「ほう、アムロかこんな所で会うとは珍しいな。」
「ギナか。M1アストレイが模擬戦をやるらしいと聞いて見学にな。お前が動かすのか?」
MSのテスト運営を行なう第ニドックでアムロはオーブ五大氏族の一つ、サハク家の次期当主候補の一人ロンド・ギナ・サハクと会った。そして、アムロの言葉にギナは首を振って答える。
「いや、今日はナチュラル用のOSの完成度の確認も含めているからな。コーディネーターの私ではテストになるまい。もっとも、お前がM1クロスに乗って戦うというのなら、相手を務めよう。お前となら最高のダンスができるだろう。」
「M1クロスとM1アストレイの性能比較実験は近日中に行なう予定だ。だが、俺は技術者だぞ。」
パイロットは仕事では無いと言うように答えるアムロ。だが、それに対し、ギナはおかしくてたまらないというように笑う。
「アストレイにも参考にされたOSに記録されたお前の戦闘データ。あれほどの証拠があって、ただの技術者を名乗るのか?」
「・・・・・」
ギナの言葉に押し黙るアムロ。お互い牽制しあうような会話。これがアムロとギナの付き合い方だった。この二人が出会ったのはおよそ10年前になる。
ギナは基本的に能力を持つものを好み、そういった相手にのみ評価する。その点において、アスハ程、理想に傾倒せず、現実とのバランス取りを行なう政治手法の彼は高く評価していた。
加えて、彼にはもう一つ彼を評価する理由が存在する。それはアムロと出会うその更に前、ギナはダイキと武術の試合を行なった事があるのだ。ギナはサハク家の後継者として、コーディネーターの中でも特に特別な改造を施され、体格的にも当時で既に180cmを超えていたギナはそれまでに負けた事などなく、ダイキとの試合も彼が肉弾戦ではオーブで一番強いとの噂を聞いて少しは楽しめるかとの軽い気持ちからだった。
だが、彼は敗れた。試合開始と同時に彼は関節を捻られ、一瞬で地面に叩き伏せられていたのである。
その時、彼は何が起こったのかすら理解できなかった。しかし、やがて事態を理解し、プライドを傷つけられた彼は激昂した。まだ、若く今よりも激情に流され易かった彼は、その状態から関節を折る覚悟で抜け出そうとしたが、あっさり解放され、今度は投げ飛ばされた。
「お前、一人では相手にならん。今度は二人がかりでどうだ?」
そして、更にそんな挑発を受け、ギナの姉のミナが加わった。女とはいえ、コーディネーターであるミナはギナとほぼ同等の身体能力と体格を有していた。しかし、そんな彼女を加えての二人がかりですら、ダイキには適わなかった。
完膚無きまでに破れたギナはその屈辱を相手に対しての敬意に変えた。ナチュラルにも関わらず、自分達を打ち負かしたダイキに対し、それ以後彼は尊敬の念を抱くようにすらなり、また目標の一つとしたのだった。
そして、その事がきっかけでギナはアムロにも興味を抱くようになった。それまでに、経歴のわからない男が婿養子という形でクサナギ家に入ったという噂はギナも聞いていたし、また、その人物がいくつもの発明によって、技術者として目覚しい功績を立てている事も知っていた。だが、所詮は軍の下級仕官―――当時のアムロはニ尉―――下賎や輩に過ぎないとその時までは考えていたのである。しかし、ダイキを評価した事によって、彼は間接的にアムロの評価を高めた。そして、接触を図ったのである。
「お前がアムロ・クサナギか」
実際にあった直後のアムロの評価はギナの中では低かった。僅かに交わした議論の中で、アムロの事をアスハ家と同じような理想主義者だとギナは感じたからだ。
しかし、その後、偶然が重なり、何度か交流の機会を持つ内に、彼がそれほど愚か―――これはあくまで、ギナの主観であるが―――な相手では無いことを理解し、また、技術者として以外に何か才能を隠し持っている事に気付いたのだ。
