スーパーヘテロダイン方式ラジオ第2号の製作(2020.12.20)

 ある方のために真空管式AMラジオを製作することになりました。回路は一般的なもの です。部品については、現在では新品は入手困 難なも の が多いので、昔のラジオに使用されていたものをオーク ションで落札して使用しています。たまたま落札した糸掛け式のダイヤル機構が面白いものでしたので、これを活かしたデザインとしました。



回路について

 回路は、前回製作したスー パーヘテロダイン方式ラジオの回路を基本として設計しました。ごく一般的な回路です。音声増幅部は、6BM8を用いた回路から 6AV6と6AK6を用いた 回路に変更しています。また、電源回路には、チョークコイルによる二段型リプルフィルタを採用し、ハムの低減を図りました。アンテナコイルは、フェライト棒にリッツ線を巻 いて自 作しました。
 局発コイルはコアを回転させることでインダクタンスを可変としたものを入手しました。このため、パディング・コンデン サの代わりにコイルに付属していた445pFのコンデンサを使用しています。エクセルを用 いてトラッキングエラー(局発コイルの共振周波数からアンテナコイルの共振周波数を引いた値と455kHzとの差)をグラフ化して最適値を探 りました。バリコンが430pF×2の場合、アンテナコイルが210μH、局発コイルが118μHとし、アンテナ側トリマが17pF、局発側 トリマが29pFの時が一番バランスが良いようでしたので、LCRメータで測定して局発コイルのインダクタンスを118μHに調整して取り付 けました。受信周波数帯である550kHzから1.6MHzのほぼ全域でプラスマイナス5kHzの誤差に収まる計算です。これをやったおかげ で、製作後のトラッキング調整がスムースに進みました。実 際の計算結果はこちら

回路図はこちら

(受 信部) (電 源部)

ケースの製作

 ケースのデザインは、縦型の木製ケースとしました。バーアンテナを使用するため金属製のケースは採用できません。糸掛け式ダイヤル機構 は、バリコンが180度旋回するのに合わせてプラスチック製の針が90度旋回して周波数を表示す る仕組みになっています。受信部と電源部の2階建て構造とし、2つのシャーシの間はコネ クタで接続するようにしました。中板の上に受信部のシャーシが乗る構造になりますので、中板が落下しないよう、アルミアングルで補強したうえ で接着し、さらに竹串を釘のように横刺しして、補強してあります。ケースの素材は、9mm厚の桐集成材とし、マホガニー調の色で塗装しまし た。スプレー缶で塗装し、上からクリア塗装をかけてあります。
 受信周波数を表示させるための文字盤は、乳白色アクリル板にプリントアウトした紙を貼り付け、背面から電球色のLEDで照らすこ と で、文字を読み取りやすくしています。また、ツマミが付く部分には、透明アクリル板に100均の店で購入した黒いビニールレザーを貼り付 け、昭和っぽい「デラックス感」を醸し出しています。

ケース断面図

受信部平面図       




糸掛け式ダイヤル機構詳細

  右下の駆動軸で、中央上にある大きなプーリーを駆動して、バリコンを回します。大きなプーリーには、前面に小さな プーリー(プーリー2)が ついており、これが下の表示棒を駆動するプーリー(プーリー3)を駆動する仕掛けです。プーリー3はプーリー2の倍の直径になっており、 バリコンが180度旋回するにしたがって90度旋回します。

手持ちの測定器を使用しての調整

 スーパーヘテロダイン方式のラジオは、多く同調回路を含むため、すべての受信周波数帯域で感度保つためには調整が重要です。 使用したもの は、LCRメータ、周波数の測定できるデジタルテスタ、オーディオ用の低周波発振器、自作の周波数測定用のプリアンプです。私の持っているテ スタはSANWAのCD770で周波数測定は可能ですが、周波数測定モードでは入力インピーダンスが2kΩしかなく、周波数も 100kHz モードが最高です。したがって分周回路を組み込んだプリアンプを通して測定しています。最初にアン テナコイルと局発コ イルが所定のインダクタンスであることをLCRメータで確認しました。

プリアンプの回路図はこちら

IFTの調整

 中間周波数455kHzにIFTが同調していないと、トラッキング調整のために行った計算と整合性が取れなくなるため、まず 最初にIFT の同調周波数を455kHzに合わせます。オーディオ用の低周波発振器でも455kHzくらいならば出力できるので、上述のプリアンプ+テス タで測定しながら発振周波数を正確に455kHzに合わせ、テスト信号が得られます。ラジオの配線が完了した段階で、6BA6の近くに信 号源 からの配線を近づけると、受信した信号の強さに合わせてAGCのマイナス電圧が大きくなります。これを測定することで、IFTの同調を調整す ることができ ます。

トリマと局発コイルの調整

 回路図中6BE6のカ ソード付近ある T.P.(テスト端子)にプリアンプをつなぎ局部発振回路の発振周波数を測定します。バリコンを最大容量にした時と最小容量に したときに想定した発振周波数になるよう、局発側のバリコンのトリマと局発コイルのコアを調整します。バリコンを最大容量にした時には、 バリコンの静電容量に対するトリマの静電容量の割合が小さくトリマを回しても発振周波数の変化は少ないため、局発コイルのコアを回し て想 定の周 波数になるように調整します。一方、バリコンを最小容量にした時にはトリマの影響が大きいので、今度はトリマを調整して想定した周波数に なるよう調整します。
 その後、実際のラジオ放送を受信しながら、アンテナコイル側のバリコンのトリマを調整します。低い周波数帯で は、局発と同様に トリマの容量の割合が小さいため、トリマを回してもあまり感度は変動しません。したがって高い周波数帯でトリマを調整 すれば、バランスよく感度を保つことができます。1MHzあたりと1.5MHzあたりの2か所で調整して、妥当なところを決めました。

周波数表示目盛りの作成

 前回製作した ものと同様 の手法を用いて、局発周波数を100kHzごとに測定しながら針の位置を表示板に貼った紙に記録し、エクセルで 近似多項式を算出 しました。多項式を用いて25kHzごとに細かい目盛りの位置を決定し、CADで作図しました。



使用してみて

 リプルフィルタにチョークコイル二段式を採用したおかげで、ハムが非常に少なくなりました。静かな室内でラジオを聞くと、ス ピーカーから 聞こえるハムよりも トランスのうなり音のほうが大きく聞こえます。また、ACラインフィルタの効果も大きく、モジュレ-ション・ハムはほとんど聞こえません。 バーアンテナのおかげで外部アンテナを接続しなくても実用上問題ない感度があります。前回製作したラジオで気になった受信 周波 数の変動は、今回はあまり気になりません。前回と異なり真空管ラジオ用の局発コイルやトリマを使用したことと、全体の発熱が少ないことが関係 していると思います。出力管が6AK6で最大出力は小さいです が、不足は感じられません。夜中に小さな音でNHKの「ラジオ深夜便」を聞くのに似合うラジオです。

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