「…そ、そんな馬鹿な…たった一機で私の部隊を…」





 C.E71、3月5日。この日、ヨーロッパ某所で小規模な戦闘があった。

 戦闘を行ったのはザフトのMS部隊で、彼等は連合が極秘裏に新型MSのテストを行っているという情報を得て、それの調査と、事実であればその新型MSの奪取、もしくは破壊を任務として、未確認のMSが目撃されたという地点に赴いた。

 現地に到着した彼等は、早速未確認のMSと遭遇した。全身に砲を装備したMSで、何よりも特徴的なのはその巨体であった。通常のMSよりも、二回り以上は大きい。20メートル以上の大きさのジンが小さく見えるほどの巨体。そして威圧感を与える漆黒のボディ。

 即座に彼等はその黒いMSを包囲し、パイロットに投降を勧告する。通信が返ってくる。若い女の声だ。二十代半ばといった所だろうか。少々不謹慎だが、そう考えて顔を綻ばせた者も、部隊の中にはいた。

〈…私は地球連合に属する者ではありません。また現時点であなた達と戦う意志もありません。どうかこのまま見逃していただきたいのですが…〉

 この通信を聞いて、多くの者が笑い声を上げた。こんな凄いMSが連合の物ではなくて一体どこの物だと言うつもりなのか。言い訳にしてももっとマシな物を思いつくべきだ、と、そういう印象を殆ど全員が受け、隊長が代表して質問する。と言っても形式的な物だが。

「では、このMSが連合に属さない物だと言うのなら、一体どこの組織の物か、それを明らかにせよ」

 この質問に対する回答は、

〈私の私物です〉

 だった。隊長はこのパイロットに投降の意志が無いと判断すると、部下達に攻撃命令を下す。

「構わん!! 攻撃を開始しろ!! 出来れば原形を留めて捕獲するのだ!!」

〈仕方ありませんね、私にも守る者がいます。先に手を出したのはあなた達ですよ〉

 そして10機のジンと、その黒い巨大なMSとの戦いが始まる。だが、それを果たして戦いと言って良いものだろうか。

 ジンがマシンガンを撃ち、重斬刀を振るうも、その黒いMSは巨体には似つかわしくない軽やかな動きで、その悉くを避け、逆に腕に仕込まれたビームサーベルや、その巨体を活かした鉄拳、更には胸や肩に装備されたビーム砲で反撃し、次々とジンは倒されていく。

 戦闘開始から部隊の全滅までほんの数分。隊長は呆然として、何事もなかったかのように去っていくその黒いMSの背中を見詰めていた。





「…全く…敵対する意志はないと言っているのに…困ったものですね……大丈夫でしたか?」

 その黒い巨大MSのコクピットで、パイロットシートに座る銀髪の女性、フェニックス部隊副長、エターナ・フレイルは、そう少し困ったような笑顔で彼女の後ろの仮設シートに座る少年に向かって言う。声をかけられたその少年は、

「…はい、大丈夫です…エターナさんと一緒ですから…」

 そう返した。だがその額には汗が浮かび、金色の髪が肌に張り付いている。少しばかり無理をしているようにも見えるが、それ以上にその子はエターナを信頼しているようだった。それを感じたエターナも笑顔でその子に応じる。

「すいませんね…世の中は物騒ですから、どんな交通機関よりもMSに乗って移動するのが最も安全なんですよ…攻撃は最大の防御、とも言いますしね……ともかく、もう少しだけ我慢して下さいね。後2日程で、あなたの新しい家に着きますから」

 エターナはそう言うと、ペダルを踏み締め、その黒いMS、サイコガンダムMk−Vを疾走させた。



「くそっ!! どういう事なんだこれは!!」

 同時刻、地球某所。ブルーコスモスの盟主、軍事産業連合理事ムルタ・アズラエルは、手にした書類の、そこに書かれていた内容に対して驚きと怒りを隠そうともせずに、その書類を床に叩き付け、さらに机の上にある物を片っ端から投げつけた。

「アズラエル理事!! どうされました!?」

 その騒ぎを聞きつけて、彼の取り巻きの一人である、サザーランド大佐が部屋に入ってきた。それを見たアズラエルは佇まいを整えると、手元のパソコンを操作する。モニターに世界地図が表示され、その数箇所に赤い点が映る。

「…理事、確かこのポイントは…」

 それを見たサザーランドが、一瞬だけ記憶を探るように視線を宙に浮かせた後、ああ、そうかと思い出したように頷く。アズラエルは苦い顔で彼の言葉を継ぐ。

「そう、この場所は特殊強化兵の人体実験を行っていた施設でした」

「…でした? 何故過去形なのですか? 強化兵のプランはまだ実行中の筈…」

 アズラエルの言葉に違和感を感じたサザーランドが問う。アズラエルは何も言わず、また手元のパソコンを操作する。するとモニターに映る画像が、世界地図から、巨大なクレーターの写真へと切り替わった。

