今日の新聞から 10月〜12月

村山龍平翁70年祭 創業者しのぶ (11月25日 朝日朝刊)
朝日新聞の創業者である村山龍平翁が亡くなってから満70年となる
命日の24日,大阪阿倍野区の南霊園(阿倍野霊園)などで70年祭の
行事が営まれた。
親族や朝日新聞関係者約20人が参列し,来年1月の操業125周年を
前に,故人をしのんだ。

中略

雅楽の調べのなか,翁の孫の村山美知子・朝日新聞社社主ら親族が
墓前に玉串をささげた。

                                 34面社会欄より

創業者の命日供養の記事としては,社会欄,しかもベタ記事扱いであるところ
に,多少の好感が持てる。しかし,文中にある村山美知子社主の名前を見て,
いささかの感慨が湧かないでもない。かつて朝日新聞経営陣と社主村山家の
確執が,週刊誌等で面白半分に喧伝された時期があった。
今の経営陣とはは上手くやっているのであろうか。

新聞社の株式は原則として非公開で,有価証券報告書の義務からも特例的
に免除されている。であるから読売新聞社のように,一切の経営内容を非公
開としているところもあり,これが我が国における新聞社の大勢を占めている。
また産経日経など,かつて公開したこともあるが,現在は非公開としている
ところもある。

こうした中にあって毎日・神戸・岩手日報・西日本そして朝日は,珍しく報告書を
公開している。ただし朝日は数年間公開していなかった時期があったのだが
2000年以降は公開している。主な内容は以下の通り。

 商号 株式会社 朝日新聞社(アサヒシンブンシヤ) 
住所 〒104-0045 東京都中央区築地5―3―2 
資本金 650,000千円 
株主数 3,769 人 
業績 決算期 売上高(百万) 利益金(千) 配当% 資本% 申告所得(千) 
1998 417,207 3,010,000 15 12 15,996,259 
1999 400,369 2,137,000 13 14 14,323,862 
2000 403,854 9,050,000 15 24 29,854,019 
取引銀行 三井住友(大阪本店) 富士(大阪) 東京三菱(大阪)  
三和(中之島) 第一勧銀(大阪)   
代表者 氏名 箱島 信一(ハコシマ シンイチ) 
生年月日 1937年  12月  9日 
住所 〒157-0076 東京都世田谷区岡本1―3―2―102 タマガワテラス 
出身地 福岡県 
出身校 九州大学 
仕入先 王子製紙 ,日本製紙 ,大昭和製紙 ,日本紙パルプ商事 ,サカタ
インクス  
得意先 電通 ,博報堂 ,朝日広告社 ,トーハン ,大広  
役員名 社 長 箱島 信一 専 務 中馬 清福 専 務 神塚 明弘  
専 務 大野 功雄 常 務 徳江 景英 常 務 君和田 正夫  
常 務 尾崎 昭雄 常 務 内海 紀雄 常 務 小栗 敬太郎  
常 務 権藤 満 
株主 村山 美知子 1,166,641株
上野 尚一 410,255
村山 富美子 274,285株 
上野 克二 107,000株 
上野 信三 107,000株  

ご覧の通り,村山社主の保有株数が突出して多いのがわかる。
実は新聞社の株式は,取得に当たって制限がある。商法204条に基づく
特例法があり,日刊新聞社は定款で定めれば,自社の株式を取得できる
基準を役員や従業員,あるいは事業に関係する者というように規制がする
ことができるのだ。また譲渡に関しても同様の制限を欠けることができる。

このように閉鎖的な資本によって経営されている新聞社が,果たして社会の
木鐸として機能できると云えるのだろうか。
朝日新聞がその編集方針と社会の公器としての矜持を守り通すのに,この
村山家への資本集中は問題はないといえるのであろうか。

新聞社社主というと漫画「美味しんぼ」の主人公山岡士郎の努める東西新
聞の大原社主という我が儘なキャラが思い浮かぶ。
何かといえば食い物のことで主人公に無理難題を押しつける役回りだ。
ことが食い物程度のことであれば実害は少ないが,憲法改正の下書きを
作らせたり,ときの首相のブレーンをもって任ずるなどは言語道断であろう。

あっ あの人は社主ではなかったっけ? 「あの人」でわかるよね?
でも,社主以上にオーナー面してますなあ,「あの人」。
    
「お金の悩み 彼女の場合」 (10月4日 朝日 土曜版b5)
新聞の人生相談には,ときとしてなんでこんなやつが相談者なんだ?
などと云いたくなるものがあるが,これもその一つ。
朝日新聞土曜版の「be Sunday」 という IT 関連記事と生活経済欄を独立
させたような別紙があるのだが,その中に表題の相談コーナーがある。
タイトルでおわかりのように,おもに女性の,しかも経済的な悩みについて
専門のの回答者(複数持ち回り)がアドバイスを与えるというスタイルである。

今回の相談者は42歳の主婦。16歳の息子が悪友に誘われ近所のスーパー
で万引きしたことを同級生の母親から知らされたところから,彼女の事「件」が
始まった。2年前,夫の経営する会社が傾きかけ,以来夫婦で休む間もなく働き
子供の世話が出来なくなった彼女は,子供の弁当を作る代わりに毎日千円札を
机の上に置いて出掛ける日々が続いた。

