空技廠 E14Y
零式小型水上偵察機(零小水偵)
フジミ
地味な機体で、資料も少なくて制作意欲が沸くアイテムではありません。 しかし、私にとっては避けて通れない重要な機種です。 第二次世界大戦、初期、まだレーダーが普及していなかった頃はどの国も偵察や着弾観測 の為に水上機を艦船に積んでいました。実験段階で潜水艦に飛行機を格納した国もあった かも知れませんが、実用化して多用したのは日本だけだったと思います。ドイツも動力を持 た無いジャイロプレーンを潜水艦で引いて偵察に使っていましたが、船体が小さい為もあって 飛行機はありませんでした。 大正13年生まれの私の父は志願で海軍に入りました。多くの軍国少年が目指したように予科練 を希望しましたが、運動能力がネックとなって不合格となり、通信学校に回されました。第55期と して卒業し、最初に配属されたのが補給艦「間宮」です。そこで食べたアイスクリームがとてもウマ かったらしく、しばしば聞かされました。 次に配属されたのが、零小水偵を積んだ潜水艦「イ号-11」です。開戦時はシドニー沖で潜水艦 の中で迎えた様な話を聞いた記憶があります。次の定期異動で、上官から「大和と通信学校教官 の話があるがどちらを希望するか?」と聞かれたので、「お任せします。」と答えたら教官の方になった と言っていました。潜水艦のままだったり大和だったら私はこの世に生を受けていないかも知れません。 イ-11は父が転出後にアリューシャン付近で沈んだと父から聞いていましたが、自衛隊の資料室で 見たアメリカ軍の報告書には2隻の駆逐艦によって南方海域で撃沈したとありました。 少し前、沈んだ武蔵を探す番組で、当時の搭乗員が・・・機銃手だったと思います。武蔵に配属された 事を大変誇りにしている話をしていました。まして、旗艦・大和、希望だけで乗せてもらえる船ではあ りません。会社なら本店勤務、それなりに成績が良くないと回してはもらえないでしょう。存命中に それを話せれば、父も喜んだと思います。 小・中・高校と同じで仲の良かった石○君の父親も偶然、私の父と終戦を防府の通信学校で迎えました。 石○氏も潜水艦からの転属で、乗っていたのはあの有名なイ号-29でした。チャンドラ・ボースの話や 着水に失敗して外れたフロートを機銃で撃つ話など父からは聞けなかった面白い話題を伺いました。 |
MPM
WINGS(バキュームキット)
これが一番最初に買った零小水偵のキットです。板からパーツを切り出して 主要部品は組み立てを始めています。資料をほとんど持っていなかったので、 中断して資料の集まるのを待っていました。 |
参考資料
丸の別冊には20ページほどの初めて見る白黒写真があり、興奮しました。 後に出た洋書にも同じ写真がありますが、海中に沈んだ零小水偵の写真は とても参考になります。多分、これ以上の資料が出る事も無いでしょう。 本国の日本で特集号が出ないのに海外・ポーランドから出たのには複雑な思い があります。ポーランドの日本愛には頭が下がります。 |
このキットの印象を悪くしている最大の原因は単調な「ハフ張り表現」でしょう。 凹みも深すぎる感じがします。ファインモールドで1/48・95戦を設計した時は凹みを 0.05mmとしました。1/72スケールなら多くても紙1枚か2枚,0.02mm位にしないと野暮 になります。 画像、左はキットオリジナル。右はパテとサーフェーサーで修正した物です。 |
キットでは波の山に当たる部分が丸すぎるので、パテとサフを混ぜたもので、線を描き、 彫刻刀とペーパーで削ってエッジを強調する作業をしました。画像では良く分かりません。 尾翼は薄く削いだプラ箔を波の凹みに貼って修正を試みましたが、「箔」でも厚すぎて溶きパテ を塗るくらいでちょうど良い加減です。 |
星形エンジンはいつもの調子で。キットでは完全に円となっているカウリングの開口部も 資料を見ると凸凹があるので、それらしくする予定です。 これもフジミがキット化する時点では十分な資料が無かったからと思います。 |
2020.09.01
レストアされた月光等の内部色は青竹色に塗られていますが、他の機種も青竹で良い のだろうか?モノクロ写真で見ると相当黒っぽく写っていて、どこで見たか忘れてしまった が、もっと緑色の強い色調の方が写真と合っていそうです。もしかすると、外面に塗った 濃緑色を薄めて塗った可能性もあるかも知れない。防眩だけのために特別な色を混ぜ なくても外部色を流用した事も戦争末期には大いに考えられます。 ハセガワの九五水偵はクレオスの126番を指定しているようですが、これは三菱系の内 部色なので、愛知や空技廠も同じとは思えません。・・・という事で、今回は濃緑色に銀を 少し混ぜて自作した色を使いました。 後部座席下に開いていた偵察用の窓は資料で確認できなかったので、塞ぎました。 |