そして、アムロの方もまた、ギナの野心、独善の強さに気付くと共に、勝手は理解できなかった、彼の終生のライバルが持っていたのと同質なある種の純粋さに気付き、興味を持つようになっていったのである。
それ以来、友人とも呼べるような、そうとは言えないような微妙な距離での関係を二人は10年の間、続けて来たのだった。
「まあ、いい。今日は、下賎な者たちの試合でも見て我慢させてもらおう。少しは楽しませてもらえるといいがな」
ギナはアムロから視線を外し、目の前の訓練スペースに目をやる。そこには、パイロット達に一通りのコーチを済ませた後、レッド・アストレイに乗り換え、テストパイロットの乗るM1アストレイと向き合う姿があった。
レッドフレームとM1アストレイが向き合う。性能テストの為の模擬戦が行なわれようとしていた。エリカがそのルールを説明する。
「運動性能を知りたいから火気の使用は禁止。剣は使ってもらってもかまわないわ。盾は・・・二人とも装備してないわね」
両手持ちで使うガーベラストレートを使用する関係でロウのレッドフレームは盾を装備していなかったが、何故かM1アストレイの方も装備していなかった。
「よし、行くぜ!!」
「あれがプロトタイプか・・・・」
気合を入れるロウとレッドフレームを見て呟くM1アストレイのパイロット。そして、説明とお互いの準備が終わり、試合開始の合図が告げられる。
「始めて!!」
「おりゃ!!」
試合開始と同時にレッドフレームが殴りかかる。それに対し、M1アストレイはその攻撃を受け流した。
「何!?」
驚くロウ。それに対し、大勢を崩したレッドフレームに今度はM1アストレイが拳をお見舞いする。
「ぐわっ!!」
後ろによろけるレッドフレーム。M1アストレイは更に追撃を加えようと踏み込む。だが、ロウもやられてばかりではなかった。機体をふんばらせ、大勢を立て直すと、蹴りを放つ。
「くっ、やるな」
予想外の攻撃に驚き、M1アストレイのパイロットは呻きをあげる。そして、両機は一端そこで距離を取った。
「へえ、すごいじゃない! P02」
「でしょでしょ♪」
「あれは相当チューンしてあるわね」
その戦いぶりを見て感心する外野の3人の少女。そして、ロウは目の前の相手の手ごわさに気合を入れなおす。
「くぅー!! やるな、こいつ。コーディネーターか? いや、違うな。なんとだくだけど、そんな気がするぜ」
そして、切り札の一つを使う事にした。レッドフレームの右掌にエネルギーの球体が生まれる。本来ならビームライフルやビームサーベルに供給されるエネルギーをそれらが無い時に使用するとエネルギーの帯電が起こる。開発者の完全に想定外の使い方だったが、それだけに相手にも予測できない切り札となっていた。
「コイツはどうだ!?」
そして、そのエネルギー球を投げ付けた。あまりに予想外な攻撃手段。しかし、にもかかわらず、M1アストレイのパイロットはそれに反応し、M1アストレイはそれをジャンプしてかわした。
「なんだと!?」
そして、そのまま、レッドフレームに向かって飛び蹴りを放つ。その蹴りをまともに喰らって盛大に吹っ飛んだ機体は訓練場の壁に叩きつけられた。
「くそーっ!!」
切り札を破られ流石に少し悔しがるロウ。そこで、もう一つの切り札、ガーベラストレートを抜いた。
「はああああー」
深く深呼吸し、そして、次の瞬間、パイロットが息を吐くと共に、レッドフレームは一気に間合いを詰めた。
「!!」
ガーベラストレートが振るわれる。だが、その瞬間、M1アストレイの方も急激な反応速度で左横に身体をそらした。コックピットを外して機体を両断するつもりだったその一撃は、M1アストレイの右腕のみを切り裂き、そして同時にカウンターで放たれたM1アストレイの左腕がレッドフレームの頭部を貫いたのだった。
