6話 白き流星
ユズハがフレイと話している頃、さらに格納庫にむかったキラは前から来る人物を見て。驚いていた。
「サイ!トール!ミリアリア!カズィ!その格好は!?」
三人とも連邦の軍服を着ていたのである。
「オレ達も戦う事にしたんだ。ブリッジに入るなら軍服を着ろってさ。」
「僕らも艦の仕事、手伝おうかと思ってさ。この艦人手不足らしいし、俺達、普通の人よりは機械やコンピューターの扱いになれてるしさ。」
「キラ達にばっか頼らず私達もできることをしようってことになったの。」
サイ、トール、ミリアリアがキラに事の経緯を説明する。
「でも、みんな危険だよ!!」
キラの言葉にサイが言い返す。
「それはお前達もだろ? オレ達は戦うといってもブリッジクルーになるから、お前ほど危険は無いさ。」
「けど、軍服はザフトの方がかっこいいよな。」
サイは真面目な感じでカズィは少しおどけた様子で言う。そんな友人達の姿を見て、自分が一人ではないことを感じキラは目頭が熱くなった。
「みんな・・・・・。」
「キラ君、お待たせ。」
「あ、うん、ユズハ。」
キラに僅かに遅れること格納庫にたどり着いたユズハはキラが何やらうれしそうなのに気づいた。
「どうしたの?キラ君、何かうれしそうだね?」
「うん、サイやトール、みんながブリッジクルーに志願したんだって。僕達ばっかに苦労かけたらいけないから、自分にできることをしようって。」
「・・・・そうなんだ。がんばろうね、キラ君。」
その行為にユズハも少し感激し、キラに激励をかけた。それにキラも頷く。そして、フラガを含めた3機が出撃した。
「Gが4機!?」
レーダーにうつっていた敵影が接近し、それを目視で確認して驚きの声をあげるキラ。敵の数は全部で5機。奪われた4機のGとカスタムされたジン。
「まさか奪ったGを全機投入してくるとは。」
「あの機体は・・・・。」
フラガが苦い顔をする。そしてユズハは前回の戦闘で見せられた目の前のジンの強さを思い出し冷や汗をかく。
「これだけの戦力をまともに相手をするのは無理だ。俺は敵の旗艦を狙う。旗艦を落とされそうになったら奴らも引くしかない。お前らは何とかその間、アークエンジェルを守ってくれ。」
「わ、わかりました。」
キラの答えを聞いて、フラガが飛び立つ。それを逃がすまいと追う、デユエルとバスター。
「逃すかよ。」
バスターのパイロットディアッカが94mm高エネルギー火線収束ライフルを発射し、ブリッツに乗るクルーゼ隊最年少のニコルが後を追う。MAメビウス・ゼロを操作し、なんとかライフルの一撃を回避するフラガ。
「二機を連れて戦艦を落とすか。きついな。まあ、その分あいつらが楽になるし。なんてったっておれは不可能を可能にする男だからな。」
言ってフラガはメビウス・ゼロをさらに加速させる。
アスランの乗ったイージスがキラのストライクの方に向かい、イザ−クがのるデュアルがアークエンジェルに攻撃をしかけ、そしてジンカスタムがクロスガンダムに攻撃をしかけた。イージスと対峙したキラは高速で擦れ違いながら通信で会話を交していた。
「止めろキラ、僕らは敵じゃない。そうだろ!」
アスランのその言葉にキラは答えられなかった。アスランはキラにとって幼馴染の親友であり、敵と思う事など出来はしないからだ。だが、続くアスランの言葉に、キラは頷けなかった。
「同じコーディネイターのおまえが、何故連合軍にいる。何故ナチュラルの味方をするんだ!?」
「僕は地球軍じゃない!でも、あの艦には仲間が、友達が乗ってるんだ!」
キラの叫び。だが、彼の叫びは届かない。
「・・・・どうやら説得は無理そうね。」
シャナは二人の通信を聞きながらユズハに攻撃を仕掛けていた。横に注意がそれながらの攻撃。しかも、機体性能では勝っているというのにユズハは完全に防戦一方になっていた。
「くっ、速すぎる!?」
時々攻撃を仕掛けるのだが、それらは全て軽々と回避されてしまう。モニターにはデュエルがアークエンジェルに攻撃を仕掛けているのが映っている。アークエンジェルも反撃を仕掛けているがその機動性に対応しきれていない。
「このままじゃあ。」
尚早にかられていた時だった。アークエンジェルから一機のMS、頭部のないジンが現れたのだ。
「何?あれは?」
疑問の声をあげるシャナ。何故アークエンジェルからジンが現れるのかということもあるし、そもそもメインカメラが壊れた機体で戦場に出てくる神経がわからない。だが、彼女の疑問は程なくして、氷解した。いや、させられた。
「アークエンジェルから出てくるって事は裏切り者か、それとも連合の奴らが機体を奪ったか。どっちにしろ打ち落としてやるぜ!!」
イザ−クが叫び、ビームライフルを発射する。だが、首のないジンはそれを回避し、さらに一気に加速した。
「何!?」
慌てて銃をビームサーベルもち代え振るう。しかし、それをジンは右手に持ったブレードで受け止め、ブレードが融解する前に、左手に持った銃口を機体に押し付けた状態でマシンガンを連射した。
「ぐわああああああああ。」