「理事、これは?」

「…この一週間の間に人体実験を行っていたラボが今日までで既に4つ、何者かの手によって破壊されています。襲われたそれぞれの施設に共通する事は、跡形もなく、痕跡の一つも残さず、この世から完全消滅させられている事…」

 それを聞いたサザーランドは愕然とする。アズラエルがこの映像を見せた理由が分かった。今モニターに映っているクレーターが、少し前までのその研究所だという事だ。背筋に冷たい物が走る感触を覚える。それと同時に彼は一つの疑問に突き当たっていた。

「しかし、どうやってこれほどの破壊を? 現在はコーディネイター共のバラ撒いてくれたNジャマーの影響によって核は使用できない筈……まさかそれを再び使用可能にした者がいると?」

 その疑問を口に出すサザーランド。しかしアズラエルは首を横に振ると、彼の言葉を否定する。

「いえ、たとえ核を以てしても、ここまで完全に破壊する事は不可能でしょう。それに研究所としての機能を不能にするだけならこれ程の破壊を行う必要もありませんしね。更に言うなら現地へ向かった分析班から、現場に放射能による汚染は認められない、という報告も受けています」

「では、核を用いずにこれ程の破壊力を生み出す兵器を持つ者がいると?」

「…現段階で揃っている情報からは、そう考えるしかありませんね」

 その結論に達する二人。それは最悪と言っていい結論だった。核ミサイルをも遥かに凌ぐ破壊力を持つ兵器がこの世界に存在している。しかもそれは人体実験の施設を襲撃している事から、ザフトか、少なくとも地球連合に与するつもりの無い人間の手にある事となる。もし、そんな物の矛先が自分達に向けられたら…

 想像するだけでも鳥肌の立つような内容だ。しかし考え方を変えればそれは魅力的な話でもある。もし、その兵器を自分達地球連合が手にする事が出来たなら、それはこの戦争における大いなる転機だと言える。自分達にそんな力があれば、あの薄汚いコーディネイター共など簡単に駆逐してくれるのだが…

 そう考えた時、その望みがある事に気付く。キーボードを操作すると、今度はまだ襲われていないラボの地点が、青い点として映った。

「…サザーランド大佐、次に襲われるラボはどこだと思います?」

 と、アズラエル。聞かれたサザーランドは少し顎に手をやって考えた後、モニターの一点を指した。

「…恐らく、このロドニアのラボでしょうな。ここは我々の持つ研究所の中でも最も規模の大きい物の一つ。ここでは現在試験的に製造されている生体CPUとはまた違ったアプローチでの強化兵の開発を行っていますし…」

 製造、開発。どこまでも人間の命を物としか見ない物言いだ。だが。アズラエルもそれを咎めはしないし、サザーランドもそれに罪悪感を感じる事もない。彼等にとってラボで使われている、コーディネイターや戦災孤児達の命などその程度の価値でしかない。

 アズラエルはサザーランドに命令する。

「このロドニア研究所には確か軍一個師団が駐留していたはずです。彼等に命令して下さい。暫くの間、第一級警戒態勢を取れと。もし侵入者、襲撃者のあった場合は、可能なら捕獲、無理だと判断したら、確実に殲滅しろ、とね!!」



OPERATION,15 フェニックス部隊 



 2日後、ロドニア研究所。

 アズラエルの言葉通りこの研究所はかなりの大規模で、表向きは大手の製薬会社としてあるが、その実、悪魔の所業、という言葉さえ生温く感じるような行為が平然と行われており、またこの研究所の周囲には装甲車や戦車、武装ヘリ、そして千人を超える完全武装の兵士によって、まさに鉄壁という言葉が相応しい防御態勢が整えられていた。

 それを証明するかのように、以前にも数度、ザフトのスパイと思われる者が潜入・破壊工作(サボタージュ)を試みたが、成功した者はおらず、全員が射殺されている。

 しかしこの日、この研究所はかつてない喧噪に包まれていた。

 ヴォーッ!! ヴォーッ!!

 非常事態を知らせるアラームが鳴り響く。防弾チョッキやヘルメットを身につけ、ライフルを持った兵士達が守りを固め、通路の曲がり角に向けて銃を構える。侵入者がその姿を現したら、瞬間に蜂の巣にする構えだ。

 5秒…10秒…15秒…兵士達にとってはとても長く思える時間が過ぎる。いつの間にか彼等は滝のような汗を流していた。緊張などの精神状態から来る汗ではない。暑さに対して体が本能的に出す汗だ。

「…? この空間…何か変だ…暑…いや、熱すぎる!!!?」

 兵士の一人が異常に気付いた。ふと側にあった温度計を見ると、この通路の温度は摂氏60度に達しており、更に驚くべき速度で上がり続けている。それを仲間に伝えようとしたその時、曲がり角から凄まじい勢いの炎が上がった。

