MSが爆破したあたりの海底にロウがMSレッドフレームで、それと、彼の仲間でコーディネーターのリーアムが作業用の機械でもぐり、探査を行なっていた。そして、彼等はあるものを発見した。
「おっ、こいつはMSの腕か?」
『腕とビームサーベルが一体化しているぞ』
それは、イージスの腕だった。AIの"8"がそれを観測し、判断する。ロウはへえっと意気揚々として回収する。
「へへ、こいつは幸先いいぜ。んっ、あれは・・・・・・」
そこで、彼等は更にあるものを見つけ近づく。そこには破損したストライクの姿があった。ストライクはあちこち焼け焦げているものの原型をとどめている。
「こりゃあ、驚いた。あの爆発だっていうのによくこの程度ですんだものである。」
驚くロウ。さらによく調べてある事に気付く。
「んっ、なんだこりゃ、緊急シャッターが作動してんのか!?」
パイロットが生きているかもしれない。そう考えて、ロウは慌てて引き上げ、戦艦に戻る。そして、戦艦にたどり着くとシャッターを開けた。
「なんてこった・・・・まだ、子供じゃねえか」
中のパイロットを引き出して、そこから現れたキラの姿を見てロウが呟く。そして、遅れて戻ってきたリーアムやキサト、それにプロフェッサーと呼ばれる女性と、この艦の全メンバーが集まってきた。
「医学には詳しくありませんが、直ぐに命に関わるといった事はなさそうですね」
「そうね。油断は出来ないわ。早めにオーブに行って医者に見せた方がいいと思うわ」
脈拍や息遣いを確認して、リーアムとプロフェッサーが判断する。
「仕方ねえ。もう少し何かないか探したいところだが、そんな事言ってる場合じゃないからな」
「そうね。早く行きましょう」
その判断にロウとキサトも同意し、彼等は再びオーブへ向かい始めた。
「オーブに進入?」
「ああ、アークエンジェルの消息がたった。あの損傷からして、オーブに潜伏している可能性が高い。」
イザークの言葉にアスランが答える。
現在、ザラ隊は、次の作戦に対しての計画を立てていた。ザフトは現在、アークエンジェルの現在位置を見失っていた。ザフトの情報部は優秀ではあったが、ただでさえNJの影響で電波状況が悪い中、勢力的に勢いの弱まるこの地域ではこのようなミスが発生する事もあった。
そこで、アスランはアークエンジェルの損傷と、Gやアークエンジェルがヘリオポリスで作られた事から、オーブに潜伏している可能性を考慮し、オーブへの潜入操作を考えたのである。
「ここから先はアメリカ大陸か、ハワイの前線基地まで行かなければ、奴らが寄港できる場所は無い。オーブに立ち寄っている可能性は高いだろう。」
その判断材料を話して聞かせる。それを聞いて、ディアッカが問い返す。
「奴らは何て言ってるんだ?」
「オーブからの回答はアークエンジェルは寄港していないだ。このまま先回りするのもいいが、できれば弱っている内に叩いておきたい」
「ストライクが落ちたアークエンジェルにそんなに神経質になる事無いんじゃない?」
ディアッカのその言葉"ストライクが落ちた"という事にキラの事を思い出し、アスランは一瞬辛い気持ちが湧き上がる。だが、それを隠して言った。
「油断は禁物だ。確かに厄介な相手は居なくなったが、俺達はいままで奴らに何度も煮え湯を味わわされたのを忘れるな」
「だったら、潜入なんてめんどくさいことせずにそのまま一気に攻撃するか?」
「"ヘリオポリス"とは違う。あらゆる意味でな。幾らなんでも、4機や5機で攻め込めば返り討ちにあうのが落ちだ」
臆病者めとでも言うようにからかう様に言ったイザークにアスランが冷たく返す。それを聞いて、沈黙が落ちた後、イザークが手をあげた。
「OK、従おう。ま、潜入ってのもおもしろそうだしな」
アスランの正論にちゃかすようなつけたしを言って部屋を出て行こうとする。そして、ドアの前で小さな声で呟いた。