毎日コンビニの弁当を買っている息子を見た同級生が「貧乏なんだろ。一緒に
万引きで稼がないか。」と誘い,断ると靴で頭を何度も叩いたという。
母親は息子を連れてスーパーに行って万引きの件を謝罪し,学校では担任教
師に相談もしている。教師は「注意してしばらく様子を見る。」と答えた。
しかし,その後息子は髪の毛をつかまれた顔を携帯電話のカメラで撮られ,
その映像を回され,笑いものにされたと数日登校をしなくなった

翌朝,息子をなだめて登校させたが,再度万引きの誘いを受けそれから逃れ
ようとした際,争いとなり相手に骨折などの大けがをさせてしまったという内容だ。

これに対する回答が振るっている。

要約すれば,親の愛情がちゃんと伝わっていれば,非行もぎりぎりのところで
止まる場合もある。どんなに忙しくとも週1度は弁当を作る,毎日声をかける
といったことも大切だ。学校にも落ち度があれば学校や教師,公立であれば
自治体にも責任が認められる。
このケースでは親も損害賠償の義務を負う可能性が高いのではないか。

この回答を読んでいるうちに,少々混乱したのである。
何か重要なことがここからは完全に抜け落ちているような気がしたのだ。
二度三度読み直して,ようやく自分の不審に気が付いた。
つまりこの回答者の答えに中には,この息子を万引きに誘った同級生に
ついては何一つ言及していないのである。むしろ相談者である母親の愛情
不足を暗に非難しているのだ。それに対して,万引きに誘った同級生の行為
やいじめについては「学校が監督責任を怠ったと主張できる可能性がある。」
としか述べていない。

もう一度事件を簡略に再構成してみよう。

 1 息子が友人に万引きを誘われた。
    (毎日コンビニ弁当なのが貧乏だという理由で)
 2 断ると靴で何度も頭を叩かれ,万引きに加わった。
 3 万引きが発覚し,母子でにスーパーに出向き謝罪。学校にも相談した。
 4 髪の毛をつかまれた顔を携帯電話のカメラで撮られ回され,笑いものに。
 5 再び万引きに誘われ,それから逃れようとして相手に怪我を負わせた。

これ対する回答が

 A 親の愛情が伝わっていれば非行は回避することが出来る場合もある。
 B 週に一度は弁当を作り,毎日声をかける。
 C 子供が相手に怪我を負わせれば損害賠償を請求されることもある。
 D 学校や自治体(学校が公立なら)にも責任が認められることもある。

という内容で終わっている。
人に怪我をさせたら(それがどんな理由にせよ)賠償責任が生じるんですよ。
そもそも親の愛情が足りない子供ほど非行に走るものなんだから・・・・
回答者のこんな内心の呟きが聞こえてきそうな内容である。

では,万引きに誘った同級生らは,何ら責めを負わなくてもいいのだろうか?
ごくごく素朴な疑問が生じるのだが,そんなことはないはずである。
そもそも,最初の万引きは,の断ると頭を何度も叩かれる,という状況下で
行われており,それが親に知られ,学校に通報されると,の頭髪を捕まれた
屈辱的な写真を撮られ,それを周囲の者に見せた。その上で,さらに万引き
行為に誘っている,この同級生達には,少なくとも小生の知る範囲においても
幾つかの罪を重ねているのだが,それに関してここでは全く触れられていない。

 しかし,おそらくは下記の罪が適用されることになるのではないだろうか。

 い 万引きに誘い,断られると頭を靴で何度も叩かれ万引きを強要された。
   刑法第222条 脅迫罪
    〃 第223条 強要罪

 ろ 髪の毛をつかまれた顔を携帯電話のカメラで撮られ回され,笑いものに。
   刑法第230条 名誉毀損
     〃  231条 侮辱罪

少なくとも万引きに誘った同級生達にはこれらの罪が適用される。
他にはも肖像権の侵害等というのも使えそうである。
他方,息子が同級生に与えた怪我については,当然の事ながら下記の免責や
刑の減免もあることを考慮すべきであろう。

 は 再び万引きに誘われ,それから逃れようとして相手に怪我を負わせた。
   刑法第36条 正当防衛

過剰防衛についても第2項で「防衛の程度を越えたる行為は情状に因りその
刑を減軽又は免除すること」ができると,はっきり明言している。

いろいろと面倒くさいことを述べてきたが,我々の住む社会における「常識」に
照らし合わせても,この迷回答には首をひねらざるを得ない。
無辜の民がこんな回答者に人生を狂わされることのないよう,この人達の
氏素性をここにバラシちゃっておこう。

今週の筆者・・・それは藪本亜理 そして 本橋美智子 の両名。
藪本氏はこの相談コーナーを一手に引き受けているファイアナンスクリニック
主宰者のようだ。
で,本橋氏はというと・・・・・・なっ な〜んと弁護の士センセイでした。
やばいっ! やばいですう〜・・・・ というわけで,今回はこれまで!
   


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