「「「!!!???」」」

 その炎の圧倒的な熱量と眩さに全員が目を逸らす。数秒の間を置いて、曲がり角から一人の女性が姿を現した。

 青みのかかった長い黒髪と、鋭い目が印象的な女性だ。だが、兵士達の目を引いたのはそれよりも、彼女の右手の大型の火炎放射器だった。これがこの空間の異常な温度上昇の原因だったという訳だ。そしてその女性は、その紅蓮の炎の中を、耐火服も着ていない普段着で火傷一つ負わず、汗一つかかずに悠然と立っている。

 ヤバイ。

 本能的にそう判断した兵士達は一斉にその女性に向けて手にした銃の引き金を引く。十数丁のライフルから一斉に撃ち出された弾丸がその女性に向かう。しかし次の瞬間、またしても不可解な事が起こった。彼女の周囲で燃えていた炎がまるで意志を持つかのように不自然な動きをし、壁のように展開、彼女に向かう弾を全て防ぎきったのである。

「なっ……」

 自分達が今まで見た事もないような超常を見せつけられ、絶句する兵士達。その女性は何も言わず、無表情に、手にした火炎放射器を彼等に向け、

「…デスフレイムアロー」

 そう呟くと、地獄の業火が放たれた。それに反応できなかった兵士は一瞬で、灰も残さずにこの世から消滅した。反応し、かろうじて避けた者も、全身を焼かれ、呻いている。その中の一人が、息も絶え絶えにその女性を見て、言う。

「…お前は…一体…何だ」

 何者だ、誰だ、とは聞かなかった。彼女の存在は彼等の常識や理解を超越していた。彼女は、その兵士を見下ろしながら、やはり無表情で答える。

「…別にあなた達に説明する義務はありませんが……私は元DOBH所属、フェニックス部隊、作戦通信参謀、ニキ・テイラー。階級は大佐です」

 その言葉が紡ぎ終わるのとほぼ同時に、その兵士は絶命した。ニキは興味を失ったように顔を上げると、通路を進んでいく。





 異常が起きているのは研究所の内部だけではなかった。ラボの正門前の敷地に、戦車や装甲車が並び、空中には10機以上の武装ヘリが滞空している。それらの砲や機銃の銃身は、今はたった一つの”もの”に向けられていた。

 サーチライトが”それ”を照らし出す。そこにいたのは一人の幼女だった。ボブカットの赤い髪と、それと同じ色の目をしていて、どう見ても10歳ぐらいにしか見えない子供だ。しかし、そんな子供が発散するプレッシャーが、装甲板越しにも威圧感を乗り手に与え、その身を緊張させる。

 その幼女はそれほどの厳戒態勢の中を、走るでもなく、また怯えた様子もなく、ゆっくりと歩んでいる。不意に彼女は足を止めると、空を見上げた。彼女にミサイルと機銃の照準を合わせ、旋回しているヘリ部隊の姿を捉える。

「この程度じゃあたし達は止められないよ!!」

 彼女はそう言うと、軽く手を振る。

 ヒュッ!!

 一瞬だけ響く、風を切る音。

 その場の誰も、何が起こったのか理解できなかった。突然、上空のヘリが全て、その胴体をまるで鋭利な刃物で切り裂かれたように真っ二つにされ、墜落、爆発した。巻き起こる爆炎。それを背景に、その幼女はまた前進を始める。

 それに恐れを感じたのだろう、戦車や装甲車の機銃が次々に火を噴く。

 しかし、その幼女には一発も当たる事はなかった。彼女は握り拳を作ると、

「エアロクエイク!!」

 そう叫び、それを体の前で打ち合わせる。するとその両の拳を中心に強烈な衝撃波が巻き起こり、それが彼女に向けて放たれる弾を全て弾き飛ばし、戦車も装甲車も、みんなまとめて吹き飛ばしていく。

 抵抗を排除した幼女は、正面から堂々とラボの内部に侵入し、鋼鉄製の隔壁をまるで紙か藁で出来ているかのように破り、進んでいく。彼女の感覚は正確に自分の目的地がどこにあるかを教えていた。そこへ向かう途中に何度か兵士達が行く手を遮るものの、鼻にもかけずに吹っ飛ばし、とうとう目的地へと到着した。

 一際分厚い隔壁が何重にも下ろされている。しかしそれすらもこの進撃を止める事は出来ない。彼女は右手をかざす。その掌に空気の流れが集まり、球状に空間が歪んでいるように見える。そしてそれを一気に前方へ向けて解き放つ。先程戦車隊を壊滅させたよりも軽く数倍は強力な衝撃波が発生し、一気に隔壁を貫いていく。

 それによって出来たトンネルを彼女が通り抜けると、そこには白衣の科学者が部屋の隅に縮こまっていた。彼等は彼女を見て、口々に喚き立てる。

「き…貴様は何者だ!!」

「我々にこんな事をして、ただで済むと思っているのか!!」

「一体何の理由があって我々を狙う!!」

 一通り聞いた幼女は、呆れたような顔になる。

「理由が無いとは言わせないよ。あなた達のやっている事を許せないと感じ、その為に行動を起こす者がいるってだけだよ。それで弁解は終わり? じゃあそろそろ、消えてもらおうかしら? あなた達は今までさんざん命を弄んできたんだし……弄ばれた人達がどんな思いをしたか、その百万分の一でも、味わってみるのね…」

