草刈り奉仕日記    

    平成15年6月14日(土) 曇りのち雨

 家を出る時は曇っていた空も大阪へ着いたときに降り出した。高速バスで
徳島へ向かう。バスの中で持参のおにぎりを食べる。バスから眺める景色は、
昨年9月の頃とあまり変わらないなぁーと思っているうち、うとうとと寝てしまった。

 徳島へついてすぐ駅へ。鴨島までの切符を買って、時刻表を見上げていたら、
「やぁー、しばらく。また会いましたねー」
Kさんだ。もう5回目の草刈り奉仕だ。しかも今年で82歳だと聞く。この人が参加
するなら、我々は年寄りだからと言っていられない。

 JRの列車の中で、Kさんが徳島で買ってきた弁当を広げる。鯛寿司を食べながら
「私は徳島へ来ると必ずこの弁当を買うんです。これが楽しみなんです。一つ
食べませんか」
と勧められる。確かにおいしかった。
「人が笑うんです。神奈川県から、わざわざ、四国へ草刈りに行くの?お金を使って、
汗かいて、高齢だから疲れるでしょう・・・。アッハッハァー・・・人にはわからない、
この幸せこれが私の生きがいであり、健康法でもあるんです」
Kさんは笑いながら楽しそうに遅い食事を済ませた。

 鴨島の旅館に着くと、もうみんな来ていた。お互い元気で顔を見られた事に感謝。

    6月15日(日) 曇り

 午前中は玉ヶ峠〜鍋岩と焼山寺展望付近と二手に別れて作業する事になった。
我々は玉ヶ峠へ向かった。例年より雨が多かったので草がよく伸びていた。

 ここでも二人づつに別れて玉ヶ峠と鍋岩から挟み撃ちにする事にした。刈り払い
機のエンジンの音も好調だ。

 雨降りの時、膝まで伸びた草にお遍路さんは難儀をする。天気のよい時は、草の
中に隠れた蛇に不安を感じるだろう。少しでもお遍路さんが快適に歩けますように
と祈りつつ草を刈る。

 初日から頑張りすぎると、後が続かない。と思いつつも張り切って、午前中の予定
を1時間半で終わらせて、約束の待ち合わせ場所へ。

 焼山寺組はなかなかこない。携帯で連絡。昼近くやっと待ち合わせ場所へ来た。
予定より早く焼山寺が終わったので、午後の予定の建治寺へ直行したとのこと。
初日から張り切っているー。
 昼食はカツ定食にした。ばてないように頑張らなくちゃぁー。

 午後、広野〜建治寺〜入田町を手分けして作業することにした。私は建治寺駐車
場からの下りを受け持った。下り道を下へ、下へと草刈りをしながら下がっていき、
下から上がってきた人と出会ったところで引き返した。

 刈り払い機は、5キロ以上の重さ、担いで今来た道を登るのが大変。日頃の運動
不足が現れて、息はハァーハァー、汗は目に入り、眼鏡も汗で先が見えにくい。
何度か、休憩して、やっともとの駐車場へ戻ったら、みんな作業を終えて待って
いてくれた。

 今夜の宿、名西旅館へ直行。道具の手入れ、鎌研ぎをして、風呂へ。なんと言って
も風呂が最高。一日の汗を洗い流すこの快感は忘れられない。

   6月16日(月) 雨

 今日は、太龍寺舎心ヶ嶽〜黒川の道。この道は今までお遍路さんが歩かない道
でした。地元の方の太龍寺参拝道。倒木を片付けながら、全員で下りました。
約3キロ2時間の道程でした。

 午後は一路室戸へ移動。最御崎寺参道と金剛頂寺〜平尾の遍路道。ここもよく
茂っていた。歩く道だけでなく側面の覆い被さってくる草木を釜で刈り込んで、見通
しを良くする。道が暗いと歩き遍路さんはうつむいて急ぎ足で通る。遍路さんの心
も暗くなる。時には遍路道を避けて車の多い道を回り道する。


