「車輌の型式」講座

1.電車(在来線)


 電車の型式は、「クモハ119」や「クハ118」などのように「カタカナ記号+3桁の数字」の組合わせで構成されています。
 

 1)「カタカナ記号」について

 カタカナで表わしているものは、その車輌の運転機能と車内設備で「ク」「モ」「ハ」のそれぞれが意味を持っていて、これらを組合わせた構成になっています。


 最初にくるカタカナは、運転機能を表わす記号になっていて、運転席があるか、モーターが付いているか、などで分類されています。

   「ク」 :運転台がある車輌(制御車)
   「モ」 :モーターが付いている車輌(中間電動車)
   「クモ」:運転台があり、、モーターも付いている車輌(制御電動車)
   「サ」 :運転台もモーターもない車輌(付随車)



 そして、「ク」や「クモ」などの運転機能を表わす記号の後に続くのが、車内設備を表わす記号で、次のようなものが用いられています。

   「ロ」:グリーン車
   「ハ」:普通車

 なぜ、グリーン車が「ロ」で、普通車が「ハ」なのか不思議な気がしませんか? イロハ...と付けるならグリーン車が「イ」で、普通車が「ロ」が自然だと思いますよね。でもこれには理由があって、1960年までは一等車(特急「つばめ」などの展望車)から順にイロハ...と付けられていたのですが、一等車が廃止された後も、二等車(グリーン車)・三等車(普通車)に付けられていた記号はそのまま引き継がれたのでした。現在ならグリーン車が「イ」でも良さそうなものですが、昔の名残をこんなところに見ることができます。


↑「モハネ583」は、モーターが付いているB寝台車で、交直流方式の特急型車輌ということ。(車輌前面に記載)

   「ロネ」:A寝台車(「ネ」は寝るのネ)
   「ハネ」:B寝台車
   「シ」 :食堂車(「シ」は食堂のシ)

 その他
   「ユ」:郵便車(「ユ」は郵便のユ)
   「ニ」:荷物車(「ニ」は荷物のニ)
   etc...


 以上、カタカナ部分が運転機能と車内設備の記号を組合わせとなっているというの説明でした。
 ここで、例題を挙げてみましょう。「クモユニ」という車輌があるのですが、どのような車輌か分かりますか?
 正解は、「運転台・モーターが付いていて郵便と荷物の両方を積む車輌」です。合ってましたか?
 

 2)「3桁の数字」について

 1)でカタカナ記号の意味について書きましたが、3桁の数字についても100の位、10の位、1の位でそれぞれに意味があります。

 *100の位については、電気方式が直流、交流、交直流両用のいずれかを表わしています。

   「1〜3」:直流電車
   「4 、5」:交直流電車
   「7 、8」:交流電車

 *10の位については、電車の使用用途(通勤型、近郊型 etc...)を表わしています。

   「 0 」:通勤型(一輌当り片側4扉)
   「1 、2」:近郊型(一輌当り片側3扉)
   「5〜7」:急行型
   「 8 」:特急型
   「 9 」:試作のもの

 *1の位については、「車輌称号基準規程」では定義づけられていませんが、製造された順番と覚えておいて差し支えないと思います。この1の位の数字は1つの「系」に2つずつ割り当てられていて、「1と0」、「3と2」、...のように組まれています。2つずつ割り当てられている理由は、運転台の向きが違う場合にカタカナ記号だけでは判別できないなど、管理上不都合が生じないようにするためです。例えば、115系にはモハ115とモハ114とがあります。


↑「クハ118」は、運転台が付いている普通車で、直流方式の近郊型車輌ということ。(118系ではなくて119系)
「5010」は、5010番目に作られたという意味ではなくて、搭載設備の変更に伴って5000番代に改番されたもの。元々は「10」だった。(車輌側面に記載)
 

 3)「固有番号」について

 これまで説明してきた型式の後ろには、ハイフン(−)を付けて各車輌の固有番号が付けられます。
 固有番号とは、同じ型式の車輌を一輌一輌区別するためのもので、普通は第1号車から順番に付けられていきます。
 なお、一部車内設備や搭載設備などが違っている場合でも、それが型式を変えるほどの大きな違いではない場合は、固有番号にある一定の番台を付けることがあります。この一定の番台は、小さいものでは10番台や50番台、数字が大きくなって100番台、200番台、500番台、もっと大きく1000番台、2000番台、5000番台などになります。

 これらは、JR全体の型式の傾向を書いてきましたが、最近はこれに当てはまらないものも登場しています。例を出すと、JR東日本は上に説明したような型式の付け方をした上で、その型式のカタカナと数字の間に「E」を入れて「モハE351」というようになっていますし、JR四国では私鉄のように何千型(*000型)というような付け方になっています。