 そう言って、彼女は先程隔壁を破った時と同じようにかざした掌に空気を集中させ、それを科学者達に向ける。顔を引きつらせる科学者達。理屈では分からなくても、動物としての本能で判る。自分達は、今、ここで、死ぬのだと。

「…そうそう、最期だから教えてあげる。あたしの名前はカチュア・リィス、階級は大佐。フェニックス部隊のMSパイロットの一人だよ」

 その自己紹介が終わると、即座に衝撃波が放たれた。





「本部!! 本部!! こちら第14分隊!! 助けてくれ!! 助けてくれ!! 化け物だ畜生!!」

 兵士の一人が体をガタガタと震わせながら、壁に設置された通信機に怒鳴る。しかし、聞こえてくるのは雑音ばかりだ。そこに、

 コツ

「ヒッ…!!」

 靴音。それを聞いた兵士達が、一様にそれが聞こえてきた方向を、白い息を吐き出しながら、振り向く。いつもはエアコンによって常に摂氏20度程度に保たれている筈のこの施設の室温が、今彼等がいるブロックでは氷点下30度を記録していた。

 既に蛍光灯は破壊され、非常灯の薄暗い明かりの中を、一人の少女が靴音立てて、ゆっくりと歩いてくる。

 少し癖のある栗色のショートヘアの少女だ。その顔からは生気というものが殆ど感じられない。まるで自動人形(オートマトン)の様な、そんな印象すら、見る者に抱かせる。彼女は何の感情も宿っていない静かな瞳で、兵士達を見据える。見られた兵士達は、それだけで体温をどんどん奪われていくような、そんな錯覚を覚える。

「う…わあああああっ!!!!」

 その感覚に耐えきれず、一人が手にしたライフルを向け、引き金を引く。だが、

「…フリーズ・アーマー…」

 そうその少女が唱えると、突如として彼女の前方の空間に氷壁が出現し、放たれた弾丸を受け止める。そして、

「…巻き起これ氷の嵐、全ての生ある者に等しき死を……オールフリーズ…」

 別の呪文が詠唱され、彼女の体が白く輝く。その光が収まると、周囲からは一切の音が消え、一面白く、凍り付いていた。兵士達も真っ白に、まるで石膏像のように立ったまま凍結していたが、やがて粉雪のように砕け散る。

 敵の排除を確認した少女は再び通路を歩き出そうとする。と、そこに、

「…!!」

 自分の心の中に誰かが入ってくるような感覚を覚える。それが何なのか、彼女にはすぐに判った。仲間からの通信だ。彼女達はニュータイプや強化人間の持つ特殊な感覚によって、お互いの心と心で対話する。この研究所に来ている自分以外の二人で、今自分の心に入ってきているのはニキの方だ。彼女の”声”は沈んでいた。

『シス…聞こえますか?』

『そちらはどう? 私は今は要救助者を捜索しているけど…?』

 その少女、シス・ミッドヴィルはニキにそう返す。

『……』

『…そう、生きている人はそっちにはいないのね』

 彼女の沈黙に、シスはそれが何を意味しているかを悟っていた。心と心の会話とは、一時的に互いの心の一部を互いが共有し合う事。故にその中で隠し事は出来ない。剥き出しの心が出てしまう。それが一部とは言え、シスはニキの心から伝わってくる深い悲しみと怒りの波動から、今彼女が何を目にしているか、それすらも大体の想像はついていた。

『…私はこれから彼等を弔います。カチュアは既に科学者達を始末したようですから…あなたはこのまま生存者を捜索して下さい』

『了解』

 シスは意識を現実へと引き戻すと、再び先へと進み始めた。





「…どうして、人はここまで堕ちる事が出来るのでしょうね…」

 「実験試料保存室」と書かれた部屋の中で、ニキは周囲を見回した。彼女の周りの壁には、一面にケースが敷き詰められれている。その一つ一つに、人間の脳が収められていた。恐らくは脳内へのインプラントなどの実験に使用されるのだろう。その数は軽く100を数えた。

「…もう、眠りなさい。あなた達の無念は、私達が晴らしますから…」

 その場に渦巻く残留思念。憎しみ、恐怖、悲しみ。ニキはそれらを全て受け止めて、手にした炎を振るう。浄化の白い炎が部屋中に走り、全てを光の中へと還していく。その中にたった一人佇むニキの姿は一枚の絵のように優美で、そして、哀しげだった。





 一方、シスは生存者の姿を求め、研究所内を徘徊していた。

 曲がり角を曲がる、その時、いきなり視界の隅から銀色の光が走った。彼女は後ろに飛んでそれを避ける。だが、ほんの少しだけ避けきれずに着衣が切られた。

「……」

 相も変わらず彼女は無表情だが、実はかなり驚いていた。今の攻撃は完全に避けたつもりだった。しかし相手の攻撃の速度がこちらの見切りの上を行ったのだ。こんな施設にそんな凄腕がいるとは。シスは身構える。