 車社会から離れて一人静かに遍路を楽しませてあげたい。小雨降る遍路道、
実に楽しい空間なのだ。雨がよく降ってきたので、金剛頂寺へ宿泊。今日は
大洗濯だ。

   6月17日(火) 雨

 台風接近の余波か、須崎市の仏坂を終える頃から、よく雨が降ってきた。草刈り
も三日目、そろそろ疲れも出てきた。そえみみず遍路道を予定していたが、中止
して休養日にする。土砂降りになる。岩本寺に泊まる。

   6月18日(水) 雨

 二班に別れて、そえみみずと奥大阪〜七子峠。いつもの事ながらそえみみずの
出口付近は日当たりがいいのでよく生える。奥大阪の急坂付近は竹の倒れたのが
多い。一つ一つ片付けていく時、雨のことなど忘れている。

 次の作業場へ移動中、Nさんの車がパンクした。四人は片坂遍路道へ、我々は
道路脇でタイヤ交換をした。雨は時々激しく降るが、午後、中浜、厚生坂遍路道の
草刈りをする。作業中、雨が小止みになる。金剛福寺に泊まる。

   6月19日(木) 台風接近

 風はあるが雨は時々小止みになるので、午前中に足摺松尾坂、以布利渚道。
午後は、繁茂している貝塚、錦、大深浦。台風接近でも意外と雨足は、ひどくなかっ
たので、順調に仕事を終えることが出来た。御荘町まで移動して泊まる。今日も
また大洗濯。乾くかなぁー。

   6月20日(金) 曇り

 柏坂下り、松尾峠下りを手分けして午前中に済ませ、龍光寺門前で食事。午後
打ち合わせをして出かける時、龍光寺門前でうろうろしている女遍路さん(20代)
に声をかけた。
 「道を間違えていませんか?」
 「次の佛木寺へ行きたいのです」
 「そちらは大回りです。道が違っています」
 「??」
 「小型車の駐車場から、行く遍路道があります。案内します。
  寺から出る時、ゆっくりあたりを見回して、遍路標識を探してください」

 「へんろみち保存協力会の方ですか?」
 「はい、今日は草刈りです」
 「お世話になっています。ありがとうございます」合掌。
 「お気をつけて」合掌。

 娘さんがほろりと涙をこぼして合掌された時、胸に熱いものが込み上げてきた。
誰かに喜んでもらえる。とても幸せだぁー。

 龍光寺裏山越。歯長峠越。下坂場峠越を午後手分けして、リバーサイト富士(泊)。

   6月21日(土) 曇り

 ひわた峠越。八丁坂。古岩屋道。河合〜千本峠〜高野。峠御堂トンネル南下。
東明神旧水源地脇道。三坂峠入り口前。これらをみんな、手分けして無事終了。
笛ヶ滝に泊まる。今日は暑かったから、大洗濯。

   6月22日(日) 雨

 栄福寺〜仙遊寺遍路道。お遍路さんが三人別々に通っていった。片手合掌で
行く人、「ご苦労様」と声をかけてくれる人、黙っていく人、それぞれだ。

 横峰寺下り。奥の院。高嶋神社南口。今日も手分けして無事終了。
池田かんぽの宿に泊まる。

   6月23日(月) 曇りのち雨

 雲辺寺上り。倒木が多い。(写真を見て下さい) 

 弥谷寺下り碑殿町。ここの池の近くは草木繁茂。汗一杯で作業していたら、地元の
方がビワをお接待してくれた。おいしかった。

 白峰寺〜根香寺。そして根香寺下り車道分岐は、草がよく生える。みんなここは
車道を通るようだ。坂出かんぽの宿に泊まる。ここは最近、新しい温泉が出た。

   6月24日(火) 雨のち晴れ

 女体山越。雨と雷、以前もこのように雨と雷の歓迎を受けた。何か不思議な事が
あるもんだ。

 境目峠越。星越峠を終了して八十窪に宿泊。歩き遍路さんが四人泊まっていた。
結願し、満足感を顔に表して。

   6月25日(水) 曇り

 いよいよ大阪峠越で終りだ。朝6時20分に八十窪を出発して現地に向かう。

それぞれ作業分担して、今回最後の仕事をする。あまり汗もかかぬうちに終わる。

ご苦労様でした。お互い感謝と、やり遂げた満足感に浸る。   合掌。