「オーブか。あの女の故郷へ行く訳か・・・・。考えようによっては好都合かもな」
補給を受けたアークエンジェルはオーブを立ち去っていた。カガリの事に関しては彼女自身が降りる事に関して多少、渋ったが、半ば無理やりな形で引っ張っていかれた。
そして、アークエンジェルが出航した後、入れ違い的にオーブを訪れるものがあった。
「戦艦に銃口を向けられた時はびっくりしたよ〜」
キサトが情けない声を出す。オーブに近づいたロウ達の艦は領域に近づいた途端、艦隊にお出迎えにあったのである。その後、すぐに、警戒は解かれ、彼等はオーブに招き入れられたが、気の弱いというか、マイナス思考が強いところのあるキサトはかなり神経をすり減らしてしまったのだった。
「ごめんなさいね。この国は今、少し、ごたごたしてて、神経質になってるの。」
それに対し、実はプロフェッサーの友人であったエリカが謝罪する。それを聞いてプロフェッサーは笑っていた。
「あなたの事だから、そうじゃなくても同じ事したんじゃない? 悪ふざけで。」
そのからかうような口調に対して、エリカも笑って、そうかもねと答える。
「それよりも、今は早く怪我人を見てくれ。あいつ、まだ、目をさまさないんだ。」
「ええ、わかったわ。手配はすんでいるから直ぐに病院に運びましょう。」
そこで、ロウが口を挟み、キラの事を口に出す。あらかじめ、通信で怪我人が居る事だけは伝えられていたので、素早く作業は行なわれ、キラは運び出されていく。
「これで大丈夫。後はこちらに任せて頂戴。ところで、彼は一体誰なの?」
「いや、俺もわかんねえ。外で戦闘してたMSに乗ってたんだよ・・・・戦闘で壊れたのを回収したら、まだ生きてたんでな」
そのロウの言葉を聞いた瞬間、エリカは反応した。それに気付いたキサトが尋ねる。
「どうかしたんですか?」
「い、いえ・・。外で戦闘して立って事は、多分連合か、ザフトのパイロットってことでしょ? それでちょっと問題になるんじゃないかと思って」
その言葉に、不安を覚えたロウが問いかける。
「おい、まさか、あいつをほっぽりだすっていうんじゃないだろうな?」
「え、ええ、大丈夫よ。集団や兵器ならともかく、怪我人を受け入れた位なら問題にもならないでしょう。それから、プロフェッサー、あの話だけど明日にしてもらってもいいかしら?」
「ええ、かまわないわよ。」
急に慌てたようになったエリカはプロフェッサーの答えを聞くと、利用できる施設の説明など最低限の必要事項だけすると足早に立ち去っていってしまった。
『ついてこい』
イザークはそれだけ言ってユズハを連れ出した。不思議な事にこれに対し、ユズハは抵抗もしなければ不安も感じなかった。一体どうするつもりなのか問う気にすらならなかった。後で考えても彼女自身、その理由はわからず、しいていえば、直感的に相手を信用できると感じたのだ。
それは、NTの感と呼べるものだったのかもしれないし、もっと原始的な女の感だったのかもしれない。
それはともかくとして、ユズハはそのままイザークに連れられて、ザフトの艦と連結された、一隻の船の前に連れて行かれた。
「この船は?」
それは、小型の商業船のような船だった。およそ、軍用としてはふさわしくない船である。何故、こんな船に乗せられるのか、ユズハ、はそこで初めて尋ねた。
「いまから、オーブへ行く。軍艦じゃあ、入れないんでな。侵入の為に容易された船だ。」
「侵入!? オーブへ!?」
ユズハの頭の中にヘリオポリスでの光景が蘇る。今度はオーブで同じ事を繰り返そうと言うのか、思わずそう叫ぼうとしたユズハをイザークはなだめるように言った。
「心配するな。オーブで暴れるような真似はしない。この国に"足つき"、お前たちが乗っていた戦艦が停船していないかどうかを確かめるだけだ。もし、いないなら何もしないし、いたのなら、奴らがオーブを出たところを狙う。どの道、オーブに危害は加えん」