 曲がり角から出てきたのは年端もいかない少女だった。

 流石にシスよりは年上だろうがそれでも14歳ぐらいだろうあどけなさの残る、柔らかそうな金色の髪と、紫がかかった赤い瞳を持つ、美しい少女だ。着ている服は粗末な物で、手には大振りの近接戦闘用ナイフを持っている。

 ただ者ではない、とは一目で分かるが、どう見ても警備員ではない。恐らくは彼女こそが…

 そう考えたシスが何か言おうとするが、それより早くその少女が飛びかかってきた。常人では有り得ない脚力で一気に間合いを詰め、手にしたナイフを振るう。これだけの速度であれば普通の人間相手なら十分だろう。だがその攻撃がシスを倒す事はなかった。

 シスは指一本でそのナイフを受け止めると、そのまま彼女の腕を取り、関節を極める。

「あくっ…」

 小さく悲鳴を上げる少女。すると、今度は二人の少年が曲がり角から躍り出て、シスに向かってきた。一人は青い髪でかわいい顔をしていて、もう一人は短く刈った髪と鋭い目が印象的だ。二人ともサブマシンガンで武装している。

 彼等の服装も今シスが戦っている少女と同じ物だ。この二人も彼女と同じ被験者で、今回自分達が保護する対象らしい。故にシスに彼等と戦う理由は存在しない。が、彼等の目にはシスは敵だと映っているらしい。まあそれもこの状況を鑑みれば無理の無い事だが。

 兎に角、このままでは話も出来ない。シスは彼等に、少しだけ痛い目にあって大人しくなってもらう事にした。

 拘束している少女を、二人の内の一人、青い髪をした少年に向けて突き飛ばす。少女と少年がぶつかり、動きが止まる。その一瞬で、シスはもう一人、鋭い目の少年に向かって突進すると、瞬時に彼の銃を分解し、そのまま彼を投げ飛ばしてしまう。そのテクニックは、以前アークエンジェルに潜入してきたアスランに対してショウが見せた物と寸分変わらなかった。

 今度は、少女を払いのけ、青い髪の少年が銃をシスに向ける。しかしこの至近距離では銃よりも格闘の方が速かった。シスは一瞬で彼の懐に飛び込むと銃を持つ方の手首を掴み、そのまま捻るようにして投げる。少年の体は一回転し、床に叩き付けられた。

「うげっ!!」

 その少年も悲鳴を上げる。シスは床に転がったサブマシンガンを拾うと、それも1秒とかからず分解してしまう。その鮮やかな手際に、三人ともようやく実力の違いを認識できたのか、大人しくなる。どうやら話をする態勢に入ったようだ。

 シスはできるだけ彼等を警戒させないように、優しい声で話そうとした。

「心配しないで…私はあなた達の敵じゃないわ…あなた達を助けに来たのよ。傷つけるつもりはないわ…」

 彼女にしてみれば当然の事だが、彼等三人には意外な言葉だったのだろう。それぞれ顔を見合わせる。その後、鋭い目の少年が彼等を代表するようにシスに聞く。

「…じゃあ、あんたは俺達を助ける為だけに、連合に喧嘩を売ったって事なのか?」

「…別に私一人じゃないけど…そうなるわ…」

 と、シス。その言葉は更に意外な物だったらしく、再び三人とも顔を見合わせる。そして、再びその少年が顔を上げ、聞いた。

「どうして?」

「え?」

「どうしてそんな事を? そんな事したってあんたに何の得がある訳でもないだろう? なのに何故俺達を助けてくれる?」

「…それが私達、フェニックス部隊の任務だから…たとえ本隊から離脱しても…それは変わらない…」

 そう答えるシス。だが感情が希薄でコミュニケーションが苦手な事が災いしてか、目の前の三人は未だに半信半疑、といった表情だ。まあそれは本隊やフェニックス部隊の事を知らない人間には理解不能な説明をしているシスにも原因があるのだが。しかしこれでは無事に連れ出せるかどうか分からない。

 彼女はそう判断すると、腰のホルスターから拳銃を抜き、安全装置を外す。それを見た三人は体を緊張させる。だが、彼等の予想した行動を、シスが取る事はなかった。彼女はその拳銃を、三人の中でリーダー格なのだろう、鋭い目の少年に渡す。少年は渡された銃とシスの顔を、交互に見比べ、当惑した表情になる。

「…私が信用できないなら、その銃で私を撃てばいい…弾は…入っているから…」

 その言葉を受けて、今度こそ三人とも驚いた顔になる。今まで自分達は選択肢など与えられた事は一度もなかった。ただ逆らえば殺されるから、地獄のような実験と訓練のひたすらな繰り返し。その中で多くの”お仲間”が死んでいったが、誰もそれを気に留める事はなかった。

 尤も、それは”お仲間”である自分達も同じだったが、それ以上にここで実験に携わっている奴等からすれば、自分達は人ではなく物。そう見ている事はずっと前から分かっていた。自分達はここにいる限り彼等の所有物でしかないのだ。物に自由を与える与えないなど議論以前の問題だ。最初から必要ではないのだから。

