第1話 始まり
アクシズ・・・そう呼ばれる小惑星が地球に落下しようとしていた。それをMSでとめようとする男。同じようにとめようとするもの達の機体が大気圏突入の摩擦熱で次々と爆散していく。
「くっ!!石ころの一つぐらいガンダムでおしかえしてやる!!ニューガンダムは伊達じゃない!!」
男の叫びに答えるように男の乗る機体が輝きを発し、光の粒をうみだす。
「これは・・・・サイコフレームが共振しているのか・・・・・。」
かって、赤い彗星と呼ばれた男が呟く。そして光の粒が川となりアクシズを停止させる。
その日、白い悪魔と呼ばれた一人の英雄が一つの世界から消えた。
そして異なる世界で一人の女と一人の男が出会う。
「大丈夫ですか?」
「うっ、ここは・・・・アクシズは・・・・・・・。」
男と女は結ばれ、1年後、二人の間に一人の女の子が生まれる。
そして15年の月日が流れた。この世界は今・・・・・・・戦争をしている。
ガンダムSEEDcross〜二つの世界を繋ぐもの〜
「ユズハ、何してるの?」
ここは戦争が拡大する中、中立を公言することで平和を保っているオーブのコロニー都市ヘリオポリス、そんな中にあるどこにであるような学校の休み時間に、コロニーでは珍らしい黒髪で―――最も少し茶色がかっていはいるが-――ショートカットの少女、ユズハに赤い髪をした少女フレイが話しかける。
「うん、ちょっとつくりかけのプログラムを完成させちゃおうと思って。」
「またやってたんだ。あなたって、そういうの好きよね。」
ユズハの答えにフレイが少し呆れたような声をだす。確かにユズハに女の子には珍しい位に機械いじりやプログラミングが好きな所があった。だが、オタクやマニアといったような閉鎖的な雰囲気はなく明るく人当たりのよい、またかなりの美少女で男女問わず人気があった。
「うん、お父さんの血かな。」
「ユズハのお父さんって軍の技術部部長だっけ?じゃあ、やっぱり兵器か何か作ってるの?」
「うん、今はそうみたい・・・・。」
わずかに影を落としユズハがこたえる。ユズハの父、アムロ・クサナギは軍の技術部に勤めてはいるが直接的な兵器の製作には関らず、むしろ平和利用にも活用できる分野の発明に力を注いでいた。そして、画期的なシステムをいくつも提唱し、オーブの産業全体に影響を与えている。それを少し誇らしく思っていたユズハにとって父親が実際に戦争で使うかもしれない兵器を作っているというのはいかに防衛の為といっても嫌な感じのすることだった。
「でも、オーブが戦争に巻き込まれることなんてないわよね。なんてったって中立国なんですもん。」
「うん、そうね。」
フレイの言葉にユズハもそうだと思い、ほっとする。やはり父親の作ったものが人殺しの道具に使われるような事はあって欲しくない。
「ところで、話し変わるけど、今日、ミリアリア達も誘って遊びに行かない?」
「あ、ごめん。今日ちょっとお父さんのとこ行かなくちゃいけないんだ。お父さん、研究に没頭すると、平気で何日も泊り込みするから、着替えとか持っていかなくちゃいけないの。お母さんは今日ははずせない用事が入っているらしいし。」
フレイの申し出に対し、ユズハは困ったような、身内の恥をさらしているようで恥ずかしいような複雑な表情をした。
「はは、大変ね。」
それに対し、フレイもどう対応していいのかちょっと困ったというような渇いた笑いを浮かべるのだった。
「この世界に来てまでMSに関ろう事になろうとは。」
軍技術部部長、アムロ・クサナギニ佐が自嘲気味に呟く。
彼はかってアムロ・レイという名前を持った異世界の存在だった。
