「私の命令に従えないのか、これ以上の行為は処罰の対象となる!! いいな、全部隊に徹底させろ!! 全力を挙げて奴等を見逃すんだ!!!!」  



 ソレイユの会議室。幾つも存在するモニターの中でも最も大きくまるで映画館のスクリーンかと思うようなそれに、映像と音声が流れている。それを見ているのはスティング、アウル、ステラ、シン、マユ、そして正規のフェニックス部隊のメンバーであるカチュアとシスの姿もあった。

 と、一同声も出さずにポップコーンとジュース片手にその映画を鑑賞していたが不意に会議室の落としていた照明が付き、流れていた映像も止められてしまう。

「ちょっと、誰よ!?」

 不満そうに席から立って叫ぶカチュア。しかし映写機を押さえていたのが背後にユリウスとケイン、それにミラを従えたエターナであると分かると、

「あ、お帰り……エターナ先生……ユリウス達も……」

 途端に態度が萎縮した物と変わってしまう。

 それも無理は無い。フェニックス部隊の中では隊長であるショウとその補佐を行う副長のエターナ。この二人の実力や権限は他のメンバーと比較しても飛び抜けており、ショウは部隊内の規律に関しては割と大らかであるのだが、エターナは彼とは対照的に厳しいのだ。

 そして隊長であるショウが地球にて任務遂行中の為不在である現在、副長のエターナが彼の代行である。カチュアは怒られるものと思って言葉も態度も弱々しく、シスも普段通り無表情ではあるが上目遣いにエターナの様子を窺っている。

 そんな彼女達に対してエターナは感情を表に出さず、事務的な態度で尋ねた。

「カチュア、シス、それにステラ達も……戦闘シミュレーションと機体の整備、それに艦の計器のチェックは終わったのですか? スケジュールではまだ作業中の筈ですが……」

 エターナの質問に対して、カチュアがおずおずと答える。

「は、はい……全部終わって……ます……」

「まだ時間内だけど……でもみんな頑張ったから……予定より早く……」

 彼女の回答を補足するように、シスも答えた。彼女の声からはカチュア程には動揺は感じ取れなかった。彼女は活発なカチュアとは対照的に、感情の表現が希薄なタイプなのだ。これは幼い頃の経験とは関係無く、彼女の生来の性格のようだ。

「………そうですか……」

 少し呆れたように一息吐くと、エターナは映写機の蓋を開けて中に入っていたディスクを覗き、タイトルを読み取る。

「……『オレンジ辺境伯没落記』ですか……懐かしいですね。私も昔良く観ました」

 他にも映写機のすぐ横の棚には『舞乙-HiME 真白なる姫君』や『大いなる炎に護られし者』とか他にも『ボルジャーノンに花束を』などと書かれた映画のディスクが並んでいる。ショウを探しにこの世界に来る際、カチュアが私物として持ち込んだお気に入りの映画である。

 予想と違った反応にやや虚を衝かれたような反応を見せるカチュアとシス。ステラやシン達はどう出たものか困惑しつつ、エターナとカチュア達、その双方を代わる代わる見ている状態だ。と、エターナはもう一息吐いてやや呆れたような笑顔を見せる。

「心配しなくても私もそこまで杓子定規ではありませんよ……あなた達がやるべき事をやっているのであればね。今の所、急を要するような任務もありませんし……」

 自分達に罰を与えない旨を聞いて、会議室で映画鑑賞をしていた7人は一様にほっと胸を撫で下ろす。エターナも言っていたが現在自分達は常に臨戦態勢であらねばならないような状況ではない。地球で別の依頼を遂行しているショウと、リジェネレイト撃破の依頼を受けて出撃していたエターナ達を除いた者の任務はアメノミハシラの防衛である。

 その任務の性質上、交代で一人がブリッジに残って索敵・監視を行い、他のメンバーは隊規として義務づけられている一定時間の訓練や機体・艦の整備をこなせば後はフリータイムである。多少予定より早く切り上げているので気になったが、しかし問題は無いらしい。

 フェニックス部隊の使用するマシンは組み込まれたネェルDG細胞の作用によって損傷の自己修復は勿論、ある程度の調整は機体自体がその置かれた環境に応じてソフト・ハードの両面において行うので、整備に掛かる時間が短く済むのは良くある事だった。

 納得した表情のエターナは背後に控えていたミラへと向き直った。

「それでミラ、あなたの話というのは?」

 話を振られてしかし彼女は少しも慌てず、手にしていた書類を読み上げる。彼女はオペレーターとして作戦行動中の通信の他に、待機中もその優れた情報処理能力にて世界中から最新の情報を収集する事も任務の内である。

「はい、副長……ここ数日以内で、地球各地のゲリラや非合法の武装集団、テロリストなどが何者かの手によって次々と壊滅させられています。他にも各地の移動中のザフトの部隊や地球軍の地方拠点も襲撃を受けています。その数は明らかに異常です」

