僧堂に到着して10日程するとやっと正式に修行することをゆるされます。これまで未知の世界だった、 唯一の自分の場所である「たたみ一畳」がある「禅堂」とよばれる建物にはいることになりました。 朝、「フズイさん」といわれるコワイ人に禅堂の入り口までつれていかれました。その「フズイさん」 も禅堂の中に入ってしまい一人ぼっちになってしまいました。これから「新到参堂」といわれる儀式をする為に禅堂に入るのですが、 禅堂の中にはフズイさんよりもコワイコワイ人が坐禅しているそうです。

なんとか心を落ち着けて静かに禅堂に入りました。前もって言われたとおり正面までそろりそろりと歩いていき、聖僧さん（文殊菩薩） の前で三拝（仏様のお足をいただくように伏して三度拝をすること）、そしてコワイコワイ人達に低頭しました。 その後、「起きて半畳寝て一畳」といわれる自分の場所（単といいます）に坐り、「茶礼（されい）」といわれる お茶をいただきました。自分の単につくまで「静かに歩くように」と言われていたのですが、ぼろぼろの履物ですので静かに 歩くのには無理があります。できるだけ静かに歩いているつもりなのに先輩達は「シッ！」と私を注意します。 やっと修行が許されたけど、これから先やっていけるだろうかと不安でなりませんでした。