 だが、今目の前にいるこの少女は自分が信用できないなら撃て、とそう言っている。その目に嘘はなかった。

 …この人は信用できるかも知れない…

 少年、スティング・オークレーは、一つの決心をすると、手にした銃をシスに返した。受け取るシス。スティングは言った。

「…信じて…いいんだな…?」

「…勿論…」

 他の二人も暫く考えていたようだったが、やがて意を決したように立ち上がると、

「ま、こんな折角のチャンスをふいにする事もないよね!!」

「…二人が行くなら私も…」

 その反応に、シスは頷く。と、その時、大きな振動が彼女達を襲った。この原因はシスにはすぐに見当が付いた。どうやらカチュアとニキの二人が相当派手に暴れているようだ。この研究所が崩壊するのも時間の問題だろう。

「…時間がないわ…”死”にたくなければ……どうしたの?」

 三人を振り向いてそう言うシスだが、言葉の途中で異常に気付く。少年二人、スティングとアウル・ニーダが、はっ、としたような表情になり、そして最も顕著に異常を示したのが少女、ステラ・ルーシェだった。

 彼女の顔がみるみる青ざめ、瞳孔は開き、体は小刻みに震える。

「あ…あああ…死ぬのはいや…死ぬのはいや…いや、いや…いやあああああああっ!!!!」

「…!! 禁句(ブロックワード)による催眠暗示…!! 強迫観念…!!」

 彼女の異常を見て、自身も強化人間であり、強化処置に対する知識も豊富なシスはすぐさまその原因を見破る。

 ブロックワード。薬物の投与などがフィジカルな強化だとするならこちらはメンタルな部分の強化と言える。恐らくこの少女の中の戦闘に不必要な感情、特に恐怖の類の感情は、普段は暗示によって抑え付けられているのだ。だが、何かのきっかけで個々に設定されたその言葉を耳にする事で、その暗示は解除され、封印されていた恐怖心が表に出て、まともな行動を取る事が出来なくなる。

 強化人間の戦闘能力を危険視した科学者達が、脱走や反乱の防止の為に設定したのだろう。前後の文脈から考えて、この少女のそれは、『死』という単語。シスはそれを口にしてしまった。

「いや…いや…いや…」

 ステラは夢遊病者のような足取りで、その場から離れようとする。シスは慌てて彼女に追いつくと、その肩を掴む。

「待って、闇雲に動いても…」

「いやああああああああっ!!!!!」

 泣き叫びながら振り返るステラ。その彼女の手には、ナイフが握られていた。



 ガシャアン!!

「…? どうしました? ショウ」

 同時刻、海上を航行するアークエンジェル、その一室にて。ちょうどシェリルとショウは既に日課と化した午後のティータイムの真っ最中だった。が、ショウが突然、手にしたティーカップを床に落としてしまったのである。

 シェリルはカップの破片を片づけながらショウを見て、言う。ショウは自分の右手を、見ていた。

「いや…何か…誰か…懐かしい人が僕の体の中を通り過ぎていったような…」

 そう言いながら自分の胸を押さえるショウ。何か分からないが…言い様の無い不安感を覚えた。そう、誰か自分の大切な人が自分の手の届かない所へ行ってしまうような…

『…この感覚…これは…シスちゃん…? まさか…ね…』



『大丈夫だったかい? 助けに来たよ』

 シス・ミッドヴィルがショウ・ルスカと出会ったのはA.W15年の事だった。

 宇宙革命軍の残党が推し進めていた人工ニュータイプの製造を研究していた研究所で、当時シスはその被験者としてその研究所にいた。と言ってもその頃は彼女に名前などは無く、ただ額にナンバリングされた実験ナンバーで呼ばれていただけだったが。

『あなた…だれ…?』

『僕はショウ・ルスカ』

『ショウ…』

 その研究所を襲撃し、ただ一人の生き残りであった彼女を救出したのが、当時弱冠6歳で既に少佐として、フェニックス部隊を率いていたショウだった。

 それが出会い。ショウはシスに全てを与えた。自分の意志で選択する事の出来る未来、フェニックス部隊という家族。そして、何よりも…

『シス・ミッドヴィル…それが私の…』

『そう、君の名前だよ。気に入ってくれると嬉しいな』

 その名前もショウが彼女に名付けたものだった。彼は自閉症気味であった当時のシスの為に、プライベートな時間は全て費やしてくれた。カチュアを初めとする他の隊員達も、最初は色々言っていたが、最終的にはそれに協力してくれた。

 だから、シスはショウと、フェニックス部隊の7人を心から愛している。彼等が自分にくれたぬくもりを、片時も忘れた事はない。とても言葉では言えない程の感謝と親近感、そしてショウには深い愛情を持っている。