「………!!」

 その報告にエターナの眉根が僅かに動いて反応した。ミラは手にしていた書類の中で、地球の地図が書かれている物をエターナに渡す。そこには中国やヨーロッパ、南米と世界各地に広く、合計で50個ほどの赤いバツ印が書かれている。それら全てが壊滅させられたというゲリラや武装集団の所在地、あるいは地球軍・ザフトの部隊と戦闘のあった場所や襲撃を受けた拠点なのだ。これを同一の存在がしかも数日という短期間で行ったとすれば、その行動範囲は恐ろしく広いと考えざるを得ない。

「目撃情報などで共通する点は、いずれの組織や部隊もたった一機のMSによって壊滅状態に陥らされたという点で……」

 確信に近い推論が頭の中に浮かんできたエターナだが、それは口にせずにミラへと尋ねる。

「そのMSの特徴は?」

 この質問も予測できた事で、ミラは落ち着いて返した。

「はい……紅い機体で空を飛び、巨大な4枚の翼を持っていたそうです」

 その報告を受けて溜息を吐くエターナ。他の者も「やはり」といった表情を浮かべる。

 ゲリラやテロリストは組織の規模の大小もあろうが正規軍までを単機で、しかも数日以内という短時間にてそれを殲滅する戦闘能力。世界中を移動する行動範囲の広さ。そして目撃されたそのMSの特徴。それらで線を引けば、浮かび上がる人物など一人しかいない。そう言えば彼はこのアメノミハシラを発つ時、50件近く依頼が入っていると言っていた。数も符合する。

「……ショウの仕業ですね、それは。間違いなく……勿論正式な依頼の上での任務なのでしょうが……一体……あの子は何をするつもりなのか………」





OPERATION,36 マルス・エスパーダ





 プラント、アプリリウス市国防委員会本部。その執務室の一つでは二人の男が対面していた。

 一人は元国防委員会直属戦略研究所所長、現在は特務隊に所属しているザフト最強のパイロット、マルス・エスパーダ。

 もう一人はこちらも特務隊所属でありロールアウトしたばかりの新型MS”リジェネレイト”を任せられ、極秘裏に建造されていた新型兵器”ジェネシスα”の守備を命ぜられていたエースパイロット、アッシュ・グレイであった。

 両者の力関係は、マルスが執務机に腰掛けて話し掛けているのに対し、アッシュはその前に立たされ、しかも拘束衣を着せられている事からも明らかであった。他に、彼のすぐ横には武装した兵士が二名、アッシュがいつ暴れ出しても即応出来るよう油断無く銃を構えている。マルスのすぐ横には彼付きの秘書官が控えていた。

「てめぇ、どういうつもりだ!! 特務隊の俺に対してこんな事して……!! ただで済むと……!!」

 唾を撒き散らしながらアッシュが喚き、両脇の兵士が彼を押さえ付ける。マルスはそんなアッシュの様子を冷ややかな瞳で見詰め、ただ一言「私も特務隊だ」と、そう言って返すと手にしていた書類に目を移した。

「……度重なる命令無視・独断専行……然るべき手続きや書類の提出を無視しての他部隊からの物資の強奪に近い徴収……それによる他部隊の作戦行動の遅延……地球軍のみならば兎も角として、民間船舶やジャンク屋に対する無差別な攻撃・破壊……強引に受領したリジェネレイトの大破及びその交換条件として守備を任されていたジェネシスαの崩壊…………」

 そこに記されている彼の罪状を呆れたような口調で、抑揚の無い声で読み上げていくマルス。

「……何か申し開きはあるか? 地球からプラントに戻ってきて早々、私がどれほど他部隊や中立勢力との意見調整に苦労したと思う……? 今の私はただのパイロットではなく、ザラ議長より一部の仕事も任されているのでな……」

 それまで書類に落とされていた瞳が、アッシュへと向く。射抜くようなその視線を受けて、狂犬さながらに吼えていたアッシュも思わず萎縮したような表情を見せてしまう。その戦い振りから狂乱の殺人者とも呼ばれる特務隊の彼がこの様に怯える姿など、中々見られる物ではない。兵士達も驚いた様子である。

 マルスは地球からプラントへと戻ってきた現在は特務隊としての仕事のみならず、プラントの軍事に関する執務、その一部を委任されていた。他ならぬパトリック・ザラ最高評議会議長兼国防委員会委員長本人から。

 パトリックが兼任している二つの役職はどちらもプラントの政治・軍事に関わる要職であり秒刻みのスケジュールを求められる激務である。如何にパトリックがコーディネイターの中でも特に優秀な人物とは言え、一から十まで全ての仕事を一人で行うには無理がある。

 完全主義者である彼はそれでも自分が全て処理する事にこだわったが、しかし過労によって倒れでもしてプラント全体の動きが止まってはそれこそ本末転倒である。故に最近では最小限の仕事はそれぞれ信頼する部下に委任するようになっていた。マルスもその一人であり主に軍事に関しての仕事の一部を任されていると言う訳である。