「・・・・ここまでだな」
「ああ、俺の負けだな。あんた凄えな」
そこで、M1アストレイのパイロットからロウに通信が入った。ロウは心底感心したように答える。
「いや、俺は格闘戦が得意だ。今回勝てたのはルールが俺に有利だったからだろう。火器もありだったら負けていたかもしれない」
「そいつは俺も同じさ。それに、俺はジャンク屋だからな。戦闘で負けたって別に気にはならないさ」
謙遜するようにいうM1アストレイのパイロットに対し、そう答えるロウ。それが負け惜しみ等ではなく、本音であることを感じ取った、M1アストレイのパイロットは気持ちのいい男だと思い、そして頷いた。
「下賎なものの戦いにしては楽しめたが・・・・・、所詮はこの程度か」
落胆とも侮蔑ともつかない声を漏らすギナ。実は彼は以前ロウと戦い破れていた事があった。しかし、目の前でその戦いぶりを見て再戦は意味が無いと確信する。前回の戦いは本気でもなかったし、機体の左腕も無い状態だった。だが、今、戦えば確実に勝てると。
「いや、二人ともたいしたものだったろう。それに、あのM1アストレイのパイロット、あれが、拳神バリー・ホーか。味方にするには頼もしい存在だな」
それに対し、アムロは好評価を下す。M1アストレイのパイロットは元格闘家で仲間内からは拳神と呼ばれているエース候補のパイロットだった。生身では年老いた今のダイキよりも強いと噂されている。
「ふっ、まあいい。それよりも、お前との模擬戦楽しみにする事にしよう」
「俺は約束した覚えは無いんだがな」
評価が食い違った事にギナは僅かに眉をひそめるが、特に反論せず、捨て台詞を残すとそのまま立ち去っていた。
「ほんとにオーブにアークエンジェルがいるのかな・・・・。フレイやキラ君、大丈夫かな・・・」
ユズハが呟く。もうすぐ自分が解放されるという事になって、安心した分、フレイ達の事が心配になってきていた。
イザークはオーブではアークエンジェルを襲わないと言ったし、実際それは本当だろう。如何にMSが従来の兵器に比べ高性能とはいえ、数機のMSで国家を落とせるとは思わない。だが、オーブを出た後アークエンジェルは襲われるだろう。少なくとも自分がいなくなった分、戦力は減っているだろう、それで、アークエンジェルが勝てるかどうか彼女は不安だった。最も彼女は知らなかったが、アークエンジェルは彼女がいなくなった後、更に襲撃を受け、既にキラまでも失っていたのだが。
「それにあの人達が死ぬのも嫌だな・・・・」
自分を助けようとしてくれたイザークとニコルの事が思い出される。戦場で人と殺すのは慣れてはいないがなんとか割り切って戦ってきた。それでも、自分の知る人間が死ぬというのは避けたいと彼女は願う。
ピーーーーー
その時、電子音と共に手錠が外れる。4時間が過ぎたのだ。
「急いで逃げないと」
まずは、それからだ。そう思い、彼女は部屋を抜け出した。
「ちっ、ここまで調べても何も無しか」
イザークは苛立った声をだす。アスラン達はモルゲンレーテの社員の一人を見つけると、気絶させ、拘束しよりレベルの高いパスを奪って侵入していた。しかし、そのパスを使って中に入り込んでも何も見つからなかったのである。
「奪ったカードではこれ以上入れませんね」
「流石にこれ以上は無理か。これ以上奥に入れるパスを持っている奴等は少ないだろうし、手当たり次第にどうにかするという訳にも行かないしな。」
「まだ、あっちの方は調べてないんじゃないか?」
ディアッカが奥を指差す。入手したパスではそれが侵入できる最後の場所だった。
「よし、ここを調べて何も見つからなかったらアークエンジェルはオーブにはいないと判断する。これ以上、ここにいてボロをだしてもまずいしな」