「・・・・・本当?」
疑わしげに問うユズハに対し、イザークは小さく頷いて言った。
「ああ、俺達も小隊だけで一国を敵にまわすような事はしない。その事については安心しろ」
「・・・・わかった」
ユズハはその言葉が真実だと感じ、頷く。しかし、わからなかった。話が本当だとして、何故、自分をこんな所に連れてきたのかが。そこで、イザークは驚くべき事を発言した。
「お前をオーブに返してやる。」
「えっ!?」
現在、捕虜である彼女をいきなり故郷に返すというのである。これで驚かない訳が無い。それに対して、イザークは説明を始めた。
「今のままではお前に借りを返す事ができない。このままザフト本国にお前を運べば、よくて終戦まで監禁、悪ければ処刑などという事になるだろうからな。それでは、俺の気がすまん。だから、お前を逃がしてやる。オーブがこのまま中立を保つなら戦う機会はないかもしれんが、それならそれで縁が無かったと諦めるしかないが、そうでなければお前は戦場で倒す」
監禁、処刑という言葉を聞いて、ユズハは改めて自分の立場を理解し、肝を冷やす。同時に、イザークの行動に対し、何となくおかしくなって笑ってしまう。
「何がおかしい」
それに対し、不機嫌そうな態度を表すイザーク。流石にここで彼の気を悪くしてはまずいとユズハは慌てて謝った。
「ご、ごめんなさい。その、なんでもないの」
「ふん、まあ、いい」
下手な対処の仕方だったが、イザークはそれほど気にしなかったようだ。そして、そのまま促され、商業船に乗る。そして、奥の部屋の前に連れて行かれた。
「この部屋に隠れていろ。短い移動だ。こんな所までは入ってくることはないだろう。だが、万が一と言う事もあるからな。一応念には念を押してクローゼットにでも隠れてろ。」
そして、ユズハを部屋に入れると、それだけ言って立ち去ってしまった。ユズハは言われた通り、クローゼットに隠れる。そしてそれからしばらくたった後、船が動き始めた。
「それにしても、この船どうしたんですか?」
「古い商業船を中の荷事、買い取ったんだそうだ。ちょうど、物資も補給したかったしな。」
商業船に乗り込み、それを物珍しそうに見ながら尋ねるニコルにアスランが答える。その答えにニコルは面白そうに答えた。
「へえ、じゃあ、これ単なる偽装じゃなくて、ほんとに商業船だったんですね。もしかして、前の人が使っていたものとか残っていたりしてるんですか?」
「ああ、急ぎで手に入れたからな。偽装の意味も込めて、物資などもまだ積んだままにしてある」
その答えを聞いてニコルの中で好奇心が湧いてくる。まだ、15歳、コーディネーターとしては一応成人だが、まだまだ子供っぽい所もある彼はちょっとした探検をしてみたい気分になった。
「少し、中を見てきていいですか? 何か役にたつものがあるかもしれませんし」
適当な理由をつけて、許可をとる。操縦も自動操縦でオーブにつくまで特にする事もなかったので、アスランは頷いた。
「ああ、別にかまわんぞ」
「まったく、ガキだね」
ニコルが出て行った後、意図を見抜いたディアッカがからかうように言う。そして、入れ違いに、間が悪く部屋をでていたイザークが戻ってきた。
「後は、この部屋か。思ったより面白いものがあったな。さて、ここには何があるかな。」
今までの部屋には、釣竿、C.E時代前の漫画、ひょっとこのお面、ベビー用品、狸の置物、腐ったパン、一体何故こんなものがあるんだというようなものがあった。予想外な"お宝"の発見に、やや興奮気味に彼は部屋に入った。
「うーん、この部屋には・・・・あっ、クローゼットがあるな。」
そして、彼はそのクローゼットを開け、その中にいた人物と目があった。
「・・・・・」
「・・・・・」
その中にいたユズハとニコルが見詰め合う。一瞬の沈黙、そしてその次の瞬間、彼は地面に叩き伏せられていた。