「………お前の一連のこの行動は、どれ一つ取っても極刑に値する重罪だ。軍法会議に掛けるまでもない、この場で私が裁いてやる」

 そう口にするやいなやマルスは机の抽斗から拳銃を取り出し安全装置を解除、その銃口をアッシュの胸に定める。この行動にアッシュは一気に場の空気が冷えたような錯覚を覚えた。傍らに立つ秘書やその両脇を固めている兵士達も同じ物を感じたのか、思わず数歩後退って彼から距離を置く。

 マルスがアッシュに向ける視線には、一切の感情が感じられなかった。訓練で的を撃つような無表情である。つまり彼にとってアッシュを撃つ事などその程度の意味しかない言う事だ。だがこの状況にあって冷や汗を流しながらも、アッシュはうすら笑っていた。それは絶望や諦観がさせる笑みではない。

 出来る訳がない。戦争が長引いている現在、熟練のパイロットは次々と戦死しているか負傷によって第一線を退き、ザフトが抱える人材不足という問題は加速度的にその深刻さを増している。特にエースパイロットと呼べる者となるとほんの一握りに過ぎない。

 その貴重な存在である自分を処罰、まして射殺する事など出来る訳がない。事実これまでも自分が明らかに軍規に違反する行為を取っても、その全てが通った。それは即ち自分が優秀である証明に他ならない。自分は選ばれた存在なのだ。そんな自分を殺す事など、許される筈がない。アッシュはそう信じていた。

「……と、言いたい所だが」

 マルスは向けていた銃口を下げる。アッシュは内心「ほらな」と呟いた。彼の行動が余りに予想通り過ぎて、笑い出したい気持ちで一杯だった。恐らくこの次に出る言葉はある程度の条件付きで軍への復帰を認めるという事だろう。その程度なら安い物だ。

「……お前は私がこれから新たに編成する部隊に配属となり、そこで一パイロットとしてやり直してもらう。これが銃殺を免除する為の条件だ」

 予想外の好条件に、今度は内心だけではなく声こそ上げないが表情には明らかに笑みを浮かべるアッシュ。ザフトのトップエースであるマルスの新しく編成する部隊となれば、新型のMSも優先的に配備される筈だ。それならもっと殺せる。流石に行動の自由は制限されるだろうが、いざとなれば後ろからマルスを撃ってでも……

 そのような思考を巡らせた後、アッシュは返事を返した。

「分かった。その条件を呑んでやるぜ」

「そうか、それは良かった」

 マルスは笑みを浮かべて頷き、そして指を鳴らす。

「?」

 その行動の意図が読めずに一瞬呆けた表情となるアッシュであったが、すぐにそれを身を以て理解する羽目となった。

 控えていた兵士の一人が彼を押し倒すと、そのまま頭を抑えて組み伏せてしまう。一体何が? そう考えた瞬間、首筋に鋭い痛みが走る感覚があった。もう一人の兵士が、懐から取り出した薬品を彼に注射したのである。それが全て体内に注入された頃にはアッシュの意識は消え、体の力も抜けていた。

 完全に無抵抗となった彼を抱える兵士に、マルスは言う。

「薬漬けにして良い。多少反応速度や判断力が低下しても構わん。ただ私の命令を絶対に遵守するよう調整しろと、研究員にはそう伝えろ。連れて行け!!」

 二人の兵士は尊敬すべき上官である彼にこの時ばかりは怯えたような視線を向けると、足早に退室していった。そうしてドアが閉じた後で、秘書が尋ねてくる。

「よろしかったのですか? あのような……」

 その質問にマルスはほんの少しの後悔も、アッシュに対する憐憫の情も抱いていないかのように言い放った。

「私の命令に従えない兵士は必要無い。それに、奴は今まで散々好き勝手をやってきたのだ。ああされても後悔は無いだろう」

「は……」

 マルスは合理主義者としての一面も持っており、使えるモノは使う主義だ。ただしアッシュのように暴走すれば止まらない暴れ馬には、手綱を付ける事も忘てはいなかった。元々アッシュはザフト全体を見回してもその強引極まりないやり口から嫌われていたので、薬物処理を施したとしてもそれ程の反応は返っては来ない。彼はそこまで計算尽くだった。

 そうして一つの仕事をやり終えると、すぐに次の件をとばかりに秘書官に目で合図する。秘書官もそれに頷くと、手にしていた書類を読み上げていく。

「まず次期主力MSの採用計画ですが……」

「ザラ議長には量産機にはジャスティスではなくフリーダムをベースとした万能型を採用するように提言を行え。後、ジャスティスの生産は一部のエースパイロットの為にのみ留めるようにとも意見書を出すのだ」