アスランがそう宣言し、扉をあけた。そして、彼等は目に飛び込んできたものを見て驚く。
「これは・・・・・!!」
「MS!? しかも、結構な数がそろってるぜ!!」
そこにあったのは居並ぶM1アストレイだった。オーブが既にMSを量産していた事に驚愕する。
「連合と結びついてた事からMSの製造技術はあるとは思ったが既に量産体勢に入ってるとはな」
「これで、オーブは僕達と戦う気なんでしょうか」
「連合の兵器を密造してるぐらいだからな。やりかねないだろう!!」
驚くディアッカ、暗い面持ちで言うニコル、はき捨てるイザーク。そして、アスランはそれらが入り混じったような複雑な気持ちでそれを見、そして、他の部分を見回した。
「アークエンジェルは・・・ないようだな」
「ああ、代りにとんでも無いものを見ちまったがな」
アスランの呟きにイザークが答える。そして、ディアッカが言った。
「どうする、目的はこれで果たしたって事になるけど、せっかくだからこの機体についてちょっと調べてく?」
「・・・・・いや、ここには何人か人もいる。ヘリオポリスのように派手な事をする訳にもいかないからな。ここで退こう」
「あっそ、じゃあ、さっさととんずらしようぜ」
アスランの決断に対し、ちゃかすように言うディアッカ。イザークは多少不満気な顔をしていたが、特に文句を言う事もなかった。
「オーブ・・・・懐かしいな」
オーブに入ったユズハはしばし、その光景を眺めていた。懐かしそうにそして、少し辛そうに。彼女は2年半前までオーブに住んでいた。しかし、ある事件をきっかけに彼女は自閉症に陥り、環境を変えてみればというアムロ達の思いからヘリオポリスに移りんでいたのだ。
結果的にユズハはその出来事を乗り越え、そして、彼女を強く育てた。戦争という状況下で強く生きられたのも、また、同年代の少年、少女よりも遥かに責任感のあるよう育ったのもその事実が関係してきている。しかし、それでも、思い出すと軽く暗い気持ちになるのは避けられなかった。
「それより、これから、どうするか考えないとね」
しかし、今の彼女には過去を思い出すよりも考えるべき事があった。状況から考えれば、オーブ国民としてはアムロやその他の信頼できる人にイザーク達の事を知らせるべきだろう。しかし、助けてもらっておいてそんな恩知らずな事はユズハにはできなかった。
「とりあえず・・・・・・・・・、久しぶりに街でも見て回ってみようかな」
考えた末に、イザーク達の事は見逃す事にした。イザークは予定では、1時間程で船に戻る予定だと言っていたので、後、2,3時間も時間を潰せば十分だろう。
「また、会えるかな・・・。けど、戦場ではもう会いたくないな・・・・・」
戦って、手加減して勝てる相手ではない。戦場であえば、殺し合いをしなくてはいけない。イザークはそれを臨んでいたが、ユズハは嫌だった。そうして、ユズハはもやもやとした気分のまま街を回り始めた。
「結局、駄目だったな」
「ああ、けちくさいよな」
トールとカズィがぼやく。結局モルゲンレーテでは、関係者以外は入れられませんと門前払いをされてしまったのだ。
「本当は中にいたのかな?」
「さあ、どうだろう・・・。あっ、そうだ、駄目もとで軍の方にも行ってみないか? アムロさんの知り合いだって言えば・・・・」
ミリアリアの言葉に対して、名案を思いついたとばかりにカズィが声をだす。それに対し、トールが少し首を捻った後に言った。
「軍はもっと、セキュリティがきついんじゃないか? あ、でも、個人的に会えば、もしかしたら教えてくれるかも」
「でも、今日はもう、日が暮れるし、今から行ったんじゃ、迷惑じゃない?」
既に夕方にさしかかり、太陽は沈みかけていた。確かに今から行くのは迷惑かもしれないと彼等は感じる。