今から16年前、アクシズという小惑星をMSで押し返そうとして光に包まれ、気がついた彼は今まで自分がいた世界とは全く別のこの世界にいたのだ。そして倒れていたところを一人の女性、シズク・クサナギに助けられ、恋に落ちた。
その後、政府の高官であった彼女の父親の力で戸籍を作り、軍の技術部に就職する。もともと機械が好きでその扱いに対し才能を持っていたアムロは、自分が元いた世界の技術を活用しさまざまなシステムをうみだし、そのおかげでわずか15年で今の地位まで上りつめることができたのである。戦争にかかわらない生活は彼がずっと望んでいたのものであった。
しかし、10ヶ月前、この世界で戦争が始まり、もしもオーブが戦争に巻き込まれた時の為の防衛兵器の開発を命じられ、アムロはMS"cross"を作る事になった。
「もうすぐ完成ですね。しかし、部長、すごいですねえ、こいつは。こいつが完成すればコーディネーターなんか一捻りですよ。」
アムロの部下の研究員の一人であるジョイが感嘆の意を示すが、それに対してアムロは顔をしかめた。
「あまり好戦的な事を言うな。"cross"はあくまで防衛用の兵器だからな。」
「いや、わかってますけどね。こいつは本当にすごい。噂のGなんか目じゃありませんよ。」
ジョイが少し不満そうな顔をする。“G”とは実在は不確かだが、ヘリオポリスで極秘に開発されていると噂されているMSである。
そして、実の所アムロはそれが単なる噂でない事もしっていた。上司からそのデータの一部を見せられ、その技術を一部組み込んでこの“cross”を作成したのである。
また、余談であうが、その“G”がガンダムとそっくりな形をしていることを知った時には心底驚いたものだった。
(……けど、あれは使えないな。)
アムロは内心でそう思う。単純なスペックでいえば、Gは"cross"と同等の力を持っている。だが、その機体はナチュラル―――普通の人間が扱うには複雑すぎるのだ。おそらくはパイロットとして全盛期だった頃の自分であってもその性能をフルに活用することはできないだろう。言ってしまえば研究者にありがちな実用を考えていない頭でっかちな機体なのである。
それに対し、"cross"はアムロの元パイロットの経験を反映させて作った機体でナチュラルでも十分に性能を発揮できるようになっている。
(俺が言っても聞き入れないだろうな。)
なんとか改めさせたいと思うのだが、あくまで極秘の自分とは関係のないプロジェクト、自分には手の出しようがない。
「それじゃあ、最後の仕上げに取り掛かるか。」
まあ、仕方がないと思い、機体の最終調整にかかろうとした時、基地が大きく揺れた
「何!?一体!?」
「キケン、キケン!」
父親に会いに、軍の施設を訪れようとしていたユズハは突然の揺れに驚き、父親からのプレゼントであるアムロがつくったペットロボット"ハロ・ペット"はユズハの周りをぐるぐる回って危険を警告する。
「落ち着いて!!ハロペ!!」
愛称で呼びながらハロ・ペットに静止の言葉をかけつつチョップを加えるユズハ。そして、彼女は目撃した。この揺れの正体、コロニーで砲撃を行っているMSの姿を。
「なんで、なんで、中立国のオーブにMSが・・・・・。」
一瞬顔を青くし、呆然とするがすぐに正気を取り戻すと顔を振って意識をしっかりさせる。
「あの、施設を攻撃しようとしているの・・・・?」
冷静になって観察し、MSが父の働いている施設を目指して移動しているのがわかった。再び顔を青くするが行かなくてはという思いに揺り動かされ走り出す。
(お父さん!!)
