体は俺が捕獲する、お前は離脱しろ」

 と、ミゲル。アスランは言われたように、イージスを離脱させた。ミゲルは腰に装備されていた重斬刀を抜くと、目の前の最後の一機、GAT−X105、ストライクに襲い掛かった。

 ストライクのコクピットで、マリューは必死にその攻撃を避けようと、操縦桿を切る。だが本職のパイロットでない彼女の操縦と、未調節のOSではそう上手くかわしきる事も出来ず、すぐに追い詰められてしまう。迫る斬撃。

 その時、マリューはコクピットのあるボタンを押した。するとストライクの鋼色の装甲が、トリコロールカラーに色付き、その腕でサーベルを受け止めた。

 PS装甲。Xナンバーに装備された、あらゆる物理的攻撃を無力化する特殊装備。それが発動したのだ。が、状況は好転せず、ジンのマシンガンを受け、倒れてしまうストライク。ショウは、

『さて、どうしたものか・・・あんなザクもどきは僕が生身でも軽く片付けられるが・・・こんな所で僕の力を見せるのも・・・』

 と、結構のん気に構えていた。

「?」

 サイドモニターに動く物が見える。拡大してみると、それは逃げ惑う少年少女だった。彼等もキラやカガリのように、シェルターを捜しているのか、さもなくば見つけられなかったのだろうか。

 それを見た瞬間、彼の中で一つの決心が固まった。

「仕方ないですね!!」

 ショウはそう叫ぶと、

「どいてください、この機体は僕が操縦します」

 と、だけ言ってマリューを押しのけて、席に座る。当然、抗議しようとするマリューだが、有無を言わさぬ目で睨みつけられ、黙り込んでしまう。ショウはOSをチェックする。この機体の動きからそうではないか、と薄々感じてはいたが、やはり、

「無茶苦茶ですね。こんなお粗末なOSでこんな機体を動かそうとは」

 そして凄まじい、指が見えないほどの速度でキーボードを叩き、2秒でOSを最適化してしまった。その手際の良さに、驚くのを通り越して、ポカン、と口を開きっぱなしにしているマリュー。

「武器は・・・バルカンとナイフ・・・十分だ!!」

 そう叫ぶと、ストライクの両手に腰から射出されたナイフを持たせ、ジンの撃って来る弾幕を、まるで踊るように、直進しながら避け、接近していく。

「な・・・何で当たらない?」

 マシンガンを乱射しながら、真っ青になって叫ぶミゲル。ストライクは自分のジンが放つ弾丸を、全てすり抜けるように回避してしまう。彼は今まで見たことも無いような動きを見せられ、恐怖にかられていた。

 次の瞬間、コクピットに衝撃が走り、モニターが真っ暗になった。

 ストライクの右手のアーマーシュナイダーがジンのメインカメラのある頭部を貫いたのだ。そして、

 ズガアッ!!

 彼の目の前の隔壁を貫いて、左手のアーマーシュナイダーが彼の鼻先に、文字通り突きつけられる。ピクリとも動けなくなるミゲル。そこに接触回線で通信が入ってくる。

「機体を捨てて投降しなさい。命を奪う事だけはしません」

 それはまだ声変わり前の少年の声だった。ミゲルはそれを一瞬疑問に思ったが、自分の今置かれている状況を思い出し、すぐにその勧告に応じた。

「あなた・・・一体・・・う・・・」

 ストライクのコクピットではマリューが傷のためか気を失ってしまった。ショウは、そんな彼女を抱きかかえると、呟いた。

「ま、どういう状況であれ、民間人がピンチなのに軍人の僕が何もしない訳にはいかないよね」







TO BE CONTINUED





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後書き 
 どうも、『ANOTHER GUNDAM SEED 刻の末裔』を読んでくださってありがとうございます。

 この話の主人公である、ショウ・ルスカはGジェネFのオリジナルキャラクターで、自分の一番のお気に入りのキャラです。それが、ある強大な力によって、SEEDの世界に送り込まれてくる、我ながらぶっ飛んだ設定ですが、シリアス半分、ギャグ半分で、暖かい目で見守って欲しいです。

 さて、彼の能力と、プロフィールを。なお、これはあくまでオリジナルのものです。



 ショウ・ルスカ

 年齢10歳前後、男。元オリジナル部隊の隊長で、当時の階級は大佐。ぼさぼさの黒髪と、真紅の瞳がトレードマーク。心優しい性格で、誰かが傷ついたりするのを放っておけない。

 戦場において要求されるあらゆる能力に秀でており、特にパイロットととして、高い適性を持ち、戦闘機からMFまで、どんな機体も自分の手足の如くに扱う事が出来る。

 また、彼自身の戦闘能力もかなり高く、流派東方不敗をはじめ、あらゆる格闘技、果ては法術なるものまで習得しており、東方先生を遥かに凌駕する格闘能力や、様々な超常現象を引き起こす特殊能力を持つ。



 と、デタラメなまでの最強ぶりですが、ゲームで東方先生より強い格闘能力を持つまでに育て、また。色々な世界で戦っているから、騎士ガンダムの世界での法術だって使えるだろう、と考えた結果、こうなりました。

 賛否両論あるでしょうが、最後までお付き合い願えるなら、幸いです。

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管理人

Gジェネの知識が乏しい私には主人公が誰だか分からないという問題が。
個人的には最強も最高も気にしませんが、無敵や完全無欠は自分ではギャグ以外では出さない主義なので、ショウ君が今後どうなっていくかを見させてもらおうかと思います。