 そして、彼等がくれたそのぬくもりを、今度は自分が、他の誰か、それを必要としている人に分けてあげたいとも、思っていた。





「大丈夫…あなたは死なない…私が守るから…」

「守る?…ステラを…守る…?」

 シスは暴れるステラを抱き寄せ、なだめるようにその髪を撫でる。ステラもシスに温かいものを感じ取ったのか、暴れるのを止め、大人しくなる。他の二人、スティングとアウルは唖然、とそれを見ていた。

「凄っげ…ゆりかごも使わずにステラを…」

「ああ、それに…」

 スティングは視線を下へ、シスの腹部へと下げる。そこにはステラが握っていたナイフが突き刺さり、血が流れていた。それでもシスの表情に、何の変化もない。何と言う精神力。

「ほんと?」

「私は嘘はつかない…心配しないで…だから…」

 と、そこまで言った時、再び衝撃が走る。それも先程のものよりも、強く、近い。シスが顔を上げると、天井に亀裂が入った。そして数瞬の間を置いて、崩落。彼女はそれを迎撃する為、右手に魔法力を集中させ、水の法術を放とうとする。

 しかし、それより疾く、その場に吹く一陣の疾風。ステラとシスに向けて降り注ぐ筈の瓦礫を粉々に打ち砕く。そして響く、その場にはあまりもそぐわない、幼く、そしてかわいい声。

「やっと見つけたよ、シス。お腹以外は無事みたいだね。送念波が途絶えたから心配してたんだよ?」

 その疾風はカチュアだった。彼女も科学者達を始末した後は、シスやニキと同じように生存者を捜索していたのだ。彼女はシスの無事な姿が見れて、安心したように溜息をついた。

 そこに、ニキもやって来る。暗闇の中を火炎放射器の炎を撒き散らしながら現れた彼女は、二人とも一応無事である事を確認すると、

「施設の制圧は完了しました。生存者は…どうやらこの3名のみのようですね…回収したデータとも符合しますし…よろしい、引き揚げましょう」

 そう言って手にした火炎放射器を壁に向け、精神を集中する。彼女の体が赤い光に包まれ、そして、

「究極破壊砲…アルティメットメガバスター!!!!」

 放たれる極太の熱光線。壁を一直線に貫き、一気に外への道を造る。6人はその道を通って、外に出て、そのまま研究所から離れる。守備隊は既にカチュアが壊滅させていたので、抵抗を受ける事はなかった。

 他の5人がそれぞれ離れた場所に隠していたMSに(ステラはシスの専用機に、スティングとアウルはカチュアの専用機に)乗ったのを確認し、自分もシスの専用機の掌に飛び乗ると、ニキは上空を見た。そこには月が浮かんでいる。彼女はそれに向かって、正確には上空に待機しているもう一人に向かって、念を飛ばした。





 ロドニア研究所の上空に、一機のMSが滞空していた。そのMSの頭部に、一人の少年が立っている。短い銀色の髪をして、ソバカスだらけの顔をした10歳ぐらいの少年。彼の着ている白衣が、夜の風になびいていた。

 フェニックス部隊整備主任兼MSパイロット、ユリウス・フォン・ギュンター。

 彼は眼下の研究所に、次々と火の手が上がるのを冷めた目で見ていたが、やがてはっ、と顔を上げる。ニキからの通信だ。

『ユリウス、要救助者の確保は完了しました。私達は先にソレイユへ戻りますので…後始末はお願いします』

『了解です、任せて下さい』

 そう返すと、ユリウスは念話を切り、右手を上げ、まるでピアノを弾くように、空中で指を動かす。すると彼の立っているMSの左腕の肘から先が、外れ、空中を動き、背中の甲羅のようなパーツ、キャラパスに搭載された武器の中からビームライフルを掴むと、また元の場所に戻り、くっつく。

「では、行くよターンX!!」

 そうユリウスが叫ぶと、彼の立っているMS、ターンXのカメラアイが光り輝き、胸のX字の傷痕に虹色の光が宿る。

「UAリミッター12号から4号まで解除、攻撃開始!!」

 今は無人のコクピットでは、ユリウスの命令した通りにシークエンスが進められ、ターンXは左手のビームライフルを、研究所へと向け、

「てぇっ!!!!」

 命令に忠実にターンXの指がトリガーを引く。一筋の光条が放たれ、それが大地に達する。次の瞬間、ロドニア研究所のあった場所だけが、まるで真昼のように明るくなった。その光の洪水が治まった時、そこにはひとつのクレーターが、ぽっかりと口を開けているだけだった。

 フェニックス部隊のMSの攻撃能力は、そのあまりの破壊力の為、通常は極端に制御されている。今回、ユリウスはその制御を限定解除したのだ。これまで数箇所の研究所が完全消滅させられていた事の、これが答えだった。

「さて、今日の仕事も終わり……ショウ…あなたもこの世界の何処かで…誰かの為に戦っているのですか…?」

 ユリウスはそう呟き、コクピットにその体を滑り込ませると、ターンXを何処かへと飛び去らせた。



 数時間後、地球某所。

 エターナ・フレイルと、彼女がサイコガンダムMk−Vに乗せていた少年は、今はある施設の前に来ていた。その施設は孤児院だった。だがあちらこちらに教会や寮などが所狭しと立ち並び、その規模は常識外れなほどに大きい。