「この悪意は・・・・・コーディネーターか!?」
アムロは悪意を感じ取っていた。そしてそれがコーディネーターのものであることに気づく。
「何故だ?何故、中立のヘリオポリスに・・・。それに何故通信が入らない・・・・!!」
状況はわからない。だが、ここが襲撃を受けているのは事実だ。ならば上司として彼がこの状況ですべき事はひとつだった。
「くっ、みんな、これは敵の、おそらくはザフトの襲撃だ!!すぐにシェルターに非難しろ。」
「え?何を・・」
突然のアムロの発言に対し、戸惑う研究員は疑問をさしはさむ暇すらなかった。そのタイミングで飛び込んできたザフトの兵士がその研究員を射殺したのだ。
「う、うわああああああああ!!!」
すぐさまパニックになる一同。だが、アムロは自分の机からすばやく銃をとりだし、兵士を撃つ。まさか研究員に反撃されると思わず油断していた兵士が血をだして倒れる。
「パイロットだった頃の習慣が役に立つとはな・・・・・」
自分の銃を見下ろして言う。パイロットだった頃、もしもの時の為に銃は常に身近に置いていた。研究員になった後も続けていたその習慣が役立ってしまった事を苦々しく思う。
「みんなは早くシェルターに逃げろ。」
だが、今は彼にはやることがあった。研究員に退避を促し、自分は格納庫へと走る。
「部長はどうするんですか!?」
「工場の方にはまだ整備員達がいる!!俺は彼らに状況を伝えに行ってくる。」
研究員にそう答えると脇目も振らず走り出した。
「ジョイさん!!」
「ユズハちゃん!?」
父親の部下で顔見知りの研究員をみかけたユズハが叫び、予想外な顔にジョイは驚く。
「どうして、こんなところに!?」
「お父さんに着替えを持ってきたんです。いったいどうなっているんですか!?外にはMSがいるし、お父さんは一体どこに!?」
「君のお父さんは奥の格納庫の方に整備員の避難を促しに行った。けど、ここにはザフト兵士が入り込んでいて危険だ、ユズハちゃんは俺たちと一緒にシェルターに。お父さんは部長はきっと後からきてくれる!!」
それは自分自身に言い聞かせるような言い方だった。そして、それを聞いたユズハはジョイの脇をすりぬけ、ジョイ達の制止も聞かず走り出してしまった。
「おい!あんた一体どうなってるんだ!?」
アムロの姿を目撃した整備員が状況のわからないこの異常事態に詰め寄る。
「ザフトが攻撃を仕掛けてきている。すぐに逃げろ!!」
「な!?」
「そんな!?」
「どうなってるんだよ!!」
アムロの叫びに整備員達の間で困惑が飛び交い罵声が舞う。再びアムロが叫び、避難を促そうとした時、二人の兵士が侵入し、発砲してきた。流れ弾の一発が兵士の一人にあたる。さらに次々と発砲し、整備員達が撃ち殺されていく。
「くっ。」
とっさに物陰に身を隠したアムロは、一瞬考えた後決意し、"cross"に向かって走り出した。それを見た兵士がアムロに向かって銃口を向け、そして発砲する。だが、アムロは背中を向けたまま、それを回避した。
「な!?」
あまりの事に二人のザフト兵士は一瞬棒立ちになるが、アムロが"cross"に乗りこもうとするのを見て、正気を取り戻し、再び発砲。機体によじ登った不自然な体勢では流石に回避しきれずアムロのわき腹を銃弾が貫通する。だが、そのまま転がり込むようにコックピットに乗り込んだ。アムロはコックピットを閉じ、"cross"をクロスガンダムを立ち上がらせる。
「ま、まずい。退却だ。」
流石に形勢不利と判断した二人が逃げようとする。だが、アムロはビームライフルで二人を撃った。手足と頭部を残し、消滅する二人。
「はあ、はあ。」
脇腹の出血で意識をもうろうとさせるアムロ。そこにさらに一人入ってきた。
「お父さん!!ひっ」
「キケン、キケン」
それはユズハだった。あたり一面死体まみれなその光景に顔面蒼白にし、震えあがる。
「ユズハ!?」
突然の娘の乱入に驚くアムロ。すぐさま通信をOPENにする。
『ユズハ、何故こんなところに!?』
「お父さん!?無事だったの!!その機体に乗ってるの!?」
『ああ、お前もこの機体にのるんだ。早く脱出するぞ。』
そういってクロスガンダムをしゃがませ、コックピットをあけると、手のひらをユズハの前に動かし、機体に乗せようとする。
「お父さん!!その怪我!!」
「大丈夫だ!!それよりはやく。」
ユズハはアムロの怪我を見て驚き立ち止まるがアムロは早く彼女を乗せようとする。そして、彼女が搭乗し、クロスガンダムは地上にでた。
(後書き)
クロスガンダムに関する設定を色々と変更してみたのですがどうでしょうか?