80's Memory  


#8

空に向けたシャンパン

featuring, Michele alboreto
Formula−1(89' スウェーデンGP)



 
 1988年、F−1第11戦ベルギーGP。スパ・フランコルシャンの市街地コースで、ミケーレ・アルボレートはまるでやり場のない怒りをぶちまけるかのように、オイルを吹き上げるマシンで走り続けた

 周囲の反対を押し切り、彼をフェラーリに迎え入れた”御大”エンツォ・フェラーリの逝去直後のレース
 この暴挙とも言えるアルボレートの行為に対し
、パドックであがったのは非難よりもむしろ同情の声だった… 

 前年の日本GP、フェラーリの”ナンバー2”だったゲルハルト・ベルガーが挙げた勝利によって、アルボレートの発言力は日ごとに小さくなっていった
 ことにエンツォが病床に伏してからは
、チームは派手な走りでスポンサー受けの良いベルガーを中心に据えた体勢へのシフトを強め、このベルギーGP予選中、来シーズンの体制にアルボレートが含まれないことを発表したばかりだったのだ

 そんな中、翌第12戦のイタリアGPは驚くべき展開を見せる

 このシーズン、ここまで全てのレースに勝ってきたマクラーレン・ホンダだったが、まずアラン・プロストのマシンがトラブルでストップする。さらに終盤、2位を大きく引き離してトップを独走していた同じマクラーレンのアイルトン・セナまでが周回遅れとの接触でスピンアウトしてしまった

 この時点でトップはベルガー、2位アルボレート。騒然とするフェラーリのピット。さらに地元イタリアでの1−2体制に10万を優に超えるティフォージがお祭り騒ぎを始めた

 そんな中、チーム監督のチェザーレ・フィオリオだけが怒っていた
 「ペースを落とせ!落とすんだ!」
 悲痛な叫びがピットにこだまする。燃料、タイヤとも限界に近いベルガーに対し、車に優しいドライビングのアルボレートのフェラーリは余力十分だった

 ファステストラップを出し、みるみるベルガーとの差を詰めるアルボレート。最終ラップに入るときにはついにその真後ろに付けた
 失うもののないアルボレート、引くことを知らないベルガー…最悪の事態(=両者接触リタイヤ)の予感が頂点に達したとき、
アルボレートはアクセルを戻した…

 表彰式、派手なパフォーマンスで大観衆を沸かすベルガーの隣で、アルボレートは穏やかな微笑みを浮かべながら、シャンパンをエンツォのいる天に向かって高々と吹き上げた


 そして2001年4月、アルボレートもまたエンツォのもとへ旅立った…

 

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