一点に集中された攻撃はPS装甲をダウンさせ、機体にひびを入れる。更にブレードを降ってとどめを誘うとする首のないジン。しかし、その一撃をシャナのジンカスタムが受け止めた。首のないジンは一旦距離を置き、そのパイロットはクロスガンダムに通信を入れた。
「ユズハ!!大丈夫か!?」
「お父さん!?」
そしてそのパイロットはユズハ・クサナギの父にして、かってこことは異なる世界において、味方からは“白き流星”、敵からは“白い悪魔”と呼ばれた伝説のパイロットアムロ・クサナギだった。
「お父さん怪我は大丈夫なの!?」
「ああ。大丈夫だ。」
ユズハの通信に力強い口調で答えるアムロ。そこで、イザークが吼えた。
「貴様あああ!!この俺を、よくも!!」
頭部が無いジンで機体を破損させられたイザークが屈辱に打ち震え、ビームライフルをアムロの方に向けようとする。だが、シャナがとめた。
「あなたは、戦艦にもどりなさい。その機体はもうほとんどエネルギーが無いはずよ。」
「何だと!!ここでひけというのか!?エネルギーなどなくとも・・」
「状況判断もできないの?簡単に勝てる相手かそうでないかぐらいわかるでしょう?」
「・・・・くっ。」
シャナの言葉にイザークは叫ぶが、この状況で戦い続ける事の無謀がわからぬ程おろかでもなかった。しかたなく、艦の方へと飛びたった。
「それじゃあ、はじめましょうか。」
それを横目でみおくると、アムロに向かってマシンガンを発射するシャナ。アムロはそれを完全には回避できず、肩にかすってしまうが、反撃でマシンガンをジンカスタムの方に向け発射する。
「くっ、やっかいだな、この機体は。」
予測できていたにも関らず、完全に回避しきれなかったことを歯噛みする。ジンはストライクよりは複雑な構造はしていないが、それでもナチュラルの手にはあまる機体である。一年戦争時、彼の生まれた世界で当時最新鋭だったMSのガンダムが付いて来れなくなるほどの反応速度をもったアムロだからこそかろうじて操れるもののそれは容易なことではなかった。先ほどデュエルの時は相手の隙をうまくついたにすぎない。
「そんな攻撃に当たるものか。」
ジンカスタムがアムロの攻撃を回避する。だが、その先に、クロスガンダムのビームライフルがとんできた。それを盾で防ぐ。そして、今度はユズハが追撃の役目にまわった。接近し、ビームブレードを振るう。
「たあ!!」
「まともに受けるとまずそうね。」
ビームを纏ったビームブレードをまともに受けようとはせず、刃を傾けそらす。勢いのつきすぎたクロスガンダムはそのまま、体勢を崩してしまう。
「きゃあ。」
「喰らえ。」
体勢の崩れたクロスガンダムにブレードを振るうジンカスタム。だが、それをアムロの載ったジンが蹴り上げる。
「させない!!」
「ブレードを蹴るなんて!?」
アムロのセオリー外な行動に驚くシャナ。そこに体勢をなおしたクロスガンダムのビームブレードが迫る。
「ええい!!!」
そしてビームブレードはジンカスタムの右腕を切り裂いた。
「くっ、ここまでね。」
そしてシャナはマシンガンを乱射して、牽制すると、全速で戦域を離脱した
「逃げたの?」
「ああ、そのようだな。」
二人は深追いはせず、それを見送った。そしてユズハは思い出す。
「そうだ、まだ、キラ君とフラガさんが!!」
「そういえば、他にも二人戦っているものがいると聞いたな。よし、ユズハ、おまえはあちらの方に行け、おれはこっちの方に行く。」
戦場にでるまでに簡単に聞いた事情説明と近距離レーダーによる探知を写したモニターを見て、アムロが指示する。
「わかった!!」
ユズハが答え2機は飛び立った。
「しまった!!パワー切れ!?」
攻撃を何度も受けたストライクがパワー切れでPS装甲がダウンし、鉛色へと変化する。そこをイージスの鍵爪に似たアームが掴み拘束した。
「!?アスランどういうつもりだ!!」
「このままガモフに連行する!!」
そう言って、キラを自軍の戦艦へと連れ去ろうとする。
「いやだ!!僕はザフトの戦艦になんか行かない!!」
「いいかげんにしろ!!」
アスランの声の迫力に押され、押し黙るキラ。そしてアスランの苦渋の声が続いた。
「来るんだ、キラ、でないと・・・・・俺は、お前を撃たなければなくなるんだぞ!」
「アスラン・・・。」
「血のバレンタインで母も死んだ・・・・、俺はこれ以上・・・・。」
アスランがそこまで言ったとき、イージスのアームが撃ち貫かれ、ストライクが解放される。
「キラ君!!大丈夫!?」
「ユズハ!!」
それはクロスガンダムのビームライフルだった。自分を邪魔をしたクロスガンダムをアスランが睨みつける。その時、アスランのもとにガモフから通信が入る。
『現在、艦が襲撃をうけている。すぐに帰艦せよ!!』
「なっ!!?くっ・・・・・。」
それはアムロの援護を受けたフラガが戦艦のエンジンを一機破壊したことを伝えるものだった。仕方なくひくアスラン。ユズハは動けなくなったストライクをつれて帰艦し、そして、アークエンジェルは全速で戦域を離脱、アルテミスへと向かうのだった。