 これは実戦経験者のマルスならではの意見と言える。

 ザフトの次期主力MSとして開発された二機であるが、その機体特性は対極である。砲撃戦仕様のフリーダムと、格闘戦仕様のジャスティス。特機である故に基本的・総合的な性能はほぼ互角と言った所だが、ではこの二機の内どちらを量産機として採用すべきか? マルスに限らず、指揮官を経験し、そして現在のザフトの状態を知る者であれば口を揃えて即答するだろう。フリーダムだと。

 と言うのも、MSの格闘戦には熟練が必要とされるからだ。格闘性能に特化したジャスティスは、確かに対MS戦やMSの機動力を活かした戦艦の撃破には威力を発揮するだろう。しかしそれもパイロットが一定以上の操縦技術を持っていればの話だ。

 既にザフトは熟練パイロットを多く失っている為、その内情を鑑みるにジャスティスは有用な兵器ではないのだ。もし無理に新兵にジャスティス(正確にはその量産型)を与えたとしても、格闘戦に持ち込む前に撃墜されるのがオチであろう。前線では格闘戦に特化した物より万能型のMSが好まれる。旧型ながら未だにジンが第一線で活躍できているのは、その汎用性の高さ故である。

「分かりました。しかしマイウスの軍関係企業からは高性能を維持しつつ量産化に伴うコストダウンをという贅沢な要求を、しかも提示された期間内で行うには……」

「技術開発の為の予算が足りない、と?」

「はい、その通りです」

 秘書のその言葉にマルスはしばらく思案した後、言った。

「分かった。追加予算に関してはトップが純潔派の企業や団体からの献金で賄おう。私の名前で催促しろ。出し渋る者はその古傷を叩いて搾り取れ」

 現在のプラントは強硬派の意見が主体となっているが、その中でも特に強い力を持っているのがパトリックに代表される”純潔派”、つまり出生率の低下しているコーディネイターの現状を打開する手段として穏健派が主として唱える”ナチュラルへの回帰”を良しとせず、あくまでコーディネイターとしての”叡智”でもって問題それ自体を解決し、第三世代、第四世代の純粋なコーディネイターを生み出していこうとする集団である。

 その主張は自分達をナチュラルより優れた存在であると自負するコーディネイター社会の中では当然の事ながら強い支持を得ているが、その一方で低下し続ける出生率の抜本的・具体的な解決案が未だ確立されておらず、パトリック辺りは声高に「未来には我等の叡智が必ず解決する」と叫んではいるが、一部の者が焦りを感じ始めているのもまた事実である。

 そんな彼等にとって第一世代コーディネイターであり、しかも若く、おまけにコーディネイター全体を見回しても飛び抜けて優秀なマルスは泣いて喜ぶような存在であった。確かに彼に要求されればいくらでも資金は用立ててくれるだろう。だが、

「お、お待ち下さい!! それは違法行為ではありませんか!?」

 秘書官は懸念を口にする。それも当然だ。執務を行うべき場で、公然と裏から脅迫を行えと言っているのだから。しかしそんな彼をマルスは一睨みすると、言った。

「知っているか? 金とは生きている間に使う物だ。死んだ後に後生大事に棺桶に金を入れて、それが何になる?」

「………!!」

 確かに金を出し渋って新型の量産機の開発が遅れ、本来出す必要の無かった大勢の死傷者を出すなど愚の骨頂だ。

 この秘書官は、マルスの傍で彼の補佐をしてそれなりに長い。だから他の誰よりこの上司の考えを理解しているつもりであるしまたそのように務めてきたが、まだまだ自分の認識が甘かった事を悟る。

 マルスにとっては未来の為に、合法非合法手段を問わず出来うる事全てを行う事こそが誇りなのだ。彼は血を流す事を恐れない。ただプラント、引いてはコーディネイター全体の希望の火が消える事、それだけを恐れている。だからこそでもあった。結果の前に過程は何の意味も持たないのだ。

「……分かりました!!」

「うむ……アスランやアンディの方は何と言ってきている?」

 この件については既に終わった。マルスはまた次をと促す。

 一緒にプラントへ帰還してからこっち、アスランにはマルスが他の部隊から引き抜いてきたベテランパイロット達や先に本国に帰還して後方勤務に就いていたバルトフェルドと共に、アカデミーを卒業したばかりの新兵達の訓練を行わせている。出来ればマルスは自分の手でそれを行いたかったが、しかしこうして書類相手に格闘している今の彼には無理な相談であった。

「は……それが………」

「? どうした? はっきりと言え」

 不明瞭な解答を嫌う上司のその言葉に、秘書は言い辛そうにアスラン達からの報告を口にした。その内容を包み隠さず。

「……新兵達のレベルは正直目に余るほどであるらしく……このままでは実戦に投入して、5人に1人が生き残れれば良いレベルだと……」

「………アカデミーはそんなレベルで彼等に卒業を許したのか?」

 その疑問を受けて、秘書はまたしても言葉に詰まった。だがマルスの「言え」という視線を受けては隠し立ては出来なかった。

「……これは確定情報ではなく私が耳にした噂話というレベルですが……実は現在のアカデミーではカリキュラムを大幅に削減し、短い期間で多くの兵士を前線に送り出そうという方針となっているようです」