パイロット席の金属外板部分は燃料タンクになったいるようです。機体と重心位置が重なる ので、パイロット席の下や後ろに燃料タンクを配置した機種も知っていますが、側面にそれを 配置した飛行機は零小水偵が初めてです。ハフ張り部分は明るく写っていたので、薄茶色に 塗りました。写真は試作か極初期の機体なので、量産機は内部色に塗られたかも知れません。 |
主翼はラインが折れ曲がって根元が狭くなっています。全体と同じ幅で胴体に続くように主翼を 修正して、ズレて消えた胴体フィレットを上の画像や下の画像のようにプラの端剤を接着して再 現しました。 |
胴体下面は真っ平らです。写真で見ると丸みがあるので角を削るつもりでしたが、丸みを付け 足した方が実機に近く感じたので、プラ板を張り、整形しました。 |
キットの操縦席は小さく貧弱だったので、プラ板をヒートプレスして作っておいた物に 代えました。軽め穴は凹まして墨入れで再現する予定です。 フジミの操縦席は機体に入れた時の余裕を多く取り過ぎていて小さすぎて不満です。 |
方向舵は左画像の矢印の位置です。資料を見ると右のように傾いています。 方向舵の形が違っていたのも制作に取りかかる意欲が沸かなかった理由です。 面積も少ないようだったので、赤楕円にプラ板を張って増やしました。 ゴチャゴチャ触っていたら厚みも不満が出たので、プラ箔を貼って修正しました。 パテよりこの方法が好きです。 |
2020.09.21
まだ途中ですがハフ張りの表現工作を続けています。 矢印で示した箇所はキットではハフ張りでしたが、実機はジュラルミンが貼られています。 パネルラインを引いてハフの波を消しました。 |
主翼付け根にはスリットがあるので、この段階で掘ります。翼と胴体を付けないうちに スリットを掘った方が楽でしたが、全体を進めるためにスリットを後回しにしてしまいました。 米軍のドーントレスに見られるように翼の先端付近に失速防止のスリットは知っていましたが、 翼の根元にスリットがある機種は零小水偵が初めてです。フロートがあるので空気の流れの 関係からこんな場所にスリットが設けられたかも知れません。 |
キャノピーの透明度は良いのですが、各風防の段差が0.5mm近くあって、後ろになるに従い キャノピーの寸法が無視できないくらい小さくなっています。0.5mmだと実機では36mmの厚み になるのでそれは無いでしょう。推測ですが、実機で10mmとすると1/72換算で、0.14mmの 段差です。洋書の1/48図面では1/72にすると全長で37.7mm、高さで6.2mmとなりました。 キットのキャノピーを計ると、長さ・38.7mm、高さ・7.5mmでした。どちらが正確か確認できる 旧軍の資料も無いし、鮮明な側面写真も無いので、折衷案で、長さ・38.7mm、高さを7mm程 として制作を進めます。形にするにはどこかで妥協しなければ工作は進みません。 雄型に使う人工木材を各部の長さに切り、切断面に油性の黒を塗った後、接着しました。 前後に1mmの延長部を付けて削ってもポイントの線が消えないので工作が楽です。 |
2020.10.05
キャノピー取り付け用の段差を伸ばしランナーで作りました。 |
左のキットオリジナルと比べて自作した右の方が断然良い感じがします。 |
旋回機銃はファインモールドの別売りパーツを使いました。 |
旋回機銃がどうも分かりません。完成した試作機には装着した機銃が写っていますが 配備された機体には機銃が写っている写真がありません。射撃時に視野を 広げるために移動するか収納される最後尾のキャノピーが零小水偵では固定 されています。機銃架のレールに銃を付けた状態では機銃が収納できません。 洋書では後部座席の足下に収納されて描かれていましたが、それも不自然です。 試作機では後部座席の裏に意味深なフレームが写っていて、収納時はこれに 納めていると想像しました。敵機を見つけてからでは遅いので、作戦空域に達し たら機銃をレールにセットするのでしょうか?もしかすると配備された機体には 機銃が無かった事も考えられます。 旋回機銃の操作は後ろ向きに座席を座り直すとか座席が後ろ向きに回転する タイプ思いつきますが、零小水偵の後部座席は映画館の席のようにおしりの部分が 跳ね上げる方式で、機銃操作は銃手が中腰で操作するようです。 とにかく、機銃の収納方法は私の想像である事を覚えていて下さい。 |
左、キットオリジナルのカウリングの膨らみは形が不揃いで、長さも若干長すぎの 印象なので接合箇所の段差を消す作業のついでに修正しました。 |
星形エンジンのカウリングはバラバラに外れるタイプが多いが、 零小水偵ではエンジンのギアハウジングから伸びたステーを基準に 前方に開く、少なくても左右のパネルは開いている資料があります。 それで,その箇所をそれらしく作りました。 |