(後書き)
ところで、この話も大分長くなり、オリキャラも含め、キャラが多くなってきたのでここで整理して見る事にします。
【登場人物】
<オーブメインキャラ>
アムロ・クサナギ(オーブ1佐にして技術部部長)
ダイキ・クサナギ(アムロの義父にしてシズクの実父、オーブの副代表)
シズク・クサナギ(アムロの妻)
ウズミ・ナラ・アスハ(オーブの前代表)
カガリ・ユラ・アスハ(ウズミの娘)
ホムラ・アスハ(ウズミの弟・現代表)
エリカ・シモンズ(M1アストレイの製作者・モルゲンレーテ社員・ナチュラルと名乗っているが実はコーディネーターで一児の母)
キサカ(カガリのお目付け役・オーブの一佐)
カズィ・トール・ミリアリア(キラの友人)
アサギ・マユラ・ジュリ(M1アストレイパイロット(cross本編ではまだ未登場))
(この3人の名前と顔が一致しない人の為に、前から順に金髪、ショートカット、眼鏡が特徴です)
ハロペット(アムロが作ったペットロボット・アムロによって回収)
<連合メインキャラ>
マリュー・ラミアス(アークエンジェル艦長・連合小佐)
ナタル・バジルール(アークエンジェル副長・連合中尉)
ムウ・ラ・フラガ(アークエンジェルパイロット・連合少佐)
サイ・アーガイル(アークエンジェルクルー・キラの友人・フレイの婚約者)
フレイ・アルスター(アークエンジェルクルー・父親を植物状態にされ、ザフトとコーディネーターを恨んでいる)
アーノルド・ノイマン(アークエンジェル操舵士)
ダリダ・ローラハ・チャンドラ二世(アークエンジェルの通信傍受・情報解析をする。)
コジロー・マードック(アークエンジェル整備士)
ジャッキー・トノムラ(アークエンジェル管制官)
ロメロ・パル(アークエンジェル射撃指揮)
ジョージ・アルスター(現在連合の病院に収容・植物状態)
<ザフトメインキャラ>
アスラン・ザラ(ザフトエースパイロット・ザラ隊エース・キラの幼馴染)
イザーク・ジュール(ザラ隊メンバー)
ニコル・アルマフィ(ザラ隊メンバー(最年少))
ディアッカ・エルスマン(ザラ隊メンバー)
シャナ・ペイン・クランプトン(スーパーコーディネーターの失敗作、ただしそれは外見的なもので能力的にはかなり完成体に近い)
<ジャンク屋(リ・ホーム)>
ロウ・ギュ−ル(中心的存在・ナチュラル)
キサト(山吹樹里)(メンバーの一人・ナチュラル)
リーアム・ガーフィルド(メンバーの一人・コーディネーター)
プロフェッサー(メンバーの一人・謎の多い女性・ナチュラル)
8(高性能なAI・人間的な思考をする)
【オリジナルMS】
クロスガンダム:アムロが設計したMS。構造をシンプルにする事で扱い易く、それでいて総合的にGに匹敵する性能を持っている。PS装甲を装備
ファントムクロス:アムロが設計したMS。機動性が高く、代りに装甲が薄くなっている。PS装甲とミラージュコロイドを装備
M1クロス:クロスガンダムの量産型。PS装甲は装備していない。
M2クロス:ファントムクロスの量産型。浅海用に改良されている。ミラージュコロイドは電磁フィールドの出力とミラージュコロイドの量を変化させることで、屈折率を調整され、従来とは逆に水中でのみ使用可能となっている。ただし、陸上ほどの完璧なステルス機能は持たず、また、使用時間も25分が限度と短くなっている。PS装甲は装備されていない。
クライム:ジンをベースにカスタムした機体。クロスガンダムの設計構造が参考にされ、かなり扱いづらいがナチュラルでも扱えるようになっている。コネクタも接続され、ビーム兵器、インコムが使用可能になっている。
へヴン:フリーダムの原型として開発された機体。核エンジンやNJCは搭載されていないが、機体の構造が核エンジンの出力に耐えられるよう考えられて設計された実験機