「…………」

 それを聞いて、流石のマルスもしばらく言葉を失う。つまりこれから前線へと送り出される新兵は、例え赤服であっても”開戦時の赤服”とは比べ物にならないほどの能力しかないという事だ。分かっていたが現在のザフトがここまで追い込まれているとは。正直声を上げて笑い出すか、さもなくば家に帰ってふて寝でもしていたくなった。

 誰がそんな方針を指示したのか? 決まっている。パトリックだ。

『議長はそこまで語るに落ちたのか……!!』

 頭の中で彼を思うさま非難するマルス。戦い方を知らない兵士など何人いても物の役に立たない。古今東西の戦史をちょっと紐解いてみても、学徒兵まで動員して勝った戦争など無いと言うのに。これではただでさえ選択肢の限られているコーディネイターの未来を、更なる袋小路に導いているような物ではないか。

 しかもこの状況が自分達が地球で戦っていた頃から行われていたとすれば、今こうしている間にも戦い方も知らぬパイロット達が前線で命を散らしている事となる。こうなっては最早自分一人の力では止められない。ならば善後策を考えねば。彼の明晰な頭脳はすぐさまその答えを弾き出した。

「……兎も角、アスラン達には新兵達を厳しく鍛え上げろと伝えてくれ。後、私の息が掛かっている部隊全ての指揮官や隊長クラスに命令しろ。最近、そしてこれからアカデミーを卒業して部隊に配属になった兵士達が着ている服の色や成績表は信用するな。絶対前に出させずに後方支援に徹しさせろと。分かっている者も多いだろうが、それを今一度徹底させるのだ」

「分かりました」

 仕事にも一段落が付いたようで、マルスはやれやれと眉間をもみほぐしつつ、滋養強壮のドリンクや栄養剤を掻き込む。

 問題は山積みでありしかも深刻な物ばかりであるので、彼以外であればとっくに胃に穴が空いているだろう。マルスも頭痛を感じている。と、机の電話が鳴った。彼は心中の苛立ちを表すように乱暴に受話器を取る。

「私だが、どうした?」

 電話は、別の雑務を担当している秘書の一人からだった。

<クライン前議長とラクス様が、面会を求めておられます。いかが致しますか?>

「!!」

 珍しい客人に、マルスも「ほう?」と顔色が変わる。彼は数秒間思考した後、言った。

「分かった。応接室にお通ししてくれ。くれぐれも丁重にな。私は10分後に行くとお伝えしてくれ」

 「分かりました」と短く告げて、電話は切られた。マルスはあの二人が何用だろうと思案していたが、取り敢えず引き出しから鏡を出して自分を映す。そこには激務の影響で少し顔色が悪く、やつれた自分がいた。





「失礼、お待たせいたしました」

 10分後、応接室で待っていたシーゲルとラクスの前に現れたマルスは二人が知る通りの健康的で精悍な美丈夫そのままの姿であった。勿論そんな短時間で彼の体調が良くなる訳もなく、顔色の良さは化粧による物だ。10分という時間はその為の物であった。

 彼の入室を受けて立ち上がるシーゲルとラクス。両名と握手を交わすと、マルスは向かいのソファーへと腰を下ろした。二言三言「お元気そうで何より」「気遣い、痛み入る」などと型通りの挨拶を交わした後、先に話を切り出したのはマルスだった。

「それで、ご用件は? 現在国家反逆罪で拘束中の筈のシーゲル前議長がご令嬢を伴って来られるのです。何かあるのでしょう?」

「うむ……」

 微妙に毒のあるファーストパンチを繰り出すマルス。オペレーション・スピットブレイクが失敗し、それと前後してフリーダムが強奪された時、パトリックは説明を求めて臨時最高評議会の招集を要請したアイリーン・カナーバ等穏健派の議員や前議長であるシーゲル達を機密漏洩・国家反逆罪の容疑で拘束している。

 まあ実際にはフリーダム強奪はシーゲルが水面下でショウに依頼して行わせた事なのでそれも間違いではないのだが、しかし彼本人とその場に居合わせたラクス以外に、それを知る者はいない。そしてパトリックにしてみれば激情に任せて行ったこの行動は、彼の支持率の下落に繋がる物だった。

 機密の漏洩と言ってもスピットブレイクの目標がアラスカだったのを事前に知っていたのは、計画を立案したパトリック以外にはほんの数名の腹心達でしかない。その時点ではマルスでさえ知らなかった。なのに他の穏健派の議員や、議長どころか議員としての職すら退いていたシーゲルがそれを知っていたというのは余りに荒唐無稽な論理だった。またシーゲルの娘にしてプラントの歌姫であるラクスは、実際的な政治力はさておきプラント市民に対して根強い人気がある。