 実はこの孤児院がこれ程大きいのには訳がある。

 エターナ達フェニックス部隊はこの世界に来てすぐ、とある理由で大金を手に入れた。どれほどの大金かと言うと、ユリウス曰く、

『この戦争が後1年続くと仮定して、それを軽く20回は繰り返せるほどの資金』

 だそうだ。当然そんな資金をたった8人の団体である彼女達が持っている訳にも行かず、また持っていても使い道が無いという事で、いざという時の為に5パーセントだけは自分達の金庫に保管し、残り95パーセントは世界各地の医療団体や慈善団体、孤児院、施設に寄付した。この孤児院もその内の一つなのだ。

 この孤児院の正門には、『Child And Element』と彫られている。エターナは少年を連れて、正門を通った。途中忍者の格好をしていたり白無垢を着ていたりする少女とすれ違ったりしたが、顔見知りなのだろう、彼女達もエターナを見ると、手を振ったり二言三言挨拶したりして、通り過ぎていった。

 彼女の連れている少年はそんな風景を、興味津々な目で見ている。無理もない。今までこんなに人のいる場所に出た事などほとんど無かっただろうから。彼は、フェニックス部隊が先日襲撃した研究所で保護した被験者で、研究所にあったデータからすると、どうやら誰かのクローンらしい。

 エターナは彼のテロメア等の問題を解決した後、彼をここに連れてきたのだ。

 と、そんな事を回想している内に、教会に着いた。エターナは扉を開け、中に入る。二人を出迎えたのは、

「ああ、フレイルさん、ようこそいらっしゃいました」

 何故かエターナと同じ声のシスターだった。エターナは微笑んで挨拶を返すと、少年の背中を押して、前に出させる。シスターは彼を見ると、しゃがんで、彼の目線と同じ高さに自分の目線も合わせる。

「フレイルさんから話は聞いています。ここがあなたの新しい家ですよ。私はユカリコ・サナダ。この教会のシスターです、あなたは…?」

「僕は…レイ・ザ・バレル…」

 エターナはレイの頭を撫でると、振り返り、教会を後にしようとする。と、後ろからかかった声に呼び止められた。

「エターナさん、本当に、ありがとうございました!!」

「あなたに、神のご加護がありますように…」

 レイとユカリコの二人が、そう言って彼女を見送っていた。エターナは手を振ってそれに応じると、折角来たのだから、と敷地内をぶらりと歩き始める。暫く歩くと、一面に花の咲き乱れている所へ出た。側には屋敷が建っている。確かここはこの施設の責任者の家だった筈だ…

 と、エターナが考えながら、花の匂いをかいでいると、

「あら? エターナさんではありませんか。来ていたなら声ぐらいかけて下さってもよろしいですのに…」

 横から声がかけられた。エターナがそちらを向くと、車椅子に座った紫がかかった銀色の髪の少女が、ピンク色の髪のメイドさんと一緒にやってきた。彼女がこの施設の責任者のマシロ・カザハナ。後ろのメイドさんはフミ・ヒメノという。

「ええ…私も色々ありますからね…あなた達には迷惑をかけます。事あるごとに子供を連れてきてそれを押しつけるような真似をして…」

「いいえ、私達はそれが仕事ですから…あなた達が気に病まれる事はありませんよ」

「そうそう、少なくとも君達はこれから輝こうとする子供達の未来を救ってるんだ。胸を張って良いと思うよ?」

 今度は上から声がかけられた。三人がそちらを向くと、銀色の髪の少年が木の上に立って、彼女達を見ていた。エターナはこの少年とも面識があった。彼の名はナギ・ホムラ。いつもどこからともなくやってきては去っていく。神出鬼没の謎の少年で、この施設の関係者と言う事ぐらいしか分かっていない。

「そうですよ、私もあなたの事は尊敬しています」

 とマシロ。エターナもその言葉で救われた気分になったのだろう。心の底からの笑顔を浮かべる。そこにナギが、

「さて、君が来る事なんて中々ないんだ。歓迎の準備を始めなきゃ」

 そう言い出した。それを聞いたマシロも、

「それは良い考えですね。マイさんやミコトさんもあなたに会いたがっていたようですし…早速準備しましょう」

 と、乗り気だ。断ろうとするエターナだが、どうやら流れから考えて自分に拒否権は無いらしい。結局あきらめて歓迎を受ける事になり、ソレイユに帰艦するのが当初の予定よりも3日も遅れてしまった。





TO BE CONTINUED..


感想
あの、これは流石にやりすぎなのではないかと。ターンXやサイコVを相手にすればそりゃ歯が立たないでしょうが、ここまで来ると戦闘ではなくてただの虐殺と化してしまいますよ。種世界の技術レベルでは対抗手段が存在しないですし、スパロボのロンドベル以上にバランスが取れないのでは?