「しょうがない。明日、出直すか」
「でも、そしたら、居たとしてもアークエンジェルでちゃうんじゃないかな。いつまでもとどまっていられないだろうし・・・・」
トールの言葉に反論するカズィ。確かにその通りだと思って、3人は考え込む。すると、そこで、走りさっていくアスラン達の姿を目に留めた。
「あっ、さっきの人たち」
「!!・・・君達か。悪いが、今、急いでいるんだ」
声をかけられた事に、ぎょっとした表情を浮かべたアスランはそう言って、そのまま走り去っていく。その態度にカズィは不快感を表した。
「なんだよ。あいつら」
「まあまあ、急いでいるって行ってたじゃないか」
それを宥めるトール。その時、少し離れた物陰から一人の少女が姿を現した。
「よかった。やり過ごせたみたいね。まさか、こんな所ですれ違うなんて・・・・・・」
何やら呟いているが、トール達にはよく着替えなかった。そして、それよりもその姿の方にトール達は驚く。
「ユズハ!?」
ミリアリアが叫ぶ。その声に、少女、ユズハが気付き、トール達の方を見た。
「ミリアリア!? トール!? カズィ!?」
別れた友人達が、いま、故郷で再会したのだった。
「ユズハ、無事だったのね!!」
ミリアリアがユズハの姿を見て駆け寄る。トールとカズィもそれに続いた。
「うん!!」
ユズハも笑顔を浮かべて答える。だが、そこで、カズィが気付いたように不思議そうな顔をした。
「あれ? でも、どうして、ここにいるんだ?」
「何よ、いちゃ悪いっていうの?」
その言葉がユズハを邪険にしたように思え、ミリアリアがカズィを睨みつける。それに気付き、慌てたように弁解するカズィ。
「ち、ちがうよ!! そうじゃなくて、ユズハはアークエンジェルに乗ってた筈なのに・・・って事」
それを聞いて、ユズハが頷いて答える。
「う、うん、実は私、戦闘中に機体が壊れて、捕虜としてつかまっちゃって・・・・・」
「えっ!!」
その答えに驚きの声をあげるトール。カズィやミリアリアも同様であった。
「けど、その、逃がしてもらったの・・・・・・」
そこで、続けたユズハは言いよどんだようにそう言う。当然、その答えでは納得しない三人は詰め寄る。
「逃がしてもらったってどう言う事?」
「そうだよ、一体何があったんだ?」
「えーと、どう言う事と言われても・・・・・・」
敵軍の兵士が自分と戦いたいが為に逃がしたなど、一体どう説明すればいいのか悩むユズハ。結局彼女はこの後1時間程拘束されるのだった。
「何だと!?」
帰艦したアスランが叫ぶ。彼は、ユズハが居なくなった事を伝えられたのだ。
「艦内のどこかにいないのか!?」
「ありません!!くまなく捜索しました!!」
部下の答えを聞き、流石に感情を高ぶらせるアスラン。苛立ちをぶちまける。
「くっ、どういうことだ!? 脱走したとでもいうのか!! だが、どうやって!?」
言ってから思い当たる。その手段と機会は先ほどのオーブへの航行に利用した船に乗り込むしかない事に。
「だが、それで・・・・」
だからといって、それを実行するのは困難である。まさか、誰か手引きをしたものが・・・、そうも考えもするが、自分達の仲間にそんな事をするものがいるとは彼には思えなかった。
「こちらに何か手落ちがあったという事か・・・・・」
故に、彼はそう結論付け、それ以上のその考えに疑問を覚える事はなかった。
「ユズハ!?」
アムロの叫び。解放されたユズハはトール達と共にクサナギ家、つまりはダイキが現在ではアムロ達も住む、実家へと訪れた。そして、彼女は玄関を開けた所でいきなりアムロと直面したのである。
「えっと・・・・・、ただいま、お父さん・・・・」
別れた時の事もあって、気まずげな表情をするユズハ。それに対し、アムロは彼女に近づき、頬を叩いた。