 故にその拘束を非難する声が上がったのだ。以前マルスがパトリックがその指示を出していた時思ったように、彼の指示は彼自身の首を絞める結果となったのだ。こうして拘束中の二人がお忍びでとは言え国防委員会本部に来る事が出来るのも、その事実を裏付けていた。

「マルス・エスパーダ……君のこの戦争に対する忌憚の無い意見が聞きたい」

 シーゲルのその言葉に、マルスは即答を控えた。「何を今更」とも思うし、本来ならザフトの軍人として、答えるべき回答は限られている。だがそんな誰にでも言える言葉を聞く為に、この二人は危険を冒してまで自分に会いに来たのではない筈だ。ならば、自分の答えは。

「……勝敗に関してと仰るのであれば、まずプラントが負けるでしょう。今となっては」

 彼のその言葉は場所によっては即銃殺となって何の不思議もない”暴言”だった。少なくとも”軍人失格”の烙印を押されても仕方の無い発言だ。だがシーゲルは「そうか……」と、難しい顔で頷く。彼も客観的に考えてその意見には賛成だった。

「この戦争でプラントが勝つ為にはウロボロスの輪を完成させて連合が音を上げるまでその状態を維持し続けるか、あるいはザラ議長が行おうとしたように一気に敵本部を叩くか……ですが現在、そのどちらの方法も破綻しました。オペレーション・スピットブレイクは失敗し、ヴィクトリアは陥落、カーペンタリアも青色吐息………地球での趨勢はほぼ決したと言っていいでしょう……」

 ずばずばと言いたい事を言うマルス。思考の隅でこの部屋が完全防音で良かったと考える。

「では宇宙では?」

 今度の質問はラクスが発した。マルスはシーゲルに対する態度と変わらず、丁寧にその質問に答える。

「私も本土防衛の為に手を尽くしてはいますが……残念ながら……」

 ただ言葉を濁す所だけが、シーゲルへの対応とは違う。今はまだ平和の中にあるこのアプリリウスが戦火に蹂躙されるなどと、勿論本人もその答えを覚悟してはいるのだろうがそれでもラクスのような少女に告げる事は憚られた。

 マルスの説明を補足するなら戦争が長期化し、地球連合に立ち直るチャンスを与えた時点でプラントは負けている。

 地球軍とザフトをボクシングに例えるとするなら、物量で勝る地球軍はテクニックやパンチ力には特筆すべき物はないが、底無しのスタミナを持っている選手。対して少数ながら兵士がコーディネイターであり兵の地力の高さとMSという兵器を持つザフトは、テクニックにも優れるがスタミナの無いハードパンチャーと言った所だ。

 戦いは既に第7ラウンドに入り、序盤中盤に掛けて押しまくったザフトであるが徐々に地球軍に回復を許し、更に自分はスタミナ切れでコーナーに下がってしまい、しかも地球軍もザフトと同等のMSという必殺パンチを手に入れたのだ。こうなると勝つ事は難しい。

「………ではそれを踏まえた上で、君はどうするのかね?」

 シーゲルのその問いに、今度はマルスは即答した。

「戦います。ザフトの軍人として」

「……負けると分かっているのに、ですか?」

 悲しげな表情で、ラクスが尋ねる。彼女の問いには言外に「負けると分かっている戦いに兵を繰り出し、死なせるのか」というマルスへの非難もあった。

「エスパーダ隊長、あなたほどの軍への影響力と政治力があれば、プラントをより良き方向へ導く事も可能でしょう。あなたが本当にプラントの事を思うのであれば、今こそ立ち上がるべきではないのですか?」

 マルスに負けず劣らずの”暴言”を口にするラクス。だがそれも無理は無い。彼女は自分がただの歌姫であり、現実に国を動かす力を持ってはいない事を知っている。そして父も今は議員としての職を退き、隠然たる勢力を持つとは言え力不足は否めない。故に両軍のパワーバランスに影響を与えるほどに強い影響力を持つマルスに、協力を求めたのだ。

「残念ながらそれは出来ません、ラクス様」

 だが彼女のその問いとそこに含まれる要望を、マルスは切って捨てる。そして説明した。

「リスクが大きすぎます。私がもし穏健派の兵を率いて政権を奪取しようと立ち上がれば、ザラ議長が率いる強硬派の軍との戦いになる事は必至。ザフト、引いてはプラントの戦力・国力はただでさえ限られていると言うのに、それを二つに分けてまして内部で争うなど論外です。他にザラ議長一人またはそのシンパを含めて暗殺し、その後釜、あるいは臨時最高評議会議長が選ばれる空席に座るにしても、私が議会を掌握するまでに軍事・政治共に相当な混乱が起きるケースが考えられます」

 そこまで説明してマルスは間を置くようにテーブルのコーヒーを口に運ぶと、続ける。

「どちらの場合もそうして国が乱れ戦力が疲弊した所に地球軍の攻撃を受ければ、防ぎ切れません。その場合現状のまま負けるよりも失う物が多い。軍人として、人間として選んではいけない選択肢です。ご理解、いただけますね?」