実機ではエンジンが重いので機体が尻餅付く事がありませんが,模型では 尾部の方が重くなって尻餅状態になります。対策として、フロートの前部に 鉛の小さい玉を入れましたが、少し量が多すぎたようで、フロート全体が 重くなりすぎました。 |
フロートがハッキリ写っている資料があったのでパネルラインを塩ビのテンプレートを 作って掘り直しました。 |
フロート支柱の断面形は角の丸まった長方形をしていたので、水滴形に 修正します。キットでは支柱とフロートの取り付け部は省略されているので、 それらしく改造しました。画像はキットオリジナルの状態。 |
垂直尾翼と水平尾翼を繋ぐ斜め支柱は垂直尾翼に水滴型のバルジがあるので 改造します。金属や熱に強い材質の塊に水滴状の凹みを掘り、熱したランナーを 押し当てて作った色々な大きさのバルジを前もって作っておいたので、それを 使います。 |
後部フロート支柱を借り組みして、主翼から伸びた支柱を仮付けして様子を見ると 少しズレが有るようです。 主翼支柱の翼側有るはずのバルジも省略されているので追加します。 全ての支柱は円形の鋼管で出来ていて、それに水滴形断面のカバーが 被せられています。取り付け基部はカバーから鋼管がむき出しになっていて それがアクセントになるので、再現を試みます。 |
補助翼単なる板なので、リブを再現しようとがんばりました。 |
今まで、マーキングのデザインに使ってきたアドビのイラストレーターが 新しいOSのパソコンでは動きそうも有りません。年に何回も使わないソフトに 高額を払うのもシャクなので、フリーソフトの「インクスケープ」を試してみました。 |
シルエットカメオでマスキングフィルムを切ると数字の幅が若干異なりました。 データーはコピーで作っているの幅異なるのは不思議です。 右は文字を残して周りのシールを除去した状態です。 |
これをアプリカーショウフィルムと言って透明のフィルムに移し、最後に 機体に貼り付けます。 |
洋書に書かれていた偵察用と思われる窓は少し掘って凹まし、 艶のある黒を塗りました。制作の最後の課程で、この箇所に紫外線 で固まる透明レジンを流し込んでガラスを再現する予定です。 位置的に,構造的にココに穴があるか疑問だったので黒く塗ってごまかし ました。 |
写真の確認は出ませんが飛行機が潜水艦に配備された時は機体番号が書かれていたと思います。 作戦時には当然消されるか、ロービジになっていただろうと思います。 |
キット付属の潜水艦カタパルトに付いている台座と機体は相性が合わなくて位置が決まりません。 フロート支柱を修正しましたが、大きくは変わっていないので、元から無理があったかも知れません。 |
普通、ピトー管は0.5mmのパイプと0.3mmの洋白線を組んで作っていますが、 写真で確認すると零小水偵のピトー管は細い部分が無いようです。 |
フロートと支柱はワンタッチで固定されていると思いますが、良く分からないので、 写真を見て、それらしく再現しました。 |
画像では充填して再現したガラスが良く分かりません。 主翼フロート支柱基部に黒い鋼管が少し顔を出します。 キットでこれを再現すると接着部分の強度が落ちるので、 省略したかも知れません。 |
2021.05.22
ピットロード 1/700 イ号9~12タイプ、呂号35 2隻セット
潜水艦はその用途から残っている写真が全く少ないです。終戦時にアメリカが調査した イー400とかニチモ1/200で出ていたイー19以外は船体全体もほとんど分からないのが 現状です。イー9型の写真も3枚ほどしか確認できません。ウォーターラインをやめて資料 を全て手放したので、今回は洋書に載っていた側面図とキットの箱絵が全てです。 艦橋周りの塗装は推測です。零小水偵の回収時に立てるクレーンと通信用のアンテナは 省略しました。 |
手すりはもっと前後に長いかも知れませんが、箱絵を参考に画像のようにしました。 今まではエッチングパーツを使っていた部位ですが、長らく使っていなかったので、 見つからず,ポール部分は0.2mmの真鍮線と鎖(ロープ)部分は0.1mmの洋白線で 作りました。 25mm機関砲は今後使う予定も無いのでファインモールドの別売りパーツを改めて 買う事はあきらめました。 |
このキットは今主流のPC制御で作る金型では無いらしく左右の断面が違っていたり、 いくつものパーツが接合する艦首部分では段差が出ました。また艦首部分はパーツの ヒケが大きいので処理に手間取りました。 発射管の位置が左右で異なっていましが資料も無いので雰囲気で、右側面に合わせました。 |
箱絵を参考に前方の潜行舵のガードを追加しました。 |
キットでは省略されている胴体下側面のビジルキールも追加工作しました。 |