「!?」
叩かれた事にショックを受けた表情をするユズハ。トール達も驚いた表情をする。そして、彼らは怒ろうとした。しかし、それよりも早くアムロは行動をした。
「この親不孝が・・・・。散々心配させて・・・・」
ユズハを抱きしめ、人前に関わらず、涙を流したのだ。それを見て何も言えなくなるトール達。そして、ユズハは複雑な気持ちで一言だけ呟いた。
「・・・・ごめんなさい・・・」
アムロとの再会の後、ここは家族水入らずにしようと気を使って、帰っていた。そして、父に引き続き、母と再会したユズハ。
「ユズハ!!」
アムロと同じようにユズハを抱きしめ涙を流す、母、シズク。それをダイキは柔らかな笑みを浮かべ、そして声をかけた。
「ユズハ、よく帰ってきたな」
「うん、ただいま、お母さん、おじいちゃん」
そして、一通り再会を祝いあうと、ユズハがこれまでの事情を説明する。そして、その話を聞き終わった後、アムロが真剣な顔つきになって言った。
「それで、ユズハ、これからの事だが・・・・」
その言葉でユズハはアークエンジェルの事を思い出し、アムロの言葉を遮って問いかける。
「アークエンジェルは!? 今、この国にいるの!!」
「!! そうか、彼らから聞いたのか」
アムロはユズハの言葉に驚くが、すぐにトール達から聞いたのだろうと思い当たり、すぐに平静を取り戻す。
「いや、アークエンジェルはこの国にはいない。詳しい事はお前にも言えないが、今、この国は非常に微妙な状況になっている。連合の艦を入れる訳にはいかなかったから、物資の援助だけして出て行ってもらった」
「そう・・・なの。じゃあ、フレイやキラ君はまだ・・・」
キラが今、この国に居る事を知らされていなかったアムロはユズハにショックを与えないよう彼がMIA(行方不明による死亡判断)を受けた事は伏せて言う。ユズハの方もアークエンジェルの損傷は知らなかったので、特にそれを非道だとも思わなかった。
「ああ、それから、お前は軍から除隊扱いになっている」
「えっ!?」
ユズハとキラがMIAと言う事を知らされた時、それならばせめてとダイキは除隊申請をしたのだ。これは、アラスカで正式に認定がされるのだが、NJCの影響下である以上、彼女の生存をアークエンジェルに届ける義務も方法も無く、この時点で事実上、二人は除隊扱いになっていた。
「お前はもう戦う必要はない」
アムロはそう言い切った。だが、ユズハがそれに対し反論しようとする。
「でも、それじゃあ、フレイやキラ君達は・・・・・・・」
「どの道、いまから、アークエンジェルに追いつく方法もないだろう。大丈夫。ここまで、繰れば、アラスカまではきっとたどりつける」
オーブ領域を超えれば、それはもうほとんどザフト圏外である。とは言え、まだ完全に安全という訳でないし、ユズハもキラも居ない今、追いつかれれば落とされる可能性は高いが、それはあえて言わなかった。
「・・・・・・・」
ユズハが押し黙る。アムロの言葉に対し疑う、不安な気持ちはある。だが、追いつく手段がないのも事実だったからだ。
「ユズハ・・・・・」
シズクがユズハの肩にそっと手を置き慰めた。
(オマケネタ(この所出番が無い原作主人公))
キラ「ASTRAYのキャラは僕の出番を追いやるだけだっ、悲しく惨めな脇役街道へと。ここで、出番確保して置かなければ、僕はまた忘れられてしまう。そうすれば、また僕は影が薄いという名の脇役街道を歩かなくてはいけないんだ。
柿の種、教えてくれ・・・僕はあと何話出番の無いまますごせばいい?僕はあと何話、放置され続けられなければならないんだ。
エリカさんは明日、また来ると言ったまま、何時まで待っても来てくれない。
教えてくれ、柿の種・・・・!」
柿の種「・・・・・・・」