 その理路整然とした言葉の前に完全に打ちのめされたラクスは、ただ俯いて「はい……」と返す事が精一杯だった。シーゲルは気遣うようにそんな娘を見ていたが、だが眼前のマルスにはまだ語る言葉は残っているらしく、静かに彼を見据えている。それに気付いたシーゲルが彼の方を向くと、マルスは言葉の続きを語り始めた。

「この戦い……プラントは負けるでしょう。ならば次善の策に訴えるのみです」

 マルスがそう言う間も、シーゲルはラクスの手を握りつつ黙ってその言葉に耳を傾けていた。

「私が行っているプランの一つに、本土防衛網の強化という物があります。新兵達の訓練もその一つですね。戦力を強化し、いずれ地球軍が仕掛けてくるであろうボアズ、ヤキンの攻略戦に於いて、可能な限り多大な損害を地球軍に与える。そうする事で交わされる終戦協定の内容を可能な限りプラントに有利な物とする為に働く……これが軍人として、私が出来る事であり為すべき事です」

 睨むようにシーゲルを見ながら語るマルス。シーゲルも愚かではない。彼の視線の意味は理解していた。ずばり「終戦協定の為に働くのは自分だが、協定を締結させるのはあなた方だ」と、そう彼の目は言っている。彼は安堵したような笑みを浮かべた。

「私も……プラント、そしてコーディネイターの平和と繁栄を望む気持ちは今でも変わってはいない。だがこのまま戦争が継続していく中で例えザフトが勝利したとしても、それが成されるかどうかは疑問だ……」

 シーゲルの懸念は、マルスも感じていた事だった。確かに敵を全て滅ぼせば戦いは終わるだろう。だがその時味方も滅んでいたとしたら、未来が閉ざされていたとしたら、それは勝利と言えるのだろうか?

「……もう議員でもなくなった私一人の力ではどうにもならないと諦めていたが……だが今日、君とこうして話せて良かったと思う。今一度穏健派の意見を統合して、この戦争の流れに一石を投じ、そしてプラントの未来の為に働こうと思う……」

 立ち上がるシーゲル。マルスもそれに釣られるようにして立ち上がり、そして二人はもう一度、固く握手を交わす。

「是非その信念を貫いてください。私も、微力ながらお力になります」

「ありがとう、マルス隊長」

 そんな二人の姿を、傍らのラクスはどこか遠くにいるように、寂しそうな視線で見詰めていた。





「……結局、私は何も分かってはいなかったのですね……」

 会談が終了し、一度に帰っては怪しまれるだろうという判断によってまずシーゲルが戻り、応接室にはマルスとラクスの二人しかいなくなった。そんな時に、ラクスはぽつりと漏らした。

「は?」

 書類に目を通していたマルスは、驚いたように彼女に向き直る。ラクスは俯きながら今にも泣きそうな顔で、震えながら言葉を紡いでいた。

「その決断でどれほどの血が流れるかも、耳に心地良く響く理想や言葉がどんな結果を招くかも、何も分からないお嬢様でしかないのですね……私は……」

 それはラクスが心のどこかで理解してはいた事だった。だが今回の会談で、彼女はそれをはっきりと突き付けられたのだ。彼女が促したマルスの決起。だがマルスはそれに対して子供でも納得できるような理路整然としたシミュレーションの結果を返した。その結果をラクスは考えた事も無かった。ただ理想を追い求める余り、甘い事ばかり考えて目を背けていた。

 自分には何も出来ない。この戦争を終わらせる事も、世界に平和をもたらす事も。その未来を願う想いだけは誰より強く持っているのに。そんな無力感を感じ、彼女は打ちひしがれていた。

 マルスは言った。

「……確かにラクス様。あなたは戦いの惨さも、政治の汚さも知りません。ですがそんなあなたであるからこそ、出来る事があるのではないですか?」

「………!!」

 それは決して慰めの言葉などではない。純粋なマルスの意見だった。言葉の響きからそれが伝わってくる。その言葉を聞いた時、ラクスは一人の少年を思い出した。一時の間、このアプリリウスで同じ時間を共有した彼を。



『あなた達の出来る事とやるべき事は他にある筈です』



『……ショウ……?』

 彼もマルスと同じ言葉を言った。戦えないラクスにも、為すべき事があると。そんな彼女の内心を知らず、マルスは続ける。

「………戦う事は私の役目です。ですが、戦いが起こらないようにするのはあなたの父君のような政治家と、そしてあなたの役目です。ラクス様……」

「私の……役目……?」

 反芻するように呟く歌姫に、マルスは頷く。

「私も、あなたの歌は好きです。あなたはどうか、この先も穢れも曇りも無い平和への理想を持ち続けて下さい……そして歌い続けてください……平和の歌を……あなたの歌はきっと戦いに疲れた人々の心に響き、癒すでしょう……訪れる一時の平和を永遠の物とする為に……どうか、あなたはその為に歌ってください」

 それは確かに、ラクスにしか出来ない事だ。歌を歌うのに最も大切な物は発声方法とか姿勢とか、そんな小難しい物ではない。勿論それらは大いに結構必要不可欠な物だ。だが最も大切な事は、心を込めて歌う事だ。それが無い歌は耳には響いても、決して心には響くまい。ラクスがその歌で多くの人の心を揺さぶる事が出来るのも、彼女の中に一点の穢れも無い高潔な理想があるからなのだ。

 そんな真似は少なくともマルスには出来ない。理想を信じるには、彼は世界の穢れや死をあまりに多く見過ぎていた。

 ラクスはそんな彼に、ショウの姿を重ねた。もしかしたらあの少年も、マルスと同じ物を見て同じ事を思っていたのかも知れない。だから自分に、あんな事を言ったのかも知れない。彼女はマルスを見据えると、尋ねた。

「エスパーダ隊長、終わると思いますか? この戦争は」

「終わらせねばなりません」

 はっきりと、そして強い口調でマルスは答える。彼の目にも声にも、一片の迷いも感じられなかった。

「その為に、私は持ち得る力の全てを使います。それが……あの時戦争が生み出す地獄を垣間見た、24万3722人目の死者となる筈だった、私の役目なのですから」



 同時刻、地球某所。

 地球軍とザフトの小部隊の激突によって廃墟となった村の真っ只中に、炎の光が見える。そこには焚き火で暖を取っている少年の姿が見え、そして一機のMSが鎮座していた。フェニックス部隊隊長であるショウの専用機であるGGF−001『フェニックスガンダム』である。

 ショウは傍らに置かれている、ずっしりと重みのあるバッグ3つを手に取ると、中身を確認するようにして開いていく。いずれのバックにも、金塊がぎっしりと詰め込まれていた。これらは全て傭兵として彼が行った仕事に対する報酬である。

「ひゃあ……随分貯まった物だね」

 あまりの大金に怖じ気づいたように呟くショウ。そんな彼の頭に、”リコリス”が語り掛けてくる。

<そりゃ50件も仕事をこなして、そして傭兵が最も頭を悩ませる機体の整備費とか格納庫代とかが私達の場合タダだからね……ある意味では当たり前の結果よ。これは……>

 いくら人間味があるとは言え、流石にAIだと思えるような的確なリコリスの意見。それを受けてショウも「確かに」と苦笑する。だがそうして場が和んだ所で、リコリスは彼に尋ねる。

<……でも、ショウ。あなたが本当に望んでいたのは、お金なんかじゃあないよね?>

「……勿論」

 焚き火を利用してで作っていたカレーライスを口に運びながら、ショウは答える。彼にとって今までやってきた事はまだ手段に過ぎない。言わば種蒔きのような物。これからは自分が望む花を咲かせる為の行動に移らなければならない。

<私がネットワークにアクセスして得た情報では、既にアンダーグラウンドではザフト、地球軍共に私達フェニックス部隊の首に生死問わず(デッドオアアライブ)で多額の懸賞金を掛けていて、有力な目撃情報にも賞金を出しているみたい……>

「……成る程ね」

 リコリスのその情報は、ある意味当然の帰結と言えた。これまでも各地の戦場でフェニックス部隊の存在は確認されてきたが、それは彼等が持つ余りに非現実的な戦闘能力故に、一部の者を除いては現実味の無い”噂”の域を出ない程度の認識しかなかった。

 だが今回ショウが依頼を受けて短期間で世界中のゲリラやテロリスト、地球軍・ザフトの部隊や拠点を襲撃して回った為に、両陣営の上層部もようやく自覚してきたのだろう。常軌を逸した戦闘能力を持つMSを運用する傭兵部隊が、この世界の闇に確かに存在していると。

 そしてその力はもし自分達の陣営に取り込む事が出来れば頼もしい事この上ないが、敵に取り込まれれば自分達の破滅に繋がる。ならばそんな不確定要素は排除しようと考える事が自然だ。そしてそれは水面下で、実行に移されつつある。

<だけどショウ……あなたは、この行動の果てに何を望んでいるの?>

 地球軍もザフトも敵に回して、彼は何を考えているのか。まさか自分達だけで戦争でも始めようと言う訳でもあるまいし。

 戦いのパートナーでもあるAIのその問いに、ショウは自信を感じさせる笑顔と目をして答えた。

「勿論……この戦争の終結を」





TO BE CONTINUED..


感想
アッシュ・グレイは廃人と化す運命ですか。ザフトは戦力を維持できなくなっているようですが、マルスは完全に本土決戦の覚悟を固めたという事ですかね。だんだん末期の日本と同じ戦略に移ってきましたね。まあこの状況ではそれ以外に取りようが無いのも確かですが。